(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、装置を加熱することは多大なエネルギーと時間が必要な上、装置は液体窒素の超低温と高温ガスによる高温の双方に耐えなければならない。このため、装置の部品に要求される熱特性として−200℃から+200℃程度という広範囲が要求され、部品の材質を選択する範囲が狭まったり、装置全体の構造が複雑化したりするという問題が生じる。しかも、特許文献1に開示された技術では、高温ガスを用いているため、特許文献4に記載されるようなアイソレータに接続することが難しいという問題がある。
【0007】
また、特許文献2においては、液体窒素を無菌化するような機能を長期にわたって維持できるフィルタは存在しておらず、実際には持続して無菌の液体窒素を製造することは容易ではない。
【0008】
また、特許文献3には、無菌化したガスを冷却して液化すること、および、配管等を蒸気によって滅菌することが記載されている。しかしながら、液化ガスを貯留するタンクがないため液化ガスの供給量が変更できないとともに、高温ガスを用いている上、後述するように、液体窒素における無菌状態を維持することができないという問題があった。
【0009】
特許文献4に記載されるようなアイソレータにおいては、無菌の液体窒素を供給したいという要求があった。しかしながら、現在、その具体的手法は実現されていない。これは、液体窒素が蒸発することにともなって、空気中の水分あるいは汚染物質を取り込んでしまうため、無菌状態でアイソレータに供給することは難しかったためである。
特に、iPS細胞に関連した技術などにおいては、無菌の液体窒素の供給を実現することは急務である。
【0010】
また、特許文献4に記載されるようなアイソレータのひとつひとつの大きさが、例えば、半導体製造設備などに比べて小規模である。このため、アイソレータが使用される規模の大きさに適した液体窒素を供給する設備が求められている。
さらに、単一の施設内において、複数のアイソレータに対して無菌液体窒素を供給可能としたいという要求もあるが、同時に、液体窒素製造装置の大きさは大型化したくないという要求もあった。
【0011】
これらの施設内においては、しばしばアイソレータの配置が変更されることがあるため、このようなレイアウトの変更に柔軟に対応した上で、無菌液体窒素を供給可能としたいという要求もある。
しかも、作業手順をなるべく簡素化して、無菌状態を維持するとともに厳密な無菌状態を保証して、このような液体窒素の供給を可能とすることが要求されている。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、無菌液化ガス(液体窒素)の製造・供給において、無菌液化ガスの持続的製造および持続的供給を可能とするとともに、無菌状態の保証を可能とするとともに、複数のアイソレータ等に選択して供給可能でかつ作業工程を省力化した無菌液化ガス装置を提供するという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置は、液化ガス貯留タンクと、前記液化ガス貯留タンクに原料ガスを供給する原料ガス供給装置と、前記液化ガス貯留タンク内を冷却して前記原料ガスを液化する冷却装置と、前記原料ガス供給装置と前記液化ガス貯留タンクとを接続する供給配管と、前記供給配管に設けられる滅菌フィルタと、前記滅菌フィルタよりも下流部分に位置する滅菌領域を滅菌ガスにより滅菌する滅菌装置と、滅菌後に前記滅菌ガスを除去する滅菌ガス除去装置と、を有する。
本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置において、前記原料ガスを液化することによって得られる液化ガスが液体窒素とされてもよい。
本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置において、少なくとも前記液化ガス貯留タンクを可搬とする移動装置を備えてもよい。
本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置は、前記液化ガス貯留タンクに接続され、前記液化ガス貯留タンクの下流側に向けて、前記液化ガス貯留タンクに貯留した液化ガスを供給し、密閉可能な供給部と、前記供給部を滅菌する供給部滅菌装置と、を備えてもよい。
本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置において、前記供給部滅菌装置は、前記供給部が液化ガス供給対象に接続された際に前記液化ガスを無菌状態で前記液化ガス供給対象に供給可能であり、前記供給部滅菌装置は、供給部を無菌化する無菌化処理を行うことが可能とされてもよい。
本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置は、前記供給部が前記液化ガス供給対象に接続されたことを検出する接続センサを備え、前記接続センサにより、前記供給部と前記液化ガス供給対象との接続が確認された場合に、前記供給部滅菌装置が前記無菌化処理を開始可能とされてもよい。
本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置は、前記液化ガス貯留タンクが移動中であることを検出する移動センサを備え、前記移動センサにより、無菌液化ガス装置が移動中であることを検出した場合には液化処理が停止可能とされてもよい。
本発明の第2態様に係る無菌液化ガス装置の取り合い管は、液化ガス貯留タンクと液化ガス供給対象とに接続される取り合い管であって、前記液化ガス貯留タンクと、前記液化ガス供給対象とに接続可能な接続部と、密閉可能なバルブと、を有し、前記バルブにより前記取り合い管の内部を密閉した状態で前記取り合い管の内部の気体を排気可能な真空排気装置が接続されており、排気された状態にある前記取り合い管の内部に滅菌ガスを供給可能な滅菌装置が前記取り合い管に接続されている。
【0014】
本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置は、液化ガス貯留タンクと、前記液化ガス貯留タンクに原料ガスを供給する原料ガス供給装置と、前記液化ガス貯留タンク内を冷却して前記原料ガスを液化する冷却装置と、前記原料ガス供給装置と前記液化ガス貯留タンクとを接続する供給配管と、前記供給配管に設けられる滅菌フィルタと、前記滅菌フィルタよりも下流部分に位置する滅菌領域を滅菌ガスにより滅菌する滅菌装置と、滅菌後に前記滅菌ガスを除去する滅菌ガス除去装置と、を有する。この構成によれば、滅菌フィルタより下流部分に位置する滅菌領域である少なくとも滅菌フィルタと供給配管と液化ガス貯留タンク内とに滅菌装置から滅菌ガスを供給する。これにより、滅菌領域がガス滅菌され、滅菌ガス除去装置によってガス滅菌により生じた滅菌ガスや水分等が除去され、この滅菌領域から滅菌ガスが除去され、滅菌領域の滅菌処理が完了する。この無菌状態となった液化ガス貯留タンクに原料ガス供給装置から滅菌フィルタを介して無菌状態の原料ガスを供給するとともに、冷却装置により液化ガス貯留タンク内を冷却して原料ガスを液化する。さらに、無菌液化ガスを液化ガス貯留タンクに貯留する。これにより、必要に応じて製造された無菌液化ガスを外部に供給することが可能となる。
【0015】
しかも、本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置においては、無菌液化ガスの製造工程、および、この製造工程に付随する滅菌工程においては、貯留タンクおよび液化ガスを製造する領域で加圧されることがない。このため、この領域で高圧に対する耐圧性を維持する必要がなく、装置を省スペース化・小型化することが可能となる。さらに、維持管理にかかる作業量を削減して、製造コストおよび供給コストの低減を図ることが可能となる。
特に、大型のタンク設置など大規模な設備を設置することが不必要となる。
【0016】
ここで、無菌とは、滅菌された状態を意味し、滅菌とは、有害・無害を問わず、対象物に存在しているすべての微生物およびウイルスを死滅させるか除去することを意味する。具体的には、無菌性保証レベル(sterility assurance level:SAL)を満たすことを意味し、SAL≦10
−6(滅菌操作後、被滅菌物に微生物の生存する確率が100万分の1以下であること)を意味する。
また、液化ガスとは、−50℃未満の標準沸点を有するガスであり、例えば、窒素、酸素、液体空気およびアルゴンを挙げることができる。
【0017】
本発明の第1態様において、前記滅菌ガス除去装置が、不活性ガスを供給して前記滅菌領域に残留した滅菌ガス排出・除去および発生した水分除去等を行う。このため、滅菌装置によって滅菌ガスを供給して滅菌処理を行った後に、滅菌ガス除去装置によって、不活性ガスを滅菌領域に供給することにより、滅菌領域である少なくとも滅菌フィルタと供給配管と液化ガス貯留タンク内とに付着、あるいは、液化ガス貯留タンク内に貯留した滅菌ガス等を外部に排出・除去する。この結果、残留滅菌ガス・水分等に起因した汚染や菌の再発生を防止して、滅菌処理後の滅菌領域における無菌化および清浄化を図り、無菌液化ガスを製造することが可能になるとともに、製造された液化ガスにおける無菌状態を保証することが可能となる。
【0018】
ここで、滅菌ガス除去装置が、滅菌領域に供給する不活性ガスは、室温より高温の窒素ガスとすることができ、好ましくは、100℃以上の窒素ガスとすることができる。
