特許第6457192号(P6457192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6457192ホール起電力信号処理装置、電流センサ及びホール起電力信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457192
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】ホール起電力信号処理装置、電流センサ及びホール起電力信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20190110BHJP
【FI】
   G01R15/20 A
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-73398(P2014-73398)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194450(P2015-194450A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】野平 隆二
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−224958(JP,A)
【文献】 特表2001−521152(JP,A)
【文献】 特開2013−140133(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0099781(US,A1)
【文献】 特開2011−149766(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/123144(WO,A1)
【文献】 特許第6265419(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を検出する検出用ホール素子と、
前記検出用ホール素子に供給される駆動電流の流れる方向を切替えるスイッチ回路と、
前記検出用ホール素子の磁場検出の感度を調整する複数の感度調整用ホール素子と、
複数の前記感度調整用ホール素子を各々囲んで配置される複数の内蔵コイルと、
前記感度調整用ホール素子が生じるホール起電力に応じて前記駆動電流を生成し、生成された前記駆動電流を前記検出用ホール素子に供給する駆動電流生成回路と、を備え、
前記スイッチ回路は、前記検出用ホール素子を流れる前記駆動電流の方向を、少なくとも、第1方向と、該第1方向と異なる第2方向の2方向に切り替え、
複数の前記感度調整用ホール素子は、前記第1方向に前記駆動電流が流れる第1感度調整用ホール素子と、前記第2方向に前記駆動電流が流れる第2感度調整用ホール素子と、を含み、
前記検出用ホール素子は、前記第1感度調整用ホール素子と前記第2感度調整用ホール素子との間に配置されるホール起電力信号処理装置。
【請求項2】
前記検出用ホール素子及び前記感度調整用ホール素子は、複数の端子を有し、前記駆動電流の流れる方向は、前記端子の組合せによって決定する請求項1に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項3】
複数の端子を有し、磁場を検出する検出用ホール素子と、
前記検出用ホール素子が有する複数の前記端子において、駆動電流が入力される入力端子を切替えるスイッチ回路と、
複数の端子を有し、前記検出用ホール素子の磁場検出の感度を調整する少なくとも四つの感度調整用ホール素子と、
複数の前記感度調整用ホール素子を各々囲んで配置される複数の内蔵コイルと、
前記感度調整用ホール素子が生じるホール起電力に応じて前記駆動電流を生成し、生成された前記駆動電流を前記検出用ホール素子に供給する駆動電流生成回路と、を備え、
前記検出用ホール素子が有する複数の前記端子及び前記感度調整用ホール素子が有する複数の前記端子は、第1端子及び該第1端子と対向する第1対向端子を含む第1端子対、並びに第2端子及び該第2端子と対向する第2対向端子を含む第2端子対を含み、
前記スイッチ回路は、複数の前記端子のうちの前記第1端子と前記第2端子とを切替えていずれか一方を前記入力端子とし、
前記感度調整用ホール素子において、前記駆動電流が前記第1端子対間または前記第2端子対間を流れ、
前記検出用ホール素子は、複数の前記感度調整用ホール素子のうちの二つの感度調整用ホール素子の間であり、且つ前記複数の前記感度調整用ホール素子のうちの他の二つの感度調整用ホール素子の間に配置されるホール起電力信号処理装置。
【請求項4】
複数の前記感度調整用ホール素子は、第1感度調整用ホール素子、第2感度調整用ホール素子、第3感度調整用ホール素子及び第4感度調整用ホール素子を含み、
前記検出用ホール素子及び前記感度調整用ホール素子は、前記第1端子と、前記第1端子と対向する第3端子と、前記第2端子と、前記第2端子と対向する第4端子と、を有し、
前記スイッチ回路は、少なくとも前記第1端子と前記第2端子とを切替えて、いずれか一方を前記入力端子とし、
前記第1感度調整用ホール素子においては、前記第1端子から前記駆動電流が供給され、
前記第2感度調整用ホール素子においては、前記第2端子から前記駆動電流が供給され、
前記第3感度調整用ホール素子においては、前記第3端子から前記駆動電流が供給され、
前記第4感度調整用ホール素子においては、前記第4端子から前記駆動電流が供給される請求項3に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項5】
複数の前記感度調整用ホール素子は、第1感度調整用ホール素子、第2感度調整用ホール素子、第3感度調整用ホール素子及び第4感度調整用ホール素子を含み、
前記検出用ホール素子及び前記感度調整用ホール素子は、前記第1端子と、前記第1端子と対向する第3端子と、前記第2端子と、前記第2端子と対向する第4端子と、を有し、
前記スイッチ回路は、前記第1端子、前記第2端子、前記第3端子及び前記第4端子を切替えて、いずれか一つを前記入力端子とし、
前記第1感度調整用ホール素子においては、前記第1端子から前記駆動電流が供給され、
前記第2感度調整用ホール素子においては、前記第2端子から前記駆動電流が供給され、
前記第3感度調整用ホール素子においては、前記第3端子から前記駆動電流が供給され、
前記第4感度調整用ホール素子においては、前記第4端子から前記駆動電流が供給される請求項3に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項6】
