特許第6457310号(P6457310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457310
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】油性食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20190110BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20190110BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20190110BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20190110BHJP
   A23G 1/00 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   A23L5/00 L
   A23L9/20
   A23D7/00 508
   A23D9/00 500
   A23G1/00
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-63426(P2015-63426)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-182054(P2016-182054A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大西 清美
(72)【発明者】
【氏名】築山 宗央
(72)【発明者】
【氏名】粟飯原 知洋
(72)【発明者】
【氏名】村山 典子
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−011799(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/061750(WO,A1)
【文献】 特開平05−311190(JP,A)
【文献】 特開平04−075593(JP,A)
【文献】 特開2016−082881(JP,A)
【文献】 特開2010−273634(JP,A)
【文献】 特開2010−077244(JP,A)
【文献】 特表平08−503974(JP,A)
【文献】 国際公開第93/024017(WO,A1)
【文献】 特開2009−195221(JP,A)
【文献】 特開昭61−242543(JP,A)
【文献】 特開2014−050323(JP,A)
【文献】 特開昭62−134043(JP,A)
【文献】 パーム油・パーム核油の利用, 1990, 47頁
【文献】 Rapeseed and canolia oil, 2004,p.48-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23L
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂含量が20〜100質量%の油性食品であって、前記油脂が、以下の(a)から(g)の条件を満たす油性食品。
(a)構成脂肪酸に占めるL含量が、40質量%以下である
(b)構成脂肪酸に占めるT含量が、5質量%以下である
(c)L3含量が6.2〜10質量%である
(d)L2X含量が9〜40質量%である
(e)LX2とX3との合計含量が50〜77質量%である
(f)L2MとLM2との合計含量が0.6〜10質量%である
(g)LX2含量とX3含量の質量比(LX2:X3)が、1:1〜1:4である
ただし、上記の(a)から(g)の条件において、L、X、T、M、L3、L2X、LX2、X3、L2M、及びLM2はそれぞれ以下のものを示す。
L:炭素数16以上の飽和脂肪酸
X:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
T:トランス型脂肪酸
M:炭素数が6〜10の脂肪酸
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
L2M:Lが2分子、Mが1分子結合しているトリグリセリド
LM2:Lが1分子、Mが2分子結合しているトリグリセリド
【請求項2】
前記油脂が、さらに以下の条件(h)を満たす請求項に記載の油性食品。
(h)L2X含量に対するLXL含量の質量比(LXL/L2X)が、0.4〜0.9である
ただし、LXLは以下のものを示す。
LXL:1位と3位にL、2位にXが結合しているトリグリセリド
【請求項3】
前記油脂が、さらに以下の条件(i)を満たす請求項1または2に記載の油性食品。
(i)L3に占める、総炭素数が58以上のトリグリセリドの含量が10質量%以上である
【請求項4】
前記油性食品がチョコレートである請求項1〜の何れか1項に記載の油性食品。
【請求項5】
以下の(j)から(p)の条件を満たす原料油脂組成物。
(j)構成脂肪酸に占めるL含量が、35質量%以下である
(k)構成脂肪酸に占めるT含量が、5.5質量%以下である
(l)L3含量が8.0〜11質量%である
(m)L2X含量が3〜23質量%である
(n)LX2とX3との合計含量が55〜86質量%である
(o)L2MとLM2との合計含量が0.7〜11質量%である
(p)LX2含量とX3含量の質量比(LX2:X3)が、1:1〜1:4である
ただし、上記の(j)から(p)の条件において、L、X、T、M、L3、L2X、L
X2、X3、L2M、及びLM2はそれぞれ以下のものを示す。
L:炭素数16以上の飽和脂肪酸
X:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
