特許第6461609号(P6461609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461609
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】干渉対物レンズ、および光干渉測定装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/04 20060101AFI20190121BHJP
   G01B 9/02 20060101ALI20190121BHJP
   G02B 7/182 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   G02B21/04
   G01B9/02
   G02B7/182
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-32(P2015-32)
(22)【出願日】2015年1月5日
(65)【公開番号】特開2016-126176(P2016-126176A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】本橋 研
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−085655(JP,A)
【文献】 実開昭60−161313(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ系と、
測定対象物の測定面と前記対物レンズの先端部との間に配置され、前記対物レンズ系から出射された光を参照光路と測定光路とに分岐するとともに、参照光路を経た反射光と測定光路に配置された測定対象物を経た反射光とを合成した合成波を出力するビームスプリッタと、
前記参照光路に配置され、ビームスプリッタで参照光路に分岐された光を反射する参照ミラーと、
球面状の外側面を有し、前記参照ミラーの反射面が球面の中心を通るように前記参照ミラーを保持するミラー保持部材と、
前記ミラー保持部材の外側面と略等しい径の球面上の内側面を有し、当該内側面により前記ミラー保持部材の外側面を支持する支持部材と、
前記支持部材の内部での前記ミラー保持部材の姿勢を調整する参照ミラー調整機構と
前記ミラー保持部材を内包する鏡筒と
を備え
前記ミラー保持部材は、球面上の外側面から突出し先端部に傾斜面を有する突出部を有し、
前記参照ミラー調整機構は、
前記鏡筒の前記突出部に対応する位置に配置される調整ねじ孔部と、
前記調整ねじ孔部に、螺入され前記突出部の傾斜面に当接する調整ねじと
を備え、
前記ミラー保持部材は、前記調整ねじの締め込み量に応じて傾斜量が調整される干渉対物レンズ。
【請求項2】
前記ミラー保持部材の前記突出部は、前記ミラー保持部材の外周の少なくとも90度に亘り設けられ、
前記調整ねじ孔部は、前記突出部の先端部と対向する少なくとも90度に亘る範囲を移動可能に設けられることを特徴とする請求項に記載の干渉対物レンズ。
【請求項3】
前記ミラー保持部材は、複数の前記突出部を備え、
前記鏡筒は、複数の前記突出部に対応する複数の前記調整ねじ受け部を備えることを特徴とする請求項に記載の干渉対物レンズ。
【請求項4】
前記突出部は、90度ずれた位置に2つ設けられることを特徴とする請求項に記載の干渉対物レンズ。
【請求項5】
前記ミラー保持部材は、前記調整ねじを締め込んだ場合に傾斜量が増加する方向とは反対方向に付勢されることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の干渉対物レンズ。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の干渉対物レンズを備えた光干渉測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の干渉によって生じる干渉縞の輝度情報を用いた測定を行う光干渉測定装置および当該光干渉測定装置に用いる干渉対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光の干渉によって生じる干渉縞の輝度情報を用いて例えば測定対象物の三次元形状を精密に測定する三次元形状測定装置などの光干渉測定装置が知られている。
【0003】
例えば白色光光源を用いる光干渉測定装置においては、参照光路と測定光路の光路長が一致するピント位置では各波長の干渉縞のピークが重なり合い合成される干渉縞の輝度が大きくなる。したがって、光干渉測定装置では、参照光路または測定光路の光路長を変化させながら、撮影視野内における干渉光強度の分布を示す干渉画像をCCDカメラ等の撮像素子により撮影し、撮影視野内の各測定位置で干渉光の強度がピークとなるピント位置を検出することで、各測定位置における測定面の高さを測定し、測定対象物の三次元形状などを測定することができる。