前記検出用ホール素子及び前記感度調整用ホール素子の複数の前記端子は、前記第1端子、前記第2端子、前記第3端子、前記第4端子の順で円周に沿って配置され、
前記スイッチ回路は、前記検出用ホール素子の前記端子を、前記第1端子、前記第2端子、前記第3端子、前記第4端子の順に切替える、または、前記第1端子、前記第2端子、前記第4端子、前記第3端子の順に切替える、
請求項5に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項7】
前記内蔵コイルは、
前記第1感度調整用ホール素子の周囲を取り囲む第1磁場発生コイルと、
前記第2感度調整用ホール素子の周囲を取り囲む第2磁場発生コイルと、
前記第3感度調整用ホール素子の周囲を取り囲む第3磁場発生コイルと、
前記第4感度調整用ホール素子の周囲を取り囲む第4磁場発生コイルと、を含む請求項4から6のいずれか一項に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項8】
前記第1感度調整用ホール素子、前記第2感度調整用ホール素子、前記第3感度調整用ホール素子及び前記第4感度調整用ホール素子は、前記検出用ホール素子を中央に、4回対称の位置に配置されている請求項4から7のいずれか一項に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項9】
前記検出用ホール素子と、前記第1感度調整用ホール素子、前記第2感度調整用ホール素子、前記第3感度調整用ホール素子及び前記第4感度調整用ホール素子とにおいて、前記第1端子、前記第2端子、前記第3端子及び前記第4端子の向きが同じである請求項4から8のいずれか一項に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項10】
前記検出用ホール素子は、前記第1感度調整用ホール素子及び前記第2感度調整用ホール素子それぞれとの距離が同一となる位置に配置される請求項1または2に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項11】
チョッパクロック信号を生成するチョッパクロック信号生成回路を備え、
前記スイッチ回路は、前記チョッパクロック信号にしたがって前記駆動電流の流れる方向を切替える請求項1、2、10のいずれか一項に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項12】
前記第1感度調整用ホール素子及び第2感度調整用ホール素子の各ホール起電力から感度調整信号を生成する感度調整信号生成回路をさらに有し、前記駆動電流生成回路は、前記感度調整信号に基づいて前記駆動電流を生成する請求項1または2に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項13】
前記第1感度調整用ホール素子から第4感度調整用ホール素子の各ホール起電力から感度調整信号を生成する感度調整信号生成回路をさらに有し、前記駆動電流生成回路は、前記感度調整信号に基づいて前記駆動電流を生成する請求項4から9のいずれか一項に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項14】
前記検出用ホール素子は、前記複数の前記感度調整用ホール素子のうちの二つの感度調整用ホール素子それぞれとの距離が同一となり、且つ前記他の二つの感度調整用ホール素子それぞれとの距離が同一となる位置に配置される請求項3から9のいずれか一項に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項15】
前記検出用ホール素子と、前記感度調整用ホール素子は、隣接して配置される請求項1から14のいずれか一項に記載のホール起電力信号処理装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のホール起電力信号処理装置を備えた電流センサ。
【請求項17】
第1端子、第2端子、第3端子及び第4端子を備え、外部磁場を検出する検出用ホール素子に、少なくとも、第1方向と、第1方向と異なる第2方向の2方向に駆動電流を流すステップと、
第1端子、第2端子、第3端子及び第4端子を備え、前記検出用ホール素子に隣接して該検出用ホール素子を挟んで両側に配置された第1感度調整用ホール素子及び第2感度調整用ホール素子のうち、前記第1感度調整用ホール素子に駆動電流を第1方向に流し、前記第2感度調整用ホール素子に駆動電流を前記第1方向と異なる第2方向に流すステップと、
前記第1感度調整用ホール素子及び前記第2感度調整用ホール素子の周囲に配置された内蔵コイルにコイル電流を流すステップと、
前記第1感度調整用ホール素子が出力したホール起電力及び前記第2感度調整用ホール素子が出力したホール起電力から感度調整信号を生成するステップと、
前記感度調整信号に基づいて前記検出用ホール素子に流す前記駆動電流を制御するステップと、
を含むホール起電力信号処理方法。
【請求項18】
第1端子、該第1端子に対向する第3端子、第2端子及び該第2端子に対向する第4端子を備えた検出用ホール素子において、駆動電流が供給される端子を少なくとも前記第1端子と前記第2端子とに切替えるステップと、
前記第1端子、前記第2端子、前記第3端子及び前記第4端子を備え、前記検出用ホール素子に隣接して該検出用ホール素子を挟んで両側に配置された第1感度調整用ホール素子及び第2感度調整用ホール素子のうち、前記第1感度調整用ホール素子の前記第1端子または前記第3端子から駆動電流を供給し、前記第2感度調整用ホール素子の前記第2端子または前記第4端子から駆動電流を供給するステップと、
前記第1感度調整用ホール素子及び前記第2感度調整用ホール素子の周囲に配置された内蔵コイルにコイル電流を流すステップと、
前記第1感度調整用ホール素子が出力したホール起電力及び前記第2感度調整用ホール素子が出力したホール起電力から感度調整信号を生成するステップと、
前記感度調整信号に基づいて前記検出用ホール素子に流す前記駆動電流を制御するステップと、
を含むホール起電力信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホール起電力信号処理装置、電流センサ及びホール起電力信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサとしては、ホール素子を使った構成が公知である。磁気センサは、磁石の位置の検出、近接センサ、リニア位置センサ及び回転角センサ等に用いられるばかりでなく、電流量を非接触で測定する電流センサにも使用されている。なお、電流量の測定は、電流導体を流れる電流によって誘起される磁場強度を検出することによって行われる。