T:トランス型脂肪酸
M:炭素数が6〜10の脂肪酸
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
L2M:Lが2分子、Mが1分子結合しているトリグリセリド
LM2:Lが1分子、Mが2分子結合しているトリグリセリド
【請求項6】
前記原料油脂組成物が、さらに以下の条件(q)を満たす請求項に記載の原料油脂組成物。
(q)L2X含量に対するLXL含量の質量比(LXL/L2X)が、0.3〜0.8である
ただし、LXLは以下のものを示す。
LXL:1位と3位にL、2位にXが結合しているトリグリセリド
【請求項7】
前記原料油脂組成物が、さらに以下の条件(r)を満たす請求項5または6に記載の原料油脂組成物。
(r)L3に占める、総炭素数が58以上のトリグリセリドの含量が11質量%以上である
【請求項8】
構成脂肪酸が炭素数6〜10の脂肪酸からなる中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)10〜40質量部と、ヨウ素価5以下かつ構成脂肪酸として炭素数16以上の飽和脂肪酸の含量が90質量%以上の油脂60〜90質量部との混合油脂のエステル交換油脂、または、前記MCT10〜40質量部と、構成脂肪酸として炭素数16以上の脂肪酸の含量が90質量%以上の油脂60〜90質量部との混合油脂をエステル交換後、極度硬化した油脂、を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の油性食品、または、請求項5〜7の何れか1項に記載の原料油脂組成物。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか1項に記載の原料油脂組成物を油脂中に50〜100質量含む、請求項1〜4および8の何れか1項に記載の油性食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飽和脂肪酸含量が低い油性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂が連続相をなす油性食品、例えば、チョコレートやファットクリーム、バタークリームなどは、その保形性の大きな部分が油脂により維持されている。ココアバターや動物脂肪などの保形性の高い天然油脂は、常温で固体である固体脂であり、固体脂を構成する脂肪酸の多くの部分は飽和脂肪酸である。
【0003】
固体脂としては、また、大豆油、菜種油、綿実油などのような液体油が水素添加(硬化)された硬化油が知られている。水素添加は、不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に変換するだけでなく、シス型不飽和脂肪酸をトランス異性体へと変換する。従って、硬化油を構成する脂肪酸の多くの部分は飽和脂肪酸とトランス型脂肪酸である。
【0004】
油性食品に所望の構造を持たせるには、固体脂を使用する必要がある。それは、比較的多くの飽和脂肪酸やトランス型脂肪酸を含むことを意味する。しかしながら、栄養の点では、これらの脂肪酸は、心臓疾患の発生のリスクを増加するとされている。それゆえ、WHOのような公的機関は、飽和脂肪酸およびトランス型脂肪酸の1日あたりの摂取量の推奨上限値を公表している。
【0005】
油性食品の飽和脂肪酸およびトランス型脂肪酸を低減するいくつかの試みが知られている。例えば特許文献1には、完全に硬化したパーム核油25乃至75部と16より少ない炭素数の脂肪酸を著量は含まない完全に硬化した植物油脂75乃至25部とのエステル交換油8乃至15%を、リノール酸に富む液体植物油92乃至85部とブレンドした食用脂肪組成物が記載されている。そして、該食用脂肪組成物を使用したマーガリンが記載されている。
【0006】
また、例えば特許文献2には、33.7のヨウ素価(IV)をもつSOS−油脂と、70%の高オレイン酸ひまわり油からなる、SAFA(飽和脂肪酸)−含量は24.3重量%、TFA(トランス型脂肪酸)−含量は0.1重量%の低SAFA(飽和脂肪酸)油脂が記載されている。そして、該低SAFA油脂を90重量%および10重量%のヘーゼルナッツ油からなるフィリングが記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の固体脂であるエステル交換油は融点が高く、口どけに優れないものであった。また、特許文献2に記載の低SAFA油脂は、保形性を高めるために製造工程で別途シード剤を使用するなど、取扱いが煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭51−33922号公報
【特許文献2】特表2008−543321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、飽和脂肪酸およびトランス型脂肪酸含量が低く、保形性が良好で、口どけのよい油性食品の開発が望まれていた。
【0010】
本発明の目的は、飽和脂肪酸およびトランス型脂肪酸含量が低く、保形性が良好で、口どけのよい油性食品、特に、ココアバターを含む、風味良好な油性食品を提供することである。本発明の目的は、また、当該油性食品の油脂のベースとなる原料油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、油性食品中の油脂を、特定のトリグリセリド組成に調整することで、飽和脂肪酸およびトランス型脂肪酸含量が低く、保形性が良好で、口どけのよい油性食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のようなものを提供する。

