特許第6461182号(P6461182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6461182-微粒子ポリマーの乾燥方法 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461182
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】微粒子ポリマーの乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20190121BHJP
   C08J 3/14 20060101ALI20190121BHJP
   F26B 5/14 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCEZ
   C08J3/14CEZ
   F26B5/14
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-553432(P2016-553432)
(86)(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公表番号】特表2017-507214(P2017-507214A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】EP2015053195
(87)【国際公開番号】WO2015124521
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年2月16日
(31)【優先権主張番号】14155815.5
(32)【優先日】2014年2月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェアク エアベス
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート ランゲ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス コアテカンプ
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート リナー
(72)【発明者】
【氏名】セシル シュネデール
(72)【発明者】
【氏名】アンゲラ ウルツヘーファー
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クレメンス ミュラー
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−524019(JP,A)
【文献】 特開昭55−053619(JP,A)
【文献】 特開昭51−037199(JP,A)
【文献】 特開平01−158042(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/022591(WO,A1)
【文献】 特開2010−33830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
99/00
F26B 1/00−25/22
C08G75/00−75/32
79/00−79/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子ポリマーを乾燥させる方法であって、以下の工程:
a)微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)を60質量%〜90質量%含有する微粒子ポリマーを準備すること、
b)微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)が20質量%〜50質量%になるように微粒子ポリマーを機械で予備乾燥させ、ここで工程b)における機械による予備乾燥をローラプレス機で実施すること、及び
c)微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)が0質量%〜15質量%になるように微粒子ポリマーを最終乾燥させ、ここで微粒子ポリマーが、以下の式(I)、(II)及び/又は(III):
【化1】
【化2】
【化3】
の繰り返し単位を含有するポリマーであること、
を含む前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、工程c)における最終乾燥を流動層乾燥機で実施する、前記方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、溶剤(L1)が水である、前記方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法であって、工程a)における微粒子ポリマーが0.5mm〜7mmの粒径を有する、前記方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法であって、機械で予備乾燥された微粒子ポリマーが、工程b)の後であって工程c)の前に粉砕される、前記方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法であって、工程c)の後の微粒子ポリマーが0.5mm〜7mmの粒径を有する、前記方法。
【請求項7】