電流センサのうち、特にモータのインバータ電流の検出に使用される電流センサには、モータ制御を効率的に行うため、高い周波数でスイッチングするインバータ電流を高精度に検出することが求められている。
【0003】
ホール素子は、入力された磁束に応じたホール起電力信号を発生する磁電変換機能を有するため、磁気センサとして広く用いられている。しかし、ホール素子は、基板からの応力や温度の変化等によって磁気感度が変動する。ホール素子の磁気感度の変動を抑えるため、磁気感度変動の補正や調整を行う技術が公知である。ホール素子の磁気感度を調整する公知の磁気センサは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、磁気感知素子の感度を直接的、または間接的に測定し、測定された磁気センサの感度を調整する回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−224958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気検出用のホール素子を備えた磁気センサでは、ホール素子により外部磁場を検出する際に、駆動電流を流す向きを切り替えて磁気信号(ホール起電力信号)をチョッパ周波数で変調し、磁気信号を処理することが行われていた。しかしながら、特許文献1に記載の発明は、ホール素子の磁気感度の調整にあたり、電流を流す方向を考慮していない。このため、特許文献1に記載の発明は、上記処理において、充分高い精度を得ることができなかった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、ホール素子の感度を高い精度で調整することができるホール起電力信号処理装置、電流センサ及びホール起電力信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明の一態様のホール起電力信号処理装置は、磁場を検出する検出用ホール素子と、検出用ホール素子に供給される駆動電流の流れる方向を切替えるスイッチ回路と、検出用ホール素子の磁場検出の感度を調整する複数の感度調整用ホール素子と、複数の感度調整用ホール素子を各々囲んで配置される複数の内蔵コイルと、感度調整用ホール素子が生じるホール起電力に応じて駆動電流を生成し、生成された駆動電流を検出用ホール素子に供給する駆動電流生成回路と、を備え、スイッチ回路は、検出用ホール素子を流れる駆動電流の方向を、少なくとも、第1方向と、該第1方向と異なる第2方向の2方向に切り替え、複数の感度調整用ホール素子は、第1方向に駆動電流が流れる第1感度調整用ホール素子と、第2方向に駆動電流が流れる第2感度調整用ホール素子と、を含み、検出用ホール素子は、第1感度調整用ホール素子と第2感度調整用ホール素子との間に配置される。
【0008】
また、本発明の一態様のホール起電力信号処理装置は、複数の端子を有し、磁場を検出する検出用ホール素子と、検出用ホール素子が有する複数の端子において、駆動電流が入力される入力端子を切替えるスイッチ回路と、複数の端子を有し、検出用ホール素子の磁場検出の感度を調整する少なくとも四つの感度調整用ホール素子と、複数の感度調整用ホール素子を各々囲んで配置される複数の内蔵コイルと、感度調整用ホール素子が生じるホール起電力に応じて駆動電流を生成し、生成された駆動電流を検出用ホール素子に供給する駆動電流生成回路と、を備え、検出用ホール素子が有する複数の端子及び感度調整用ホール素子が有する複数の端子は、第1端子及び該第1端子と対向する第1対向端子を含む第1端子対、並びに第2端子及び該第2端子と対向する第2対向端子を含む第2端子対を含み、スイッチ回路は、複数の端子のうちの第1端子と第2端子とを切替えていずれか一方を入力端子とし、感度調整用ホール素子において、駆動電流が第1端子対間または第2端子対間を流れ、検出用ホール素子は、複数の感度調整用ホール素子のうちの二つの感度調整用ホール素子の間であり、且つ複数の感度調整用ホール素子のうちの他の二つの感度調整用ホール素子の間に配置される。
【0009】
また、本発明の一態様の電流センサは、請求項1から14のいずれか一項に記載のホール起電力信号処理装置を備える。
また、本発明の一態様のホール起電力信号処理方法は、第1端子、第2端子、第3端子及び第4端子を備え、外部磁場を検出する検出用ホール素子に、少なくとも、第1方向と、第1方向と異なる第2方向の2方向に駆動電流を流すステップと、第1端子、第2端子、第3端子及び第4端子を備え、検出用ホール素子に隣接して検出用ホール素子を挟んで両側に配置された第1感度調整用ホール素子及び第2感度調整用ホール素子のうち、第1感度調整用ホール素子に駆動電流を第1方向に流し、第2感度調整用ホール素子に駆動電流を第1方向と異なる第2方向に流すステップと、第1感度調整用ホール素子及び第2感度調整用ホール素子の周囲に配置された内蔵コイルにコイル電流を流すステップと、第1感度調整用ホール素子が出力したホール起電力及び第2感度調整用ホール素子が出力したホール起電力から感度調整信号を生成するステップと、感度調整信号に基づいて検出用ホール素子に流す駆動電流を制御するステップと、を含む。
【0010】
また、本発明の一態様のホール起電力信号処理方法は、第1端子、該第1端子に対向する第3端子、第2端子及び該第2端子に対向する第4端子を備えた検出用ホール素子において、駆動電流が供給される端子を少なくとも第1端子と第2端子とに切替えるステップと、第1端子、第2端子、第3端子及び第4端子を備え、検出用ホール素子に隣接して検出用ホール素子を挟んで両側に配置された第1感度調整用ホール素子及び第2感度調整用ホール素子のうち、第1感度調整用ホール素子の第1端子または第3端子から駆動電流を供給し、第2感度調整用ホール素子の第2端子または第4端子から駆動電流を供給するステップと、第1感度調整用ホール素子及び第2感度調整用ホール素子の周囲に配置された内蔵コイルにコイル電流を流すステップと、第1感度調整用ホール素子が出力したホール起電力及び第2感度調整用ホール素子が出力したホール起電力から感度調整信号を生成するステップと、感度調整信号に基づいて検出用ホール素子に流す前記駆動電流を制御するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検出用ホール素子において駆動電流が流れる方向と感度調整用ホール素子において駆動電流が流れる方向とを対応させている。このため、検出用ホール素子において駆動電流が流れる方向がホール起電力に及ぼす影響を感度調整用ホール素子において吸収することができる。したがって、本発明は、ホール素子の感度を高い精度で調整することができるホール起電力信号処理装置、電流センサ及びホール起電力信号処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】公知の対称型ホール素子の構成を説明するための図である。