〔1〕油脂含量が20〜100質量%の油性食品であって、前記油脂が、以下の(a)から(f)の条件を満たす油性食品。
(a)構成脂肪酸に占めるL含量が、40質量%以下である
(b)構成脂肪酸に占めるT含量が、5質量%以下である
(c)L3含量が1〜10質量%である
(d)L2X含量が9〜40質量%である
(e)LX2とX3との合計含量が50〜77質量%である
(f)L2MとLM2との合計含量が0.6〜10質量%である
ただし、上記の(a)から(f)の条件において、L、X、T、M、L3、L2X、LX2、X3、L2M、及びLM2はそれぞれ以下のものを示す。
L:炭素数16以上の飽和脂肪酸
X:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
T:トランス型脂肪酸
M:炭素数が6〜10の脂肪酸
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
L2M:Lが2分子、Mが1分子結合しているトリグリセリド
LM2:Lが1分子、Mが2分子結合しているトリグリセリド

〔2〕上記油脂が、さらに以下の条件(g)を満たす〔1〕の油性食品。
(g)LX2含量とX3含量の質量比(LX2:X3)が、1:1〜1:4である

〔3〕上記油脂が、さらに以下の条件(h)を満たす〔1〕または〔2〕の油性食品。
(h)L2X含量に対するLXL含量の質量比(LXL/L2X)が、0.4〜0.9である
ただし、LXLは以下のものを示す。
LXL:1位と3位にL、2位にXが結合しているトリグリセリド

〔4〕上記油脂が、さらに以下の条件(i)を満たす〔1〕〜〔3〕の何れか1項の油性食品。
(i)L3に占める、総炭素数が58以上のトリグリセリドの含量が10質量%以上である

〔5〕上記油性食品がチョコレートである〔1〕〜〔4〕の何れか1項の油性食品。

〔6〕以下の(j)から(o)の条件を満たす原料油脂組成物。
(j)構成脂肪酸に占めるL含量が、35質量%以下である
(k)構成脂肪酸に占めるT含量が、5.5質量%以下である
(l)L3含量が1.1〜11質量%である
(m)L2X含量が3〜23質量%である
(n)LX2とX3との合計含量が55〜86質量%である
(o)L2MとLM2との合計含量が0.7〜11質量%である
ただし、上記の(j)から(o)の条件において、L、X、T、M、L3、L2X、LX2、X3、L2M、及びLM2はそれぞれ以下のものを示す。
L:炭素数16以上の飽和脂肪酸
X:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
T:トランス型脂肪酸
M:炭素数が6〜10の脂肪酸
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
L2M:Lが2分子、Mが1分子結合しているトリグリセリド
LM2:Lが1分子、Mが2分子結合しているトリグリセリド

〔7〕上記原料油脂組成物が、さらに以下の条件(p)を満たす〔6〕の原料油脂組成物。
(p)LX2含量とX3含量の質量比(LX2:X3)が、1:1〜1:4である

〔8〕上記原料油脂組成物が、さらに以下の条件(q)を満たす〔6〕または〔7〕の原料油脂組成物。
(q)L2X含量に対するLXL含量の質量比(LXL/L2X)が、0.3〜0.8である
ただし、LXLは以下のものを示す。
LXL:1位と3位にL、2位にXが結合しているトリグリセリド

〔9〕上記原料油脂組成物が、さらに以下の条件(r)を満たす〔6〕〜〔8〕の何れか1項の原料油脂組成物。
(r)L3に占める、総炭素数が58以上のトリグリセリドの含量が11質量%以上である
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、飽和脂肪酸およびトランス型脂肪酸含量が低く、保形性が良好で、口どけのよい油性食品、特に、ココアバターを含む、風味良好な油性食品を提供することができる。また、本発明によると、当該油性食品の油脂のベースとなる原料油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂が、以下の(a)から(f)の条件を満たすものである。
(a)構成脂肪酸に占めるL含量が、40質量%以下である
(b)構成脂肪酸に占めるT含量が、5質量%以下である
(c)L3含量が1〜10質量%である
(d)L2X含量が9〜40質量%である
(e)LX2とX3との合計含量が50〜77質量%である
(f)L2MとLM2との合計含量が0.6〜10質量%である
ただし、上記の(a)から(f)の条件において、L、X、T、M、L3、L2X、LX2、X3、L2M、及びLM2はそれぞれ以下のものを示す。
L:炭素数16以上の飽和脂肪酸
X:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
T:トランス型脂肪酸
M:炭素数が6〜10の脂肪酸
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
L2M:Lが2分子、Mが1分子結合しているトリグリセリド
LM2:Lが1分子、Mが2分子結合しているトリグリセリド
【0015】
飽和脂肪酸Lは、炭素数が16以上、好ましくは16〜24、より好ましくは16〜2
2である。また、トリグリセリド分子に2つ又は3つの飽和脂肪酸Lが結合する場合、飽和脂肪酸Lは同一の飽和脂肪酸であってもよいし、異なる飽和脂肪酸であってもよい。具体的には、飽和脂肪酸Lとしては、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、およびリグノセリン酸(24)が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。また、本発明において、炭素数はCと記載することもある(例えば、炭素数16〜24は、C16〜24と記載することもある。)。