微粒子ポリマーを後処理する方法であって、以下の工程:
i)ポリマー及び第一の有機溶剤(L2)を含有するポリマー溶液を用意すること、
ii)第二の有機溶剤(L3)及び水を含有する沈殿槽へとポリマー溶液を液滴化して、沈殿によって微粒子ポリマーを得ること、
iii)沈殿槽から沈殿した微粒子ポリマーを分離すること、
iv)抽出剤を用いて、微粒子ポリマーから、第一の及び/又は第二の有機溶剤(L2、L3)の残分を抽出すること、
v)請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法で、微粒子ポリマーを乾燥させること、及び
vi)任意に微粒子ポリマーの仕上げをすること、
を含む前記方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、第一の及び/又は第二の有機溶剤(L2、L3)がN−メチルピロリドンである、前記方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法であって、微粒子ポリマーがポリエーテルスルホンである、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子ポリマーを乾燥させる方法、並びに微粒子ポリマーを後処理する方法に関する。
【0002】
当分野に適した方法は、基本的に従来技術から公知である。ここでは、抽出方法を用いて、製造したばかりの微粒子ポリマーから副生成物及び不純物を除去する、又は少なくともその含分を著しく低減させる。これについての例は、クロスフロー・カウンターフロー(横流・向流)の原理で稼動する固液抽出装置がある。ここでは、微粒子ポリマーが、円形に配置された空間において工程ごとに時計回りで移動させられ、微粒子ポリマーの充填物に連続的に抽出液が降り注がれる。目的は、微粒子ポリマーの製造から、副生成物、不純物、及び溶剤を除去すること、及び/又はそれらを水のような容易に除去可能な溶剤と交換することである。残留水は、従来の熱乾燥装置で、所定の残留含分まで除去される。
【0003】
殊に、熱乾燥装置を稼動させる際に生じる高いエネルギーコストは、従来技術の方法において不利である。とりわけ、微粒子ポリマーのほぼ完全な乾燥は、流動層乾燥機(流動床乾燥機)のようなエネルギー消費の激しい熱乾燥装置でしか達成されない。
【0004】
よって、本発明の課題は、エネルギー消費がより少なく、そのうえ同等又はより良好な乾燥結果が得られる、微粒子ポリマーの改善された乾燥方法を提供することである。
【0005】
本発明のこの課題は、第一の態様において、以下の工程:
a)微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)を60質量%〜90質量%含有する微粒子ポリマーを準備すること、
b)微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)が20質量%〜50質量%になるように微粒子ポリマーを機械で予備乾燥させること、及び
c)微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)が0質量%〜15質量%になるように微粒子ポリマーを最終乾燥させること、
を含む方法によって解決される。
【0006】
上記に挙げられたこの課題は、殊に、以下の工程:
a)微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)を60質量%〜90質量%含有する微粒子ポリマーを準備すること、
b)微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)が20質量%〜50質量%になるように微粒子ポリマーを機械で予備乾燥させ、ここで工程b)における機械による予備乾燥をローラプレス機で実施すること、及び
c)微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)が0質量%〜15質量%になるように微粒子ポリマーを最終乾燥させ、ここで微粒子ポリマーが、以下の式(I)、(II)及び/又は(III):
【化1】
【化2】
【化3】
の繰り返し単位を含有するポリマーであること、
を含む、微粒子ポリマーの乾燥方法によって解決される。
【0007】
本発明の第二の態様において、先に挙げられた課題は、以下の工程:
i)ポリマー及び第一の有機溶剤(L2)を含有するポリマー溶液を用意すること、
ii)第二の有機溶剤(L3)及び水を含有する沈殿槽へとポリマー溶液を液滴化して、沈殿によって微粒子ポリマーを得ること、
iii)沈殿槽から沈殿した微粒子ポリマーを分離すること、
iv)抽出剤を用いて、微粒子ポリマーから、第一の及び/又は第二の有機溶剤(L2、L3)の残分を抽出すること、
v)特許請求の範囲に記載の方法で、微粒子ポリマーを乾燥させること、及び
vi)任意に微粒子ポリマーの仕上げをすること、
を含む微粒子ポリマーの後処理方法によって解決される。
【0008】
本発明は、微粒子ポリマーの乾燥のためのエネルギーコストを50%以上低減できるという重要な利点を有する。同時に、設備技術に必要な投資も半分以下にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による微粒子ポリマーの乾燥方法によって、本発明による後処理をする方法の概略図を示す。
【0010】
