(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ウレタン樹脂(A)及び溶剤(B)を含有するウレタン樹脂組成物を湿式製膜法により加工する多孔体の製造方法であって、前記溶剤(B)が、特定のものであることが必須の要件である。
【0011】
本発明においては、前記溶剤(B)が、溶剤(B)のハンセン溶解度パラメーター(B−HSP)とウレタン樹脂(A)のハンセン溶解度パラメーター(A−HSP)との差が3〜8(J/cm
3)
1/2の範囲であり、かつ、溶剤(B)のハンセン溶解度パラメーター(B−HSP)と水のハンセン溶解度パラメーター(W−HSP)との差が31.5〜38(J/cm
3)
1/2の範囲となるものを用いることが必須の要件である。本発明においては、係る範囲の溶剤(B)を用いることで、ウレタン樹脂(A)と溶剤(B)とが可溶で安定的に樹脂溶液の形態をとることができ、かつ、湿式製膜法により多孔体を製造することができる。
【0012】
なお、このハンセン溶解度パラメーターとは、分子間の相互作用が似ている2つの物質は、互いに溶解しやすいとの考えに基づいたものであり、具体的には、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散項(δD)、分極項(δP)、水素結合項(δH)の3成分に分割し、3次元空間に表したものである。分散項(δD)は分散力による効果、分極項(δP)は双極子間力による効果、水素結合項(δH)は水素結合力による効果を示す。
【0013】
なお、ハンセン溶解度パラメーターの定義と計算は、Charles M.Hansen著「Hansen Solubility Parameters;A Users Handbook(CRC Press,2007)」に記載されている。また、コンピュータソフトウェア「Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)」を用いることにより、文献にパラメーター値の記載がない溶剤に関しても、その化学構造からハンセン溶解度パラメーターを推算することができる。本発明では、文献にパラメーター値の記載がある溶剤については、その値を用い、文献にパラメーター値の記載がない溶剤に関しては、HSPiPバージョン4.1.06を用いて推算したパラメーター値を用いる。溶剤(B)のハンセン溶解度パラメーター(B−HSP)とウレタン樹脂(A)のハンセン溶解度パラメーター(A−HSP)との差(絶対値)、及び、溶剤(B)のハンセン溶解度パラメーター(B−HSP)と水のハンセン溶解度パラメーター(W−HSP)との差(絶対値)もこれらに従って計算する。
【0014】
前記溶剤(B)は、1種の溶剤を用いることもでき、また2種以上の溶剤を併用して用いることもできる。2種以上併用する場合は、それぞれの溶剤のハンセン溶解度パラメーターの3つのパラメーターを加重平均した値が、上記の範囲内となる組み合わせで用いることができる。
【0015】
前記溶剤(B)としては、より一層良好な多孔を形成できる点から、前記ハンセン溶解度パラメーターにおける前記分散項(δD)が、15.5〜21MPa
0.5の範囲であることが好ましく、16.0〜20MPa
0.5の範囲がより好ましい。また、前記分散項(δP)としては、同様の理由により、7〜14.5MPa
0.5の範囲であることが好ましく、8〜13.5J1/2MPa
0.5の範囲がより好ましい。更に、前記分散項(δH)としては、同様の理由により、4.5〜11MPa
0.5の範囲であることが好ましく、5〜10MPa
0.5の範囲がより好ましい。
【0016】
前記溶剤(B)としての具体例としては、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド(ハンセン溶解度パラメーター:20.14、分散項(δD):16.7、分極項(δP):9.2、水素結合項(δH):6.5)、N,N−ジメチルアクリルアミド(ハンセン溶解度パラメーター:21.81、分散項(δD):17.3、分極項(δP):10.6、水素結合項(δH):8.0)、N,N−ジメチルプロピオンアミド(ハンセン溶解度パラメーター:21.28、分散項(δD):16.4、分極項(δP):11.3、水素結合項(δH):7.5)、N,N−ジエチルアセトアミド(ハンセン溶解度パラメーター:22.42、分散項(δD):16.8、分極項(δP):11.5、水素結合項(δH):9.4)、N,N−ジエチルアクリルアミド(ハンセン溶解度パラメーター:19.65、分散項(δD):16.9、分極項(δP):9.2、水素結合項(δH):4.0)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(ハンセン溶解度パラメーター:22.29、分散項(δD):18.2、分極項(δP):10.0、水素結合項(δH):8.1)、N−エチルピロリドン(ハンセン溶解度パラメーター:22.74、分散項(δD):18.0、分極項(δP):12.0、水素結合項(δH):7.0)、2−ピロリドン(ハンセン溶解度パラメーター:23.58、分散項(δD):18.2、分極項(δP):12.0、水素結合項(δH):9.0)等が挙げられる。
