(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂組成物の熱硬化物が、周波数1GHz以上の領域での、誘電率(ε)が2.5以下であり、誘電正接(tanδ)が0.0025以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のカバーレイフィルムは、加熱硬化後において高周波での電気特性に優れており、周波数1〜10GHzの領域での誘電率を3.0以下、さらには2.5以下とすることができる。また、周波数1〜10GHzの領域での誘電正接(tanδ)を0.01以下、さらには0.0025以下にすることができる。
【0006】
高周波特性についての要求はますますきびしくなっており、周波数1〜10GHzの領域での誘電率は2.5以下であることが求められ、周波数1〜10GHzの領域での誘電正接(tanδ)を0.0025以下であることが求められる。
特許文献2に記載のカバーレイフィルムはこの要求を満たすことができるが、長期の保存性という点で問題があることが明らかになった。
【0007】
特許文献2に記載のカバーレイフィルムでは、(E)成分の硬化剤として、カバーレイフィルムの加熱硬化をより低い温度(例えば、通常200℃で硬化させるものを150℃で硬化)で進行させることができる点でマレイミド系硬化剤が好ましいとされており、中でも、ビスマレイミドが誘電特性の保持、接着力付与及び高Tg(ガラス転移点)化の観点から好ましいとされている。
しかしながら、(E)成分の硬化剤として、ビスマレイミドを使用すると、長期の保存時に、フィルム中で結晶化が起こり、フィルムの外観が悪化する。
また、カバーレイフィルムの使用時には、基材付フィルムをFPC上に仮圧着した後、基材を剥がし、その後加熱硬化させるが、長期の保存時に、フィルム中でビスマレイミドの結晶化が経時的に進行すると、仮圧着性が低下するため問題となる。
【0008】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するため、FPCの配線をなす金属箔や、ポリイミドフィルム、液晶ポリマー等のFPCの基板材料に対して優れた接着強度を有し、かつ、高周波領域での電気特性、具体的には、周波数1〜10GHzの領域で低誘電率(ε)、および、低誘電正接(tanδ)を示し、かつ、シェルフライフが良好である絶縁フィルム、および、該絶縁フィルムの製造に用いる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、
(A)両末端にエチレン性不飽和基を有する変性ポリフェニレンエーテル、
(B)エポキシ樹脂、
(C)スチレン系熱可塑性エラストマー、
(D)1分子中にイミド基とアクリレート基とを有する化合物、および、
(E)硬化触媒
を含有し、前記成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、
成分(A)を30〜50質量部、成分(B)を2〜15質量部、成分(C)を40〜60質量部、前記成分(D)を0.5〜4質量部含有することを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明の樹脂組成物において、前記(B)成分のエポキシ樹脂が、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0011】
本発明の樹脂組成物において、前記(E)成分の硬化触媒が、イミダゾール系硬化触媒であることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物において、前記(E)成分の硬化触媒が、ベンゼン環を有するイミダゾール系硬化触媒であることが好ましい。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、さらに(F)有機過酸化物を含有してもよい。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の熱硬化物が、周波数1〜10GHzの領域での、誘電率(ε)が2.5以下であり、誘電正接(tanδ)が0.0025以下であることがより好ましい。
また、本発明は、本発明の樹脂組成物から形成される絶縁フィルムを提供する。
【0014】
また、本発明は、基板間の層間接着に本発明の樹脂組成物が用いられる半導体装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、基板間の層間接着に本発明の絶縁フィルムが用いられる半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂組成物から形成される絶縁フィルムは、FPCの配線をなす金属箔や、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム等のFPCの基板材料に対して優れた接着強度を有し、かつ、高周波領域での電気特性、具体的には、周波数1〜10GHzの領域で低誘電率(ε)、および、低誘電正接(tanδ)を示す。また、シェルフライフが良好であり、長期の保存時にも、フィルム中の成分の結晶化が起こりにくく、フィルムの外観の悪化や、フィルムの物性の悪化、具体的には、フィルムの仮圧着性の低下が起こりにくい。そのため、電気・電子用途の接着フィルムやプリント配線板のカバーレイフィルムに好適である。また、半導体装置の基板間の層間接着に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、以下に示す成分(A)〜成分(E)を必須成分として含有する。
【0018】
(A)両末端にエチレン性不飽和基を有する変性ポリフェニレンエーテル
