【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による解決策
一例として、本発明によれば、上述した目的は、基板、及びこの基板上に配置された回
折構造パターンを有する回折光学素子によって達成される。この回折構造パターンは、こ
の構造上に放射される平面波または球面波の入力波を、少なくとも4つの別個の出力波に
変換し、これらの出力波のうち少なくとも1つは非球面波であり、これらの出力波のうち
少なくとも他の1つは球面波であり、これらの出力波のうち少なくとも他の2つのそれぞ
れは、平面波または球面波である。
【0011】
このように、本発明によれば、上述した出力波が、単一の回折光学素子、即ち単一の基
板上に配置された回折構造パターンのみを用いて発生する。従って、この回折光学素子は
、いくつかの変形例により構成することができる。第1変形例によれば、回折光学素子上
に放射される波が平面波であり、出力波は、少なくとも1つの非球面波及び少なくとも3
つの球面波を含む。第2変形例によれば、回折光学素子上に放射される波が球面波であり
、出力波は、少なくとも1つの非球面波及び少なくとも3つの球面波を含む。第3変形例
によれば、回折光学素子上に放射される波が平面波であり、出力波は、少なくとも1つの
球面波及び少なくとも2つの平面波を含む。第4変形例によれば、回折光学素子上に放射
される波が球面波であり、出力波は、少なくとも1つの球面波及び少なくとも2つの平面
波を含む。1つの好適例によれば、第1及び第2変形例の場合、上記球面波の強度が、3
0%未満だけ、特に10%未満だけ、互いに異なる。
【0012】
上記平面波または球面波の入力波は、まとめて球面波と称することもでき、この場合、
平面波は、無限大の半径を有する球面波の特殊な場合と見なす。上記非球面出力波は、測
定される光学面に適合した測定波とすることができ、この測定波は、表面を干渉計測手段
によって測定する際に、この表面上に放射される。他の出力波は較正波と称することもで
きる。
【0013】
上記回折光学素子は、特に、コンピュータで発生したホログラム(CGH)として具体
化することができる。なお、上記回折構造パターンは、位相格子または回折格子と称する
こともできるが、これは、規則的な光子を必ずしも意味するものではないことを理解すべ
きであり、特に、屈曲を有することができる線構造を意味し、これらの屈曲は、原則的に
、形状の点で互いに偏差があり、かつ相互間で可変の距離を有することができる。以上に
説明したように、この回折構造パターンは、回折光学素子の基板上に配置され、即ち、1
つの基板上のみに配置されている。従って、この回折構造パターンは、異なる基板上に配
置された複数の副パターンで構成されない。
【0014】
上述したように別個の出力波を発生する回折構造パターンは、複合符号化位相格子とす
ることができる。本願における意味では、球面波は球形波面を有する波動であり、即ち、
波面が少なくとも球面部分によって形成される波動である。
【0015】
本願における意味では、非球面波は、その波面があらゆる理想球面から、特に当該波面
に最も良く合う球面から少なくとも10λの偏差を有する波動であり、ここにλは、上記
回折構造パターン上に放射される入力波の波長である。換言すれば、非球面波が有する少
なくとも1点が、あらゆる理想球面から少なくとも10λだけの偏差を有する。波長が5
00nmであれば、本願における意味での非球面波は、あらゆる理想球面から少なくとも5
μmの偏差を有する。本願における意味では、非球面波は、回転対称な波面を有する波動
、即ち従来の意味での非球面波、及び回転対称でない波面を有する波動、即ち、その波面
がいわゆる自由形状の面を有する波動を、共に含む。
【0016】
1つの好適例によれば、上記非球面波が自由形状面の形態の波面を有し、この波面は、
あらゆる理想球面から少なくとも1mmの偏差を有する。
【0017】
ここで、「別個の出力波」とは、これらの出力波が異なる伝搬方向を有し、従って、互