【0017】
前記溶剤(B)としては、ウレタン樹脂(A)の種類によらず、一層安定的に多孔構造を形成できる点から、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及び/又は、N,N−ジメチルアクリルアミドを用いることが好ましい。
【0018】
前記溶剤(B)の含有量としては、ウレタン樹脂(A)の溶解性の点から、ウレタン樹脂組成物中10〜90質量%の範囲であることが好ましく、20〜80質量%の範囲がより好ましい。
【0019】
本発明で用いるウレタン樹脂(A)としては、ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との反応物を用いることができる。
【0020】
前記ポリオール(a1)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、多孔体の製造の分野では、前記ポリオール(a1)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール除く。)、及び、ポリカーボネートポリオールが最も一般的に使用されている。これらのポリオールの中では、適度な親水性を有するポリエステルポリオールが最も多孔体を製造しやすく、その次にポリカーボネートポリオールであり、疎水性であるポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール除く。)が最も多孔化が困難であることが知られている。しかしながら、本発明においては、前記特定の溶剤(B)を使用することにより、これらのいずれのポリオールを用いても湿式製膜法により簡便に多孔体を製造することができる。
【0021】
前記ポリオール(a1)の数平均分子量としては、多孔体の機械的特性、及び柔軟性の点から、500〜10,000の範囲であることが好ましく、700〜8,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0022】
前記ポリオール(a1)には、必要に応じて、数平均分子量が500未満の鎖伸長剤(a1−1)を併用することができる。前記鎖伸長剤(a1−1)としては、例えば、水酸基を有する鎖伸長剤、アミノ基を有する鎖伸長剤等を用いることができる。これらの鎖伸長剤(a1−1)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記水酸基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物;水などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記アミノ基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記ポリイソシアネート(a2)としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)と必要に応じて前記鎖伸長剤(a1−1)とを仕込み、反応させることによって製造する方法が挙げられる。これらの反応は、50〜100℃の温度で概ね3〜10時間行うことが好ましい。また、前記反応は、後述する溶剤(B)中で行ってもよい。
【0027】
前記ポリオール(a1)が有する水酸基並びに前記鎖伸長剤(a1−1)が有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記ポリイソシアネート(a2)が有するイソシアネート基とのモル比[(イソシアネート基)/(水酸基及びアミノ基)]としては、0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲であることがより好ましい。
【0028】
以上の方法により得られるウレタン樹脂(A)の重量平均分子量としては、多孔体の機械的強度及び柔軟性の点から、5,000〜500、000の範囲であることが好ましく、10,000〜300,000の範囲がより好ましく、30,000〜150,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、前記ポリオール(a1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0029】
前記ウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)、及び、前記溶剤(B)を必須成分として含有するが、必要に応じて、その他の添加剤を含有しもよい。
【0030】
前記その他の添加剤としては、例えば、顔料、難燃剤、可塑剤、軟化剤、安定剤、ワックス、消泡剤、分散剤、浸透剤、界面活性剤、フィラー、防黴剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、蛍光増白剤、老化防止剤、増粘剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
次に、前記ウレタン樹脂組成物を湿式成膜法により多孔体を製造する方法について説明する。