成分(A)の両末端にエチレン性不飽和基を有する変性ポリフェニレンエーテルにおける、エチレン性不飽和基としては、エテニル基、アリル基、メタリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、およびオクテニル基等のアルケニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、ビニルベンジル基およびビニルナフチル基等のアルケニルアリール基が挙げられ、ビニルベンジル基が好ましい。両末端の2つのエチレン性不飽和基は、同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。
【0019】
成分(A)の両末端にエチレン性不飽和基を有する変性ポリフェニレンエーテルとしては、下記一般式(1)で示される変性ポリフェニレンエーテルが好ましい。
【化1】
式(1)中、−(O−X−O)−は、下記一般式(2)または(3)で表される。
【化2】
【化3】
【0020】
式(2)中、R
1,R
2,R
3,R
7,R
8は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R
4,R
5,R
6は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。
【0021】
式(3)中、R
9,R
10,R
11,R
12,R
13,R
14,R
15,R
16は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。
【0022】
式(1)中、−(Y−O)−は、一般式(4)で表され、1種類の構造または2種類以上の構造がランダムに配列している。
【化4】
式(4)中、R
17,R
18は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R
19,R
20は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。
【0023】
式(1)中、a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。
【0024】
式(3)における−A−としては、例えば、メチレン、エチリデン、1−メチルエチリデン、1,1−プロピリデン、1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)、1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1−フェニルエチリデン、等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
式(1)で示される変性ポリフェニレンエーテルとしては、R
1,R
2,R
3,R
7,R
8,R
17,R
18が炭素数3以下のアルキル基であり、R
4,R
5,R
6,R
9,R
10,R
11,R
12,R
13,R
14,R
15,R
16,R
19,R
20が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるものが好ましく、特に一般式(2)または一般式(3)で表される−(O−X−O)−が、一般式(5)、一般式(6)、または一般式(7)であり、一般式(4)で表される−(Y−O)−が、式(8)または式(9)であるか、あるいは式(8)と式(9)がランダムに配列した構造であることがより好ましい。
【0028】
式(1)で示される変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、2官能フェノール化合物と1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーの末端フェノール性水酸基をビニルベンジルエーテル化することで製造することができる。
【0029】
成分(A)の両末端にエチレン性不飽和基を有する変性ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算で500〜4,500の範囲が好ましく、500〜3,000の範囲がより好ましく、さらに好ましくは1000〜2500の範囲である。数平均分子量が500以上であれば、本発明の樹脂組成物を塗膜状にした際にべたつき難く、また、4500以下であれば、溶剤への溶解性の低下を防止できる。
【0030】
成分(A)の両末端にエチレン性不飽和基を有する変性ポリフェニレンエーテルは、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、30〜60質量部含まれることが好ましく、30〜50質量部含まれることがより好ましく、35〜45質量部含まれることがさらに好ましい。
成分(A)が少なすぎると、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムの成形性が悪化する上、所望の高周波特性が得られにくくなる。成分(A)が多すぎると相対的に成分(B)及び成分(C)の量が減少するため、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムの接着性が悪化する。また、成分(A)としては、高周波特性の観点から比誘電率が3.0以下のものを用いることが好ましい。
【0031】
(B)エポキシ樹脂
成分(B)のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、シロキサン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、およびナフタレン環含有エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂組成物において、ここで例示した
化合物は単独で用いられてもよいし、2つ以上のものが混合して用いられてもよい。なお、フィルムの成形性の観点から、成分(B)のエポキシ樹脂は液状であることが好ましい。
