特許第6462028号(P6462028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462028
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】溶融固形型洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/06 20060101AFI20190121BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20190121BHJP
   C11D 7/14 20060101ALI20190121BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20190121BHJP
   C11D 7/06 20060101ALI20190121BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20190121BHJP
   C11D 3/08 20060101ALI20190121BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20190121BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20190121BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20190121BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20190121BHJP
   C11D 7/54 20060101ALI20190121BHJP
   A47L 15/44 20060101ALI20190121BHJP
   A47L 15/46 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C11D17/06
   C11D7/32ZAB
   C11D7/14
   C11D7/22
   C11D7/06
   C11D3/33
   C11D3/08
   C11D3/04
   C11D3/37
   C11D3/395
   C11D1/722
   C11D7/54
   A47L15/44
   A47L15/46 Z
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-63951(P2017-63951)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-186549(P2017-186549A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-70854(P2016-70854)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】野積 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小倉 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】荒井 博紀
【審査官】 安川 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−124358(JP,A)
【文献】 特開2015−142707(JP,A)
【文献】 特開2012−001685(JP,A)
【文献】 特表2010−519351(JP,A)
【文献】 特開2007−238951(JP,A)
【文献】 特開2010−270182(JP,A)
【文献】 特開2007−131659(JP,A)
【文献】 特許第5774757(JP,B1)
【文献】 特開2013−181116(JP,A)
【文献】 特開2010−144087(JP,A)
【文献】 特許第5801941(JP,B1)
【文献】 特開昭60−188498(JP,A)
【文献】 特表平08−507095(JP,A)
【文献】 特表平04−504271(JP,A)
【文献】 特開昭62−177100(JP,A)
【文献】 特開2009−007566(JP,A)
【文献】 特公平06−084516(JP,B2)
【文献】 特開平06−313200(JP,A)
【文献】 特開2003−073693(JP,A)
【文献】 特開平11−349997(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/203643(WO,A1)
【文献】 米国特許第5064554(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第103451039(CN,A)
【文献】 特開2012−087255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてアミノカルボン酸系キレート剤、
(B)成分としてアルカリ金属珪酸塩、
(C)成分としてスルホン酸系ポリマー、
(D)成分としてアルカリ金属水酸化物、
(E)成分として水、
を含み、SiO2とM2O(M2Oはアルカリ金属酸化物)とをモル比でSiO2/M2Oの値が0.3以上、0.5以下含有し、且つ(C)スルホン酸系ポリマーとSiO2を、質量比で(C)スルホン酸系ポリマー/SiO2の値が0.15以上、0.95以下となる割合で含有することを特徴とする溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)成分を25質量%以上、45質量%以下、(B)成分をSiO2として3質量%以上、15質量%以下、(C)成分を0.46質量%以上、10質量%以下含有する請求項1に記載の溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項3】
