特許第6459364号(P6459364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6459364ポリマー溶液、積層体、及び積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6459364
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】ポリマー溶液、積層体、及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20190121BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20190121BHJP
   C08F 20/30 20060101ALI20190121BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20190121BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20190121BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20190121BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   G02F1/1337 520
   G02B5/30
   C08F20/30
   B32B27/30 A
   B05D5/06 104D
   B05D7/04
   C08L33/14
【請求項の数】9
【全頁数】106
(21)【出願番号】特願2014-203111(P2014-203111)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-71286(P2016-71286A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】高島 正直
(72)【発明者】
【氏名】小寺 史晃
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 浩史
【審査官】 岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/073658(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0048760(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
B32B 27/30
G02B 5/30
G02F 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PMMA系基材上に光配向膜を形成する用途で使用されるポリマー溶液であって、
溶媒とポリマーとを含み、
前記溶媒のハンセン溶解度パラメータと、前記PMMA系基材のハンセン溶解度パラメータとの距離が5.0より大きいポリマー溶液であり、
前記ポリマーが、一般式(PI)
【化1】
(式中、Spはスペーサー単位を表し、
Aは
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−、−NH−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)、及び
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)又は基(c)はそれぞれ無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、
rは、0、1又は2を表すが、rが2を表す場合に、複数存在するAは同一であっても異なっていてもよく、
X及びYは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1から20のアルキル基を表すが、前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、1つのCH基又は2つ以上の非隣接CH基は−O−、−CO−O−、−O−CO−及び/又は−CH=CH−で置換されていても良く、Zは、一般式(IIa)又は(IIb)
【化2】
(式中、破線はZが結合する炭素原子への結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基を表し、R及びR中の1つの−CH−基又は2つ以上の非隣接−CH−基は−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NCH−、−CH=CH−、−CF=CF−及び/又は−C≡C−で置換されていても良く、R及びR中の1つ又は2つ以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、R及びR中の水素原子は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表し、
Mb及びMdはポリマーのモノマー単位を表し、y及びwは、コポリマーのモル分率を表し、0<y≦1かつ、0≦w<1であり、nは、4〜100,000を表し、Mb及びMdの並びは式と同一であっても異なっていても良く、Mb及びMdのモノマー単位は各々独立して1種類でも2種類以上の異なる単位からなっていても良い。)
で表される構造単位を有し、
前記一般式(IIa)又は(IIb)において、
が水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基(前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表し、
は直鎖状又は分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基(前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子は非置換であるか又は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表し、
かつ前記一般式(PI)において、Spが一般式(IVc)
【化3】
(式中、Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立して単結合、−(CH)u−(式中、uは1〜20の整数を表す。)、−OCH−、−CHO−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表すが、これらの置換基において非隣接のCH基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH―、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−(式中、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)で置換することができ、
A2は、それぞれ独立して
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−、−NH−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)、及び
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)又は基(c)はそれぞれ無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、
Aが1,4−フェニレン基(この基中に存在する3個以上の−CH=は−N=に置き換えられている)、1,4−シクロヘキセニレン基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基を表し、これらはそれぞれ無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、
pは1を表し、qは1又は2を表すが、qが2を表す場合に、複数存在するA及びZは同一であっても異なっていても良い。)
を表す、ポリマー溶液。
【請求項2】
前記PMMA系基材のハンセン溶解度パラメータが、次の3つの範囲を全て満たす請求項1に記載のポリマー溶液。
dD: 14.0〜20.0
dP: 5.3〜11.3
dH: 2.5〜 7.5
【請求項3】
前記溶媒のハンセン溶解度パラメータが、次の3つの範囲を全て満たす請求項1又は2に記載のポリマー溶液。
dD: 15.0〜17.0
dP: 6.0〜10.0
dH: 11.0〜16.0
【請求項4】
前記一般式(PI)において、Mb が、一般式(QIII-A-1)〜(QIII-A-17)
【化4】
(式中、破線はSpへの結合を表し、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5のアルキル基を表し、それぞれの構造中の任意の水素原子はフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい。)からなる群より選ばれる何れか一種以上を表す、請求項1〜3の何れか一項に記載のポリマー溶液。
【請求項5】
前記一般式(PI)において、Md が、一般式(QIII-1)〜(QIII-17)
【化5】
(式中、破線は水素原子又は一価の有機基への結合を表し、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5のアルキル基を表し、それぞれの構造中の任意の水素原子はフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい。)からなる群より選ばれる何れか一種以上を表す、請求項1〜4の何れか一項に記載のポリマー溶液。
【請求項6】
前記一般式(QIII-1)〜(QIII-17)において、一価の有機基が一般式(QIV)
【化6】
(式中、破線はMdへの結合を表し、Saは一般式(IVa)で表される構造を表し、Vaは下記一般式(VII)
【化7】
(式中、破線はSaへの結合を表し;
Z4、Z5、Z6及びZ7は、それぞれ独立して単結合、−(CH)u−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表すが、これらの置換基において非隣接のCH基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH―、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−(式中、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)で置換することができ、
A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立して
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−、−NH−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)、及び
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)又は基(c)はそれぞれ無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、
r1、s1、t1及びu1は、それぞれ独立して0又は1を表し、
R12は水素、フッ素、塩素、シアノ基又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、1つのCH2基若しくは2以上の非隣接CH2基は-O-、-CO-O-、-O-CO-及び/又は-CH=CH-で置換されていても良い。)
で表される、請求項に記載のポリマー溶液。
【請求項7】
さらにアミンを含む請求項1〜の何れか一項に記載のポリマー溶液。
【請求項8】
平板状又はフィルム状のPMMA系基材と、前記PMMA系基材の少なくとも一方の面に塗布された請求項1〜の何れか一項に記載のポリマー溶液と、を有する積層体。
【請求項9】
平板状又はフィルム状のPMMA系基材の少なくとも一方の面に請求項1〜の何れか一項に記載のポリマー溶液を塗布する工程と、
前記塗布されたポリマー溶液を乾燥して、前記PMMA系基材の少なくとも一方の面に被膜を形成する工程と、
前記被膜に偏光照射して、前記PMMA系基材の少なくとも一方の面に光配向膜を形成する工程と、
を有する積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー溶液、積層体、光学部材、及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、重合性液晶材料を用いた、偏光板、位相差板等の光学部材の開発が盛んに行われている。これらの光学部材は、ラビング処理を施した基材や光配向させた光配向膜を成膜した基材に、重合可能な液晶材料を含む溶液を塗布し、溶剤を乾燥させた後、紫外線又は熱により重合させることによって得られる。
【0003】
光配向膜を形成するためには、まず光配向膜を構成する光配向性ポリマーを含む溶液(ポリマー溶液)を塗布した後に乾燥した乾燥被膜を形成し、続いて乾燥被膜に対して偏光を照射することにより所定の配向を付与することが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−33248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光配向膜形成用のポリマー溶液を構成する溶媒(分散媒)には、光配向膜を構成するポリマーを充分に溶解する(分散する)だけでなく、当該ポリマー溶液を塗布する基材を浸食しないことが求められている。従来、ガラス基材が使用されてきたが、コスト、軽量化及び薄膜化の観点から、プラスティック基材が採用されるようになってきた。特許文献1に記載されているように、従来のプラスティック基材としては耐薬品性が高いPET基材が使用されているが、透明性が優れるPMMA系基材の使用が望まれている。しかし、PMMAは有機溶媒に対する耐性が必ずしも高くない。このため、前記ポリマー溶液を構成する溶媒には、PMMA系基材に塗布した際の基材表面の浸食を防ぐことと、ポリマーを充分に溶解することの両立が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光配向膜を構成するポリマーの溶解性に優れ、PMMA系基材を浸食し難い溶媒を含むポリマー溶液の提供を課題とする。また、本発明は、前記ポリマー溶液をPMMA系基材上に塗布して形成された積層体、光学部材、及び積層体の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、ハンセン溶解度空間においてPMMAの座標を中心とする溶解球の外に位置する溶媒が、PMMA系基材を浸食し難く、更に、光配向膜を構成するポリマーを充分に溶解し易いことを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の第一の態様は、PMMA系基材上に光配向膜を形成する用途で使用されるポリマー溶液であって、溶媒とポリマーとを含み、前記溶媒のハンセン溶解度パラメータと、前記PMMA系基材のハンセン溶解度パラメータとの距離が5.0より大きいことを特徴とするポリマー溶液である。
本発明の第二の態様は、平板状又はフィルム状のPMMA系基材と、前記PMMA系基材の少なくとも一方の面に塗布された前記ポリマー溶液と、を有する積層体である。
本発明の第三の態様は、平板状又はフィルム状のPMMA系基材と、前記PMMA系基材の少なくとも一方の面に塗布された前記ポリマー溶液が乾燥されてなる被膜と、を有する積層体である。
本発明の第四の態様は、平板状又はフィルム状のPMMA系基材と、前記PMMA系基材の少なくとも一方の面に塗布された前記ポリマー溶液が乾燥されてなる被膜が、更に偏光照射されてなる光配向膜と、を有する積層体である。
本発明の第五の態様は、前記光配向膜上に塗布された重合性液晶組成物が硬化されてなる硬化層を更に有する第四の態様の積層体である。
本発明の第六の態様は、第五の態様の積層体を備えた光学部材である。
本発明の第七の態様は、平板状又はフィルム状のPMMA系基材の少なくとも一方の面に前記ポリマー溶液を塗布する工程と、前記塗布されたポリマー溶液を乾燥して、前記PMMA系基材の少なくとも一方の面に被膜を形成する工程と、前記被膜に偏光照射して、前記PMMA系基材の少なくとも一方の面に光配向膜を形成する工程と、を有する積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるポリマー溶液は、光配向膜を構成するポリマーの溶解性に優れ、PMMA系基材を浸食し難いため、PMMA系基材上に光配向膜を形成する用途に好適である。
本発明にかかる積層体及び光学部品は、ポリマー溶液に接触したPMMA系基材が浸食されていないため、透明性に優れる。
本発明にかかる積層体の製造方法によれば、ポリマー溶液をPMMA系基材に塗布した際の基材表面の化学的な浸食を防止して、PMMA系基材が本来的に有する透明性を損なうことなく、目的の積層体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好適な実施形態に基づいて本発明を説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されない。
【0011】
《ポリマー溶液》
本発明の第一実施形態のポリマー溶液は、PMMA系基材上に光配向膜を形成する用途で使用されるポリマー溶液であって、溶媒とポリマーとを含み、前記溶媒のハンセン溶解度パラメータと、前記PMMA系基材のハンセン溶解度パラメータとの距離が5.0より大きいポリマー溶液である。
【0012】
[ハンセンの溶解度パラメータ]
ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、ある特定の物質が別の特定の物質にどのくらい溶けるかを示す溶解性の指標である。本発明においては、PMMA系基材を溶かさず(浸食せず)、光配向膜形成用のポリマーを溶解する溶媒を探索する目的で、PMMAのHSPと溶媒のHSPとの関係に着目した。
【0013】
ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、Dr.Hansenらが提唱した溶解性の指標であり、溶解性を多次元のベクトル[分散項(dD)、極性項(dP)、水素結合項(dH)]で表し、ベクトルが似ている物質同士は互いの溶解性が高いと判断する指標である。分散項(dD)はファンデルワールスの力、極性項(dP)はダイポール・モーメントの力、水素結合項(dH)は水素結合力の効果である。
【0014】
溶媒が溶質を完全に溶解するために、それぞれのHSPが互いに完全に一致していなくてもよい。ある特定の溶質を溶解し得る複数の溶媒(良溶媒)のハンセン溶解度パラメータを3次元のHSP空間にプロットすると、各良溶媒のプロットは互いに似たところ(近い位置(座標))に球状に集まる傾向がある。その球(ハンセンの溶解球)の中心を前記特定の溶質のハンセン溶解度パラメータとして定義し、前記球の半径を相互作用半径(R )と呼ぶ。半径(R )が長い溶質は多くの溶媒に溶けやすく、半径(R )が短い溶質は少数の溶媒に溶けやすく、多数の溶媒に溶け難いといえる。
【0015】
ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、Dr.Hansenらによって開発され、公開されたコンピュータソフトウエア“HSPiP”を用いて計算することができる。HSPが既知の溶媒は、ソフトウエア上でデータベース化されている。HSPが未知の特定のポリマー(溶質)に対しては、各種の溶媒が良溶媒であるか、貧溶媒であるかを、溶解性試験を行って調べ、その結果をHSPiPに入力することにより、当該ポリマーのHSPと相互作用半径(R )が算出される。
【0016】
混合溶媒のHSPは、それぞれの溶媒の体積比で重みを付けた加重平均で計算される。
【0017】
本発明の実施例で用いたPMMA系基材について、HSPiPのデータベースに掲載されている溶媒を用いた溶解性試験を実施した。この溶解性試験で得られた結果をHSPiPバージョン3.0.38 に入力して、PMMA系基材のHSPを算出した。算出結果は次の通りであった。
結果: dD=17.0、dP=8.3、dH=5.0、R=4.0
【0018】
溶媒のHSPと、溶質(ここではPMMA系基材)のHSPとの距離(HSP距離(Ra))は、次式で求められる。
Ra={4×(dD−dD+(dP−dP+(dH−dH(1/2)
ここで、dD,dP,dHは溶媒のHSPであり、dD,dP,dHは溶質のHSPである。
【0019】
Raが、溶質の相互作用半径(R )以下であれば、溶媒は溶質をよく溶解する(良溶媒)と推定できる。Raが、R よりも十分大きいならば、溶媒は溶質を溶解しにくい(貧溶媒)と推定できる。
【0020】
<ポリマー溶液の溶媒>
本実施形態のポリマー溶液を構成する溶媒のHSPは、ハンセン溶解度空間において、PMMA系基材の溶解球の外に位置する。前記溶解球の半径(PMMA系基材に使用されているポリマーの相互作用半径)は、種々の溶媒に対する溶解試験を行うことにより決まる数値であり、PMMA系基材を構成するポリマーよって変化する数値であり、例えば、PMMA系基材を構成するポリマーの相互作用半径は、3〜6が好ましく、3.5〜5がより好ましい。