【0004】
光干渉測定装置に用いられる干渉系の一種であるミロー型干渉対物レンズでは、測定光路を経た光と参照光路を経た光とが測定に適した干渉縞を生じるよう、試料表面と参照ミラーの角度や傾斜方向を相対的に変化させる必要がある。多くの場合、傾斜ステージを用いて試料を傾斜させることで試料表面と参照ミラーとの相対角度を調整していた。これに対し、特許文献1には、試料ではなく参照ミラーの角度を調整するミロー型干渉対物レンズが提案されている。参照ミラーを保持する保持枠の外側面に設けられた断面がV字状の溝の斜面にねじを押し当て、ねじの締め込み量によって参照ミラーの角度を調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−85655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の参照ミラーの角度調整機構では、保持枠を指示する2つの鋼球を結ぶ直線を軸として参照ミラーの傾斜角を調整する。また、参照ミラーとハーフミラーとを保持する干渉部鏡筒を、光軸を回転軸として回転させることで傾斜の方向(干渉縞の向き)を調整する。このように、特許文献1に記載の干渉対物レンズでは、参照ミラーを保持する保持枠と、干渉部鏡筒とをそれぞれ動かす必要があるため、構造や操作方法が複雑となる。
【0007】
そこで、本発明は上記の課題を解決し、干渉縞を発生させるための参照ミラーの傾きを容易に調整することができる干渉対物レンズ及び当該干渉対物レンズを備える光干渉測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る干渉対物レンズは、対物レンズ系と、測定対象物の測定面と対物レンズの先端部との間に配置され、対物レンズ系から出射された光を参照光路と測定光路とに分岐するとともに、参照光路を経た反射光と測定光路に配置された測定対象物を経た反射光とを合成した合成波を出力するビームスプリッタと、参照光路に配置され、ビームスプリッタで参照光路に分岐された光を反射する参照ミラーと、球面状の外側面を有し、参照ミラーの反射面が球面の中心を通るように参照ミラーを保持するミラー保持部材と、ミラー保持部材の外側面と略等しい径の球面上の内側面を有し、当該内側面によりミラー保持部材の外側面を支持する支持部材と、支持部材の内部でのミラー保持部材の姿勢を調整する参照ミラー調整機構とを備える。このような構成によれば、参照ミラー調整機構により、支持部材の球面状の内側面で支持されたミラー保持部材の姿勢を、容易に調整することができる。
【0009】
本発明では、干渉対物レンズは、球面保持部材を内包する鏡筒をさらに備え、ミラー保持部材は、球面上の外側面から突出し先端部に傾斜面を有する突出部を備え、参照ミラー調整機構は、鏡筒の突出部に対応する位置に配置される調整ねじ孔部と、調整ねじ孔部に、螺入され突出部の傾斜面に当接する調整ねじとを備え、ミラー保持部材は、調整ねじの締め込み量に応じて傾斜量が調整されるとよい。このような構成によれば、調整ねじの締め込み量により、支持部材の球面状の内側面で支持されたミラー保持部材の姿勢を、容易に調整することができる。
【0010】
本発明では、ミラー保持部材の突出部は、ミラー保持部材の外周の少なくとも90度に亘り設けられ、調整ねじ孔部は、突出部の先端部と対向する少なくとも90度に亘る範囲を移動可能に設けられるとよい。このような構成によれば、調整ねじ孔部を移動させることで傾斜の方向を容易に調整することができる。
【0011】
本発明では、ミラー保持部材は、複数の突出部を備え、鏡筒は、複数の突出部に対応する複数の調整ねじ受け部を備えてもよい。この場合、突出部は、90度ずれた位置に2つ設けられると特によい。このような構成によれば、2つの調整ねじの締め込み量により、傾斜の方向および傾斜角度を容易に調整することができる。
【0012】
本発明では、ミラー保持部材は、調整ねじを締め込んだ場合に傾斜量が増加する方向とは反対方向に付勢されるとよい。このような構成によれば、調整ねじの締め込み量を減少させたときにも、締め込み量の変化に追随してミラー保持部材の傾きを変化させることができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る光干渉測定装置は、上述のいずれかの干渉対物レンズを備える。このような構成によれば、参照ミラー調整機構により、支持部材の球面状の内側面で支持されたミラー保持部材の姿勢を、容易に調整することができる。その結果、光干渉測定装置による測定を行う際の調整が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】光干渉測定装置の一実施形態である、干渉光学系と画像測定装置を組み合わせた測定装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】光干渉光学ヘッド152の構成を光路とともに示す模式図である。