いに独立して検出することができ、あるいは、互いに独立して反射させて回折光学素子に
戻すことができ、このため、これらの出力波を干渉計測システムにおいて別個に測定する
ことができることを意味するものと理解すべきである。
【0018】
形状の干渉計測用に従来採用されているCGHに比べれば、本発明による回折光学素子
は、本発明によれば、少なくとも3つの追加的な平面または球面出力波が、非球面出力波
に加えて発生する点で異なる。上述した従来のCGHでは、1つ以上の非球面波に加えて
、2つだけの平面波または球面波が、異なる回折次数で発生する。
【0019】
直列に配置された2つのCGHを用いる場合、球面及び非球面によって形成され、従っ
て、同様に非球形である波動が、通常、2番目のCGH上に放射される。平面波または球
面波がこのCGH上に放射されるものとすれば、このプロセスでは、単一の平面波または
球面波でない波動が発生する。
【0020】
平面または球面出力波を、本発明による回折光学素子上に放射する際に、上記非球面出
力波に加えて、上述した種類の少なくとも3つの追加的な出力波を発生することは、この
回折光学素子を、製造誤差について、これらの追加的な出力波を用いて測定することを可
能にする。従って、この回折光学素子を用いたその後の光学面の測定中に、この製造誤差
の影響を計算によって測定値から除外することも可能である。その結果、形状、特に非球
面の光学面の形状を測定する測定精度を向上させることができる。
【0021】
本発明による1つの好適例によれば、上記構造パターンは、少なくとも2つの追加的な
出力波が平面波であり、これらの出力波の伝搬方向が、入力波の入射方向に対して互いに
対称であるように構成されている。1つの変形例によれば、2つの平面出力波が、直線格
子において、例えば+1次及び−1次の回折のように、同じ次数で正及び負の回折次数で
ある。
【0022】
本発明による他の好適例によれば、上記構造パターンは、上記別個の出力波が、第1波
動対を形成する2つの平面出力波に加えて、2つの追加的な平面波を第2波動対の形で有
するように構成され、これらの追加的な平面波の伝搬方向は、上記入射方向に対して同様
に互いに対称であり、第1波動対の伝搬方向が張る平面が、第2波動対の伝搬方向が張る
平面と一致しないように構成されている。特に、第1波動対の伝搬方向が張る平面が、第
2波動対の伝搬方向が張る平面にほぼ直交する。これに関連して、「ほぼ直交する」とは
、少なくとも80°、特に少なくとも85°、少なくとも89°または約90°の角度を
意味する。
【0023】
本発明による他の好適例によれば、上記回折構造パターンの点i毎に、角度α
iが、第
1差分ベクトルと第2差分ベクトルとの間の角度によって定義され、第1差分ベクトルは
、点iから出る非球面波の波動ベクトルk
i(A)と、点iに当たる入力波の波動ベクトルk
i(in)との差分によって定義され、第2差分ベクトルは、点iから出る少なくとも1つの
球面波の波動ベクトルk
i(S)と、点iに当たる入力波の波動ベクトルk
i(in)との差分に
よって定義される。さらに、上記回折構造パターンは、角度α
iの絶対値を、当該回折構
造パターンのすべての点iにわたって平均して、当該回折構造パターンに平行な平面上に
射影した値が、5°より大きく、特に10°より大きいように構成されている。上記波動
ベクトルは、「kベクトル」とも称され、波動の波面に直交するベクトルである。換言す
れば、角度ωが5°より大きく、ここにωは次式のように定義される:
【数1】
【0024】
ここに、Nは、上記平均値を求める点iの数を表す。また、他の言葉で表現すれば、角
度ωは、角度α
ixyの、上記回折光学素子の空間座標i全体にわたる平均値によって定義
され、即ち、
【数2】
であり、ここに、α
ixyは、xy平面上に射影した、差分ベクトル[k
i(A)−k
i(in)]と差
分ベクトル[k
i(S)−k
i(in)]との間の角度である。
【0025】
ここで、上記平均値は、上記構造パターンによってカバーされる領域、即ち、上記回折
