(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(B)成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリカプロラクトンポリオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のポリマーであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の硬化膜形成組成物。
前記(B)成分が、ポリエチレングリコールエステル基および炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうちの少なくとも一方と、カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基のうちの少なくとも一方とを有するアクリル重合体であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の硬化膜形成組成物。
前記(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、10質量部乃至100質量部の(C)成分を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の硬化膜形成組成物。
前記(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、0.5質量部乃至20質量部の(D)成分を含有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の硬化膜形成組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者の検討により、こうした側鎖にシンナモイル基やカルコン基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂は、位相差材の形成に適用した場合に充分な特性が得られないことが確認されている。特に、これらの樹脂に偏光UVを照射して配向材を形成し、その配向材を用いて重合性液晶からなる位相差材料の光学パターニングをするためには、大きな偏光UV露光量が必要となる。その偏光UV露光量は、通常の液晶パネル用の液晶を配向させるのに十分な偏光UV露光量(例えば、100mJ/cm
2程度。)よりも格段に多いものとなる。
【0009】
偏光UV露光量が多くなる理由としては、位相差材形成の場合、液晶パネル用の液晶と異なり、重合性液晶が溶液の状態で用いられ、配向材の上に塗布されることが挙げられる。
【0010】
側鎖にシンナモイル基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂等を用いて配向材を形成し、重合性液晶を配向させようとする場合、そのアクリル樹脂等においては、光二量化反応による光架橋を行う。そして、重合性液晶溶液に対する耐性が発現するまで、大きな露光量の偏光照射を続ける必要がある。液晶パネルの液晶を配向させるためには、通常、光配向性の配向材の表面のみを二量化反応すればよい。しかし、上述のアクリル樹脂等の従来材料を用いて配向材に溶剤耐性を発現させようとすると、配向材の内部まで反応をさせる必要があり、より多くの露光量が必要となる。その結果、従来材料の配向感度は非常に小さくなってしまうという問題があった。
【0011】
また、上述の従来材料である樹脂にこのような溶剤耐性を発現させるため、架橋剤を添加する技術が知られている。しかし、架橋剤による熱硬化反応を行った後、形成される塗膜の内部には3次元構造が形成され、光反応性は低下することがわかっている。すなわち、配向感度が大きく低下してしまい、従来材料に架橋剤を添加して使用しても、所望とする効果は得られていない。
【0012】
以上より、配向材の配向感度を向上させ、偏光UV露光量を低減できる光配向技術と、その配向材の形成に用いられる硬化膜形成組成物が求められている。そして、高効率にパターン化位相差材を提供することができる技術が求められている。
【0013】
本発明は、以上の知見や検討結果に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、優れた光反応効率を有するとともに耐溶剤性を備え、高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材を提供するための硬化膜形成組成物を提供することである。
【0014】
そして、本発明の別の目的は、その硬化膜形成組成物から得られ、優れた光反応効率を有するとともに耐溶剤性を備え、高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材とその配向材を用いて形成された位相差材を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、
(A)光配向性基と、ヒドロキシ基、カルボキシル基、トリアルコキシシリル基、およびアミノ基から選ばれる1種または2種以上の置換基とを有する化合物、
(B)ヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる1種または2種以上の置換基を有する親水性ポリマー、
(C)トリアルコキシシリル基を2個以上有する化合物、並びに
(D)架橋触媒を含有することを特徴とする硬化膜形成組成物に関する。
【0017】
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基が光二量化または光異性化する構造の官能基であることが好ましい。
【0018】
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基がシンナモイル基であることが好ましい。
【0019】
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基がアゾベンゼン構造の基であることが好ましい。
【0020】
本発明の第1の態様において、(A)成分の化合物が2個以上のヒドロキシ基を有することが好ましい。
【0021】
本発明の第1の態様において、(B)成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリカプロラクトンポリオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種の親水性ポリマーであることが好ましい。
【0022】
本発明の第1の態様において、(B)成分がセルロースまたはその誘導体であることが好ましい。
【0023】
本発明の第1の態様において、(B)成分が、ポリエチレングリコールエステル基および炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうちの少なくとも一方と、カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基のうちの少なくとも一方とを有するアクリル重合体であることが好ましい。
【0024】
本発明の第1の態様において、(B)成分が、ポリエチレングリコールエステル基を有するモノマーおよび炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基を有するモノマーのうちの少なくとも一方と、カルボキシル基を有するモノマーおよびフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーのうちの少なくとも一方とを含むモノマーの重合反応により得られるアクリル共重合体であることが好ましい。
【0025】
本発明の第1の態様において、(B)成分がシクロデキストリンまたはその誘導体であることが好ましい。
【0026】
本発明の第1の態様において、(D)成分が酸または熱酸発生剤であることが好ましい。
【0027】
本発明の第1の態様において、(A)成分と(B)成分との比率が質量比で5:95乃至65:35であることが好ましい。
【0028】
本発明の第1の態様において、(A)成分と(B)との成分合計量の100質量部に基づいて、10質量部乃至100質量部の(C)成分を含有することが好ましい。
【0029】
本発明の第1の態様において、(A)成分と(B)との成分合計量の100質量部に基づいて、0.5質量部乃至20質量部の(D)成分を含有することが好ましい。
【0030】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の熱硬化膜形成組成物より作られることを特徴とする配向材に関する。