下記に本発明を詳細に記載する。
本発明の第一の態様は、微粒子ポリマーを乾燥させる方法に関する。この方法には、まず、工程a)である、微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)を60質量%〜90質量%含有する微粒子ポリマーを準備することが含まれる。工程b)では、微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)が20質量%〜50質量%になるように微粒子ポリマーを機械で予備乾燥させることが行われる。工程c)では、微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)が0質量%〜15質量%になるように微粒子ポリマーを最終乾燥させることが行われる。
【0011】
本発明による方法は、微粒子ポリマーの乾燥のためのエネルギーコストを50%以上低減できるという利点を有する一方で、得られる生成物が、従来技術による乾燥方法から得られる同等の製品と少なくとも同じ品質を示す。同時に、設備技術に必要な投資も半分以下にすることができる。
【0012】
「微粒子ポリマー」とは、実質的に、溶液として又は液状で存在しているのではなく、その粒子が別々に区別可能である、あらゆるポリマーとして理解される。その場合、ポリマー粒子は、細かく分散した状態でも、凝集した状態でも存在することができる。典型的な粒度(粒径)は、0.5〜7mmの範囲にある。
【0013】
「乾燥」という言葉は、微粒子ポリマー中に存在する、又はその中に閉じ込められている液体溶剤(L1)を除去することを意味する。
【0014】
微粒子ポリマーは、一般に、溶剤(L1)を含有する開放気孔を有する。方法工程a)、b)、c)では、溶剤(L1)をこれらの気孔から除去する。
【0015】
微粒子ポリマーの最終乾燥は、検出限界の範囲で、溶剤(L1)が完全に除去されるまで、つまり、ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、0質量%になるまで実施され得る。
【0016】
本発明によれば、方法工程c)において、微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)が、0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、特に好ましくは0〜2質量%、及び殊に0〜1質量%になるように微粒子ポリマーを最終乾燥させることが好ましい。
【0017】
しかしながら、微粒子ポリマー中の又は微粒子ポリマーに接する溶剤(L1)の僅かな残留含分を残すことは、技術的に意義深いことであり得る。なぜならば、完全な乾燥は、もはや技術的効果が示されず、ただ単にエネルギーコストを上昇させるだけだからである。よって、本発明の範囲において、それぞれ微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)が、0.01質量%〜15質量%、好ましくは0.01質量%〜5質量%、特に好ましくは0.01質量%〜2質量%、及び殊に0.01質量%〜1質量%になるように微粒子ポリマーの最終乾燥を実施することが可能である。
【0018】
本発明による方法によって、従来技術と少なくとも同等に良好な微粒子ポリマーの乾燥が達成されるにも拘わらず、方法工程a)、b)、及びc)を組み合わせることで、消費エネルギーの低減が少なくとも50%達成される。好ましくは、エネルギー低減が、70%、殊に好ましくは少なくとも80%である。
【0019】
本発明の有利なさらなる形態において、工程b)における、機械による予備乾燥を、ローラプレス機(カレンダー機とも称する)で実施する。
【0020】
その際、ローラ直径は、作業幅が100mm〜1200mmの場合、200mm〜400mmである。プレス圧力は、ローラ長さ1cmあたり、0.5t〜5tにある。これによって、有利な手法で、工程b)における、微粒子ポリマーの機械による予備乾燥を行い、微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)を20質量%〜50質量%に低減することが可能となる。
【0021】
有利には、本発明による方法の工程c)における最終乾燥を、流動層乾燥機(流動床乾燥機)によって実施する。流動層乾燥機によって、微粒子ポリマーの最終乾燥を行い、溶剤(L1)がほぼ完全になくなるまで低減させることができる。流動層乾燥機は、エネルギー消費が激しい装置であるにも拘わらず、所望の乾燥度を達成するために、非常に効率の良い選択肢となる。
【0022】
溶剤(L1)は、ただ1種の溶剤であり得るか、又は2種以上の溶剤の混合物であり得る。好ましくは、溶剤(L1)は、溶剤(L1)の合計質量を基準として、少なくとも80質量%、特に好ましくは少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、及び殊に好ましくは少なくとも99質量%の水を含む。
【0023】