図3】対物レンズ部22の構造を示す断面図である。
図4図4(a)は、参照ミラー222付きガラスプレート223を保持した第1実施形態における保持部材225の上面図であり、図4(b)は、第1実施形態における保持部材225の側面図である。
図5】第1実施形態における鏡筒229の外観を示す斜視図である。
図6】対物レンズ部22の光学系と測定光路および参照光路を示す要部拡大図である。
図7】コンピュータ本体201の構成を示すブロック図である。
図8】参照ミラー222の傾きを調整する手順を示すフローチャートである。
図9】光干渉光学ヘッド152による三次元形状測定の手順を示すフローチャートである。
図10図10(a)は、参照ミラー222付きガラスプレート223を保持した第2実施形態における保持部材225の上面図であり、図10(b)は、第2実施形態における保持部材225の側面図である。
図11】第2実施形態における鏡筒229の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る光干渉測定装置の一実施形態である干渉光学系と画像測定装置を組み合わせた測定装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る干渉光学系と画像測定装置を組み合わせた測定装置の全体構成を示す斜視図である。干渉光学系と画像測定装置を組み合わせた測定装置は、非接触型の画像測定機1と、この画像測定機1を駆動制御すると共に、必要なデータ処理を実行するコンピュータシステム2とを備える。なお、干渉光学系と画像測定装置を組み合わせた測定装置は、これらの他、計測結果等をプリントアウトするプリンタ等を適宜備えてもよい。
【0017】
画像測定機1は、架台11と、試料台(ステージ)12と、支持アーム13aおよび13bと、X軸ガイド14と、撮像ユニット15とを備える。図1に示されるように、フロアに設置された架台11上に、ワークWを載置するステージ12がその上面をベース面として水平面と一致するように載置される。ステージ12は、図示しないY軸駆動機構によってY軸方向に駆動され、ワークWを撮像ユニットに対してY軸方向に移動可能とされている。架台11の両側縁中央部には上方に延びる支持アーム13a、13bが固定され、この支持アーム13a、13bの両上端部を連結するようにX軸ガイド14が固定される。このX軸ガイド14は、撮像ユニット15を支持する。撮像ユニット15は、図示しないX軸駆動機構によってX軸ガイド14に沿って駆動される。
【0018】
撮像ユニット15は、ワークWの二次元画像を撮像する画像光学ヘッド151および光干渉測定によりワークWの三次元形状を測定する光干渉光学ヘッド152を着脱可能に備え、いずれかのヘッドを用いて、コンピュータシステム2が設定する測定位置でワークを測定する。画像光学ヘッド151の測定視野は光干渉光学ヘッド152の測定視野よりも通常広く設定し、コンピュータシステム2による制御により、両ヘッドを切り替えて使用できる。画像光学ヘッド151と光干渉光学ヘッド152は、一定の位置関係を保つよう、共通の支持板により支持され、切り替えの前後で測定の座標軸が変化しないよう予めキャリブレーションされる。
【0019】
画像光学ヘッド151は、CCDカメラ、照明装置、フォーカシング機構等を備え、ワークWの二次元画像を撮影する。撮影された二次元画像のデータはコンピュータシステム2に取り込まれる。
【0020】
図2は、光干渉光学ヘッド152の構成を示す模式図である。光干渉光学ヘッド152は、光出射部20と、光干渉光学ヘッド部21と、対物レンズ部22と、結像レンズ23と、撮像部24と、駆動機構25とを備える。
【0021】
光出射部20は、広帯域に亘る多数の波長成分を有しコヒーレンシーの低い広帯域光を出力する光源を備え、例えば、ハロゲンやLED(Light Emitting Diode)などの白色光源が用いられる。
【0022】
光干渉光学ヘッド部21は、ビームスプリッタ211と、コリメータレンズ212とを備えている。光出射部20から出射した光は、対物レンズ部22の光軸Lと直角の方向から、コリメータレンズ212を介してビームスプリッタ211に平行に照射され、ビームスプリッタ211からは光軸Lに沿った光が出射されて、対物レンズ部22に対して上方から平行ビームが照射される。
【0023】