また、成分(B)のエポキシ樹脂は、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であることが、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムの接着性が向上するため好ましい。
【0032】
成分(B)のエポキシ樹脂は、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、2〜15質量部含まれることが好ましく、4〜12質量部含まれることがより好ましく、6〜11質量部含まれることがさらに好ましい。
成分(B)が少なすぎると、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムの接着性が悪化する。成分(B)が多すぎると相対的に成分(A)及び成分(C)の量が減少するため、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムの成形性が悪化する、また、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムの高周波特性が悪化する。
【0033】
(C)スチレン系熱可塑性エラストマー
成分(C)のスチレン系熱可塑性エラストマーとは、スチレン、その同族体もしくはその類似体を含有する熱可塑性エラストマーをいう。成分(C)としては、例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、およびポリブタジエン(PB)が挙げられる。ここで例示した化合物は単独で用いられてもよいし、2つ以上のものが混合して用いられてもよい。FPCの配線をなす金属箔や、ポリイミドフィルム、液晶ポリマー等のFPCの基板材料に対する接着強度向上の観点からは、成分(C)がSEEPSを含むことが好ましい。成分(C)中のSEEPSの量は、10〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。また、耐熱性の観点からは、成分(C)がSEBSを含むことが好ましい。
【0034】
成分(C)のスチレン系熱可塑性エラストマーは、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、30〜70質量部含まれることが好ましく、40〜60質量部含まれることがより好ましく、45〜55質量部含まれることがさらに好ましい。
成分(C)が多すぎると成形性が悪化する。成分(C)が少なすぎると接着強度が悪化し、さらに成形性も悪化する。また、成分(C)としては、高周波特性の観点から比誘電率が3.0以下のものを用いることが好ましい。
【0035】
(D)1分子中にイミド基とアクリレート基とを有する化合物
成分(D)は、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムの硬化を補助する成分である。上述したように、特許文献2に記載のカバーレイフィルムでは、(E)成分の硬化剤として、ビスマレイミドを使用するため、長期の保存時に、フィルム中で結晶化が起こり、フィルムの外観が悪化する、また、フィルム中でビスマレイミドの結晶化が経時的に進行することで、カバーレイフィルムの使用時に仮圧着性が低下するため問題があった。
これに対し、本発明の樹脂組成物は、成分(D)として、1分子中にイミド基とアクリレート基とを有する化合物を使用するため、樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムの長期の保存時に、フィルム中の成分の結晶化が起こりにくく、フィルムの外観の悪化や、フィルムの物性の悪化、具体的には、フィルムの仮圧着性の低下が起こりにくい。フィルムの仮圧着性は、絶縁フィルムをカバーレイフィルムとして使用する場合に限らず、電気・電子用途の接着フィルムとして使用する場合や、半導体装置の基板間の層間接着に使用する場合にも要求される特性である。
成分(D)として使用する、1分子中にイミド基とアクリレート基とを有する化合物は、誘電特性の保持、接着力付与及び高Tg(ガラス転移点)化の観点においても、ビスマレイミドと遜色ない。
【0036】
成分(D)としては、イミドアクリレートが挙げられる。イミドアクリレートとしては、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−アクリロイルオキシエチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、N−アクリロイルオキシエチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドが挙げられ、特にN−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドが好ましい。
【0037】
成分(D)の含有量は、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、0.5〜4質量部である。成分(D)の含有量が上記の範囲外の場合は、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムが所望の接着強度を得られない。
成分(D)の含有量は、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、0.5〜3.0質量部であることが好ましく、0.5〜2.5質量部であることがより好ましい。
【0038】
(E)硬化触媒
成分(E)の硬化触媒は、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムの硬化、より具体的には、成分(B)のエポキシ樹脂の硬化反応を促進する触媒である。