図2】公知の対称型ホール素子の他の構成を説明するための図である。
図3】ホール素子において行われる公知のチョッパ駆動を説明するための図である。
図4図3(a)、(b)に示したホール素子において発生する信号波形を示す図である。
図5図3(a)、(b)に示したホール素子において発生する電圧信号の信号スペクトルを示す図である。
図6】チョッパ駆動するホール素子のホール起電力信号処理装置を処理する回路を例示した図である。
図7A図6に示したホール素子の駆動を詳細に説明するための図である。
図7B図6に示したホール素子の駆動を詳細に説明するための他の図である。
図8】本発明の一実施形態のホール起電力信号処理装置を説明するための図である。
図9】本発明の一実施形態の電流センサの感度を調整するために用いられる内蔵コイルを説明するための図である。
図10】本発明の一実施形態の検出用ホール素子と感度調整用ホール素子との配置を例示した図である。
図11】本発明の一実施形態の駆動電流の切替えを概念的に示した図である。
図12】本発明の一実施形態の検出用ホール素子と感度調整用ホール素子との配置の他の例を示した図である。
図13図12に示した配線の他の構成を例示した図である。
図14】本発明の一実施形態の検出用ホール素子と感度調整用ホール素子との配置の他の例を示した図である。
図15図12に示した配置例において検出用ホール素子、感度調整用ホール素子を傾けて配置した例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態では、ホール起電力信号処理装置の構成に先だって、ホール素子について説明する。
[ホール素子]
磁電変換機能を有するホール素子としては、主としてSpinning Current Methodを適用することが可能な、いわゆる対称型ホール素子がある。
図1図2は、対称型ホール素子の構成を説明するための図である。図1に示した対称型ホール素子10は、ホール素子電源端子12、14、ホール起電圧出力端子11、13が設けられている。ホール素子電源端子12とホール素子電源端子14とは互いに対向して配置され、ホール起電圧出力端子11とホール起電圧出力端子13とは互いに対向して配置されている。
【0014】
図2は、Popovicらによって考案された十字型形状の対称型ホール素子の構成を説明するための図である。図2に示した対称型ホール素子20は、4つの凸部の各々には、少なくとも4つの端子が、互いに対向して位置するように設けられている。
すなわち、ホール素子電源端子22、24、ホール起電圧出力端子21、23が設けられている。ホール素子電源端子22とホール素子電源端子24とは、互いに対向して配置され、ホール起電圧出力端子21とホール起電圧出力端子23とは互いに対向して配置されている。
【0015】
図1及び図2に示した対称型ホール素子10、20は、ホール素子電源端子の対とホール起電圧出力端子の対の配置を入れ替えても幾何学的形状は同一となることを意味し、換言すれば、対称型ホール素子とは、全体の形状が中心点(図示せず)を通る軸を回転軸として4回回転対称である(4回対称)ホール素子を意味する。
次に、ホール素子において行われる公知のチョッパ駆動について説明する。
【0016】
[チョッパ駆動]
図3(a)、(b)は、ホール素子のチョッパ駆動について説明するための図である。図3(a)、(b)に示した例では、チョッパクロック信号の位相(以下、「チョッパクロック位相」と記す)がφ1とφ2との2値の間で切り替わるたび、ホール素子をバイアスする駆動電流の向きを0度方向と90度方向とに切り替える。このような動作により、図3(a)、(b)に示した回路は、ホール起電力を検出する。この際、図3中にBで示した方向の磁束が検出される。
【0017】
図3(a)は、チョッパクロック位相がφ1であって、駆動電流の向きが0度の状態のホール素子を示している。図3(b)は、チョッパクロック位相がφ2であって、駆動電流の向きが90度の状態のホール素子を示している。ホール素子は、抵抗R1、R2、R3、R4の4つの抵抗を有する4端子の素子にモデル化されたホール素子である。ホール素子4の各端子を、図3において、端子c1、端子c2、端子c3、端子c4とする。端子c1と端子c3とは対向して配置され、端子c2と端子c4とは対向して配置される。
【0018】
図3(a)、(b)に示したホール素子において、抵抗R1、抵抗R2、抵抗R3、抵抗R4の値は固定値でない場合がある。例えば、ホール素子4における抵抗が半導体基板中に形成されたウェルである場合、半導体製造時のプロセス勾配によってホール素子4の内部に不純物濃度の濃淡分布が発生する。このため、端子c1、c2、c3、c4のうち、いずれの端子からホール素子に駆動電流が供給されるかにより、ホール素子(Nウェル)内部での電位分布や空乏層の発生状況が変化する。
【0019】
以上のことから、ホール素子における抵抗R1、抵抗R2、抵抗R3、抵抗R4の値は、駆動電流が供給される端子の位置によって変化する。
図3(a)、(b)において、チョッパクロック位相がφ1(ホール素子の駆動方向は0度)のときと、チョッパクロック位相がφ2(ホール素子の駆動方向は90度)の時に測定される電圧信号Vhall(φ1)とVhall(φ2)は、数式1のように、ホール素子を使った磁気センサの検出対象となる磁束Bに対応したホール起電力信号Vsig(B)とホール素子のオフセット電圧Vos(Hall)の和として表される。
【0020】
ここで、チョッパクロック位相にしたがって、ホール素子のバイアス電流の方向を0度と90度の間で周期的に切替えることによって、検出対象の磁場に対応したホール起電力信号Vsig(B)の極性を反転することができる。このため、チョッパ駆動は、Vsig(B)をチョッパクロック信号の周波数f_chopに周波数変調することができる。一方で、ホール素子のオフセット電圧Vos(Hall)に関しては、ホール素子の駆動方向を0度と90度の間で切替えても同じ極性の値となるため、Vos(Hall)はチョッパクロック信号による周波数変調を受けない。