これにより、滅菌ガスを製造する無菌液化ガスと同一とすることで、滅菌ガスが仮に残留したとしても製造ガスの純度に悪影響を与えないため、好ましい。また、滅菌工程において、当初は大気を利用し、後に、大気から不活性ガスに切り替えて滅菌を行うという手順がコスト面で優れ、上記の悪影響を回避することができ、双方の利点を両立できるため、好ましい。同様に、不活性ガスの種類として、2種類のガスを用い、ガス供給を切り替えて滅菌を行うことも同様の効果を得ることができる。
なお、液化ガス製造時の原料ガス供給装置からの供給流量に比べて、滅菌ガス除去処理におけるガス供給流量は大きく設定されることが滅菌ガス除去処理の短時間化のために好ましい。なお、液化ガス貯留タンク等の滅菌領域を減圧することで、滅菌領域に供給する不活性ガス温度を100℃よりも低く設定することができる。例えば、30kpaまで減圧した場合に70℃程度に設定することができる。
【0019】
本発明の第1態様において、前記滅菌装置と前記滅菌ガス除去装置とが、前記滅菌フィルタより上流側の前記供給配管に接続されることにより、前記滅菌装置と前記滅菌ガス除去装置とが滅菌領域より上流側に接続された状態となる。これにより、滅菌領域の全体に対して滅菌処理および滅菌ガス除去処理を行うことができるため、滅菌領域の全体を無菌状態として、無菌液化ガスの製造を行うことが可能となるとともに、製造された液化ガスにおける無菌状態を保証することが可能となる。
【0020】
また、本発明の第1態様において、前記供給配管が、前記液化ガス貯留タンク上部に接続されることにより、液化ガス貯留タンクの側面および底面に供給配管を貫通させる必要がなくなる。このため、液化ガス貯留タンクの内面における表面処理を所定の状態にすることが容易にできる。
【0021】
なお、本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置において、液化ガスが接触する表面、あるいは、滅菌領域の内表面は、サニタリ規格を満たした状態とされている。これにより、製造された液化ガスにおける無菌状態を保証することが可能となる。
ここで、サニタリ規格とは、食品、酪農、醸造、飲料、製菓、水産、医薬、化粧品、化学工業品、清涼飲料、ビール、酒、食肉加工、化学薬品液、半導体等の製造に用いられる規格を意味する。
【0022】
また、前記冷却装置が、冷凍機を含むことにより、液化ガス貯留タンクの内部を原料ガスの液化温度かそれ以下の温度まで冷却することが容易となり、液化ガス貯留タンク内に貯留する液化ガスを大量に製造することができる。
【0023】
本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置において、前記原料ガスを液化することによって得られる液化ガスが液体窒素とされることにより、従来、実現ができなかった、作業室内を滅菌状態に維持することが必要であるアイソレータ等に、無菌状態を保証しながら、無菌液体窒素を容易に供給することが可能となる。
【0024】
また、本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置は、少なくとも前記液化ガス貯留タンクを可搬とする移動装置を備える。この構成により、無菌状態で液化ガス(液体窒素)を製造して、液化ガスを貯留タンクに貯留するとともに、液化ガスの製造終了後に貯留タンクを移動して所望の装置等に無菌状態を維持したまま液化ガスを任意に供給することが可能となる。特に、複数のアイソレータ等の供給対象に対して、必要なときに必要な量の無菌液化ガスを供給することが可能となる。なお、この移動時には、貯留タンクは、いわば、単なるデュワー瓶として作用することになる。
【0025】
さらに、本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置では、移動中および単に液化ガスを供給している際には、無菌液化ガス装置内に対するセンサおよび制御用に必要な電力供給を行うだけで済み、液化ガス製造中に必要な大電力を常時必要とすることがない。このため、UPS(無停電電源装置)のみで、可搬な構成とすることができる。
【0026】
また、本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置は、前記液化ガス貯留タンクに接続され、前記液化ガス貯留タンクの下流側に向けて、前記液化ガス貯留タンクに貯留した液化ガスを供給し、密閉可能な供給部と、前記供給部を滅菌する供給部滅菌装置と、を備える。この構成により、貯留タンクを移動して供給対象に接続し、供給部滅菌装置によって、この供給部および接続対象であるアイソレータ等における配管等を無菌化処理する。これにより、貯留タンクに貯留した液化ガスを、無菌状態のまま、無菌の供給部および接続対象の配管等を通して、接続対象に容易に供給することができる。これにより、複数の供給対象に対して、いずれも無菌の液化ガスを、所望の場所で、任意のタイミングで供給することが可能となる。
【0027】
また、本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置において、前記供給部滅菌装置は、前記供給部が液化ガス供給対象に接続された際に前記液化ガスを無菌状態で前記液化ガス供給対象に供給可能であり、前記供給部滅菌装置は、供給部を無菌化する無菌化処理を行うことが可能とされている。この構成により、貯留タンクを移動して供給対象に接続するだけで、供給部滅菌装置によってこの供給部に対して無菌化処理を開始し、貯留タンクに貯留した液化ガスを、無菌状態のまま、無菌の供給部を通して、接続対象に容易に供給することができる。しかも、接続対象に供給部を接続するだけで、貯留タンクに貯留された無菌液化ガスを、無菌状態を保証して、接続対象に供給することを自動化することが可能となる。しかも、複数の供給対象に対して、いずれも無菌の液化ガスを、所望の場所で、任意のタイミングで供給する際に、無菌状態を保証したまま、液化ガスの供給動作を自動化することが可能となる。
【0028】
また、本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置は、前記供給部が前記液化ガス供給対象に接続されたことを検出する接続センサを備え、前記接続センサにより、前記供給部と前記液化ガス供給対象との接続が確認された場合に、前記供給部滅菌装置が前記無菌化処理を開始可能である。この構成により、接続センサにより接続部の供給対象への接続を確認した後に、無菌化処理を開始することで、供給対象となる接続対象が非無菌状態となることを防止し、貯留タンクに貯留された無菌液化ガスに対して、確実に無菌状態を保証して供給することができる。
【0029】
また、本発明の第1態様に係る無菌液化ガス装置は、前記液化ガス貯留タンクが移動中であることを検出する移動センサを備え、前記移動センサにより、無菌液化ガス装置が移動中であることを検出した場合には液化処理が停止可能である。この構成により、無菌液化ガス装置の移動中に液化処理を行わないので、貯留タンクからの液化ガスの漏洩が防止できる。貯留タンクと外部空間とが接続することに起因して、貯留タンクの内部空間や貯留された液化ガスが汚染され、非無菌状態となることを防止できる。
【0030】
本発明の第2態様に係る無菌液化ガス装置の取り合い管は、液化ガス貯留タンクと液化ガス供給対象とに接続される取り合い管であって、前記液化ガス貯留タンクと、前記液化ガス供給対象とに接続可能な接続部と、密閉可能なバルブと、を有し、前記バルブにより前記取り合い管の内部を密閉した状態で前記取り合い管の内部の気体を排気可能な真空排気装置が接続されており、排気された状態にある前記取り合い管の内部に滅菌ガスを供給可能な滅菌装置が前記取り合い管に接続されている。この構成により、無菌液化ガスを液化ガス供給対象に供給する際に、液化ガス貯留タンクと液化ガス供給対象とを接続した状態で、この接続部分を無菌化して、貯留した無菌液化ガスに対して無菌状態を維持したまま、無菌液化ガスを液化ガス供給対象に供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様によれば、液化ガスの製造・貯溜される滅菌領域において、滅菌ガスによって滅菌・除去する。これにより、この滅菌領域における菌の再発生を防止し、無菌状態を容易に維持して、無菌液化ガスの製造・貯留・供給を行うことが可能となる。さらに、製造された液化ガスにおける無菌状態を保証して、無菌状態を維持したまま搬送・供給することが可能となる無菌液化ガス装置を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の第1実施形態に係る無菌液化ガス装置を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における無菌液化ガス装置を示す模式断面図であり、図において、符号10は、無菌液化ガス装置である。
【0034】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10は、
図1に示すように、液化ガス貯留タンク11と、原料ガス供給装置12と、冷却装置13と、供給配管14と、滅菌フィルタ14dと、滅菌装置16と、滅菌ガス除去装置17と、液化ガス供給部18(接続配管)と、を有する。
【0035】
本実施形態に係る液化ガス貯留タンク11は、