【0016】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂の構成脂肪酸に占めるL含量(条件(a))が、40質量%以下であり、好ましくは15〜35質量%であり、より好ましくは18〜32質量%である。
【0017】
不飽和脂肪酸Xは、炭素数が16以上、好ましくは16〜24、より好ましくは16〜
22、さらに好ましくは16〜20である。また、トリグリセリド分子に2つ又は3つの
不飽和脂肪酸Xが結合する場合、不飽和脂肪酸Xは同一の不飽和脂肪酸であってもよいし
、異なる不飽和脂肪酸であってもよい。具体的には、不飽和脂肪酸Xとしては、パルミト
レイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、およびリノ
レン酸(18:3)が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数と二重結合
数の組み合わせである。
【0018】
トランス型脂肪酸Tは、上記不飽和脂肪酸Xのトランス異性体であり、不飽和脂肪酸に含まれる。本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂の構成脂肪酸に占めるトランス型脂肪酸含量(条件(b))が好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0〜3質量%、さらに好ましくは0〜1.5質量%である。
【0019】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂のL3含量(条件(c))が1〜10質量%であり、好ましくは3〜9質量%であり、より好ましくは4〜8質量%である。なお、本発明において、L3はLが3分子結合しているトリグリセリド(LLL)である(トリグリセリドとは、グリセロールに3分子の脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールのことである)。
【0020】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂のL2X含量(条件(d))が9〜40質量%であり、好ましくは11〜35質量%であり、より好ましくは13〜30質量%である。なお、本発明において、L2XはLが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド(LLX+LXL+XLL)である。
【0021】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂のLX2とX3との合計含量(条件(e))が50〜77質量%であり、好ましくは55〜74質量%であり、より好ましくは58〜72質量%である。なお、本発明において、LX2はLが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド(LXX+XLX+XXL)であり、X3はXが3分子結合しているトリグリセリド(XXX)である。
【0022】
炭素数が6〜10の脂肪酸Mは、具体的には、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。炭素数が6〜10の脂肪酸Mは同一の脂肪酸であってもよいし、異なる脂肪酸であってもよい。脂肪酸Mは、炭素数が8〜10であることが好ましい。
【0023】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂のL2MとLM2との合計含量(条件(f))が0.6〜10質量%であり、好ましくは1.1〜8質量%であり、より好ましくは1.8〜6質量%である。なお、本発明において、L2MはLが2分子、Mが1分子結合しているトリグリセリド(LLM+LML+MLL)であり、LM2はLが1分子、Mが2分子結合しているトリグリセリド(LMM+MLM+MML)である。なお、LM2含量に対するL2M含量の質量比(L2M/LM2)は、0.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。
【0024】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂が、条件(a)〜(f)の範囲を満たすと、飽和脂肪酸およびトランス型脂肪酸含量が低く、保形性が良好で、口どけのよい油性食品、特に、ココアバターを含む、風味良好な油性食品となる。
【0025】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂のLX2含量とX3含量の質量比(LX2:X3)(条件(g))が、好ましくは1:1〜1:4であり、より好ましくは1:1〜1:3であり、さらに好ましくは1:1.2〜1:2.5である。
【0026】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂のL2X含量に対するLXL含量の質量比(LXL/L2X)(条件(h))が、好ましくは0.4〜0.9であり、より好ましくは0.5〜0.85であり、さらに好ましくは0.6〜0.8である。なお、本発明において、LXL/L2Xの質量比は、L2X含量(質量%)に対するLXL含量(質量%)の比のことである。また、本発明において、LXLは1位と3位にL、2位にXが結合しているトリグリセリドである。