【0021】
【数1】
【0022】
図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)は、上述した図3(a)、(b)に示したホール素子において発生する信号波形を示す図である。図4(a)はチョッパクロック信号を示し、図4(b)はチョッパクロック位相を示す。また、図4(c)は、ホール素子の駆動方向を示し、図4(d)は、ホール素子から出力される電圧信号Vhallを示している。チョッパクロック位相φ1、φ2にしたがって、ホール素子の駆動電流の方向を0度と90度の間で切替える場合、ホール素子において発生する電圧信号Vhallは、図4(a)から図4(d)に示すような波形となる。
【0023】
図5は、ホール素子において発生する電圧信号Vhallの信号スペクトルを示す図である。ホール素子において発生される信号のスペクトルは、図5に示すようなスペクトルとなることから、検出対象の磁束に対応したホール起電力信号Vsig(B)とホール素子のオフセット電圧Vos(Hall)は、周波数領域において分離されることが解る。また、ホール起電力信号を処理する後段の回路のオフセット成分もDCであるため、チョッパ周波数で変調された磁気信号と分離することができる。
【0024】
図6は、チョッパ駆動するホール素子を有するホール起電力信号処理装置を処理する回路を例示した図である。図7(a)、図7(b)、図7(c)、図7(d)は、図6に示した回路が、ホール素子をバイアスする駆動電流の向きを切替えながらホール起電力を検出する動作を説明するための図である。なお、図7(a)から図7(d)に示した動作では、チョッパクロック位相がφ1、φ2、φ3、φ4の4つの値の間で切り替えられ、チョッパクロック位相の切替えに対応して駆動電流の向きが0度方向、90度方向、270度方向、180方向と切り替えられる。
【0025】
図6に示した回路は、ホール素子4、チョッパクロック生成回路61、駆動電流生成回路62、スイッチ回路63及び信号処理回路64を備えている。図7(a)から図7(d)に示すように、図6に示した信号処理回路64は、例えば、増幅器641と、復調用スイッチ回路642とによって構成される。
ホール素子4は、4つの端子c1、c2、c3、c4を備え、外部磁場と駆動電流とに応じて電圧信号Vhallを発生させる。4つの端子を反時計回りに端子c1、端子c2、端子c3、端子c4とすると、端子c1と端子c3とが対向する位置に配置され、端子c2と端子c4とが対向する位置に配置される。なお、図6では、端子c1から端子c4を示したが、図6に示した回路は、端子c1、c2、c3、c4以外の端子を備えるものであってもよい。
【0026】
チョッパクロック生成回路61は、φ1、φ2、φ3、φ4のいずれかのチョッパクロック位相を有するチョッパクロック信号をスイッチ回路63に供給する。スイッチ回路63は、チョッパクロック生成回路61から供給されたチョッパクロック信号に基づいて、ホール素子4の駆動電流の供給に使用される端子を切替える。図6に示した回路では、端子c1から端子c4は、端子vc1、端子c2、端子c3、端子c4の順番で切り替えられる。
【0027】
なお、端子c1から端子c4を切替える順番は、特に限定されるものでなく、時計回り、または反時計回りのいずれの方向であってもよい。さらに、端子の切替は、隣り合って配置された端子を順に選択して行われるものに限定されるものではなく、例えば、端子c1、端子c2、端子c4、端子c3の順番で、所謂「8の字」を書くように端子を切替えるものであってもよい。さらに、2方向チョッパ駆動の場合は、チョッパクロック信号位相に対応して、駆動電流の供給に使用される端子を切り替えるようにしてもよい。
【0028】
また、スイッチ回路63は、ホール素子4から出力されたホール起電力信号電圧を入力し、信号処理回路64に出力する。信号処理回路64は、ホール素子4が出力したホール起電力信号電圧を信号処理する。
図7A(a)、(b)及び図7B(c)、(d)は、図6に示したホール素子4の駆動電流の通電方向を決める端子対及びホール起電力信号を検出する端子対、チョッパー変調、復調のスイッチ切り替えを示した図である。
【0029】
以下の表1は、ホール素子4の駆動電流の通電方向を決める端子を示し、表2は、ホール素子4のホール起電力信号を検出する端子を示している。ここで、端子c1、端子c2、端子c3、端子c4は、反時計回りに、順に端子c1、端子c2、端子c3、端子c4と並び、反時計回り方向を+90度方向(つまり、端子c1から端子c2の方向)、時計回り方向を−90度方向(つまり、端子c2から端子c1の方向)として説明する。
【0030】
ホール素子4において、ホール起電力信号を検出する場合、検出されるホール起電力信号Vhall3(復調前)は、表3のようになり、復調後の信号は表4のようになる。ここで、復調を行うチョッパクロック信号は、チョッパクロック位相がφ1からφ2への遷移時とφ3からφ4への遷移時に極性を切り替える信号である。
本実施形態において、復調用チョッパクロック信号は、反時計回りに+90度遷移時及び時計回りに−90度遷移時に極性を切り替える信号となっている。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
ここで、ホール素子4の磁束Bに対応した信号成分としてVsig(B)を用いた。一方、ホール素子4のオフセット成分については、Vos(Hall,0°)、Vos(Hall,90°)、Vos(Hall,270°)、Vos(Hall,180°)を仮定している。これは、上述したように、各ホール素子内部で、半導体製造時のプロセス勾配に起因する不純物濃度の濃淡分布があるため、ホール素子の端子c1、端子c2、端子c3、端子c4のうち、どの端子から駆動電流が注入されるかによって、ホール素子内部での空乏層の発生状態が変わるためである。また、ホール起電力加算回路のオフセット電圧Vos(Add)を仮定している。
【0036】
上記したように、図6に示した回路は、ホール素子4において駆動電流を流す端子を周期的に切り替えてホール起電力信号をチョッパ周波数で変調する。図6に示した回路は、このような動作により、ホール起電力信号からホール素子のオフセット成分及び後段のオフセット成分を分離することができる。それにより、例えば、後段で復調することによって、磁気信号成分をDC成分とし、ホール素子4のオフセット成分をチョッパ周波数帯域に変調することができる。また、図6に示した回路は、後段にLPF等を設けることにより、LPF等でオフセット成分を除去し、磁気信号成分のみを取り出すことができる。
