(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板を収容する処理室と、前記処理室内へ処理ガスを供給する処理ガス供給配管と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気配管と、前記処理ガス供給配管内の前記処理ガスに含まれる反応ガスの濃度を検知する第1のガス濃度センサと、前記排気配管内の排気ガス中に含まれる前記反応ガスの濃度を検知する第2のガス濃度センサと、を備える基板処理装置を用いて前記基板を処理する工程を有し、
前記基板を処理する工程は、
前記処理室内の基板に対して前記処理ガスの供給を開始する工程と、
前記第1のガス濃度センサが検知した第1のガス濃度値と前記第2のガス濃度センサが検知した第2のガス濃度値とを所定の時間間隔で取得し、取得した前記第1のガス濃度値と前記第2のガス濃度値に基づいて、前記処理室内で消費される前記反応ガスの量を算出する消費量算出工程と、
前記消費量算出工程で算出された前記処理室内で消費される前記反応ガスの量が所定の値以下になると、前記処理室内の基板に対する前記処理ガスの供給を停止する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
基板を収容する処理室と、前記処理室内へ処理ガスを供給する処理ガス供給配管と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気配管と、前記処理ガス供給配管内の前記処理ガスに含まれる反応ガスの濃度を検知する第1のガス濃度センサと、前記排気配管内の排気ガス中に含まれる前記反応ガスの濃度を検知する第2のガス濃度センサと、を備える基板処理装置を用いて前記基板を処理する手順をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラムであって、
前記基板を処理する手順は、
前記処理室内の基板に対して前記処理ガスの供給を開始する手順と、
前記第1のガス濃度センサが検知した第1のガス濃度値と前記第2のガス濃度センサが検知した第2のガス濃度値とを所定の時間間隔で取得し、取得した前記第1のガス濃度値と前記第2のガス濃度値に基づいて、前記処理室内で消費される前記反応ガスの量を算出する消費量算出手順と、
前記消費量算出手順で算出された前記処理室内で消費される前記反応ガスの量が所定の値以下になると、前記処理室内の基板に対する前記処理ガスの供給を停止する手順と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照してより詳細に説明する。
【0015】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法を実施する基板処理装置10の構成例について、
図1及び
図2を用いて説明する。本基板処理装置10は、過酸化水素(H
2O
2)を含有する液体、すなわち過酸化水素水を気化させて生成される処理ガス用いて基板を処理する装置である。例えばシリコン等からなる基板としてのウエハ200を処理する装置である。本基板処理装置10は、微細構造である凹凸構造(空隙)を有するウエハ200に対する処理に用いる場合に好適である。微細構造を有する基板とは、例えば、10nm〜50nm程度の幅の横方向に狭い溝(凹部)など、アスペクト比の高い構造を有する基板をいう。本実施形態では、微細構造の溝にシリコン含有膜であるポリシラザン膜が充填されており、当該ポリシラザン膜を処理ガスにより処理することにより酸化膜を形成する。なお、本実施形態ではポリシラザン膜を処理ガスにより処理する例を示しているが、ポリシラザン膜に限らず、例えばシリコン元素と窒素元素と水素元素を含む膜、特にシラザン結合を有する膜や、テトラシリルアミンとアンモニアのプラズマ重合膜などを処理する場合にも、本発明を適用することができる。
【0016】
(処理容器)
図1に示すように、処理炉202は処理容器(反応管)203を備えている。処理容器203は、例えば石英または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成されており、下端が開口した円筒形状に形成されている。処理容器203の筒中空部には処理室201が形成され、基板としてのウエハ200を、後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0017】
処理容器203の下部には、処理容器203の下端開口(炉口)を気密に封止(閉塞)可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、処理容器203の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は円板状に形成されている。基板の処理空間となる処理室201は、処理容器203とシールキャップ219で構成される。
【0018】
(基板保持部)
基板保持部としてのボート217は、複数枚のウエハ200を多段に保持できるように構成されている。ボート217は、複数枚のウエハ200を保持する複数本の支柱217aを備えている。支柱217aは例えば3本備えられている。複数本の支柱217aはそれぞれ、底板217bと天板217cとの間に架設されている。複数枚のウエハ200が、支柱217aに水平姿勢でかつ、互いに中心を揃えた状態で整列されて菅軸方向に多段に保持されている。天板217cは、ボート217に保持されるウエハ200の最大外径よりも大きくなるように形成されている。
【0019】
支柱217a、底板217b、天板217cの構成材料として、例えば炭化シリコン、酸化アルミニウム(AlO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(SiN)、酸化ジルコニウム(ZrO)等の熱伝導性の良い非金属材料が用いられる。特に熱伝導率が10W/mK以上である非金属材料が好ましい。なお、熱伝導率が問題にならなければ、石英などで形成しても良く、また、金属によるウエハ200へ汚染が問題にならなければ、支柱217a、天板217cは、ステンレス(SUS)等の金属材料で形成しても良い。支柱217a、天板217cの構成材料として金属が用いられる場合、金属にセラミックや、テフロン(登録商標)などの被膜を形成しても良い。
【0020】
ボート217の下部には、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱材料からなる断熱体218が設けられており、第1の加熱部207からの熱がシールキャップ219側へ伝わりにくくなるように構成されている。断熱体218は、断熱部材として機能すると共にボート217を保持する保持体としても機能する。なお、断熱体218は、図示するように円板形状に形成された断熱板が水平姿勢で多段に複数枚設けられたものに限らず、例えば円筒形状に形成された石英キャップ等であっても良い。また、断熱体218は、ボート217の構成部材の1つとして考えても良い。
【0021】
(昇降部)
処理容器203の下方には、ボート217を昇降させて処理容器203の内外へ搬送する昇降部としてのボートエレベータが設けられている。ボートエレベータには、ボートエレベータによりボート217が上昇された際に炉口を封止するシールキャップ219が設けられている。
【0022】
シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させるボート回転機構267が設けられている。ボート回転機構267の回転軸261はシールキャップ219を貫通してボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。
【0023】
(第1の加熱部)
処理容器203の外側には、処理容器203の側壁面を囲う同心円状に、処理容器203内のウエハ200を加熱する第1の加熱部207が設けられている。第1の加熱部207は、ヒータベース206により支持されて設けられている。
図2に示すように、第1の加熱部207は第1〜第4のヒータユニット207a〜207dを備えている。第1〜第4のヒータユニット207a〜207dはそれぞれ、処理容器203内でのウエハ200の積層方向に沿って設けられている。
【0024】