【0027】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂のL3に占める、総炭素数が58以上のトリグリセリドの含量(条件(i))が、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜60質量%である。なお、本発明において、総炭素数が58以上のトリグリセリドは、グリセロールに結合する3分子の脂肪酸の炭素数の合計値である。例えば、3分子のベヘン酸(炭素数22)が結合したトリベヘンの総炭素数は66である。
【0028】
脂肪酸含量及びトランス型脂肪酸含量は、AOCS Ce1f−96に準じて測定することができる。L3含量、L2X含量、LX2含量、X3含量、L2M含量及びLM2含量は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)に準じて測定することができる。LXL含量は、LXL/L2X比をJ.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)に準じた方法で測定し、この値とL2X含量を基に算出することができる。
【0029】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油脂含量が20〜100質量%であり、好ましくは、25〜90質量%であり、より好ましくは、30〜80質量%である。本発明において油性食品とは、油脂が連続相である加工食品を指し、具体例として、チョコレート、ファットクリーム、バタークリーム及びスプレッドが挙げられる。
【0030】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、好ましくは糖類を含むものであり、より好ましくは糖類を10〜70質量%、さらに好ましくは20〜65質量%含むものである。糖類としては、例えば、砂糖(ショ糖)、乳糖、ブドウ糖、麦芽糖、オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、還元糖ポリデキストロース、ラフィノース、ラクチュロース、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等が挙げられ、糖アルコールであってもよい。
【0031】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、好ましくはチョコレートである。本発明におい
てチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレー
ト業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではなく、食用油脂、糖類
を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料
、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、冷却工
程等)を経て製造されたもののことである。また、本発明におけるチョコレートは、ダー
クチョコレート、ミルクチョコレートの他に、ホワイトチョコレート、カラーチョコレー
トも含むものである。
【0032】
本発明の実施の形態に係る油性食品における油脂含量は、配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、全脂粉乳等)中の油脂(カカオ脂、乳脂等)をも含むものである。
【0033】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、カカオ脂を含むことが好ましい。油性食品の油脂中に占めるカカオ脂の含量は、好ましくは3〜31質量%であり、より好ましくは3〜23質量%、さらに好ましくは5〜18質量%である。本発明の実施の形態に係る油性食品がソフトチョコレートである場合、カカオ脂含量が高くても、グレインが発生しにくい。
【0034】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油脂以外に、糖類、カカオ成分、乳化剤、乳製品、香料等の一般に油性食品に使用される食品材料を配合することもできる。
【0035】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、通常の方法により製造することができる。
【0036】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、例えば、チョコレート、ファットクリーム、バタークリーム及びスプレッドなどの形態で、菓子、パン等の食品と組み合わせることもできる。
【0037】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油脂の構成脂肪酸中の飽和脂肪酸およびトランス型脂肪酸含量が低く、保形性が良好で、口どけに優れたものである。
【0038】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、油性食品中の油脂のトリグリセリドの組成、構成脂肪酸の組成等が上記(a)〜(f)の範囲であれば、特に制限されることなく、通常の食用油脂を使用して製造することができる。本発明の実施の形態に係る油性食品は、例えば、以下の原料油脂組成物を原料として用いることができる。
【0039】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、以下の(j)から(o)の条件を満たす
ものである。
(j)構成脂肪酸に占めるL含量が、35質量%以下である
(k)構成脂肪酸に占めるT含量が、5.5質量%以下である