成分(E)としては、例えば、イミダゾール系硬化触媒、アミン系硬化触媒、リン系硬化触媒等が挙げられる。イミダゾール系硬化触媒としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−イミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。中でも、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、および、1−シアノエチル−2−エチル−4−イミダゾールが好ましい。アミン系硬化触媒としては、2,4−ジアミノ−6−〔2’―メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン等のトリアジン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン化合物が挙げられる。中でも、2,4−ジアミノ−6−〔2’―メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンが好ましい。また、リン系硬化触媒としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。これらの中でもイミダゾール系硬化触媒が、適度な硬化性で調整できるため好ましい。さらに、ベンゼン環を有するイミダゾール系硬化触媒が、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムのシェルフライフを長くできるためより好ましい。このようなイミダゾール系硬化触媒としては、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールが挙げられ、特に1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
【0039】
成分(E)の含有量は、成分(E)として使用する硬化触媒の種類に応じて適宜選択する。成分(E)としてイミダゾール系硬化触媒を使用する場合は、成分(B)のエポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜15質量部であることがより好ましく、1〜10質量部であることがさらに好ましい。
成分(E)の含有量が少なすぎると硬化性が悪化する。一方、成分(E)の含有量が多すぎると絶縁フィルムのシェルフライフが悪化する問題がある。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、上記成分(A)〜成分(E)以外に、以下に述べる成分を必要に応じて含有してもよい。
【0041】
(F)有機過酸化物
成分(F)の有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイドなどが挙げられる。成分(F)の有機過酸化物を添加することにより、成分(A)の硬化反応を促進することができ、反応性を安定させることができる。
本発明の樹脂組成物をフィルム化して使用することを考慮すると、成分(F)としては、フィルム化の乾燥工程の60〜120℃の温度域では活性化せず、それ以上の温度域で活性化するものが好ましい。そのような成分(F)としては、t−ブチルパーオキシベンゾエートが挙げられる。
【0042】
(その他の配合剤)
本発明の樹脂材組成物は、上記成分(A)〜成分(F)以外の成分を必要に応じてさらに含有してもよい。このような成分の具体例としては、シランカップリング剤、消泡剤、流動調整剤、成膜補助剤、分散剤、無機粒子などを配合することができる。各配合剤の種類、配合量は常法通りである。
【0043】
一方、本発明の樹脂組成物を用いて形成される絶縁フィルムの高周波特性に悪影響を及ぼす成分は含有しないことが好ましい。このような成分としては、液状ゴム、難燃剤等が挙げられる。
【0044】
(樹脂組成物の調製)
本発明の樹脂組成物は、慣用の方法により製造することができる。例えば、溶剤の存在下で、上記成分(A)〜成分(D)(他の任意成分を含有する場合はさらにこれらの任意成分)を加熱混合ニーダーにより混合する(回転数100〜1000rpm、80℃、3時間)。
これを冷却した後、さらに成分(E)(樹脂組成物が成分(F)を含む場合はさらに成分(F))を加え、30〜60分間常温で攪拌することができる。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、以下に示す好適な特性を有している。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、その熱硬化物が高周波での電気特性に優れている。具体的には、樹脂組成物の熱硬化物は、周波数1〜10GHzの領域での誘電率(ε)が2.5以下であることが好ましく、2.4以下であることがより好ましい。また、周波数1〜10GHzの領域での誘電正接(tanδ)が0.0025以下であることがより好ましく、0.0022以下であることがより好ましい。
周波数1〜10GHzの領域での誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)が上記の範囲であることにより、周波数1〜10GHzの領域での電気信号損失を低減することができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物は、その熱硬化物が十分な接着強度を有している。具体的には、樹脂組成物の熱硬化物は、JIS K6854−2に準拠して測定した銅箔粗化面に対するピール強度(180度ピール)が7N/cm以上あることが好ましく、より好ましくは8N/cm以上である。
また、JIS K6854−1に準拠して測定した液晶ポリマーフィルムに対するピール強度(90度ピール)が6N/cm以上あることが好ましく、より好ましくは7N/cm以上である。
【0048】