処理容器203内には、加熱部としての第1〜第4のヒータユニット207a〜207d毎に、ウエハ200又は周辺温度を検出する温度検出器として、例えば熱電対等の第1〜第4の温度センサ263a〜263dはそれぞれ、処理容器203とボート217との間にそれぞれ設けられている。なお、第1〜第4の温度センサ263a〜263dはそれぞれ、第1〜第4のヒータユニット207a〜207dによりそれぞれ加熱される複数枚のウエハ200のうち、その中央に位置するウエハ200の温度を検出するように設けられても良い。
【0025】
第1の加熱部207、第1〜第4の温度センサ263a〜263dには、それぞれ、後述するコントローラ121が電気的に接続されている。コントローラ121は、処理容器203内のウエハ200の温度が所定の温度になるように、第1〜第4の温度センサ263a〜263dによりそれぞれ検出された温度情報に基づいて、第1〜第4のヒータユニット207a〜207dへの供給電力を所定のタイミングにてそれぞれ制御し、第1〜第4のヒータユニット207a〜207d毎に個別に温度設定や温度調整を行うように構成されている。また、第1〜第4のヒータユニット207a〜207dのそれぞれの温度を検出する温度検出器として、熱電対で構成される第1の外部温度センサ264a,第2の外部温度センサ264b,第3の外部温度センサ264c,第4の外部温度センサ264dがそれぞれ設けられていてもよい。第1〜第4の外部温度センサ264a〜264dはそれぞれコントローラ121に接続されている。これにより、第1〜第4の外部温度センサ264a〜264dによりそれぞれ検出された温度情報に基づいて、第1〜第4のヒータユニット207a207dのそれぞれの温度が所定の温度に加熱されているかを監視できる。
【0026】
(ガス供給部(ガス供給系))
図1、
図2に示すように、処理容器203と第1の加熱部207との間には、処理容器203の外壁の側部に沿って、処理ガス供給ノズル501aと酸素含有ガス供給ノズル502aが設けられている。処理ガス供給ノズル501と酸素含有ガス供給ノズル502aは、例えば熱伝導率の低い石英等により形成されている。処理ガス供給ノズル501aと酸素含有ガス供給ノズル502aは二重管構造を有していてもよい。処理ガス供給ノズル501aと酸素含有ガス供給ノズル502aの先端(下流端)は、それぞれ処理容器203の頂部から処理容器203の内部に気密に挿入されている。処理容器203の内部に位置する処理ガス供給ノズル501aと酸素含有ガス供給ノズル502aの先端には、それぞれ供給孔501bと供給孔502bが設けられている。供給孔501bと供給孔502bは処理容器203内に供給される処理ガス及び酸素含有ガスを処理容器203内に収容されたボート217の上部に設けられた天板217cに向かって供給するように構成されている。
【0027】
酸素含有ガス供給ノズル502aの上流端にはガス供給管602cが接続されている。さらにガス供給管602cには、上流側から順に、バルブ602a、ガス流量制御部を構成するマスフローコントローラ(MFC)602b、バルブ602d、ガス加熱部602e、が設けられている。酸素含有ガスは例えば、酸素(O
2)ガス、オゾン(O
3)ガス、亜酸化窒素(NO)ガスの少なくとも1つ以上を含むガスが用いられる。本実施形態では、酸素含有ガスとしてO
2ガスを用いる。ガス加熱部602eは、酸素含有ガスを加熱するように設けられており、例えば80〜150℃程度に加熱可能となっている。好ましくは、酸素含有ガスは100℃〜120℃程度に加熱される。酸素含有ガスを加熱することで、処理室201内に供給される処理ガスの加熱を補助することができる。また、処理容器203内の処理ガスの液化を抑制することができる。また、酸素含有ガスの加熱は、第1の加熱部207で行われるように構成しても良い。
【0028】
なお、酸素含有ガス供給ノズル502aから供給するガスとしては、酸素含有ガスに替えて、ウエハ200やウエハ200に形成された膜に対して反応性の低いガスを用いることもできる。たとえば、窒素(N
2)ガス又は、アルゴン(Ar)ガス,ヘリウム(He)ガス,ネオン(Ne)ガスなどの希ガスを用いることができる。また、処理ガス供給ノズル501aと酸素含有ガス供給ノズル502aの少なくとも一方は、処理容器203の下部から処理容器203の内部に気密に挿入され、処理容器203の内壁の側部に沿って頂部まで延びるように設けられても良い。更に、処理ガス供給ノズル501aと酸素含有ガス供給ノズル502aの少なくとも一方は、処理容器203の内壁の側部に沿って頂部まで延びるように設けられる区間に1又は複数のガス噴出孔(ガス供給孔)が設けられる構造とし、この1又は複数のガス噴出孔から、ウエハ200に対して平行な方向にガスが供給されるようにしてもよい。
【0029】
処理ガス供給ノズル501aの上流端には、処理ガスを供給する処理ガス供給管289aの下流端が接続されている。さらに処理ガス供給管289aには、上流側から、液体原料を気化させて処理ガスを生成する処理ガス生成部としての気化器100、ガス濃度計(ガス濃度センサ)500、バルブ289b、ガスポートヒータ285が設けられている。本実施形態では、処理ガスとしてH
2O
2を少なくとも含むガスを用いる。また、処理ガス供給管289aの周囲には、ジャケットヒータ等により構成される配管ヒータが設けられており、配管ヒータにより処理ガス供給管289aが加熱されるように構成されている。
図5に示すように、ガスポートヒータ285は、処理ガス供給ノズル501aと、処理ガス供給管289aとの間の接続部分に設けられ、接続部分を通過する処理ガスを加熱するように構成されている。なお、処理ガス供給ノズル501aが、処理容器203の下部から処理容器203の内部に挿入されるように構成される場合、ガスポートヒータ285は、特に処理ガス供給ノズル501aの挿入部(ポート部)であって、処理容器203の外側に設けるのが好適である。
【0030】
また、気化器100にはさらに、気化器100に対して処理ガスの液体原料(本実施形態では過酸化水素水)を供給する液体原料供給部(液体原料供給系)300と、気化器100に対してキャリアガスを供給するキャリアガス供給部(キャリアガス供給系)が接続されている。
【0031】
液体原料供給部300は、上流側から、液体原料供給源301と、バルブ302と、気化器100へ供給される液体原料の流量を制御する液体流量コントローラ(LMFC)303を備えている。
【0032】
キャリアガス供給部は、キャリアガス供給管601c、キャリアガスバルブ601a,キャリアガス流量制御部としてのMFC601b、キャリアガスバルブ601d、などにより構成される。本実施形態では、キャリアガスとして酸素含有ガスであるO
2ガスが用いられる。但し、キャリアガスとしては、酸素含有ガス(O
2ガスの他、例えばO
3ガス、NOガス、等)を少なくとも1つ以上を含むガスを用いることができる。また、キャリアガスとして、ウエハ200やウエハ200に形成された膜に対して反応性の低いガスを用いることもできる。たとえば、N
2ガス又は、Arガス,Heガス,Neガスなどの希ガスを用いることができる。
【0033】
ここで、少なくとも処理ガス供給ノズル501aと供給孔502aにより処理ガス供給部が構成される。処理ガス供給部には更に、処理ガス供給管289a、バルブ289b、ガス濃度計500、気化器100等を含めるようにしても良い。また、少なくとも酸素含有ガス供給ノズル501aと供給孔501bにより酸素含有ガス供給部が構成される。酸素含有ガス供給部には更に、ガス供給管602c、ガス加熱部602e、バルブ602d、MFC602b、バルブ602a等を含めるようにしても良い。また、処理ガス供給部と酸素含有ガス供給部により、ガス供給部(ガス供給系)が構成される。
【0034】
(気化器)
図3に、気化器100の構成を示す。気化器100は、加熱された部材に液体原料を滴下することで液体原料を気化する滴下法を用いている。気化器100は、加熱される部材としての気化容器101と、気化容器101で構成される気化空間102と、気化容器101を加熱する加熱部としての気化器ヒータ103と、液体原料を気化させて生じた気化ガスを処理ガスとして処理ガス供給管289aへ排気(供給)する排気口104と、気化容器101の温度を測定する熱電対(温度センサ)105と、熱電対105により測定された温度に基づいて、気化器ヒータ103の温度を制御する温度制御コントローラ106と、LMFC303から供給される過酸化水素水を気化容器101内に供給する液体供給部としての滴下ノズル107と、キャリアガス供給管601cから供給されるキャリアガスを気化容器101内に供給するキャリアガス導入口108とで構成されている。
