(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体素子を装着するための実装面を有する基材と、硬化性樹脂の硬化物からなり、前記実装面を囲む枠状部を含むパッケージ本体とを備え、前記実装面と前記パッケージ本体とによって凹部が形成された半導体素子実装用パッケージを、上金型と下金型とを備える金型を用いて製造する方法であって、
前記凹部に対応する形状の凸部を有する上金型に、厚さが全体に略一定の離型フィルムを配置し、下金型に前記基材を配置し、前記上金型と前記下金型とを閉じて、前記凸部と前記基材の前記実装面とを、前記離型フィルムを介して密着させる工程と、
前記上金型と前記下金型との間に形成された空間内に硬化性樹脂を満たし、前記硬化性樹脂を硬化させる工程と、
前記硬化性樹脂の硬化物を前記基材とともに前記金型から離型する工程と、を有し、
前記離型フィルムが、前記硬化性樹脂の硬化時に硬化性樹脂と接する第一の層と、第二の層とを備え、
前記第一の層の厚さが3〜25μmであり、かつ180℃における引張貯蔵弾性率が10〜40MPaであり、
前記第二の層の180℃における引張貯蔵弾性率(MPa)と厚さ(μm)との積が2,000〜13,000であることを特徴とする半導体素子実装用パッケージの製造方法。
前記第二の層を構成する樹脂が、無延伸ポリアミド、二軸延伸ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートおよび易成形ポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の離型フィルム。
前記第三の層を構成する樹脂が、フッ素樹脂、アクリルゴム、熱硬化性シリコーン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、エチレン/ビニルアルコール共重合体および融点200℃以上のポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の離型フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、以下の用語は、それぞれ、次の意味で使用される。
樹脂の「単位」は、当該樹脂を構成する構成単位(モノマー単位)を示す。
「フッ素樹脂」とは、構造中にフッ素原子を含む樹脂を示す。
離型フィルムの厚さ、多層構造の離型フィルムを構成する層(第一の層、第二の層等)の厚さ、180℃における引張貯蔵弾性率はそれぞれ、実施例に記載の方法により測定される。
算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定される算術平均粗さである。粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
【0012】
〔半導体素子実装用パッケージの製造方法〕
本発明の半導体素子実装用パッケージの製造方法は、半導体素子を装着するための実装面を有する基材と、硬化性樹脂から形成され、前記実装面を囲む枠状部を含むパッケージ本体とを備え、前記実装面と前記パッケージ本体とによって凹部が形成された半導体素子実装用パッケージを、上金型と下金型とを備える金型を用いて製造する方法であって、
前記凹部に対応する形状の凸部を有する上金型に、厚さが全体に略一定の離型フィルムを配置し、下金型に前記基材を配置し、前記上金型と前記下金型とを閉じて、前記凸部と前記基材の前記実装面とを、前記離型フィルムを介して密着させる工程と、
前記上金型と前記下金型との間に形成された空間内に硬化性樹脂を満たし、前記硬化性樹脂を硬化させる工程と、
前記硬化性樹脂の硬化物を前記基材とともに前記金型から離型する工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
(半導体素子実装用パッケージ)
本発明の半導体素子実装用パッケージの製造方法により製造する半導体素子実装用パッケージは、前記基材と前記パッケージ本体とを備えるものであれば特に限定されず、公知の半導体素子実装用パッケージの中から適宜選択し得る。
図1に、本発明の半導体素子実装用パッケージの製造方法により製造する半導体素子実装用パッケージの一例の概略断面図を示す。
図2に、
図1に示す半導体素子実装用パッケージの斜視図を示す。
半導体素子実装用パッケージ110は、基材10と、硬化性樹脂から形成されたパッケージ本体12とを備える。基材10は、プリント回路基板であり、半導体素子が実装される実装面10aを有する。基材10は、実装面10aにインナーリード(図示なし)を有し、実装面10a側とは反対側の表面にアウターリード(図示なし)を有し、インナーリードとアウターリードとは電気的に接続されている。パッケージ本体12は、実装面10aを囲む枠状部である。
半導体素子実装パッケージ110においては、基材10およびパッケージ本体12によって、半導体素子を搭載するための凹部14が形成されている。半導体素子実装パッケージ110の凹部14の底面(実装面10a)に半導体素子を配置し、半導体素子とインナーリードとを電気的に接続し、凹部14の開口を蓋体で覆うことで、中空部を有するパッケージの前記中空部に半導体素子が搭載された半導体装置が得られる。
【0014】
図3に、本発明の半導体素子実装用パッケージの製造方法により製造される半導体素子実装用パッケージの他の例の概略断面図を示す。
半導体素子実装用パッケージ120は、基材16と、硬化性樹脂から形成されたパッケージ本体18とを備える。基材16は、リードフレームであり、インナーリード16aと、アウターリード16bと、ダイパッド16cとを有し、インナーリード16aとアウターリード16bとは電気的に接続されている。
パッケージ本体18は、基材16の実装面(インナーリード16aの上面およびダイパッド16cの上面)を囲む枠状部18aと、底部18bとを有する。
半導体素子実装用パッケージ120においては、基材16のインナーリード16aおよびダイパッド16c、ならびにパッケージ本体18の底部18bおよび枠状部18aによって、半導体素子を搭載するための凹部20が形成されている。
半導体素子実装用パッケージ120の凹部20の底面(ダイパッド16cの上面)に半導体素子を配置し、半導体素子とインナーリード16aとを電気的に接続し、凹部20の開口を蓋体で覆うことで、中空部を有するパッケージの前記中空部に半導体素子が搭載された半導体装置が得られる。
半導体素子実装用パッケージに実装される半導体素子としては、例えば各種センサ等が挙げられる。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の半導体素子実装用パッケージの製造方法の一例実施形態として、
図1に示す半導体実装用パッケージ110を、トランスファ成形法により製造する場合について詳細に説明する。本発明の実施形態の半導体素子実装用パッケージの製造方法は、下記の工程(α1)〜(α6)を有する。
(α1)キャビティを有し、キャビティ面に複数の凸部を有する上金型と、基材を設置する基材設置部を有する下金型とを備える金型の前記上金型に、厚さが全体に略一定の離型フィルムを、前記上金型のキャビティを覆うように配置する工程。
(α2)前記離型フィルムを前記上金型のキャビティ面の側に真空吸引する工程。
(α3)前記下金型の基材設置部に、複数の実装面を有する基材を、前記複数の実装面とは反対側を下金型側に向けて配置し、上金型と下金型とを型締めして、前記基材の複数の実装面それぞれに前記上金型の複数の凸部を、前記離型フィルムを介して密着させる工程。
(α4)前記上金型と前記下金型との間の空間内に硬化性樹脂を充填し、硬化させることにより、前記基材と前記硬化性樹脂の硬化物とを備える構造体を得る工程。
(α5)前記金型から前記構造体を取り出す工程。
(α6)前記構造体の基材および硬化物を、前記複数の実装面が分離するように切断することにより半導体素子実装用パッケージ110を得る工程。
【0016】
金型:
第1実施形態における金型としては、例えば、
図4に示すような上金型50と下金型52とを有する金型が挙げられる。上金型50には、キャビティ54と、キャビティ54に硬化性樹脂40を導く凹状の樹脂導入部60とが形成されている。キャビティ54は、工程(α4)で基材上に形成する硬化物の形状に対応する形状であり、上金型50のキャビティ面には、半導体素子実装用パッケージ110の凹部14が反転した形状の凸部56が複数形成されている。
下金型52には、基材を設置する基材設置部58と、硬化性樹脂を配置する樹脂配置部62とが形成されている。また、樹脂配置部62内には、硬化性樹脂を上金型50の樹脂導入部60へと押し出すプランジャ64が設置されている。
【0017】
工程(α1):