図1に示すように、有底略円筒状の密閉容器とされ、後述するように、サニタリ仕様とされている。
液化ガス貯留タンク11には、
図1に示すように、上端となる蓋部11aを貫通して供給配管14と接続配管18と冷却装置13とが設けられている。
【0036】
液化ガス貯留タンク11の底部11bは、底部11bと側壁11cとの間の接続位置から底部11bの中心に向かってなだらかに下降する傾斜が形成されている。底部11bの中央には、凹みが形成されており、凹みが貯溜凹部11dを形成している。なお、底部11bは、例えば、球面を切り取った曲面状に形成されており、液化ガス貯留タンク11と外部との間に圧力差が生じた場合に、液化ガス貯留タンク11の強度が維持可能とされている。液化ガス貯留タンク11の底部11bの形状としては、
図1に示す構成以外の構成を採用することもでき、例えば、平板状とすることもできる。
【0037】
原料ガス供給装置12は、液化ガスの原料となる原料ガスを液化ガス貯留タンク11に供給するように構成されており、バルブ14aを介して供給配管14に接続されている。本実施形態では、原料ガス供給装置12は、原料ガスとして窒素ガスを液化ガス貯留タンク11に供給する。原料ガス供給装置12は、例えば、室温程度の原料ガスを液化ガス貯留タンク11に供給する。
本実施形態に係る原料ガス供給装置12としては、吸着剤を利用した窒素発生装置(PSA)を有しており、空気から効率よく酸素と窒素を分離し、99.99%までの窒素ガスを液化ガス貯留タンク11に供給可能である。なお、原料ガスを液化ガス貯留タンク11に供給可能であれば、原料ガス供給装置12の構成は、上記構成に限定されない。
【0038】
冷却装置13は、冷凍機システムで、
図1に示すように、液化ガス貯留タンク11の上端となる蓋部11aを貫通する機械式冷凍機の冷却部13aと、この冷却部13aに接続されて冷媒ガスを供給そして回収するためのコンプレッサ13bと、コンプレッサ13bに接続された水冷部13cとを有する構成とされている。冷却部13aは、蓋部11aを貫通して液化ガス貯留タンク11の内部に突出し、原料ガスが機械式冷凍機の冷却部13aと熱交換して液化するように構成されている。冷却部13aは、コンプレッサ13bから供給される冷媒(例えば、ヘリウムガス)をサイモン膨張させることにより、例えば、80Kの超低温にまで冷却することができる。
【0039】
コンプレッサ13bは、例えば、ヘリウムガスを冷却部13aとコンプレッサ13bとの間で環流させ、冷却部13aから熱を奪う構成を有する。この熱は、水冷部13cによって、外部に廃熱される。
なお、水冷部13cを設けないでコンプレッサ13bにより直接外部に廃熱する構成(空冷)を採用することもできる。液化ガス貯留タンク11の内部に突出した冷却部13aは、その表面がサニタリ仕様を満たすように構成されている。
【0040】
供給配管14の下流側は、液化ガス貯留タンク11の上端となる蓋部11aを貫通して液化ガス貯留タンク11の中央の軸方向に位置しており、供給配管14は、液化ガス貯留タンク11の内部を縦に延在するように設けられている。液化ガス貯留タンク11の内部に延在する供給配管14の管側面には、全長にわたって多数の貫通孔が設けられており、液化ガス貯留タンク11の内部に延在する供給配管14の内部と液化ガス貯留タンク11の内部とが連通している。
【0041】
供給配管14の上流側には、滅菌フィルタ14dが設けられている。さらに、滅菌フィルタ14dの上流側に位置する配管は、三つ叉に分岐するように形成されている。分岐された配管には、バルブ14a,14b,14cを介して、原料ガス供給装置12と、滅菌装置16と、滅菌ガス除去装置17と、がそれぞれ接続されている。なお、バルブ14a,14b,14cは、3つの独立したバルブで構成することもできるが、3方向の分岐を互いに切り替え可能な構成であれば、他の構成が採用されてもよい。
【0042】
滅菌フィルタ14dは、供給配管14に設けられ、原料ガス供給装置12から供給された原料ガスを滅菌可能なフィルタである。滅菌フィルタ14dのろ過性能は、室温付近において呈することができる。また、後述するように、滅菌フィルタ14dは、滅菌装置16から供給される滅菌ガスによってろ過性能が低下しない材質・形状で形成されている。ここで、滅菌フィルタとは、滅菌可能な無菌フィルタを意味する。
【0043】
滅菌フィルタ14d、この滅菌フィルタ14dよりも下流側に位置する供給配管14、液化ガス貯留タンク11の内部、バルブ18aまで延びる接続配管18は、滅菌領域Sとされている。滅菌領域Sは、製造される液化ガスを無菌状態とするとともに、貯留した液化ガスを無菌状態で液化ガス貯留タンク11に供給可能とするために、液化ガス製造開始から供給終了時まで滅菌された状態を維持する
滅菌フィルタ14dとしては、例えば、PALL社製の気体滅菌用疎水性PTFEメンブレンフィルターを採用することができる。
【0044】
滅菌フィルタ14dは、滅菌フィルタ14dの内部に複数の流路が切り替え可能に設けられた構成を有しており、例えば、2本、あるいは、3本のフィルタを並列に切り替え可能な構成とされている。
滅菌フィルタ14dには、滅菌フィルタ14dにおける無菌状態を維持可能な状態であることを確認・検査する完全性試験装置19Aを設けることができる。
【0045】
完全性試験装置19Aは、供給配管14の滅菌フィルタ14dより上流側に設けられたバルブ19Aaと、供給配管14の滅菌フィルタ14dより下流側に設けられたバルブ19Abと、バルブ19Aaと滅菌フィルタ14dとの間の位置に供給配管14から分岐するように設けられたバルブ19Acと、バルブ19Abと滅菌フィルタ14dとの間の位置に供給配管14から分岐するように設けられたバルブ19Adと、バルブ19Acの分岐位置に供給配管14から分岐するように接続された完全性試験部19Bと、を有することができる。
【0046】
完全性試験装置19Aにおいては、バルブ19Aa,19Ab,19Acを閉状態として、バルブ19Adを開状態とした上で、完全性試験部19Bから、例えば、純水を供給して、滅菌フィルタ14dを通過した純水をバルブ19Adから採取する。この採取した純水を検査してフィルタにおける無菌状態を維持しているかを確認する。
【0047】
完全性試験が終了した後には、バルブ19Ab,19Adを閉状態として、バルブ19Aa,19Ac,19Adを開状態とした上で、バルブ14cを開いて、後述する滅菌ガス除去装置17から不活性ガスなどのパージガスを供給する。これによって、完全性試験後に残留した水分等を除去して滅菌領域S内の水分除去・乾燥を行うことができる。
【0048】
さらに、バルブ19Ab,19Acを閉状態として、バルブ19Aa,19Ad,14cを開状態とした上で、さらに、滅菌ガス除去装置17から不活性ガスなどのパージガスを供給する。これによって、完全性試験後に残留した水分等を除去して滅菌領域S内、特に、滅菌フィルタ14dおよび供給配管14の水分除去・乾燥を行うことができる。
【0049】
なお、本発明における「完全性試験」としては、利用されるフィルタによって異なる方法が挙げられる。
本発明における「完全性試験」は、JISK3835の第3頁、6.3(1)(b)に記載されている通り、「JISK3832若しくはJISK3833または採用したフィルタの取扱説明書に基づき、無菌的に完全性試験を行い、試験フィルタの破損などの欠陥が無いことを確認する。」ことが重要である。
【0050】
よって、本発明は、完全性試験装置を備えていない無菌液化ガス装置に、付加的に完全性試験装置を取り付けられることが特徴である。このフィルタ部分について、「JISK3832若しくはJISK3833または採用したフィルタの取扱説明書に指定された方法に従った完全性試験が行えるように成っていること」が、本発明では必要な構成である。
【0051】
つまり、具体的に述べると、フィルタ部分を本機(無菌液化ガス装置10)の系統から切り離して、無菌液化ガス装置10が完全性試験を行える構成を持つことが大切である。例えば、滅菌フィルタ14dを備える従来の構成においては、
図1において、上流配管を閉塞するバルブ19Aaと、下流配管を閉塞するバルブ19Abとが必要であり、かつ、滅菌フィルタ14dから完全性試験機19Bに向かう流路が断接可能となるブランクフランジを備えた構成が必要とされる。
【0052】
また、好ましくは備えるべき構成としては、排出ポートとして機能するバルブ19Ad,19Ac(ドレイン弁)を備えた構成が挙げられる。
図1に示す無菌液化ガス装置10の構成においては、完全性試験機19Bが、無菌液化ガス装置10にビルトインされている。しかしながら、完全性試験は、「定期的な検査」という位置づけであることから、完全性試験機19Bは、無菌液化ガス装置10に常時必要な機器ではない。なお、フィルタ18bに接続されている配管及びこの配管に設けられているバルブの配置は、上述した滅菌フィルタ14dに接続されている配管及びこの配管に設けられているバルブの配置と同一であるため、説明を省略する。
ただし、完全性試験機19Bが無菌液化ガス装置10に常設された構成は、より安全である。このため、以下の説明では、完全性試験機19Bが無菌液化ガス装置10に常設された場合を説明している。
【0053】
ここで、JISK3833の第6頁に記載されている附属書を参照する。例えば、完全性試験としてJISK3833を利用した場合について、以下に説明する。