【0035】
気化容器101は、滴下された液体原料が気化容器101の内側表面に到達すると同時に気化するように気化器ヒータ103により加熱されている。また、気化器ヒータ103による気化容器101の加熱効率を向上させることや、気化器100と他のユニットとの断熱可能な断熱材109が設けられている。気化容器101は、液体原料との反応を防止するために、石英やSiCなどで構成されている。気化容器101は、滴下された液体原料の温度や、気化熱により温度が低下する。よって、温度低下を防止するために、熱伝導率が高い材料、例えばSiCで構成されることが望ましい。
【0036】
ここで、過酸化水素水のように沸点の異なる2つ以上の原料が混合された液体原料を加熱して気化させる場合、当該液体原料の沸点より高い温度で加熱した場合であっても、液体原料全体が均一に加熱されないことにより、当該液体原料中に含まれる沸点の低い特定の1つの原料の気化のみが先に進み、他の原料の気化が進まないことがある。その結果、加熱されている液体原料中において他の原料の濃縮が発生し、最終的に気化されたガスの濃度比率にむらが生じる可能性がある。
【0037】
より具体的には、本実施形態で用いる過酸化水素水はH
2O中にH
2O
2を含有する為、その沸点はH
2O
2の濃度によって異なる。例えば、H
2O
2の濃度が34%の過酸化水素水の場合、大気圧中の沸点はおよそ106℃である。ところが、濃度が100%の過酸化水素水の場合は、沸点がおよそ150℃である。そのため、例えば容器に溜めた過酸化水素水を沸騰法で蒸発気化させようとすると、上述の通り、容器中の過酸化水素水が均一に加熱されないことにより、水(H
2O)のみが優先して蒸発し、過酸化水素水中でH
2O
2の濃縮が生じてしまう。
【0038】
従って、本実施形態では、水よりも高い沸点を有する過酸化水素水の沸点よりも高い温度により、加熱面上の過酸化水素水全体を速やかに加熱することにより、過酸化水素の濃縮が生じるのを防止する。より具体的には、例えばH
2O
2の濃度が34%の過酸化水素水を蒸発気化させる場合、濃度が34%の過酸化水素水の沸点である106℃より高い温度まで気化ヒータ103により気化容器101を加熱し、気化容器101の加熱面に当該過酸化水素水を滴下することにより、過酸化水素水の液滴を106℃以上で速やかに加熱して気化を行う。また、H
2O
2の濃縮をより確実に防止するため、濃度100%の過酸化水素水の沸点である150℃より高い温度まで気化容器101を加熱することで過酸化水素水の気化を行ってもよい。
【0039】
しかしながら、H
2O
2は加熱する温度が高くなるほど分解が促進される性質を有しているため、過酸化水素水の加熱はH
2O
2の濃縮を抑制しながらも、可能な限り低温で行う必要がある。特にH
2O
2は150℃を超えると急速に分解が促進される。従って、本実施形態では、所定の濃度の過酸化水素水の沸点より高く、且つH
2O
2の濃縮が起こらない可能な限り低い温度で過酸化水素水を加熱するように、気化ヒータ103の温度が制御される。
【0040】
(排気部)
処理容器203の下方には、処理室201内のガスを排気するガス排気管231の一端が接続されている。ガス排気管231の他端は、ガス濃度計(ガス濃度センサ)600、及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ255を介して、真空ポンプ246(排気装置)に接続されている。処理室201内は、真空ポンプ246で発生する負圧によって排気される。なお、APCバルブ255は、弁の開閉により処理室201の排気および排気停止を行うことができる開閉弁である。また、弁開度の調整により圧力を調整することができる圧力調整弁でもある。また、圧力検出器としての圧力センサ223がAPCバルブ255の上流側に設けられている。このようにして、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう、真空排気するように構成されている。圧力センサ223およびAPCバルブ255には、圧力制御コントローラ224(
図6参照)が電気的に接続されており、圧力制御コントローラ224は、圧力センサ223により検出された圧力に基づいて、処理室201内の圧力が所望の圧力となるよう、APCバルブ255を所望のタイミングで制御するように構成されている。
【0041】
排気部は、ガス排気管231、APCバルブ255などで構成されている。また、排気部には、ガス濃度計600、圧力センサ223などを含めても良い。さらに、真空ポンプ246を排気部に含めても良い。
【0042】
(ガス濃度計(ガス濃度センサ))
処理ガス供給管289aには、気化器100から供給され、処理ガス供給管289aを流れる処理ガスの濃度を測定するガス濃度計500が設けられている。また、ガス排気管231には、処理室201から排気され、ガス排気管231を流れる排気ガスの濃度を測定するガス濃度計600が設けられている。ここで、ガス濃度計500及び600で測定されるガスの濃度(ガス濃度)とは、処理ガス又は排気ガスに含まれる特定のガスの濃度である。特定のガスとは、例えば処理ガスに含まれていてウエハ200に対する基板処理に用いられる反応ガスであり、本実施形態においては、ウエハ200上に形成されたシリコン含有膜等を酸化処理するために用いられるH
2O
2ガスである。すなわち、本実施形態においては、ガス濃度計500は、処理ガス中に含まれるH
2O
2ガスの濃度を測定(検出)する。また、ガス濃度計600は、排気ガス中に含まれるH
2O
2ガスの濃度を測定(検出)する。
【0043】
図4(a)に示すように、ガス濃度計500は、処理ガス供給管289aから導入される処理ガスが通過するセル部540と、セル部540を通過する処理ガスに光線、特に近赤外線を照射する発光部520と、発光部520から照射されてセル部540内の処理ガスを通過した光線を受光する受光部530と、受光部530が受光した光線の分光スペクトルを解析して処理ガス中のH
2O
2ガスの濃度を算出する解析部(ガス濃度算出部)510、を備えている。また同様に、
図4(b)に示すように、ガス濃度計600は、ガス排気管231から導入される排気ガスが通過するセル部640と、セル部640を通過する排気ガスに光線、例えば近赤外線を照射する発光部620と、発光部620から照射されてセル部640内の処理ガスを通過した光線を受光する受光部630と、受光部630が受光した光線の分光スペクトルを解析して排気ガス中のH
2O
2ガスの濃度を算出する解析部(ガス濃度算出部)610、を備えている。解析部510,610はそれぞれ受光部530,630と、例えば光ファイバー等で接続され、受光部530,630で受光した光の分光スペクトルを解析する処理を実行する。当該分析では、H
2O
2ガスを通過した光に固有に現れるスペクトル成分の大きさを評価することにより、セル部540,640を通過した処理ガス又は排気ガス中のH
2O
2ガスの濃度値を算出する。解析部510,610においてそれぞれ算出されたH
2O
2ガスの濃度値のデータは、コントローラ121へ出力される。なお、本実施形態においては、解析部510,610はH
2O
2ガスの濃度値を算出するよう構成されているが、ガスの濃度値そのものではなく、H
2O
2ガスの濃度を示す他のデータを算出するように構成されていてもよい。
【0044】
(第2の加熱部)
反応物としてH
2O
2が用いられ、処理ガスとして、H
2O
2を含有する水溶液である過酸化水素水を気化又はミスト化させて得られるH
2O
2を含むガスを用いた場合、H
2O
2を含むガスが処理容器203内でH
2O
2の気化点よりも低い温度まで冷却されて再液化してしまう場合があった。
【0045】
このようなH
2O
2を含むガスの再液化は、処理容器203内の第1の加熱部207で加熱される領域以外の領域で発生してしまう場合が多い。第1の加熱部207は、上述したように処理容器203内のウエハ200を加熱するように設けられているため、処理容器203内のウエハ200が収容された領域は第1の加熱部207により加熱される。しかしながら、処理容器203内のウエハ200の収容領域以外の領域は、第1の加熱部207では加熱されにくい。その結果、処理容器203内の第1の加熱部207で加熱される領域以外の領域で低温領域が生じ、H
2O