乾燥方法について、溶剤(L1)が水である場合に有利であると判明した。水は、実質的に危険を伴うことなく取り扱われ、本発明による方法において容易に除去されるという利点がある。したがって、溶剤としての水が流出するのを防ぐために、工程b)において、機械による予備乾燥のための装置を覆う必要はない。さらに、水は、工程b)における、機械による予備乾燥によって、良好に所望の溶剤含分へと低減され、最終乾燥において効率良く除去できる。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態では、工程a)における微粒子ポリマーは、0.5〜7mmの直径を有する粒子の形で存在する。特に好ましくは、ポリマー球体の直径が、2〜6mmにある。より小さな粒度(粒径)の場合、機械による予備乾燥(方法工程b))のために、著しくより大きな力、そしてそれゆえにより大きなエネルギーが消費されなくてはならないだろう。他方で、粒度がより大きい場合、もはや機械による予備乾燥を効率良く実施することはできない。
【0025】
機械で予備乾燥させた微粒子ポリマーを、工程b)の後であって工程c)の前に粉砕すると、最終乾燥工程のために有利であると証明された。微粒子ポリマーを機械で予備乾燥(方法工程b)する際に、これを強く圧縮すると、それは大きな凝集体又は一種の圧縮物の塊で存在するようになる。工程c)で予定されている最終乾燥の効率を上げるために、この凝集体又は塊を粉砕する。粉砕は、殊に、微粒子ポリマーがほぼ元々の粒度(粒径)になるまで実施する。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態において、工程c)の後の微粒子ポリマーは、0.5〜7mmの直径を有する粒子の形で存在する。特に好ましくは、ポリマー球体の直径が、2〜6mmにある。より小さな粒度(粒径)の場合、機械による予備乾燥(方法工程b)のためには、著しくより大きな力、そしてそれゆえにより大きなエネルギーが消費されなくてはならないだろう。他方で、粒度がより大きい場合、もはや機械による予備乾燥(方法工程b)を効率良く実施することはできない。
【0027】
微粒子ポリマー球体度は、DIN66165に従った、ふるい分析によって測定する。
【0028】
本発明の特に好ましい一実施形態において、微粒子ポリマーは、以下の式(I)、(II)及び/又は(III)の繰り返し単位を含有するポリマーである。
【化4】
【化5】
【化6】
【0029】
式(I)、(II)及び/又は(III)の繰り返し単位から成るポリマーが好ましい。これらのポリマーは、ポリエーテルスルホン(PESU)(I)、ポリスルホン(PSU)(II)及びポリフェニレンエーテルスルホン(PPSU)(III)と称され、本発明によれば特に好ましい。それらは、BASF SEによって、Ultrason(登録商標)E(I)、Ultrason(登録商標)S(II)、及びUltrason(登録商標)P(III)という商品名で販売されている。
【0030】
これらのポリマーは、高温で安定であり、一方ではバランスのとれた特性の組み合わせ、他方では有利と評価できるコストパフォーマンス(費用性能比)を有するため、微粒子ポリマーとして好ましい。
【0031】
本発明の第二の態様において、微粒子ポリマーを後処理する方法は、以下の工程:
i)ポリマー及び第一の有機溶剤(L2)を含有するポリマー溶液を用意すること、
ii)第二の有機溶剤(L3)及び水を含有する沈殿槽へとポリマー溶液を液滴化して、沈殿によって微粒子ポリマーを得ること、
iii)沈殿槽から沈殿した微粒子ポリマーを分離すること、
iv)抽出剤を用いて、微粒子ポリマーから、第一の及び/又は第二の有機溶剤(L2、L3)の残分を抽出すること、
v)特許請求の範囲に記載の方法で、微粒子ポリマーを乾燥させること、及び
vi)任意に微粒子ポリマーの仕上げをすること、
を含む。
【0032】
本発明の第二の態様による方法は、ポリマー溶液を最後まで仕上げられた微粒子ポリマーにする、効率の良い、殊にエネルギー効率の良い後処理方法を初めて提供するという利点を有する。この方法のエネルギー削減量は、殊に、ポリマーを製造、抽出した後に従来の乾燥方法を適用する従来の後処理方法と比較して、50%以上である。
【0033】
本発明による後処理方法において、第一の及び/又は第二の有機溶剤(L2、L3)としてN−メチルピロリドンを使用することが好ましい。
【0034】
方法工程iv)において、抽出剤として溶剤(L1)を使用するのが好ましく、これにより、方法工程iv)の後に、微粒子ポリマー及び溶剤(L1)の合計質量を基準として、溶剤(L1)を60〜90質量%含有する微粒子ポリマーが得られる。
【0035】
微粒子ポリマーがポリエーテルスルホンであることがさらに好ましい。
【0036】
さらなる目的、特徴、利点、及び適用可能性は、図を用いた、下記にある本発明の実施例の説明から明らかとなる。その際、記載及び/又は図示したあらゆる特徴は、単独で、又は任意の組み合わせで本発明の対象を形成し、請求項又はその従属項における構成からは独立してもいる。
【0037】
図1は、本発明による微粒子ポリマーの乾燥方法によって、本発明による後処理をする方法の概略図を示している。
【実施例】
【0038】
ポリエーテルスルホンを製造、後処理する具体的な実施例を用いて、下記で本発明を説明する。しかしながら、本発明は、別種の微粒子ポリマーにも適している。
【0039】