【0031】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜を使用して形成されることを特徴とする位相差材に関する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の第1の態様によれば、優れた光反応効率と耐溶剤性とを備え、高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材を提供するための硬化膜形成組成物を提供することができる。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、優れた光反応効率と耐溶剤性を備え、高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材を提供することができる。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、高い効率で形成できて光学パターニングの可能な位相差材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<硬化膜形成組成物>
本実施の形態の硬化膜形成組成物は、(A)低分子の光配向成分と、(B)成分である親水性ポリマー、(C)成分であるトリアルコキシシリル基を2個以上有する化合物、並びに(D)成分である架橋触媒とを含有する。本実施の形態の硬化膜形成組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分並びに(D)成分に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0036】
以下、各成分の詳細を説明する。
<(A)成分>
本実施の形態の硬化膜形成組成物に含有される(A)成分は、光配向性基と、ヒドロキシ基、カルボキシル基、トリアルコキシシリル基およびアミノ基から選ばれる1種または2種以上の置換基とを有する化合物である。
【0037】
そして、(A)成分の化合物においては、光配向性基が光に反応して疎水性の光配向部を構成し、一方カルボキシル基、トリアルコキシシリル基およびアミノ基から選ばれる置換基が親水性の熱反応部を構成する。つまり、(A)成分は、硬化膜に光配向性を付与する成分であり、本願明細書において、(A)成分を光配向成分または低分子の光配向成分とも称する。
尚、本発明において、光配向性基としては光二量化または光異性化する構造部位の官能基を言う。
【0038】
光二量化する構造部位とは、光照射により二量体を形成する部位であり、その具体例としてはシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基等が挙げられる。これらのうち可視光領域での高い透明性および光二量化反応性を有するシンナモイル基が好ましい。また、光異性化する構造部位とは、光照射によりシス体とトランス体とに変わる構造部位を指し、その具体例としてはアゾベンゼン構造、スチルベン構造等からなる部位が挙げられる。これらのうち反応性の高さからアゾベンゼン構造が好ましい。光配向性基とヒドロキシ基とを有する化合物は、例えば、下記式で表される。そのような化合物の具体例を、下記式[A1]乃至式[A5]に示す。
【0040】
前記式中、X
1は単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、アミノ結合またはそれらの組み合わせから選ばれる1種または2種以上の結合を介して、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基またはそれらの組み合わせから選ばれる1乃至3の置換基が結合してなる構造を表す。X
2は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基またはシクロヘキシル基を表す。その際、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基およびシクロヘキシル基は、共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合または尿素結合を介して結合してもよい。X
3はヒドロキシ基、フェニル基、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基またはアルコキシ基を表す。X
4はそれぞれ独立に単結合、炭素原子数1乃至20のアルキレン基、芳香族環基、または、脂肪族環基を表す。ここで炭素原子数1乃至20のアルキレン基は分岐状でも直鎖状でもよい。X
5はヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基またはアルコキシシリル基を表す。Xは単結合、酸素原子または硫黄原子を表す。
なお、これらの置換基において、フェニル基とビフェニル基は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基およびシアノ基から選ばれる同一または相異なる1または複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0041】
上記式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基またはシアノ基を表す。
また、上記式中、A
1は水素原子またはメチル基を表す。A2は水素原子またはメチル基を表す。
【0042】
(A)成分である光配向性基とヒドロキシ基とを有する化合物の具体例としては、例えば、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル、3−メトキシ−4−(6−ドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸メチルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸メチルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸エチルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸エチルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸フェニルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸フェニルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸ビフェニルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸ビフェニルエステル、けい皮酸8−ヒドロキオクチルエステル、けい皮酸6−ヒドロキシヘキシルエステル、けい皮酸4−ヒドロキシブチルエステル、けい皮酸3−ヒドロキシプロピルエステル、けい皮酸2−ヒドロキシエチルエステル、けい皮酸ヒドロキシメチルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)アゾベンゼン、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)アゾベンゼン、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)アゾベンゼン、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)アゾベンゼン、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)アゾベンゼン、4−ヒドロキシメチルオキシアゾベンゼン、4−ヒドロキシアゾベンゼン、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)カルコン、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)カルコン、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)カルコン、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)カルコン、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)カルコン、4−ヒドロキシメチルオキシカルコン、4−ヒドロキシカルコン、4’−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