光学素子の光学的実効領域全体にわたって求められる。入力波の伝搬方向をz方向と称し
、従って、xy平面は入力波の伝搬方向に直交する平面である。
【0026】
本発明による他の実施形態によれば、上記非球面波を発生するための構造パターンの回
折効率が、上記少なくとも1つの球面波を発生するための構造パターンの回折効率よりも
少なくとも50%大きい。その結果、上記非球面波の強度は、上記少なくとも1つの球面
波の強度よりも少なくとも50%大きくなる。1つの変形例によれば、上記少なくとも1
つの非球面波を発生するための回折効率が、上記少なくとも1つの球面波を発生するため
の回折効率よりも、少なくとも70%、特に少なくとも100%大きい。このことは、例
えば金属化された較正ミラーを用いることによって補償することができる。1つの好適例
によれば、上記少なくとも4つの出力波の回折効率の合計が30%より大きい。
【0027】
本発明の他の好適例によれば、上記構造パターンは、上記非球面出力波の放射電力が、
上記球面または平面出力波のそれぞれの放射電力よりも大きくなるように構成されている
。換言すれば、上記構造パターン中で、非球形波面を有する出力波を、球面または平面の
波面を有する残り3つの出力波よりも強く重み付けする。1つの好適例によれば、非球形
波面を有する出力波の放射電力は、入力波の放射電力の少なくとも30%、特に約40%
であるのに対し、球面または平面の波面を有する残り3つの出力波の各々は、入力波の放
射電力の15%〜25%、特に約20%である。
【0028】
本発明による他の好適例によれば、上記構造パターンは、当該構造パターン上に放射さ
れる入力波が少なくとも5つの出力波に変換され、これらの出力波のうち4つが球面波と
して具現されるように構成されている。上記少なくとも5つの出力波のうち他の1つは、
非球面波、特に自由形状波である。
【0029】
本発明による他の好適例によれば、上記出力波のそれぞれが、互いに対して配向された
平均伝搬方向を有し、ここで、4つの球面出力波の平均伝搬方向どうしが、これらの出力
波を(2つずつ)対にした各対において、上記非球面出力波の平均伝搬方向によって規定
される軸線に対して互いに対称に配置されない。これに関連して、「対称でない」とは、
対称配置に比べて少なくとも1°、特に5°の偏差が存在することを意味するものと理解
すべきである。上記平均伝搬方向は、各出力波の異なる伝搬方向を強度で重み付け平均し
て出る伝搬方向である。1つの変形例によれば、この条件が、上記回折光学素子上のすべ
ての点の少なくとも90%に当てはまる。
【0030】
本発明による他の好適例によれば、上記回折構造パターンが多レベルの位相格子を具え
ている。当業者が良く知っているように、多レベル位相格子とは、最高レベルと最低レベ
ルとの間に少なくとも1つの中間レベルを有する位相格子を意味するものと理解すべきで
ある。従って、こうした位相格子は少なくとも3つのレベルを有する。異なる好適例によ
れば、4つ以上のレベルを設けることができる。いわゆるブレーズド位相格子は、その外
形が傾斜面によって表現されるくらい多数のレベルを有する。多レベル位相格子の使用は
、複合符号化によって生じる回折効率の損失を部分的に補償するか、さらには過度に補償
することを可能にする。本願における意味では、多レベル位相格子はこうしたブレーズド
位相格子も意味するものと理解すべきである。当業者は、多レベル位相格子についての背
景情報を、Donald C. O’Shea他によるハンドブック“Diffractive optics: design, fab
rication, and test”2004, The Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers
(非特許文献1)の29〜35ページより得ることができる。本願における意味での多レベル
位相格子は、特に、例えばH. Kleemann et al., “Combination of blazed and laterall