(B)成分が液体又は結晶水を含むアルカリ金属珪酸塩である請求項1又は2に記載の溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に(F)成分としてノニオン界面活性剤を5質量%以下含有する請求項1〜3のいずれかに記載の溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に(G)成分として安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記塩素系漂白剤と前記安息香酸塩の質量比である、塩素系漂白剤/安息香酸塩の値が、0.001以上、1,000以下である請求項5に記載の溶融固形型洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の溶融固形型洗浄剤組成物を、下端部分に排出口を有する溶出ホッパー内に設置して、給水ノズルから水を供給してホッパー内の溶融固形型洗浄剤組成物を水に溶解させ、溶融固形型洗浄剤組成物濃度を0.01質量%以上、0.09質量%以下に調整した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して食器類を洗浄する工程、洗浄後すすぎ液ですすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項8】
前記すすぐ工程において、すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm2あたり、1L以上、3L以下噴射して食器類をすすぐ請求項7に記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融混合した洗浄剤組成物を冷却固形化して得られる溶融固形型洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動食器洗浄機用の洗浄剤としては液体又は粉末の洗浄剤組成物が使用されていたが、液体タイプの洗浄剤組成物は嵩張るため運搬、保管に問題があった。また粉末タイプの洗浄剤組成物は液体タイプに比してコンパクト化を図ることができるが、粉末飛散による環境汚染や作業性低下を生じるという問題や、粉末洗浄剤組成物中の配合成分の溶解速度の相違等によって洗浄液の組成や濃度が常に一定にならず均一な洗浄性が得られにくいという問題があった。このため近年は、液体タイプ、粉末タイプの洗浄剤組成物に代えて、高濃度でコンパクト化が可能であり、粉末タイプに比して各成分の溶解性が均一で安定した洗浄性が発揮される溶融固形型洗浄剤組成物が使用されるようになっている。
【0003】
この種の溶融固形型洗浄剤組成物としては、アルカリ金属珪酸塩、金属イオン封鎖剤、炭酸塩、水を溶融させた溶融物に対し、粉末又は粒子状のアルカリ金属珪酸塩を70℃以下で添加し、冷却固形させた自動洗浄機用固形洗浄剤が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−247000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶融固形型洗浄剤組成物は、各成分を溶融混合した組成物をプラスチック等の容器に充填収納し、冷却固形化したカートリッジ式洗浄剤として流通されている。しかしながら従来のアルカリ金属珪酸塩を含む溶融固形型洗浄剤組成物は、保管中に体積膨張が生じ易く、保管中の体積膨張によって溶融固形型洗浄剤組成物を収納しているプラスチック等の容器が変形したり破損したりするという問題があった。またアルカリ金属珪酸塩を含む溶融固形型洗浄剤組成物は、洗浄機にシリカスケールが付着しやすいという問題があった。
本発明は上記従来の課題に鑑みなされたもので、アルカリ金属珪酸塩を含有する従来の溶融固形型洗浄剤組成物の問題点を解決した、コンパクトで保存性良好で洗浄性に優れた溶融固形型洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、アミノカルボン酸系キレート剤とともに、アルカリ金属珪酸塩、高分子ポリマー、アルカリ金属水酸化物を特定の割合で配合した溶融固形型洗浄剤組成物が、コンパクトで保存性に優れ、洗浄性、スケール付着防止性等に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、
(1)(A)成分としてアミノカルボン酸系キレート剤、(B)成分としてアルカリ金属珪酸塩、(C)成分としてスルホン酸系ポリマー、(D)成分としてアルカリ金属水酸化物、(E)成分として水、を含み、SiO2とM2O(M2Oはアルカリ金属酸化物)とをモル比でSiO2/M2Oの値が0.3以上、0.5以下含有し、且つ(C)スルホン酸系ポリマーとSiO2を、質量比で(C)スルホン酸系ポリマー/SiO2の値が0.15以上、0.95以下となる割合で含有することを特徴とする溶融固形型洗浄剤組成物、
(2)(A)成分を25質量%以上、45質量%以下、(B)成分をSiO2として3質量%以上、15質量%以下、(C)成分を0.46質量%以上、10質量%以下含有する上記(1)の溶融固形型洗浄剤組成物、
(3)(B)成分が液体又は結晶水を含むアルカリ金属珪酸塩である上記(1)又は(2)の溶融固形型洗浄剤組成物、
(4)更に(F)成分としてノニオン界面活性剤を5質量%以下含有する上記(1)〜(3)のいずれかの溶融固形型洗浄剤組成物、
(5)更に(G)成分として安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤を含有する上記(1)〜(4)のいずれかの溶融固形型洗浄剤組成物、
(6)前記塩素系漂白剤と前記安息香酸塩の質量比である、塩素系漂白剤/安息香酸塩の値が、0.001以上、1,000以下である上記(5)の溶融固形型洗浄剤組成物、
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の溶融固形型洗浄剤組成物を、下端部分に排出口を有する溶出ホッパー内に設置して、給水ノズルから水を供給してホッパー内の溶融固形型洗浄剤組成物を水に溶解させ、溶融固形型洗浄剤組成物濃度を0.01質量%以上、0.09質量%以下に調整した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して食器類を洗浄する工程、洗浄後すすぎ液ですすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(8)前記すすぐ工程において、すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm2あたり、1L以上、3L以下噴射して食器類をすすぐ上記(7)の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、アルカリ金属珪酸塩を含有しているにもかかわらず、長期間保管した場合でも容器が変形したり破損したりすることがなく、洗浄機にシリカスケールが付着する虞もなく、優れた洗浄性を有する。