)カルコン、4’−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)カルコン、4’−(4−ヒドロキシブチルオキシ)カルコン、4’−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)カルコン、4’−(2−ヒドロキシエチルオキシ)カルコン、4’−ヒドロキシメチルオキシカルコン、4’−ヒドロキシカルコン、7−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)クマリン、7−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)クマリン、7−(4−ヒドロキシブチルオキシ)クマリン、7−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)クマリン、7−(2−ヒドロキシエチルオキシ)クマリン、7−ヒドロキシメチルオキシクマリン、7−ヒドロキシクマリン、6−ヒドロキシオクチルオキシクマリン、6−ヒドロキシヘキシルオキシクマリン、6−(4−ヒドロキシブチルオキシ)クマリン、6−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)クマリン、6−(2−ヒドロキシエチルオキシ)クマリン、6−ヒドロキシメチルオキシクマリン、6−ヒドロキシクマリン、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−ヒドロキシベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−ヒドロキシベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−ヒドロキシベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−ヒドロキシベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸8−ヒドロキオクチルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸6−ヒドロキシヘキシルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸4−ヒドロキシブチルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸3−ヒドロキシプロピルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸2−ヒドロキシエチルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸ヒドロキシメチルエステル、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4−(4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル)カルコン、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)カルコン、4’−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4’−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4’−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4’−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4’−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4’−(4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル)カルコン、4’−(4−ヒドロキシベンゾイル)カルコンが挙げられる。
【0043】
光配向性基とカルボキシル基とを有する化合物の具体例としてはけい皮酸、フェルラ酸、4−ニトロけい皮酸、4−メトキシけい皮酸、3,4−ジメトキシけい皮酸、クマリン−3−カルボン酸、4−(N,N−ジメチルアミノ)けい皮酸等が挙げられる。
光配向性基とカルボキシル基およびアミノ基とを有する化合物の具体例としてはメチル−4−アミノけい皮酸、エチル−4−アミノけい皮酸、メチル−3−アミノけい皮酸、エチル−3−アミノけい皮酸等が挙げられる。
【0044】
(A)成分である、光配向性基およびアミノ基を有する化合物の具体例としては、4−アミノけい皮酸メチルエステル、4−アミノけい皮酸エチルエステル、3−アミノけい皮酸メチルエステル、3−アミノけい皮酸エチルエステル等が挙げられる。
【0045】
(A)成分である、光配向性基とトリアルコキシシリル基とを有する化合物の具体例としては、4−(3−トリメトキシシリルプロピルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−トリエトキシシリルプロピルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−トリメトキシシリルプロピルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(3−トリエトキシシリルプロピルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(3−トリメトキシシリルヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−トリエトキシシリルヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−トリメトキシシリルヘキシルオキシ)けい皮酸エチルエステルおよび4−(3−トリエトキシシリルヘキシルオキシ)けい皮酸エチルエステル等が挙げられる。
【0046】
(A)成分である低分子の光配向成分は、以上の具体例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
また、(A)成分である光配向成分が、光配向性基とヒドロキシ基とを有する化合物である場合、(A)成分として、分子内に、光配向性基を2個以上および/またはヒドロキシ基を2個以上有する化合物を用いることが可能である。具体的には、(A)成分として、分子内に1個のヒドロキシ基とともに2個以上の光配向性基を有する化合物や、分子内に1個の光配向性基とともに2個以上のヒドロキシ基を有する化合物や、分子内に光配向性基とヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有する化合物を用いることが可能である。例えば、分子内に光配向性基とヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有する化合物については、その一例として、下記式で表される化合物を示すことができる。
【0049】
このような化合物を適宜選択することにより、(A)成分である光配向成分の分子量を高める制御が可能となる。その結果、後述するように、(A)成分である光配向成分および(B)成分であるポリマーと(C)成分である架橋剤とが熱反応する際に、(A)成分である光配向成分が昇華するのを抑制することができる。そして、本実施の形態の硬化膜形成組成物は、硬化膜として、光反応効率の高い配向材を形成することができる。
【0050】
また、本実施の形態の硬化膜形成組成物における(A)成分の化合物としては、光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれるいずれか1つの置換基とを有する、複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0051】
<(B)成分>
本実施の形態の硬化膜形成組成物に含有される(B)成分は、親水性のポリマーである。
そして、(B)成分である親水性ポリマーは、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる1種または2種以上の置換基を有するポリマー(以下、特定重合体とも言う。)とすることができる。
【0052】