図3は、対物レンズ部22の構成を示す模式図である。対物レンズ部22は、同一光軸上に上方から順に、対物レンズ221、参照ミラー222付きガラスプレート223、およびビームスプリッタ224により構成される光学系を備える。対物レンズ部22の光軸Lは、X軸およびY軸と垂直なZ軸に一致するよう調整される。対物レンズ部22の下方には、ワークWが、ステージ12上に載置される。上述の対物レンズ部22の光学系は、円筒形状の鏡筒229の内部に配置される。対物レンズ221とビームスプリッタ224は、鏡筒229との位置関係が変化しないように取り付けられる。ガラスプレート223は透明なガラス製の薄板であり、その中央部には参照ミラー222が、反射面がガラスプレート223と接する向きに取り付けられる。
【0024】
図4(a)は、参照ミラー222付きガラスプレート223を保持した保持部材225の上面図であり、図4(b)は保持部材225の側面図である。保持部材225は、球面状の外側面と、円筒形状の内側面を有する。保持部材225は、参照ミラー222の反射面の中心が保持部材225の外側面をなす球面の中心と一致するように、参照ミラー222付きガラスプレート223を保持する。保持部材225は、例えば円筒状の内側面に凹部を備え、当該凹部によりガラスプレート223を保持するとよい。保持部材225の外側面には、保持部材225の中心軸周りの少なくとも90度に亘って調整ねじ受け部2251が突設される。調整ねじ受け部2251の先端部には、中心軸と直交する平面に対し傾斜した傾斜面Sが設けられる。
【0025】
鏡筒229の内部には、保持部材225の外側面と対応した球面状の凹部を有する支持部材226および押え枠227が設けられる。支持部材226および押え枠227は、参照ミラー222付きガラスプレート223を保持した保持部材225を、揺動可能に支持する。保持部材225を支持部材226により支持し押え枠227により押えた状態で、支持部材226と押え枠227の境界部分には開口が形成される。保持部材225は、調整ねじ受け部2251が当該開口から露出する状態で支持される。
【0026】
図5は、鏡筒229の外観を示す斜視図である。鏡筒229の外側面には、調整リングユニット228(本発明の調整ねじ孔部に相当)が設けられる。調整リングユニット228は、支持部材226と押え枠227の境界部分には開口に対応する範囲(すなわち、保持部材225の中心軸周りの少なくとも90度の範囲)を移動可能に取り付けられる。調整リングユニット228は、例えば可動範囲および移動方向を規定するレールを介して取り付けるとよい。調整リングユニット228の中心部には雌ねじが形成されたねじ孔が設けられる。ねじ孔には、調整ねじ300が螺入される。ねじ孔は鏡筒229の中心軸と直交する方向(すなわち半径方向)に設けられ、調整ねじ300はその締め込み量に応じて鏡筒229の半径方向に移動する。調整ねじ300は、その先端が調整ねじ受け部2251の傾斜面Sに当接するまで締め込まれる。調整ねじ300をさらに締め込むと傾斜面Sが上方に押され、保持部材225が支持部材226および押え枠227の内部で回転する。このようにして、保持部材225の傾斜は調整ねじ300の締め込み量に応じて変化する。保持部材225は、調整ねじ300の締め込みよる傾斜の変化に抗する向き(すなわち調整ねじの締め込みにより傾斜量が増加する方向とは反対方向)に付勢されてもよい。このようにすれば、締め込み量を小さくした場合にも、調整ねじ300の先端と調整ねじ受け部2251の傾斜面Sが当接するよう保持部材225の傾斜を変化させることができる。調整ねじ300を締め込む方向が保持部材225の傾斜の最大傾斜角方向となる。したがって、調整リングユニット228の位置を変更することにより、保持部材225の傾斜方向を変更することができる。
【0027】
以上のような構成により、参照ミラー222とビームスプリッタ224を保持するユニット全体を回転させることなく参照ミラー222の傾きを調整することができ、所望の干渉縞が得られるようにすることができる。また、ビームスプリッタ224からの反射光のフォーカス位置に常に参照ミラー222の反射面が位置するため、調整によってフォーカスずれが発生することを防ぐことができる。
【0028】
図6を参照し、対物レンズ部22の上方から、光干渉光学ヘッド部21を介して平行ビームが対物レンズ221に入射したことを想定して、干渉動作を説明する。なお、図6では、参照ミラー222の傾きを調整するための構成(例えば、保持部材225、支持部材226、押え枠227、調整リングユニット228、調整ねじ300等)が省略されている点に留意されたい。また、図6中の矢印に沿った光路を用いて説明するが、実際、干渉は光軸Lに対して回転対称に起こることに留意されたい。
【0029】