2を含むガスがこの低温領域を通過する際に冷却されて再液化してしまう場合がある。
【0046】
H
2O
2を含むガスが再液化して生じた液体は、処理容器203内の底部(シールキャップ219の上面)に溜まる場合がある。このため、再液化されたH
2O
2を含む液体とシールキャップ219とが反応し、シールキャップ219が損傷を受ける場合がある。また、ボート217を処理容器203外へ搬出するためにシールキャップ219を下降させ、炉口(処理容器203の下端開口)を開放した際、当該液体がシールキャップ219上に溜まっていると、シールキャップ219上の当該液体が炉口から処理容器203外へ落ちる場合がある。このため、処理炉202の炉口周辺部材が損傷を受ける場合があるとともに、作業員等が安全に処理炉202付近に立ち入ることができない場合がある。
【0047】
また、H
2O
2を含むガスが再液化して生じてしまった液体は、処理容器203内に供給される際の過酸化水素水と比べてH
2O
2の濃度が高くなる場合がある。そして、H
2O
2を含むガスが再液化して生じてしまった液体が処理容器203内でさらに気化されてしまい、再気化ガスが発生してしまう場合がある。上述したようにH
2O
2とH
2Oとの気化点が異なり、先にH
2Oが蒸発して排気されるため、再気化ガスは、ウエハ200に供給される際のガスと比べてH
2O
2の濃度が高くなる場合がある。
【0048】
従って、再気化ガスが発生した処理容器203内では、H
2O
2を含むガス(処理ガス)におけるH
2O
2の濃度が不均一になる場合がある。その結果、処理容器203内の複数のウエハ200間で基板処理が不均一になり、基板処理の特性にバラツキが生じやすくなる場合がある。また、ロット間での基板処理が不均一になる場合もある。また、H
2O
2の再液化と再気化とが繰り返されることで、H
2O
2の濃度が高まっていく場合がある。その結果、H
2O
2の高濃度化による爆発や燃焼のおそれが高まる場合がある。
【0049】
そこで、
図2及び
図5に示すように、処理炉202には第2の加熱部280が設けられ、第1の加熱部207で加熱される領域以外の領域を加熱するように構成されている。すなわち、第2の加熱部280が、処理容器203の下部(炉口部周辺)の外側(外周)に、処理容器203の側壁面を同心円状に囲うように設けられている。
【0050】
第2の加熱部280は、排気部へ向かって処理容器203の上側(上流側)から下側(下流側)へ流れるH
2O
2を含むガスを、処理容器203内の下流側(すなわち処理容器203内の断熱体218が収容される領域)で加熱するように構成されている。また、第2の加熱部280は、処理容器203の下端開口を封止するシールキャップ219や、処理容器203の下部、処理容器203内の底部に配設される断熱体218等の処理容器203の下部を構成する部材を加熱するように構成されている。言い換えれば、ボート217が処理室201に装填された際に、底板217bよりも下方に位置するよう、第2の加熱部280を配置する。第2の加熱部280は、例えばランプヒータにより構成される。
【0051】
第2の加熱部280には、後述するコントローラ121が電気的に接続されている。コントローラ121は、処理容器203内での処理ガス(すなわちH
2O
2を含むガス)の液化を抑制できるような温度(例えば100℃から300℃)となるように、第2の加熱部280への供給電力を所定のタイミングにて制御するように構成されている。第2の加熱部280による処理容器203の炉口部の加熱は、少なくとも、処理容器203に処理ガスが供給されている間は継続して行われる。好ましくは、ウエハ200が処理容器203に搬入後から搬出前まで行われる。この様に加熱することによって、炉口部での処理ガスの液化や、乾燥工程までに発生するパーティクルや不純物などが炉口部に付着することを防止することができる。ウエハ200の搬入後から加熱を開始することによって、処理ガス供給前の環境を整える時間を短縮することができる。
【0052】
また、上述の通り、処理ガス供給ノズル501aと、処理ガス供給管289aとの間の接続部分にはガスポートヒータ285が設けられ、接続部分を通過する処理ガスを加熱するように構成されている。ガスポートヒータ285は、処理ガス供給管289aの内部に結露が生じないように所望の温度に制御されている。例えば、50℃〜300℃に制御される。また、ガス排気管231と、処理容器203との間の接続部分にはエキゾーストチューブヒータ284が設けられている。エキゾーストチューブヒータ284は、ガス排気管231の内部に、結露が生じないように、所望の温度に制御されている。例えば、50℃〜300℃に制御される。
【0053】
(制御部)
図6に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0054】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0055】
I/Oポート121dは、上述のLMFC303、MFC601b,602b、バルブ601a,601d,602a,602d,302、APCバルブ255、第1の加熱部207(207a,207b,207c,207d)、第2の加熱部280、第1〜第4の温度センサ263a〜263d、ボート回転機構267、圧力センサ223、温度制御コントローラ106、ガス濃度計500,600、配管ヒータ等に接続されている。
【0056】
CPU121aは、記憶装置121cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU121aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、LMFC303による液体原料の流量調整動作、MFC601b、602bによるガスの流量調整動作、バルブ601a,601d,602a,602d,302、289bの開閉動作、APCバルブ255の開閉調整動作、及び第1〜第4の温度センサ263a〜263dに基づく第1の加熱部207の温度調整動作、第2の加熱部280の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、ボート回転機構267の回転速度調節動作、温度制御コントローラ106を介した気化器ヒータの温度調整動作、配管ヒータの温度調整動作、等を制御するように構成されている。また、ガス濃度計500,600が取得したガス濃度値データについて、後述する解析処理を実行する。
【0057】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0058】
(2)事前処理工程
ここで、基板としてのウエハ200に後述の改質処理が施される前に施される事前処理工程について
図7を用いて説明する。
図7に示すように、事前処理工程では、ウエハ200に対して、ポリシラザン塗布工程T20とプリベーク工程T30が施されている。ポリシラザン塗布工程T20では、塗布装置(不図示)により、ポリシラザンが塗布される。塗布されたポリシラザンの厚さは、ポリシラザンの分子量、ポリシラザン溶液の粘度、コーターの回転数によって調整される。プリベーク工程T30では、ウエハ200に塗布されたポリシラザンから溶剤が除去される。具体的には、70℃〜250℃程度に加熱されることにより溶剤が揮発することにより行われる。加熱は好ましくは150℃程度で行われる。
【0059】
また、ウエハ200は、微細構造である凹凸構造を有し、ポリシラザンを少なくとも凹部(溝)に充填するように供給され、溝内にシリコン含有膜であるポリシラザン塗布膜が形成された基板を用いられる。このウエハ200に、処理ガスとして過酸化水素水の気化ガスであるH
2O
2を含むガスを用いる例について説明する。なお、シリコン含有膜には、シリコンや窒素、水素が含まれており、場合によっては、炭素や他の不純物が混ざっている可能性が有る。なお、微細構造を有する基板とは、シリコン基板に対して垂直方向に深い溝(凹部)、あるいは例えば10nm〜30nm程度の幅の横方向に狭い溝(凹部)等のアスペクト比の高い構造を有する基板をいう。
【0060】
なお、本実施形態における事前処理工程では、上述の基板処理装置10とは別の処理装置(不図示)にウエハ200を搬入し(基板搬入工程T10)、当該処理装置内において上述のポリシラザン塗布工程T20とプリベーク工程T30を実施し、その後ウエハ200を搬出する(基板搬出工程T40)。但し、ポリシラザン塗布工程T20とプリベーク工程T30はそれぞれ別の装置において実施してもよい。