本発明の絶縁フィルムは、本発明の樹脂組成物から公知の方法により得ることができる。例えば、本発明の樹脂組成物を溶剤で希釈してワニスとし、これを支持体の少なくとも片面に塗布し、乾燥させた後、支持体付のフィルム、または、支持体から剥離したフィルムとして提供することができる。
【0049】
ワニスとして使用可能な溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等の高沸点溶剤等が挙げられる。溶剤の使用量は特に限定されず、従来から使用されている量とすることができるが、好ましくは、固形分に対して20〜90質量%である。
【0050】
支持体は、フィルムの製造方法における所望の形態により適宜選択され、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム等の金属箔、ポリエステル、ポリエチレン等の樹脂のキャリアフィルム等が挙げられる。本発明の絶縁フィルムを、支持体から剥離したフィルムの形態として提供する場合、支持体は、シリコーン化合物等で離型処理されていることが好ましい。
【0051】
ワニスを塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、スロットダイ方式、グラビア方式、ドクターコーター方式等が挙げられ、所望のフィルムの厚みなどに応じて適宜選択されるが、特に、グラビア方式がフィルムの厚みを薄く設計しうることから好ましい。塗布は、乾燥後に形成されるフィルムの厚みが、所望の厚みになるように行われる。このような厚みは、当業者であれば、溶剤含有量から導くことができる。
【0052】
本発明の絶縁フィルムの厚みは、用途に応じて要求される機械的強度などの特性に基づいて適宜設計されるが、一般に1〜100μmであり、薄膜化が要求される場合、1〜30μmであることが好ましい。
【0053】
乾燥の条件は、ワニスに使用される溶剤の種類や量、ワニスの使用量や塗布の厚みなどに応じて適宜設計され、特に限定されるものではないが、例えば、60〜100℃であり、大気圧下で行うことができる。
【0054】
本発明の絶縁フィルムは、シェルフライフが良好であり、長期の保存時にも、フィルム中の成分の結晶化による、フィルムの外観の悪化が起こりにくい。
また、長期の保存時にも、後述する手順で測定される、フィルムの仮圧着性の低下が起こりにくい。
【0055】
本発明の絶縁フィルムを、電気・電子用途の接着フィルムとして使用する場合、その使用手順は以下の通り。
本発明の絶縁フィルムを用いて接着する対象物のうち、一方の対象物の被接着面に本発明の絶縁フィルムを載置した後、もう一方の対象物をその被接着面が絶縁フィルムの露出面と接するように載置する。ここで、支持体付の絶縁フィルムを用いる場合、絶縁フィルムの露出面が一方の対象物の被接着面に接するように絶縁フィルムを載置して、被着面上に該絶縁フィルムを仮圧着する。ここで、仮圧着時の温度は例えば130℃とすることができる。
次に、仮圧着後に支持体を剥離することによって露出した絶縁フィルムの面上にもう一方の対象物をその被接着面が絶縁フィルムの露出面と接するように載置する。これらの手順を実施した後、所定温度及び所定時間熱圧着させ、その後、加熱硬化させる。なお、熱圧着工程は省略しても良い。
熱圧着時の温度は好ましくは100〜150℃である。熱圧着の時間は好ましくは0.5〜10分である。
加熱硬化の温度は、好ましくは150〜200℃である。加熱硬化時間は、好ましくは30〜120分である。
なお、予めフィルム化したものを使用する代わりに、本発明の樹脂組成物を溶剤で希釈したワニスを、一方の接着対象物の被接着面に塗布し、乾燥させた後に、上記した一方の対象物を載置する手順を実施してもよい。
【0056】
本発明の絶縁フィルムをカバーレイフィルムとして使用する場合、その使用手順は以下の通り。
本発明の絶縁フィルムを、主面に配線パターンが形成された配線付樹脂基板の所定の位置、すなわち、配線パターンが形成された側の、絶縁フィルムで被覆する位置に、該カバーレイフィルムを配置した後、所定温度及び所定時間仮圧着、熱圧着、加熱硬化させればよい。なお、熱圧着工程は省略しても良い。仮圧着、熱圧着、加熱硬化の温度と時間は、上記電気・電子用途の接着フィルムとして使用する場合と同様である。
【0057】
本発明の絶縁フィルムは、半導体装置の基板間の層間接着にも使用できる。この場合、上記した接着する対象物が、半導体装置を構成する、互いに複数層積層された複数の基板となる。なお、半導体装置の基板間の層間接着についても、予めフィルム化したものを使用する代わりに、本発明の樹脂組成物を溶剤で希釈したワニスを使用してもよい。
【0058】
半導体装置を構成する基板は特に限定されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂等の有機基板や、CCL基板、セラミック基板やシリコン基板等の無機基板のいずれも使用できる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
(実施例1〜10、比較例1〜5)
サンプル作製と測定方法
各成分を下記表に示す配合割合(質量部)になるように、計量配合した後、それらを80℃に加温された反応釜に投入し、回転数250rpmで回転させながら、常圧混合を3時間行った。但し、成分(E)の硬化触媒、および、成分(F)の有機過酸化物は、冷却後に加えた。
このようにして得られた樹脂組成物を含むワニスを支持体(離型処理をほどこしたPETフィルム)の片面に塗布し、100℃(成分(F)の有機過酸化物を含む場合は80℃)で乾燥させることにより、支持体付の絶縁フィルムを得た。
なお、表中の略号はそれぞれ以下を表わす。
成分(A)
OPE2200:オリゴフェニレンエーテル(上記一般式(1)で示される変性ポリフェニレンエーテル(式(1)中の−(O−X−O)−が一般式(5)であり、式(1)中の−(Y−O)−が式(8)である)(Mn=2200)、三菱瓦斯化学株式会社製