y blazed structures”, Diffractive Optics and Micro-Optics, OSA Technical Digest
(Optical Society of America), paper DTuC7, 2004(非特許文献2)に記載されている
ような横方向ブレーズド位相格子も意味するものと理解すべきである。
【0031】
本発明によれば、基板、及びこの基板上に配置された回折格子を具えた回折光学素子が
さらに提供される。この回折格子は、互いに距離をおいて配置された格子線を有し、この
回折格子の平均周期距離は、隣り合う格子線間の中心間距離の各々を、回折格子全体にわ
たって平均した値によって決まる。これらの格子線は波状の形状を有し、格子線の波状の
平均周期は、回折格子の平均周期距離の3倍〜20倍の領域内にあり、格子線の長手方向
を横切る向きの格子線の変動は、回折格子の平均周期距離の0.1倍〜3倍の領域内に入
る幅を有する。
【0032】
上記回折格子の平均周期距離は、格子線を横切る向きに測る。波状の格子線とは、これ
らの格子線が上向き及び下向きに偏位し、即ち、格子線の長手方向を横切る向きに、それ
ぞれの直線に対して偏位することを意味するものと理解すべきである。ここで、波状の周
期は、偏位毎に変動し得る。ここで、格子線の長手方向を横切る向きの格子線の変動の幅
は、それぞれの格子線の想定される直線形状からの、即ち、それぞれの格子線に最も良く
合う直線からの偏位の幅を意味するものと理解すべきである。特に、この変動の幅は、格
子線の形状を定める波の振幅の2倍である。
【0033】
本発明による他の好適例によれば、上記回折格子が、上記基板の少なくとも20%をカ
バーする。基板が平板状に設計されている場合、基板の上側及び下側のそれぞれの20%
が、この回折格子によってカバーされる。
【0034】
本発明による他の実施形態によれば、上記回折格子の格子線の少なくとも90%、特に
少なくとも95%または少なくとも99%が、連続線として具体化され、これらの連続線
は、回折格子のエッジ領域間に中断なしに延び、即ち、これらの線は、回折格子によって
カバーされる基板の領域内では終端しない。
【0035】
本発明による他の好適例によれば、上記回折格子は、当該回折格子における1mmのエッ
ジ長を有する正方形の測定領域内で、50μmのエッジ長を有するあらゆる正方形部分領
域にわたって平均した上記格子線のストライプ密度が、20線対/mm未満の幅に及ぶ変動
を有するように構成されている。正方形の部分領域内のストライプ密度を測定する方法の
一例によれば、最初に、上記格子線の幅と、一辺が隣の格子線に隣接する中間的空間の幅
との合計を、各格子線に沿って1μm毎に測定する。これにより測定された値の逆数を求
め、従って、ストライプ密度は、関係する測定点毎に確立される。ストライプ密度の値を
、関係する部分領域内のすべての測定点にわたって平均する。このことは、上記正方形の
測定領域内のすべての部分領域について発生し、即ち、20×20=400個の部分領域
について発生し、このため、平均ストライプ密度は部分領域毎に測定される。一例として
、平均したストライプ密度は約200線/mmであり、このストライプ密度は、190〜2
10線/mmの幅内で変動する。
【0036】
他の好適例によれば、上記構造パターンは、上記少なくとも4つの別個の出力波に加え
て、リトロー(Littrow)反射の参照波も、当該構造パターン上に放射される入力波から
の参照波として発生するように構成され、この参照波は、干渉計測中に参照波として用い
ることができる。
【0037】
上述した好適例及び変形例において説明した特徴は、個別に、あるいは組み合わせて、
波状の格子線を有する回折光学素子に移行することができる。
【0038】
さらに、本発明によれば、基板、及びこの基板上に配置された回折構造パターンを有す
る回折光学素子が提供される。この回折構造パターンは、当該構造パターン上に放射され