(l)L3含量が1.1〜11質量%である
(m)L2X含量が3〜23質量%である
(n)LX2とX3との合計含量が55〜86質量%である
(o)L2MとLM2との合計含量が0.7〜11質量%である
ただし、上記の(j)から(o)の条件において、L、X、T、M、L3、L2X、LX2、X3、L2M、及びLM2はそれぞれ以下のものを示す。
L:炭素数16以上の飽和脂肪酸
X:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
T:トランス型脂肪酸
M:炭素数が6〜10の脂肪酸
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
L2M:Lが2分子、Mが1分子結合しているトリグリセリド
LM2:Lが1分子、Mが2分子結合しているトリグリセリド
【0040】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、構成脂肪酸に占めるL含量(条件(j))が、35質量%以下であり、好ましくは10〜31質量%であり、より好ましくは15〜28質量%である。
【0041】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、構成脂肪酸に占めるトランス型脂肪酸含量(条件(k))が好ましくは5.5質量%以下であり、より好ましくは0〜4質量%、さらに好ましくは0〜2質量%である。
【0042】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、L3含量(条件(l))が1.1〜11質量%であり、好ましくは3.3〜9.9質量%であり、より好ましくは4.5〜8.8質量%である。
【0043】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、L2X含量(条件(m))が3〜23質量%であり、好ましくは4〜18質量%であり、より好ましくは5〜15質量%である。
【0044】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、LX2とX3との合計含量(条件(n))が55〜86質量%であり、好ましくは60〜83質量%であり、より好ましくは64〜80質量%である。
【0045】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、L2MとLM2との合計含量(条件(o))が0.7〜11質量%であり、好ましくは1.3〜9質量%であり、より好ましくは2.0〜7質量%である。なお、LM2含量に対するL2M含量の質量比(L2M/LM2)は、0.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。
【0046】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物が、条件(j)〜(o)の範囲を満たすと、当該原料油脂組成物を使用することにより、本発明の油性食品の製造が容易となる。
【0047】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、LX2含量とX3含量の質量比(LX2:X3)(条件(p))が、好ましくは1:1〜1:4であり、より好ましくは1:1〜1:3であり、さらに好ましくは1:1.2〜1:2.5である。
【0048】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、L2X含量に対するLXL含量の質量比(LXL/L2X)(条件(q))が、好ましくは0.3〜0.8であり、より好ましくは0.35〜0.7であり、さらに好ましくは0.4〜0.6である。
【0049】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、L3に占める、総炭素数が58以上のトリグリセリドの含量(条件(r))が、好ましくは11質量%以上であり、より好ましくは20〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜60質量%である。
【0050】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、以下の油脂A、油脂B、油脂C及び油脂Dを含有することが好ましい。
【0051】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、油脂Aを含有することが好ましい。油脂Aは、以下の(s)〜(w)の条件を満たすことが好ましい。
(s)L3含量が2質量%未満
(t)L2X含量が18〜40質量%
(u)LX2含量が45〜67質量%
(v)X3含量が2〜22質量%
(w)LXL/L2Xの質量比が0.3〜0.5
ただし、上記の(s)から(w)の条件において、L、X、L3、L2X、LX2、X3及びLXLはそれぞれ以下のものを示す。
L:炭素数16以上の飽和脂肪酸
X:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
L3:Lが3分子結合しているトリグリセリド
L2X:Lが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド
LX2:Lが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
LXL:1位と3位にL、2位にXが結合しているトリグリセリド
【0052】