本実施の形態の硬化膜形成組成物において、(B)成分である特定重合体としては、(A)成分の化合物より親水性であるように、高い親水性を備えた高親水性ポリマーの選択が好ましい。そして、特定重合体は、ヒドロキシ基やカルボキシル基やアミノ基等の親水性基を有するポリマーであることが好ましく、具体的には、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる1種または2種以上の置換基を有するポリマーであることが好ましい。つまり、本願明細書の(B)成分の親水性ポリマーにおける「親水性」とは、少なくとも(A)成分の化合物より親水性であることを意味する。
【0053】
(B)成分である親水性ポリマーとしては、例えば、アクリル重合体、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエステルポリカルボン酸、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、セルロース類(セルロースまたはその誘導体)、フェノールノボラック樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等の直鎖構造または分岐構造を有するポリマー、シクロデキストリン類等の環状ポリマー等が挙げられる。
【0054】
このうち、アクリル重合体としてはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等の不飽和二重結合を有するモノマーを重合して得られる重合体が適用されうる。
【0055】
(B)成分である特定重合体としては、好ましくは、ヒドロキシアルキルシクロデキストリン類、セルロース類、ポリエチレングリコールエステル基および炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうちの少なくとも一方と、カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基のうちの少なくとも一方とを有するアクリル重合体、アミノアルキル基を側鎖に有するアクリル重合体、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリカプロラクトンポリオールである。
【0056】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例である、ポリエチレングリコールエステル基および炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうち少なくとも一方と、カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基のうち少なくとも一方とを有するアクリル重合体は、斯かる構造を有するアクリル重合体であればよく、アクリル重合体を構成する高分子の主鎖の骨格および側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0057】
ポリエチレングリコールエステル基および炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうち少なくとも一方を有する構造単位として、好ましい構造単位は下記式[B1]で表される。
カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基のうち少なくとも一方を有する構造単位として、好ましい構造単位は下記式[B2]で表される。
【0059】
上記式[B1]および式[B2]中、X
11およびX
12はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、Y
1はH−(OCH
2CH
2)
n−基(ここで、nの値は2乃至50であり、好ましくは2乃至10である。)または炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキル基を表し、Y
2はカルボキシル基またはフェノール性ヒドロキシ基を表す。
【0060】
(B)成分の例であるアクリル重合体は、重量平均分子量が3,000乃至200,000であることが好ましく、4,000乃至150,000であることがより好ましく、5,000乃至100,000であることがさらになお好ましい。重量平均分子量が200,000を超えて過大なものであると、溶剤に対する溶解性が低下しハンドリング性が低下する場合があり、重量平均分子量が3,000未満で過小なものであると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性および耐熱性が低下する場合がある。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。以下、本明細書においても同様とする。
【0061】
(B)成分の例であるアクリル重合体の合成方法としては、ポリエチレングリコールエステル基および炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうち少なくとも一方を有するモノマー(以下、b1モノマーとも言う。)と、カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基のうち少なくとも一方を有するモノマー(以下、b2モノマーとも言う。)とを共重合する方法が簡便である。
【0062】
上述したポリエチレングリコールエステル基を有するモノマーとしては、H−(OCH
2CH
2)
n−OHのモノアクリレートまたはモノメタクリレートが挙げられる。nの値は2乃至50であり、好ましくは2乃至10である。
【0063】
上述した炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートが挙げられる。
【0064】
上述したカルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸が挙げられる。
上述したフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレンが挙げられる。
【0065】
また、本実施の形態においては、(B)成分の例であるアクリル重合体を合成するに際し、本発明の効果を損なわない限り、b1モノマーおよびb2モノマー以外のモノマー、具体的には、ヒドロキシ基およびカルボキシル基のいずれも有さないモノマーを併用することができる。
【0066】
そのようなモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル化合物、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、およびN−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物およびビニル化合物等が挙げられる。
【0067】
(B)成分の例であるアクリル重合体を得るために用いるb1モノマーおよびb2モノマーの使用量は、(B)成分であるアクリル重合体を得るために用いる全モノマーの合計量に基づいて、b1モノマーが2モル%乃至95モル%、b2モノマーが5モル%乃至98モル%であることが好ましい。
【0068】
b2モノマーとしてカルボキシル基のみを有するモノマーを用いる場合、(B)成分であるアクリル重合体を得るために用いる全モノマーの合計量に基づいて、b1モノマーが60モル%乃至95モル%、b2モノマーが5モル%乃至40モル%であることが好ましい。
他方、b2モノマーとしてフェノール性ヒドロキシ基のみを有するモノマーを用いる場合、b1モノマーが2モル%乃至80モル%、b2モノマーが20モル%乃至98モル%であることが好ましい。b2モノマーが過小の場合は液晶配向性が不充分となり易く、過大の場合は(A)成分との相溶性が低下し易い。
【0069】
(B)成分の例であるアクリル重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、b1モノマーとb2モノマーと所望によりb1モノマーおよびb2モノマー以外のモノマーと重合開始剤等とを共存させた溶剤中において、50℃乃至110℃の温度下で重合反応によりアクリル重合体が得られる。その際、用いられる溶剤は、b1モノマーとb2モノマー、所望により用いられるb1モノマーおよびb2モノマー以外のモノマーおよび重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する<溶剤>の項に記載する。
