【文献】
菊地 幸大、他,スーパーハイビジョン圧縮記録技術,2014年映像情報メディア学会年次大会,日本,一般社団法人映像情報メディア学会,2014年 9月 2日,16−6
【文献】
Yoshiaki Shishikui, et al.,High-Performance Video Codec for Super Hi-Vision,Proceedings of the IEEE,米国,IEEE,2013年 1月31日,Vol.101, No.1,pp130〜139,IEEE Xplore,URL,https://ieeexplore.ieee.org/document/6265335/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、デモザイキングを行う手法では、精度良く不足画素の推定を行うために複雑な計算が必要となり、ハードウェアの負荷が大きくなる。さらに、画素数が3倍になるため、圧縮前のデータ量が増大してしまう。
【0008】
また、画素分割を行う手法では、空間的に連続した相関関係の強いG1及びG2の2つのG信号を空間的に分割して、別々に符号化を行うため、分割画像の境界部において、隣接画素との連続性が失われてしまい、圧縮効率の低下や、圧縮ひずみが生じる等の課題があった。また、この手法を映像記録装置に用いた場合、単一のフレーム画像を複数の記録データに分割して記録するため、複数の記録媒体、又は複数の記録領域への記録が必要となり、記録媒体の管理や、記録データの閲覧、バックアップといった作業が煩雑になってしまう。さらに、このような映像記録装置で記録したDG信号を再生する際、分割されたそれぞれの記録データを並列して読み出すためのタイミング同期回路が必要となるため、装置構成が複雑になるという課題もあった。
【0009】
本発明は、高精細映像信号を効率的に符号化できる映像圧縮装置、映像圧縮方法及び映像圧縮プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る映像圧縮装置は、Bayer配列のサンプリング構造を持つデュアルグリーン方式の単一フレーム画像について、色成分毎に画素を分割する画素分割部と、前記画素分割部により分割された第1の色成分の画像を、当該画像の各画素を幾何学的規則に従って変換した画像と合成することにより補間する画素補間部と、補間後の前記第1の色成分、並びに前記画素分割部により分割された第2及び第3の色成分をパッケージした処理単位毎に、所定の圧縮方式により符号化を行う符号化部と、を備える。
【0011】
この構成によれば、映像圧縮装置は、Bayer配列のフレーム画像のうち、第1の色成分(G信号)について、幾何学的特徴を持つ補間処理を行うことにより、フル解像度のG信号を生成する。また、映像圧縮装置は、このような補間処理を用いて得られた信号について、所定の圧縮方式で規定されている処理単位にパッケージ化して圧縮符号化を行う。
したがって、映像圧縮装置は、高精細映像信号を既存の符号化方式を用いて圧縮できるため、符号化ハードウェアのコストを抑えることができる。また、映像圧縮装置は、フレーム画像を、空間的に複数の画像に分割することなく、画像の連続性を保ちつつ圧縮を行えるため、圧縮ひずみを抑えられる。さらに、映像圧縮装置は、幾何学的特徴を有する画素の補間手法を採用したことにより、空間周波数変換後の2次元ヒストグラムを、ある特定の成分(u軸方向、v軸方向又は対角方向)に離散させることができるため、エントロピー符号化による圧縮効率が向上し、高精細映像信号を効率的に符号化できる。
【0012】
前記映像圧縮装置は、前記単一フレーム画像を、前記処理単位に適合するブロックに分割するブロック化部を備え、前記画素補間部は、前記ブロック毎に補間処理を行ってもよい。
【0013】
この構成によれば、映像圧縮装置は、符号化方式の処理ブロック単位に分割し、このブロック毎に補間処理を行うので、規定の符号化方式に適合した補間処理によって符号化効率を向上できる。
【0014】
前記画素補間部は、前記第1の色成分の画像を、当該画像の各画素を水平方向に反転させた画像と合成することにより補間してもよい。
【0015】
この構成によれば、映像圧縮装置は、水平方向に反転する画像変換によって、補間処理後の幾何学的特徴を容易に作り出し、符号化効率を向上できる。
【0016】
前記画素補間部は、前記第1の色成分の画像を、当該画像の各画素を垂直方向に反転させた画像と合成することにより補間してもよい。