また高分子ポリマーを含有していながら嵩張りがなく、コンパクトで高濃縮化でき、低濃度で優れた洗浄性が発揮される等の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物(以下、単に洗浄剤組成物という場合がある)において、(A)成分として用いるアミノカルボン酸系キレート剤としては、ニトリロ三酢酸又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、グルタミン酸二酢酸又はその塩、メチルグリシン二酢酸又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、トリエチレンテトラミン六酢酸又はその塩等が挙げられる。これらの中でも、洗浄効果が良好なことからニトリロ三酢酸又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、グルタミン酸二酢酸又はその塩、メチルグリシン二酢酸又はその塩が好ましく、製造する際の増粘防止や成型後の嵩比重の増加を抑えられることからニトリロ三酢酸又はその塩、及びエチレンジアミン四酢酸又はその塩が好ましい。尚、上述するアミノカルボン酸塩としては、たとえば、カリウム塩又はナトリウム塩を挙げることができる。溶融固形型洗浄剤組成物に含有されるアミノカルボン酸塩は、溶融固形型洗浄剤組成物の調製時において塩であるもの、および調製過程において、酸と水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物との反応により形成されたもののいずれであってもよい。尚、上述するアミノカルボン酸塩の一分子中に含まれるアルカリ金属の数は特に限定されず公知の化合物を包含する。たとえば、上述するエチレンジアミン四酢酸ナトリウムは、一ナトリウム塩から四ナトリウム塩までのいずれか又は2以上の組み合わせを包含する。
【0010】
(B)成分として用いるアルカリ金属珪酸塩としては、オルソ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、1号珪酸ナトリウム、2号珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウム、A珪酸カリウム、B珪酸カリウム、C珪酸カリウム等の無水アルカリ金属珪酸塩、メタ珪酸ナトリウム5水塩、メタ珪酸ナトリウム9水塩等の結晶水を含むアルカリ金属珪酸塩が挙げられる。アルカリ金属珪酸塩としては、液体又は結晶水を含むアルカリ金属珪酸塩が好ましく、メタ珪酸ナトリウム5水和物、オルソ珪酸ナトリウム水和物がより好ましい。液体又は結晶水を含むアルカリ金属珪酸塩を用いることで、アルカリ金属珪酸塩を含有しているにもかかわらず、長期間保管した場合でも容器が変形したり破損したりすることがない。液体又は結晶水を含むアルカリ金属珪酸塩以外を用いた場合、保存中に溶融固形型洗浄剤組成物を充填した容器が変形したり破損したりする虞れがある。
【0011】
(C)成分の高分子ポリマーとしては、カルボン酸系ポリマー、スルホン酸系ポリマーやこれらの塩が挙げられ、高分子ポリマーは2種以上を組み合わせて用いることができる。カルボン酸系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体等が挙げられるが、ポリアクリル酸やアクリル酸/マレイン酸共重合体がより好ましい。ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体は重量平均分子量が3,000以上、120,000以下が好ましく、特に好ましくは10,000以上、90,000以下である。カルボン酸系ポリマーの重量平均分子量が3,000未満では再汚染防止性の点で好ましくなく、120,000を超えると貯蔵安定性の点で好ましくない。ポリマレイン酸の重量平均分子量については、300以上、2,000以下が好ましく、400以上、1,500以下であることが特に好ましい。スルホン酸系ポリマーとしては、アクリル酸/スルホン酸モノマー共重合体が挙げられ、スルホン酸系ポリマーの重量平均分子量は1,000以上、20,000以下が好ましく、特に好ましくは2,000以上、15,000以下である。スルホン酸系ポリマーの重量平均分子量が1,000未満であると、スケール防止性の点で好ましくなく、20,000を超えると貯蔵安定性の点で好ましくない。高分子ポリマーとして用いるカルボン酸系ポリマー、スルホン酸系ポリマーの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が好ましい。(C)成分として用いる高分子ポリマーとしては、洗浄剤の嵩張りを抑制する点、スケール防止性の点でアクリル酸/スルホン酸共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、あるいはこれらの塩が好ましく、アクリル酸/スルホン酸共重合体あるいはその塩が特に好ましい。
【0012】
(D)成分のアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられるが、洗浄性、潮解性、溶融固形型洗浄剤組成物が冷却固形化しにくい点から水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物は、粒状、フレーク状、液体等のものを使用することができる。
【0013】
(E)成分の水としては、水道水、軟水化処理水、純水、RO水、イオン交換水、蒸留水を用いることができるが、純水、RO水、イオン交換水、蒸留水が好ましい。
【0014】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、(B)成分のアルカリ金属珪酸塩由来のSiO2と、(B)成分のアルカリ金属珪酸塩及び(D)成分のアルカリ金属水酸化物に起因するM2Oとを、モル比でSiO2/M2Oの値が0.3以上、0.5以下(M2Oはアルカリ金属酸化物)となる割合で含有し、且つ(C)成分の高分子ポリマーと、(B)成分由来のSiO2とを、質量比で高分子ポリマー/SiO2の値が0.15以上、0.95以下となる割合で含有するが、好ましくはSiO2/M2Oの値が0.35以上、0.45以下、高分子ポリマー/SiO2の値が0.18以上、0.6以下となる割合で含有することである。SiO2/M2Oの値が0.3以上、0.5以下、高分子ポリマー/SiO2の値が0.15以上、0.95以下となる割合でアルカリ金属珪酸塩、アルカリ金属水酸化物、高分子ポリマーを含有することにより、アルカリ金属珪酸塩を含有しているにもかかわらず、洗浄機にシリカスケールが付着することがない。質量比で高分子ポリマー/SiO2の値が0.15未満では配合バランスが悪くなり、他成分との相乗効果がそれ以上得られず好ましくなく、0.95を超えるとシリカスケール防止性が劣るため好ましくない。モル比でSiO2/M2Oの値が0.3未満では被洗物への腐食性が強い上に、均一な冷却固形化や適切な溶解安定性が得られず好ましくなく、0.5を超えるとシリカスケール防止性が劣るため好ましくない。