【0070】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例であるアミノアルキル基を側鎖に有するアクリル重合体は、例えば、アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレートおよびアミノプロピルメタクリレート等のアミノアルキルエステルモノマーを重合したもの、または、当該アミノアルキルエステルモノマーと上記のアクリルモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーとを共重合したものが挙げられる。
【0071】
前記方法により得られる(B)成分の例であるアクリル重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0072】
また、上記方法で得られた(B)成分の例であるアクリル重合体の溶液を、攪拌下のジエチルエーテルや水等に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後に、常圧または減圧下で、常温乾燥または加熱乾燥し、(B)成分の例であるアクリル重合体の粉体とすることができる。前記操作により、(B)成分の例であるアクリル重合体と共存する重合開始剤および未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した(B)成分の例であるアクリル重合体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上記の操作を繰り返し行えば良い。
【0073】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例であるポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールやビスフェノールA、トリエチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールにプロピレンオキサイドやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を付加したものが挙げられる。ポリエーテルポリオールの具体例としてはADEKA製アデカポリエーテルPシリーズ、Gシリーズ、EDPシリーズ、BPXシリーズ、FCシリーズ、CMシリーズ、日油製ユニオックス(登録商標)HC−40、HC−60、ST−30E、ST−40E、G−450、G−750、ユニオール(登録商標)TG−330、TG−1000、TG−3000、TG−4000、HS−1600D、DA−400、DA−700、DB−400、ノニオン(登録商標)LT−221、ST−221、OT−221等が挙げられる。
【0074】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例であるポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸等の多価カルボン酸にエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオールを反応させたものが挙げられる。ポリエステルポリオールの具体例としてはDIC製ポリライト(登録商標)OD−X−286、OD−X−102、OD−X−355、OD−X−2330、OD−X−240、OD−X−668、OD−X−2108、OD−X−2376、OD−X−2044、OD−X−688、OD−X−2068、OD−X−2547、OD−X−2420、OD−X−2523、OD−X−2555、OD−X−2560、クラレ製ポリオールP−510、P−1010、P−2010、P−3010、P−4010、P−5010、P−6010、F−510、F−1010、F−2010、F−3010、P−1011、P−2011、P−2013、P−2030、N−2010、PNNA−2016等が挙げられる。
【0075】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例であるポリカプロラクトンポリオールとしては、トリメチロールプロパンやエチレングリコール等の多価アルコールを開始剤としてε−カプロラクトンを開環重合させたものが挙げられる。ポリカプロラクトンポリオールの具体例としてはDIC製ポリライト(登録商標)OD−X−2155、OD−X−640、OD−X−2568、ダイセル化学製プラクセル(登録商標)205、L205AL、205U、208、210、212、L212AL、220、230、240、303、305、308、312、320等が挙げられる。
【0076】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例であるポリカーボネートポリオールとしては、トリメチロールプロパンやエチレングリコール等の多価アルコールと炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート等を反応させたものが挙げられる。ポリカーボネートポリオールの具体例としてはダイセル化学製プラクセル(登録商標)CD205、CD205PL、CD210、CD220、クラレ製のC−590、C−1050、C−2050、C−2090、C−3090等が挙げられる。
【0077】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例であるセルロースとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース類およびセルロース等が挙げられ、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類が好ましい。
【0078】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例であるシクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリン等のシクロデキストリン、メチル−α−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリンならびにメチル−γ−シクロデキストリン等のメチル化シクロデキストリン、ヒドロキシメチル−α−シクロデキストリン、ヒドロキシメチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシメチル−γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−α−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、2,3−ジヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、2,3−ジヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、2,3−ジヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン等のヒドロキシアルキルシクロデキストリン等が挙げられる。
【0079】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例であるメラミンホルムアルデヒド樹脂としてはメラミンとホルムアルデヒドを重縮合して得られる樹脂であり下記式で表される。
【化4】
上記式中、Rは水素原子または炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、nは繰り返し単位の数を表す自然数である。
(B)成分のメラミンホルムアルデヒド樹脂は、保存安定性の観点からメラミンとホルムアルデヒドの重縮合の際に生成したメチロール基がアルキル化されていることが好ましい。
【0080】
(B)成分のメラミンホルムアルデヒド樹脂を得る方法は特には限定されないが、一般的にメラミンとホルムアルデヒドを混合し、炭酸ナトリウムやアンモニア等を用いて弱アルカリ性にした後60−100℃にて加熱することで合成される。さらにアルコールと反応させることでメチロール基をアルコキシ化することができる。
【0081】
(B)成分のメラミンホルムアルデヒド樹脂は、重量平均分子量が250乃至5,000であることが好ましく、300乃至4,000であることがより好ましく、350乃至3,500であることがさらになお好ましい。重量平均分子量が5,000を超えて過大なものであると、溶剤に対する溶解性が低下しハンドリング性が低下する場合があり、重量平均分子量が250未満で過小なものであると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性および耐熱性が低下する場合がある。
【0082】