【0017】
この構成によれば、映像圧縮装置は、垂直方向に反転する画像変換によって、補間処理後の幾何学的特徴を容易に作り出し、符号化効率を向上できる。
【0018】
前記画素補間部は、前記第1の色成分の画像を、当該画像の各画素を中心点の周りに90度回転させた画像と合成することにより補間してもよい。
【0019】
この構成によれば、映像圧縮装置は、90度回転する画像変換によって、補間処理後の幾何学的特徴を容易に作り出し、符号化効率を向上できる。
【0020】
本発明に係る映像再生装置は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の映像圧縮装置において、前記所定の圧縮方式により符号化された映像データを復号する復号部と、前記復号部により復号された画像データについて、前記第1、第2及び第3の色成分を分離する色成分分離部と、前記色成分分離部により分離された前記第1の色成分の画像のうち、前記画素補間部により補間された画素を間引く画素間引部と、前記第1、第2及び第3の色成分の画素を合成する画素合成部と、を備える。
【0021】
この構成によれば、映像再生装置は、映像圧縮装置により圧縮された高精細映像信号を、補間された画素を間引くことにより容易に復元できる。また、映像信号の記録データが複数に分割されないため、映像再生装置は、複数の記録媒体又は複数の記録領域を並列して読み出すためのタイミング同期回路が不要となり、装置構成を単純化できる。
【0022】
本発明に係る映像圧縮方法は、コンピュータの制御部が、Bayer配列のサンプリング構造を持つデュアルグリーン方式の単一フレーム画像について、色成分毎に画素を分割する画素分割ステップと、前記画素分割ステップにおいて分割された第1の色成分の画像を、当該画像の各画素を幾何学的規則に従って変換した画像と合成することにより補間する画素補間ステップと、補間後の前記第1の色成分、並びに前記画素分割ステップにおいて分割された第2及び第3の色成分をパッケージした処理単位毎に、所定の圧縮方式により符号化を行う符号化ステップと、を実行する。
【0023】
本発明に係る映像圧縮プログラムは、コンピュータの制御部に、Bayer配列のサンプリング構造を持つデュアルグリーン方式の単一フレーム画像について、色成分毎に画素を分割する画素分割ステップと、前記画素分割ステップにおいて分割された第1の色成分の画像を、当該画像の各画素を幾何学的規則に従って変換した画像と合成することにより補間する画素補間ステップと、補間後の前記第1の色成分、並びに前記画素分割ステップにおいて分割された第2及び第3の色成分をパッケージした処理単位毎に、所定の圧縮方式により符号化を行う符号化ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高精細映像信号を効率的に符号化できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、符号化技術としてJPEGを用いた場合を例に説明するが、本発明は、その他の空間周波数変換を用いた符号化技術に対しても、同様に適用できる。
【0027】
図1は、本実施形態に係る映像記録再生装置1(映像圧縮装置、映像再生装置)の機能構成を示す図である。
映像記録再生装置1は、入力部11と、前処理部12と、符号化部13と、記録部14と、記録媒体15と、復号部16と、後処理部17と、出力部18とを備える。
【0028】
入力部11は、外部装置からDG信号を取得する。
外部装置は、DG信号インターフェースを持つスーパーハイビジョン単板カメラ及び4板式カメラの他、CCU(Camera Control Unit)、レコーダ、スイッチャ等の映像機器が挙げられる。この他、外部装置は、4Kシネマカメラ又はデジタルスチルカメラ等の高精細撮像素子において、DG信号と同様の画素配列が用いられたRAW信号出力を持つものであってもよい。この場合、入力部11は、入力された信号のフォーマットを判別し、前処理部12に最適な処理方法を選択させる。
【0029】
前処理部12は、入力されたDG信号から、符号化部13で用いられる符号化技術(例えば、JPEG)の処理単位である規定のサンプリング構造を持つ画像データを構成する。
【0030】
図2は、本実施形態に係る前処理部12の機能構成を示す図である。