前記溶解球の半径が大きくなるほど、通常、その溶解球内に含まれる溶媒の数は増加する。前記溶解球の内側及び前記溶解球上に含まれる溶媒はPMMAを溶解し易い溶媒であり、PMMA系基材表面に当該溶媒を塗布した場合には当該表面が化学的に浸食されて透明性が損なわれ易い。
【0021】
本実施形態のポリマー溶液を構成する溶媒のHSPと、前記PMMA系基材のHSPとの距離(HSP距離(Ra))は5.0より大きく、6.0より大きいことが好ましく、7.0より大きいことがより好ましく、8.0より大きいことが更に好ましく、9.0より大きいことが特に好ましく、9.5より大きいことが最も好ましい。前記HSP距離の上限は特に限定されず、例えば20程度が挙げられる。
【0022】
本実施形態のポリマー溶液を構成する溶媒として、一種の溶媒を単独で用いてもよいし、二種類以上の溶媒を併用してもよい。
【0023】
前記溶媒の好適な例として、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−n−ブトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、1,2−ジメトキシエタン、メチルトリグリコール、ブチルトリグリコール、1−プロポキシ−2−プロパノールなどのグリコールエーテル類から選ばれる、単独の溶媒又は複数の混合溶媒を最も質量比の多い成分として含有する溶媒が挙げられる。これらの好適な溶媒は、PMMA系基材を浸食し難いだけでなく、後述する一般式(I)、一般式(PI)及び一般式(QP)で表されるポリマー等を溶解し易いという利点も有する。上記の最も質量比の多い成分として含有する溶媒は、当該ポリマー溶液を構成する溶媒の総質量に対して50質量%以上含まれることが好ましく、50質量%超含まれることがより好ましい。
【0024】
好適な混合溶媒の具体例として、例えば、2−メトキシエタノールと2−エトキシエタノールの混合溶媒、2−メトキシエタノールとイソプロピルアルコール(IPA)の混合溶媒が挙げられる。
2−メトキシエタノールと2−エトキシエタノールの混合溶媒における混合割合は、2−メトキシエタノール:2−エトキシエタノール=10:90〜90:10(質量比)が好ましく、20:80〜80:20(質量比)がより好ましく、30:70〜70:30(質量比)が更に好ましい。
2−メトキシエタノールとIPAの混合溶媒における混合割合は、2−メトキシエタノール:IPA=10:90〜90:10(質量比)が好ましく、20:80〜80:20(質量比)がより好ましく、30:70〜70:30(質量比)が更に好ましい。
【0025】
前記溶媒のHSPは、次の3つの範囲を全て満たすことが好ましい。この範囲のHSPを満たす溶媒であると、前記PMMA系基材を溶解し難く、基材表面の透明性を損なわずに、前記ポリマーを均一に基材表面に塗布することができる。
dD: 15.0〜17.0
dP: 6.0〜10.0
dH: 11.0〜16.0
【0026】
前記溶媒の好適なHSPが範囲で表される理由は、使用するPMMA系基材の種類によって当該PMMA系基材のHSPが、1点に定まらずにある範囲にバラツクからである。
【0027】
<PMMA系基材>
本実施形態のポリマー溶液を塗布するPMMA系基材を構成する樹脂材料は、メタクリル酸メチルのホモポリマー(PMMA)であってもよいし、メタクリル酸メチルとメタクリル酸メチル以外の重合性化合物とのコポリマーであってもよいし、上記ホモポリマーと他のポリマーとの混合材料であってもよいし、上記コポリマーと他のポリマーとの混合材料であってもよい。
【0028】
前記PMMA系基材において、メタクリル酸メチル構成単位は少なくとも50質量%含まれ、65〜100質量%含まれることが好ましく、75〜99.5質量%含まれることがより好ましく、80〜98.5質量%含まれることが更に好ましい。これらの好適な範囲でメタクリル酸メチルを含む樹脂材料を使用することにより、本実施形態のポリマー溶液を構成する溶媒による化学的な浸食を防止することができる。
【0029】
前記PMMA系基材において、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)は少なくとも50質量%含まれ、65〜100質量%含まれることが好ましく、75〜99.5質量%含まれることがより好ましく、80〜98.5質量%含まれることが更に好ましい。これらの好適な範囲でPMMAを含む樹脂材料を使用することにより、本実施形態のポリマー溶液を構成する溶媒による化学的な浸食を防止することができる。
【0030】
前記PMMA系基材におけるメタクリル酸メチル以外の重合性化合物として、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、スチレン、スチレン誘導体等が挙げられる。
前記他のポリマーとして、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、およびこれらの選択肢から選ばれる2種以上の共重合体樹脂等が挙げられる。
【0031】
前記PMMA系基材としては、当該PMMA系基材を構成する樹脂材料のHSPが、次の3つの範囲を全て満たすことが好ましい。この範囲のHSPを満たすPMMA系基材であると、前記ポリマー溶液が前記PMMA系基材を溶解し難く、基材表面の透明性を損なわずに、前記ポリマーを均一に基材表面に塗布することができる。
dD: 14.0〜20.0
dP: 5.3〜11.3
dH: 2.5〜7.5
【0032】
本実施形態のポリマー溶液の全質量に対する有機溶媒の含有量は、当該溶液を基材に塗布し易くなる含有量であることが好ましく、例えば40〜99質量%であることがより好ましく、60〜99質量%であることが更に好ましい。
【0033】
本実施形態のポリマー溶液には、溶解助剤が含有されていてもよい。溶解助剤を添加することにより、ポリマー成分の溶解性を向上させることができる場合がある。例えば、上述したHSPを有する溶媒がポリマー成分を溶解し難い場合であっても、溶解助剤を添加することにより当該ポリマー成分が溶解されることがある。
【0034】
前記溶解助剤としては、アミンが好ましく、ポリマー成分の側鎖が有する、カルボキシル基等の極性基と塩を生成し得るアミンがより好ましい。好適なアミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミンなどの1級アミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミンなどの3級アミンなどが挙げられる。前記アミンは、常温で液体であることがより好ましい。
【0035】
<ポリマー成分>
本実施形態のポリマー溶液に含まれるポリマーは、光配向膜を形成可能な光配向性ポリマーであれば特に制限されず、公知の光配向性ポリマーが適用できる。
【0036】
前記ポリマーのハンセン溶解度パラメータ(HSP)及び相互作用半径(R)は、当該ポリマーについて前述した溶解試験を行った結果をHSPiPに入力することにより算出され得る。前記ポリマーのHSPと、前記ポリマー溶液を構成する溶媒のHSPとの距離HSP距離(Ra)は、下記式から算出され得る。
【0037】
Ra={4×(dD−dD+(dP−dP+(dH−dH(1/2)
上記式中、dD,dP,dHは溶媒のHSPであり、dD,dP,dHは溶質(ポリマー)のHSPである。
【0038】
前記ポリマー溶液を構成する溶媒と前記ポリマーとのHSP距離は、「当該ポリマーの相互作用半径+1.5以下」であることが好ましい。前記ポリマーの相互作用半径は、当該ポリマーの溶解性を高める観点から、2.5以上が好ましく、3.5以上がより好ましく、4.5以上が更に好ましい。
【0039】
溶解助剤を前記ポリマー溶液に添加しない場合、前記ポリマー溶液を構成する溶媒と前記ポリマーとのHSP距離は、当該ポリマーの溶解性を高める観点から、7.5以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、5.0以下が更に好ましい。前記HSP距離の下限値は特に制限されず、例えば0.1程度が挙げられる。また、溶解助剤を前記ポリマー溶液に添加する場合、前記ポリマー溶液を構成する溶媒と前記ポリマーとのHSP距離は、当該ポリマーの溶解性を高める観点から、10.0以下が好ましく、9.5以下がより好ましい。
【0040】
前記ポリマー溶液を構成する溶媒は、PMMA系基材を溶解し難く、前記ポリマー溶液に含まれる前記ポリマーを溶解又は分散することから、PMMA系基材と前記溶媒とのHSP距離(L1)は、前記ポリマーと前記溶媒とのHSP距離(L2)よりも長いことが好ましい。例えば、L1とL2の差(L1−L2)は、当該ポリマーの当該溶媒に対する溶解性を高め且つ当該PMMA系基材の当該溶媒による浸食を低減する観点から、1.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、4.5以上が更に好ましい。
【0041】
前記ポリマーのうち、前記溶媒に均一に溶解又は分散し易いポリマーとして、一般式(I)で表される構造単位を有するポリマーが好ましい。
【0042】
【化1】
【0043】
一般式(I)中、Mbは前記ポリマーのモノマー単位である重合性基を表し、Spはスペーサー単位を表し、
Aは
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−、−NH−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)、及び
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)又は基(c)はそれぞれ無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、
rは、0、1又は2を表すが、rが2を表す場合に、複数存在するAは同一であっても異なっていてもよく、
X及びYは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1から20のアルキル基を表すが、前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、1つのCH基又は2つ以上の非隣接CH基は−O−、−CO−O−、−O−CO−及び/又は−CH=CH−で置換されていても良く、
Zは、一般式(IIa)又は(IIb)で表される。
【0044】
【化2】
【0045】
一般式(IIa)又は(IIb)中、破線はZが結合する炭素原子への結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基を表し、R及びR中の1つの−CH−基又は2つ以上の非隣接−CH−基は−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NCH−、−CH=CH−、−CF=CF−及び/又は−C≡C−で置換されていても良く、R及びR中の1つ又は2つ以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、R及びR中の水素原子は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表す。
【0046】
<Zについて>
一般式(IIa)又は(IIb)において、Rが水素原子であることが好ましい。Rが水素原子であることにより、一般式(IIa)及び一般式(IIb)で表される基が水素結合を形成可能な極性基になり、前記一般式(I)で表されるポリマーの前記ポリマー溶液における溶解性を向上することができる。
また、Rが直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基(前記アルキル基中の1つの−CH−基又は2以上の非隣接−CH−基は−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NCH−で置換されており、前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表し、
は直鎖状又は分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基(前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子は非置換であるか又は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表すことも好ましい。
【0047】
一般式(IIa)又は(IIb)において、Rが一般式(IIc)
【0048】
【化3】
(式中、破線は酸素原子又は窒素原子への結合を表し、
W1は、メチレン基(前記メチレン基の水素原子は非置換であるか又は炭素原子数1から5のアルキル基で置換されていても良い)、-CO-O-又は-CO-NH-を表し、
R3は、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、
R4は、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から20のアルキル基(前記アルキル基中の1つの−CH−基又は2以上の非隣接−CH−基は−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NCH−で置換されており、前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基の水素原子は非置換であるか又はフッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良い。)を表すことも好ましい。
【0049】
一般式(IIa)又は(IIb)において、
が直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基(前記アルキル基中の1つの−CH−基又は2以上の非隣接−CH−基は−CH=CH−、−CF=CF−及び/又は−C≡C−で置換されており、前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表し、
は直鎖状又は分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基(前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子は非置換であるか又は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表すことも好ましい。
【0050】
一般式(IIa)又は(IIb)において、Rが一般式(IId)〜(IIg)
【0051】
【化4】
(式中、破線は酸素原子又は窒素原子への結合を表し、
W2は、単結合、-CH2-、-CO-O-又は-CO-NH-を表し、
R7は、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、
R8は水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から20のアルキル基(前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子は非置換であるか又はフッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良い)を表し、
R5は、炭素数1〜20のアルキル基を表すが、前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていても良い)を表し、
Rは、炭素数1〜20のアルキル基(前記アルキル基中の1つの−CH−基又は2以上の非隣接−CH−基は−CH=CH−、−CF=CF−及び/又は−C≡C−で置換されており、前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良い。)を表すことも好ましい。
【0052】
一般式(IIa)又は(IIb)において、
が水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基(前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表し、
は直鎖状又は分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基(前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子は非置換であるか又は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表すことも好ましい。またこのとき、
一般式(I)において、Spが後述する一般式(IVc)を表すことも好ましい。
【0053】
一般式(IIa)又は(IIb)において、
が直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基(前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されており、前記アルキル基中の水素原子は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表し、
は直鎖状又は分岐状の炭素原子数1から30のアルキル基(前記アルキル基中の1つ又は2以上の−CH−基はそれぞれ独立して環員数3から8のシクロアルキル基で置換されていても良く、前記アルキル基中の水素原子は非置換であるか又は炭素原子数1〜20のアルキル基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されていても良い。)を表すことも好ましい。またこのとき、
一般式(I)において、Spが後述する一般式(IVb)を表すことも好ましい。
【0054】
で表される炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は環員数3から8のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0055】
本明細書及び特許請求の範囲において、前記「2以上の非隣接CH基」とは、「互いに隣接しない2以上のCH基」を意味する。
【0056】
<Aについて>
一般式(I)、(IIa)又は(IIb)において、前記ポリマーを使用した光配向膜(液晶配向層)の液晶配向性を改善するためには、Aはピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
又、前記ポリマーの溶解性を向上するためにはAは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−チオフェニレン基又は2,5−フラニレン基が好ましい。
又、前記ポリマーを使用した光配向膜(液晶配向層)における液晶を配向させるために必要な光照射量を少なくするためには、Aはピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
又、前記ポリマーを使用した光配向膜(液晶配向層)を形成する際、より長波長での光配向を行うためには、Aはピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−フラニレン基が好ましく、X及びYはフッ素原子、塩素原子又はシアノ基が好ましい。
【0057】
一般式(I)で表されるポリマーにおいて、Aは、一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい1,4−フェニレン基であることが好ましい。前記ポリマーを用いることによって、塗工性が良いポリマー溶液が得られる。
【0058】
<X及びYについて>
一般式(I)で表されるポリマーにおいて、X及びYは水素原子であることが好ましい。前記ポリマーを使用した光配向膜を備えた位相差膜のコントラスト比を向上させることができる。
【0059】
<Spについて>
一般式(I)において、Spが下記一般式(IVa)で表される構造であることが好ましい。
【0060】
【化5】
【0061】
一般式(IVa)中、左の破線はMbへの結合を表し、右の破線はAへの結合又はXが結合する炭素原子への結合を表し、
Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立して単結合、−(CH)u−(式中、uは1〜20の整数を表す。)、−OCH−、−CHO−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表すが、これらの置換基において非隣接のCH基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH―、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−(式中、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)で置換することができ、
A1及びA2は、それぞれ独立して
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−、−NH−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)、及び
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)又は基(c)はそれぞれ無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。)
で表される。
【0062】