本発明においては、(B)成分のメラミンホルムアルデヒド樹脂は液体形態で、あるいは精製した液体を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0083】
また、本発明においては、(B)成分のメラミンホルムアルデヒド樹脂は、複数種の(B)成分のメラミンホルムアルデヒド樹脂の混合物であってもよい。
【0084】
(B)成分の特定重合体の好ましい一例であるフェノールノボラック樹脂としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド重縮合物などが挙げられる。
【0085】
本実施の形態の硬化膜形成組成物において、(B)成分のポリマーは、粉体形態で、または精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0086】
また、本実施の形態の硬化膜形成組成物において、(B)成分のポリマーは、(B)成分のポリマーの複数種の混合物であってもよい。
【0087】
<(C)成分>
本実施の形態の硬化膜形成組成物に含有される(C)成分は、トリアルコキシシリル基を2個以上有する化合物である。トリアルコキシシリル基を有するポリマーでもよい。
【0088】
トリアルコキシシリル基を2個以上有する化合物の具体例としては1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、4,4’−ビス(トリメトキシシリル)ビフェニル、4,4’−ビス(トリエトキシシリル)ビフェニル、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、1,3−ビス(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(トリエトキシシリルメチル)アミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)アミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)カーボネート、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)カーボネート、ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]チオウレア、ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]チオウレア、ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]ウレア、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリルメチル)ベンゼン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、1,1,2−トリス(トリメトキシシリル)エタン、1,1,2−トリス(トリエトキシシリル)エタン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等の化合物、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランの単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0089】
これらのトリアルコキシシリル基を2個以上有する化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
本実施の形態の硬化膜形成組成物における(C)成分のトリアルコキシシリル基を2個以上有する化合物の含有量は、(A)成分である化合物と(B)成分のポリマーとの合計量の100質量部に基づいて10質量部乃至100質量部であることが好ましく、より好ましくは15質量部乃至80質量部である。(C)成分のトリアルコキシシリル基を2個以上有する化合物の含有量が過小である場合には、硬化膜形成組成物から得られる硬化膜の溶剤耐性および耐熱性が低下し、光配向時の感度が低下する。他方、含有量が過大である場合には光配向性および保存安定性が低下することがある。
【0091】
<(D)成分>
本実施の形態の硬化膜形成組成物は、上述した(A)成分、(B)成分および(C)成分に加え、(D)成分として架橋触媒を含有する。
(D)成分である架橋触媒としては、例えば、酸または熱酸発生剤とすることができる。この(D)成分は、本実施形態の硬化膜形成組成物を用いた硬化膜の形成において、熱硬化反応の促進に有効となる。
【0092】
(D)成分として酸または熱酸発生剤を用いる場合、(D)成分は、スルホン酸基含有化合物、塩酸またはその塩、プリベークまたはポストベーク時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度80℃乃至250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。
【0093】
そのような化合物としては、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、m−キシレン−2−スルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ(2−エトキシエタン)スルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタン−1−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸またはその水和物や塩等が挙げられる。
【0094】
また、熱により酸を発生する化合物としては、例えば、ビス(トシルオキシ)エタン、ビス(トシルオキシ)プロパン、ビス(トシルオキシ)ブタン、p−ニトロベンジルトシレート、o−ニトロベンジルトシレート、1,2,3−フェニレントリス(メチルスルホネート)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p−トルエンスルホン酸モルフォニウム塩、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、p−トルエンスルホン酸プロピルエステル、p−トルエンスルホン酸ブチルエステル、p−トルエンスルホン酸イソブチルエステル、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸フェネチルエステル、シアノメチルp−トルエンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエチルp−トルエンスルホネート、2−ヒドロキシブチルp−トシレート、N−エチル−4−トルエンスルホンアミド、および下記式[TAG−1]乃至式[TAG−41]で表される化合物等を挙げることができる。
【0102】
本発明の実施形態の硬化膜形成組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分である化合物と(B)成分のポリマーとの合計量の100質量部に対して、好ましくは0.5質量部乃至20質量部、より好ましくは0.8質量部乃至15質量部、さらに好ましくは0.8質量部乃至6質量部である。(D)成分の含有量を0.5質量部以上とすることで、充分な熱硬化性と溶剤耐性を付与することができ、露光に対する高い感度をも付与することができる。また、20質量部以下とすることで、硬化膜形成組成物の保存安定性を良好にすることができる。
【0103】
<溶剤>
本実施の形態の硬化膜形成組成物は、主として溶剤に溶解した溶液状態で用いられる。その際に使用する溶剤は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分、および/または、後述するその他添加剤を溶解できればよく、その種類および構造などは特に限定されるものでない。
【0104】
溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、3−メチル−2−ペンタノン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0105】
これらの溶剤は、1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
【0106】
<その他添加剤>
さらに、本実施の形態の硬化膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、重合開始剤、増感剤、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0107】