【0061】
(3)基板処理工程
続いて、本実施形態に係る半導体装置の製造工程の一工程として実施される基板処理工程について、
図8を用いて説明する。かかる工程は、上述の基板処理装置10により実施される。本実施形態では、かかる基板処理工程の一例として、処理ガスとしてH
2O
2を含むガスを用い、基板としてのウエハ200上に形成されたシリコン含有膜をSiO膜に改質(酸化)する工程(改質処理工程)を行う場合について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ121により制御される。
【0062】
過酸化水素(H
2O
2)は、水蒸気(水、H
2O)と比較すると、活性化エネルギーが高く、1分子中に含まれる酸素原子の数が多いため酸化力が強い。そのため、処理ガスとしてH
2O
2を含むガスが用いられることで、ウエハ200の溝内に形成された膜の深部(溝の底部)まで酸素原子を到達させることができる。従って、ウエハ200上の膜の表面部と深部との間で改質処理の度合いをより均一にできる。すなわち、ウエハ200に形成された膜の表面部と深部との間でより均一な基板処理を行うことができ、改質処理後のウエハ200の誘電率等を均一にできる。また、改質処理工程を低温で行うことができ、ウエハ200上に形成された回路の性能劣化等を抑制することができる。なお、本実施形態においては、反応物としてのH
2O
2を気化もしくはミスト化したもの(すなわち気体状態のH
2O
2)をH
2O
2ガス又は反応ガスと呼び、少なくともH
2O
2ガス(反応ガス)を含むガスを処理ガスと呼び、H
2O
2を含む液体状態の水溶液を過酸化水素水又は液体原料と呼ぶ。
【0063】
(基板搬入工程(S10))
まず、予め指定された枚数のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータによって持ち上げて処理容器203内(処理室201内)に搬入(ボートロード)する。この状態で、処理炉202の開口部である炉口はシールキャップ219によりシールされた状態となる。
【0064】
(圧力・温度調整工程(S20))
処理容器203内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246を制御して処理容器203内の雰囲気を真空排気する。また、酸素含有ガス供給部(供給孔501b)から酸素含有ガスを処理容器203に供給する。好ましくは、酸素含有ガスをガス加熱部602eで100℃〜120℃に加熱した後に供給する。この際、処理容器203内の圧力は、圧力センサ223で測定し、この測定した圧力に基づきAPCバルブ255の開度をフィードバック制御する(圧力調整)。処理容器203内の圧力は例えば、微減圧状態(約700hPa〜1000hPa)に調整される。
【0065】
処理容器203内に収容されたウエハ200が所望の第1の温度、例えば40℃から100℃となるように第1の加熱部207によって加熱する。この際、処理容器203内のウエハ200が所望の温度となるように、第1の温度センサ263a、第2の温度センサ263b、第3の温度センサ263c、第4の温度センサ263dが検出した温度情報に基づき第1の加熱部207が備える第1のヒータユニット207a、第2のヒータユニット207b、第3のヒータユニット207c、第4のヒータユニット207dへの供給電力をフィードバック制御する(温度調整)。このとき、第1のヒータユニット207a、第2のヒータユニット207b、第3のヒータユニット207c、第4のヒータユニット207dの設定温度は全て同じ温度となるように制御する。更には、処理容器203内(特に処理容器203の下方)で、処理ガスが再液化されない温度となるように、第2の加熱部280を制御する。例えば、100℃〜200℃となるように加熱する。
【0066】
また、ウエハ200を加熱しつつ、ボート回転機構267を作動して、ボート217の回転を開始する。この際、ボート217の回転速度をコントローラ121によって制御する。なお、ボート217は、少なくとも後述する改質処理工程(S30)が終了するまでの間は、常に回転させた状態とする。
【0067】
(改質処理工程(S30))
ウエハ200が所定の第1温度に到達し、ボート217が所望とする回転速度に到達したら、液体原料供給部300から液体原料(過酸化水素水)を気化器100へ供給する。すなわち、バルブ302を開け、LMFC303により流量制御された液体原料を、滴下ノズル107を介して気化容器101内に供給する。気化器100に供給された液体原料は、滴下ノズル107から気化容器101の内側表面の底に滴下される。気化容器101は、気化器ヒータ103によって所望の温度(例えば150〜170℃)に加熱されており、滴下された液体原料(過酸化水素水)の液滴は、気化容器101の内側表面に接触することにより瞬時に加熱されて蒸発し、気体となる。
【0068】
また、バルブ289bを開け、気体になった液体原料(気化ガス)を、処理ガスとして、排気口104、処理ガス供給管289a、バルブ289b、処理ガス供給ノズル501a、処理ガス供給孔501bを介して、処理室201内に収容されたウエハ200に供給する。処理ガスに含まれるH
2O
2ガスは、反応ガスとしてウエハ200の表面のシリコン含有膜と酸化反応することで、当該シリコン含有膜をSiO膜に改質する。
【0069】
処理容器203内に処理ガスを供給しつつ、処理容器203内を真空ポンプ246により排気する。すなわち、APCバルブ255を開け、ガス排気管231を介して処理容器203内から排気された排気ガスを、ガス濃度計600を経由して、真空ポンプ246により排気する。そして所定時間経過後、バルブ289bを閉じ、処理容器203内への処理ガスの供給を停止する。また、さらに所定時間経過後、APCバルブ255を閉じ、処理容器203内の排気を停止する。
【0070】
なお、処理容器203内に処理ガスを供給する際、APCバルブ255を閉じ、処理容器203内を加圧するようにしてもよい。これにより、処理容器203内の処理ガス雰囲気を均一にできる。
【0071】
また、本実施形態では、液体原料として過酸化水素水を気化器100に供給して、H
2O
2ガスを含む処理ガスを処理容器203内に供給することを記載したが、これに限らず、液体原料として例えばオゾン(O
3)を含む液体や、水(H
2O)等を用いることもできる。
【0072】
また、気化器100においてH
2O
2ガスを含む処理ガスを発生させる前に、酸素含有ガス供給ノズル501aと供給孔501bを介して酸素含有ガスを処理容器203内に供給することによって、処理容器203に収容されたウエハ200間での処理均一性を向上させることができる。例えば、酸素含有ガスを供給してない状態で処理ガスを発生させた場合、処理容器203の上部に載置されたウエハ200への処理と処理容器203の下部に載置されたウエハ200への処理が異なるタイミングで始まり、ウエハ200間での処理均一性が低下する可能性が有る。また、異物の発生量が増加し、膜質の制御が困難となる。
【0073】
また、改質処理工程(S30)が終了した後、APCバルブ255を開けたまま処理容器203内を引き続き真空排気すると共に、処理容器203内にパージガスとしてのN
2ガス(不活性ガス)を供給してもよい。パージガスとしては、例えばN
2ガス等の不活性ガスや、Heガス、Neガス、Arガス等の希ガスを用いることができる。これにより、処理容器203内に残留している処理ガスの排出を促すことができる。
【0074】
(乾燥処理工程(S40))
改質処理工程(S30)が終了した後、ウエハ200を、プリベーク工程T30で処理された温度以下の所定の第2温度に昇温させる。第2温度は、上述の第1温度よりも高い温度であって、上述のプリベーク工程T30の温度以下の温度に設定される。例えば、150℃に昇温させる。昇温後、温度を保持して、ウエハ200と処理容器203内を緩やかに乾燥させる。このように乾燥させることにより、ポリシラザン膜から離脱した副生成物であるアンモニア、塩化アンモン、炭素、水素、他、溶媒に起因するアウトガス等の不純物とH
2O
2に起因する不純物を、ウエハ200への再付着を抑制させながらウエハ200の乾燥と異物源の除去を行うことができる。
【0075】