る平面波または球面波の入力波を、各々が球形波面を有する少なくとも3つの別個の出力
波に変換するように構成されている。
【0039】
上述した好適例及び変形例において説明した特徴は、個別に、あるいは組み合わせて、
波状の格子線を有する回折光学素子に移行することができる。特に、この回折光学素子は
、上述した少なくとも4つの出力波を発生する回折光学素子の好適例からの特徴を含むこ
とができる。
【0040】
本発明によれば、光学素子の光学面の実際形状の、意図した形状からの偏差を測定する
他の方法が提供される。この方法は、次のステップ、即ち:入力波を発生するステップと
、この入力波のビーム経路中に回折光学素子を配置するステップと、この回折光学素子と
の相互作用によって、上記入力波を少なくとも3つの別個の出力波に変換するステップと
を含み、これらの出力波のうち1つは測定波であり、上記光学面の意図した形状に適合し
、非球形波面を有し、これらの出力波のうち少なくとも他の2つは較正波である。この方
法は、これら少なくとも2つの較正波の各々を用いて、上記回折光学素子の較正補正値を
決定するステップと、上記適合した測定波のビーム経路中に上記光学面を配置するステッ
プと、上記光学面との相互作用後に、上記適合した測定波の波面を測定するステップとを
さらに含み、上記適合した測定波の波面は、上記回折光学素子を、上記入力波に対して、
上記較正補正値の決定中と同様に配向させて測定する。さらに、上記方法によれば、決定
した較正補正値を用いて、測定した波面を補正する。
【0041】
換言すれば、上記方法によれば、上記回折光学素子は、入力波の伝搬方向に対して所定
の向きに配置されて、較正補正値を決定し、この較正補正値は、上記少なくとも2つの較
正波の各々を分析することによって決まる。上記適合した測定波の波面を測定する際に、
この向きは不変である。また、換言すれば、上記測定波を発生して分析する際、及び上記
較正波を発生して分析する際に、入力波は、上記回折光学素子の局所座標系内で同じ入射
方向を有する。特に、上記出力波は、上記入力波と上記回折光学素子との相互作用によっ
て同時に発生する。
【0042】
上述したように、「別個の出力波」とは、これらの出力波が異なる伝搬方向を有し、従
って、互いに独立して検出することができ、あるいは、互いに独立して反射させて上記回
折光学素子に戻すことができることを意味するものと理解すべきである。
【0043】
上記回折光学素子を、入力波に対して、上記較正補正値を決定する期間中と同様に配向
させて、上記適合した測定波の波面を測定することは、上記回折光学素子の、製造誤差に
ついての特に精密な較正を可能にする、というのは、決定した較正補正値を、上記適合し
た測定波の波面の測定値に直接適用することができるからである。配向が不変のままであ
るので、決定した較正補正値は、上記測定波の発生に関係する上記回折光学素子の製造誤
差を正確に反映する。換言すれば、測定された較正補正値と、上記測定波を発生する上記
回折光学素子上の構造の現実の偏差との間の偏差に起因して、上記波面の補正に誤差は導
入されず、この偏差は、上記回折光学素子の異なる配向に起因する。
【0044】
好適例によれば、上記回折光学素子を、入力波に対して、上記較正補正値を決定する期
間中と同じ位置に配置して、上記適合した測定波の波面を測定する。このことは、上記適
合した測定波の波面を測定する際に、上記回折光学素子の配向及び位置が共に不変のまま
であることを意味する。
【0045】
上記少なくとも2つの較正波は、第1較正波及び第2較正波を含む。上記回折光学素子
の較正補正値は、これらの第1較正波及び第2較正波を用いて決定される。
【0046】
他の好適例によれば、上記較正補正値を決定するステップが、上記較正波のうち第1の
ものから第1較正補正値を決定し、上記較正波のうち第2のものから第2較正補正値を決
定し、これらの第1較正補正値及び第2較正補正値は、上記回折光学素子を、入力波に対
して配向させて決定され、即ち、上記回折光学素子の配向は、上記第1較正補正値の決定