前処理部12は、ブロック化部121と、画素分割部122と、画素補間部123と、再配置部124と、パッケージ化部125とを備える。
【0031】
ブロック化部121は、入力されたDG信号を、所定サイズのブロック(例えば、JPEGの場合、8×8ピクセル)毎にバッファし、符号化技術(例えば、JPEG)の処理単位を構成する回路である。
なお、符号化技術の処理単位が4×4、16×16、32×32等の場合、又は4×8、8×16等の様に長方形の場合には、ブロック化部121は、これらの処理単位に合わせて、ブロック化を行う。
【0032】
画素分割部122は、DG信号をR、G、Bのそれぞれに分割する回路であり、分割したG(G1及びG2)の画像データを画素補間部123に、Bの画像データ及びRの画像データを再配置部124に、それぞれ入力する。
【0033】
図3は、本実施形態に係る画素分割部122によりDG信号の単一フレーム画像が分割される様子を示す図である。
Bayer配列に配置されたR、G1、G2、Bの各画素は、G1及びG2からなる欠落画素を含む画像データ、Rのみからなる欠落画素を含む画像データ、及びBのみからなる欠落画素を含む画像データに分割される。
【0034】
画素補間部123は、画素分割部122により分割されたG成分(第1の色成分)の画像を、この画像の各画素を幾何学的規則に従って変換した画像と合成することにより補間して、欠落画素のない画像データを生成する回路である。
幾何学的規則は、例えば、以下の3つのパターンが採用される。
【0035】
図4は、本実施形態に係る画素補間処理の第1パターンを例示する図である。
この例では、画素補間部123は、DG信号のG1及びG2をブロック(8×8ピクセル)毎に水平方向に反転させ、G1及びG2以外の不足領域の補間値として挿入することで、8×8の欠落画素のないG信号に変換している。
【0036】
このようにして得られたG信号は、8×8のブロック単位で、水平方向に幾何学的対称性を持つため、DCTにより得られるDCT係数は、垂直方向に離散的となり、後段におけるエントロピー符号化により、効率的な圧縮が可能となる。
【0037】
図5は、本実施形態に係る画素補間処理の第2パターンを例示する図である。
この例では、画素補間部123は、DG信号のG1及びG2をブロック(8×8ピクセル)毎に垂直方向に反転させ、G1及びG2以外の不足領域の補間値として挿入することで、8×8の欠落画素のないG信号に変換している。
【0038】
このようにして得られたG信号は、8×8のブロック単位で、垂直方向に幾何学的対称性を持つため、DCTにより得られるDCT係数は、水平方向に離散的となり、後段におけるエントロピー符号化により、効率的な圧縮が可能となる。
【0039】
図6は、本実施形態に係る画素補間処理の第3パターンを例示する図である。
この例では、画素補間部123は、DG信号のG1及びG2をブロック(8×8ピクセル)毎に中心点を軸に90度、時計方向又は反時計方向に回転させ、G1及びG2以外の不足領域の補間値として挿入することで、8×8の欠落画素のないG信号に変換している。
【0040】
このようにして得られたG信号は、8×8のブロック単位で、対角線方向に幾何学的特徴を持つため、DCTにより得られるDCT係数は、対角線方向に離散的となり、後段におけるエントロピー符号化により、効率的な圧縮が可能となる。
【0041】
図7は、本実施形態に係る画素補間を行った場合のDCT係数を例示する図である。
(a)は、8×8ピクセルの元画像に対してDCTを行った場合のDCT係数である。この場合、低周波領域に大きな値が集中し、高周波領域の値が小さくなっている。
【0042】
(b)は、(a)と同一の元画像のG1及びG2信号をサンプリングした後、第1パターン(
図4)の画素補間処理を行った場合のDCT係数である。この場合、v軸に平行な方向に離散的に係数値が生成され、u軸方向には、0以外を含む列と0の列とが交互に現れる。
【0043】
(c)は、(a)と同一の元画像のG1及びG2信号をサンプリングした後、第2パターン(
図5)の画素補間処理を行った場合のDCT係数である。この場合、u軸に平行な方向に離散的に係数値が生成され、v軸方向には、0以外を含む行と0の行とが交互に現れる。
【0044】
(d)は、(a)と同一の元画像のG1及びG2信号をサンプリングした後、第3パターン(