図5に示すように、上金型50のキャビティ54を覆うように離型フィルム30を配置する。離型フィルム30は、キャビティ54および樹脂導入部60の全体を覆うように配置することが好ましい。離型フィルム30は、巻出ロール(図示略)および巻取ロール(図示略)によって引っ張られるため、引き伸ばされた状態にて上金型50のキャビティ54を覆うように配置される。
【0018】
離型フィルム30としては、厚さが全体に略一定のフィルムが用いられる。厚さが全体に略一定であるとは、ISO4591:1992(JIS K7130:1999のA法、機械的走査法による厚さの測定方法)に準拠して測定される、フィルムの流れ方向および流れ方向に垂直な方向に1m測定した際の厚さの最大値と最小値の差が、それぞれの平均値に対し、15%以内であることを示す。離型フィルム30については後で詳しく説明する。
【0019】
工程(α2):
図6に示すように、上金型50のキャビティ54の外部に形成した溝(図示略)を通じて真空吸引し、上金型50と離型フィルム30との間の空間(上金型50のキャビティ面および樹脂導入部60の内壁と離型フィルム30との間の空間)を減圧し、離型フィルム30を引き伸ばして変形させて、上金型50のキャビティ面に真空吸着させる。
なお、高温環境下での離型フィルム30の機械的強度、厚さ、またキャビティ54の形状によって、離型フィルム30は、キャビティ面に密着するとは限らない。
図6に示すように、工程(α2)の真空吸着の段階では、離型フィルム30とキャビティ面との間には、空隙が少し残っていてもよい。
【0020】
工程(α3):
図7に示すように、複数の実装面(図示なし)を有する基材10Aを、基材設置部58に設置して上金型50と下金型52とを型締めし、基材10Aの複数の実装面それぞれに、上金型50の複数の凸部56を、離型フィルム30を介して密着させる。また、樹脂配置部62のプランジャ64上には、硬化性樹脂40をあらかじめ配置しておく。
上金型50と下金型52とを型締めする際のクランプ圧は、凸部56と基材10Aとの間に挟まれた離型フィルム30が過剰に潰れてキャビティ54側にはみ出さない程度の圧力とする。これにより、離型フィルム30のキャビティ54側にはみ出した部分が硬化性樹脂40の硬化物に食い込んだ状態となって硬化物の離型不良を引き起こすことを防止できる。また、基材10Aの実装面がへこんだり傷付くことも防止できる。
クランプ圧として具体的には、10〜80トンが好ましく、20〜70トンが特に好ましい。単位面積あたりの圧力としては、25〜200MPaが好ましく、50〜175MPaが特に好ましい。
本発明に用いる離型フィルム30は、厚さが全体に略一定であるため、前述の特許文献2で示されるような、凸部が一体的に形成された離型フィルムを用いる場合に比べて、クランプ圧を高くしても、上記のようなはみ出しが生じにくい。基材10Aにへこみや傷が生じない範囲でクランプ圧を高くすることで、樹脂バリの防止効果に優れる。
【0021】
硬化性樹脂40としては、半導体パッケージの製造に用いられている各種の硬化性の樹脂を用いてよい。エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば住友ベークライト社製のスミコンEME G770H type F ver. GR、ナガセケムテックス社製のT693/R4719−SP10等が挙げられる。シリコーン樹脂の市販品としては、信越化学工業社製のLPS−3412AJ、LPS−3412B等が挙げられる。
硬化性樹脂40には、カーボンブラック、熔融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が含まれてもよい。
【0022】
工程(α4):
図8に示すように、下金型52のプランジャ64を押し上げ、樹脂導入部60を通じてキャビティ54内に硬化性樹脂40を充填する。次いで、金型を加熱し、硬化性樹脂40を硬化させる。
工程(α4)においては、キャビティ54内に硬化性樹脂40が充填されることによって、樹脂圧力によって離型フィルム30がさらに上金型50のキャビティ面側に押し込まれ、引き延ばされて変形することによってキャビティ面に密着する。そのため、形成される硬化物の形状は、キャビティ54の形状に対応した形状となる。
【0023】
硬化性樹脂40を硬化させる際の金型の加熱温度、すなわち硬化性樹脂40の加熱温度は、100〜185℃が好ましく、140〜175℃が特に好ましい。加熱温度が前記範囲の下限値以上であれば、半導体素子実装用パッケージ110の生産性が向上する。加熱温度が前記範囲の上限値以下であれば、硬化性樹脂40の劣化が抑えられる。硬化性樹脂40の熱膨張率に起因してその硬化物の形状が変化することを抑制する点から、半導体素子実装用パッケージ110の保護が特に求められる場合には、前記範囲内においてできるだけ低い温度で加熱することが好ましい。
硬化性樹脂40の充填時の樹脂圧は、2〜30MPaが好ましく、3〜10MPaが特に好ましい。樹脂圧が前記範囲の下限値以上であれば、硬化性樹脂40の充填不足等の欠点が生じにくい。樹脂圧が前記範囲の上限値以下であれば、優れた品質の半導体素子実装用パッケージ110が得られやすい。硬化性樹脂40の樹脂圧は、プランジャ64によって調整できる。
【0024】
工程(α5):
図9に示すように、工程(α4)で形成された構造体110Aを金型から取り出す。
構造体110Aは、基材10Aと、キャビティ54内で硬化した硬化性樹脂40の硬化物12Aとを備える。構造体110Aを金型から取り出したとき、構造体110Aの硬化物12Aには、樹脂導入部60内で硬化した硬化性樹脂40の硬化物19が付着している。この硬化物19は、構造体110Aを金型から取り出した後、切除される。
工程(α4)での硬化性樹脂40の充填時、基材10Aの実装面には、離型フィルム30が密着しているため、硬化性樹脂40が接触しない。そのため、硬化物12Aは、基材10Aの複数の実装面それぞれを囲むように形成されており、基材10Aの複数の実装面はそれぞれ露出している。そのため、構造体110Aにおいては、基材10Aと、その複数の実装面それぞれを囲む硬化物12Aとによって複数の凹部14が形成されている。
【0025】
工程(α6):
工程(α5)で得られた構造体110Aの基材10Aおよび硬化物12Aを、構造体110Aの複数の凹部14が分離するように切断(個片化)する。これにより、少なくとも1つの実装面10aを有する基材10と、前記実装面10aを囲む枠状のパッケージ本体12とを備える半導体素子実装用パッケージ110を得る。
個片化は、公知の方法により行うことができ、例えばダイシング法が挙げられる。ダイシング法は、ダイシングブレードを回転させながら対象物を切断する方法である。ダイシングブレードとしては、典型的には、ダイヤモンド粉を円盤の外周に焼結した回転刃(ダイヤモンドカッター)が用いられる。ダイシング法による個片化は、例えば、切断対象物(構造体110A)を、治具を介して処理台上に固定し、切断対象物の切断領域と前記治具の間にダイシングブレードを挿入する空間がある状態で前記ダイシングブレードを走行させる方法により行うことができる。
工程(α6)においては、前記のように切断対象物を切断する工程(切断工程)の後、前記ダイシングブレードを覆うケースから離れた位置に配置されるノズルから前記切断対象物に向かって液体を供給しながら前記処理台を移動させる異物除去工程が含まれてもよい。
【0026】
以上、本発明の半導体素子実装用パッケージの製造方法について、第1実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、離型フィルム30から構造体110Aを剥離するタイミングは、金型から構造体110Aを取り出す時に限定されず、金型から離型フィルムとともに構造体110Aを取り出し、その後、構造体110Aから離型フィルムを剥離してもよい。
下金型52に設置する基材10が有する実装面は1つでもよい。この場合、工程(α6)は行わなくてもよい。
基材10が複数の実装面を有する場合、複数の実装面それぞれの間の距離は均一でもよく均一でなくてもよい。また、複数の実装面それぞれの形状は同じでもよく異なってもよい。
【0027】
工程(α6)の後(または工程(α6)の前かつ工程工程(α5)の後)に、パッケージ本体12(または硬化物12A)の表面に、任意の情報を表示するために、インクを塗布し、インク層を形成する工程を行ってもよい。
インク層によって表示される情報としては、特に限定されず、シリアルナンバー、製造メーカに関する情報、部品の種別等が挙げられる。インクとしては、特に限定されず、公知のインクの中から適宜選択できる。
インクの塗布方法は、特に限定されず、例えばインクジェット法、スクリーン印刷、ゴム版からの転写等の各種印刷法が適用できる。
【0028】
インク層の形成方法は、硬化速度が速くパッケージ上での滲みが少ない、また熱風を当てないのでパッケージの位置ずれが少ない等の点で、光硬化型のインクを使用し、該インクをインクジェット法によりパッケージ本体12の表面に付着させ、該インクを光の照射により硬化させる方法が好ましい。