なお、第2温度に昇温させる前もしくは、昇温と同時に、酸素含有ガスの流量を上述の第1流量よりも多い、第2流量にすることが好ましい。例えば、10slm〜40slmとする。第2温度に昇温させる前に酸素含有ガスの流量を多くすることによって、不純物の除去効率を向上させることができる。
【0076】
(ポストベーク工程(S50))
乾燥処理工程(S40)が終了した後、乾燥処理工程よりも高温に昇温し、窒素と酸素とアルゴンの少なくとも1つ以上を含む雰囲気で処理することにより、SiO膜中に残存している水素を除去することができ、水素の少ない良好なSiO膜に改質することができる。ポストベーク工程S50を行うことで、SiO膜の品質を向上させることができるが、高品質の酸化膜質が要求されるデバイス工程(例えばSTI等)以外では、製造スループットを優先させる場合が有り、行わなくても良い。
【0077】
(降温・大気圧復帰工程(S60))
乾燥処理工程(S40)又はポストベーク工程(S50)が終了した後、APCバルブ255を開け、処理容器203内を真空排気することで、処理容器203内に残存するパーティクルや不純物を除去することができる。真空排気後、APCバルブ255を閉じ、処理容器203内の圧力を大気圧に復帰させる。大気圧に復帰させることで、処理容器203内の熱容量が増加させることができ、ウエハ200と処理容器203を均一に加熱することができる。ウエハ200と処理容器203を均一に加熱することで、真空排気で除去できなかったパーティクル、不純物、ウエハ200からのアウトガス、および過酸化水素水に含まれていた残留不純物を除去することができる。処理容器203内の圧力が大気圧になり、所定時間経過した後、所定の温度(例えばウエハ200の挿入温度程度)に降温させる。
【0078】
また、ウエハ200の降温しつつ、第2の加熱部280を降温させる。具体的には、第2の加熱部280への電力供給を停止して降温させる。第2の加熱部280を上述のウエハ200の降温以降に停止することで、ウエハ面内膜質の不均一化や、ボート上下での膜質不均一化を防ぐことができる。さらに、処理容器203内に生じたパーティクル、不純物,ウエハ200からのアウトガス等が炉口部に吸着することを抑制することができる。
【0079】
ウエハ200を降温させつつ、ブロア257を作動させた状態でシャッタ252,254,256を開け、冷却ガス供給管249から、冷却ガスをMFC251により流量制御しながら処理容器203と断熱部材210との間の空間260内に供給しつつ、冷却ガス排気管253から排気してもよい。冷却ガスとしては、N
2ガスのほか、例えばHeガス、Neガス、Arガス等の希ガスや、空気等を単独であるいは混合して用いることができる。これにより、空間260内を急冷させ、空間260内に設けられる処理容器203及び第1の加熱部207を短時間で冷却できる。また、処理容器203内でのウエハ200をより短時間で降温させることができる。
【0080】
なお、シャッタ254,256を閉じた状態で、冷却ガス供給管249からN
2ガスを空間260内に供給し、空間260内を冷却ガスで充満させて冷却した後、ブロア257を作動させた状態でシャッタ254,256を開け、空間260内の冷却ガスを冷却ガス排気管253から排気してもよい。
【0081】
(基板搬出工程(S70))
その後、ボートエレベータによりシールキャップ219を下降させて処理容器203の下端を開口するとともに、処理済みウエハ200をボート217に保持した状態で処理容器203の下端から処理容器203の外部へ搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済みウエハ200はボート217より取り出され(ウエハディスチャージ)、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0082】
(4)処理室内における反応ガス消費量の測定及び制御
続いて、ガス濃度計500,600を用いて、処理室201内において反応ガス(本実施形態ではH
2O
2ガス)の消費量を測定(算出)する手順について説明する。改質処理工程(S30)では、反応ガスとしてのH
2O
2ガスを含む処理ガスを、処理ガス供給管289aを介して処理室201内に供給する。この際、処理ガス供給管289aの途中に設けられるガス濃度計500において、処理ガス供給管289a内を流れる処理ガス中に含まれる反応ガスの濃度が測定される。具体的には、セル部540を通過する処理ガスに対して発光部520から近赤外線を照射し、処理ガス中を通過した近赤外線を受光部530で受光する。受光部530が受光した近赤外線は解析部510に入力される。解析部510では、入力された近赤外線の分光スペクトルを解析して反応ガスを通過した光に固有に現れるスペクトル成分の大きさを評価することにより、セル部540を通過した処理ガス中の反応ガスの濃度を算出する。分光スペクトル解析には公知の一般的な技術を用いることができる。
【0083】
また、改質処理工程(S30)では、真空ポンプ246により処理容器203内の雰囲気を真空排気する。この際、ガス排気管231の途中に設けられるガス濃度計600において、ガス排気管231内を流れる排気ガス中に含まれる反応ガスの濃度が測定される。具体的には、セル部640を通過する処理ガスに対して発光部620から近赤外線を照射し、処理ガス中を通過した近赤外線を受光部630で受光する。受光部630が受光した近赤外線は解析部610に入力される。解析部610では、解析部500と同様に、入力された近赤外線の分光スペクトルを解析し、入力された近赤外線の分光スペクトルを解析して反応ガスを通過した光に固有に現れるスペクトル成分の大きさを評価することにより、セル部640を通過した処理ガス中の反応ガスの濃度を算出する。分光スペクトル解析には、ガス濃度計500と同様に、公知の一般的な技術を用いることができる。解析部510,610においてそれぞれ算出された処理ガス中の反応ガスの濃度値のデータは、例えば所定の時間間隔でコントローラ121へ出力される。
【0084】
コントローラ121では、ガス濃度計500,600において取得されたガス濃度値のデータを取得し、記憶装置121c等へ逐次記録する。また、取得された各ガス濃度値を、入出力装置122を介してユーザへ通知する。コントローラ121は、取得されたガス濃度値に基づいて、処理室201内で消費された反応ガスの量(以下、「反応ガス消費量」と称する)を算出する。具体的には、例えば、ガス濃度計500,600それぞれから取得したガス濃度値の差分値を、反応ガス消費量を示す値として算出する。また、差分値に所定の係数を用いて更に演算したり、別に取得した他のデータを用いて更に演算したりすることにより得られた値を、反応ガス消費量として算出してもよい。算出された反応ガス消費量は、記憶装置121c等へ逐次記録されると共に、入出力装置122を介してユーザへ通知する。算出された反応ガス消費量は、ウエハ200に対する処理速度(反応速度)として記録、通知されてもよい。
【0085】
更に、コントローラ121では、改質処理工程(S30)において反応ガスをウエハ200に供給することを開始した時点からの、算出された反応ガス消費量の累積値(反応ガス累積消費量)を記録装置121c等へ逐次記録されると共に、入出力装置122を介してユーザへ通知する。反応ガス累積消費量を、ウエハ200に対する処理の進行度として記録、通知してもよい。
【0086】
なお、本実施形態では、制御部(制御手段)であるコントローラ121が反応ガス消費量等の算出を行う構成としているが、反応ガス消費量等の算出を行う計算ユニット(計算部)を別に設ける構成としても良い。この場合、計算ユニットはコントローラ121と接続され、コントローラ121により制御される。
【0087】
本実施形態によれば、以下に示す1又は複数の効果を得ることができる。
(a) ガス濃度計500,600を、処理室201への供給側の配管(処理ガス供給管289a)と、排気側の配管(ガス排気管231)のそれぞれに設けることにより、両者で測定された処理ガス中の反応ガスの濃度値に基づいて、処理室201内での反応ガスの消費量を把握することができる。従って、反応ガスの消費量に基づいて、処理室201内での反応ガスとウエハ200との反応量を把握することができる。
【0088】
(b) また、従来は、ウエハ200に対する処理の進行度(本実施形態では、シリコン含有膜とH
2O