まず、入射光は対物レンズ221で収束光となり、ビームスプリッタ224に入射する。ここで、入射光は、参照ミラー222を有する参照光路(図6中破線)を進む反射光と、ワークWを配置した測定光路(図6中実線)を進む透過光とに分岐する。
【0030】
反射光は、収束して参照ミラー222で反射され、その後、ビームスプリッタ224で反射される。ビームスプリッタ224には位相差制御部材が取り付けられ、参照光路を経た反射光と測定光路を経た反射光の位相が調節される。一方、透過光は、収束してワークWの一点を照射し、そこで反射されてビームスプリッタ224に入射して透過する。ここで、参照ミラー222からの反射光とワークWからの反射光とはビームスプリッタ224により合成されて合成波となる。
【0031】
合成波は、対物レンズ221で平行ビームになり上方へ進み、結像レンズ23に入射する(図2中一点鎖線)。このとき、参照光路(光路1+光路2)と、測定光路(光路3+光路4)の光路長が等しいときに、干渉縞が発生する。
【0032】
撮像部24は、撮像手段を構成するための2次元の撮像素子からなるCCDカメラ等であり、対物レンズ部22から出力された合成波(ワークWからの反射光と参照ミラー222からの反射光)の干渉画像を撮像する。
【0033】
駆動機構部25は、コンピュータシステム2からの移動指令によって、光干渉光学ヘッド152を光軸L方向に移動させる。ここで、図6において、ビームスプリッタ224から参照ミラー222までの距離をd1、ビームスプリッタ224からワークWの測定面状の集光位置までの距離をd2とすると、d1=d2の位置において光路長差0となる。従って、駆動機構部25は、測定に際しては、光路長差0(d1=d2)となるように、光干渉光学ヘッド152を光軸方向(すなわちZ軸方向)に移動させることでd2の距離を調整する。なお、上記では光干渉光学ヘッド152を移動させる場合を例示して説明したが、ステージ12を移動させることでd2の距離を調整する構成としてもよい。また、ビームスプリッタ224から参照ミラー222までの距離d1を可変とする構成としてもよい。このように、駆動機構部25は、光路長可変手段として、参照光路又は測定光路の何れか一方の光路長を変化させる。
【0034】
光干渉光学ヘッド152は、コンピュータシステム2による制御の下、駆動機構部25により光軸L方向の位置を移動走査されながら撮像部24による撮像を繰り返す。撮像部24により撮像された各移動走査位置での干渉画像の画像データはコンピュータシステム2に取り込まれ、測定視野内の各位置について、干渉縞のピークが生じる移動走査位置を検出し、ワークWの測定面の各位置における高さ(Z方向位置)が求められる。
【0035】
コンピュータシステム2は、コンピュータ本体201、キーボード202、ジョイスティックボックス(以下、J/Sと呼ぶ)203、マウス204及びディスプレイ205を備える。
【0036】
図7に示すように、コンピュータ本体201は、制御の中心をなすCPU40と、記憶部41と、ワークメモリ42と、インタフェース(IF)43、44、45、46と、ディスプレイ205での表示を制御する表示制御部47とを備える。
【0037】
キーボード202、J/S(ジョイスティック)203及びマウス204から入力されるオペレータの指示情報は、インタフェース43を介してCPU40に入力される。インタフェース44は、測定装置と接続され、測定装置に対しCPU40からの各種制御信号を供給し、測定装置から各種のステータス情報や測定結果を受信してCPU40に入力する。
【0038】
画像測定モードが選択されている場合、表示制御部47は、ディスプレイ205に画像光学ヘッド151のCCDカメラから供給された画像信号による画像を表示する。光干渉測定モードが選択されている場合、表示制御部47は、光干渉光学ヘッド152により撮影した画像、CADデータ、光干渉光学ヘッド152により測定した三次元形状データ等を、CPU40による制御に基づき適宜ディスプレイ205に表示する。画像光学ヘッド151や光干渉光学ヘッド152による測定結果は、インタフェース45を介してプリンタに出力することができる。また、インタフェース46は、外部の図示しないCADシステム等により提供されるワークWのCADデータ(設計データ)を、所定の形式に変換してコンピュータシステム2に入力する。
【0039】
ワークメモリ42は、CPU40の各種処理のための作業領域を提供する。記憶部41は、例えばハードディスクドライブやRAM等により構成され、CPU40により実行されるプログラム、測定装置による測定結果等を格納する。
【0040】