【0015】
溶融固形型洗浄剤組成物中のモル比SiO2/M2Oの算出方法は、アルカリ金属珪酸塩と、アルカリ金属水酸化物とを配合した後の溶融固形型洗浄剤組成物中のSiO2とM2Oとのモル比である。SiO2はモリブデン黄による吸光光度法(JIS K0101:1998)に準じて測定した。M2Oは中和滴定法(JIS K1408:1966)に準じて測定した。
【0016】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、(A)成分25質量%以上、45質量%以下、(B)成分3質量%以上、15質量%以下(SiO2として)、(C)成分0.46質量%以上、10質量%以下含有することが好ましいが、(A)成分27質量%以上、35質量%以下、(B)成分7質量%以上、12質量%以下、(C)成分1質量%以上、5質量%含有することが好ましい。(D)成分は、M2Oが6質量%以上、50質量%以下になるように含有することが好ましい。(E)成分の水は、(A)成分〜(D)成分と水との合計、あるいは(A)成分〜(D)成分及び後述するその他の成分と水との合計が100質量%となるように配合するが、20質量%以上、40質量%以下含有することが好ましく、22質量%以上、38質量%以下含有することがより好ましく、25質量%以上、35質量%以下含有することが最も好ましい。(A)成分が25質量%未満ではスケール防止性が劣るため好ましくなく、45質量%を超えると、製造時に増粘し均一なスラリーを形成できないため好ましくない。また(B)成分がSiO2換算で3質量%未満では製造時の冷却固形化性及び洗浄性が劣るため好ましくなく、SiO2換算で15質量%を超えるとシリカスケール抑制性が劣るため好ましくない。(C)成分が0.46質量%未満ではシリカスケール、炭酸スケールの防止性及び汚れの再汚染防止性が劣るため好ましくなく、10質量%を超えると配合バランスが悪くなり、貯蔵安定性が低下するとともに、他成分との相乗効果がそれ以上得られず、好ましくない。(D)成分において、M2Oが6質量%未満では、シリカスケール防止性が劣るため好ましくなく、M2Oが50質量%を超えると被洗物への腐食性が強い上に、均一な冷却固形化や適切な溶解安定性が得られず好ましくない。(E)成分が20質量%未満では製造時に増粘し均一なスラリーを形成できないため好ましくなく、40質量%を超えると固形化しないため好ましくない。
【0017】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、上記(A)成分〜(E)成分の他に、更に(F)成分としてノニオン界面活性剤を5質量%以下配合することができる。(A)成分〜(E)成分の他に、更に5質量%以下の(F)成分を配合すると、洗浄性、被洗浄物への食物汚れの再付着防止性、抑泡性が向上する。(F)成分を5質量%超える量配合すると、貯蔵安定性や製造時の冷却固形化性が劣るため好ましくない。(F)成分はより好ましくは0.5質量%以上、5質量%以下配合することが好ましい。(F)成分として用いるノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム、ブロックの何れでもよい)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリマー(エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム、ブロック、リバースの何れでもよい)等のプルロニック型界面活性剤、ポリエチレングリコールプロピレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキシド付加物、脂肪酸−N−メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキシド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、ポリオキシエチレンアセチレニックグリコールエーテル(アセチレングリコールに酸化エチレンオキシドを付加した化合物)、N−長鎖アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。この中でも、洗浄性、抑泡性、成分の均一性に優れることからリバースプルロニック型ブロックポリマーが好ましい。具体的には、ADEKA社製のアデカプルロニック25R−1やアデカプルロニック25R−2が好ましい。
【0018】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物には、更に(G)成分として安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤を配合することができる。溶融固形型洗浄剤組成物の製造時において、スラリー水溶液中に安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤を配合しても、有効塩素量の低下がみられない。また、溶融固形型洗浄剤組成物を使用して洗浄する際、有効塩素安定性、速溶性に優れるため、十分な洗浄性、バイオフィルム防止性、漂白性を発揮することができる。溶融固形型洗浄剤組成物中の配合量は、良好な洗浄性、バイオフィルム防止性、漂白性を得るために0.01質量%以上、10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以上、3質量%以下である。この範囲において、良好な洗浄性、バイオフィルム防止性、漂白性が得られる。
また、被覆量は、塩素系漂白剤と安息香酸塩の質量比、塩素系漂白剤/安息香酸塩の値が0.001以上、1,000以下が好ましく、より好ましくは0.01以上、100以下、更に好ましくは0.1以上、10以下である。塩素系漂白剤と安息香酸塩の質量比が、0.001未満では十分な安定化効果が期待できない虞があり、1,000を超えてもそれ以上の効果は期待できない。