図6)の画素補間処理を行った場合のDCT係数である。この場合、対角線上に離散的に係数値が生成される。また、u軸方向及びv軸方向のいずれにも、0と0以外を含む値とが交互に現れ、対角方向に0の列が現れる。
【0045】
これら(b)〜(d)のように0が規則的に現れる場合、エントロピー符号化に有利となり、符号化の効率が向上する。
【0046】
なお、
図4〜
図6に示した画素補間部123の補間処理は、変換行列フィルタを用いてハードウェア上で処理されてよい。これにより、複雑な計算をすることなく画素補間が実現できる。また、画素補間部123は、ソフトウェア処理により、画素補間を実現してもよい。
【0047】
再配置部124は、画素分割部122により分割されたR成分(第2の色成分)及びB(第3の色成分)それぞれの画像を、欠落画素を間引いた構造に再配置する。
【0048】
図8は、本実施形態に係る再配置処理を例示する図である。
この例では、再配置部124は、DG信号における8×8のブロックについて、R成分及びB成分をそれぞれ4×4に再配置している。
【0049】
パッケージ化部125は、画素補間部123によって得られたG信号、及び再配置部124によって得られたR信号及びB信号を、MCU(Minimum Coded Unit)単位でパッケージし、符号化部13に供給する。
【0050】
図9は、本実施形態に係るパッケージ化処理を例示する図である。
この例では、8×8ピクセルのG信号4ブロック(計16×16ピクセル)と、4×4ピクセルのR及びB信号のそれぞれ4ブロック(計8×8ピクセル)とをパッケージ化し、4:2:0サンプリング構造のMCUとして扱う場合を示している。
【0051】
以上の説明は、前処理部12の基本的な機能構成であるが、この他に、ブロック化部121の前段には、ノイズ除去回路や、色補正回路、YUV変換等の色空間変換回路等が設けられてもよい。
【0052】
図1に戻り、符号化部13は、前処理部12より供給されたMCUについて、所定の圧縮方式を用いた符号化によりデータ量の圧縮を行う。このとき、前処理部12においてG信号は、離散的な2次元ヒストグラムを持つ構造に変換されたため、エントロピー符号化の圧縮効率を向上させることができる。
特に、符号化方式がJPEGの場合、符号化部13は、DCT係数をジグザグスキャンしハフマン符号化を行う。本実施形態においては、スキャン後のシリアルデータは、連続的に0になったり、交互に0と整数とが繰り返されたりするため、符号化部13は、最適なハフマンテーブルを選択することで、圧縮効率を高めることができる。
【0053】
記録部14は、符号化部13により符号化されたデータを、連番ファイル又は動画ファイルへの変換、MXF(Material eXchange Format)等のコンテナフォーマットへのラッピングを行い、記録媒体15へ記録する。
また、映像再生時には、記録部14は、記録媒体15から符号化された記録データを読み出し、復号部16へ供給する。
さらに、記録部14には、ユーザが操作パネル等から記録データの順序入れ替え又は消去等の操作を行った結果を、記録媒体15に反映させる機能が設けられてもよい。
【0054】
記録媒体15は、SSD(Solid−State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、磁気テープ等、高速転送が可能なデバイスを用いて構成される。記録媒体15は、容量増加、転送速度増大、及び信頼性向上等のために、RAID構成による並列記録を行ってもよい。この場合、RAID制御は、記録部14により行われるのが好ましい。
【0055】
復号部16は、記録部14より供給された符号化データを復号し、復号した画像データを後処理部17へ供給する。
【0056】
後処理部17は、復号部16により復号された画像データを変換し、映像記録再生装置1に入力されたDG信号を復元する。
【0057】
図10は、本実施形態に係る後処理部17の機能構成を示す図である。
後処理部17は、パッケージ分割部171と、色成分分離部172と、画素間引部173と、再配置部174と、画素合成部175とを備える。
【0058】
パッケージ分割部171は、復号部16より供給された信号を、MCU単位、さらにはブロック(8×8ピクセル)に分割し、色成分分離部172に供給する回路である。
【0059】
色成分分離部172は、ブロック内のR、G、Bの各色成分を分離する回路であり、分離したG成分を画素間引部173に、B成分及びR成分を再配置部174に、それぞれ入力する。