【0032】
前記湿式成膜法とは、前記ウレタン樹脂組成物を、基材表面に塗布または含浸し、次いで、該塗布面または含浸面に水や水蒸気等を接触させることによって前記ウレタン樹脂(A)を凝固させ多孔体を製造する方法である。
【0033】
前記ウレタン樹脂組成物を塗布する基材としては、例えば、不織布、織布、編み物からなる基材;樹脂フィルム等を用いることができる。前記基材を構成するものとしては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維等の化学繊維;綿、麻、絹、羊毛、これらの混紡繊維などを用いることができる。
【0034】
前記基材の表面には、必要に応じて制電加工、離型処理加工、撥水加工、吸水加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮断加工等の処理が施されていてもよい。
【0035】
前記基材表面に前記ウレタン樹脂組成物を塗布または含浸する方法としては、例えば、グラビアコーター法、ナイフコーター法、パイプコーター法、コンマコーター法が挙げられる。その際、ウレタン樹脂組成物の粘度を調整し塗工作業性を向上するため、必要に応じて、有機溶剤(B)の使用量を調節して良い。
【0036】
前記方法により塗布または含浸された前記ウレタン樹脂組成物からなる塗膜の膜厚としては、0.5〜5mmの範囲であることが好ましく、0.5〜3mmの範囲がより好ましい。
【0037】
前記ウレタン樹脂組成物が塗布または含浸され形成した塗布面に水または水蒸気を接触させる方法としては、例えば、前記ウレタン樹脂組成物からなる塗布層や含浸層の設けられた基材を水浴中に浸漬する方法;前記塗布面上にスプレー等を用いて水を噴霧する方法などが挙げられる。前記浸漬は、5〜60℃の水浴中に、2〜20分程度行うことが好ましい。
【0038】
前記方法によって得られた多孔体は、常温の水や温水を用いてその表面を洗浄して溶剤(B)を抽出除去し、次いで乾燥することが好ましい。前記洗浄は5〜60℃の水で20〜120分程度行なうことが好ましく、洗浄に用いる水は1回以上入れ替えるか、あるいは、流水で連続して入れ替えるのが好ましい。前記乾燥は、80〜120℃に調整した乾燥機等を用い、10〜60分程度行うことが好ましい。
【0039】
以上、本発明によれば、DMFを用いずに、湿式製膜法による多孔体を製造することができる。よって、本発明は、DMFの使用規制が今後厳しくなる人工皮革・合成皮革の製造に特に好適に使用することができる。その他にも、本発明は、研磨パッド;研磨用バックパッド;手術衣、ベットシーツ等の医療衛生材料;防風・防水シートや結露防止シート等の建材用シート;乾燥剤、除湿剤、芳香剤等の包装材料;農業用シート、各種セパレータ、パッキンなどの様々な用途に使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0041】
[合成例1]ウレタン樹脂(A−1)の合成
攪拌機、還流器、温度計を有する反応装置に、ポリエステルポリオール(DIC株式会社製「CMA−244」、数平均分子量;2,000)を100質量部、エチレングリコールを8質量部、N,N,2−トリメチルプロピオンアミドを250質量部、及び、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを45質量部投入し、撹拌下85℃で粘度が600dPa・sに達するまで反応させた後、メタノール0.22質量部を加えて反応させることによってウレタン樹脂(A−1)を含有するウレタン樹脂組成物を得た。
【0042】
[合成例2]ウレタン樹脂(A−2)の合成
攪拌機、還流器、温度計を有する反応装置に、ポリエステルポリオール(DIC株式会社製「CMA−244」、数平均分子量;2,000)を100質量部、エチレングリコールを8質量部、N,N−ジメチルアクリルアミドを250質量部、及び、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを45質量部投入し、撹拌下85℃で粘度が600dPa・sに達するまで反応させた後、メタノール0.22質量部を加えて反応させることによってウレタン樹脂(A−2)を含有するウレタン樹脂組成物を得た。
【0043】
[合成例3]ウレタン樹脂(A−3)の合成
攪拌機、還流器、温度計を有する反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000)を100質量部、エチレングリコールを8質量部、N,N,2−トリメチルプロピオンアミドを250質量部、及び、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを45質量部投入し、撹拌下85℃で粘度が600dPa・sに達するまで反応させた後、メタノール0.22質量部を加えて反応させることによってウレタン樹脂(A−3)を含有するウレタン樹脂組成物を得た。
【0044】
[合成例4]ウレタン樹脂(A−4)の合成