安息香酸塩を含む被覆剤で被覆されていない塩素系漂白剤を使用すると、本発明の溶融固形型洗浄剤組成物の製造時に温度や水、他の薬剤との接触により塩素成分が分解することや、溶融固形型洗浄剤組成物を希釈して使用する際、水(お湯)に接触した部分の塩素成分が分解してしまい、バイオフィルム防止性、漂白性を発揮することができない。また、被覆剤として界面活性剤を使用すると、食器洗浄機中で泡立ってしまうため洗浄効率が低下してしまう。被覆剤としてシリカやステアリン酸カルシウムなどを使用すると、食器洗浄機中に残留してしまい、洗浄阻害が発生するため好ましくない。
【0019】
塩素系漂白剤としては、クロラミンB(N−クロロベンゼンスルホンアミドナトリウム)、ジクロラミンB(N,N’−ジクロロベンゼンスルホンアミド)、クロラミンT(N−クロロ−P−トルエンスルホンアミドナトリウム)、ジクロラミンT(N,N’−ジクロロ−P−トルエンスルホンアミド)等のクロロアミン化合物。トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、又はそれらの塩等の塩素化イソシアヌル酸類、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸塩、塩化リン酸三ナトリウム、二酸化塩素等が挙げられる。これらの中でも、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムが好ましく、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが特に好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。被覆剤は、安息香酸塩を含んでいれば良いが、安息香酸塩を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、特に95質量%以上含むことが好ましい。安息香酸塩としては、例えば、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられるが、洗浄時の溶解性の点で安息香酸ナトリウムが好ましい。塩素系漂白剤を被覆する方法としては、特に限定するものではないが、例えば乾燥した塩素系漂白剤に対して、安息香酸塩を水、エタノール、メタノール、エーテル等の溶媒に溶解あるいは懸濁させた液を噴霧し、乾燥させ被覆する方法、また乾燥した塩素系漂白剤に安息香酸塩微粉末を混ぜ水等の結合剤を噴霧し被覆する方法等が挙げられる。
【0020】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、上記(A)成分〜(F)成分の他に、必要に応じて任意成分としてシリコーン、炭酸塩、塩素剤等を含有していても良い。更に当該技術分野で通常使用される、粘度調整剤、高分子分散剤、防腐剤、殺菌剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素等の成分を含有していても良い。
【0021】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物は、(A)成分〜(E)成分、更に必要に応じて(F)成分やその他の任意成分を加熱下に溶融混合した後、冷却固形化して得られるが、通常、溶融混合物をプラスチック等の容器に充填し、容器内で冷却固形して製品化される。
【0022】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物の電気伝導度の範囲としては、イオン交換水1Lに溶融固形型洗浄剤組成物を2.0g溶解させた際の60℃での電気伝導度が3.6mS/cm以上、7.0mS/cm以下であり、イオン交換水1Lに洗浄剤組成物を0.9g溶解させた際の60℃での電気伝導度が1.6mS/cm以上、3.4mS/cm以下であり、イオン交換水1Lに洗浄剤組成物を0.1g溶解させた際の60℃での電気伝導度が0.01mS/cm以上、0.7mS/cm以下である。
【0023】
本発明の溶融固形型洗浄剤組成物を用いて自動食器洗浄機で食器類の洗浄を行う方法としては、下端部分に排出口を有する溶出ホッパーに溶融固形型洗浄剤組成物を設置して、給水ノズルから水を供給して溶融固形型洗浄剤組成物を水に溶解させ、溶融固形型洗浄剤組成物濃度を0.01質量%以上、0.09質量%以下に調整した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して食器類を洗浄する工程、洗浄後にすすぎ液ですすぐ工程とを連続して行う方法が挙げられる。溶融固形型洗浄剤組成物濃度を0.01質量%以上、0.09質量%以下となるように溶融固形型洗浄剤組成物を水に溶解させるには、溶融固形型洗浄剤組成物の水溶液の電気伝導度は、溶解した洗浄剤の濃度に比例するため、溶融固形型洗浄剤組成物を溶解した洗浄タンクの水溶液の電気伝導度を測定することで溶融固形型洗浄剤組成物の濃度が制御可能となる。通常、洗浄タンクの水溶液の電気伝導度は洗浄液濃度が機械的に測定され、電気伝導度が低い場合には、自動的に溶融固形型洗浄剤組成物が供給される。その際の供給方法としては、容器に溶融固形型洗浄剤組成物を充填し冷却固形化させ、その容器を溶出ホッパーに開口部を地面側に向けて設置し、容器内の溶融固形型洗浄剤組成物を必要量の水で溶解し、溶解液が供給管を通って食器洗浄機に送られる方法が挙げられる。溶融固形型洗浄剤組成物を所定濃度に希釈調製した洗浄液は、洗浄液タンク内で通常、40℃以上、70℃以下で保持される。洗浄液は洗浄機庫内の食器類に対し、30秒以上、120秒以下噴射される。すすぎ液としては通常、水道水が用いられるがリンス剤を用いても用いなくても良い。すすぎ液は、洗浄機の食器設置平面積2500cm2当たり1L以上、3L以下が好ましい。またすすぎ液の温度は40℃以上、95℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以上、90℃以下である。すすぎ液の水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度2.7°DH(そのうち、カルシウム硬度2.0°DH、マグネシウム硬度0.7°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物15mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.2mg/L、フッ素及びその化合物0.1mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.016mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.7mg/L)が挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下に本発明を実施例、比較例を挙げてより具体的に説明する。なお、以下の実施例等において「%」は特に記載がない限り質量%を表し、表中における実施例および比較例の配合の数値は純分の質量%を表す。実施例、比較例において使用した化合物を以下に記す。