CPU40は、各インタフェースを介した各種入力情報、オペレータの指示及び記憶部41に格納されたプログラム等に基づいて、画像光学ヘッド151による画像測定モードと光干渉光学ヘッド152による光干渉測定モードとの切り替え、測定範囲の指定、撮像ユニット15のX軸方向への移動、ステージ12のY軸方向への移動、画像光学ヘッド151による二次元画像の撮像、光干渉光学ヘッド152による干渉画像の測定と三次元形状データの算出等の各種の処理を実行する。CPU40は、記憶部41に格納されたプログラムを実行することにより、本発明における制御手段の機能を実現する。
【0041】
図8は、本実施形態に係る測定装置を用いて三次元形状測定を行うべく、所望の干渉縞を生じさせるべく参照ミラー222の傾きを調整する手順を示すフローチャートである。
【0042】
はじめに、測定モードを光干渉光学ヘッド152による光干渉測定モードに切り替える(ステップS100)。続いて、ワークWをステージ12に配置する(ステップS110)。続いて、干渉縞を生じさせるべく駆動機構25により光干渉光学ヘッド152を光軸方向に移動し(ステップS120)、撮像部24により干渉画像を撮像する(ステップS130)。そして、得られた画像に所望の干渉縞が写っているか否かを判断する(ステップS140)。所望の干渉縞が写っていない場合には(ステップS140;No)、ステップS150に進み、参照ミラー222の傾きを調節する。ステップS150では、ステップS130で撮影した干渉画像に写っている干渉縞に応じて、調整リングユニット228と調整ねじ300を操作して、画像に写る干渉縞が所望の方向および本数となるよう、参照ミラー222の傾きを調整する。そしてステップS130に戻る。一方、所望の干渉縞が写っている場合には(ステップS140;Yes)、調整を終了する。
【0043】
続いて、図9示すフローチャートを参照しつつ、光干渉光学ヘッド152による三次元形状測定の手順を説明する。測定用ワークの測定は、前述の調整が完了した状態で調整用のワークWを測定対象のワークWに置き換えて実施される。三次元形状測定を開始すると、光干渉光学ヘッド152を光軸方向(Z軸方向)に所定量移動し(S200)、測定面の干渉光強度の二次元の分布を示す干渉画像撮像する(S210)。これを所定サンプリング数だけ繰り返し(S220〜S220)、所定枚の干渉画像が蓄積されると、測定面の各測定位置における光路長差の変化に伴う干渉光強度の変化を示す干渉光強度列のピーク位置を検出する(S230)。そして、検出した各測定位置のピーク位置を測定点における高さとして表示、出力する(S240)。
【0044】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る光干渉測定装置の特徴は、第1実施形態における保持部材225に代えて、複数の調整ねじ受け部2251を有する保持部材225により参照ミラー222を保持し、鏡筒229において、各調整ねじ受け部2251の先端に対向する位置に、それぞれ調整ねじ孔部228’を備えている点にある。なお、このような構成を採用したことに伴う変更点以外については、上述した第1実施形態と同様なので、ここでの説明を省略する。
【0045】
図10(a)は、第2実施形態における保持部材225の上面図であり、図10(b)は、保持部材225の側面図である。保持部材225は、球面状の外側面と、円筒形状の内側面を有する。保持部材225は、参照ミラー222の反射面の中心が保持部材225の外側面をなす球面の中心と一致するように、参照ミラー222付きガラスプレート223を保持する。保持部材225の外側面には、保持部材225の中心軸周りに互いに90度ずれた位置に2つの調整ねじ受け部2251−1および2251−2が突設される。具体的には、例えば、第1の調整ねじ受け部2251−1は、保持部材225の外側面からX軸方向に突出し、第2の調整ねじ受け部2251−2は、保持部材225の外側面からY軸方向に突出するように構成するとよい。調整ねじ受け部2251−1および2251−2の先端部には、中心軸と直交する平面に対し傾斜した傾斜面Sが設けられる。
【0046】
鏡筒229の内部には、保持部材225の外側面と対応した球面状の凹部を有する支持部材226および押え枠227が設けられる。支持部材226および押え枠227は、参照ミラー222付きガラスプレート223を保持した保持部材225を、揺動可能に支持する。保持部材225を支持部材226により支持し押え枠227により押えた状態で、支持部材226と押え枠227の境界部分には開口が形成される。保持部材225は、調整ねじ受け部2251−1および2251−2が当該開口から露出する状態で支持される。
【0047】