【0037】
[ホール起電力信号処理装置]
図8は、本実施形態のホール起電力信号処理装置を説明するための図であって、電流センサに適用された構成を例示している。このようなホール起電力信号処理装置は、検出用センサが電流の変化を検出するものとする。
図8に示したホール起電力信号処理装置1は、磁場を検出するための検出用ホール素子801、駆動電流を生成し、生成された駆動電流を検出用ホール素子801に供給する駆動電流生成回路804、検出用ホール素子801に供給される駆動電流の流れ方向を切替えるスイッチ回路802及びチョッパクロック生成回路803及びスイッチ回路802の出力信号を処理する信号処理回路805を備えている。
【0038】
また、ホール起電力信号処理装置1は、感度調整用ホール素子806、感度調整用ホール素子807及び感度調整用ホール素子806、807の出力信号に基づいて、駆動電流生成回路804に感度調整信号を出力する感度調整信号生成回路810を備えている。さらに、感度調整用ホール素子806とグランドとの間には定電流源808が接続されていて、感度調整用ホール素子807とグランドとの間には定電流源811が接続されている。
【0039】
また、図8に示したホール起電力信号処理装置1は、感度調整用ホール素子806を囲むように配置された内蔵コイル(Bcoil(A))と、感度調整用ホール素子807を囲むように配置された内蔵コイル(Bcoil(B))とを有している。なお、本実施形態では、検出用ホール素子801、感度調整用ホール素子806、807を全て図2に示した十字型形状の対称型ホール素子とする。
【0040】
図2に示したように、検出用ホール素子801、感度調整用ホール素子806、807は、4つの端子を有している。4つの端子を反時計回りに順に端子c1、端子c2、端子c3、端子c4とすると、端子c1と端子c3は対向する位置に配置され、端子c2と端子c4とが対向する位置に配置される。
検出用ホール素子801及び感度調整用ホール素子806、807は、同一基板上に形成され、互いに隣接して配置されていることが好ましい。また、検出用ホール素子801及び感度調整用ホール素子806、807は、同一形状で、同一サイズであることが好ましい。
【0041】
上記構成のうち、駆動電流生成回路804は、検出用ホール素子801に流れる駆動電流を生成する。駆動電流の大きさは、後述の感度調整信号生成回路810の感度調整信号に基づいて制御される。チョッパクロック生成回路803は、チョッパ周波数をもつチョッパクロック信号を生成し、スイッチ回路802に出力する。
本実施形態のチョッパクロック生成回路803は、2方向切替(90度チョッパ駆動)でチョッパ駆動を行っている。チョッパクロック生成回路803のチョッパ駆動は、先に説明した図6のチョッパクロック生成回路61のチョッパ駆動と同様に行われる。また、本実施形態は、チョッパクロック生成回路803が2方向切替のチョッパ駆動をするものに限定されるものでなく、4方向の切り替え(360度チョッパ駆動)でチョッパ駆動することも可能である。
【0042】
チョッパクロック生成回路803は、チョッパクロック生成回路61と同様にチョッパ駆動し、チョッパクロック信号を生成する。生成されたチョッパクロック信号は、スイッチ回路802に出力される。スイッチ回路802は、チョッパクロック信号に基づいて、検出用ホール素子801において駆動電流の供給に使用される端子を切替える。信号処理回路805は、端子を切替えながら入力されたホール起電力信号(チョッパ変調されたホール起電力信号)を増幅、復調する。なお、信号処理回路805は、チョッパ変調されたホール起電力信号を復調する復調用スイッチ回路を備えるものであってもよい。
【0043】
感度調整用ホール素子806、807は、後述する内蔵コイルによって発生した磁場と後述する駆動電流源の駆動電流により、それぞれホール起電力信号を生成する。駆動電流源は、感度調整用ホール素子806及び感度調整用ホール素子807に駆動電流を供給する。
内蔵コイルは、コイル電流が流れることによって、磁場を発生させる。発生した磁場と駆動電流源の駆動電流により、感度調整用ホール素子806、807は、ホール起電力信号を生成する。本実施形態のホール起電力信号処理装置は、内蔵コイルにコイル電流を供給するコイル電流源Vccを有している。
【0044】
感度調整信号生成回路810は、感度調整用ホール素子806、807が生成したホール起電力信号から、検出用ホール素子801の感度変動を補正、調整するための感度調整信号を生成する。2方向切替のチョッパ駆動では、検出用ホール素子801の端子c1から端子c3へ駆動電流が流れるフェーズ1と、端子c2から端子c4へ駆動電流が流れるフェーズ2とがある。
感度調整用ホール素子806では、感度調整用ホール素子806の端子c1から端子c3へ(0度方向へ)駆動電流が流れ、または、端子c3から端子c1へ(180度方向へ)駆動電流が流れる。感度調整用ホール素子807においては、端子c2から端子c4へ(90度方向へ)駆動電流が流れ、または、端子c4から端子c2へ(270度方向へ)駆動電流が流れる。
【0045】
なお、上記例では、感度調整用ホール素子806はc1から端子c3へ(0度方向へ)又はc3から端子c1へ(180度方向へ)駆動電流を固定し、感度調整用ホール素子807はc2から端子c4へ(90度方向へ)又はc4から端子c2へ(270度方向へ)駆動電流を固定しているが、感度調整用ホール素子も検出用ホール素子と同様にチョッパ駆動するように構成してもよい。この場合、検出用ホール素子801のチョッパ駆動の各フェーズに併せて、感度調整用ホール素子806、807もチョッパ駆動し、例えば、前述のフェーズ1では、感度調整用ホール素子806は0度方向へ駆動電流が流れ、感度調整用ホール素子807は90度方向へ駆動電流が流れ、前述のフェーズ2では、感度調整用ホール素子806は180度方向へ駆動電流が流れ、感度調整用ホール素子807は270度方向へ駆動電流が流れる構成であってもよい。また、前述のフェーズ1では、感度調整用ホール素子806は0度方向へ駆動電流が流れ、感度調整用ホール素子807は90度方向へ駆動電流が流れ、前述のフェーズ2では、感度調整用ホール素子806は90度方向へ駆動電流が流れ、感度調整用ホール素子807は0度方向へ駆動電流が流れる構成であってもよい。
【0046】
検出用ホール素子のチョッパ駆動の駆動電流方向を考慮して、チョッパ駆動しない感度調整用ホール素子の駆動電流方向の組み合わせを考慮すればよい。