【0025】
(A)成分
A−1:ニトリロ三酢酸ナトリウム塩 商品名:Trilon A92R、BASF社製
A−2:エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 商品名:ディゾルビンNA、アクゾノーベル社製
A−3:グルタミン酸二酢酸ナトリウム塩 商品名:ディゾルビンGL−47−S、アクゾノーベル社製
A−4:メチルグリシン二酢酸ナトリウム塩 商品名:Trilon M Powder、BASF社製
A−5:3-ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸四ナトリウム塩 商品名:HIDS、純分50%、日本触媒社製
【0026】
(B)成分
B−1:ネオ―オルソ80粒、化学名:オルソ珪酸ナトリウム(SiO2/Na2O=0.5)、SiO2として28%、広栄化学工業社製
B−2:珪酸ソーダ3号、化学名:珪酸ナトリウム(SiO2/Na2O=3.2)、SiO2として29%、広栄化学工業社製
B−3:メタ珪酸ソーダ5水塩、化学名:メタ珪酸ナトリウム(5水塩)(SiO2/Na2O=1)、SiO2として28.3%、広栄化学工業社製
B−4:コリンS−458−K、化学名:珪酸カリウム(SiO2/K2O=0.35)、SiO2として9.6%、広栄化学工業社製
B−5:無水メタ珪酸ソーダ、化学名:珪酸ナトリウム(SiO2/Na2O=1)、SiO2として51%、日本化学工業社製
【0027】
(C)成分
C−1:アクリル酸/スルホン酸モノマー共重合体ナトリウム1(重量平均分子量が5,000)
C−2:アクリル酸/スルホン酸モノマー共重合体ナトリウム2(重量平均分子量が11,000)
C−3:アクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム(重量平均分子量が70,000)
C−4:ポリマレイン酸ナトリウム(重量平均分子量が500)
C−5:ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量が4,000)
【0028】
(D)成分
D−1:水酸化カリウム 商品名:フレーク苛性カリ、東亞合成社製
D−2:水酸化ナトリウム 商品名:粒状苛性ソーダ、旭硝子社製
【0029】
(E)成分
E−1:イオン交換水
【0030】
(F)成分
F−1:リバースプルロニック型ブロックポリマー1(ポリオキシエチレン鎖の両端にポリオキシプロピレン鎖が結合したブロックポリマー)オキシエチレン鎖の含有率が20%、アデカプルロニック25R−2
F−2:リバースプルロニック型ブロックポリマー2(ポリオキシエチレン鎖の両端にポリオキシプロピレン鎖が結合したブロックポリマー)オキシエチレン鎖の含有率が10%、アデカプルロニック25R−1
【0031】
(G)成分 安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤
G−1:コーティングジクロロイソシアヌル酸ナトリウム1(被覆剤は株式会社ウエノフードテクノ製の安息香酸ナトリウム:製品名 安息香酸ナトリウムウエノ、純分99.0%以上)
G−2:コーティングジクロロイソシアヌル酸ナトリウム2(被覆剤は和光純薬工業株式会社製の安息香酸カリウム:製品名 安息香酸カリウム、純分99.0%以上)
G−3:コーティング次亜塩素酸カルシウム(被覆剤は株式会社ウエノフードテクノ製の安息香酸ナトリウム:製品名 安息香酸ナトリウムウエノ、純分99.0%以上)
G−4:コーティングトリクロロイソシアヌル酸ナトリウム(被覆剤は株式会社ウエノフードテクノ製の安息香酸ナトリウム:製品名 安息香酸ナトリウムウエノ、純分99.0%以上)
G−5:コーティングジクロロイソシアヌル酸ナトリウム3(被覆剤は株式会社ウエノフードテクノ製の安息香酸ナトリウム:製品名 安息香酸ナトリウムウエノ、純分99.0%以上と、和光純薬工業株式会社製のアジピン酸二カリウム:製品名 アジピン酸二カリウム 純分95.0%以上、を質量比2:1で混合したもの)
(G)成分は、回転ドラム(コーティングパン)に顆粒状の塩素系漂白剤を入れて回転しながら、スプレーガンにより、圧縮空気とともにコーティング液(被覆剤を溶解したメタノール液)をエアースプレーする。なるべく塩素系漂白剤全体に均一にコーティング液がゆきわたるように噴霧する。スプレー後、70℃の熱風で乾燥させることによって調製した。得られた安息香酸塩を含む被覆剤で被覆された塩素系漂白剤の有効塩素量をチオ硫酸ナトリウム滴定で求め、被覆量が塩素系漂白剤と安息香酸塩の質量比で、塩素系漂白剤/安息香酸塩の値で2.5になるように調製した。
【0032】
その他成分
1:炭酸ナトリウム 商品名:ソーダ灰デンス、トクヤマ社製
2:シリコーン 商品名:DOW CORNING TORAY FSアンチフォーム1266、東レ・ダウコーニング社製
【0033】
実施例1〜70、比較例1〜8
表1〜表8に示す配合のスラリーを調製し、冷却固形化して溶融固形型洗浄剤組成物を得た。溶融固形型洗浄剤組成物の洗浄性、シリカスケール付着抑制性、膨張抑制性、固形化性、溶解性、成分均一性の各試験、嵩比重の測定を下記条件で行った。結果を表1〜表8に示す。尚、表中のSiO2/M2O(モル比)は、溶融固形型洗浄剤組成物中の全SiO2と、全M2Oのモル比である。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
【表7】
【0041】
【表8】
【0042】
※1 洗浄性試験1(66℃)
<被洗浄物>
直径20cmのガラス皿にマヨネーズ(キューピー社製)2gを均一に塗布し、室温で乾燥させた汚染皿を被洗浄物とした。
<試験方法>