と上記第2較正補正値の決定との間で不変である。
【0047】
他の実施形態によれば、上記回折光学素子が複合符号化位相格子を具えている。こうし
た複合符号化位相格子は、少なくとも3つの位相関数f
1〜f
3で構成され、これにより、
個別の位相関数f
1〜f
3毎に、それぞれの回折波が発生し、これらの回折波が上述した出
力波を形成する。位相関数f
1〜f
3毎に発生したこれらの回折波の各々が、位相格子f
G
において1次の回折次数で発生する。本願による複合符号化位相格子の特性は、後の好適
な実施形態の詳細な説明において詳細に説明する。複合符号化位相格子の使用は、上記出
力波が異なる強度を有するように上記回折光学素子を構成することを可能にする。このこ
とは、この複合符号化位相格子内の個別の位相関数f
1〜f
3に異なる重みを割り当てるこ
とによって行うことができる。
【0048】
好適例によれば、上記少なくとも3つの出力波の各々が、上記回折光学素子において同
じ回折次数で発生する。特に、上記少なくとも3つの出力波の各々が、上記回折光学素子
において、1次の回折次数で、特に+1次の回折次数で発生する。本願で説明する複合符
号化格子の場合、+1次の回折次数の波動のみが上記出力波を形成する。上記出力波を1
次の回折次数で発生する際には、平面または球面形状のような単純な幾何学的形状を有す
る較正波を発生することができる。こうした単純な幾何学的形状により、適切な較正物体
を高精度で製造することができるので、正確な較正を達成することができる。
【0049】
他の好適例によれば、上記出力波のそれぞれが、互いに対して配向された平均伝搬方向
を有し、上記少なくとも2つの較正波の伝搬方向が、上記測定波の平均伝搬方向によって
規定される軸線に対して、互いに非対称に配置され、即ち、互いに対称に配置されない。
こうした非対称な配置により、上記測定波の位置における干渉光またはスプリアス光の発
生を回避することができる。
【0050】
他の好適例によれば、上記較正波の少なくとも1つが球面波である。本発明の他の好適
例によれば、少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つの較正波が球面波である。
【0051】
本発明の好適例によれば、上記入力波が平面波または球面波であり、上記入力波が、上
記回折光学素子との相互作用によって少なくとも4つの別個の出力波に変換され、上記出
力波のうち少なくとも他の1つは、球形波面を有する較正波であり、上記出力波のうち少
なくとも他の2つは、各々が平面または球面の波面を有する較正波である。上記回折光学
素子の較正補正値は、上記3つの較正波を用いて決定される。
【0052】
上述した本発明による好適例のいずれかにおいて、上記方法に関して以上及び以下に述
べる特徴は、上述した本発明による好適例のいずれにおいても、本発明による回折光学素
子に移行することができ、特に、入力波を少なくとも4つの別個の出力波に変換するよう
に構成された回折光学素子に移行することができ、その逆も成り立つ。特に、本発明によ
る回折光学素子は、上記4つの出力波を発生するように構成することができ、このことは
、上記回折光学素子を、他の出力波を用いて較正補正値を決定する期間中と同様に入力波
に対して配向させて、光学面と相互作用した後の上記非球面波の波面を測定することがで
きるように行う。他の好適例によれば、上記回折光学素子が、上記4つの出力波を同時に
発生するように構成され、特に、上記出力波の各々を1次の回折次数で発生するように構
成されている。
【0053】
さらに、本発明によれば、光学素子の光学面の実際形状の、意図した形状からの偏差を
測定する方法が提供される。1つの好適例では、本発明による方法が、次のステップ、即
ち:平面または球面の入力波を発生するステップと、この入力波のビーム経路中に回折光
学素子を配置するステップと、この回折光学素子との相互作用によって、この入力波を少
なくとも4つの別個の出力波に変換するステップとを含み、これらの出力波のうち少なく