2ガスの酸化反応の進行度)がどの程度であるかを把握するためには、例えば、実際に処理が施されたウエハ200上に形成された膜の厚さを測定する方法があった。しかし、基板処理の途中における処理の進行度を把握することができなかったり、直接膜厚を測定する必要があるため手間が掛かったり、また、膜厚が薄い場合には正確な計測が困難であったり、という問題があった。一方、処理ガスの供給開始時点から累積した反応ガス消費量(反応ガス累積消費量)は、一般にウエハ200に対する処理の進行度に比例、又は比例する傾向を有していると考えられる。従って、反応ガス累積消費量を計測することにより、各時点におけるウエハ200に対する処理の進行度を把握することができる。また、各処理ロット間における反応ガス累積消費量を比較することにより、各処理ロット間の処理品質が一定となるように管理することができる。
【0089】
(c) 更に、一定時間当たりの反応ガス消費量は、一般にウエハ200に対する処理速度(本実施形態では、シリコン含有膜とH
2O
2ガスの酸化反応の進行速度)に比例、又は比例する傾向を有していると考えられる。従って、一定時間当たりの反応ガス消費量を測定することにより、ウエハ200に対する処理速度を把握することができる。また、各処理ロット間における一定時間当たりの反応ガス消費量、又はその推移を比較することにより、各処理ロット間の処理品質が一定となるように管理することができる。
【0090】
(d) 更に、反応ガス消費量は、一般に処理容器203内で処理を行うウエハ200の枚数によって増減する。本実施形態によれば、処理ロット単位で処理されるウエハ200の枚数毎に、反応ガスの消費量(一定時間当たりの反応ガス消費量及びその履歴データ)を把握することができる。従って、ウエハ200の枚数に応じて、処理ガスの供給量等の条件を最適化することができる。
【0091】
更に本実施形態では、算出された反応ガス消費量の値に基づいて以下のような処理及び制御を実施する。
【0092】
処理例1:
上述の通り、一定時間当たりの反応ガス消費量を測定することにより、ウエハ200に対する処理速度を把握することができるので、算出された反応ガス消費量に基づいてウエハ200の処理速度をフィードバック制御することができる。例えば、算出された一定時間当たりの反応ガス消費量に基づいて、LMFC303及びMFC601bを制御することにより、気化器100における処理ガス生成量を変化させ、これにより処理室201内に供給する処理ガスの流量を変化させることにより、ウエハ200に対する処理速度を制御する。具体的には、一定時間当たりの反応ガス消費量が所定の値よりも低いと判定された場合、処理ガスの流量を増大させる。また、同様に、一定時間当たりの処理速度が所定の速度値よりも高いと判定した場合、処理ガスの流量を減少させてもよい。
【0093】
処理例2:
一定時間当たりの反応ガス消費量が所定の値以下になった時点で、ウエハ200における反応(本実施形態では、シリコン含有膜とH
2O
2ガスの酸化反応)が収束したものとして、改質処理工程を終了させてもよい。これにより、反応が収束した後も処理ガスを供給している時間を短縮できるので、処理時間を短縮し、スループットを向上させることができる。
【0094】
処理例3:
上述の通り、反応ガス累積消費量を計測することにより、各時点におけるウエハ200に対する処理の進行度を把握することができる。本処理例では、計測された反応ガス累積消費量が所定の値に到達した場合、その時点で改質処理工程を終了する。これにより処理時間を短縮し、スループットを向上させることができる。
【0095】
処理例4:
算出された一定時間当たりの反応ガス消費量が所定の値よりも低いと判定した場合、または所定の値よりも高いと判定した場合、入出力装置122等を用いてアラームを発する。これにより処理室201内における処理に異常が発生した可能性があることをユーザに知らせることができる。
【0096】
処理例5:
改質処理工程が終了した時点における反応ガス累積消費量が所定の値よりも低いと判定した場合、または所定の値よりも高いと判定した場合、入出力装置122等を用いてアラームを発する。これにより、当該処理ロットにおける処理に異常が発生した可能性があることをユーザに知らせることができる。
【0097】
処理例6:
一般に、反応ガス消費量は、処理容器203内で処理を行うウエハ200の枚数によって増減する。本処理例では、処理ロット毎に処理されるウエハ200の枚数毎に最適な処理ガスの供給量を算出する。具体的には、コントローラ121は、処理ロット毎に一定時間当たりの反応ガス消費量の履歴(ログ)を記憶装置121c等に記録する。また、コントローラ121は、処理ロット毎に処理容器203内で処理を行うウエハ200の枚数を入出力装置122又は外部記憶装置123を介して取得する。続いて、コントローラ121は、処理ロット毎に、一定時間当たりの反応ガス消費量の履歴とウエハ200の枚数の対応付けを行う。これにより、ウエハ200の枚数毎の一定時間当たりの反応ガス消費量の履歴データ(パターン)を取得することができる。また、取得されたウエハ200の枚数毎の一定時間当たりの反応ガス消費量の履歴データに基づいて、ウエハ200の処理枚数毎に処理ガスの供給量を変更し、処理ガスの供給量を最適化することができる。例えば、同じ枚数の処理が実行された以前の処理ロットの反応ガス消費量の履歴データを参照し、当該履歴データにおける反応ガス消費量を下回らないように、処理ガスの供給量を制御する。これにより、処理ガスの供給量が不足するのを防止したり、無駄な処理ガスの供給を削減することができる。
【0098】
処理例7:
算出された一定時間当たりの反応ガス消費量の履歴データ(パターン)が、ウエハ200の処理枚数が同じ以前(例えば前回)の処理ロットのものと比べて所定の範囲を超えて異なる場合、入出力装置122等を用いてアラームを発する。これにより処理室201内における処理に異常が発生した可能性があることをユーザに知らせることができる。
【0099】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0100】
上述の実施形態では、処理ガスとしてH
2O
2ガスを含むガスを用いる場合について説明したがこれに限定されるものではない。すなわち、処理ガスは、常温で固体又は液体である原料(反応物)を溶媒に溶解させた溶液(液体状態の反応物)を気化させたガスであればよい。また、原料(反応物)の気化点が溶媒の気化点と異なると、上述の実施形態の効果が得られやすくなる。また、処理ガスである気化ガスは、再液化すると原料の濃度が高くなるものに限らず、再液化すると原料の濃度が低くなるものであってもよい。このような処理ガスであっても、処理容器203内での処理ガスの濃度を均一にできる。
【0101】
また、処理ガスとして過酸化水素ガスを用いる場合に限らず、例えば、水素(H
2)ガス等の水素元素を含むガス(水素含有ガス)と、O
2ガス等の酸素元素を含むガス(酸素含有ガス)を反応させることにより生成される水蒸気(H
2Oガス)を用いてもよい。また、水を加熱して発生させた水蒸気であっても良い。
【0102】
また、液体原料を加熱して気化させることにより処理ガスを生成する場合に限らず、所定の反応ガスを含む処理ガスを処理室内に供給することにより処理室内の基板を処理する場合であれば、同様に本発明を適用することができる。
【0103】
なお、上述の処理ガスに含まれるH
2O
2ガスは、H
2O
2分子単体の状態である場合のほか、いくつかのH
2O
2分子が結合したクラスタ状態である場合も含むことがある。また、過酸化水素水からH
2O
2を含むガスを生成する際に、H
2O
2分子単体まで分裂させる場合だけでなく、いくつかのH
2O
2分子が結合したクラスタ状態まで分裂させる場合もある。また、上記のクラスタが幾つか集まってできた霧(ミスト)状態であっても良い。
【0104】
また、液体原料として、水を気化させたガス(水蒸気)を処理ガスとして用いる場合、ウエハ200上に供給される水蒸気は、H
2O分子単体の状態である場合のほか、いくつかのH
2O分子が結合したクラスタ状態である場合も含むことがある。また、水を液体状態から気体状態にする際、H
2O分子単体まで分裂させる場合だけでなく、いくつかのH
2O分子が結合したクラスタ状態まで分裂させる場合もある。また、上記のクラスタが幾つか集まってできた霧(ミスト)状態であっても良い。
【0105】