一般式(IVa)中、左の破線は ポリマー主鎖への結合を表し、右の破線はAへの結合又はXが結合する炭素原子への結合を表し、Z、Z及びZは、それぞれ独立して単結合、−(CH) −(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表すが、これらの置換基において非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH−、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−(式中、Rは独立して水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)で置換することができ、A及びAは、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基の何れかの基を表し、前記何れかの基における一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表すことも好ましい。
【0063】
Spを示す一般式(IVa)は、以下の一般式(IVb)であることも好ましい。
【0064】
【化6】
(式中、Z1, Z2, Z3, A2, pおよびqは一般式(IVa)におけるものと同じ意味を表す)で表され、Aがトランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−、−NH−又は−S−に置き換えられてもよい)、及び1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)であり、これらはそれぞれ無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。)
【0065】
Spは、以下の一般式(IVc)であることも好ましい。
【0066】
【化7】
(式中、Z1, Z2, Z3およびA2は一般式(IVa)におけるものと同じ意味を表す)で表され、Aが1,4−フェニレン基(この基中に存在する3個以上の−CH=は−N=に置き換えられている)、1,4−シクロヘキセニレン基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基を表し、これらはそれぞれ無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、
pは1を表し、qは1又は2を表すが、qが2を表す場合に、複数存在するA及びZは同一であっても異なっていても良い。)
一般式(IVc)において、A7は2,6−ナフチレン基を表し、前記2,6−ナフチレン基における一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換される事が好ましい。
【0067】
一般式(IVa)において、Z、Z及びZは、それぞれ独立して単結合、−(CH)−(式中、uは1〜20を表し、非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−を表し、Rは水素、メチル基又はエチル基を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−又は−C≡C−が好ましい。
一般式(IVa)において、Z、Z及びZは、それぞれ独立して単結合、−(CH)−(式中、uは1〜20を表し、非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置換されていてもよい。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−又は−C≡C−がより好ましい。
一般式(IVa)において、Z、Z及びZは、それぞれ独立して単結合、−(CH)−(式中、uは1〜20を表し、非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、又は−C≡C−が特に好ましい。
【0068】
ここで、前記「非隣接のCH基の1つ以上」とは、「互いに隣接しない1以上のCH基」を意味する。
【0069】
一般式(IVa)において、qは1であることが好ましい。
一般式(IVa)において、pは0であることが好ましい。
【0070】
一般式(IVa)において、A及びAは、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基の何れかの基であることが好ましい。これらの基の水素原子は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい。
一般式(IVa)において、A及びAは、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基であることがより好ましい。これらの基の水素原子は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい。
一般式(IVa)において、A及びAは、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基であることが特に好ましい。これらの基の水素原子は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい。
一般式(IVa)、(IVb)および(IVc)において、Aは1,4−フェニレン基を表し、これ基の水素原子は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていることが最も好ましい。前記1,4−フェニレン基の水素原子は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい。
【0071】
前記ポリマーを使用した光配向膜の上に積層した重合性液晶の液晶配向性を改善するためには、一般式(IVa)において、Z、Z及びZはそれぞれ独立して単結合、−(CH)−(式中、uは1〜8を表し、非隣接のCH基の1つ又は2つは独立して、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH−、−CH=CH−、−C≡C−を表す。)、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−が好ましく、A及びAは、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
【0072】
前記ポリマーを使用した光配向膜の上に積層した重合性液晶の液晶配向性における液晶配向の熱安定性を改善するためには、一般式(IVa)において、Z、Z及びZはそれぞれ独立して−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、又は−O−CO−O−が好ましく、A及びAは、それぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
【0073】
前記ポリマーの溶解性を改善するためには、Z、Z及びZはそれぞれ独立して−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−NR−又は−CO−が好ましく、A及びAは、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基又は2,5−フラニレン基が好ましい。
【0074】
一般式(IVa)、(IVb)及び(IVc)において、A2はトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基を表し、前記何れかの基における一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよく、Z3は単結合、−(CH)u−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−又は−C≡C−の何れかの基を表し、前記何れかの基において非隣接のCH基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置換されていてもよく、qが1を表すことも好ましい。
【0075】
一般式(IVa)で表されるSpとしては、例えば、以下の化学式(Sp-a-1)〜化学式(Sp-ah1-8)で表されるものが好ましい。これらの化学式中、左の破線はポリマー主鎖を構成するMbへの結合を表し、右の破線はAへの結合又はXが結合する炭素原子への結合を表す。
必要に応じて選択可能であるが、これらの中でも、化学式(Sp-a-6)〜(Sp-a-20)、化学式(Sp-b-3)〜(Sp-b-10)、化学式(Sp-c-3)〜(Sp-c-10)、化学式(Sp-d-3)〜(Sp-d-12)、化学式(Sp-k-4)〜(Sp-k-7)、化学式(Sp-l-13)〜(Sp-l-17)、化学式(Sp-o-3)〜(Sp-o-14)、化学式(Sp-p-2)〜(Sp-p-13)、化学式(Sp-s-1)〜(Sp-s-8)、化学式(Sp-t-1)〜(Sp-t-8)、化学式(Sp-y-1)〜(Sp-y-9)及び化学式(Sp-aa-1)〜(Sp-aa-9)で表されるものがより好ましい。
【0076】
【化8】
【0077】
【化9】
【0078】
【化10】
【0079】
【化11】
【0080】
【化12】
【0081】
【化13】
【0082】
【化14】
【0083】
【化15】
【0084】
【化16】
【0085】
【化17】
【0086】
【化18】
【0087】
【化19】
【0088】
【化20】
【0089】
【化21】
【0090】
【化22】
【0091】
【化23】
【0092】
【化24】
【0093】
【化25】
【0094】
【化26】
【0095】
【化27】
【0096】
【化28】
【0097】
【化29】
【0098】
【化30】
【0099】
【化31】
【0100】
【化32】
【0101】
【化33】
【0102】
【化34】
【0103】
【化35】
【0104】
【化36】
【0105】
【化37】
【0106】
【化38】
【0107】
【化39】
【0108】
【化40】
【0109】
【化41】
【0110】
一般式(I)で表されるポリマーのうち、一般式(IVa)で表されるSpを有し、前記一般式(IVa)において、Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基を表し、前記何れかの基における一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、Zは単結合、−(CH)−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−又は−C≡C−の何れかの基を表し、前記何れかの基において非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置換されていても良く、qが1を表す、ポリマーが好ましい。
前記ポリマーを用いることによって、前記ポリマーによって構成される光配向膜の上に積層される、重合性液晶からなる位相差膜のコントラスト比を向上することができる。
【0111】
一般式(I)で表されるポリマーのうち、rが0であり、一般式(IVa)で表されるSpを有し、前記一般式(IVa)において、Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基を表し、前記何れかの基における一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、Zは単結合、−(CH)−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−又は−C≡C−の何れかの基を表し、前記何れかの基において非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置換されていても良く、pが0であり、qが1を表す、ポリマーが好ましい。
前記ポリマーを用いることによって、前記ポリマーによって構成される光配向膜の上に積層される、重合性液晶からなる位相差膜のコントラスト比を向上することができる。
【0112】
<Mbについて>
一般式(I)において、Mbが一般式(QIII-A-1)〜(QIII-A-17)
【0113】
【化42】
(式中、破線はSpへの結合を表し、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。) からなる群より選ばれる何れかの重合性基であることが好ましい。
Mbが、一般式(QIII-A-1)、(QIII-A-2)、(QIII-A-6)、(QIII-A-7)又は(QIII-A-13)で表される重合性基であることが好ましい。Mbが、一般式(QIII-A-1)又は(QIII-A-2)で表される重合性基であることがより好ましい。
【0114】
一般式(I)で表されるポリマーが、下記の一般式(PI)で表される構成単位を有するポリマーであってもよい。
【0115】
【化43】
【0116】
一般式(PI)中、M、Sp、A、r、X、Y、及びZは、一般式(I)と同じである。Mb及びMdはポリマーのモノマー単位を表し、y及びwは、コポリマーのモル分率を表し、0<y≦1かつ、0≦w<1であり、nは、4〜100,000を表し、Mb及びMdの並びは式と同一であっても異なっていても良く、Mb及びMdのモノマー単位は各々独立して1種類でも2種類以上の異なる単位からなっていても良い。
【0117】
本明細書及び特許請求の範囲において、「モノマー単位(Mb)」を「Mb」と略記し、「モノマー単位(Md)」を「Md」と略記することがある。
【0118】
一般式(I)及び(PI)中、Mbの水素原子がSpによって置換されて、MbにSpが結合している。
Mb及びMdは、MbにSpが結合していることを除いて、互いに同じであっても異なっていても良く、特に限定なく公知のモノマー単位を使用することができる。また、ポリマー中のモノマー単位(Mb及びMd)の並びの順序及びランダムネスに特に制限はない。
また、Mb及びMdとして、各々独立して1種類のモノマー単位あるいは2種以上のモノマー単位を組み合わせて用いることができる。
好適なMb及びMdは、後述する一般式(QP)における好適なMb及びMdと同じである。
【0119】
前記一般式(PI)で表されるポリマーの分子量分布としては、Mw/Mnが1.2〜6.0となることが好ましく、1.4〜4.0となることがさらに好ましい。
【0120】
<光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位、及びこの部分を含むポリマーについて>
本明細書において、「(a)光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位」とは、その部位に対して光を照射した際に、シス−トランス異性化反応などの異性化反応を起こしうるが、その部位において同時に2+2環化反応などの新たな結合を形成する反応をほとんど起こさない部位を意味する。
本明細書において、「(b)光化学的に架橋可能な部位」とは、その部位に対して光を照射した際に、2+2環化反応などの新たな結合を形成する反応を起こしうる部位を意味する。
【0121】
本実施形態のポリマー溶液を構成するポリマーにおいて、光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位として、下記一般式(Q)で表される構造を含むことが好ましい。
【0122】
【化44】
(式中、破線はポリマー主鎖への結合を表し、S及びSaaは各々異なっていても良いスペーサー単位を表し、Pは光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位を表し、Vaは側鎖末端を表す。)
【0123】
本実施形態のポリマー溶液を構成するポリマーは、下記一般式(QP)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0124】
【化45】
(式中、Sp、A、X、Y、Z及びrは一般式(I)におけるものと同じ意味を表し、S、P、Saa及びVは一般式(Q)におけるものと同じ意味を表し、M、M及びMは各々同じであっても良いし、異なっていても良いポリマーのモノマー単位を表し、x、y及びwはコポリマーのモル分率を表すものであって、いずれの場合にも0<x≦1かつ0<y≦1かつ0≦w<1であり、nは4〜1000000を表し、M、M及びMの並びは式と同一であっても異なっていても良く、M、M及びMのモノマー単位は各々独立して1種類でも2種類以上の異なる単位からなっていても良い。)
【0125】
前記ポリマーは、水平配向モードや垂直配向モードの液晶表示素子用の液晶配向層の形成や、位相差膜等の光学異方体用の光配向膜の形成に好ましく使用できる。また得られた液晶配向層は、水平配向モードや垂直配向モードの液晶表示素子に好ましく使用できる。
【0126】
光配向可能な光配向膜(液晶配向層)に含まれるポリマーにおいて、光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位としては、アゾ基を有することが好ましい。
【0127】
一般式(QP)において、M及びMが、それぞれ独立して式(QIII-A-1)〜(QIII-A-17)
【0128】
【化46】
(式中、破線はS又はSpへの結合を表し、Rは独立して水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基を表し、それぞれの構造中の任意の水素原子はフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい) からなる群より選ばれる何れかの基であることが好ましい。
【0129】
式(QIII-A-1)、(QIII-A-2)、(QIII-A-3)、(QIII-A-4)、(QIII-A-6)、(QIII-A-7)、(QIII-A-8)、(QIII-A-9)、(QIII-A-10)、(QIII-A-11)、(QIII-A-13)、(QIII-A-16)又は(QIII-A-17)が好ましく、式(QIII-A-1)、(QIII-A-2)、(QIII-A-3)、(QIII-A-6)、(QIII-A-7)、(QIII-A-8)、(QIII-A-13)、(QIII-A-16)又は(QIII-A-17)がより好ましく、式(QIII-A-1)、(QIII-A-2)、(QIII-A-3)、(QIII-A-6)、(QIII-A-7)又は(QIII-A-13)が特に好ましい。
【0130】
ポリマーの溶解性を改善するためには式(QIII-A-1)、(QIII-A-2)、(QIII-A-3)、(QIII-A-6)、(QIII-A-7)、(QIII-A-8)、(QIII-A-10)、(QIII-A-12)、(QIII-A-14)、(QIII-A-16)又は(QIII-A-17)が好ましく、中でも式(QIII-A-1)、(QIII-A-2)、(QIII-A-10)、(QIII-A-12)又は(QIII-A-17)が特に好ましい。又、重合速度を改善するためには式(QIII-A-3)、(QIII-A-8)、(QIII-A-10)、(QIII-A-12)、(QIII-A-13)、(QIII-A-14)、(QIII-A-15)、(QIII-A-16)又は(QIII-A-17)が好ましく、中でも式(QIII-A-3)、(QIII-A-8)、(QIII-A-10)、(QIII-A-12)又は(QIII-A-17)がより好ましい。又、ポリマーの分子量分布を狭くするためには式(QIII-A-2)、(QIII-A-10)、(QIII-A-11)又は(QIII-A-12)が好ましい。又、重合性液晶の配向の安定性を改善するためには式(QIII-A-2)、(QIII-A-4)、(QIII-A-5)、(QIII-A-7)、(QIII-A-9)、(QIII-A-13)、(QIII-A-14)又は(QIII-A-15)が好ましい。又、基板への密着性を改善するためには式(QIII-A-1)、(QIII-A-6)、(QIII-A-7)、(QIII-A-8)、(QIII-A-9)、(QIII-A-10)、(QIII-A-12)、(QIII-A-13)又は(QIII-A-17)が好ましく、中でも式(QIII-A-6)、(QIII-A-7)、(QIII-A-8)又は(QIII-A-13)が特に好ましい。
【0131】
一般式(I)、(Q)又は(QP)において、M又はMとして、例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸誘導体類、シロキサン類、エポキシド類、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、2−クロロアクリロイルオキシ基、2−フェニルアクリロイルオキシ基、2−フェニルオキシアクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、2−クロロメタクリルアミド基、2−フェニルアクリルアミド基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニルオキシカルボニル基、マレイミド基、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、シロキサン類、ビニル基、又はエポキシ基を使用してもよい。
【0132】
一般式 (QP)において、Mが、それぞれ独立して式(QIII-1)〜(QIII-17)
【0133】
【化47】
(式中、破線は水素原子又は一価の有機基への結合を表し、Rは独立して水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基を表し、それぞれの構造中の任意の水素原子はフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。) を表すことが好ましい。