溶融固形型洗浄剤組成物の濃度を0.04質量%に希釈した洗浄液を洗浄機の洗浄液タンクに貯留して66℃で保持し、洗浄ラックに汚染皿5枚を設置し、以下の条件で洗浄、すすぎを行った。溶融固形型洗浄剤組成物の希釈水、すすぎ水は塩化カルシウムを用いて硬度3°DHに調製した人工硬水を用いた。
<洗浄条件>
洗浄機:ホシザキ社製、電気製自動食器洗浄機JWE−680AJ
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
すすぎ1回当たりの水量:2L
<洗浄性評価>
洗浄、すすぎ後の皿を室温で乾燥後、暗室において蛍光灯を照射、反射させて汚れの残存状況を目視判定により以下の基準で評価した。
◎:清浄な皿と比較して差がない。
○:うすい曇りのみが認められる。
△:スポットのみが認められる。
×:曇りとスポットが認められる。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0043】
※2 シリカスケール防止性試験
<試験方法>
炭酸カルシウムにより硬度5°DHに調製した人工硬水を用いて、溶融固形型洗浄剤組成物の濃度を0.01質量%、0.09質量%に希釈した洗浄液を60℃に保持し、清浄なガラス板を10秒間浸漬し、その後洗浄液から取り出しドライヤーで乾燥させた。この工程を20回繰り返した。
次に、このガラス板を60℃に保持した0.5質量%の塩酸水溶液に30分間浸漬し、その後取り出し、イオン交換水ですすいで乾燥させた。このときガラス板に残ったシリカスケールの付着度合いを目視判定により以下の基準で評価した。
なお、評価するスケールはフーリエ変換赤外分光分析により1,100〜900cm-1付近のシリカスケールに特徴的なピークがあること、1,450〜1,410cm-1付近の炭酸スケールに特徴的なピークがないことから、シリカスケールであることを確認した。
<評価基準>
◎:シリカスケールの付着が全く認められなかった。
○:シリカスケールの付着がほとんど認められなかった。
△:シリカスケールの付着が若干認められた。
×:著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0044】
※3 膨張抑制性試験
<試験方法>
原料を全て配合し充填前まで製造したスラリー状の溶融固形型洗浄剤組成物を、胴周521mmの円筒状で蓋ができるポリプロピレン製容器に4kg充填し蓋をした。これを冷却固形化し、20℃で1ヵ月間保管したときの最も変化の大きい部分の胴周を測定したのち、容器の膨張率(数1)を算出し以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:容器の膨張率が1.5%未満。
×:容器の膨張率が1.5%以上。
とし、○を実用性のあるものとして判定した。
(数1)
膨張率(%)=測定時の胴周(mm)/空容器の胴周(mm)×100(%)
【0045】
※4 固形化性試験
<試験方法>
原料を全て配合し充填前まで製造したスラリー状の溶融固形型洗浄剤組成物を、胴周521mmの円筒状で蓋ができるポリプロピレン製容器に、4kg充填して蓋をし、以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:1日後に全体が固形化していた。
×:1日後に全体が固形化していなかった。
とし、○を実用性のあるものとして判定した。
【0046】
※5 溶解安定性試験
〔試験方法〕
1Lガラスビーカーに1Lの水を入れ60℃に保持し、長さ40mm、直径8mmの回転子を用いてマグネティックスターラー(型番RS‐4DR(アズワン株式会社))で回転速度600rpmにして撹拌した。そこへ、高さが10mm以上、15mm以下の正四角錐台状の溶融固形型洗浄剤組成物3.2gを1個入れ、溶解して目視で確認できなくなるまでに要した時間を測定し、以下の基準で評価した。
◎:溶解までに要した時間が90秒以上、240秒未満。
○:溶解までに要した時間が30秒以上、90秒未満又は240秒以上、600秒未満、
×:溶解までに要した時間が30秒未満又は600秒以上。
とし、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0047】
※6 成分均一性試験
<試験方法>
溶融固形型洗浄剤組成物の溶融スラリーを1kg作成し、溶融スラリーの一部(10g程度)を採取して、キレート力を測定。その後スラリーの全量を65℃にて充填し1L容積のポリエチレン瓶に入れ、24時間25℃にて放置し冷却固形化させた後、容器上部、容器下部の冷却固形化物を30g以上採取し、キレート力を測定した。溶融スラリーのキレート力を理論値として、以下の評価基準にて評価した。
<キレート力の測定法>
100mLビーカーに溶融固形型洗浄剤組成物を正確に秤量し、蒸留水で約100mLに希釈する。1mol/LのNaOHを2mL、1/100mol/Lの塩化カルシウム2水和物溶液を10mL加える。NN指示薬(1−(2−ヒドロキシ−4−スルホ−1−ナフチルアゾ)−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸)を約0.1g加えよく撹拌する。1/100mol/L EDTA溶液で滴定し、赤紫から青に変色した点を終点とする。洗浄剤を加えないブランクを滴定した時の滴定量と、洗浄剤を加えた時の滴定量よりキレート力(数2)を算出する。
(数2)
キレート力(CaCO3mg/g)=[(a)−(b)]×100.09/(s)
(a): 試料を加えないときの滴定量(mL)
(b): 試料を加えたときの滴定量(mL)
(s): 試料採取量
<評価基準> 理論値と比較して
◎:上部、下部のキレート力のズレが5%未満。
○:上部、下部のキレート力のズレが5%以上、15%以下。
×:上部、下部のキレート力のズレが15%以上。
とし、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0048】
※7 嵩比重試験
<試験方法>
1Lのステンレスビーカーに質量500gの溶融固形型洗浄剤組成物を、スリーワンモーターを用いて300rpmで激しく撹拌して製造した。スラリー状の溶融固形型洗浄剤組成物を温度75〜80℃にて容器に充填し、そのときの質量と体積から比重を測定し、以下の基準で評価した。
○:比重が1.5以上。
△:比重が1.3以上、1.5未満。
×:比重が1.3%未満。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0049】