JISK3833に記載された「2.拡散流量試験」と段落0045以降の説明は、基本的に類似する。ゆえに、詳細については、JISK3833の記載を反映させることが好ましい。
JISK3833に記載された「7.1.(2)」の手順によりフィルタを全て湿らせた。手順としては、完全性試験器側から純水を投入、バルブ19Acを閉あるいは微小に開いた状態で、1次側を純水で満たすことにより、「7.1.(2)(e)」を達成させる。
【0054】
次いで、閉塞された状態にあるバルブ19Ac、バルブ19Ad側から、純水を排出し、「7.1.(2)(g)」を達成させる。
その後、「7.2.(1)」を実施することにより、完全性試験とする。
完全性試験が終了した後は、当該装置は取り外しても構わない。完全性試験器側は、フランジ接続の状態なので、封止、ドレイン側のバルブ2個と上下の流路バルブ2個が残存する構成で終了となる。
【0055】
段落0046では、無菌状態を維持したまま、菌検査を行っているが、通常は完全性試験のみでよい。JISK3835やJISK3836に基づく試験は、必要に応じて行えばよい。
【0056】
滅菌装置16は、例えば、過酸化水素等やエチレンオキサイドガスなどの滅菌ガスを滅菌領域Sに供給可能であり、バルブ14bを介して分岐した供給配管14に接続される。滅菌装置16としては、過酸化水素ガスやエチレンオキサイドガスなどの滅菌ガスを発生可能な滅菌ガス供給器を採用することができる。滅菌装置16の具体的な構成としては、例えば、過酸化水素ガスに高真空下で高周波やマイクロ波のエネルギーを付与し、100%電離(イオン化)、すなわちプラズマ化したガスを供給する過酸化水素低温ガスプラズマ法を利用する構成や、過酸化水素を加熱気化器で蒸気化して、その蒸気を供給する過酸化水素ガス低温滅菌(過酸化水素蒸気滅菌法)を利用する構成を適用することが可能である。
【0057】
また、滅菌ガスとしては、滅菌装置16から滅菌ガスが供給される供給対象の規格に準拠する種類の滅菌ガスを使用することができ、過酸化水素ガス以外にも、酸化エチレン、酸化プロピレン、ホルムアルデヒド、オゾン、NO
2等のガスを用いることが可能である。
バルブ14bを開とし、バルブ14a,バルブ14cを閉とし、滅菌装置16により滅菌ガスを無菌液化ガス装置10の内部に向けて供給することで、滅菌フィルタ14dより下流部分に位置する滅菌領域Sをガス滅菌することが可能となる。
【0058】
さらに、滅菌装置16としては、真空ポンプ等の排気装置により、滅菌領域S内を減圧し、滅菌領域S内の物質(気体や液体等)を排気し、この滅菌領域Sに対する滅菌ガスの導入の補助を行うことも可能である。
この場合、滅菌領域S全体に滅菌ガスを行き渡らせるように、接続配管18の下流側、例えば、バルブ18aの下流位置、あるいは、バルブ18cの下流位置(外側位置)に真空ポンプ等の排気装置を設けること、または、この位置にポンプを接続可能とすることもできる。このように、滅菌領域S内を真空引きして、滅菌領域S内における残留物を滅菌ガスに置換することで、滅菌ガスの濃度を上昇させ、滅菌領域S内を万遍なく滅菌することが可能となる。
【0059】
滅菌ガス除去装置17は、不活性ガスなどのパージガスを無菌液化ガス装置10の内部に向けて供給することで、ガス滅菌後に残留した滅菌ガス、および、ガス滅菌により生じた水分等を除去して滅菌領域S内をガス除去・乾燥させる。供給する不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスとされることができる。なお、残留滅菌ガスの除去にともなって滅菌領域S内の水分も除去可能であるが、さらに乾燥が必要な場合には、液化ガスの原料ガス供給量に対して、大きな流量で窒素ガスを供給可能とすることが好ましい。
【0060】
また、滅菌ガス除去装置17としては、排気ポンプ等の排気装置により、滅菌領域S内を減圧し、滅菌領域S内の物質(気体や液体等)を排気して、この滅菌領域Sにおける滅菌ガスの除去を行うことも加えて可能である。
この場合、滅菌領域S全体から滅菌ガスを除去可能とするために、接続配管18の下流側、例えば、バルブ18aの下流位置、あるいは、バルブ18cの下流位置(外側位置)にポンプ等の排気装置を設けること、または、この位置にポンプを接続可能とすることもできる。
【0061】
接続配管18(供給部)の上流側は、液化ガス貯留タンク11の上端となる蓋部11aを貫通して液化ガス貯留タンク11の中央の軸方向に位置しており、接続配管18は、液化ガス貯留タンク11の内部を縦に延在するように設けられている。
【0062】
接続配管18の上流側端部は、液化ガスが液化ガス貯留タンク11に供給される時に、液化ガス貯留タンク11に貯留された液化ガスの液面よりも低い位置に維持され、液化ガス貯留タンク11に貯留された液化ガスをこの接続配管18を介して取出口を通じて外部に供給可能とされていればよい。特に、接続配管18の上流側端部は、貯溜凹部11dに対してほぼ接触するように配置されることが好ましい。
さらに、接続配管18の上流側端部は、貯溜凹部11dの最低位置となる中央部分に対してほぼ接触するように配置されることもできる。このように、接続配管18の上流側端部が配置されることで、滅菌時に貯溜凹部11dに溜まった水分等を外部に排出可能なドレインとして接続配管18を用いることもできる。
【0063】
接続配管18の下流側には、液化ガス貯留タンク11から貯留された液化ガスを外部に供給する取出口となる位置にバルブ18aが設けられ、接続配管18および液化ガス貯留タンク11を外部に対して密閉可能とされている。
【0064】
接続配管18におけるバルブ18aの上流側には、バルブ18aと液化ガス貯留タンク11との間となる位置において、液化ガス貯留タンク11からバルブ18aに至る流路(第1流路)から枝分かれした流路(第2流路)が設けられている。枝分かれした流路(第2流路)には後述するバルブ19Aeと、フィルタ18bと、バルブ18cとが設けられている。
【0065】
バルブ18cの下流は、外部へと連通しており、液化ガス貯留タンク11に液化ガスを貯留した際に、蒸発する余分なガスを外部に逃がして、液化ガス貯留タンク11の内圧が上昇しないように設けられる。また、フィルタ18bを介してバルブ18cが設けられていることにより、外気が接続配管18に侵入した場合でも、接続配管18に有害な菌等の汚染物質が滅菌領域S内に入ることを防止できる。また、バルブ18cは、液化ガス貯留タンク11の内部圧力が所定値以上に上昇した場合に動作する安全バルブとして動作するように構成してもよい。
【0066】
フィルタ18bには、フィルタにおける無菌状態を維持可能な状態であることを確認・検査する装置として、上述した完全性試験部19Bが接続された完全性試験装置19Aが接続できるように設けられていることもできる。
【0067】
フィルタ18bに対する完全性試験装置19Aは、接続配管18から分岐してフィルタ18bより上流側に設けられたバルブ19Aeと、バルブ19Aeとフィルタ18bとの間で配管から分岐するように設けられたバルブ19Afと、バルブ18cとフィルタ18bとの間で配管から分岐するように設けられたバルブ19Agと、バルブ19Afの分岐位置で完全性試験部19Bに接続される配管19Awと、配管19Awと供給配管14のバルブ19Abの下流位置とを結ぶバルブ19Avと、を有することができる。
【0068】
フィルタ18bに対する完全性試験装置19Aにおいては、バルブ19Ae,19Av,18cを閉状態として、バルブ19Af,19Agを開状態とした上で、完全性試験部19Bから、例えば、純水を供給して、フィルタ18bを通過した純水をバルブ19Agから採取する。この採取した純水を検査してフィルタにおける無菌状態を維持しているかを確認する。
【0069】
完全性試験が終了した後には、バルブ19Ae,18cを閉状態として、バルブ19Af,19Ag,19Avを開状態とした上で、バルブ14cを開いて、後述する滅菌ガス除去装置17から不活性ガスなどのパージガスを供給する。これにより、完全性試験後に残留した水分等を除去して接続配管18等の水分除去・乾燥を行うことができる。
【0070】
さらに、滅菌フィルタ14dに対する完全性試験と、フィルタ18bに対する完全性試験とを同時に行うこともできる。
【0071】
バルブ18aの下流となる接続配管18の取出口は、医療、製薬、食品、研究分野などで、無菌状態の液化ガスを使用するアイソレータなどの領域に配管を介して直接接続し、この取出口から外部に取り出した無菌液化ガスを供給することが可能である。
【0072】
液化ガス貯留タンク11には、内部圧力を測定する圧力検出装置、内部温度を測定する温度検出装置、およびこれらの検出結果を表示する内部状態表示装置11fなどが設けられている。このように、液化ガス貯留タンク11の外部へと連絡する必要がある装置は、いずれも液化ガス貯留タンク11の上端となる蓋部11aを貫通するように配置される。
【0073】
なお、温度検出装置は、図示していないが、液化ガス貯留タンク11の内部において複数設けることができる、温度検出装置が設置される位置として、例えば、液化ガス貯留タンク11の側壁の上側位置、冷却部13aの温度を検出可能な冷却部13aの付近の位置、および、液化ガス貯留タンク11の下端となる底部11bの近傍の位置等が挙げられる。