【0134】
一般式(QIII-1)〜(QIII-17)において、前記一価の有機基が一般式(QIV)
【0135】
【化48】
(式中、破線はMdへの結合を表し、Saは一般式(VI)で表される構造を表し、Vaは一般式(VII)で表される構造を表す。)で表されることも好ましい。
【0136】
一般式(Q)又は(QP)において、S及びSaaが、下記一般式(VI)で表される構造であることが好ましい。
【0137】
【化49】
(式中、破線はポリマー主鎖、もしくは、M、P又はVaへの結合を表し;
Z11、Z12及びZ13は、それぞれ独立して単結合、−(CH)u−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表すが、これらの置換基において非隣接のCH基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH―、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−(式中、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)で置換することができ、
A11及びA12は、それぞれ独立して
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−、−NH−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)、及び
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)又は基(c)はそれぞれ無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。)
【0138】
上記一般式(VI)において、破線はポリマー主鎖、もしくは、M、P又はVへの結合を表し;
11、Z12及びZ13は、それぞれ独立的に単結合、−(CH) −、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表し、uは1〜20を表し、ここでアルキル基の非隣接CH基の内の1つ以上が独立してQによって置換されることができ、ここでQは、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH−、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−、−O−CO−O−を表し、Rは独立して水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基を表し;
11及びA12は、それぞれ独立的にトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−イル基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−ピリジル基、2,5−ピリミジル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか1個以上水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く;
p及びqは、0又は1を表してもよい。
【0139】
11、Z12及びZ13は、それぞれ独立して単結合、−(CH) −(式中、uは1〜12を表し、非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−によって置換されていても良く、Rは水素、メチル基又はエチル基を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−又は−C≡C−が好ましい。A11及びA12は、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていることが好ましい。Z11、Z12及びZ13は、それぞれ独立して単結合、−(CH) −(式中、uは1〜10を表し、非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−CH=CH−又は−C≡C−によって置換されていても良く、Rは水素、メチル基又はエチル基を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、又は−C≡C−がより好ましい。A11及びA12は、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていることがより好ましい。Z11、Z12及びZ13は、それぞれ独立して単結合、−(CH) −(式中、uは1〜6を表し、非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−によって置換されていても良い。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、又は−C≡C−が特に好ましい。A11及びA12は、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていることが特に好ましい。
【0140】
一般式(VI)は、液晶配向性を改善するためにはZ11、Z12及びZ13はそれぞれ独立して単結合、−(CH) −(式中、uは1〜6を表し、非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−O−、−Oは1〜8を表し、非隣接のCH基の1つ又は2つは独立して、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH−、−CH=CH−、−C≡C−によって置換されていても良い。)、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−が好ましい。A11及びA12は、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
又、配向の熱安定性を改善するためにはZ11、Z12及びZ13はそれぞれ独立して−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、又は−O−CO−O−が好ましい。A11及びA12は、それぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
又、ポリマーの溶解性を改善するためにはそれぞれ独立してZ11、Z12及びZ13は−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−NR−又は−CO−が好ましい。A11及びA12は、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基又は2,5−フラニレン基が好ましい。
一般式(VI)には多くの化合物が含まれるが、具体的には以下の式(S-a-1)〜式(S-ad-9)
【0141】
【化50】
【0142】
【化51】
【0143】
【化52】
【0144】
【化53】
【0145】
【化54】
【0146】
【化55】
【0147】
【化56】
【0148】
【化57】
【0149】
【化58】
【0150】
【化59】
【0151】
【化60】
【0152】
【化61】
【0153】
【化62】
【0154】
【化63】
【0155】
【化64】
【0156】
【化65】
【0157】
【化66】
【0158】
【化67】
【0159】
【化68】
【0160】
【化69】
【0161】
【化70】
【0162】
【化71】
【0163】
【化72】
【0164】
【化73】
【0165】
【化74】
【0166】
【化75】
【0167】
【化76】
【0168】
【化77】
【0169】
【化78】
【0170】
【化79】
【0171】
で表される化合物が特に好ましい。
【0172】
これらの中でも、式(S-a-6)〜(S-a-16)、式(S-b-3)〜(S-b-10)、式(S-c-3)〜(S-c-10)、式(S-d-3)〜(S-d-12)、式(S-k-4)〜(S-k-7)、式(S-l-13)〜(S-l-17)、式(S-o-3)〜(S-o-14)、式(S-p-2)〜(S-p-13)、式(S-s-1)〜(S-s-8)、式(S-t-1)〜(S-t-8)、式(S-y-1)〜(S-y-9)及び式(S-aa-1)〜(S-aa-9)で表される化合物がさらに好ましい。
【0173】
一般式(Q)又は(QP)において、Vが、下記一般式(VII)
【0174】
【化80】
【0175】
(式中、破線はSaaへの結合を表し;
Z4、Z5、Z6及びZ7は、それぞれ独立して単結合、−(CH)u−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表すが、これらの置換基において非隣接のCH基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH―、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−(式中、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)で置換することができ、
A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立して
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−、−NH−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)、及び
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)又は基(c)はそれぞれ無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、
r1、s1、t1及びu1は、それぞれ独立して0又は1を表し、
R12は水素、フッ素、塩素、シアノ基又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、1つのCH2基若しくは2以上の非隣接CH2基は-O-、-CO-O-、-O-CO-及び/又は-CH=CH-で置換されていても良い。)
で表されるで表される構造であることが好ましい。
【0176】
一般式(VII)において、破線はSaaへの結合を表し;
、Z、Z及びZは、それぞれ独立的に単結合、−(CH) −、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表し、uは1〜20を表し、ここでアルキル基の非隣接CH基の内の1つ以上が独立してQによって置換されることができ、ここでQは、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH−、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−、−O−CO−O−を表し、Rは独立して水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基を表し;
、A、A及びAは、それぞれ独立的にトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−イル基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−ピリジル基、2,5−ピリミジル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか1個以上水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く;
r1、s1、t1及びu1は、0又は1を表し;
12は、水素、フッ素、塩素、シアノ基又は炭素数1〜20のアルキル基(適宜フッ素置換されていても良く、また適宜1つのCH基又は2以上の非隣接CH基は−O−、−CO−O−、−O−CO−及び/又は−CH=CH−で置換されていても良い)を表すことも好ましい。
【0177】
、Z、Z及びZはそれぞれ独立して単結合、−(CH) −(式中、uは1〜12を表し、非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−によって置換されていても良く、Rは独立して水素、メチル基又はエチル基を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−又は−C≡C−が好ましい。A、A、A及びAはそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていることが好ましい。
【0178】
r1、s1、t1及びu1はr1+s1+t+uが0以上3以下であることが好ましく、
12の1つのCH基又は2以上の非隣接CH基は−O−、−CO−O−、−O−CO−及び/又は−CH=CH−で置換されていても良い。)で表される構造であることが好ましい。
【0179】
前記ポリマーによって構成される光配向膜の上に積層される、重合性液晶の液晶配向性を改善するためにはZ、Z、Z及びZはそれぞれ独立して単結合、−(CH) −(式中、uは1〜8を表し、非隣接のCH基の1つ又は2つは独立して、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH−、−CH=CH−、−C≡C−によって置換されていても良い。)、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−が好ましい。A、A、A及びAはそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
【0180】
前記ポリマーによって構成される光配向膜の上に積層される、重合性液晶の配向の熱安定性を改善するためにはZ、Z、Z及びZはそれぞれ独立して−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、又は−O−CO−O−が好ましい。A、A、A及びAはそれぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。又、ポリマーの溶解性を改善するためにはZ、Z、Z及びZはそれぞれ独立して−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−NR−又は−CO−が好ましい。A、A、A及びAはそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基又は2,5−フラニレン基が好ましい。
【0181】
一般式(VII)には多くの化合物が含まれるが、具体的には以下の式(VII-a-1)〜式(VII-q-10)
【0182】
【化81】
【0183】
【化82】
【0184】
【化83】
【0185】
【化84】
【0186】
【化85】
【0187】
【化86】
【0188】
【化87】
【0189】
【化88】
【0190】
【化89】
【0191】
【化90】
【0192】
【化91】
【0193】
【化92】
【0194】
【化93】
【0195】
【化94】
【0196】
【化95】
【0197】
【化96】
【0198】
【化97】
【0199】
で表される化合物が特に好ましい。
これらの中でも式(VII-a-1)〜(VII-a-15)、式(VII-b-11)〜(VII-b-15)、式(VII-c-1)〜(VII-c-11)、式(VII-d-10)〜(VII-d-15)、式(VII-f-1)〜(VII-f-10)、式(VII-g-1)〜(VII-g-10)、式(VII-h-1)〜(VII-h-10)、式(VII-j-1)〜(VII-j-9)、式(VII-l-1)〜(VII-l-11)又は式(VII-m-1)〜(VII-m-11)がさらに好ましい。
【0200】
一般式(Q)又は(QP)において、Pが、下記一般式(VIII)
【0201】
【化98】
【0202】
(式中、破線はS及びSaaへの結合を表し;A21、A22、A23、A24及びA25は、それぞれ独立的に1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−ピリジル基、2,5−ピリミジル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、−NR2122によって、又は1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル残基によって1置換又は多置換されており、アルキル残基は非置換であるか、フッ素によって1置換又は多置換され、ここで非隣接CH基の内の1つ以上が独立してQによって置換されることができ、ここでQは、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH−、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−、−O−CO−O−を表し、
R、R21及びR22は、独立して水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基を表し;p1、q1、r1、s1及びt1は、それぞれ独立的に0又は1を表すが、0<q1+r1+s1+t1を表す。)
【0203】
21、A22、A23、A24及びA25は、それぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか、又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基で置換されていることが好ましい。A21、A22、A23、A24及びA25は、それぞれ独立して2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか、又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基で置換されていることがより好ましい。q1+r1+s1+t1は1以上2以下がより好ましい。A21、A22、A23、A24及びA25は、それぞれ独立して2,6−ナフチレン基、又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか、又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基で置換されていることが特に好ましい。p1及びq1+r1+s1+t1は1であることが特に好ましい。
【0204】
液晶配向性を改善するためにはA21、A22、A23、A24及びA25はそれぞれ独立してピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基が好ましい。又、ポリマーの溶解性を改善するためには、A21、A22、A23、A24及びA25はそれぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−チオフェニレン基又は2,5−フラニレン基が好ましい。又、液晶を配向させるために必要な光照射量を少なくするためにはA21、A22、A23、A24及びA25はピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましく、q1+r1+s1+t1は1から2が好ましい。又、より長波長での光配向を行うためにはA21、A22、A23、A24及びA25はピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−フラニレン基が好ましく、q1+r1+s1+t1は1から3が好ましい。
一般式(VIII)には多くの化合物が含まれるが、具体的には以下の式(P-a-1)〜式(P-e-7) で表される構造であることが好ましい。
【0205】
【化99】
【0206】
【化100】
【0207】
【化101】
【0208】
【化102】
【0209】
【化103】
【0210】
これらの中でも式(P-a-1)〜(P-a-9)、式(P-b-1)〜(P-b-8)、式(P-c-1)又は式(P-e-5)で表される化合物がさらに好ましい。
【0211】
本発明のポリマーにおいて、(a)光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位と、(b)光化学的に架橋可能な部位とは、グラフト重合しても、共重合していてもよい。
【0212】
(第一から第三の実施態様のポリマー)
以下に本発明のポリマーの好ましい例である、第一から第三の実施態様のポリマーについて説明する。なお特に説明の無い場合は、Sp、A,X,Y,Z,rなどについて上記説明を援用する。好ましい例も下記ポリマーの例にとって同様に好ましい。
【0213】
(第一の実施態様のポリマー)
第一の実施態様のポリマーは、(a)光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位、及び(b)光化学的に架橋可能な部位を有するポリマーであり、前記ポリマーが一般式(I)で表される構造を含む。
【0214】
【化104】
【0215】