光硬化型のインクは、典型的には、重合性化合物(モノマー、オリゴマー等)を含む材料が用いられる。インクは、必要に応じて、顔料、染料等の色材、液体媒体(溶媒または分散媒)、重合禁止剤、光重合開始剤、その他各種添加剤等を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、スリップ剤、重合促進剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、放射線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、増粘剤等が挙げられる。
光硬化型のインクを硬化する光としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、放射線等が挙げられる。
紫外線の光源としては、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧または高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード、紫外線レーザーダイオード、自然光等が挙げられる。
光の照射は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、空気中で行ってもよく、窒素雰囲気、二酸化炭素雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
【0029】
また、本発明の半導体素子実装用パッケージの製造方法により製造する半導体素子実装用パッケージは、半導体素子実装用パッケージ110に限定されない。例えば半導体素子実装用パッケージ120であってもよい。
半導体素子実装用パッケージ120は、基材10の代わりに基材16を使用し、凸部56の形状を凹部20にあわせて変更する以外は第1実施形態と同様にして製造できる。
【0030】
〔離型フィルム〕
本発明における離型フィルム30は、単層構造のフィルムでもよく、多層構造のフィルムでもよい。
離型フィルム30には、離型性、成形時の金型の温度(典型的には150〜180℃)に耐え得る耐熱性、硬化性樹脂の流動や加圧力に耐え得る機械的強度が求められる。
単層構造のフィルムの場合、離型フィルム30としては、離型性、耐熱性、機械的強度、高温における伸びの点から、フッ素樹脂および融点200℃以上のポリオレフィンからなる群から選ばれる1種以上の樹脂からなるフィルムが好ましく、フッ素樹脂からなるフィルムが特に好ましい。フッ素樹脂および融点200℃以上のポリオレフィンについてはそれぞれ後で詳しく説明する。
【0031】
多層構造のフィルムとしては、例えば、硬化性樹脂の硬化時に硬化性樹脂と接する第一の層と、その他の層と、を備えるフィルムが挙げられる。その他の層は、1層でもよく2層以上でもよい。
多層構造のフィルムとしては、離型不良および樹脂バリの防止効果に優れる点で、以下の離型フィルム(I)が好ましい。
離型フィルム(I):硬化性樹脂の硬化時に硬化性樹脂と接する第一の層と、第二の層層とを備え、
前記第一の層の厚さが3〜25μmであり、かつ180℃における引張貯蔵弾性率が10〜50MPaであり、
前記第二の層の180℃における引張貯蔵弾性率(MPa)と厚さ(μm)との積が2,000〜13,000であるフィルム。
【0032】
離型フィルム(I)を用いて前述の本発明の半導体素子実装用パッケージの製造方法を行う場合、離型フィルム(I)は、前記上金型の凸部と前記基材の実装面とを離型フィルムを介して密着させる工程において、前記第一の層側の表面が基材側(実装面側)を向くように上金型に配置されることが好ましい。
実装面と直接接する第一の層が、180℃における引張貯蔵弾性率が一定以下の柔らかい層であり一定以上の厚さを有することにより、凸部を実装面に押し当てた際に、基材のへこみや傷が生じない程度の軽いクランプ圧でも、第一の層が適度に潰れる。また、第二の層の180℃における引張貯蔵弾性率と厚さとの積が一定以下であることで、離型フィルム(I)が上金型に充分に追従する。そのため、基材の実装面の高さや凸部の高さにばらつきがあっても、第一の層によって前記ばらつきが吸収され、上金型の凸部が離型フィルム(I)を介して基材の実装面全体に充分に密着する。そのため、凸部と実装面との間に硬化性樹脂が入り込みにくく、実装面全体にわたって樹脂バリが生じにくい。
また、第二の層は、180℃における引張貯蔵弾性率と厚さとの積が、第一の層よりも大きく、第一の層に比べて硬い層であることが好ましい。第一の層の180℃における引張貯蔵弾性率が一定以上かつ厚さが一定以下であること、および第一の層よりも硬い第二の層が第一の層よりも上金型側に存在していることにより、上金型の凸部を基材の実装面に押し当てた際に、第一の層が過剰に潰れてキャビティ側にはみ出し離型不良を引き起こしたり、離型フィルム(I)が破れる問題が生じにくい。
【0033】
前記第一の層の180℃における引張貯蔵弾性率は、10〜40MPaが特に好ましい。前記第一の層の厚さは、5〜12μmがより好ましく、7〜12μmが特に好ましい。
前記第二の層の180℃における引張貯蔵弾性率(MPa)と厚さ(μm)との積は、3,000〜8,000が特に好ましい。
前記第二の層の180℃における引張貯蔵弾性率、厚さはそれぞれ、前記積が前記範囲内となる任意の値をとり得、特に限定されない。なかでも、180℃における引張貯蔵弾性率は、90〜600MPaが好ましく、110〜300MPaが特に好ましい。厚さは、6〜50μmが好ましく、12〜38μmが特に好ましい。
【0034】
以上のことから、離型フィルム(I)においては、前記第一の層の厚さが5〜12μmであり、前記第二の層の180℃における引張貯蔵弾性率(MPa)と厚さ(μm)の積が3,000〜8,000であることが好ましい。なかでも、前記第一の層の厚さが7〜12μmであり、前記第二の層の180℃における引張貯蔵弾性率(MPa)と厚さ(μm)の積が3,000〜8,000であることが特に好ましい。
【0035】
第一の層、第二の層それぞれの引張貯蔵弾性率は、第一の層、第二の層それぞれを構成する樹脂(以下、それぞれ、第一の層用樹脂、第二の層用樹脂ともいう。)の結晶化度を調整することによって調整できる。具体的には、樹脂の結晶化度が低いほど、該樹脂から構成される層の引張貯蔵弾性率は低くなる。樹脂の結晶化度は、公知の方法によって調整できる。例えば、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体の場合、テトラフルオロエチレンとエチレンに基づく単位の比率、テトラフルオロエチレンおよびエチレン以外の他のモノマーに基づく単位の種類や含有量を調整することによって調整できる。
【0036】
(第1実施形態の離型フィルム)
図10は、離型フィルム(I)の第1実施形態を示す概略断面図である。
本実施形態の離型フィルム1は、第一の層2と第二の層3とがこの順に積層したものである。離型フィルム1は、前記硬化性樹脂の硬化時に、第一の層2が硬化性樹脂と接し(すなわち表面2aが硬化性樹脂と接する。)、第二の層3が金型の上金型に接する(すなわち表面3aが金型の上金型と接する。)。
【0037】
<第一の層>
第一の層は、硬化した硬化性樹脂と離型フィルム1とをスムースに剥離するための離型層である。第一の層2の180℃における引張貯蔵弾性率および厚さの範囲、ならびにそれらの好ましい範囲はそれぞれ前記のとおりである。
第一の層2を構成する樹脂(以下、第一の層用樹脂ともいう。)としては、前述の引張貯蔵弾性率を満たすものであればよく、公知の熱可塑性樹脂、ゴム等の樹脂のなかから適宜選択し得る。
第一の層2は、前記半導体素子実装用パッケージの製造に際し、離型フィルム1の第一の層2と接した状態で硬化した硬化性樹脂(パッケージ本体)を離型フィルム1からスムースに剥離できる離型性を有することが好ましい。また、成形時の金型の温度(典型的には150〜180℃)に耐え得る耐熱性を有することが好ましい。かかる観点から、第一の層用樹脂としては、フッ素樹脂、ポリスチレンおよび融点200℃以上のポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第一の層用樹脂としては、離型性に優れる点から、フッ素樹脂が特に好ましい。第一の層2がフッ素樹脂からなる場合、硬化性樹脂の硬化物の金型からの離型性に優れる。また、離型フィルム1は、成形時の金型の温度(典型的には150〜180℃)に耐え得る耐熱性、硬化性樹脂の流動や加圧力に耐え得る強度等を充分に有し、高温における伸びにも優れる。
【0038】