【0074】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10において、滅菌領域Sである供給配管14、滅菌フィルタ14d、液化ガス貯留タンク11、冷却部13a、バルブ18aに繋がる接続配管18、バルブ18cに繋がる接続配管18、圧力検出装置、又は温度検出装置の表面または内面は、サニタリ仕様を満たすように構成されている。
【0075】
サニタリ仕様としては、例えば、ステンレス鋼材、特に、SUS316、SUS316Lが挙げられる。さらに、#400番の研磨剤を用いてステンレス鋼材の表面を研磨する鏡面研磨処理、および、電解研磨処理を行うことで、JIS規格に規定されるステンレスサニタリ配管などに準じた仕様を実現することができる。あるいは、上述のステンレス鋼材の表面又は上記処理が施された表面がAu、Pt等の金属で覆われた構成とされることも可能である。
【0076】
また、上述した配管の継手、Oリングなどは、サニタリ規格として、シリコーン製、フッ素樹脂製、フッ化ビニリデン系(FKM)などのフッ素ゴム等を使用することができる。
【0077】
以下、本実施形態に係る無菌液化ガス装置における無菌液化ガス製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る無菌液化ガス装置における液化ガス製造工程を示すフローチャートである。
【0078】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10における無菌液化ガス製造方法は、
図2に示すように、完全性試験工程S21と、滅菌工程S1と、滅菌ガス除去工程S2と、原料ガス供給工程S3と、液化冷却工程S4と、を有する。なお、完全性試験工程S21を行わないこともできるが、完全性試験工程S21を行う場合は、定められた定期的なタイミングで完全性試験工程が行われ、常時必須な工程ではない。
【0079】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10における無菌液化ガス製造方法は、まず、
図2に示す滅菌工程S1として、滅菌領域Sを滅菌する。
滅菌工程S1においては、まず、バルブ14aとバルブ14cとを閉状態として、バルブ14bを開状態とし、冷却装置13を停止状態とし、原料ガス供給装置12を停止状態とし、バルブ18aを開状態とし、バルブ18cを開状態とする。
【0080】
この状態で、滅菌装置16を動作させ、滅菌ガス供給器から供給した100℃程度に設定される過酸化水素ガスとされる滅菌ガスを、バルブ14bを介して分岐した供給配管14に供給する。滅菌ガスは、バルブ14bを介して、滅菌領域Sである供給配管14、滅菌フィルタ14d、液化ガス貯留タンク11、接続配管18を経て、バルブ18aに繋がる接続配管18の下流側に位置する取出口、および、枝分かれした流路(第2流路)に設けられたフィルタ18bを経て、バルブ18cから排出される。これにより、滅菌ガスが滅菌領域Sの内表面に接触し、滅菌ガスが接触した滅菌領域Sの内表面において滅菌処理を行い、滅菌領域Sの内表面から菌を死滅させる。
【0081】
滅菌工程S1における処理条件は、完全な無菌状態を得るために、例えば、医薬品向けの凍結乾燥装置において必要な滅菌の条件を採用することができる。このような処理条件においては、過酸化水素ガスに、30分〜45分程度、滅菌領域Sを曝して暴露状態を維持することにより菌を死滅させる。
【0082】
さらに、滅菌装置16として真空ポンプ等の排気装置を設けた場合には、バルブ18aを閉状態とし、バルブ18cを閉状態として、滅菌領域S内を減圧し、滅菌領域S内の物質を排気した後、滅菌装置16を動作させて、この滅菌領域Sに対する滅菌ガスの導入の補助を行うことも可能である。
【0083】
滅菌領域Sが滅菌ガスに暴露された状態を所定時間維持したことが確認されたら、滅菌装置16の動作を停止して、滅菌工程S1を終了する。
【0084】
次いで、
図2に示す滅菌ガス除去工程S2として、バルブ14bを閉状態として、バルブ14cを開状態とし、バルブ18aを開状態とし、バルブ18cを開状態とする。
【0085】
この状態で、滅菌ガス除去装置17を動作させ、室温より高温、好ましくは100℃以上の不活性ガスを供給配管14に供給する。例えば、窒素ガスとされる不活性ガスは、バルブ14cを介して、滅菌領域Sである供給配管14、滅菌フィルタ14d、液化ガス貯留タンク11、接続配管18を経て、排出配管18の下端のバルブ18a側に位置する取出口およびバルブ18c側に位置する枝管(第2流路)の下端から排出される。これにより、滅菌工程S1におけるガス滅菌で用いた滅菌ガスを排出・除去して滅菌領域S内を清浄・乾燥させる。
【0086】
滅菌ガス除去工程S2においては、液化ガス貯留タンク11等の滅菌領域S内を乾燥することが必要であるので、後述する液化冷却工程S4における原料ガス供給装置12からの原料ガス供給に比べて流量の多い高温不活性ガスを滅菌ガス除去装置17から供給する。
滅菌ガス除去装置17から供給された高温不活性ガスは、無菌状態となっている滅菌フィルタ14dを通過することによって、菌を死滅させた無菌状態で滅菌領域S内に供給される。
【0087】
滅菌ガス除去工程S2においては、滅菌ガス除去装置17から供給された高温不活性ガスによって、滅菌領域Sの内表面に付着した水分等は、蒸発して、接続配管18から排出される。液化ガス貯留タンク11の内部及び滅菌領域Sの内表面に付着した水分が完全に外部に排出されたことを確認して、滅菌ガス除去装置17の動作を停止させ、滅菌ガス除去工程S2を終了する。
【0088】
図2に示す完全性試験工程S21としては、上述したJIS記載の手順にしたがって、上述の滅菌フィルタ14d,フィルタ18bに対する完全性試験を行う。
また、完全性試験工程S21は、滅菌工程S1より前に行うことが好ましい。これは、滅菌フィルタ14d,フィルタ18bの部分が湿ってしまうおそれがあるため、また、バルブ19Ad,19Ac(ドレイン弁)の開閉による外部からのコンタミネーションの混入を防止するためである。
【0089】
次いで、
図2に示す原料ガス供給工程S3として、バルブ14cを閉状態として、バルブ14aを開状態とする。接続配管18の下流側においては、取出口側に位置するバルブ18aを閉状態とし、バルブ18cを閉状態とする。この状態で、原料ガス供給装置12を動作させて、原料ガスである窒素ガスを液化ガス貯留タンク11に供給する。
【0090】
このとき、原料ガス供給装置12から供給された原料ガスは、滅菌フィルタ14dを介して供給配管14を流れて液化ガス貯留タンク11に流入するが、原料ガスが流入する範囲は、滅菌フィルタ14dより下流の滅菌領域Sである。滅菌装置16による滅菌処理が全て完了しているので、滅菌フィルタ14dよりも下流の滅菌領域Sとなる部分は、無菌状態を維持することができる。
【0091】
次いで、
図2に示す液化冷却工程S4として、冷却装置13を動作させ、コンプレッサ13bは、ヘリウムガスをコンプレッサ13bと冷却部13aとの間で環流させて、冷却部13aから熱を奪い、この熱は水冷部13cによって外部に廃熱される。これにより、蓋部11aを貫通して液化ガス貯留タンク11の内部に突出した冷却部13aが冷却されることで、液化ガス貯留タンク11の内部を冷却して原料ガスを液化する。
【0092】
液化された原料ガスは液化ガス貯留タンク11の内部に貯留される。
必要に応じて、滅菌ガス除去装置17などにより液化ガス貯留タンク11内を加圧することにより、液化ガス貯留タンク11に貯留された無菌液化ガスは、開状態のバルブ18aを通じて、取出口から外部に供給することが可能となる。
【0093】
ここで、取出口側に位置するバルブ18a、または、バルブ18cが開状態のまま、原料ガスを液化ガス貯留タンク11に供給することもできる。これは、滅菌ガス除去工程S2で液化ガス貯留タンク11内は大気圧よりも高く(1気圧+α)なっており、かつ、温度も高い状態となっている。これは、冷却装置13を動作させてもすぐに冷えず、液化ガス貯留タンク11内の圧力は原料ガス供給装置12の供給圧まで上がるためである。
【0094】
同時に、ガスの流れを一方向にして菌が入り込まないようにするため、液化ガス貯留タンク11内は大気圧+αになるよう原料ガス供給装置12による原料ガス供給を調整する。
あるいは、バルブ18aを閉状態とし、バルブ18cを開状態として液化冷却工程S4を開始した場合には、フィルタ18bが設けられていることにより、バルブ18cから菌が入り込むことがない。
【0095】
また、原料ガスが供給されて液化作業している間は取出口側に位置するバルブ18aは閉状態、枝分かれした流路に設けられたバルブ18cは開状態を維持する。
さらに、原料ガスを供給せず液化ガス製造を行っていない状態で、液化ガスの液体が保管されている場合は、入熱による原料ガスの蒸発で液化ガス貯留タンク11内の圧力が上がる、このため、図示しない圧力検出装置とバルブ18cとを連動させることによって、液化ガス貯留タンク11の内圧を設定値まで下げるように制御されている。また、バルブ18cを安全バルブとして作動させる場合には、開状態を維持しておく。
【0096】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10における無菌液化ガス製造においては、滅菌工程S1、および、滅菌ガス除去工程S2によって、滅菌領域Sが無菌状態とされている。この無菌状態を維持して原料ガスの液化処理を行うことができるため、無菌液化ガスを製造することが可能となる。さらに、このように、無菌状態を維持しているため、製造した無菌液化ガスにおける無菌状態を保証することが可能となる。