また、上述の実施形態では、ポリシラザン膜が形成されたウエハ200を処理する例を示したがこれに限るものでは無い。例えば、シラザン結合(−Si−N−)を有する膜が形成されたウエハ200を処理する場合にも本発明を適用することができる。また、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ヘキサメチルシクロトリシラザン(HMCTS)、ポリカルボシラザン、ポリオルガノシラザンを用いた塗布膜に対する処理に本発明を適用することもできる。
【0106】
また、上述では、シラザン結合を有する膜がスピンコートされ、プリベークされたウエハ200を処理する例を示したが、これに限るものでは無く、CVD法で形成されプリベークされてないシリコン含有膜、例えば、モノシラン(SiH
4)ガス又は、トリシリルアミン(TSA)ガスなどのシリコン原料を用いたCVD法によってシリコン含有膜であっても同様に酸化させることができる。CVD法によるシリコン含有膜の形成方法としては、特に流動性CVD法を用いることができる。流動性CVD法により、例えばアスペクト比の大きいギャップをシリコン含有膜で充填し、充填されたシリコン含有膜に対して本発明における酸化処理やアニール処理を行うことができる。
【0107】
上述の実施形態では、縦型処理炉を備える基板処理装置について説明したがこれに限らず、例えば、枚葉式、Hot Wall型、Cold Wall型の処理炉を有する基板処理装置や、処理ガスを励起させてウエハ200を処理する基板処理装置に本発明を適用してもよい。
【0108】
上述の本実施形態では、ガス濃度計は上述の構成及び分析方法によりH
2O
2ガスの濃度値を取得するが、他の公知の技術を用いてH
2O
2ガスの濃度値を取得する場合でも、本実施形態における上述の効果を得ることができる。
【0109】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0110】
<付記1>
一態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内へ処理ガスを供給する処理ガス供給配管と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気配管と、
前記処理ガス供給配管内の前記処理ガスに含まれる反応ガスの濃度を検知(測定)する第1のガス濃度センサと、
前記排気配管内の排気ガス中に含まれる前記反応ガスの濃度を検知(測定)する第2のガス濃度センサと、
を備える基板処理装置、が提供される。
【0111】
<付記2>
付記1に記載の装置であって好ましくは、
前記第1のガス濃度センサが検知したガス濃度を示す第1の値(又は第1のガス濃度値)と、前記第2のガス濃度センサが検知したガス濃度を示す第2の値(又は第2のガス濃度値)を取得するよう構成された制御部(コントローラ)を備える。
【0112】
<付記3>
付記2に記載の装置であって好ましくは、
前記制御部は、前記第1の値と前記第2の値に基づいて、前記処理室内で消費された前記反応ガスの量を算出するよう構成される。
【0113】
<付記4>
付記3に記載の装置であって好ましくは、
前記処理ガス供給配管に設けられて、前記処理室への前記処理ガスの供給及び遮断を切り替えるバルブを更に備え、
前記制御部は、前記バルブを制御して前記処理室への前記処理ガスの供給を開始した後、算出された前記処理室内で消費された前記反応ガスの量の累積値を算出するよう構成される。
【0114】
<付記5>
付記3に記載の装置であって好ましくは、
前記制御部は、前記第1の値と前記第2の値の差分に基づいて、前記処理室内で消費された前記反応ガスの量を算出するよう構成される。
【0115】
<付記6>
付記3に記載の装置であって好ましくは、
前記制御部は、前記第1の値と前記第2の値の差分を、前記処理室内で消費された前記反応ガスの量として算出するよう構成される。
【0116】
<付記7>
付記1乃至6のいずれかに記載の装置であって好ましくは、
過酸化水素(H
2O
2)ガスを前記反応ガスとして含む前記処理ガスを生成し、前記処理ガス供給配管へ供給する処理ガス生成部を備える。
【0117】
<付記8>
付記1乃至7に記載の装置であって好ましくは、
過酸化水素水(H
2O
2水溶液)を気化させて前記処理ガスを生成し、前記処理ガスを前記処理ガス供給配管へ供給するよう構成された気化器を更に備える。
【0118】
<付記9>
付記2乃至8のいずれかに記載の装置であって好ましくは、
前記第1のガス濃度センサは、前記処理ガスが通過するセルと、前記セル内を通過する前記処理ガスに近赤外線を照射する発光部と、前記処理ガスに照射された前記近赤外線を受光する受光部と、前記受光部で受光した光の分光スペクトルに基づいてガス濃度を示す前記第1の値(又は前記第1のガス濃度値)を算出する算出部と、を備える。
【0119】
<付記10>
他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内へ処理ガスを供給する処理ガス供給配管と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気配管と、
前記処理ガス供給配管内の前記処理ガスに含まれる反応ガスの濃度を検知(測定)する第1のガス濃度センサと、
前記排気配管内の排気ガス中に含まれる前記反応ガスの濃度を検知(測定)する第2のガス濃度センサと、
を備える基板処理装置を用いて前記基板を処理する工程を有し、
前記基板を処理する工程は、
前記基板を前記反応室内に搬入する工程と、
前記処理ガス供給配管から前記処理室内へ前記処理ガスを供給するとともに前記処理室内の雰囲気を排気する工程と、
前記第1のガス濃度センサ及び前記第2のガス濃度センサからそれぞれ、ガス濃度を示す第1の値(又は第1のガス濃度値)とガス濃度を示す第2の値(又は第2のガス濃度値)を取得し、取得された前記第1の値と前記第2の値に基づいて、前記処理室内で消費された前記反応ガスの量を算出する工程と、
を含む半導体装置の製造方法、又は基板処理方法が提供される。
【0120】
<付記11>
付記10に記載の方法であって好ましくは、
前記反応ガスは過酸化水素(H
2O
2)ガスである。
【0121】
<付記12>
付記11に記載の方法であって好ましくは、
前記基板を前記反応室内に搬入する工程では、表面にシラザン結合を有するシリコン含有膜が形成された前記基板を前記反応室内に搬入する。
【0122】
<付記13>
付記11に記載の方法であって好ましくは、
前記基板を前記反応室内に搬入する工程では、表面に流動性CVD法により形成された酸化シリコン膜が形成された前記基板を前記反応室内に搬入する。
【0123】
<付記14>
更に他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内へ処理ガスを供給する処理ガス供給配管と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気配管と、
前記処理ガス供給配管内の前記処理ガスに含まれる反応ガスの濃度を検知(測定)する第1のガス濃度センサと、
前記排気配管内の排気ガス中に含まれる前記反応ガスの濃度を検知(測定)する第2のガス濃度センサと、
前記第1のガス濃度センサが検知したガス濃度を示す第1の値(又は第1のガス濃度値)と、前記第2のガス濃度センサが検知したガス濃度を示す第2の値(又は第2のガス濃度値)を取得する制御部(コントローラ)と、
を備える基板処理装置を制御して、前記基板を処理する所定の手順をコンピュータに実行させるプログラム、又は当該プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体であって、
前記所定の手順は、
前記処理ガス供給配管から前記基板が収容された前記反応室内へ前記処理ガスを供給させるとともに、前記処理室内の雰囲気を排気させる手順と、
前記第1のガス濃度センサ及び前記第2のガス濃度センサからそれぞれ、ガス濃度を示す第1の値(又は第1のガス濃度値)とガス濃度を示す第2の値(又は第2のガス濃度値)を前記制御部に取得させる手順と、
を含むプログラム、又は当該プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0124】
<付記15>
付記14に記載のプログラム、又は記録媒体であって好ましくは、
前記所定の手順は、取得された前記第1の値と前記第2の値に基づいて、前記処理室内で消費された前記反応ガスの量を前記制御部に算出させる手順を更に含む。