フッ素樹脂としては、離型性および耐熱性に優れる点から、フルオロオレフィン系重合体が好ましい。フルオロオレフィン系重合体は、フルオロオレフィンに基づく単位を有する重合体である。フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。フルオロオレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フルオロオレフィン系重合体としては、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEともいう。)、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。フルオロオレフィン系重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
ポリスチレンとしては、離型性および耐熱性に優れる点から、シンジオタクチックポリスチレンが好ましい。ポリスチレンは延伸されていてもよく、また添加剤が含まれていても良い。ポリスチレンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0040】
融点200℃以上のポリオレフィンの融点は、200℃以上300℃以下が好ましい。
融点200℃以上のポリオレフィンとしては、離型性および金型追随性に優れる点から、ポリメチルペンテンが好ましい。ポリオレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
第一の層用樹脂としては、前記の中でも、フルオロオレフィン系重合体およびポリメチルペンテンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、フルオロオレフィン系重合体がより好ましい。中でも、高温での伸びが大きい点から、ETFEが特に好ましい。ETFEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
ETFEは、テトラフルオロエチレン(以下、TFEともいう。)に基づく単位と、エチレン(以下、Eともいう。)に基づく単位とを有する共重合体である。
ETFEとしては、TFEに基づく単位と、Eに基づく単位と、TFEおよびE以外の第3のモノマーに基づく単位とを有するものが好ましい。第3のモノマーに基づく単位の種類や含有量によってETFEの結晶化度、すなわち第1の熱可塑性樹脂フィルム層2の引張貯蔵弾性率を調整しやすい。また、第3のモノマー(特にフッ素原子を有するモノマー)に基づく単位を有することで、高温(特に180℃前後)における引張強伸度が向上する。
第3のモノマーとしては、フッ素原子を有するモノマーと、フッ素原子を有しないモノマーとが挙げられる。
【0043】
フッ素原子を有するモノマーとしては、下記のモノマー(a1)〜(a5)が挙げられる。
モノマー(a1):炭素数3以下のフルオロオレフィン類。
モノマー(a2):X(CF
2)
nCY=CH
2(ただし、X、Yは、それぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、nは2〜8の整数である。)で表されるペルフルオロアルキルエチレン。
モノマー(a3):フルオロビニルエーテル類。
モノマー(a4):官能基含有フルオロビニルエーテル類。
モノマー(a5):脂肪族環構造を有する含フッ素モノマー。
【0044】
モノマー(a1)としては、フルオロエチレン類(トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン等)、フルオロプロピレン類(ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPともいう。)、2−ヒドロペンタフルオロプロピレン等)等が挙げられる。
【0045】
モノマー(a2)としては、nが2〜6のモノマーが好ましく、nが2〜4のモノマーが特に好ましい。また、Xがフッ素原子、Yが水素原子であるモノマー、すなわち(ペルフルオロアルキル)エチレンが特に好ましい。
モノマー(a2)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CF
3CF
2CH=CH
2、
CF
3CF
2CF
2CF
2CH=CH
2((ペルフルオロブチル)エチレン。以下、PFBEともいう。)、
CF
3CF
2CF
2CF
2CF=CH
2、
CF
2HCF
2CF
2CF=CH
2、
CF
2HCF
2CF
2CF
2CF=CH
2等。
【0046】
モノマー(a3)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。なお、下記のうちジエンであるモノマーは環化重合し得るモノマーである。
CF
2=CFOCF
3、
CF
2=CFOCF
2CF
3、
CF
2=CF(CF
2)
2CF
3(ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)。以下、PPVEともいう。)、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
2CF
3、
CF
2=CFO(CF
2)
3O(CF
2)
2CF
3、
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
2(CF
2)
2CF
3、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
2CF
3、
CF
2=CFOCF
2CF=CF
2、
CF
2=CFO(CF
2)
2CF=CF
2等。
【0047】
モノマー(a4)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CF
2=CFO(CF
2)
3CO
2CH
3、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
3CO
2CH
3、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
2SO
2F等。
【0048】
モノマー(a5)の具体例としては、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等が挙げられる。
【0049】
フッ素原子を有しないモノマーとしては、下記のモノマー(b1)〜(b4)が挙げられる。
モノマー(b1):オレフィン類。
モノマー(b2):ビニルエステル類。
モノマー(b3):ビニルエーテル類。
モノマー(b4):不飽和酸無水物。
【0050】
モノマー(b1)の具体例としては、プロピレン、イソブテン等が挙げられる。
モノマー(b2)の具体例としては、酢酸ビニル等が挙げられる。
モノマー(b3)の具体例としては、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
モノマー(b4)の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ハイミック酸(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)等が挙げられる。
【0051】
第3のモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第3のモノマーとしては、結晶化度の調整すなわち引張貯蔵弾性率の調整がしやすい点、第3のモノマー(特にフッ素原子を有するモノマー)に基づく単位を有することで高温(特に180℃前後)における引張強伸度に優れる点から、モノマー(a2)、HFP、PPVE、酢酸ビニルが好ましく、HFP、PPVE、CF
3CF
2CH=CH
2、PFBEがより好ましく、PFBEが特に好ましい。すなわち、ETFEとしては、TFEに基づく単位と、Eに基づく単位と、PFBEに基づく単位とを有する共重合体が特に好ましい。
【0052】
ETFEにおいて、TFEに基づく単位と、Eに基づく単位とのモル比(TFE/E)は、80/20〜40/60が好ましく、70/30〜45/55がより好ましく、65/35〜50/50が特に好ましい。TFE/Eが前記範囲内であれば、ETFEの耐熱性および機械的物性に優れる。
【0053】
ETFE中の第3のモノマーに基づく単位の割合は、ETFEを構成する全単位の合計(100モル%)に対して0.01〜20モル%が好ましく、0.10〜15モル%がより好ましく、0.20〜10モル%が特に好ましい。第3のモノマーに基づく単位の割合が前記範囲内であれば、ETFEの耐熱性および機械的物性に優れる。
【0054】
第3のモノマーに基づく単位がPFBEに基づく単位を含む場合、PFBEに基づく単位の割合は、ETFEを構成する全単位の合計(100モル%)に対して0.5〜4.0モル%が好ましく、0.7〜3.6モル%がより好ましく、1.0〜3.6モル%が特に好ましい。PFBEに基づく単位の割合が前記範囲内であれば、離型フィルムの180℃における引張弾性率を前記範囲内に調整できる。また、高温(特に180℃前後)における引張強伸度が向上する。