【0097】
本実施形態においては、滅菌フィルタ14dを滅菌工程S1、および、滅菌ガス除去工程S2によって無菌状態としている。この状態で、供給配管14を通じて原料ガス供給装置12から液化ガス貯留タンク11に向けて原料ガスを供給することで、滅菌フィルタ14dを経由して無菌状態の原料ガスを液化ガス貯留タンク11の内部に供給して、液化処理を行うことが可能となる。
【0098】
本実施形態においては、貯溜凹部11dに接触する程度に近接した位置に接続配管18の上流端部が設けられている。このため、液化ガス貯留タンク11に貯留した液化ガスをできるだけ長い時間に亘って供給することが可能となる。また、液化ガス貯留タンク11の底部11bに底面に貯溜凹部11dが設けられているため、底部11bに底面に形成された傾斜面(角度)に沿って液化ガスを集め、貯留された液化ガスを外部に供給することが可能となる。
【0099】
以下、本発明の第2実施形態に係る無菌液化ガス装置を、図面に基づいて説明する。
図3は、本実施形態における無菌液化ガス装置を示す模式正面図である。本実施形態は、供給部に関する点で、上述した第1実施形態と異なる。
図3において、第1実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0100】
本実施形態においては、接続配管18のバルブ18aの下流側には、取り合い管19(供給部)が設けられている。取り合い管19は、無菌液化ガス装置10と、無菌液化ガス装置10から液化ガスが供給される供給対象である外部装置と接続する。即ち、取り合い管19は、供給部としての機能を有する。取り合い管19においては、供給対象の装置(相手側装置)および供給する液化ガスにおける滅菌状態を維持するために滅菌処理が行われる。
なお、
図3においては、完全性試験装置19Aの一部の図示が省略されている。
図3に示す完全性試験装置19Aの構成としては、
図1に示した構成と同等の構成が採用されている。
【0101】
図3に示すように、取り合い管19の一端は、接続配管18のバルブ18aの下流側に接続されている。取り合い管19の他端は、液化ガス貯留タンク11に貯留した液化ガスが供給されるアイソレータ5(液化ガス供給対象)の配管51に接続される主管19aと、この主管19aから枝分かれした枝管19bとを有する。
【0102】
主管19aは、主管19aの両端に位置するクランプ19c,19d(接続部材)を有する。クランプ19cは、アイソレータ5の配管51の先端と接続可能である。クランプ19dは、液化ガス貯留タンク11に接続されている接続配管18の下端(取出口)と接続可能である。
【0103】
クランプ19c,19dは、いずれもワンタッチクランプであり、簡便に取り外しが可能とされている。主管19aと配管51との間の接続管の内部と、主管19aと接続配管18との間の接続管の内部とにおいては、段差が生じないようにサニタリフェルールからなる継手が用いられている。
【0104】
なお、クランプ19cには、取り合い管19と配管51とを接続した際に、接続状態を検知する接続センサが設けられている。センサとしては、具体的には、近接センサを用いる、または、配管に5V程度の電圧をかけ、接続時に流れる電流により検出するという構成にすることができる。
【0105】
枝管19bの一端は、主管19aに連通し、枝管19bの他端にはバルブ19eを介して真空ポンプ19fが接続されている。真空ポンプ19fは、取り合い管19の内部空間を減圧して、取り合い管19の内部の気体を排気可能である。
枝管19bには、また、バルブ19gを介して滅菌ガスを供給可能な装置、具体的には、滅菌装置16に接続されるとともに、枝管19bの内部の真空度を測定する測定装置19hが設けられている。測定装置19hに関し、滅菌装置に侵されない測定装置として、隔膜真空計を用いることが好ましい。
これら取り合い管19は、これらの表面または内面がサニタリ仕様を満たすように構成されている。
【0106】
サニタリ仕様としては、例えば、ステンレス鋼材、特に、SUS316、SUS316Lが挙げられる。さらに、#400番の研磨剤を用いてステンレス鋼材の表面を研磨する鏡面研磨処理、および、電解研磨処理を行うことで、JIS規格に規定されるステンレスサニタリ配管などに準じた仕様を実現することができる。あるいは、上述のステンレス鋼材の表面又は上記処理が施された表面がAu、Pt等の金属で覆われた構成とされることも可能である。
【0107】
また、上述した配管の継手、Oリングなどは、サニタリ規格として、シリコーン製、フッ素樹脂製、フッ化ビニリデン系(FKM)などのフッ素ゴム等を使用することができる。
【0108】
取り合い管19、接続配管18のバルブ18a、クランプ19c,19d、バルブ51a、バルブ19e,19g真空ポンプ19f、測定装置19h、滅菌装置16は、供給部滅菌装置を構成している。
【0109】
本実施形態に係る取り合い管19は、液化ガス貯留タンク11に貯留した液化ガスをアイソレータ5等に供給する際に用いる。したがって、無菌液化ガス装置10において、液化ガス製造処理が行われている間は、取り合い管19が無菌液化ガス装置10に接続されていてもよいし、接続しないこともできる。
【0110】
無菌液化ガス装置10とアイソレータ5とを接続する際には、あらかじめ、取り合い管19を接続配管18に接続しておくことが必要である。
この場合、取り合い管19は、クランプ19dによって接続配管18に接続される。なお、無菌液化ガス装置10に取り合い管19を常設する構成とした場合には、クランプ19dを設けないこともできる。また、あらかじめ取り合い管19が無菌液化ガス装置10に接続された場合には、上述した液化ガス製造における滅菌工程S1により、取り合い管19内部を滅菌しておくことも可能である。
【0111】
本実施形態に係る取り合い管19を用いて無菌液化ガス装置10とアイソレータ5とを接続するには、クランプ19cによって取り合い管19を配管51に接続する。
この状態で、供給する液化ガスの無菌状態を維持するために、取り合い管19、接続配管18、配管51を無菌化する処理を行う。
【0112】
以下、本実施形態に係る無菌液化ガス装置の取り合い管(供給部)における無菌化方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る無菌液化ガス装置の供給部における無菌化工程を示すフローチャートである。
【0113】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10における無菌化方法は、
図4に示すように、接続工程S11と、接続確認工程S12と、真空引き工程S13と、無リーク確認工程S14と、滅菌工程S15と、滅菌ガス排出工程S16と、排出確認工程S17と、液体窒素供給工程S18と、を有する。
【0114】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10における無菌化方法は、まず、
図4に示す接続工程S11として、無菌液化ガス装置10のクランプ19cによって取り合い管19をアイソレータ5の配管51に接続する。
なお、取り合い管19が接続配管18に接続されていなかった場合には、クランプ19dによって、取り合い管19が接続配管18に接続される。
【0115】
接続工程S11においては、まず、バルブ18aとバルブ19gとバルブ19eとバルブ51aとを閉状態とし、真空ポンプ19fを停止状態とし、滅菌装置16を停止状態とする。このとき、原料ガス供給装置12を停止状態とし、冷却装置13を停止状態とし、滅菌ガス除去装置17を停止状態とする。
【0116】
次いで、
図4に示す接続確認工程S12として、取り合い管19のクランプ19cに設けられたセンサによって、取り合い管19と配管51との接続状態を検知する。そして、その信号が検知できない状態、つまり、取り合い管19と配管51との接続が確認できない場合には、次のステップに進まないように設定されている。
【0117】
次いで、
図4に示す真空引き工程S13として、取り合い管19の内部を減圧し、取り合い管19の内部の気体を排気する。これは、後工程の滅菌工程S15において、供給された滅菌ガスを取り合い管19の内部の隅々まで充填させて、充分な滅菌雰囲気とするとともに、取り合い管19の内部にあった水分などを外部に排出するためである。
【0118】
真空引き工程S13においては、バルブ19eを開状態として、取り合い管19に接続された真空ポンプ19fを作動させる。真空ポンプ19fは、減圧排出装置として動作されている。
これにより、バルブ18a、バルブ51a、バルブ19gで仕切られた主管19aおよび枝管19bの内部が減圧される。この減圧された内部が、滅菌領域Sとなる。
【0119】
次いで、
図4に示す無リーク確認工程S14として、バルブ19eを開状態のまま、測定装置19hによって、枝管19bの内部の真空度を測定し、取り合い管19の内部の真空度が所定値に到達した状態であることを確認する。これにより、取り合い管19の内部、および、滅菌領域Sにおいて、リークが発生していないこと、つまり、継手の接続、あるいは、バルブによる閉塞等が確実に行われていることを確認する。
【0120】