【0060】
画素間引部173は、色成分分離部172により分離されたG成分(第1の色成分)の画像データのうち、画素補間部123により補間された画素を間引き、元画像のG1及びG2成分のみを取り出す回路である。
【0061】
再配置部174は、色成分分離部172により分離されたR成分(第2の色成分)及びB成分(第3の色成分)それぞれの画像の画素を、G成分の欠落画素位置へ再配置する回路である。
【0062】
画素合成部175は、画素間引部173から出力されたG1成分及びG2成分と、再配置部174から出力されたR成分及びB成分と合成することで、DG信号を生成する回路である。
【0063】
図11は、本実施形態に係る画素間引部173、再配置部174及び画素合成部175によってDG信号が復元される様子を示す図である。
このように、G成分から半分の画素が間引かれたG1及びG2の画像データと、R成分及びB成分をG1及びG2の隙間に再配置した画像データとが合成され、欠落画素のないDG信号が生成される。
【0064】
出力部18は、後処理部17より得られたDG信号を、外部装置に出力する。外部装置とは、DG信号インターフェースを持つスーパーハイビジョンモニタの他、カラーグレーディング装置又は伝送装置等の映像処理装置であってもよい。
【0065】
本実施形態によれば、映像記録再生装置1は、DG信号のBayer配列のフレーム画像のうち、G信号について、幾何学的特徴を持つ補間処理を行うことにより、フル解像度のG信号を生成する。また、映像記録再生装置1は、このような補間処理を用いて得られた信号について、サンプリング構造が4:2:0のフォーマットの既存の符号化方式による圧縮符号化を行う。
【0066】
したがって、映像記録再生装置1は、DG信号を既存の符号化方式を用いて圧縮できるため、符号化ハードウェアのコストを抑えることができる。また、映像記録再生装置1は、DG信号のフレーム画像を、空間的に複数の画像に分割することなく、画像の連続性を保ちつつ圧縮を行えるため、圧縮ひずみを抑えられる。さらに、映像記録再生装置1は、幾何学的特徴を有する画素の補間手法を採用したことにより、空間周波数変換後の2次元ヒストグラムを、ある特定の成分(u軸方向、v軸方向又は対角方向)に離散させることができるため、エントロピー符号化による圧縮効率が向上し、高精細映像信号を効率的に符号化できる。
【0067】
このとき、映像記録再生装置1は、符号化方式の処理ブロック単位に分割し、このブロック毎に補間処理を行うので、規定の符号化方式に適合した補間処理によって符号化効率を向上できる。
【0068】
また、映像記録再生装置1は、水平方向に反転、垂直方向に反転、又は90度回転といった画像変換によって、補間処理後の幾何学的特徴を容易に作り出し、符号化効率を向上できる。
【0069】
また、映像記録再生装置1が圧縮した画像を記録する場合、記録データが複数に分割されないため、記録媒体の管理や、記録データの閲覧、バックアップといった作業が容易になる。また、記録データの再生時は、複数の記録媒体又は複数の記録領域を並列して読み出すためのタイミング同期回路が不要となるため、映像記録再生装置1の装置構成を単純化できる。
【0070】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0071】
図12は、本実施形態に係る映像圧縮伝送システム2の機能構成を示す図である。
映像圧縮伝送システム2は、伝送装置2a(映像圧縮装置)から受信装置2b(映像再生装置)へ、伝送路3を介してDG信号を伝送する。
【0072】
伝送装置2aは、入力部11と、前処理部12と、符号化部13と、変調部21と、伝送部22とを備える。
受信装置2bは、受信部23と、復調部24と、復号部16と、後処理部17と、出力部18とを備える。
ここで、入力部11、前処理部12、符号化部13、復号部16、後処理部17、及び出力部18は、第1実施形態の映像記録再生装置1(
図1)と同様の構成でよい。
【0073】
変調部21は、圧縮された符号化データを、伝送路3に適合した伝送用の信号に変換する。
伝送部22は、伝送用の信号を物理信号として伝送路3に送出する。
伝送路3は、電気通信路、光ファイバ、導波管、又は自由空間における搬送波等であってよい。
【0074】
受信部23は、伝送された信号を受信する。
復調部24は、受信した伝送用の信号を、符号化データへと戻す。