【0055】
ETFEの溶融流量(MFR)は、2〜40g/10分が好ましく、5〜30g/10分がより好ましく、10〜20g/10分が特に好ましい。ETFEのMFRが前記範囲内であれば、ETFEの成形性が向上し、離型フィルムの機械特性に優れる。
ETFEのMFRは、ASTM D3159に準拠して、荷重49N、297℃にて測定される値である。
【0056】
第一の層2は、第一の層用樹脂のみからなるものでもよく、無機系添加剤、有機系添加剤等の添加物が配合されていてもよい。無機系添加剤としては、カーボンブラック、シリカ、ガラスファイバー、カーボンファイバー、酸化チタン等の無機フィラーが挙げられる。有機系添加剤としては、シリコーンオイル、金属石鹸等が挙げられる。
【0057】
<第二の層>
第二の層3の180℃における引張貯蔵弾性率(MPa)と厚さ(μm)との積の範囲、前記積、引張貯蔵弾性率および厚さの好ましい範囲はそれぞれ前記のとおりである。
第二の層3を構成する樹脂(以下、第二の層用樹脂ともいう。)としては、前述の引張貯蔵弾性率と厚さとの積が前記の範囲内となるものであればよく、公知の熱可塑性樹脂、ゴム等の樹脂の中から適宜選択し得る。
第二の層3は、前記半導体素子実装用パッケージの製造に際し、離型フィルム1を上金型からスムースに剥離できる程度の離型性を有することが好ましい。また、成形時の金型の温度(典型的には150〜180℃)に耐え得る耐熱性を有することが好ましい。かかる観点から、第二の層用樹脂としては、無延伸ポリアミド、二軸延伸ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTともいう。)、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう。)および易成形PETからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0058】
ポリアミドとしては、耐熱性、強度、ガスバリア性の点から、ナイロン6、ナイロンMXD6が好ましい。
易成形PETとは、エチレングリコールおよびテレフタル酸(あるいはジメチルテレフタレート)に加え、その他のモノマーを共重合して成形性を改良したものである。具体的には、以下の方法で測定されるガラス転移温度Tgが105℃以下のPETである。
Tgは、ISO6721−4:1994(JIS K7244−4:1999)に基づき測定される貯蔵弾性率E’および損失弾性率E”の比であるtanδ(E”/E’)が最大値を取る際の温度である。Tgは、周波数は10Hz、静的力は0.98N、動的変位は0.035%とし、温度を20℃から180℃まで、2℃/分で昇温させて測定する。
これらの第二の層用樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第二の層用樹脂としては、前記の中でも、PBTまたは易成形PETが特に好ましい。
【0059】
第二の層3は、第二の層用樹脂のみからなるものでもよく、無機系添加剤、有機系添加剤等の添加物が配合されていてもよい。無機系添加剤、有機系添加剤としてはそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
【0060】
離型フィルム1において、第一の層2と第二の層3とは、直接積層してもよく、図示しない接着層を介して積層してもよい。
【0061】
<離型フィルムの表面形状>
離型フィルム1の、硬化性樹脂の硬化時に硬化性樹脂と接する面、すなわち第一の層2側の表面2aは、平滑でもよく、離型性を高めるための凹凸が形成されていてもよい。また、離型フィルム1の、硬化性樹脂の硬化時に金型の上金型と接する面、すなわち第二の層3側の表面3aは、平滑でもよく、離型性を高めるための凹凸が形成されていてもよい。
平滑である場合の表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.01〜0.2μmが好ましく、0.05〜0.1μmが特に好ましい。凹凸が形成されている場合の表面のRaは、1.5〜2.1μmが好ましく、1.6〜1.9μmが特に好ましい。
【0062】
凹凸が形成されている場合の表面形状は、複数の凸部および/または凹部がランダムに分布した形状でもよく、複数の凸部および/または凹部が規則的に配列した形状でもよい。また、複数の凸部および/または凹部の形状や大きさは、同じでもよく異なってもよい。凸部としては、離型フィルムの表面に延在する長尺の凸条、点在する突起等が挙げられる。凹部としては、離型フィルムの表面に延在する長尺の溝、点在する穴等が挙げられる。
凸条または溝の形状としては、直線、曲線、折れ曲がり形状等が挙げられる。離型フィルム表面においては、複数の凸条または溝が平行に存在して縞状をなしていてもよい。凸条または溝の、長手方向に直交する方向の断面形状としては、三角形(V字形)等の多角形、半円形等が挙げられる。
突起または穴の形状としては、三角錐形、四角錐形、六角錐形等の多角錐形、円錐形、半球形、多面体形、その他各種不定形等が挙げられる。
【0063】
離型フィルム1においては、表面2aおよび表面3aの両方が平滑でもよく、表面2aおよび表面3aの両方に凹凸が形成されていてもよく、表面2aおよび表面3aのうちの一方が平滑で他方に凹凸が形成されていてもよい。表面2aおよび表面3aの両方に凹凸が形成されている場合、各表面のRaや表面形状は同じでも異なってもよい。
樹脂バリ防止の観点からは、第一の層2側の表面2aのRaが小さいほど好ましく、平滑であることが特に好ましい。
離型フィルム1の金型からの離型性に優れる点からは、第二の層3側の表面3a凹凸が形成されていることが好ましい。
【0064】
<離型フィルムの厚さ>
離型フィルム1の厚さは、15〜75μmが好ましく、17〜62μmがより好ましく、19〜50μmが特に好ましい。厚さが前記範囲の下限値以上であれば、離型フィルム1の取り扱いが容易であり、離型フィルム1を引っ張りながら上金型のキャビティを覆うように配置する際に、しわが発生しにくい。厚さが前記範囲の上限値以下であれば、離型フィルム1が容易に変形でき、上金型のキャビティの形状への追従性が向上するため、離型フィルム1がしっかりとキャビティ面に密着できる。そのため、高品質なパッケージ本体を安定して形成できる。
離型フィルム1の厚さは、上金型のキャビティが大きいほど、前記範囲内において薄いことが好ましい。また、多数のキャビティを有する複雑な金型であるほど、前記範囲内において薄いことが好ましい。
【0065】
<離型フィルム1の製造方法>
離型フィルム1の製造方法は特に限定されず、公知の多層フィルムの製造方法を利用できる。具体例としては、以下の(1)、(2)等が挙げられ、各層の材質、厚さ等を考慮して適宜選択し得る。
(1)第一の層用樹脂からなる樹脂フィルムと、第二の層用樹脂からなる樹脂フィルムとを積層する方法。
(2)第一の層用樹脂と第二の層用樹脂とを共押出成形する方法。
【0066】
離型フィルム1の製造方法としては、生産性に優れる点で、(1)の方法が好ましい。
(1)の方法において、各樹脂フィルムを積層する方法としては、公知の種々のラミネート方法が採用でき、例えば押出ラミネート法、ドライラミネート法、熱ラミネート法等が挙げられる。
ドライラミネート法では、接着剤を用いて各樹脂フィルムを積層する。接着剤としては、ドライラミネート用の接着剤として公知のものを使用できる。例えばポリ酢酸ビニル系接着剤;アクリル酸エステル(アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等)の単独重合体もしくは共重合体、またはアクリル酸エステルと他の単量体(メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等)との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤;シアノアクリレ−ト系接着剤;エチレンと他の単量体(酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等)との共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤;セルロ−ス系接着剤;ポリエステル系接着剤;ポリアミド系接着剤;ポリイミド系接着剤;尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤;フェノ−ル樹脂系接着剤;エポキシ系接着剤;ポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等)とイソシアネートおよび/またはイソシアヌレートと架橋させるポリウレタン系接着剤;反応型(メタ)アクリル系接着剤;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤;シリコーン系接着剤;アルカリ金属シリケ−ト、低融点ガラス等からなる無機系接着剤;その他等の接着剤を使用できる。