以上の動作により、感度調整用ホール素子806及び感度調整用ホール素子807は、内蔵コイルが発生する磁場と駆動電流から生じるホール起電力信号を感度調整信号生成回路810に出力する。感度調整信号生成回路810は、感度調整信号に基づいて、検出用ホール素子801の駆動電流を制御する。
【0047】
電流センサが形成された基板に応力が加わることによって検出用ホール素子801の感度が変動した場合、感度調整用ホール素子806、807は、間接的に検出用ホール素子801の感度変動を検出する。検出された感度の変動を示すホール起電力信号は、感度調整信号生成回路810を介して感度調整信号となる。感度調整信号は、駆動電流生成回路804に入力する。
【0048】
例えば、検出用ホール素子801の感度が増大した場合、感度調整用ホール素子806、807の感度も変動する。このとき、感度調整用ホール素子806、807の内蔵コイルが発生する磁束Bcoilと駆動電流Iとから生じるホール起電力信号は、増大することとなる。そのため、感度調整信号生成回路810は、ホール起電力の増大した量に応じて、駆動電流生成回路804の駆動電流を制御することによって、検出用ホール素子801の感度変動を補正、調整することができる。
【0049】
また、検出用ホール素子801がチョッパ駆動される場合、応力等による感度変動の影響は、流れる駆動電流の向きによって異なることがある。本実施形態によれば、検出用ホール素子801がチョッパ駆動される方向に対応して感度調整用ホール素子806、807を備えているため、感度変動を精度良く調整、補正することができる。
【0050】
[内蔵コイル]
次に、感度調整用ホール素子806、807の内蔵コイルについて説明する。
図9は、電流センサの感度を調整するために用いられる内蔵コイル30を説明するための図である。内蔵コイル30は、感度調整用ホール素子806、807と同一基板上に、感度調整用ホール素子806、807の配線層で使用されるメタル部材で作成される。内蔵コイル30と感度調整用ホール素子806、807を同一基板上に形成することで、内蔵コイル30と感度調整用ホール素子806、807との距離を近づけ、より強い磁場強度を得ることができる。
【0051】
また、本実施形態は、多層の半導体プロセスを用いることにより、内蔵コイル30のターン数を調整することも可能である。内蔵コイルに一定方向(図9中に矢印を示す:図9においては「時計回り」の方向とする)の電流を流すことにより、内蔵コイル内部に任意の磁場を発生することができる。ここで、図9を用い、内蔵コイル30によって発生する磁場について説明する。
【0052】
図9に示した通り、時計回りに電流が流れた場合、内蔵コイル30の内側には紙面奥向き方向の磁束B1が発生する。一方、内蔵コイル30の外側の点Aにおいては、図9に示す通り、紙面手前側に磁束B2が発生する。磁束B1、B2の密度は、内蔵コイル30を流れるコイル電流の大きさに比例し、内蔵コイル30からの距離に反比例する。
図10は、内蔵コイルから生じる磁場を検出するための感度調整用ホール素子806、807と、検出用ホール素子801との配置を例示した図である。図10に示した例では、内蔵コイル816が隙間sを有する略円形形状を有している。また、内蔵コイル817が隙間sを有する略円形形状を有している。本実施形態では、このような内蔵コイルの形状を、以下、単に「円形」と記す。
【0053】
感度調整用ホール素子806は、内蔵コイル816が形成する円形の内部に配置され、感度調整用ホール素子807は、内蔵コイル817が形成する円形の内部に配置される。感度調整用ホール素子806は、中心点が内蔵コイル816が形成する円形の中心点と一致するように配置される。感度調整用ホール素子807は、中心点が内蔵コイル817が形成する円形の中心点と一致するように配置される。このようにすることにより、感度調整用ホール素子806、807は、一定方向の磁場のみを検出できる。
【0054】
本実施形態では、感度調整用ホール素子806、807と検出用ホール素子801とは同一サイズ、同一形状のものとした。ただし、本実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、感度調整用ホール素子806、807と検出用ホール素子801とのサイズや形状が異なっても良い。ただし、基板からの応力、温度等をより精度良く調整したい場合には、感度調整用ホール素子806、807と検出用ホール素子801が同一サイズ、同一形状であることが望まれる。また、図10に示した構成では、感度調整用ホール素子806及び内蔵コイル816によって発生する磁場と、感度調整用ホール素子807及び内蔵コイル817によって発生する磁場との向きが反対になっている。しかし、本実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、感度調整用ホール素子806及び内蔵コイル816によって発生する磁場と、感度調整用ホール素子807及び内蔵コイル817によって発生する磁場との向きが同じ方向であっても良い。
【0055】
また、本実施形態では、内蔵コイルを円形としたが、内蔵コイルの形状は、円形に限定されるものでなく、三角形、四角形、多角形のように、感度調整用ホール素子806、807が、一定方向の磁場のみを検出できる形状であればよい。
また、内蔵コイルに流す電流の向きを変えて感度調整用ホール素子に発生する磁場が正転、反転する構成としてもよい。
本実施形態では、感度調整用ホール素子806、感度調整用ホール素子807及び検出用ホール素子801を隣接して配置することにより、感度調整用ホール素子806、807が、検出用ホール素子801の感度変動を、間接的に精度良く検出することができる。
【0056】
[感度調整用ホール素子の駆動電流の向き]
図11は、検出用ホール素子801に流れる駆動電流が、チョッパ駆動によって、0度方向(端子c1から端子c3)、90度方向(端子c2から端子c4)と切り替わることを概念的に示している。また、駆動電流は、感度調整用ホール素子806において0度方向(端子c1から端子c3)に供給され、感度調整用ホール素子807においては0度方向(端子c2から端子c4)に供給されている。なお、検出用ホール素子801及び感度調整用ホール素子806、807の各端子は、同じ方向に配置されている。
【0057】