例えば、増感剤は、本実施の形態の硬化膜形成組成物を用いて熱硬化膜を形成した後、光反応を促進することにおいて有効である。
【0108】
その他添加剤の一例である増感剤としては、ベンゾフェノン、アントラセン、アントラキノン、チオキサントン等およびその誘導体、並びにニトロフェニル化合物等が挙げられる。これらのうち、ベンゾフェノン誘導体およびニトロフェニル化合物が好ましい。好ましい化合物の具体例としてN,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ニトロフルオレン、2−ニトロフルオレノン、5−ニトロアセナフテン、4−ニトロビフェニル、4−ニトロけい皮酸、4−ニトロスチルベン、4−ニトロベンゾフェノン、5−ニトロインドール等が挙げられる。特に、ベンゾフェノンの誘導体であるN,N−ジエチルアミノベンゾフェノンが好ましい。
【0109】
これらの増感剤は上記のものに限定されるものではない。また、増感剤は単独でまたは2種以上の化合物を組み合わせて併用することが可能である。
【0110】
本実施の形態の硬化膜形成組成物における増感剤の使用割合は、(A)成分と(B)成分との合計質量の100質量部に対して0.1質量部乃至20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部乃至10質量部である。この割合が過小である場合には、増感剤としての効果を充分に得られない場合があり、過大である場合には透過率の低下および塗膜の荒れが生じることがある。
【0111】
<硬化膜形成組成物の調製>
本実施の形態の硬化膜形成組成物は、(A)成分である低分子の光配向成分と、(B)成分である、(A)成分の光配向性成分より親水性であるポリマーと、(C)成分であるトリアルコキシシリル基を2個以上有する化合物と、(D)成分である架橋触媒とを含有する。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0112】
(A)成分と(B)成分の配合比は、質量比で5:95乃至65:35が好ましい。(B)成分の含有量が過大の場合は液晶配向性が低下し易く、過小の場合は溶剤耐性が低下することにより配向性が低下し易い。
【0113】
本実施の形態の硬化膜形成組成物の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分と(B)成分との配合比が質量比で5:95乃至65:35であり、(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、10質量部乃至100質量部の(C)成分と、0.5乃至20質量部の(D)成分とを含有する硬化膜形成組成物。
【0114】
[2]:(A)成分と(B)成分との配合比が質量比で5:95乃至65:35であり、(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、10質量部乃至100質量部の(C)成分と、0.5乃至20質量部の(D)成分と、溶剤を含有する硬化膜形成組成物。
【0115】
本実施の形態の硬化膜形成組成物を溶液として用いる場合の配合割合、調製方法等を以下に詳述する。
本実施の形態の硬化膜形成組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、1質量%乃至80質量%であり、好ましくは3質量%乃至60質量%であり、より好ましくは5質量%乃至40質量%である。ここで、固形分とは、硬化膜形成組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
【0116】
本実施の形態の硬化膜形成組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、溶剤に溶解した(B)成分の溶液に(A)成分、(C)成分および(D)成分を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、或いは、この調製法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤をさらに添加して混合する方法が挙げられる。
【0117】
本実施の形態の硬化膜形成組成物の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる特定重合体の溶液をそのまま使用することができる。この場合、例えば、ポリエチレングリコールエステル基を有するモノマーおよび炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基を有するモノマーのうち少なくとも一方と、カルボキシル基を有するモノマーおよびフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーのうち少なくとも一方とを共重合させて得られる(B)成分の溶液に前記と同様に(A)成分、(C)成分および(D)成分を入れて均一な溶液とする。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を追加投入してもよい。このとき、(B)成分の生成過程で用いられる溶剤と、硬化膜形成組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく、また異なってもよい。
【0118】
また、調製された硬化膜形成組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0119】
<硬化膜、配向材および位相差材>
本実施の形態の硬化膜形成組成物の溶液を基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属、例えば、アルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)やフィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルム)等の上に、バーコート、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布、印刷などによって塗布して塗膜を形成し、その後、ホットプレートまたはオーブン等で加熱乾燥することにより、硬化膜を形成することができる。
【0120】
加熱乾燥の条件としては、硬化膜から形成される配向材の成分が、その上に塗布される重合性液晶溶液に溶出しない程度に、架橋剤による架橋反応が進行すればよく、例えば、温度60℃乃至200℃、時間0.4分間乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度および加熱時間が採用される。加熱温度および加熱時間は、好ましくは70℃乃至160℃、0.5分間乃至10分間である。
【0121】
本実施の形態の硬化性組成物を用いて形成される硬化膜の膜厚は、例えば、0.05μm乃至5μmであり、使用する基板の段差や光学的、電気的性質を考慮し適宜選択することができる。
【0122】
このようにして形成された硬化膜は、偏光UV照射を行うことで配向材、すなわち、液晶等の液晶性を有する化合物を配向させる部材として機能させることができる。
【0123】
偏光UVの照射方法としては、通常150nm乃至450nmの波長の紫外光乃至可視光が用いられ、室温または加熱した状態で垂直または斜め方向から直線偏光を照射することによって行われる。
【0124】
本実施形態の硬化膜組成物から形成された配向材は耐溶剤性および耐熱性を有しているため、この配向材上に、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、配向材上で配向させる。そして、配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させ、光学異方性を有する層として位相差材を形成することができる。
【0125】
位相差材料としては、例えば、重合性基を有する液晶モノマーおよびそれを含有する組成物等が用いられる。そして、配向材を形成する基板がフィルムである場合には、本実施の形態の位相差材を有するフィルムは、位相差フィルムとして有用である。このような位相差材を形成する位相差材料は、液晶状態となって、配向材上で、水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向状態をとるものがあり、それぞれ必要とされる位相差に応じて使い分けることが出来る。
【0126】