【0067】
(1)の方法で積層する樹脂フィルムは、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。樹脂フィルムには、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、プライマー塗工処理等の表面処理が施されてもよい。
樹脂フィルムの製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法を利用できる。
両面が平滑である熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、所定のリップ幅を有するTダイを具備する押出機で溶融成形する方法等が挙げられる。
片面または両面に凹凸が形成されている熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、熱加工で熱可塑性樹脂フィルムの表面に元型の凹凸を転写する方法が挙げられ、生産性の点から、下記の方法(i)、(ii)等が好ましい。方法(i)、(ii)では、ロール状の元型を用いることによって、連続した加工が可能となり、凹凸が形成された熱可塑性樹脂フィルムの生産性が著しく向上する。
(i)熱可塑性樹脂フィルムを元型ロールと圧胴ロールとの間に通し、熱可塑性樹脂フィルムの表面に元型ロールの表面に形成された凹凸を連続的に転写する方法。
(ii)押出機のダイスから押し出された熱可塑性樹脂を元型ロールと圧胴ロールとの間に通し、該熱可塑性樹脂をフィルム状に成形すると同時に、該フィルム状の熱可塑性樹脂の表面に元型ロールの表面に形成された凹凸を連続的に転写する方法。
方法(i)、(ii)において、圧胴ロールとして表面に凹凸が形成されたものを用いると、両面に凹凸が形成されている熱可塑性樹脂フィルムが得られる。
【0068】
(第2実施形態の離型フィルム)
図11は、離型フィルム(I)の第2実施形態を示す概略断面図である。
本実施形態の離型フィルム5は、第一の層6と第二の層7と第三の層8とがこの順に積層したものである。離型フィルム5は、前記硬化性樹脂の硬化時に、第一の層6が硬化性樹脂と接し、第三の層8が金型の上金型に接する。
第一の層6は、第1実施形態の第一の層2と同様である。
第二の層7は、第1実施形態の第二の層3と同様である。
【0069】
<第三の層>
第三の層8は、離型フィルム5のカールを防ぐための層である。
第1実施形態に示すような2層構成(第二の層/第一の層)で、第一の層と第二の層との材質等が異なる場合、第二の層の厚さや引張貯蔵弾性率等によっては、離型フィルムがカールする場合がある。離型フィルムがカールすると、離型フィルムを金型に吸着させる際に、カールによって離型フィルムを金型にうまく吸着できなくなる場合がある。特に、予め金型の大きさにあわせてカットした短尺の離型フィルムを金型に供給する場合、カールの問題は顕著である。カールしないような高引張貯蔵弾性率あるいは厚い第二の層を使用すると、金型追従性が悪化し、金型追従性が求められる離型フィルムとしては使用に適さなくなる。
第二の層の、第一の層側とは反対側に第三の層を設けることで、カールしないような高引張貯蔵弾性率あるいは厚い第二の層を使用しなくても、カールを抑制できる。
【0070】
第三の層8は、その25℃における引張貯蔵弾性率が、第一の層6と同じでも異なってもよいが、その比(第三の層8の25℃における引張貯蔵弾性率/第一の層6の25℃における引張貯蔵弾性率)が0.5〜2であることが好ましい。
25℃の引張貯蔵弾性率の比が前記範囲内であるとカールの抑制に優れる。
第三の層8の厚さは、第一の層6の厚さと同じでも異なってもよいが、その差は5μm以内であることが好ましい。第三の層8の厚さが前記範囲内であるとカールの抑制に優れる。第三の層8の厚さは例えば、3〜25μmが好ましく、5〜12μmがより好ましく、7〜12μmが特に好ましい。
【0071】
第三の層8を構成する樹脂(以下、第三の層用樹脂ともいう。)としては、離型フィルム1の金型からの離型性、成形時の金型の温度(典型的には150〜180℃)に耐え得る耐熱性等の点から、フッ素樹脂、アクリルゴム、熱硬化性シリコーン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、エチレン/ビニルアルコール共重合体および融点200℃以上のポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
フッ素樹脂、ポリスチレン、融点200℃以上のポリオレフィンとしてはそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。
ポリエステルとしては、耐熱性、強度の点から、PET、易成形PET、PBT、ポリナフタレンテレフタレートが好ましい。
ポリアミドとしては、耐熱性、強度、ガスバリア性の点から、ナイロン6、ナイロンMXD6が好ましい。ポリアミドは延伸されたものでもされていないものでもよい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第三の層用樹脂としては、前記の中でも、フッ素樹脂および融点200℃以上のポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0072】
第三の層8は、第三の層用樹脂のみからなるものでもよく、無機系添加剤、有機系添加剤等の添加物が配合されていてもよい。無機系添加剤、有機系添加剤としてはそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
【0073】
離型フィルム5において、第一の層6と第二の層7とは、直接積層してもよく、図示しない接着層を介して積層してもよい。同様に、第二の層7と第三の層8とは、直接積層してもよく、図示しない接着層を介して積層してもよい。
【0074】
<離型フィルムの表面形状>
離型フィルム5の、硬化性樹脂の硬化時に硬化性樹脂と接する面、すなわち第一の層6側の表面6aは、平滑でもよく、離型性を高めるための凹凸が形成されていてもよい。また、離型フィルム5の、硬化性樹脂の硬化時に金型の上金型と接する面、すなわち第三の層8側の表面8aは、平滑でもよく、離型性を高めるための凹凸が形成されていてもよい。平滑である場合の表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.01〜0.2μmが好ましく、0.05〜0.1μmが特に好ましい。
凹凸が形成されている場合の表面のRaは、1.5〜2.1μmが好ましく、1.6〜1.9μmが特に好ましい。凹凸が形成されている場合の表面形状は、複数の凸部および/または凹部がランダムに分布した形状でもよく、複数の凸部および/または凹部が規則的に配列した形状でもよい。また、複数の凸部および/または凹部の形状や大きさは、同じでもよく異なってもよい。凸部、凹部、凸条、突起または穴の具体例としては前記と同様のものが挙げられる。
【0075】
離型フィルム5においては、表面6aおよび表面8aの両方が平滑でもよく、表面6aおよび表面8aの両方に凹凸が形成されていてもよく、表面6aおよび表面8aのうちの一方が平滑で他方に凹凸が形成されていてもよい。表面6aおよび表面8aの両方に凹凸が形成されている場合、各表面のRaや表面形状は同じでも異なってもよい。
離型フィルム5の金型からの離型性の観点からは、第三の層8側の表面8aに凹凸が形成されていることが好ましい。
【0076】
<離型フィルムの厚さ>
離型フィルム5の厚さは、18〜100μmが好ましく、30〜75μmが特に好ましい。厚さの前記範囲の下限値、上限値それぞれの好ましい理由は離型フィルム1の場合と同様である。
【0077】
<離型フィルム5の製造方法>
離型フィルム5の製造方法は特に限定されず、公知の多層フィルムの製造方法を利用できる。例えば2層構成を3層構成とする以外は離型フィルム1と同様にして製造できる。
【0078】
以上、離型フィルム(I)について、第1、第2の実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、第1実施形態の離型フィルム1は、第一の層2と第二の層3との間に、必要に応じて設けられる接着層以外の他の層をさらに有してもよい。同様に、第2実施形態の離型フィルム5は、第一の層6と第二の層7との間や、第二の層7と第三の層8との間に、必要に応じて設けられる接着層以外の他の層をさらに有してもよい。他の層としては、例えば、ガスバリア層等が挙げられる。ガスバリア層としては、例えば、金属層、金属蒸着層、金属酸化物蒸着層等が挙げられる。