検出用ホール素子801がチョッパ駆動される場合、応力等による感度変動の影響は、駆動電流の向きによって相違することがある。本実施形態は、検出用ホール素子801がチョッパ駆動される方向に対応した駆動電流が流れる感度調整用ホール素子806、807を備えている。このため、本実施形態は、電流センサの感度変動を精度良く調整、補正することができる。
【0058】
なお、図8に示した感度調整信号生成回路810は、感度調整用ホール素子806、807が出力したホール起電力信号に基づいて感度調整信号を生成する。感度調整信号生成回路810は、感度調整用ホール素子806が出力したホール起電力信号と、感度調整用ホール素子807が出力したホール起電力信号とを加算、または平均して感度調整信号を生成する構成であってもよい。また、感度調整信号生成回路810は、検出用ホール素子801のチョッパ駆動に合わせてホール起電力信号に重み付けをした上で感度調整用ホール素子806が出力したホール起電力信号と、感度調整用ホール素子807が出力したホール起電力信号とを加算、または平均してもよい。
【0059】
さらに、感度調整信号生成回路810は、検出用ホール素子801のチョッパ駆動に合わせ、感度調整用ホール素子806、807のいずれかが出力したホール起電力信号に基づいて感度調整信号を生成する構成であってもよい。
[感度調整用ホール素子を4個設ける例]
図12は、4つの感度調整用ホール素子と検出用ホール素子801との配置関係を例示した図である。図12に示した感度調整用ホール素子806、807、906、907は、各々対応する円形の内蔵コイル816、817、916、917の内側に配置されている。円形の内蔵コイル816、817、916、917は、いずれも直線状の配線部900と接続されている。配線部900は、内蔵コイル816、817、916、917に電源VCC及びGNDを接続し、内蔵コイル816、817、916、917を単一の電流源によって駆動する。
【0060】
図12に示した構成では、検出用ホール素子801が2方向で駆動(90度チョッパ駆動)されている。このため、感度調整用ホール素子806、807、906、907には、第1の方向、または第2の方向に沿って駆動電流が流れる。図12では、感度調整用ホール素子807は端子c1から端子c3へ(0度方向)、感度調整用ホール素子806は端子c2から端子c4へ(90度方向)、感度調整用ホール素子907は端子c1から端子c3へ(0度方向)、感度調整用ホール素子906は端子c2から端子c4へ(90度方向)駆動電流が流れる。
【0061】
なお、本実施形態の駆動電流の流れ方向は、上記した例に限定されるものではない。例えば、感度調整用ホール素子806を流れる駆動電流と感度調整用ホール素子807を流れる駆動電流とが同じ方向であってもよいし、感度調整用ホール素子906を流れる駆動電流と感度調整用ホール素子907を流れる電流とが同じ方向であってもよい。
検出用ホール素子801の駆動電流のオフセット成分は、Spinning Current Methodを2方向に流れる駆動電流の各々に適用することで分離することができる。
【0062】
また、感度調整用ホール素子806、807、906、907と検出用ホール素子801の感度は、基板からの応力、温度等に対して同様の影響を受けることが望ましい。このため、本実施形態は、検出用ホール素子801がチョッパ駆動される方向に対応した駆動電流が流れる感度調整用ホール素子806、807、906、907を同一基板上に備える構成としている。このような本実施形態は、感度変動を精度良く調整、補正することができる。特に、本実施形態は、検出用ホール素子801の周囲に4個の感度調整用ホール素子806、807、906、907が隣接して配置されているため、より高い精度で検出用ホール素子801の感度調整及びホール起電力信号の補正が可能となる。
【0063】
図13は、図12に示した配線部900に代えて、配線部920を設けた例を示した図である。
図14は、4つの感度調整用ホール素子806、807、906、907と検出用ホール素子821との配置関係の他の例を示した図である。検出用ホール素子821は、4方向で駆動(360度チョッパ駆動)する。感度調整用ホール素子806、807、906、907を流れる駆動電流は、第1の方向(0度方向)、第2の方向(90度方向)、第3の方向(180度方向)、第4の方向(270度方向)に沿って流れる。感度調整用ホール素子807は、端子c4から端子c2へ(270度方向)、感度調整用ホール素子806は端子c2から端子c4へ(90度方向)、感度調整用ホール素子907は端子c1から端子c3へ(0度方向)、感度調整用ホール素子906は端子c3から端子c1へ(180度方向)駆動電流が流れる。
【0064】
なお、本実施形態は、図14に示した例に限定されるものではない。例えば、感度調整用ホール素子806、感度調整用ホール素子807を流れる駆動電流の向きが180度方向または0度方向であり、感度調整用ホール素子906、感度調整用ホール素子907を流れる駆動電流の向きが90度または270度方向であってもよい。
図15は、図12に示した検出用ホール素子801及び感度調整用ホール素子806、807、906、907が配置される角度を変えた一例である。図15に示した構成であっても、上述の効果が得られる。
【0065】
なお、本実施形態は、検出用ホール素子801による磁気検出と、感度調整用ホール素子806、807、906、907による感度調整とを、間欠動作してもよい。
また、本実施形態は、テスト工程等において、感度調整用ホール素子806、807、906、907によって検出用ホール素子801の感度調整を予め行う形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明した本発明は、高い精度が要求される電流センサや磁気センサに好適である。
【符号の説明】
【0067】
1:ホール起電力信号処理装置、4:ホール素子、10、20:対称型ホール素子
12,14,22,24:ホール素子電源端子
11,13,21,23:ホール起電圧出力端子、30,916,917:内蔵コイル
61:チョッパクロック生成回路、62:駆動電流生成回路、63:スイッチ回路
64:信号処理回路,641:増幅器、642:復調用スイッチ回路
801,821,901:検出用ホール素子、802:スイッチ回路
803:チョッパクロック生成回路、804:駆動電流生成回路、805:信号処理回路
806,807,906,907:感度調整用ホール素子
808,811:定電流源、810:感度調整信号生成回路
816,817 内蔵コイル,900,920:配線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15