より確実な無リーク確認工程S14を行うことが必要な場合は、真空ポンプ19fの吸気側の直上に位置する部分に図示しないバルブを設け、真空引き工程S13を実行した後にこのバルブを閉塞し、枝管19bの内部を含む空間を閉鎖空間とすればよい。仮に閉鎖空間となっていなければ枝管19bの内部圧力と大気圧との差圧を起因とし、測定装置19hの指示値は時間の経過とともに徐々に圧力が上昇する事を示す事となり、リーク有無の判定が可能となる。このようなリーク有無の判定方法は、真空ポンプ19fを運転継続した状態での到達圧力を確認する動的な確認手法より、積分的な手法であることから、高精度なリーク判定を行うことが可能である。
【0121】
取り合い管19の内部の真空度が所定値に到達した状態であることが確認できない場合には、次のステップに進まないように設定されている。
取り合い管19の内部の真空度が所定値に到達した状態であることが確認できたら、バルブ19eを閉状態とするとともに、真空ポンプ19fを停止状態とし、無リーク確認工程S14を終了する。
【0122】
次いで、
図4に示す滅菌工程S15として、滅菌領域Sを滅菌する。
滅菌工程S15においては、バルブ18aを閉状態、バルブ51aを閉状態、バルブ19eを閉状態として、バルブ19gを開状態とする。
【0123】
この状態で、滅菌装置16を動作させ、滅菌ガス供給器から供給した100℃程度に設定される過酸化水素ガスとされる滅菌ガスを、バルブ19gを介して取り合い管19の主管19aと、この主管19aから分岐した枝管19bとに供給する。
【0124】
ここで、バルブ18a、バルブ51a、バルブ19eで仕切られた主管19aおよび枝管19bの内部は、滅菌領域Sとして減圧された状態であるため、この減圧された内部に、滅菌ガスが充填される。これにより、滅菌ガスが滅菌領域Sの内表面に接触し、滅菌ガスが接触した滅菌領域Sの内表面において滅菌処理を行い、滅菌領域Sの内表面から菌を死滅させる。
【0125】
滅菌工程S15における処理条件は、完全な無菌状態を得るために、例えば、医薬品向けの凍結乾燥装置において必要な滅菌の条件を採用することができる。このような処理条件においては、過酸化水素ガスに30分〜45分程度、滅菌領域Sを曝して暴露状態を維持することにより菌を死滅させる。当然ながら真空ポンプ19fの吸気側の直上に位置する部分に図示しないバルブを設け、このバルブを閉塞することで真空状態にある滅菌領域Sに対して滅菌ガスを導入し、滅菌ガスを溜め込んだ状態を保つことがより望ましい。
【0126】
滅菌領域Sが滅菌ガスに暴露された状態を所定時間維持したことが確認されたら、滅菌装置16の動作を停止して、滅菌工程S15を終了する。
【0127】
次いで、
図4に示す滅菌ガス排出工程S16として、バルブ19gを閉状態として、バルブ19eを開状態とする。
この状態で、滅菌ガス排出装置となる真空ポンプ19fを作動させ、取り合い管19の内部に充填された滅菌ガスを外部に排出する。この際、図示しないが、滅菌装置16に代えて、大気あるいは不活性ガスを滅菌領域S(取り合い管19の内部)に満たす(置換する)ことで、取り合い管19の内部に残留する滅菌ガスの濃度を著しく下げることができる。このため、希釈ガス導入装置を無菌液化ガス装置10に設けるとともに、無菌化工程が希釈工程を備えることがより好ましい。
【0128】
次いで、
図4に示す排出確認工程S17として、滅菌ガス排出装置となる真空ポンプ19fを停止させ、バルブ19eを開状態のまま、測定装置19hによって、枝管19bの内部の真空度を測定する。測定結果に基づき、取り合い管19の内部の真空度が所定値に到達した状態であることを確認し、これにより、取り合い管19の内部、および、滅菌領域Sにおいて、滅菌ガスが排出・除去されたことを確認する。
【0129】
同時に、滅菌領域Sにおいて、リークが発生していないこと、つまり、継手の接続、あるいは、バルブによる閉塞等が確実に行われていることを確認する。
ここで、取り合い管19の内部の真空度が所定値に維持された状態であることが確認できない場合には、次のステップに進まないように設定されている。
次いで、バルブ19gを閉状態として、バルブ19eを閉状態とし、取り合い管19に対する滅菌処理を終了する。
【0130】
取り合い管19に対する滅菌処理を終了したことが確認できたら、
図4に示す液体窒素供給工程S18として、バルブ18aを開状態とし、バルブ51aを開状態する。この状態で、液化ガス貯留タンク11に貯留された無菌液体窒素を、無菌状態を維持・保証したまま、アイソレータ5の配管51に供給する。
【0131】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10では、上述した第1実施形態と同様に無菌液化ガスを製造可能とされるとともに、製造した無菌の液体窒素(液化ガス)を液化ガス貯留タンク11に貯留した状態で、取り合い管19に対する滅菌処理を行うことができる。これにより、バルブ18a、バルブ51a、バルブ19e、バルブ19gで仕切られた滅菌領域Sにおける菌を死滅させ、この状態で、液体窒素供給工程S18を開始することが可能となる。
【0132】
これにより、無菌液化ガス装置10が使用される任意の場所で、無菌液化ガス装置10が接続される任意の接続対象に無菌液化ガス(液体窒素)を供給する前に、取り合い管19および接続部分の無菌化処理を他の設備を用いることなく行い、液化ガス供給対象(接続対象)に無菌液化ガスを容易に供給することが可能となる。
【0133】
さらに、本実施形態に係る無菌液化ガス装置10では、取り合い管19に対する滅菌処理において、ステップS11、S13、S15、S16のそれぞれを確認するステップS12、S14、S17を有することにより、取り合い管19に対する滅菌処理を自動化することが可能となる。これにより、作業者は、取り合い管19を配管51に接続するだけで、滅菌処理が完了した状態で液化ガスを液化ガス供給対象に供給することが可能となり、無菌状態を維持・保証したまま液化ガスの供給を可能とすることができる。
【0134】
しかも、液化ガス供給対象であるアイソレータ5には、滅菌処理を行うための装置を設ける必要がないため、複数のアイソレータ5等の供給対象に、必要なときに必要なだけ、無菌液化ガスを供給することが容易に可能となる。
【0135】
なお、本実施形態において、滅菌ガスを取り合い管19に供給する装置として、液化ガス製造においてガス滅菌を行う滅菌装置16を用いている。即ち、滅菌装置16は、第1実施形態における滅菌領域Sに滅菌ガスを供給する機能と、取り合い管19に滅菌ガスを供給する機能とを兼ね備えている。本実施形態では、滅菌装置16とは別に設けられた滅菌装置が滅菌ガスを取り合い管19に供給する構成が採用されてもよい。
【0136】
以下、本発明の第3実施形態に係る無菌液化ガス装置を、図面に基づいて説明する。
図5は、本実施形態における菌液化ガス装置を示す模式図であり、
図6は、本実施形態に係る菌液化ガス装置における移動センサの一例を示す模式図である。
本実施形態は、可搬装置に関する点で、上述した第1および第2実施形態と異なる。
図5及び
図6において、第1および第2実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0137】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10は、
図5に示すように、少なくとも液化ガス貯留タンク11を可搬とする移動装置15(可搬装置)として、台車15a、車輪15b、加速度センサ等とされる移動センサ15g、および、制御部15uを有する。
【0138】
台車15aには、
図5に示すように、液化ガス貯留タンク11と、原料ガス供給装置12と、冷却装置13と、供給配管14と、制御部15uと、滅菌装置16と、滅菌ガス除去装置17と、液化ガス供給部18(接続配管)と、取り合い管19と、が載置されている。
図5において、台車15aは、破線で囲まれた部材(上述した装置、バルブ、配管等)を一体的に移動可能とする。なお、破線で囲まれた部材を台車15aに対して支持固定する支持部材は図示を省略している。
【0139】
台車15aの下部には、複数の車輪15bが設けられており、台車15aは移動可能である。複数の車輪15bの各々は、床などに設けられたストッパ15sに対して固定・離脱が可能とされている。
【0140】
ストッパ15sは、液化ガス製造を行う位置、および、製造された液化ガスが供給されるアイソレータ5に取り合い管19が接続可能な位置に対して、無菌液化ガス装置10が配置されるように、台車15aを固定可能である。これにより、液化ガス製造が行われる位置と液化ガスの供給が行われる位置との間で、台車15aが移動可能であるとともに、液化ガス製造と液化ガス供給とが可能とされている。
【0141】
ストッパ15sには、
図5に示すように、それぞれ制御部15uに接続されるセンサが設けられている。ストッパ15sに対応する位置に車輪15bがあるときだけ、センサから出力される検出信号によって、無菌液化ガス装置10において液化ガス製造の動作または液化ガス供給の動作が可能とされている。
具体的には、センサとしては、近接センサ、重量検出センサ、または、接触検知センサ等が採用できる。
【0142】
移動センサ15gは、台車15aと一体として設けられ、台車15aが移動している状態を検知可能である。
【0143】
移動センサ15gとしては、台車15aの移動を検知可能であれば、移動センサ15gの構成は限定されない。例えば、