図11は、本実施形態の鏡筒229の外観を示す斜視図である。鏡筒229の外側面には、調整ねじ受け部2251−および2251−2のそれぞれの先端に対向する位置に、調整ねじ孔部228−1および228−2が設けられる。各調整ねじ孔部の中心部には雌ねじが形成されたねじ孔が設けられる。調整ねじ孔部228−1および228−2のねじ孔には、それぞれ調整ねじ300−1および300−2が螺入される。ねじ孔は鏡筒229の中心軸と直交する方向(すなわち半径方向)に設けられ、各調整ねじはその締め込み量に応じて鏡筒229の半径方向に移動する。調整ねじ300は、その先端が調整ねじ受け部の傾斜面Sに当接するまで締め込まれ、締め込み量に応じて、保持部材225の傾斜が変化する。本実施形態では、締め込み方向が90度異なる2つの調整ねじの締め込み量を調節することで傾斜の方向および傾斜量を任意に変更することができる。保持部材225は、調整ねじの締め込みよる傾斜の変化に抗する向き(すなわち調整ねじの締め込みにより傾斜量が増加する方向とは反対方向)に付勢されてもよい。このようにすれば、締め込み量を小さくした場合にも、調整ねじの先端と調整ねじ受け部の傾斜面Sが当接するよう保持部材225の傾斜を変化させることができる。
【0048】
以上のような構成により、参照ミラー222とビームスプリッタ224を保持するユニット全体を回転させることなく参照ミラー222の傾きを調整することができ、所望の干渉縞を得ることができる。また、ビームスプリッタ224からの反射光のフォーカス位置に常に参照ミラー222の反射面が位置するため、調整によってフォーカスずれが発生することを防ぐことができる。
【0049】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0050】
例えば、上記実施形態では、光干渉光学ヘッドとして、光源が白色光を発光する光源を用いた白色光干渉光学ヘッドを用いる例を説明したが、光干渉光学ヘッドはこれに代えて単色光を発光する光源を用いた単色光干渉光学ヘッドとしてもよいし、光源に白色光と単色光を切り替えて出力可能な光源を用いた光干渉光学ヘッドを採用し、測定範囲の広い白色光干渉測定と超精密測定が可能な単色光干渉測定とを切り替えて実施できるようにしてもよい。単色光を発光する光源としては所望の波長のレーザを用いるとよい。単色光干渉測定を行う場合には、光干渉光学ヘッド152の光軸方向位置または光源の波長を変化させつつ干渉画像を3枚以上撮像し、各測定点について、3枚以上の画像における干渉光強度に基づいて、測定値(各測定位置の高さ)を演算により求めるようにするとよい。
【0051】
また、上記実施形態では、ミロー型の干渉計を用いた画像測定装置を例に説明したが、本発明は、画像測定装置以外の干渉計を用いた測定装置にも適用することができる。また、マイケルソン型、フィゾー型、トワイマングリーン型その他の等光路干渉計を用いた測定装置にも本発明を適用することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、鏡筒の外部に露出した調整ねじを手作業で締め込んで参照ミラーの傾きを調整するミロー型の干渉計を用いた画像測定装置を例に説明したが、本発明は、画像測定装置以外の干渉計を用いた測定装置にも適用することができる。また、マイケルソン型、フィゾー型、トワイマングリーン型その他の等光路干渉計を用いた測定装置にも本発明を適用することができる。
【0053】
また、上記の第2実施形態では、対物レンズ部22は、調整ねじ受け部2251と調整ねじ孔部228’を2つずつ備えたが、より多くの調整ねじ受け部2251と調整ねじ孔部228’を有するように構成してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、光干渉光学ヘッド部21において、ビームスプリッタ211から光軸Lに沿った光が出射されて、対物レンズ部22に対して上方から平行ビームが照射される構成を例に説明をしたが、照明のための光学系はこれに限定されない。例えば、ワークWにムラのない光を照射すべくケーラー照明を採用してもよい。ケーラー照明の一例として、ビームスプリッタを経て光軸L方向に向いた光(非平行光)を対物レンズの瞳位置に結像させ、これを対物レンズを通して平行光としてワークW側に照射されるように構成してもよい。このようなケーラー照明によれば、ワークWに均一な明るさの光を照射することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、光干渉測定装置に適用して、干渉縞を発生させるための参照ミラーの傾きを容易に調整することを可能とする。
【符号の説明】
【0056】
1・・・画像測定機
2・・・コンピュータシステム
11・・・架台
12・・・ステージ
13a、13b・・・支持アーム
14・・・X軸ガイド
15・・・撮像ユニット
W・・・測定対象物(ワーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11