一般式(I)中、破線はポリマー主鎖(M)への結合を表し、Spはスペーサー単位を表し、Aはそれぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表す。これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。rは0、1又は2を表す。X及びYは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1から20のアルキル基を表すが、前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、1つのCH基又は2以上の非隣接CH基は−O−、−CO−O−、−O−CO−及び/又は−CH=CH−で置換されていても良い。Zは、一般式(IIa)又は(IIb)で表される。
【0216】
【化105】
【0217】
一般式(IIa)又は(IIb)中、破線はZが結合する炭素原子への結合を表す。Rは水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から20のアルキル基又は環員数3から8のシクロアルキル基を表すが、前記アルキル基の水素原子は非置換であるか、又はフッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良く、前記シクロアルキル基の水素原子は非置換であるか、又は炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシ基、フッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良い。Wは、単結合、−CH−、=CH−、−CO−O−又は−CO−NH−を表す。Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表すが、前記アルキル基中の1つのCH基又は2以上の非隣接CH基は−CH=CH−、−CF=CF−及び/又は−C≡C−で置換されており、さらに前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていても良い。Rは、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。
【0218】
で表される炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は環員数3から8のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0219】
本明細書及び特許請求の範囲において、前記「2以上の非隣接CH基」とは、「互いに隣接しない2以上のCH基」を意味する。
【0220】
一般式(I)、(IIa)又は(IIb)において、前記ポリマーを使用した光配向膜の上に積層された重合性液晶の液晶配向性を改善するためには、Aはピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
又、第一の実施態様のポリマーの溶解性を改善するためにはAは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−チオフェニレン基又は2,5−フラニレン基が好ましい。
又、前記ポリマーを使用した光配向膜の上に積層された重合性液晶を配向させるために必要な光照射量を少なくするためには、Aはピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
又、前記ポリマーを使用した光配向膜を形成する際、より長波長での光配向を行うためには、Aはピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−フラニレン基が好ましく、X及びYはフッ素原子、塩素原子又はシアノ基が好ましい。
【0221】
第一の実施態様の一般式(I)で表されるポリマーにおいて、X及びYは水素原子であることが好ましい。前記ポリマーを使用した光配向膜を備えた位相差膜のコントラスト比を向上させることができる。
【0222】
第一の実施態様の一般式(I)で表されるポリマーにおいて、Aは、一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい1,4−フェニレン基であることが好ましい。
前記ポリマーを用いることによって、塗工性が良いポリマー溶液が得られる。
【0223】
第一の実施態様の好ましいポリマーは、一般式(IVa)で表されるSpを有し、前記一般式(IVa)において、Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基を表し、前記何れかの基における一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、Zは単結合、−(CH)−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−又は−C≡C−の何れかの基を表し、前記何れかの基において非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置換されていても良く、qが1を表す、ポリマーである。
前記ポリマーを用いることによって、前記ポリマーによって構成される光配向膜の上に積層される、重合性液晶からなる位相差膜のコントラスト比を向上することができる。
【0224】
本発明の第一の実施態様の好ましいポリマーは、一般式(IVa)で表されるSpを有し、前記一般式(IVa)において、Aは、一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表す、ポリマーである。
前記ポリマーを用いることによって、前記ポリマーによって構成される光配向膜の上に積層される、重合性液晶からなる位相差膜のコントラスト比を向上することができる。
【0225】
(第二の実施態様のポリマー)
第二の実施態様のポリマーは、(a)光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位、及び(b)光化学的に架橋可能な部位を有するポリマーであり、前記ポリマーが一般式(I)で表される構造を含む。
【0226】
【化106】
【0227】
一般式(I)中、破線はポリマー主鎖(M)への結合を表し、Spはスペーサー単位を表し、Aはそれぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表す。これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。X及びYは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1から20のアルキル基を表すが、前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていても良い。前記アルキル基中の1つのCH基又は2以上の非隣接CH基は−O−、−CO−O−、−O−CO−及び/又は−CH=CH−で置換されていても良い。Zは、一般式(IIa)又は(IIb)で表され、rは1又は2を表す。
【0228】
【化107】
【0229】
一般式(IIa)又は(IIb)中、破線はZが結合する炭素原子への結合を表す。
は水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から20のアルキル基又は前記アルキル基を連結基として介していても良い環員数3から8のシクロアルキル基を表し、前記アルキル基の水素原子は非置換であるか、又はフッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良く、前記シクロアルキル基の水素原子は非置換であるか、又は炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシ基、フッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良い。
は、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から20のアルキル基又は前記アルキル基を連結基として介していても良い環員数3から8のシクロアルキル基を表し、前記アルキル基の水素原子は非置換であるか又はフッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良く、前記シクロアルキル基の水素原子は非置換であるか又は炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシ基、フッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良い。
【0230】
で表される炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は前記アルキル基を連結基として介していても良い環員数3から8のシクロアルキル基であることが好ましい。
で表される炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は前記アルキル基を連結基として介していても良い環員数3から8のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0231】
本明細書及び特許請求の範囲において、前記「2以上の非隣接CH基」とは、「互いに隣接しない2以上のCH基」を意味する。
【0232】
一般式(I)、(IIa)又は(IIb)において、前記ポリマーを使用した光配向膜の上に積層された重合性液晶の液晶配向性を改善するためには、Aはピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
又、第二の実施態様のポリマーの溶解性を改善するためには、Aは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−チオフェニレン基又は2,5−フラニレン基が好ましい。
又、前記ポリマーを使用した光配向膜の上に積層された重合性液晶における液晶を配向させるために必要な光照射量を少なくするためには、Aはピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
又、前記ポリマーを使用した光配向膜を形成する際、より長波長での光配向を行うためには、Aはピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−フラニレン基が好ましく、X及びYはフッ素原子、塩素原子又はシアノ基が好ましい。
【0233】
第二の実施態様の一般式(I)で表されるポリマーにおいて、X及びYは水素原子であることが好ましい。前記ポリマーを使用した光配向膜を備えた位相差膜のコントラスト比を向上させることができる。
【0234】
第二の実施態様の一般式(I)で表されるポリマーにおいて、Aは、一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い1,4−フェニレン基であることが好ましい。
前記ポリマーを用いることによって、塗工性が良いポリマー溶液が得られる。
【0235】
一般式(I)において、Spが上記一般式(IVa)で表される構造であることが好ましい。
【0236】
一般式(IVa)において、Aは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基又は2,5−チオフェニレン基の何れかの基であることが好ましい。Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基の何れかの基であることが好ましい。これらの基の水素原子は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。
一般式(IVa)において、Aは1,4−ナフチレン基又は2,6−ナフチレン基の何れかの基であることがより好ましく、Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基であることがより好ましい。これらの基の水素原子は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。
一般式(IVa)において、Aは2,6−ナフチレン基が特に好ましく、Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基であることが特に好ましい。これらの基の水素原子は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。
【0237】
前記ポリマーを使用した光配向膜の製造時に、少ない偏光照射量で効率良く配向性を付与できることから、一般式(IVa)において、Aは、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基であることが好ましく、1,4−ナフチレン基又は2,6−ナフチレン基であることがより好ましく、2,6−ナフチレン基であることが更に好ましい。
前記ポリマーを使用した光配向膜の製造時に、少ない偏光照射量で効率良く配向性を付与できることから、一般式(IVa)において、Aは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基又は1,4−フェニレン基であることが好ましく、2,6−ナフチレン基又は1,4−フェニレン基であることが好ましく、1,4−フェニレン基であることが更に好ましい。前記1,4−フェニレン基の水素原子は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていると、より少ない偏光照射量で配向性を付与できることがあるので好ましい。
【0238】
前記ポリマーを使用した光配向膜の上に積層された重合性液晶の液晶配向性を改善するためには、一般式(IVa)において、Z、Z及びZはそれぞれ独立して単結合、−(CH)−(式中、uは1〜8を表し、非隣接のCH基の1つ又は2つは独立して、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH−O−Si(CH−、−CH=CH−、−C≡C−に置換されていても良い。)、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−が好ましい。Aは1,4−ナフチレン基又は2,6−ナフチレン基の何れかの基であることが好ましい。Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
【0239】
又、前記ポリマーを使用した光配向膜の上に積層された重合性液晶の配向の熱安定性を改善するためには、一般式(IVa)において、Z、Z及びZはそれぞれ独立して−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、又は−O−CO−O−が好ましい。Aは2,6−ナフチレン基が好ましい。Aは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
【0240】
又、第二の実施態様のポリマーの溶解性を改善するためには、Z、Z及びZはそれぞれ独立して−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−NR−又は−CO−が好ましい。Aは2,6−ナフチレン基が好ましい。Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基又は2,5−フラニレン基が好ましい。
【0241】
一般式(IVa)で表されるSpとしては、例えば、第一の実施態様において、化学式(Sp-a-1)〜化学式(Sp-ah-8)で表されていたものが、第二の実施態様においても同様に好ましい。更に、以下に示される、化学式(Sp-ae-1)〜化学式(Sp-ah-8)で表されるものも好ましい。
これらの中でも、化学式(Sp-a-6)〜(Sp-a-20)、化学式(Sp-b-3)〜(Sp-b-10)、化学式(Sp-c-3)〜(Sp-c-10)、化学式(Sp-d-3)〜(Sp-d-12)、化学式(Sp-k-4)〜(Sp-k-7)、化学式(Sp-l-13)〜(Sp-l-17)、化学式(Sp-o-3)〜(Sp-o-14)、化学式(Sp-p-2)〜(Sp-p-13)、化学式(Sp-s-1)〜(Sp-s-8)、化学式(Sp-t-1)〜(Sp-t-8)、化学式(Sp-y-1)〜(Sp-y-9)、化学式(Sp-aa-1)〜(Sp-aa-9)、化学式(Sp-ae-1)〜(Sp-ae-9)、化学式(Sp-af-1)〜(Sp-af-8)、化学式(Sp-ag-1)〜(Sp-ag-9)、及び化学式(Sp-ah-1)〜(Sp-ah-8)、で表されるものがより好ましい。
【0242】
前記ポリマーは、一般式(IVa)で表されるSpを有し、前記一般式(IVa)において、Aは1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基を表し、前記何れかの基における一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、Zは単結合、−(CH)−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−又は−C≡C−の何れかの基を表し、前記何れかの基において非隣接のCH基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置換されていても良く、pが1を表す、ことが好ましい。
【0243】
前記化合物を用いることによって、前記ポリマーを使用した光配向膜の製造時に、少ない偏光照射量で効率良く配向性を付与でき、前記ポリマーを使用した光配向膜を備えた位相差膜のコントラスト比を向上させることができる。
【0244】
前記化合物は、一般式(IVa)で表されるSpを有し、前記一般式(IVa)において、Aは一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い1,4−ナフチレン基又は2,6−ナフチレン基を表す、化合物であることが好ましい。
前記化合物を用いることによって、前記ポリマーを使用した光配向膜の製造時に、少ない偏光照射量で効率良く配向性を付与でき、前記ポリマーを使用した光配向膜を備えた位相差膜のコントラスト比を向上させることができる。
【0245】
第二の実施態様の好ましいポリマーは、一般式(IVa)で表されるSpを有し、前記一般式(IVa)において、Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基を表し、前記何れかの基における一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、Zは単結合、−(CH)−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−又は−C≡C−の何れかの基を表し、前記何れかの基において非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置換されていても良く、qが1を表す、ポリマーであることが好ましい。
前記ポリマーを用いることによって、前記ポリマーを使用した光配向膜の製造時に、少ない偏光照射量で効率良く配向性を付与でき、前記ポリマーを使用した光配向膜を備えた位相差膜のコントラスト比を向上させることができる。
【0246】
第二の実施態様のより好ましいポリマーは、一般式(IVa)で表されるSpを有し、前記一般式(IVa)において、Aは、一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い1,4−フェニレン基を表す、ポリマーである。
前記ポリマーを用いることによって、前記ポリマーを使用した光配向膜の製造時に、少ない偏光照射量で効率良く配向性を付与でき、前記ポリマーを使用した光配向膜を備えた位相差膜のコントラスト比を向上させることができる。
【0247】
(第三の実施態様のポリマー)
第三の実施態様のポリマーは、(a)光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位、及び(b)光化学的に架橋可能な部位を有するポリマーであり、前記ポリマーが一般式(I)で表される構造を含む。
【0248】
【化108】
【0249】
一般式(I)中、破線はポリマー主鎖(M)への結合を表し、Spはスペーサー単位を表し、Aはそれぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表す。これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。X及びYは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1から20のアルキル基を表すが、前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、1つのCH基又は2以上の非隣接CH基は−O−、−CO−O−、−O−CO−及び/又は−CH=CH−で置換されていても良い。Zは、一般式(IIa)又は(IIb)で表される。
【0250】
【化109】
【0251】
一般式(IIa)又は(IIb)中、破線はZが結合する炭素原子への結合を表す。Rは水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1から20のアルキル基又は環員数3から8のシクロアルキル基を表すが、前記アルキル基の水素原子は非置換であるか、又はフッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良く、前記シクロアルキル基の水素原子は非置換であるか、又は炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシ基、フッ素原子若しくは塩素原子で置換されていても良い。Wは、−CH−、−CO−O−又は−CO−NH−を表す。Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表すが、前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、前記アルキル基中の1つのCH基又は2以上の非隣接CH基は−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−及び/又は−NCH−で置換されている。