攪拌機、還流器、温度計を有する反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000)を100質量部、エチレングリコールを8質量部、N,N−ジメチルアクリルアミドを250質量部、及び、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを45質量部投入し、撹拌下85℃で粘度が600dPa・sに達するまで反応させた後、メタノール0.22質量部を加えて反応させることによってウレタン樹脂(A−4)を含有するウレタン樹脂組成物を得た。
【0045】
[ポリオールの数平均分子量の測定方法]
合成例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0046】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0047】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0048】
[実施例1]
合成例1で得られたウレタン樹脂組成物100質量部を、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド30質量部で更に希釈し、厚さ(Wet)1mmとなるようにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した。次いで、凝固浴(25℃の水)へ塗布基材を10分間浸漬させ、ウレタン樹脂(A−1)を凝固させた。その後、この基材を50℃の水に60分間浸漬させて溶剤を洗浄した。洗浄後、基材を120℃で30分間熱風乾燥させ、多孔体を得た。
【0049】
[実施例2]
合成例2で得られたウレタン樹脂組成物100質量部を、N,N−ジメチルアクリルアミド30質量部で更に希釈し、厚さ(Wet)1mmとなるようにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した。次いで、凝固浴(25℃の水)へ塗布基材を10分間浸漬させ、ウレタン樹脂(A−2)を凝固させた。その後、この基材を50℃の水に60分間浸漬させて溶剤を洗浄した。洗浄後、基材を120℃で30分間熱風乾燥させ、多孔体を得た。
【0050】
[実施例3]
合成例3で得られたウレタン樹脂組成物100質量部を、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド30質量部で更に希釈し、厚さ(Wet)1mmとなるようにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した。次いで、凝固浴(25℃の水)へ塗布基材を10分間浸漬させ、ウレタン樹脂(A−3)を凝固させた。その後、この基材を50℃の水に60分間浸漬させて溶剤を洗浄した。洗浄後、基材を120℃で30分間熱風乾燥させ、多孔体を得た。
【0051】
[実施例4]
合成例4で得られたウレタン樹脂組成物100質量部を、N,N−ジメチルアクリルアミド30質量部で更に希釈し、厚さ(Wet)1mmとなるようにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した。次いで、凝固浴(25℃の水)へ塗布基材を10分間浸漬させ、ウレタン樹脂(A−4)を凝固させた。その後、この基材を50℃の水に60分間浸漬させて溶剤を洗浄した。洗浄後、基材を120℃で30分間熱風乾燥させ、多孔体を得た。
【0052】
[比較例1]ウレタン樹脂(A’−1)の合成
攪拌機、還流器、温度計を有する反応装置に、ポリエステルポリオール(DIC株式会社製「CMA−244」、数平均分子量;2,000)を100質量部、エチレングリコールを8質量部、γ−ブチロラクトンを250質量部、及び、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを45質量部投入し、撹拌下85℃で反応させようとしたが、途中でゲル化した。
【0053】
[多孔体の確認方法]
実施例で得られた多孔体を、日立ハイテクテクノロジー株式会社製走査型電子顕微鏡「SU3500」(倍率500倍)を使用して観察し、多孔体を形成しているか確認した。多孔体が確認できたものは「T」、確認できなかったものは「F」と評価した。
【0054】
【表1】
【0055】
「表1」中の略語は、以下のものである。
・「DMIB」:N,N,2−トリメチルプロピオンアミド
・「DMAA」:N,N−ジメチルアクリルアミド
・「GBL」:γ−ブチロラクトン
【0056】
図1においても確認できる通り、本発明は、DMFを使用せずに、多孔体が得られることが分かった。
【0057】
一方、比較例1は、溶剤(B)のハンセン溶解度パラメーター(B−HSP)とウレタン樹脂(A)のハンセン溶解度パラメーター(A−HSP)との差が本発明で規定する範囲を超えるγ−ブチロラクトンを用いた態様であるが、ゲル化し、ウレタン樹脂(A)に可溶化できず、多孔体を得ることができなかった。
ウレタン樹脂(A)及び溶剤(B)を含有するウレタン樹脂組成物を湿式製膜法により加工する多孔体の製造方法であって、前記溶剤(B)が、溶剤(B)のハンセン溶解度パラメーター(B−HSP)とウレタン樹脂(A)のハンセン溶解度パラメーター(A−HSP)との差が3〜8(J/cm