上記油脂Aは、好ましくは構成脂肪酸中のL含量が40〜80質量%及びX含量が20〜60質量%であるエステル交換油脂を分別した低融点部である。より好ましくは当該低融点部をさらに分別して得られた低融点部である。
【0053】
上記エステル交換油脂は、好ましくは、その構成脂肪酸中のパルミチン酸含量が30〜50質量%、ステアリン酸含量が10〜29質量%、オレイン酸含量が20〜40質量%、リノール酸及びリノレン酸の合計含量が15質量%未満であり、より好ましくは、その構成脂肪酸中のラウリン酸含量が2質量%未満、パルミチン酸含量が33〜47質量%、ステアリン酸含量が13〜27質量%、オレイン酸含量が23〜37質量%、リノール酸及びリノレン酸の合計含量が12質量%未満であり、さらに好ましくは、その構成脂肪酸中のラウリン酸含量が1質量%未満、パルミチン酸含量が35〜45質量%、ステアリン酸含量が15〜25質量%、オレイン酸含量が25〜35質量%、リノール酸及びリノレン酸の合計含量が
10質量%未満である。
【0054】
上記エステル交換油脂を得るためのエステル交換反応は、ランダムエステル交換反応(非選択的エステル交換反応又は位置特異性の低いエステル交換反応とも言う。)であれば特に制限はなく、通常の方法により行うことができる。ランダムエステル交換反応は、ナトリウムメトキシド等の合成触媒を使用した化学的エステル交換、リパーゼ(位置特異性の低いリパーゼ)を触媒とした酵素的エステル交換のどちらの方法でも行うことができる。
【0055】
化学的エステル交換は、例えば、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.1〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌しながら反応を行うことができる。
【0056】
酵素的エステル交換は、例えば、リパーゼ粉末又は固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%添加した後、40〜80℃、好ましくは40〜70℃で0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間攪拌しながら反応を行うことができる。
【0057】
上記エステル交換油脂を分別する分別方法は、特に限定はなく、ドライ分別(自然分別)、乳化分別(界面活性剤分別)、溶剤分別等の通常の方法により行うことができる。特に、ドライ分別、溶剤分別が好ましい。
【0058】
ドライ分別は、一般的には槽内で攪拌しながら分別原料油脂を冷却し、結晶を析出させた後、圧搾及び/又はろ過することで高融点部(硬質部又は結晶画分とも言う。)と低融点部(軟質部又は液状画分とも言う。)に分けることによって行うことができる。分別温度は求められる分別油脂の性状によっても異なる。ドライ分別の分別温度は、好ましくは33〜45℃であり、より好ましくは35〜43℃、さらに好ましくは35〜40℃である。
【0059】
溶剤分別は、アセトン、ヘキサン等の溶剤に分別原料油脂を溶解し、その溶液を冷却し、結晶を析出させた後、ろ過することで高融点部と低融点部に分けることによって行うことができる。分別温度は求められる分別油脂の性状によっても異なる。溶剤分別の分別温度は、好ましくは−10〜10℃であり、より好ましくは−8〜8℃、さらに好ましくは−6〜5℃である。
【0060】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、油脂Bを含有することが好ましい。油脂Bは液体油であり、10℃(好ましくは5℃)で液体であることが好ましい。油脂Bとしては、例として、大豆油、菜種油、高オレイン酸菜種油、綿実油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、紅花油、高オレイン酸紅花油、コーン油、米油、スーパーパームオレインが挙げられる。油脂Bは、油脂を構成する脂肪酸に占めるオレイン酸の含量が50質量%以上である液体油が好ましい。
【0061】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、油脂Cを含有することが好ましい。油脂Cは、ヨウ素価5以下かつ構成脂肪酸として炭素数16以上の飽和脂肪酸の含量が90質量%以上の油脂である。具体的には、天然油脂の極度硬化油が好ましく、例として、大豆油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、紅花油、コーン油、パーム油、パーム分別油等の極度硬化油が挙げられる。好ましくは菜種油の極度硬化油、ハイエルシン菜種油の極度硬化油であり、より好ましくはハイエルシン菜種油の極度硬化油である。
【0062】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、油脂Dを含有することが好ましい。油脂Dは、L2MとLM2との合計含量が30質量%以上である油脂である。具体的には、構成脂肪酸が炭素数6〜10の脂肪酸からなる中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)10〜40質量部(より好ましくは10〜20質量部)と、上記ヨウ素価5以下かつ構成脂肪酸として炭素数16以上の飽和脂肪酸の含量が90質量%以上の油脂60〜90質量部(より好ましくは80〜90質量部)との混合油脂のエステル交換油脂であることが好ましい。なお、中鎖脂肪酸トリグリセリドと炭素数16以上の脂肪酸の含量が90質量%以上の油脂との混合油脂をエステル交換した後、極度硬化してもよい。