従来技術によると、ポリエーテルスルホンポリマー顆粒は、非蒸発性の不純物及び200ppm〜500ppmという量の塩化カリウムを含有している。このため、完成品を製造する際に、透明性の欠如及び変色がもたらされる。これらの瑕疵を取り除くために、ポリエーテルスルホンのための沈殿方法が開発され、この方法では、ポリマー溶液をまず固体微粒子状にして、固液抽出法を用いて不純物及び副生成物を除去することが可能である。これによって、透明性、固有色、引張・曲げ応力下での長期挙動、及び最大400℃の射出成型における加工安定性に関する製品特性を著しく改善することが可能である。ここでは、制御されたジェット分裂(液滴化)によって作製され、かつN−メチルピロリドン水溶液中に沈殿したポリマー粒子を、実質的に水で抽出する。
【0040】
後処理の際に、沈殿したばかりのポリエーテルスルホンポリマーが、ポリマー100%に対して約160%〜220%のN−メチルピロリドン、及び/又はポリマー100%に対して100ppm〜1000ppmの塩化カリウムを含有したままであるという問題が生じていた。このN−メチルピロリドン含分の場合、ポリエーテルスルホンポリマー粒子は安定ではなく、それゆえに貯蔵に適していなかった。既に80℃〜90℃という低い温度で粒子が融解してしまうことが示されていた。このため、本発明によれば、沈殿の直後に、約75%〜80%のN−メチルピロリドン及び塩化カリウムが除去される。
【0041】
沈殿し、抽出したポリエーテルスルホン粒子は、約25%がポリマー固体から、約75%が水(L1)から成るので、公知の手順、例えば流動層乾燥機で全ての水(L1)を除去することは、非常に高いエネルギー消費を伴う。よって、本発明に従って、最終乾燥の前に、ポリエーテルスルホンポリマー粒子を機械で押しつぶし(方法工程b)かつ圧搾することで、水(L1)の大部分を除去する。
【0042】
図1は、ポリエーテルスルホンを湿式後処理する図を示している。重縮合反応器1から得られるポリエーテルスルホン溶液(N−メチルピロリドン中に18%)を容器3に予め装入し、適する溶剤(例えば、N−メチルピロリドン)で希釈する。この溶液を、濾過装置5(ここでは、例えば、製造方法からの塩を分離する)を介して、貯蔵容器7に送る。そこから、溶液を容器9の上部に送り、溶液は、特殊鋼プレート上に平行に配置された毛細管によって、ジェット噴射状になる。このジェット噴射体は、ある特定の落下高さを過ぎると滴に分裂し(いわゆる液滴化し)、容器9の下部で沈殿槽(例えば、NMP/HO浴)に落下する。ポリエーテルスルホンポリマーは、そこで沈殿し、所定の滞留時間後に硬化したポリマー球体は、サイフォン管を介してふるい機11、殊に振動ふるい機に供給される。
【0043】
硬化したポリエーテルスルホンポリマーを、そこで沈殿槽の液体から分離し、容器13に移送する。沈殿槽の液体は、結合管(図示せず)を介して容器9に返送することができる。容器13では前抽出が行われ、例えば、ポリマー粒子は、約1時間の滞留時間で、85℃、15%のN−メチルピロリドン水溶液で処理される。この工程の前に、ポリエーテルスルホンポリマーは、非蒸発性の不純物の他に、200ppm〜500ppmの塩化カリウム、より濃縮されたN−メチルピロリドン、並びに副生成物からの着色物質を含み得る。
【0044】
前抽出の後に、ポリエーテルスルホンポリマー粒子を、さらなるふるい機15(同様に好ましくは振動ふるい機)に供給し、抽出溶液から分離する。高純度抽出17のための装置(例えば、カルーセル式抽出機)で、ポリエーテルスルホンポリマー粒子を、さらに精製する。ふるい機15で分離された液体も、同様に結合管(図示せず)を介して容器13に返送することができる。高純度抽出機17では、好適には、水を抽出剤として使用する。この工程で得られたポリエーテルスルホンポリマー粒子を、さらなるふるい機19を介して水から分離する。
【0045】
この工程後、ポリエーテルスルホンポリマー粒子は、実質的に、もはや塩化カリウム及びN−メチルピロリドンを含有していない。そのようにして得られた粒子は、約25%がポリマー固体から、約75%が水(L1)から成る。それらは、後続の工程で、ローラプレス機21に供給され、抽出剤(本実施例では水(L1))をポリマーから絞り出す。
【0046】
具体的な一実施形態において、1時間あたり60kgの処理量の場合50%〜60%の固体含分を達成する、Alexanderwerk社のローラプレス機を使用した。ローラ直径300mmで、ローラ幅は330mmであった。
【0047】
ローラプレス機を通過した後、ポリエーテルスルホンポリマーは、平らな圧縮物(いわゆるスラグ)の濾過ケークとして得られる。最終乾燥前に、この平らな圧縮物をもともとの個々の粒子に再び分け、これは本実施形態において、図1に示されていない摩擦式微粒子製造機で達成される。
【0048】
最後に、ローラプレス機21からの予備乾燥されたポリエーテルスルホンポリマーを、流動層乾燥機23で乾燥させる。
【0049】
本発明に従って、最後の流動層乾燥コストに対する予備乾燥の影響を算出した。その際、流動層乾燥についての設備投資コスト及びエネルギーコスト(蒸気及び電気)を、溶剤の流動層乾燥開始時の含分(20質量%〜75質量%)に応じて算出した。最も重要なパラメータを下記の表1に挙げる。
【表1】
【0050】
本発明による方法と比較すると、従来の方法では、機械での予備乾燥なしで、流動層設備の設備投資コストが2倍を超え、その上、エネルギーコストは3倍を超えている。
【符号の説明】
【0051】
1 重縮合反応器
3 容器(希釈用)
5 濾過装置
7 貯蔵容器
9 容器(液滴化及び沈殿)
11 ふるい機
13 容器(前抽出)
15 ふるい機
17 高純度抽出装置
19 ふるい機
21 ローラプレス機
23 流動層乾燥機
図1