本発明の効果の点では、硬化性樹脂と接する第一の層と、第二の層との間には、接着層以外の他の層を有さないことが好ましい。すなわち、第一の層と第二の層とが、直接積層するか、または接着層を介して積層することが好ましい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。後述する例1〜18のうち、例1〜16は実施例であり、例17〜18は比較例である。各例で使用した材料および評価方法を以下に示す。
【0080】
〔使用材料〕
ETFE(1):製造例1で製造した、テトラフロロエチレン/エチレン/PFBE=52.5/46.3/1.2(モル比)の共重合体(MFRは12g/10分)。
ETFE(2):製造例2で製造した、テトラフロロエチレン/エチレン/PFBE=56.3/40.2/3.5(モル比)の共重合体(MFRは12.5g/10分)。
【0081】
<製造例1:ETFE(1)の製造>
内容積が1.3Lの撹拌機付き重合槽を脱気して、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの881.9g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(商品名「AK225cb」旭硝子社製、以下、AK225cbという。)の335.5g、CH
2=CHCF
2CF
2CF
2CF
3(PFBE)の7.0gを仕込み、TFEの165.2g、エチレン(以下、Eという。)の9.8gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤溶液としてターシャリーブチルパーオキシピバレート(以下、PBPVともいう。)の1質量%のAK225cb溶液の7.7mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中圧力が一定になるようにTFE/E=54/46のモル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、モノマー混合ガスの仕込みに合わせて、TFEとEの合計モル数に対して1.4モル%に相当する量のPFBEを連続的に仕込んだ。重合開始から2.9時間後、モノマー混合ガスの100gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに重合槽の圧力を常圧までパージした。
その後、得られたスラリをガラスフィルタで吸引ろ過し、固形分を回収して150℃で15時間乾燥することにより、ETFE(1)の105gを得た。
【0082】
<製造例2:ETFE(2)の製造>
重合槽の内容積を1.2Lにし、重合を開始させる前に仕込む1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの量を881.9gから0gに、AK225cbの量を335.5gから291.6gに、PFBEの量を7.0gから16.0gに、TFEの量を165.2gから186.6gに、Eの量を9.8gから6.4gに、PBPVの1質量%のAK225cb溶液の量を5.8mLから5.3mLにそれぞれ変更し、重合中に連続的に仕込むモノマー混合ガスのTFE/Eのモル比を54/46から58/42に、PFBEの量を(TFEとEの合計モル数に対して)0.8モル%から3.6モル%に変更し、重合開始から3時間後、モノマー混合ガス90gを仕込んだ時点で重合槽内温を室温まで降温した以外は製造例1と同様にして、ETFE(2)の90gを得た。
【0083】
<熱可塑性樹脂フィルム>
ETFEフィルム(1−1):厚さ16μm。片面は凹凸があり、片面のRaが0.5、反対面のRaが0.1である。ETFEフィルム(1−1)は、以下の手順で製造した。
ETFE(1)を、フィルムの厚さが16μmとなるようにリップ開度を調整した押出機により、320℃で溶融押出をした。元型ロール、製膜速度、ニップ圧力を調整して、ETFEフィルムを製造した。
【0084】
ETFEフィルム(1−2):厚さ12μm。両面が平滑であり、両面のRaが0.1である。各条件を調整した以外はETFEフィルム(1−1)と同様にして製造した。
ETFEフィルム(1−3):厚さ25μm。両面が平滑であり、両面のRaが0.1である。各条件を調整した以外はETFEフィルム(1−1)と同様にして製造した。
ETFEフィルム(1−4):厚さ50μm。両面が平滑であり、両面のRaが0.1である。各条件を調整した以外はETFEフィルム(1−1)と同様にして製造した。
ETFEフィルム(1−5):厚さ3μm。両面が平滑であり、両面のRaが0.1である。各条件を調整したうえで、Tダイから出た溶融したETFE(1)が、元型ロール上でPETフィルムと接触し、PETフィルムとともに巻き取られるように製膜した以外はETFEフィルム(1−1)と同様にして製造した。
ETFEフィルム(2−1):厚さ12μm。両面が平滑であり、両面のRaが0.1である。ETFE(1)の代わりにETFE(2)を使用し、各条件を調整した以外は、ETFEフィルム(1−1)と同様にして製造した。
【0085】
PETフィルム(1):厚さ12μm。「テイジンテトロン NS」(帝人デュポンフィルム社製)の厚さ12μmのものを用いた。ガラス転移温度:118℃。両面が平滑であり、両面のRaが0.2である。
PETフィルム(2):厚さ16μm。「ダイアホイル H500」(三菱樹脂社製)の厚さ16μmのものを用いた。ガラス転移温度:118℃。両面が平滑であり、両面のRaが0.2である。
PETフィルム(3):厚さ25μm。「ダイアホイル H500」(三菱樹脂社製)の厚さ25μmのものを用いた。ガラス転移温度:118℃。両面が平滑であり、両面のRaが0.2である。
易成形PETフィルム:厚さ25μm。「テフレックスFT3PE」帝人デュポンフィルム社製を用いた。ガラス転移温度:86℃。両面が平滑であり、両面のRaが0.2である。
【0086】
無延伸ナイロンフィルム:厚さ20μm。「ダイアミロンC-Z」(三菱樹脂社製)を用いた。両面が平滑であり、両面のRaが0.1である。
二軸延伸ナイロンフィルム:厚さ12μm。「ハーデンN1100」(東洋紡社製)を用いた。両面が平滑であり、両面のRaが0.2である。
PTFEフィルム:厚さ50μm。「ニトフロン PTFE 900UL」(日東電工社製)を用いた。両面が平滑であり、両面のRaが0.2である。
ポリメチルペンテンフィルム:厚さ12μm。両面が平滑であり、両面のRaが0.1である。ポリメチルペンテンフィルムは、以下の手順で製造した。
ポリメチルペンテン樹脂「TPX MX004」(三井化学社製)を厚さ12μmとなるようにリップ開度を調整したTダイを設置した押出機により、280℃で溶融押出した。元型ロール、製膜速度、ニップ圧力を調整してポリメチルペンテンフィルムを得た。
【0087】
PBTフィルム(1):厚さ38μm。片面のRaが1.2、反対面のRaが0.1である。「ノバデュラン5020」(三菱エンジニアリングプラスチック社製)を厚さが38μmとなるようにリップ開度を調整したTダイを設置した押出機により、280℃で溶融押出をし、元型ロール、製膜速度、ニップ圧力を調整して製造した。
PBTフィルム(2):厚さ38μm。片面のRaが1.2、反対面のRaが0.1である。「ノバデュラン5505S」(三菱エンジニアリングプラスチック社製)を厚さが38μmとなるようにリップ開度を調整したTダイを設置した押出機により、280℃で溶融押出をし、元型ロール、製膜速度、ニップ圧力を調整して製造した。
【0088】
各フィルムにおいて、Raが小さい面をドライラミネートにおける貼り合わせ面とした。また、各フィルムのドライラミネートにおける貼り合わせ面の、ISO8296:1987(JIS K6768:1999)に基づく濡れ張力が40mN/m以下の場合、40mN/m以上となるように、コロナ処理を施した。
【0089】
<接着層>
各フィルムを貼り合わせるドライラミネート工程で使用する接着剤としては、以下のウレタン系接着剤Aを用いた。
[ウレタン系接着剤A]
主剤:クリスボンNT−258(DIC社製)。硬化剤:コロネート2096(日本ポリウレタン工業社製)。主剤と硬化剤とを、固形分での質量比(主剤:硬化剤)が10:1となるように混合し、希釈剤として酢酸エチルを用いた。
【0090】
〔評価方法〕
<厚さ>
接触式厚み計DG−525H(小野測器社製)にて、測定子AA−026(Φ10mm SR7)を使用して、原反を幅方向に距離が等しくなるように厚さを10点測定し、その平均値を厚さとした。
【0091】
<180℃引張貯蔵弾性率>