※8:洗浄性試験2(40℃)
<被洗浄物>
直径20cmのガラス皿に市販のマヨネーズ(キューピー社製)2gを均一に塗布し、室温で乾燥させた汚染皿を被洗浄物とした。
<試験方法>
溶融固形型洗浄剤組成物の濃度を0.04質量%に希釈した洗浄液を洗浄機の洗浄液タンクに貯留して40℃で保持し、洗浄ラックに汚染皿5枚を設置し、以下の条件で洗浄、すすぎを行った。溶融固形型洗浄剤組成物の希釈水、すすぎ水は塩化カルシウムを用いて硬度3°DHに調製した人工硬水を用いた。
<洗浄条件>
洗浄機:ホシザキ社製、電気製自動食器洗浄機JWE−680AJ
洗浄温度:40℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
すすぎ1回当たりの水量:2L
<洗浄性評価>
洗浄、すすぎ後の皿を室温で乾燥後、暗室において蛍光灯を照射、反射させて汚れの残存状況を目視判定により以下の基準で評価した。
◎:清浄な皿と比較して差がない。
○:うすい曇りのみが認められる。
△:曇りのみ認められる。
×:曇りとスポットが認められる。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0050】
※9 バイオフィルム防止性試験
<試験方法>
各溶融固形型洗浄剤組成物5gを滅菌済みのミューラーヒントン培地〔日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製〕を用いて全量を100gにして、各溶融固形型洗浄剤組成物の5質量%コンク溶液を調製した。本コンク溶液を更に滅菌済みミューラーヒントン培地を用いて溶融固形型洗浄剤組成物の濃度として0.07質量%となるように希釈調製し、それぞれ24穴マイクロプレート〔旭テクノグラス株式会社製〕に2mL量りとった。
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC13275)、クレブシェラ菌(Klebsiella pneumoniae ATCC13883)をそれぞれLB培地〔日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製〕を用いて、37℃で18時間前培養して増殖した菌液を、ピペットマンを用いて当該マイクロプレート内の試験溶液に100μL接種した。これを37℃で48時間培養後に培養液を廃棄し、滅菌精製水2mLで各ウェル内を5回洗浄した。マイクロプレート壁に付着したバイオフィルムを0.1質量%クリスタルバイオレット液で染色し、滅菌水でリンス後、バイオフィルムの形成状態を目視によって観察した。
◎:バイオフィルムがプレート壁面の20%未満を覆う状態。
○:バイオフィルムがプレート壁面の20%以上、40%未満を覆う状態。
△:バイオフィルムがプレート壁面の40%以上、60%未満を覆う状態。
×:バイオフィルムがプレート壁面の60%以上、100%以下を覆う状態。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0051】
※10 漂白性試験
<洗浄条件>
使用洗浄機:ホシザキ社製、電気製自動食器洗浄機JWE−680AJ
洗浄温度:66℃
洗浄時間:40秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:9秒
洗浄液:溶融固形型洗浄剤組成物の0.07質量%希釈液
溶融固形型洗浄剤組成物希釈用及びすすぎ用の使用水:炭酸カルシウム換算で、ドイツ硬度3°DHの硬水
すすぎ1回当たりの水量:2L
<被洗浄物の調整>
白色磁器皿(直径12cm)を80℃の紅茶に5分間浸漬した後、100℃で30分間加温し、褐色化させた汚染皿を漂白性試験用被洗浄物とした。
<試験方法>
上記の方法で調整した汚染皿10枚を食器洗浄機の洗浄ラックに設置し、上記洗浄条件にて洗浄、すすぎ後、室温にて乾燥させた。茶渋の残存状況を目視判定により以下の基準で評価した。
◎:茶渋が除去されている。
○:茶渋がほとんど除去されている。
△:茶渋は除去されているが、茶渋の残存が認められる。
×:茶渋が除去されていない。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0052】
※11 金属腐食防止性試験
<試験方法>
テストピース[ステンレス(SUS430)、ねずみ鋳鉄(FC200)]は、予め中性洗剤で洗浄しアセトン処理して乾燥させたもの使用する。炭酸カルシウム換算で、75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で各溶融固形型洗浄剤組成物を0.07質量%に希釈し、60mLを70mL容量の蓋付ガラス瓶に入れ、その中にテストピースを浸漬し、70℃の恒温器内で5日間保存した。保存後のテストピースを取り出し、イオン交換水にてすすぎをおこない乾燥させて、テストピース表面の状態を目視により外観観察し、下記基準で腐食性を判定した。
<金属腐食防止性評価基準>
◎:腐食がない。
○:ほとんど腐食がない。
△:やや腐食がみられるが、使用上問題ないレベル。
×:ひどく腐食した。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0053】
※12 臭気性試験
<洗浄条件>
洗浄機:ホシザキ社製、電気製自動食器洗浄機JWE−680AJ
洗浄温度:66℃
洗浄時間:40秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
すすぎ1回当たりの水量:2L
洗浄液:溶融固形型洗浄剤組成物の0.1質量%希釈液
溶融固形型洗浄剤組成物希釈用及びすすぎ用の使用水:炭酸カルシウム換算で、ドイツ硬度3°DHの硬水
<被洗浄物>
直径20cmのガラス皿にマヨネーズ(キューピー社製)2gを均一に塗布し、室温で乾燥させた汚染皿を被洗浄物とした。
<試験方法>
被洗浄物を洗浄機内にセットし洗浄及びすすぎをおこない、洗浄機のドアを開けて、洗浄機内の雰囲気中の臭気を5人のパネラーにて5段階の評価(5:臭わない、4:ほとんど臭わない、3:わずかに臭う、2:臭う、1:臭いが強い)をおこない、全パネラーの評価の平均点より、以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:平均点が3.5以上、5以下。
△:平均点が2.5以上、3.5未満。
×:平均点が1以上、2.5未満。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。