成分(B)
NC3000H:ビフェニル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製
828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製
HP4032D:ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC株式会社製
成分(C)
タフテックH1052:ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン(SEBS))、旭化成ケミカルズ株式会社製
セプトン4044:ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEEPS)、株式会社クラレ製
成分(D)
M−140:イミドアクリレート(N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド)、東亞合成株式会社製
成分(D´)
BMI−70:ビスマレイミド、ケイ・アイ化成株式会社製
M−5300:モノアクリレート(ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート)、東亞合成株式会社
成分(E)
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成工業株式会社製
1B2PZ:1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、四国化成工業株式会社製
成分(F)
パーブチルZ:tert−ブチルパーオキシベンゾエート、日油株式会社製
その他の成分
KBM403:シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製
【0061】
誘電率(ε)、誘電正接(tanδ):絶縁フィルムを200℃((成分(F)の有機過酸化物を含む場合は180℃))で加熱硬化させ、支持体から剥離した後、該絶縁フィルムから試験片(40±0.5mm×100±2mm)を切り出し、厚みを測定した。試験片を長さ100mm、直径2mm以下の筒状に丸めて、空洞共振器摂動法(10GHz)にて、誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)を測定した。
ピール強度(Cu):支持体からはがした絶縁フィルムの両面に、粗化面を内側にした銅箔(CF−T8、福田金属箔粉工業株式会社製、厚さ18μm)を貼り合わせ、プレス機で加熱硬化させた(200℃、60min、10kgf、成分(F)の有機過酸化物を含む場合は180℃、60min、10kgf)。この試験片を10mm幅でカットし、オートグラフで引きはがして、JIS K6854−2に準拠してピール強度(180度ピール)を測定した。
ピール強度(LCP):支持体からはがした絶縁フィルムの片面に、液晶ポリマー(LCP)フィルム(ベクスターCT−Z、株式会社クラレ製、25μm)を貼り合わせ、絶縁フィルムの他方の片面にFR4基板を貼り合わせ、200℃、60min、10kgf(成分(F)の有機過酸化物を含む場合は180℃、60min、10kgf)加熱硬化させた後、JIS K6854−1に準拠してオートグラフで引きはがして、ピール強度(90度ピール)を測定した。
仮圧着性:上記の手順で作製した支持体付の絶縁フィルムをロールラミネーターにて130℃で液晶ポリマー(LCP)フィルム(ベクスターCT−Z、株式会社クラレ製、25μm)にラミネートした。ラミネート後に支持体をはがし、その後、この絶縁フィルムでラミネートしたLCPフィルムを折り曲げた。折り曲げた際、フィルム同士の剥離が無い場合を○とし、フィルム同士の剥離が有る場合を×とした。同様の手順を、作製後、3カ月間、常温大気雰囲気下で保管した支持体付の絶縁フィルムについても実施した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
実施例1〜10は、高周波の電気特性(誘電率(ε)、誘電正接(tanδ))、ピール強度、仮圧着性のいずれも優れていた。実施例1に対し、実施例2〜10の相違点は以下の通り。
実施例2:成分(F)を含まない。
実施例3、4:成分(F)を含まない、成分(D)の含有量が異なる。
実施例5、6:成分(B)のエポキシ樹脂の種類が異なる、成分(C)の熱可塑性エラストマーの配合割合が異なる、成分(D)の含有量が異なる、成分(E)の硬化触媒の種類が異なる、その他の成分としてシランカップリング剤を添加。
実施例7:成分(D)の含有量が異なる、成分(E)の硬化触媒の種類が異なる、成分(F)を含まない、その他の成分としてシランカップリング剤を添加。
実施例8:成分(E)の硬化触媒の種類が異なる、その他の成分としてシランカップリング剤を添加。
実施例9:成分(B)のエポキシ樹脂の種類が異なる、成分(E)の硬化触媒の種類が異なる、その他の成分としてシランカップリング剤を添加。
実施例10:成分(E)の硬化触媒の種類が異なる、成分(F)を含まない。
成分(D)のイミドアクリレートの代わりに、ビスマレイミドを使用した比較例1、2は、3カ月後の仮圧着性が劣っていた。ビスマレイミドの含有量が高い比較例1は、高周波の電気特性のうち、誘電正接(tanδ)が劣っていた。
成分(D)のイミドアクリレートの代わりに、モノアクリレートを使用した比較例3は、LCPフィルムに対するピール強度が低かった。また、高周波の電気特性のうち、誘電正接(tanδ)が劣っていた。3カ月後の仮圧着性が劣っていた。
成分(D)を含まない比較例4は、LCPフィルムに対するピール強度が低かった。
成分(D)の含有量が多すぎる比較例5は、LCPフィルムに対するピール強度が低かった。