【0075】
本実施形態によれば、映像圧縮伝送システム2は、高精細な映像信号を効率的に符号化できるので、限られた伝送帯域でも、高画質に映像を伝送できる。
【0076】
[実施例]
以下、前述の実施形態の効果を示すために行ったシミュレーションの手順及び結果を示す。
この例では、記録再生の対象となるテスト画像に、フルカラーのハイビジョン画像(解像度1920×1080)を用いたが、スーパーハイビジョン画像、又は他の高精細画像が入力された場合にも同様の結果が期待できる。
【0077】
図13は、本実施形態に係るシミュレーションにより得られたPSNR(ピーク信号対雑音比)とG信号の圧縮後のファイルサイズとの関係を示す図である。
【0078】
ここで、グラフにおけるDCT局所化1及びDCT局所化2は、実施形態の圧縮手法による結果を示し、以下の手順によりシミュレーションを行ったものである。
(手順1)テスト画像をBayer配列にサブサンプリングする。
(手順2)(1)で得られた画像のうち、G信号について、8×8ブロック単位で、第1パターン(
図4)及び第3パターン(
図6)の手法により画素補間を行う。
(手順3)画素補間したG信号をJPEGにより圧縮符号化する。
(手順4)(3)で符号化されたG信号のファイルサイズを測定する。
(手順5)符号化された信号を復号する。
(手順6)(5)で得られた画像を、Bayer配列にサブサンプリングする。
(手順7)(1)と(6)とで得られたG信号について、PSNRを計算する。
【0079】
また、上記手法の比較対象として、以下の手順によるシミュレーション結果を、従来手法として示している。
(手順1)テスト画像をBayer配列にサブサンプリングする。
(手順2)(1)で得られた画像を、G1,G2,R,Bの4つの低解像度画像に分割する。
(手順3)(2)で得られた画像のG1及びG2信号を、それぞれ別々にJPEGにより圧縮符号化する。
(手順4)(3)で符号化されたG1及びG2信号のファイルサイズを測定する。
(手順5)符号化された信号を復号する。
(手順6)(1)と(5)とで得られたG信号について、PSNRを計算する。
【0080】
上記シミュレーションでは、JPEGのエンコードソフトとして、IJG(Independent JPEG Group)が提供する標準プログラム(cjpeg/djpag)を使用した。特に、ハフマン符号化用のテーブル生成は、cjpegのoptimizeスイッチを用いて、最適化を行った。
【0081】
実施形態の手法を用いた場合、PSNRがいずれも従来手法と比較して約2dB程度改善されている。実施形態の手法では、非圧縮のG信号のファイルサイズは2025KBであり、従来方式の1012.5KBよりも増加させていることを考慮すると、実施形態の手法は、従来手法よりも高圧縮であるにも関わらず、画質が優れていることが分かる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0083】
符号化方式に用いる周波数変換としては、DCT以外に、離散サイン変換(DST)、アダマール変換、ウェーブレット変換、その他の空間周波数変換を行うものに、広く応用が可能である。
また、本発明には、幾何学的対称性を持つような補間処理以外にも、公知の補間方法を用いることが可能である。その際、複数の補間方法をユーザが切り替え可能であってもよい。
【0084】
前述の実施形態では、映像の記録機能及び再生機能の双方を備えた映像記録再生装置1を説明したが、これには限られない。
例えば、復号部16、後処理部17及び出力部18は、別の再生装置として分離されてもよい。また、記録部14及び記録媒体15が別の装置として分離されてもよい。
【0085】
本実施形態では、主に映像記録再生装置の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限られず、各構成要素を備え、映像を記録及び再生するための方法、又はプログラムとして構成されてもよい。
【0086】
さらに、映像記録再生装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0087】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0088】
さらに「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。