【0252】
で表される炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は環員数3から8のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0253】
第三の実施態様の好ましいポリマーは、一般式(IVa)で表されるSpを有し、前記一般式(IVa)において、Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又は1,4−フェニレン基の何れかの基を表し、前記何れかの基における一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。Zは単結合、−(CH)−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−又は−C≡C−の何れかの基を表し、前記何れかの基において非隣接のCH基の1つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置換されていても良く、qが1を表す、ポリマーであることが好ましい。
前記ポリマーを用いることによって、前記ポリマーによって構成される光配向膜の上に積層される、重合性液晶からなる位相差膜のコントラスト比を向上することができる。
【0254】
第三の実施態様の好ましいポリマーは、一般式(IVa)で表されるSpを有し、前記一般式(IVa)において、Aは、一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表す、ポリマーであることが好ましい。
前記ポリマーを用いることによって、前記ポリマーによって構成される光配向膜の上に積層される、重合性液晶からなる位相差膜のコントラスト比を向上することができる。
【0255】
[ポリマーの調製]
本実施形態のポリマーの調製について以下に説明する。
本実施形態のポリマーにおける、(a)光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位を構成する化合物を含む組成物(以下、「モノマー組成物(a)」と言う。)と(b)光化学的に架橋可能な部位を構成する化合物を含む組成物(以下、「モノマー組成物(b)」と言う。)との混合割合は、ポリマー中の光化学的に架橋可能な部位100倍モル(モル部)に対して、ポリマー中の光化学的に異性化可能な部位が0.1〜30倍モル(モル部)であることが好ましい。又、ポリマー中の光化学的に架橋可能な部位100倍モル(モル部)に対して、ポリマー中の光化学的に異性化可能な部位が2〜10倍モル(モル部)であることがさらに好ましい。又、これらの化合物は液晶性化合物であることが好ましい。
【0256】
本実施形態のポリマーを調製する際には、重合官能基の重合様式に合わせて任意的に重合開始剤を用いることができ、重合開始剤の例は、高分子の合成と反応(高分子学会編、共立出版)などに公知である。
ラジカル重合における熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物が例として挙げられる。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、キサントン、チオキサントンなどの芳香族ケトン化合物、2−エチルアントラキノンなどのキノン化合物、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシー2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノンなどのアセトフェノン化合物、ベンジル、メチルベンゾイルホルメートなどのジケトン化合物、1−フェニルー1,2−プロパンジオンー2−(o-ベンゾイル)オキシムなどのアシルオキシムエステル化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド化合物、テトラメチルチウラム、ジチオカーバメートなどのイオウ化合物、過酸化ベンゾイルなどの有機化酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物が例として挙げられる。又、カチオン重合における熱重合開始剤としては、芳香族スルホニウム塩化合物などが挙げられる。又、光重合開始剤としては、有機スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、フォスフォニウム化合物などが挙げられる。
【0257】
前記重合開始剤の添加量は、モノマー組成物(a)とモノマー組成物(b)との混合物中、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜6質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることがさらに好ましい。又、ポリシロキサン化合物のように、ポリマー主鎖への付加反応により、目的とするポリマーを合成することも出来る。
【0258】
本実施形態のポリマーは、あらかじめガラス製、ステンレス製などの反応容器中で重合反応を行った後、生成したポリマーを精製することで得られる。重合反応は、原料となるモノマーを溶媒中に溶解させて行うこともでき、好ましい溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、2−ブタノン、アセトン、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、又、二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
又、本発明のポリマーは、モノマー組成物(a)とモノマー組成物(b)を溶媒中に溶解させ、基板上に塗布して溶媒を乾燥除去した後、加熱又は光照射により重合反応を行って得ることもできる。
【0259】
[光配向膜の形成方法]
前記ポリマーが構成する被膜に対して光照射を行うことによって、液晶分子に対する配向制御能力と、液晶分子配向の熱及び光に対する安定性が付与された光配向膜を形成することができる。
【0260】
本発明にかかるポリマー溶液を平板状又はフィルム状のPMMA系基材(本明細書において、PMMA系基板と呼ぶことがある。)の少なくとも一方の面に塗布した積層体を得て、塗布された当該ポリマー溶液の層を乾燥し、当該溶液層から溶媒を除くことにより、PMMA系基材の少なくとも一方の面に前記ポリマー溶液が乾燥されてなる乾燥被膜を有する積層体を得ることができる。前記ポリマーを含む前記乾燥被膜に対して、偏光を照射することによって、液晶分子に対する配向制御能力を備え、液晶分子の配向の熱と光に対する安定性を付与することが可能な光配向膜を形成することができる。つまり、前記乾燥被膜を有する積層体に偏光を照射することにより、前記光配向膜を有する積層体が得られる。
【0261】
前記ポリマー溶液をPMMA系基材上に塗布する方法としては、例えばスピンコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの方法が挙げられる。
【0262】
塗布する際の前記ポリマー溶液の固形分濃度は、0.5〜10質量%が好ましく、基材上に前記ポリマー溶液を塗布する方法、前記ポリマー溶液の粘性、前記ポリマー溶液を構成する前記溶媒の揮発性等を考慮して、上記範囲から選択することがさらに好ましい。
【0263】
塗布した溶液からなる溶液層を乾燥する方法としては、塗布面を加熱して、溶媒を除去する方法が好ましい。乾燥時の加熱温度としては、PMMA系基材が損傷したり変形したりしない温度であれば特に制限されず、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜80℃である。この好ましい加熱温度における加熱時間としては、好ましくは2〜200分、より好ましくは2〜100分である。乾燥方法は特に制限されず、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の方法が挙げられる。
【0264】
次いで、前記方法により形成した前記ポリマーからなる塗膜に、塗膜面法線方向からの直線偏光照射、斜め方向からの非偏光又は直線偏光照射により、光架橋反応を行うことで硬化させ配向制御能を発現させることができる。複数の照射方法を組み合わせてもよい。
【0265】
前記ポリマーからなる乾燥被膜を硬化(光架橋反応)させ、前記乾燥被膜を光配向膜に変化させる際に照射する光は、例えば150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができる。このうち、270nmから450nmの紫外線が特に好ましい。前記ポリマーを構成する前記一般式(I)で表される桂皮酸誘導体にナフチレン基を有する場合は、前記ナフチレン基が270〜450nmの紫外線をよく吸収するため、光照射による配向性の付与の効率を一層高められる。
【0266】
光源としては、例えば、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。これらの光源からの光に対して、偏光フィルターや偏光プリズムを用いることで直線偏光が得られる。又、このような光源から得た紫外光及び可視光は、干渉フィルターや色フィルターなどを用いて、照射する波長範囲を制限してもよい。照射エネルギーは、1mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、2mJ/cm2〜300mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は2〜500mW/cm2であることがより好ましく、5〜300mW/cm2であることがさらに好ましい。
【0267】
PMMA系基材上に塗布する前記ポリマー溶液の量は、基材表面上に形成される溶液層の厚みが500〜30,000nmとなる範囲が好ましく、500〜10,000nmとなる範囲がより好ましい。
形成する光配向膜の膜厚は、10〜250nm程度が好ましく、10〜100nm程度がより好ましい。
【0268】
[光学異方体の製造方法]
前記光配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、前記重合性液晶組成物中の重合性液晶分子を配向させた状態で重合させることで、光学異方体を製造することができる。ここで、光学異方体とはその物質中を光が進むとき、進む方向によって光の速度、屈折率、吸収などの光学的性質に違いがある物質を意味する。前記光学異方体の例として、位相差板、位相差フィルム等の光学部品が挙げられる。
【0269】
光学異方体の製造工程としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
第一工程として、PMMA系基板上に、前記ポリマーからなる膜を形成する。第二工程として、異方性を有する光を照射して、前記ポリマーからなる膜に配向制御能を付与し、光配向膜を形成する。第三工程として、前記光配向膜上に重合性液晶組成物膜を形成する。第四工程として、重合性液晶組成物膜を重合させて光学異方体を形成する。この時、第四工程において、光配向膜内で重合反応や架橋反応が同時に進行してもよい。前記製造工程においては、前記ポリマーからなる膜に直接光を照射するので、より液晶配向能の高い光配向膜を得ることができる。
【0270】
また、別の製造方法として以下の方法が挙げられる。
第一工程としてPMMA系基板上に、前記ポリマーからなる膜を形成する。第二工程として、前記ポリマーからなる膜上に重合性液晶組成物膜を形成する。第三工程として、異方性を有する光を照射して、前記ポリマーからなる膜に配向制御能を付与し、光配向膜を形成する。第四工程として、重合性液晶組成物膜を重合させて光学異方体を形成する。この時、光照射等により第三工程と第四工程が同時に進行しても良く、前記製造工程では工程数を削減することができる。
【0271】
場合によっては、光学異方体を数層にわたり積層することもできる。その場合は前記工程を複数回繰り返せば良く、光学異方体の積層体を形成することができる。前記光配向膜上に前記光学異方体を形成した後、さらに光学異方体上に光配向膜と光学異方体を積層しても良く、前記光配向膜上に前記光学異方体を形成した後、さらに光学異方体を積層してもよい。
【0272】
マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させた後、未重合部分の配向状態を、電場、磁場又は温度等をかけて変化させ、その後前記未重合部分を重合させると、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることもできる。
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させる際に、予め未重合状態の前記モノマー組成物(a)及び前記モノマー組成物(b)に電場、磁場又は温度等をかけて配向を規制し、その状態を保ったままマスク上から光を照射して重合させることによっても、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることができる。
【0273】
得られた光学異方体の耐溶剤特性や耐熱性の安定化のために、光学異方体を加熱エージング処理することもできる。この場合、前記重合性液晶組成物膜のガラス転移点以上で加熱することが好ましい。通常は、50〜300℃が好ましく、使用するPMMA系基材の耐熱温度の範囲で加熱することがより好ましい。
以上の工程により得られた光学異方体は、基板から光学異方体層を剥離して単体で光学異方体として使用することも、基板から剥離せずにそのまま光学異方体として使用することもできる。特に、他の部材を汚染し難いので、被積層基板として使用したり、他の基板に貼り合わせて使用したりするときに有用である。
【0274】
[液晶配向層の形成方法]
本実施形態のポリマーに対し、光照射を行うことによって、液晶分子に対する配向制御能力の付与および配向の熱及び光に対する安定性の付与が可能である。前記ポリマーを用いた、水平配向又は垂直配向モード液晶表示素子用の液晶配向層、及び、前記液晶配向層を含む水平配向又は垂直配向モード液晶表示素子を提供できる。前記ポリマーより得られる液晶配向層の形成方法の例としては、前記ポリマーを溶媒に溶解させ、基板上に塗布した後、塗膜を光照射して配向制御能力を発現させて液晶配向層とする方法が挙げられる。
【0275】
ここで、上記液晶配向層と前述した光配向膜とは、同じ構成を有する層(膜)であってもよいし、異なる構成を有する層(膜)であってもよい。前述した光配向膜は、当該光配向膜上に積層される重合性液晶を配向させることができる。一方、ここで述べる液晶配向層は、液晶セルにおいて電圧によって駆動される液晶層を配向させることができる。
【0276】
PMMA系基材を使用せずに、他の材料からなる基材上に液晶配向層を形成する場合、前記ポリマーを溶解させるために使用する溶媒は、前記ポリマーおよび任意的に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。例えば、1,1,2−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、ブトキシエタノール、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、フェノキシエタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンなどが挙げられ、二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0277】
PMMA系基材を使用せずに、他の材料からなる基材上に液晶配向層を形成する場合、前記液晶配向層の形成方法の例としては、モノマー組成物(a)とモノマー組成物(b)を溶媒に溶解させて得られた溶液を、基板上に塗布した後、その塗膜を加熱するか又はその塗膜に光照射してポリマーを重合し、このポリマーに光照射して配向制御能力を発現させ、液晶配向層とする方法を挙げることもできる。
前記モノマー組成物を溶解させるために使用する溶媒としては、前記ポリマーを溶解させるために使用する溶媒と同様の溶媒を用いることができる。又、光照射によりポリマーの調製と配向制御能力の発現を同時に行っても良く、又、加熱と光照射の併用、波長の異なる2種類以上の光の併用などの方法によりポリマーの調製と配向制御能力の発現を別々に行ってもよい。さらに、前記液晶配向層の形成方法のいずれの場合においても、あらかじめ配向層を形成した基板上にさらに光配向層を製造することで、前記ポリマーによる配向方向および配向角度の制御能力を基板に対して付与することもできる。
【0278】
PMMA系基材を使用せずに、他の材料からなる基材上に液晶配向層を形成する場合、前記基板の材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート及びトリアセチルセルロースなどが挙げられる。
液晶表示素子に用いる場合、これらの基板には、Cr、Al、In−SnOからなるITO膜、またはSnOからなるNESA膜などの電極層が設けられていても良く、これらの電極層のパターニングには、フォト・エッチング法や電極層を形成する際にマスクを用いる方法等が用いられる。さらに、前記基板には、カラーフィルタ層などが形成されていてもよい。
【0279】
前記ポリマーを含む溶液を基板上に塗布する方法としては、例えば、スピンコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの方法が挙げられる。
塗布する際の溶液の固形分濃度は、0.5〜10質量%が好ましい。基板上に溶液を塗布する方法、粘性、揮発性等を考慮してこの範囲より選択することがさらに好ましい。
前記ポリマー溶液を基板上に塗布した後、前記塗布面を加熱し、溶媒を除去することが好ましい。乾燥条件は、好ましくは50〜300℃、より好ましくは80〜200℃において、好ましくは2〜200分、より好ましくは2〜100分である。
【0280】
又、前記モノマー組成物(a)及び前記モノマー組成物(b)を用いた場合、上記加熱工程で熱重合を行い、基板上でポリマーを調製することもできる。この場合はモノマー組成物(a)又はモノマー組成物(b)中に重合開始剤を含有させておくことが好ましい。あるいは、上記加熱工程で溶媒を除去した後に、非偏光を照射して光重合によりポリマーを調製することもでき、又、熱重合と光重合を併用することもできる。
基板上で、熱重合により前記ポリマーを調製する場合、加熱温度は、重合が進行するのに十分であれば特に制限されない。一般的には、50〜250℃程度であり、70〜200℃程度であることがさらに好ましい。この際、前記組成物中に重合開始剤を添加しても添加しなくてもよい。
【0281】
基板上で、光重合により本実施形態のポリマーを調製する際、光照射には非偏光の紫外線を用いることが好ましい。
又、前記組成物には重合開始剤を含有させておくことが好ましい。
非偏光の紫外線の照射エネルギーは、20mJ/cm〜8J/cmであることが好ましく、40mJ/cm〜5J/cmであることがさらに好ましい。
非偏光の紫外線の照度は、10〜1000mW/cmであることが好ましく、20〜500mW/cmであることがより好ましい。
非偏光の紫外線の照射波長としては、250〜450nmにピークを有することが好ましい。
【0282】
次いで、前記方法により形成した前記塗膜に、塗膜面法線方向からの直線偏光照射、斜め方向からの非偏光又は直線偏光照射により、光異性化反応及び光架橋反応を行うことで配向制御能を発現させることができ、又、これらの照射方法を組み合わせてもよい。所望のプレチルト角を付与するためには斜め方向からの直線偏光照射が好ましい。なお、本明細書において、斜め方向からの照射とは、光の照射方向と基板面とがなす角度が1度以上89度以下の場合であるとする。垂直配向用の液晶配向層として用いる場合、一般的には、プレチルト角は70〜89.8°であるのが好ましい。また、水平配向用の液晶配向層として用いる場合、一般的には、プレチルト角は0〜20°であるのが好ましい。
【0283】
前記塗膜に照射する光は、例えば、150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、270nmから450nmの紫外線が特に好ましい。
光源としては、例えば、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、及びメタルハライドランプなどが挙げられる。これらの光源からの光に対して、偏光フィルターや偏光プリズムを用いることで直線偏光が得られる。又、このような光源から得た紫外光及び可視光は、干渉フィルターや色フィルターなどを用いて、照射する波長範囲を制限してもよい。
又、光の照射エネルギーは、1mJ/cm〜500mJ/cmであることが好ましく、2mJ/cm〜300mJ/cmであることがさらに好ましい。
光の照度は2〜500mW/cmであることがより好ましく、5〜300mW/cmであることがさらに好ましい。
形成される液晶配向層の膜厚は、10〜250nm程度が好ましく、10〜100nm程度がより好ましい。
【0284】