図6に示すように、導体からなる球15g1が導体からなる上部の開口した容器15g2内に配置された構成が採用されてもよい。この場合、台車15aの移動時には、破線で示すように、球15g1が容器15g2内壁に接触することによる電気的に検知した信号を制御部15uに出力可能である。
【0144】
移動センサ15gは、制御部15uに接続されており、この移動センサ15gが移動を検知していないときだけ無菌液化ガス装置10において液化ガス製造の動作または液化ガス供給の動作が可能とされている。
【0145】
制御部15uは、液化ガス貯留タンク11の内部状態表示装置11fに接続された圧力検出装置および温度検出装置と、原料ガス供給装置12と、冷却装置13と、供給配管14と、バルブ14a,14b,14cと、ストッパ15sのセンサと、移動センサ15gと、滅菌装置16と、滅菌ガス除去装置17と、液化ガス供給部18(接続配管)のバルブ18a,18cと、取り合い管19のバルブ19e,19g、真空ポンプ19fおよび測定装置19hと、クランプ19c,19dのセンサとに接続されている。制御部15uは、これら装置や部材の動作を制御し、あるいは、これらの部材から出力された信号を受信する。
【0146】
同時に、制御部15uは、台車15aの移動中、あるいは、アイソレータ5への液化ガス供給中に、無菌液化ガス装置10及びアイソレータ5の構成部材に必要な給電を行う無停電電源とされる電源と一体とされている。
【0147】
さらに、液化ガス製造が行われる位置において、冷却装置13に給電する電源13dおよびコネクタ13eにも制御部15uは接続されている。制御部15uは、冷却装置13、電源13d、およびコネクタ13eの動作を制御し、あるいは、これらの部材から出力された信号を受信する。
【0148】
冷却装置13の動作に必要な電力は、上述した他の構成の動作に必要な電力に比べて、格段に大きい。このため、冷却装置13を動作させる場合には、制御部15uと一体の無停電電源とされる電源ではなく、施設に固定された大容量給電が可能な電源13dから給電するようになっている。
【0149】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10では、上述した各センサによって、台車15aの移動中は液化処理動作を行わないため、安全性を確保することができる。
【0150】
また、本実施形態に係る無菌液化ガス装置10では、無菌液化ガス装置10に必要な構成が台車15aに載置されている。即ち、無菌液化ガス装置10は可搬であり、任意の場所に無菌液化ガス装置10が移動可能である。例えば、複数のアイソレータ5に向けて無菌液化ガス装置10を移動させることができる。この場合、他の設備を用いることなく、液化ガスをアイソレータ5に供給する前に、液化ガスが流通する取り合い管19および接続部分の無菌化処理を行って、無菌液化ガスの供給を容易に可能とすることができる。さらに、可搬な無菌液化ガス装置10の省スペース化、軽量化を図ることが可能となる。
【0151】
さらに、無菌液化ガス装置10の小型化・省スペース化が実現されるので、無菌液化ガス装置10を、複数のアイソレータ5が同一室内に設置された研究施設等の小規模な施設において容易に使用することができる。この場合、大規模な無菌化液化ガス製造装置を設置することない。また、移動できない製造装置といった供給対象に、長い配管を介して、無菌化液化ガス製造装置を接続する必要が無い。アイソレータ5の移動など施設のレイアウト変更に関して大規模な改築を行うことなく、無菌液化ガスの供給を容易に可能とすることができる。
【0152】
また、台車15aによって、無菌液化ガスが供給される供給対象に向けて無菌液化ガス装置10が移動可能であるとともに、必要な無菌化処理が終了したことを確認して、任意の供給対象の無菌状態を保証したまま、無菌液化ガスの供給を容易に可能とすることができる。
【0153】
さらに、本実施形態に係る無菌液化ガス装置10では、上述した第1実施形態と同様に無菌液化ガスを製造可能とされるとともに、上述した第2実施形態と同様に製造した無菌の液体窒素(液化ガス)を液化ガス貯留タンク11に貯留した状態で、取り合い管19に対する滅菌処理を行うことができる。これにより、滅菌領域Sにおける菌を死滅させ、この状態で、液体窒素供給工程S18を開始することが可能となる。
【0154】
また、本実施形態に係る無菌液化ガス装置10では、取り合い管19に対する接続処理および滅菌処理において、上述した第2実施形態と同様にステップS11、S13、S15、S16のそれぞれを確認するステップS12、S14、S17を有することにより、取り合い管19に対する滅菌処理を自動化することが可能となる。これにより、作業者は、取り合い管19を配管51に接続するだけで、滅菌処理が完了した状態で液化ガス供給対象に液化ガスを供給することが可能となり、無菌状態を維持・保証したまま液化ガスの供給を可能とすることができる。
【0155】
しかも、液化ガス供給対象であるアイソレータ5には、滅菌処理を行うための装置を設ける必要がないため、複数のアイソレータ5等の供給対象に、安全性を維持したまま、必要なときに必要なだけ、無菌液化ガスを供給することが容易に可能となる。
【0156】
なお、本実施形態において、滅菌ガスを取り合い管19に供給する装置として、液化ガス製造においてガス滅菌を行う滅菌装置16を用いている。即ち、滅菌装置16は、第1実施形態における滅菌領域Sに滅菌ガスを供給する機能と、取り合い管19に滅菌ガスを供給する機能とを兼ね備えている。本実施形態では、滅菌装置16とは別に設けられた滅菌装置が滅菌ガスを取り合い管19に供給する構成が採用されてもよい。
【0157】
また、本実施形態において、冷却装置13には、固定された電源13dから電力が供給されている。この構成に限定されず、この電源13dを台車15aに載置してもよい。即ち、大容量給電が可能な可搬電源を台車15aに載置することもできる。
【0158】
以下、本発明の第4実施形態に係る無菌液化ガス装置を、図面に基づいて説明する。
図7は、本実施形態における菌液化ガス装置を示す模式図である。
本実施形態は、可搬装置の構成に関する点で、上述した第1〜第3実施形態と異なる。
図7において、第1〜第3実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0159】
本実施形態に係る無菌液化ガス装置10においては、
図7に示すように、原料ガス供給装置12が電源13dと同様に固定した状態で配置されている。さらに、供給配管14において、原料ガス供給装置12とバルブ14aとの間に、バルブ12aおよびクランプ12bが設けられている。
【0160】
クランプ12bの構成としては、クランプ19c,19dと同様の構成が採用されている。供給配管14と原料ガス供給装置12とを接続・切り離し可能とされている。同様に、バルブ12aの構成としては、バルブ18aと同様の構成が採用されている。供給配管14と原料ガス供給装置12とを接続・切り離し可能とされている。また、クランプ12bには接続センサが設けられており、接続状態であることを検知して、その信号を制御部15uに出力可能とされている。
【0161】
なお、原料ガス供給装置12を液化ガス貯留タンク11に対して切り離し・接続する場合には、前述した第2および第3実施形態と同様に、クランプ12bの付近の位置に、取り合い管19と同等の滅菌可能な構成を配置することもできる。
【0162】
本実施形態においては、液化ガス製造を行う場合には、固定した状態で配置された原料ガス供給装置12の近傍の位置(液化ガス製造位置)において液化ガス製造を行う。製造された液化ガスをアイソレータ5等に供給する場合には、アイソレータ5の近傍の位置(液化ガス供給位置)に無菌液化ガス装置10を移動して、アイソレータ5に無菌液化ガス装置10を接続することができる。しかも、電源13dおよび原料ガス供給装置12を固定した状態で配置し、台車15aに電源13dおよび原料ガス供給装置12が載置しない構成であるので、可搬な無菌液化ガス装置10の省スペース化、軽量化をより一層図ることが可能となる。
【0163】
なお、上記の各実施形態において、可搬な無菌液化ガス装置10の省スペース化、軽量化のために、台車15aに載置されない装置や部材を適宜選択することができる。
【0164】
また、第1実施形態における完全性試験工程S21は、滅菌処理が行われた後、液化ガス製造処理が実施されたか、未実施であるか、にかかわらず、所定の期間をあけて、フィルタ14d,18bの検査を定期的に行って、無菌状態を維持することが好ましい。第2〜第4実施形態においては、この完全性試験工程S21に関する説明を記載していないが、適宜、実施することが好ましい。
【0165】
本発明の好ましい実施形態を説明し、上記で説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、請求の範囲によって制限されている。
本発明の無菌液化ガス装置は、液化ガス貯留タンクと、前記液化ガス貯留タンクに原料ガスを供給する原料ガス供給装置と、前記液化ガス貯留タンク内を冷却して前記原料ガスを液化する冷却装置と、前記原料ガス供給装置と前記液化ガス貯留タンクとを接続する供給配管と、前記供給配管に設けられる滅菌フィルタと、前記滅菌フィルタよりも下流部分に位置する滅菌領域を滅菌ガスにより滅菌する滅菌装置と、滅菌後に前記滅菌ガスを除去する滅菌ガス除去装置と、を有する。