とも1つは測定波であり、上記光学素子の光学面の意図した形状に適合し、非球形波面を
有し、上記出力波のうち少なくとも他の1つは、球形波面を有する較正波であり、上記出
力波のうち少なくとも他の2つは較正波であり、各々が平面または球面の波面を有する。
さらに、本発明による方法によれば、上記較正波を用いて、上記回折光学素子の較正補正
値を決定し、上記適合した測定波のビーム経路中で上記光学面を測定し、上記適合した測
定波の波面を、上記光学面との相互作用後に測定する。さらに、上記較正補正値を用いて
、測定した波面を補正する。このように、補正した波面を用いて、光学素子の実際形状の
、意図した形状からの偏差を測定することができる。
【0054】
本発明による方法において用いる上記回折光学素子は、特に、上述した好適例の1つに
より具体化することができる。本発明による1つの好適例によれば、上記較正補正値を決
定するために、1つ以上の較正物体を上記較正波のビーム経路中に配置し、この較正物体
との相互作用後に、上記較正波の干渉計測による評価を行う。
【0055】
さらに、本発明によれば、光学素子を製造する方法が提供される。1つの好適例では、
この方法は、500mmより大きい直径を有する光学面を有する光学素子を製造するステッ
プを含む。さらに、1つの回折光学素子のみを用いた干渉計測によって、この光学面の意
図した形状に対する実際形状を、意図した形状からの実際形状の偏差が0.05nmの精度
で測定されるような精度で測定し、これらの偏差は、d/100〜d/5の振動波長を有
する振動に由来し、意図した形状は自由形状面であり、回転対称な非球面の各々から5μ
mより大きい偏差を有する。さらに、上記光学面は、上記干渉計測の結果に基づく当該光
学面の機械的処理によって、意図した形状に適合させる。この場合、上記光学面を意図し
た形状に適合させることは、この干渉計測の測定精度の範囲内で行う。
【0056】
光学面の実際形状干渉計測は、特に、本発明による好適例の1つにおいて上述した測定
方法を実行することによって行うことができる。上記製造方法において用いられる上記回
折光学素子は、特に、上述した好適例の1つにおいて具体化することができる。
【0057】
さらに、本発明によれば、500mmより大きい直径dを有する光学面が提供される、こ
こで、この光学面の実際形状は、意図した形状からの偏差が0.05nm以下、特に0.0
2nm以下であるように、意図した形状に適合し、この偏差は、d/100〜d/5の振動
波長を有する振動に由来する。ここで、上記意図した形状は自由面であり、回転対称な非
球面の各々から5μmより大きい、特に10μmより大きい偏差を有する。
【0058】
一例として、上記光学素子はEUVミラーとして具体化することができる。特に、意図
した形状に最も良く合う回転対称の非球面からの、意図した形状の偏差は、5μmより大
きく、特に10μmより大きい。好適例によれば、上記光学面が1000mmより大きい直
径を有することができ、すべての振動が1mm〜50mmの振動波長に関係することができる
。
【0059】
本発明による他の好適例によれば、上記意図した形状が、あらゆる球面から少なくとも
1mmの偏差を有する。その結果、上記光学面は、大型または強度のある自由面になる。
【0060】
他の好適例によれば、上記意図した形状からの実際形状の偏差が、上記光学面上のあら
ゆる点における、意図した形状からの実際形状の偏差の最大振幅によって定義される。
【0061】
本発明による好適例の、上述した特徴及び他の特徴は共に、特許請求の範囲及び図面の
説明において説明する。これら個別の特徴は、単独でも組合せでも、本発明の実施形態と
して実現することができる。さらに、これらの特徴は、独立して保護可能である有利な好
適例を記述することができ、適切であれば、本願の係属中または係属後のみに、それらの
保護を特許請求する。
【0062】
以下の本発明による好適な実施形態の詳細な説明では、本発明の上記及び他の有利な特
徴を、添付した概略的な図面を参照しながら説明する。