本明細書において、光学軸とは、液晶表示素子もしくは光学異方体において、屈折率が一定になり、偏光していない光を入射しても複屈折が発生せず通常光線と異常光線が一致する、あるいはずれが最小となる方向のことであるとする。
本明細書において、配向とは、液晶表示素子の液晶セル中にある液晶分子、もしくは、光学異方体を形成する重合性液晶分子が一定の方向を向いている時の向きのことであり、棒状の液晶分子の場合は分子長軸が取る向きのこととし、円盤状の液晶分子の場合は円盤面に対する方線方向とする。
本明細書において、プレチルト角とは、液晶分子もしくは重合性液晶分子の配向方向と基板面が成す角度のことであるとする。
本明細書において、重合性液晶とは、液晶相を示し、かつ重合可能な化学構造を含む化合物のことであるとする。
本明細書において、ホモジニアス配向とは、プレチルト角が0度以上20度以下となっている配向のことであるとする。
本明細書において、ホメオトロピック配向とは、プレチルト角が70度以上90度以下となっている配向のことであるとする。光学軸が基板面に対して成す角とプレチルト角は一致していても一致していなくても良い。
【0285】
[液晶表示素子の製造方法]
上記の方法で形成された液晶配向層を用いて、例えば、以下のようにして、一対の基板間に液晶組成物を挟持する液晶セル及びこれを用いた液晶表示素子を製造することができる。
上記液晶配向層が形成された基板を2枚準備し、この2枚の基板間に液晶を配置することで液晶セルを製造することができる。又、2枚の基板のうち1枚のみに上記液晶配向層が形成されていてもよい。
液晶セルの製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、それぞれの液晶配向層が対向するように2枚の基板を配置し、2枚の基板の間に一定の間隙(セルギャップ)を保った状態で周辺部を、シール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
【0286】
又、液晶セルはODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法でも製造することができる。手順としては、例えば、液晶配向層を形成した基板上の所定の場所に、例えば、紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向層上に液晶を滴下した後、液晶配向層が対向するようにもう1枚の基板を貼り合わせ、次いで、基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
いずれの方法により液晶セルを製造する場合でも、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、注入時の流動配向を除去することが望ましい。
【0287】
前記シール剤としては、例えば、エポキシ樹脂等を用いることができる。
又、前記セルギャップを一定に保つためには、2枚の基板を張り合わせるのに先立って、スペーサーとしてシリカゲル、アルミナ、アクリル樹脂などのビーズを用いることができる。これらのスペーサーは配向膜塗膜上に散布してもよいし、シール剤と混合した上で2枚の基板を張り合わせてもよい。
【0288】
前記液晶としては、例えば、ネマチック型液晶を用いることができる。垂直配向型液晶セルの場合には、負の誘電異方性を有するものが好ましい。水平配向型液晶セルの場合には、正の誘電異方性を有するものが好ましい。用いられる液晶としては、例えば、ジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ナフタレン系液晶、ビフェニル系液晶、及びフェニルシクロヘキサン系液晶等を挙げることができる。こうして製造した上記液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。
偏光板の例としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」からなる偏光板、又はH膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板等を挙げることができる。
【0289】
[重合性液晶組成物の調製]
本発明で光学異方体を製造する場合に使用する重合性液晶組成物は、単独又は他の液晶化合物との組成物において液晶性を示す、重合性液晶を含む液晶組成物である。例えば、Handbook of Liquid Crystals (D.Demus,J.W.Goodby,G.W.Gray,H.W.Spiess,V.Vill編集、Wiley−VCH社発行、1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編、1994年)、あるいは、特開平7−294735号公報、特開平8−3111号公報、特開平8−29618号公報、特開平11−80090号公報、特開平11−148079号公報、特開2000−178233号公報、特開2002−308831号公報、特開2002−145830号公報に記載されているような、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基等の構造が複数繋がったメソゲンと呼ばれる剛直な部位と、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、エポキシ基といった重合性官能基とを有する棒状重合性液晶化合物、あるいは特開2004−2373号公報、特開2004−99446号公報に記載されているようなマレイミド基を有する棒状重合性液晶化合物、あるいは特開2004−149522号公報に記載されているようなアリルエーテル基を有する棒状重号性液晶化合物、あるいは、例えば、Handbook of Liquid Crystals(D.Demus,J.W.Goodby,G.W.Gray,H.W.Spiess,V.Vill編集、Wiley−VCH社発行、1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編、1994年)や、特開平07−146409号公報に記載されているディスコティック重合性化合物があげられる。中でも、重合性基を有する棒状液晶化合物が、液晶温度範囲として室温前後の低温を含むものを作りやすく好ましい。
【0290】
本発明の重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶材料として、1種類以上の重合性液晶化合物及び、重合開始剤を含有し、更に必要に応じて、界面活性剤、その他の添加剤で構成され、コレステリック液晶にする場合は、更にキラル化合物を含有することが好ましい。
本発明の液晶表示装置における光学異方層(例えば、位相差)は、2つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物を25重量%以上含有する重合性液晶組成物を重合させることにより得られる光学異方体を用いる。
【0291】
2つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物は、具体的には以下の一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0292】
【化110】
【0293】
式(1)中、Pは重合性官能基を表し、Spは炭素原子数0〜18のアルキレン基を表し(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子、CN基、又は重合性官能基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基により置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)、m1は0又は1を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、R1は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、あるいは、R1は一般式(1−a)
【0294】
【化111】
(式中、P1aは重合性官能基を表し、Sp1aはSpと同じ意味を表し、maは0又は1を表す。)で表される構造を表す。)を表し、
MGで表されるメソゲン基又はメソゲン性支持基は、一般式(1−b)
【0295】
【化112】
(式中、A1、A2、A3、A4、及びA5はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、
置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基、アルケノイルオキシ基、又は、一般式(1−c)で表される1個以上の置換基
【0296】
【化113】
(式中、Pは重合性官能基を表し、Aは、−O−、−COO−、−OCO−、−OCH2−、−CH2O−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、又は単結合を表し、Sp1cはSpと同じ意味を表し、n1は0又は1を表し、mcは0又は1を表す。)を有していても良く、
Z0、Z1、Z2、Z3、Z4、及びZ5はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH2 CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、−CONH−、−NHCO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
n、l及びkはそれぞれ独立して0又は1を表し、0≦n+l+k≦3を表す。)で表される。但し、式(1)中、重合性官能基は2つ以上存在する。
【0297】
、P1a及びPは、下記の式(P−1)から式(P−20)で表される重合性基から選ばれる置換基を表すのが好ましい。
【0298】
【化114】
【0299】
これらの重合性官能基のうち、重合性および保存安定性を高める観点から、式(P−1)又は式(P−2)、(P−7)、(P−12)、(P−13)が好ましく、式(P−1)、(P−7)、(P−12)がより好ましい。
2つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物は、1種又は2種以上用いることができるが、1種〜6種が好ましく、2種〜5種がより好ましい。
2つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の内、25〜100質量%含有することが好ましく、30 〜100質量%含有することがより好ましく、35〜100質量%含有することが特に好ましい。
2つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物としては、2つの重合性官能基を有する化合物が好ましく、以下の一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0300】
【化115】
式中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、
置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基、アルケノイルオキシ基を表す。また、Z0、Z1、Z2、Z3、Z4、及びZ5はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH2 CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、−CONH−、−NHCO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
n、l及びkはそれぞれ独立して0又は1を表し、0≦n+l+k≦3を表す。
【0301】
2a及びP2bは重合性官能基を表し、Sp2a及びSp2bはそれぞれ独立して炭素原子数0〜18のアルキレン基を表し(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)、m2、n2はそれぞれ独立して0又は1を表す。
n、l及びkはそれぞれ独立して、0又は1を表し、0≦n+l+k≦3を表す。
2a及びP2bは下記の式(P−1)から式(P−20)で表される重合性基から選ばれる置換基を表すのが好ましい。
【0302】
【化116】
【0303】
これらの重合性官能基のうち、重合性および保存安定性を高める観点から、式(P−1)又は式(P−2)、(P−7)、(P−12)、(P−13)が好ましく、式(P−1)、(P−7)、(P−12)がより好ましい。
更には、一般式(2)の一例として、一般式(2−1)〜(2−4)を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0304】
【化117】
式中、P2a、P2b、Sp2a、Sp2b、A1、A2、A3、A4、A5、Z0、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、m2及びn2は一般式(2)における定義と同じものを表す。
2つの重合性官能基を有する重合性液晶化合物の具体的例としては、式(2−5)〜(2−28)の化合物を挙げることができるが、下記の化合物に限定されるわけではない。
【0305】
【化118】
【0306】
【化119】
【0307】
【化120】
【0308】
【化121】
【0309】
式(2−5)〜(2−28)中、m、n、lはそれぞれ独立して1〜18の整数を表し、R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基を表し、これらの基が炭素数1〜6のアルキル基、あるいは炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、あるいは1つまたは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。
2つの重合性官能基を有する液晶化合物は、1種又は2種以上用いることができるが、1種〜5種が好ましく、2種〜5種がより好ましい。2つの重合性官能基を有する液晶化合物の含有量は、重合性組成物の内、25〜100質量%含有することが好ましく、30〜100質量%含有することがより好ましく、35〜100質量%含有することが特に好ましい。
2つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物としては、3つの重合性官能基を有する化合物も好ましい。一般式(3−1)〜(3−18)を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0310】
【化122】
【0311】
【化123】
【0312】
【化124】
【0313】
式(3−1)〜(3−18)中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、一般式(2)の定義と同じものを表す。また、Z0、Z1、Z2、Z3、Z4、及びZ5は、一般式(2)の定義と同じものを表す。
3a、P3b、及び、P3cはそれぞれ独立して重合性官能基を表し、Sp3a、Sp3b、及びSp3cはそれぞれ独立して炭素原子数0〜18のアルキレン基を表し(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)、m3、n3、k3はそれぞれ独立して0又は1を表す。
3つの重合性官能基を有する重合性液晶化合物の具体的例としては、式(3−19)〜(3−26)の化合物を挙げることができるが、下記の化合物に限定されるわけではない。
【0314】
【化125】
【0315】
【化126】
【0316】
3つの重合性官能基を有する液晶化合物は、1種又は2種以上用いることができるが、1種〜4種が好ましく、1種〜3種がより好ましい。
3つの重合性官能基を有する液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の内、0〜80質量%含有することが好ましく、0〜70質量%含有することがより好ましく、0〜60質量%含有することが特に好ましい。
本発明における重合性液晶組成物には、更に1つの重合性官能基を有する液晶化合物を含有してもよい。
1つの重合性官能基を有する液晶性化合物は、具体的には、以下の一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0317】
【化127】
式中、Pは重合性官能基を表し、Spは炭素原子数0〜18のアルキレン基を表し(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)、m4は0又は1を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。
は下記の式(P−1)から式(P−20)で表される重合性基から選ばれる置換基を表すのが好ましい。
【0318】
【化128】
これらの重合性官能基のうち、重合性および保存安定性を高める観点から、式(P−1)又は式(P−2)、(P−7)、(P−12)、(P−13)が好ましく、式(P−1)、(P−7)、(P−12)がより好ましい。
MGで表されるメソゲン基又はメソゲン性支持基は、一般式(4−b)で表される基が挙げられる。
【0319】
【化129】
一般式(4−b)中、A1、A2、A3、A4及びA5はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基を、有していてもよく、Z0、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH2 CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、−CONH−、−NHCO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
n、l及びkはそれぞれ独立して、0又は1を表し、0≦n+l+k≦3を表す。
一般式(4)の一例として、一般式(4−1)〜(4−4)を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0320】
【化130】
【0321】
式(4−1)〜(4−4)中、A1、A2、A3、A4、及びA5は、一般式(4−b)の定義と同じものを表す。また、Z0、Z1、Z2、Z3、Z4、及びZ5は、一般式(4−b)の定義と同じものを表す。また、Rは一般式(4)と同じものを表す。
4a、重合性官能基を表し、Sp4a、Sp4bはそれぞれ独立して炭素原子数0〜18のアルキレン基を表し(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)、m4、n4はそれぞれ独立して0又は1を表す。)
一般式(4)で表される化合物としては、以下の式(4−5)〜(4−41)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0322】
【化131】
【0323】
【化132】
【0324】
【化133】
【0325】
【化134】
【0326】
【化135】
【0327】
式(4−5)〜(4−41)中、m及びnはそれぞれ独立して1〜18の整数を表し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基を表し、これらの基が炭素数1〜6のアルキル基、あるいは炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、あるいは1つまたは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。
1つの重合性官能基を有する液晶化合物は、1種又は2種以上用いることができるが、1種〜5種が好ましく、1種〜4種がより好ましい。1つの重合性官能基を有する液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の内、0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましく、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下が特に好ましい。
本発明において、重合性液晶組成物の重合処理は公知の方法で行うことができ、当該組成物中の重合性液晶化合物を配向した状態で一般に紫外線等の光照射、あるいは加熱によって行われることが好ましい。重合を光照射で行う場合は、具体的には390nm以下の紫外光を照射することが好ましく、250〜370nmの波長の光を照射することが最も好ましい。但し、390nm以下の紫外光により重合性組成物が分解などを引き起こす場合は、390nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。この光は、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。また、当該重合において使用する重合開始剤や添加剤も公知の方法を使用することができる。