【0063】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、油脂Aを好ましくは15〜55質量%、より好ましくは17〜50質量%、さらに好ましくは20〜47質量%含有する。また、油脂Bを好ましくは40〜80質量%、より好ましくは45〜77質量%、さらに好ましくは50〜75質量%含有する。また、油脂Cを好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%、さらに好ましくは1〜6質量%含有する。また、油脂Dを好ましくは1.5〜23質量%、より好ましくは3.0〜20質量%、さらに好ましくは4〜16質量%含有する。
【0064】
本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物は、本発明の油性食品の原料として使用することができる。すなわち、上記の原料油脂組成物は、チョコレート、(ソフトチョコレート等)、フィリング、バタークリーム等(サンドクリーム等)の油性食品の原料油脂として使用することができる。
【0065】
本発明の実施の形態に係る油性食品における本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物の配合量は、油性食品の油脂中に好ましくは50〜100質量%、より好ましくは65〜97質量%、さらに好ましくは75〜95質量%である。
【0066】
本発明の実施の形態に係る油性食品は、本発明の実施の形態に係る原料油脂組成物を使用することにより、油脂の構成脂肪酸中の飽和脂肪酸およびトランス型脂肪酸含量が低く、保形性が良好で、口どけに優れたものとなる。
【実施例】
【0067】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるもの
ではない。
【0068】
〔分析方法〕
脂肪酸含量及びトランス型脂肪酸含量は、AOCS Ce1f−96に準拠した方法で測
定した。
L3含量、L2X含量、LX2含量、X3含量、L2M含量及びLM2含量は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)に準拠した方法で測定した。LXL含量は、LXL/L2X比をJ.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)に準拠した方法で測定し、この値とL2X含量を基に算出した。
チョコレートの耐荷重応力は、レオメーター(サン科学:CR−500DX型)を使用して、以下の条件で測定した。耐荷重応力の数値が大きいと、保形性に優れる。
テーブル移動速度:20mm/分
定深度:3.0mm
プランジャー:歯型(先端部10mm)
【0069】
〔油脂Aの調製〕
ハイオレイックヒマワリ油8.8質量部、パームステアリン(ヨウ素価36)48.4質量部、大豆油の極度硬化油18.8質量部及びパーム油24.0質量部を混合した。得られた混合油(パルミチン酸含量40.9質量%、ステアリン酸20.0質量%、オレイン酸30.6質量%、リノール酸6.3質量%、リノレン酸0.2質量%、トランス型脂肪酸0質量%)を、ランダムエステル交換反応を行うことにより、エステル交換油脂を得た。エステル交換反応は、常法に従い、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下、120℃で0.5時間攪拌しながら反応を行った。得られたエステル交換油脂を36〜38℃でドライ分別し、高融点部を除去することで低融点部を得た。得られた低融点部を0〜2℃で溶剤分別(アセトン使用)し、高融点部を除去することで低融点部を得て、これに脱臭処理を行ったものを油脂A(L3含量:0.1質量%、L2X含量:28.4質量%、LX2含量:55.4質量%、X3含量:10.9質量%、LXL/L2X質量比:0.43、TFA含量:0.1質量%)とした。
【0070】
〔油脂B、Cの準備〕
菜種油(日清オイリオグループ株式会社製)を油脂Bとした。
ハイエルシン菜種油の極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)を油脂Cとした。
【0071】
〔油脂Dの調製〕
菜種油86質量部とMCT(商品名:ODO、炭素数8と10の脂肪酸からなるMCT、日清オイリオグループ株式会社製)14質量部を混合し、油脂Aと同様にランダムエステル交換した後、極度硬化したものを油脂D(L2MとLM2との合計含量43.5質量%、LM2含量に対するL2M含量の質量比4.7)とした。
【0072】
〔原料油脂組成物の製造〕
油脂A〜Dを表1に記載の配合比(質量%)で混合して、実施例1〜2及び比較例1〜2の原料油脂組成物を得た。各原料油脂組成物の分析値を表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
表2の配合に従って、実施例1〜2及び比較例1〜2の原料油脂組成物をそれぞれ使用した、実施例3〜4及び比較例3〜4のノーテンパータイプのチョコレートを、常法に従って製造した。各チョコレートは、油脂含量が35質量%であり、油脂中にカカオ脂を10質量%含む。実施例3〜4及び比較例3〜4のそれぞれのチョコレートを、5℃、10℃及び20℃の各温度に静置し、10日後と20日後の組織の状態観察と口どけ(10℃)を、以下の基準に従って評価した。また、20℃静置で20日後の各チョコレートの耐荷重応力(g)を測定した。各チョコレート中の油脂の分析値及び評価結果を表3に示した。
【0075】
【表2】
【0076】
(組織の状態の評価基準)
◎:組織が非常にスムーズで良好
○:組織がスムーズで良好
△:表面上は粗いが、内部はスムーズである
×:表面、内部とも粗い
【0077】
(口どけ)
◎:口どけがスムーズで良好
○:口どけが良好
△:ザラツキ感がややある
×:ザラツキ感が非常につよい
【0078】
【表3】