また、3Dディスプレイに用いられるパターン化位相差材を製造する場合には、本実施形態の硬化膜組成物から上記した方法で形成された硬化膜に、ラインアンドスペースパターンのマスクを介して所定の基準から、例えば、+45度の向きで偏光UV露光し、次いで、マスクを外してから−45度の向きで偏光UVを露光し、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材を得る。その後、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、配向材上で配向させる。そして、配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させ、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置された、パターン化位相差材を得ることができる。
【0127】
また、上記のようにして形成された、本実施の形態の配向材を有する2枚の基板を用い、スペーサを介して両基板上の配向材が互いに向かい合うように張り合わせた後、それらの基板の間に液晶を注入して、液晶が配向した液晶表示素子とすることもできる。
そのため、本実施の形態の硬化膜形成組成物は、各種位相差材(位相差フィルム)や液晶表示素子等の製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例を挙げて、本実施の形態をさらに詳しく説明するが、本実施の形態は、これら実施例に限定されるものでない。
【0129】
[実施例で用いる略記号]
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
<光配向性基とヒドロキシ基とを有する化合物>
CIN1:4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル
CIN2:3−メトキシ−4−(6−ドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル
【0130】
<特定重合体原料>
MAA:メタクリル酸
MMA:メタクリル酸メチル
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
AIBN:α、α’−アゾビスイソブチロニトリル
HPCEL:ヒドロキシプロピルセルロース
AADEG:ポリエステル(アジピン酸/ジエチレングリコール)
【0131】
<アルコキシシラン化合物>
TTMSI:トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート
BTMSE:ビス(トリメトキシシリル)エタン
【0132】
<架橋触媒>
PTSA:パラトルエンスルホン酸・1水和物
PPTS:パラトルエンスルホン酸ピリジン塩
【0133】
<溶剤>
PM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0134】
以下の合成例に従い得られたアクリル共重合体の数平均分子量および重量平均分子量は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803LおよびKF804L)を用い、溶出溶媒テトラヒドロフランを流量1mL/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。尚、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)および重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表した。
【0135】
<合成例1>
MAA 2.5g、MMA 9.2g、HEMA 5.0g、重合触媒としてAIBN 0.2gをPM 50.7gに溶解し、70℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度25質量%)(P1)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは19,600、Mwは45,200であった。
【0136】
<実施例1乃至5、比較例1、2>
表1に示す組成にて実施例および比較例の各硬化膜形成組成物を調製し、それぞれについて、密着性、配向感度、パターン形成性、透過率の評価を行った。
【0137】
【表1】
【0138】
[密着性の評価]
実施例および比較例の各硬化膜形成組成物を無アルカリガラス上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度130℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光を垂直に50mJ/cm
2照射した。露光後の基板上に形成された硬化膜表面にメルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。この塗膜を1000mJ/cm
2で露光し、硬化膜上に重合性液晶層を有する位相差材を作製した。得られた基板上の位相差材表面にカッターナイフを用いてクロスカット(1mm×1mm×100マス)を入れ、その後、粘着テープを貼り付け、次いで、その粘着テープを剥がした時に基板上の位相差材(硬化膜および重合性液晶層)が剥がれず残っているマス目の個数をカウントした。位相差材が剥がれず残っているマス目が90個以上残っているものを密着性が良好と判断した。
【0139】
[配向感度の評価]
実施例および比較例の各硬化膜形成組成物を無アルカリガラス上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度130℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光を垂直に照射し、配向材を形成した。基板上の配向材表面に、メルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。この塗膜を1000mJ/cm
2で露光し、配向材上に重合性液晶層を有する位相差材を作製した。作製した基板上の位相差材を一対の偏光板で挟み込み、位相差材における位相差特性の発現状況を観察し、配向材が液晶配向性を示すのに必要な偏光UVの露光量を測定した。高い配向感度を有する配向材の方が、低い露光量で配向材上の重合性液晶層に配向性を示すことができる。
【0140】
[パターン形成性の評価]
実施例および比較例の各硬化膜形成組成物を無アルカリガラス上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度130℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い硬化膜を形成した。この硬化膜に100μmのラインアンドスペースマスクを介し313nmの直線偏光を30mJ/cm
2垂直に照射した。マスクを取り外し、基板を90度回転させた後、313nmの直線偏光を15mJ/cm
2垂直に照射し、液晶の配向制御方向が90度異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材を得た。この基板上の配向材の上に、メルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。この塗膜を1000mJ/cm
2で露光し、重合性液晶を重合させて、異なる位相差特性を有する2種類の領域が規則的に配列されたパターン化位相差材を作製した。作製した基板上のパターン化位相差材を、偏光顕微鏡を用いて観察し、配向欠陥なく位相差パターンが形成されているものを○、配向欠陥が見られるものを×として評価した。
【0141】
[光透過率(透明性)の評価]
実施例および比較例の各硬化膜形成組成物を石英基板上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回塗布した後、温度130℃で120秒間ホットプレート上において加熱乾燥ベークを行い膜厚300nmの硬化膜を形成した。膜厚はFILMETRICS社製 F20を用いて測定した。この硬化膜を紫外線可視分光光度計((株)島津製作所製SHIMADZU UV−2550型番)を用いて波長400nmの光に対する透過率を測定した。
【0142】
[評価の結果]
以上の評価を行った結果を、表2に示す。
【0143】
【表2】
【0144】
実施例1乃至5で調製した熱硬化膜形成組成物を用いて得られた配向材は、いずれも100mJ/cm
2よりも少ない露光量で液晶配向性を示し、高い配向感度を有するものであると理解できる。また、光学パターニングを行うことができた。さらに、高い透明性を示した。
【0145】
比較例1および2は、配向させることは困難であり、光パターニングを行うことができなかった。