本発明の重合性液晶組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられるが、加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましく、中でも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。照射時の温度は、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度とし、重合性液晶組成物の熱重合の誘起を避けるため、可能な限り30℃以下とすることが好ましい。尚、液晶組成物は、通常、昇温過程において、C(固相)−N(ネマチック)転移温度(以下、C−N転移温度と略す。)から、N−I転移温度範囲内で液晶相を示す。一方、降温過程においては、熱力学的に非平衡状態を取るため、C−N転移温度以下でも凝固せず液晶状態を保つ場合がある。この状態を過冷却状態という。本発明においては、過冷却状態にある液晶組成物も液晶相を保持している状態に含めるものとする。具体的には390nm以下の紫外光を照射することが好ましく、250〜370nmの波長の光を照射することが最も好ましい。但し、390nm以下の紫外光により重合性組成物が分解などを引き起こす場合は、390nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。この光は、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。紫外線照射強度は、0.05kW/m〜10kW/mの範囲が好ましい。特に、0.2kW/m〜2kW/mの範囲が好ましい。紫外線強度が0.05kW/m未満の場合、重合を完了させるのに多大な時間がかかる。一方、2kW/mを超える強度では、重合性液晶組成物中の液晶分子が光分解する傾向にあることや、重合熱が多く発生して重合中の温度が上昇し、重合性液晶のオーダーパラメーターが変化して、重合後のフィルムのリタデーションに狂いが生じる可能性がある。
マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させた後、該未重合部分の配向状態を、電場、磁場又は温度等をかけて変化させ、その後該未重合部分を重合させると、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることもできる。
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させる際に、予め未重合状態の重合性液晶組成物に電場、磁場又は温度等をかけて配向を規制し、その状態を保ったままマスク上から光を照射して重合させることによっても、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることができる。
【0328】
前記重合性液晶組成物に使用する溶剤としては、特に限定はないが、前記化合物が良好な溶解性を示す溶媒が使用できる。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。また、添加剤を添加することもできる。
【0329】
前記重合性液晶組成物には、重合性基を有していない液晶化合物を必要に応じて添加してもよい。しかし、添加量が多すぎると、得られた光学異方体から液晶化合物が溶出して積層部材を汚染する恐れがあり、加えて光学異方体の耐熱性が下がるおそれがあるので、添加する場合は、重合性液晶化合物全量に対して30質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0330】
前記重合性液晶組成物には、重合性基を有するが重合性液晶化合物ではない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができる。添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0331】
前記重合性液晶組成物には、光学活性を有する化合物、すなわちキラル化合物を添加してもよい。前記キラル化合物は、それ自体が液晶相を示す必要は無く、また、重合性基を有していても、有していなくても良い。また、キラル化合物の螺旋の向きは、重合体の使用用途によって適宜選択することができる。
【0332】
具体的には、例えば、キラル基としてコレステリル基を有するペラルゴン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、キラル基として2−メチルブチル基を有するビーディーエイチ社製の「CB−15」、「C−15」、メルク社製の「S−1082」、チッソ社製の「CM−19」、「CM−20」、「CM」、キラル基として1−メチルヘプチル基を有するメルク社製の「S−811」、チッソ社製の「CM−21」、「CM−22」などを挙げることができる。
【0333】
キラル化合物を添加する場合は、前記重合性液晶組成物の重合体の用途によるが、得られる重合体の厚み(d)を重合体中での螺旋ピッチ(P)で除した値(d/P)が0.1〜100の範囲となる量を添加することが好ましく、0.1〜20の範囲となる量がさらに好ましい。
【0334】
前記重合性液晶組成物には、保存安定性を向上させるために安定剤を添加することもできる。安定剤として例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類等が挙げられる。添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0335】
前記ポリマーおよび前記重合性液晶組成物より得られる光学異方体を、例えば、位相差フィルム、偏光フィルム等の光学部材の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、前記重合性液晶組成物にはその目的に応じて、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物、などを添加してもよい。
【実施例】
【0336】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。以下、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0337】
<合成例1>
特開2013-33248(特許文献1)の実施例1および実施例2に記載の方法と同様にして下記式(M2-1)で表される化合物(単量体)を合成した。
【0338】
【化136】
【0339】
2.0gの単量体(M2-1)、16.8mgのAIBNおよび20.2mLのテトラヒドロフラン(THF)をフラスコ内に混合し、窒素雰囲気下、60℃で8時間撹拌した後に使用した単量体量の5倍量(単量体1gに対し5mL)のヘキサン(本合成例では10mL)を加えて反応混合物を析出させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。反応混合物を、使用した単量体量の3倍量(単量体1gに対し3mL)のTHF(本合成例では6mL)に再溶解し、使用した単量体量の5倍量(単量体1gに対し5mL)のヘキサン(本合成例では10mL)を加えて反応混合物を析出させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。THFへの再溶解、ヘキサンでの析出、デカンテーション、の順に行う操作を更に3回行った後、得られた反応混合物を遮光下20℃、0.13kPaにて、24時間減圧乾燥して1.71gの下記式(2-1)で表されるポリマーを得た。
【0340】
【化137】
【0341】
得られたポリマーの分子量を、後述する条件のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により求めたところ、ポリスチレン標準で重量平均分子量(Mw)50,352、分散比(Mw/Mn)2.15、モノマー残量は0.26%であった。
【0342】
<GPC測定条件>
本明細書に記載した合成例におけるGPCの測定条件は以下の通りである。
カラム:昭和電工株式会社製Shodex KF-803L、KF-804L、KF-805、KF-806を直列に接続したカラム
溶離液:THF
サンプル溶液濃度:0.1(w/v)%(溶媒THF)
サンプル注入量:200μL
カラム温度:40℃
カラム流量:1.0mL/min
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0343】
<合成例2>
2.0gの単量体(M2-1)、16.8mgのAIBNおよび15.1mLのTHFを用いた以外は、合成例1と同様にして1.65gの上記式(2-1)で表されるポリマーを得た。得られたポリマーの分子量をGPCで測定したところ、ポリスチレン標準で重量平均分子量(Mw)85,390、分散比(Mw/Mn)2.34、モノマー残量は0.22%であった。
【0344】
<合成例3>
合成例1と同様の方法により、下記式(M2-11)で表される化合物(単量体)を合成した。
【0345】
【化138】
【0346】
4.0gの単量体(M2-11)、36mgのAIBNおよび20mLのTHFを用いて55℃で4時間攪拌した以外は、合成例1と同様にして2.18gの下記式(2-11)で表されるポリマーを合成した。
【0347】
【化139】
【0348】
得られたポリマーの分子量をGPCで測定したところ、ポリスチレン標準で重量平均分子量(Mw)175,573、分散比(Mw/Mn)2.31、モノマー残量は0.05%であった。
【0349】
<重合性液晶組成物の調製>
式(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)で表される化合物を、質量比がそれぞれ22:18:33:22:5になるように混合して重合性液晶組成物を調製した。更に、前記重合性液晶組成物に質量平均分子量47000の添加剤(vi)を、前記重合性液晶組成物100質量部に対して0.5質量部の割合で混合した。次いで孔径0.1μmのフィルターで組成物を濾過した。得られた重合性液晶組成物96質量部に、チバスペシャリティケミカルズ(株)製の光重合開始剤「イルガキュア907」4質量部、キシレン100質量部を混合し、重合性液晶組成物溶液(B−1)とした。該重合性液晶組成物溶液(B−1)からキシレンを蒸発させた後の液晶組成物は、25℃において液晶相を示した。よって、以下の実施例では該液晶組成物を25℃において用いた。
【0350】
【化140】
【0351】
<参考試験>
[各種溶媒のPMMA系基板に対する浸蝕性の評価]
厚さ1mmのPMMA系基板に対して、表1に示す参考試験1〜5の溶媒及び比較試験1〜3の溶媒をバーコータ12番で塗布して乾燥させた。その後、各溶媒のPMMA系基板に対する浸蝕度を評価するために、濁度計NDH2000(日本電色工業株式会社製)を用いて、PMMA系基板のヘイズ値を測定した。ヘイズ値が低いほど光散乱が少なく、平滑で透明性が高いことを示す。よって、低いヘイズ値に対応する溶媒はPMMA系基板を浸蝕し難い溶媒であることを示す。表1〜2中、混合溶媒の比率は質量比を表す。
【0352】
[ハンセンの溶解度パラメータ]
表1に、各溶媒のハンセン溶解度パラメータ(HSP)、各溶媒のHSPとPMMA系基板のHSPの距離、及び各溶媒が塗布されたPMMA系基板のヘイズ値を併記する。
PMMA系基板と各溶媒とのHSP距離は、使用したPMMA系基板のHSPをdD=17.0、dP=8.3、dH=5.0として、計算した結果である。
【0353】
表1の結果から、HSPの指標においては、dDが15.0〜17.0、dPが6.0〜10.0、dHが11.0〜16.0の範囲にある溶媒は、PMMA系基板に対する浸蝕性が低いことを示している。
一方、PMMA系基板のHSPとの距離が5.0(溶解球の半径)以下のHSPを有する溶媒は、PMMA系基板を容易に溶解し易いといえる。
【0354】
参考試験1〜5の溶媒は、前記距離が5.0を大きく超えるため、PMMA系基板を溶解し難い溶媒であると言える。一方、シクロペンタノンなどの比較試験1〜3の溶媒は、前記距離が5.0以下であるため、容易にPMMA系基板を侵食し易い溶媒であると言える。
【0355】
参考試験1で使用した溶媒(2-メトキシエタノール)のHSPは、PMMA系基板のHSPとの距離が10.2の位置にある。これは、前記距離が5.0よりも大きく、2-メトキシエタノールはPMMA系基板を溶解し難いことを示している。実際に、バーコータで上記溶媒を塗布したPMMA系基板を乾燥させて、その塗布した面のヘイズ値を測定したところ、1.5であった。このヘイズ値は十分に小さくPMMA系基板を浸食する程度が極めて小さいことが確認できた。
【0356】
参考試験2〜5で使用した溶媒のHSPは、参考試験1と同様に、使用したPMMA系基板のHSPとの距離がそれぞれ9.8、10.8、11.1、11.9の位置にある。これは、前記距離が5.0から大きく乖離しており、各溶媒がPMMA系基板を浸食し難いことを示している。実際に、参考試験1と同様にバーコータで各溶媒を塗布して乾燥したPMMA系基板のヘイズ値を測定したところ、それぞれ1.7、1.5、1.5、1.5であった。これらのヘイズ値は十分に小さく、PMMA系基板を浸食する程度が極めて少ないことが確認できた。
【0357】
参考試験5で用いたイソプロピルアルコールは、PMMA系基板を浸食しないことが確認された。しかし、後述するように、光配向性高分子材料(ポリマー)を溶解することができなかった。
【0358】
比較試験1〜3では、シクロペンタノン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン/2−n−ブトキシエタノール混合溶媒を用いた。これらの各溶媒のHSPは、PMMA系基板のHSPとの距離が4.0〜5.0の範囲にある。これは、比較試験1〜3の各溶媒がPMMA系基板表面を著しく浸食することを示す。実際に、PMMA系基板表面に比較試験1〜3の各溶媒をバーコータで塗布して乾燥した後に、PMMA系基板表面のヘイズ値を測定したところ、9.6、8.0、8.8と大きな値を示した。これらの値から、PMMA系基板表面が、各溶媒によって浸食され、平滑性が失われ、光散乱を起こしていることが確認できた。
【0359】
【表1】
【0360】
<実施例1〜4>
[ポリマー溶液(光配向剤高分子溶液)の調製]
合成例1の式(2-1)で表されるポリマー(光配向剤高分子)2質量部と、参考試験1〜5の溶媒から選択した1つの溶媒98質量部との混合物を室温で10分間攪拌して、各溶媒に対する前記ポリマーの溶解性を評価した。この評価結果を表2に併記する。
【0361】
前記ポリマーが前記各溶媒に均一に溶解した各ポリマー溶液を、シリンジフィルター(membrane solution社製、MS PTFE syringe filter(0.45μm))を用いて濾過し、PMMA系基板表面に光配向膜を形成するための実施例1〜4のポリマー溶液(光配向膜溶液)を得た。
【0362】
[ポリマー溶液(光配向剤高分子溶液)のPMMA系基板への塗布]
実施例毎に用意したPMMA系基板の表面をコロナ処理した後、ワイヤーバーを用いて実施例1〜4の各ポリマー溶液を、コロナ処理したPMMA系基板表面にそれぞれ塗布し、70℃で2分間乾燥することで、PMMA系基板上に乾燥した被膜(塗膜)を各基板上に形成した。形成した塗膜を目視で観察したところ、平滑な膜が形成されていることが確認された。
【0363】
[光学フィルムの作製]
超高圧水銀ランプ、波長カットフィルター、バンドパスフィルター及び偏光フィルターを備えた偏光照射装置を用いて、紫外光(波長313nm)の直線偏光(照度:10mW/cm)を、上記で形成した実施例1〜4の各被膜に対して、鉛直方向から3秒照射(照射光量30mJ/cm)することによって、前記被膜からなる光配向膜がPMMA系基板上に形成された積層体としての光学フィルムを得た。各光配向膜の膜厚は、約0.10μmであった。
【0364】
続いて、上記の実施例1〜4の各光配向膜上に、ワイヤーバーを用いて重合性液晶組成物溶液(B−1)をそれぞれ塗布し、70℃で乾燥後、窒素雰囲気下で紫外線を640mJ/cm照射し、厚み約1.0μmの位相差膜を形成した。この結果、光配向膜と位相差膜がPMMA系基板上に積層された実施例1〜4の光学フィルム(光学部材)を得た。
【0365】
<比較例1>
表1の比較試験1で用いたイソプロピルアルコールに対して前記ポリマーは溶解しなかったため、当該溶媒を使用して積層体としての光学フィルムを作製することはできなかった(比較例1)。
【0366】
<比較例2〜4>
実施例1〜4と同様の手順で、表1の比較試験2〜4で用いた各溶媒に対して前記ポリマーを溶解し、これらのポリマー溶液を用いて、PMMA系基板上に光配向膜と位相差膜が積層された、比較例2〜4の光学フィルムを形成した。
【0367】
[光学フィルムの評価]
実施例1〜4及び比較例2〜4で得られた光学フィルムの配向性を以下に示す方法により測定し、評価した。この結果を表2に示した。
【0368】
[配向性の評価方法]
前記光学フィルムの配向性を評価するために、下記のコントラストCRを次の方法で測定した。
白色光源、分光器、偏光子(入射側偏光板)、検光子(出射側偏光板)、検出器を備えた光学測定装置(RETS−100、大塚電子株式会社製)の、偏光子−検光子間に、測定対象である前記光学フィルムを配置した。ここで、偏光子と検光子との回転角が0度(偏光子と検光子の偏光方向が平行位置[パラレルニコル])である状態において、光学フィルムを回転させながら、検出器にて透過光の光量を検出し、検出した光量が最も大きくなる、光学フィルムの回転位置(偏光子の偏光方向と重合性液晶の分子長軸方向が平行)における、透過光の光量(オン時光量)をYonとした。また、偏光子と光学フィルムの位置を固定したまま、偏光子に対する検光子の回転角を90度(偏光子と検光子の偏光方向が直交位置[クロスニコル])としたときにおける、透過光の光量(オフ時光量)をYoffとした。コントラストCRは、次式(式1)により求めた。
CR=Yon/Yoff ・・・・・・・・・ (式1)
(式1)のコントラストCRの数値が大きいほど、オフ時光量Yoffが小さいこと、すなわち、重合性液晶の配向の度合いが高いため(配向性が良好なため)、クロスニコル時の透過光の光量が小さいことを示す。
したがって、コントラストCRの数値が大きいほど、位相差膜及び光配向膜を備えた光学フィルムの性能が優れることを示す。
【0369】
<実施例5>
合成例2の式(2-1)で表されるポリマーを、2−メトキシエタノール/2−エトキシエタノール(50:50)の混合溶媒に溶解して、実施例1〜4と同様の方法で、ポリマー溶液(光配向剤高分子溶液)を調製し、実施例5の光学フィルムを作製した。得られた光学フィルムを、実施例1〜4と同様の方法で評価した。評価結果を表2に併記する。
【0370】
<実施例6>
合成例3の式(2-11)で表されるポリマーは、偏光照射エネルギーにより一定方向に光二量化した分子が生成すると、光配向膜として優れた液晶配向性を示す。この理由として、二量体の構造上の対称性が高いことが考えられる。しかし、合成例3のポリマーは、合成例1および2のポリマーを溶解するときに用いた、2−メトキシエタノールや2−エトキシエタノールなどのグリコールエーテル系溶媒には溶解しない。この場合、前記ポリマーにおける側鎖の桂皮酸エステル末端のカルボキシル基に対し、0.5〜2倍モル当量のアミンを溶解助剤として添加することで、グリコールエーテル系溶媒に可溶化することができる。この理由として、前記桂皮酸エステル末端のカルボキシル基がアミンと反応してカルボン酸塩を生成することで、親水性極性溶媒に溶解し易くなることが考えられる。
【0371】
前記桂皮酸エステル末端のカルボキシル基と塩を生成するアミンの例としては、プロピルアミン、ブチルアミンなどの1級アミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミンなどの3級アミンなどが挙げられる。しかしこれらの例に限定されず、溶解助剤として機能し、液晶配向性を著しく阻害しないものであれば、制限なく使用することができる。前記アミンとしては、常温で液体である、1級アミンまたは3級アミンが特に好ましい。
【0372】
合成例3の式(2-11)で表されるポリマー(光配向剤高分子)2質量部と、2-メトキシエタノール97.7質量部と、n-プロピルアミン0.3重量部の混合物を室温で10分間攪拌して、極めて清澄なポリマー溶液(光配向剤高分子溶液)を調製し、実施例1〜4と同様の方法で、実施例6の光学フィルムを得た。得られた光学フィルムは、実施例1〜4と同様の方法で評価した。評価結果を表2に併記する。
【0373】
【表2】
【0374】
実施例1〜6の位相差膜を有する光学フィルム(位相差フィルム)は、極めて高い配向性と高い透明性及び優れたコントラスト比を有することが確認された。
【0375】
実施例1〜6及び比較例1〜4で使用したポリマーのHSP、ポリマーと溶媒とのHSP距離、PMMA系基板とポリマーとのHSP距離をそれぞれ表3に示す。
【0376】
【表3】
【0377】
以上の結果から、PMMA系基板に塗布するポリマー溶液を構成する、質量比50質量%以上又は50質量%超の溶媒のハンセン溶解度パラメーター(HSP)が、dD=15.0〜17.0、dP=6.0〜10.0、及びdH=11.0〜16.0の3つの範囲を全て満たし、かつ、PMMA系基板のHSPとの距離が5.0よりも大きいことが、PMMA系基板にダメージを与えることなく前記ポリマーを基板表面に塗布し、極めて平滑で光散乱の無い光配向膜及び優れたコントラスト比を示す位相差フィルム等の光学部材を作成するために、重要であることが分かった。
さらに、上記溶媒に溶解し得るポリマーとして、前述の一般式(I)、一般式(PI)及び一般式(QP)で表されるポリマーのうち、当該ポリマー側鎖の末端がカルボキシル基等の水素結合を形成可能な極性基を有するポリマーが特に好適であることが分かった。また、溶解助剤としてアミンを使用し得ることが分かった。
【0378】
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0379】
本発明に係るポリマー溶液は、液晶ディスプレイの分野に広く適用可能である。