動的粘弾性測定装置 ソリッドL−1(東洋精機社製)を用い、ISO6721−4:1994(JIS K7244−4:1999)に基づき貯蔵弾性率E’を測定した。サンプル測定サイズは幅8mm×長さ20mm、周波数は10Hz、静的力は0.98N、動的変位は0.035%とし、温度を20℃から180℃まで、2℃/分の速度で上昇させて、180℃の値において測定したE’を、180℃引張貯蔵弾性率とした。
【0092】
<リードフレーム傷・へこみ>
各例で製造したパッケージのリードフレームについて、突起を接触させた部分にへこみや傷が見られるかどうかを目視で確認し、以下の基準で評価した。
○(良好):傷もへこみも見られない。
×(不良):傷やへこみが見られる。
【0093】
<樹脂バリ>
各例で製造したパッケージのリードフレームについて、突起を接触させた部分(接触部位)をデジタル光学顕微鏡で観察し、当該接触部位を写真撮影後、写真をメッシュ分割し、樹脂バリが見られるメッシュの数から樹脂バリ発生割合(%)を求めた。その結果を以下の基準で評価した。
○(良好):10%以下。
△(可):30%以下10%超。
×(不良):30%超。
【0094】
<離型フィルム食い込み>
各例で製造したパッケージのパッケージ本体について、離型フィルムが食い込んだ形跡が見られるかどうかを目視で確認し、以下の基準で評価した。
○(良好):離型フィルムの食い込みは見られなかった。
△(可):若干の離型フィルムの食い込みがあり、リードフレームとパッケージ本体との界面にへこみが見られた。
×(不良):離型フィルムが完全にパッケージ本体に食い込み、離型しなかった。
【0095】
〔例1〕
(離型フィルムの製造)
PBTフィルム(1)のRaが0.1である面に、グラビアコートでウレタン系接着剤Aを0.5g/m
2で塗工し、ETFEフィルム(1−2)のコロナ処理面をドライラミネートにて貼り合わせて離型フィルムを得た。ドライラミネート条件は、基材幅1,000mm、搬送速度20m/分、乾燥温度80〜100℃、ラミネートロール温度25℃、ロール圧力3.5MPaとした。
【0096】
(トランスファ成形法によるパッケージの製造)
Φ5mmの円形形状の凸部が500個ついた上金型と、リードフレームをセットした下金型とを180℃に加熱して準備し、離型フィルムを上金型にセットしたのち、真空ポンプにより上金型と離型フィルムとの間の空気を吸引排出して離型フィルムを上金型に吸着した。その後、下金型を移動させ、上金型の凸部とリードフレームの露出させたい部分とが離型フィルムを介して接触するまでクランプし、樹脂を流動させた。これにより、上金型と下金型との間の空間に樹脂が充填され硬化してパッケージ本体が形成され、リードフレームとパッケージ本体とからなるパッケージを得た。このパッケージは、Φ5mmの円形形状の凹部を500個有し、凹部の底面にリードフレームの一部が露出したものであった。なお、樹脂の射出圧力は、それぞれの離型フィルムにおいて、中空パッケージの形状が転写される最小の射出圧力とし、クランプ圧は、樹脂バリが軽減される最小の圧力とした。樹脂としては、スミコンEME G770H type F ver. GR(住友ベークライト社製)を使用した。
【0097】
〔例2〜6、8〕
表1のフィルム構成になるように材料を選定した以外は、例1と同様にして離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムを用いて例1と同様にしてパッケージを製造した。
【0098】
〔例7〕
PBTフィルム(1)のRaが0.1である面に、グラビアコートでウレタン系接着剤Aを0.5g/m
2で塗工し、ETFEフィルム(1−5)のコロナ処理面を、PETフィルム(1−1)と積層された状態で貼り合わせ、PETフィルム(1−1)を剥離して離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムを用いて例1と同様にしてパッケージを製造した。
【0099】
〔例9〕
PETフィルム(1)の片面に、グラビアコートでウレタン系接着剤Aを0.5g/m
2で塗工し、ETFEフィルム(1−2)のコロナ処理面を貼り合わせた。さらに反対面にもETFEフィルム(1−2)を同様にして貼り合わせ、離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムを用いて例1と同様にしてパッケージを製造した。
【0100】
〔例10〜14〕
表2のフィルム構成になるように材料を選定した以外は、例9と同様にして離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムを用いて例1と同様にしてパッケージを製造した。
【0101】
〔例15〕
離型フィルムとしてETFEフィルム(1−4)を用いた。
該離型フィルムを用いて例1と同様にしてパッケージを製造した。
【0102】
〔例16〕
離型フィルムとしてPTFEフィルム(1)を用いた。
該離型フィルムを用いて例1と同様にしてパッケージを製造した。
【0103】
〔例17〕
離型フィルムを用いずに、例1と同様にしてパッケージを製造した。
【0104】
〔例18〕
パッケージ下面部の高さと同等の厚さを有するフラット形状のPTFEフィルムをエッチング等により加工して、パッケージ下面部に対応する位置に凸部を残すようにすることにより離型フィルム(凸部形成離型フィルム)を得る。
上金型として凸部を有さないものを使用し、得られた離型フィルムの凸部をリードフレームに接触させた例1と同様にしてパッケージを製造する。
【0105】
例1〜16および18の離型フィルムのフィルム構成、第二の層の180℃引張貯蔵弾性率(MPa)と厚さ(μm)との積(180℃引張貯蔵弾性率×厚さ)、第一の層および第三の層の180℃引張貯蔵弾性率、評価結果(リードフレームの傷・へこみ、樹脂バリ、離型フィルム食い込み)を表1〜3に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
上記結果に示すとおり、例1〜16では、リードフレームの傷やへこみが見られず、樹脂バリも充分に防止されていた。また、パッケージ本体の離型フィルムの食い込みを防止できた。一方、離型フィルムを用いず、上金型の凸部を直接リードフレームに接触させた例17では、得られたパッケージのリードフレームに傷やへこみや見られ、樹脂バリも多かった。
凸部が一体的に形成された離型フィルムを用いた例18では、離型フィルム食い込みの評価にて離型フィルムがパッケージ本体に完全に食い込み、パッケージを離型できない。
【0110】
例1〜16のうち、例5、8、12、15では、若干の離型フィルムの食い込みが見られたが、例1〜4、6〜7、9〜11、13〜14、16では、離型フィルム食い込みの評価にて、離型フィルムの食い込みが見られず良好であった。
例1〜4、6〜7、9〜11、13〜14、16の結果が例5、12よりも優れる理由としては、第二の層の180℃引張貯蔵弾性率×厚さが、例5、12と比較して大きいため、離型フィルムが比較的硬く、クランプ時に潰れにくいことが考えられる。
例1〜4、6〜7、9〜11、13〜14、16の結果が例8よりも優れる理由としては、第一の層の厚さが例8と比較して薄いため、クランプ時に第一の層が潰れた際の厚さの変化率が比較的小さいことが考えられる。
例1〜4、6〜7、9〜11、13〜14、16の結果が例15よりも優れる理由としては、離型フィルムが、第二の層を備えることで、第一の層のみ(ETFEの単層フィルム)である例15と比較して硬いため、クランプ時に潰れにくいこと、および第一の層の厚さが例15と比較して薄いために、潰れた際の厚さの変化率が比較的小さいこと、が考えられる。
【0111】
例1〜16のうち、例7、11、16では、樹脂バリ発生割合が30%以下10%超であったが、例1〜6、8〜10、12〜15(8、10、13〜1412、15)では、樹脂バリ発生割合が10%以下であった。
例1〜6、8〜10、12〜15の結果が例7の結果よりも優れる理由としては、第一の層の厚さが例7と比較して厚いため、クランプ時に潰れやすい傾向にあることが考えられる。
例1〜6、8〜10、12〜15の結果が例11の結果よりも優れる理由としては、第二の層の180℃引張貯蔵弾性率×厚さが例11と比較して小さいため、離型フィルムが比較的柔らかく、クランプ時に潰れやすい傾向にあることが考えられる。
例1〜6、8〜10、12〜15の結果が例16の結果よりも優れる理由としては、接触部位と接する第一の層がPTFEフィルムと比較して柔らかいため、クランプ時に離型フィルムが潰れやすく、離型フィルムと接触部位との密着性が高くなる傾向にあること、が考えられる。
【0112】
これらの結果から、上記のパッケージの製造に用いる離型フィルムとしては、例1〜4、6、9〜10、13〜14で用いたような、180℃における引張貯蔵弾性率が10〜50MPaで厚さが5〜12μmである第一の層と、180℃における引張貯蔵弾性率(MPa)と厚さ(μm)との積が3,000〜8,000である第二の層とを備える離型フィルムが特に好ましいことが確認できた。