(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
現在の地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式であるISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)において、一般的な送信パラメータ(mode 3、キャリア変調64QAM、畳み込み符号の符号化率3/4、ガードインターバル比1/8、12セグメント)で伝送できる情報レートは16.8Mb/s程度である。地上デジタル放送のHDTV画質や付加サービスなどの改善向上のために、伝送可能な情報レートを増加させることが望まれている。
【0003】
情報レートを増加させるためには、例えば非特許文献1に記載の技術のように、偏波MIMO−超多値OFDM伝送技術と、UHF帯の2つのチャンネルを用いるバルク伝送技術とを組み合わせた新しい伝送方式を用いることが考えられる。
【0004】
一方、将来の第5世代移動通信(5G)システムでの無線伝送技術として、非直交マルチアクセス技術が検討されている。この技術は、同一の周波数と時間における無線伝送において、送信電力密度方向に情報を多重するものである(例えば、特許文献1及び非特許文献2参照)。複数の携帯端末間での受信電力差の存在を前提に、携帯端末受信機での干渉キャンセル信号処理技術を活用することにより、多重された情報を分離することができる。
【0005】
また、非特許文献3に記載の技術のように、地上デジタル放送の混信波を送信している混信局を探索するために、混信を受けている希望波から混信波のみを抽出するISDB−T地上デジタル混信局探索装置が知られている。この装置は、受信電波から希望波のレプリカを生成し、受信電波から希望波のレプリカを減算することにより、大きな電力の希望波に埋もれた小さな電力の混信波を抽出するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載のような方式は、現在のISDB−T方式による地上デジタル放送の受信について後方互換性を確保することが困難である。新しい伝送方式を導入する際には、従来の伝送方式とのサイマル放送のような作業リスクが伴うことが懸念される。
【0009】
現在の地上デジタル放送の受信について後方互換性を保ちながら情報レートを増加させる方法として、現在の地上デジタル放送を放送しながら別チャンネルや別周波数帯の電波(搬送波)で追加情報を伝送し、地上デジタル放送の情報と追加情報を統合して情報レートを増加させるキャリアアグリゲーションと呼ばれる方法が考えられる。しかしこの方法は、放送で占有する電波の周波数帯域が増えることになり、周波数資源がひっ迫する現在の状況を考えれば、賢明な方法とは考え難い。
【0010】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、現在のISDB−T方式による地上デジタル放送の受信について後方互換性を保ちながら、現在の放送チャンネル(周波数帯域)を増やすことなく伝送可能な情報レートを増加させることが可能な送信装置及び受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の送信装置は、第1の放送波、及び
情報レートを増加させるために付加される信号であって該第1の放送波よりも同一チャンネル干渉の混信保護比以上低い電力の第2の放送波を多重して送信する送信装置であって、ISDB−T方式に準拠した伝送パラメータにより第1の送信信号を変調して前記第1の放送波を生成する第1の変調部と、所定の伝送パラメータにより第2の送信信号を変調して前記第2の放送波を生成する第2の変調部と、前記第1の放送波及び前記第2の放送波を多重した送信波を生成する電力合成部と、前記送信波を送信する送信アンテナと、を備え、前記所定の
伝送パラメータは、受信側で前記送信波から前記第2の放送波を抽出して復調する際に必要となる所要C/Nを満たすように設定されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る第2の送信装置は、第1の放送波、及び
情報レートを増加させるために付加される信号であって該第1の放送波よりも同一チャンネル干渉の混信保護比から受信アンテナの交差偏波識別度を差し引いた値以上低い電力の第2の放送波を空間多重して送信する送信装置であって、ISDB−T方式に準拠した伝送パラメータにより第1の送信信号を変調して
前記第1の放送波を生成する第1の変調部と、所定の伝送パラメータにより第2の送信信号を変調して前記第2の放送波を生成する第2の変調部と、前記第1の放送波を第1の偏波で送信する第1の送信アンテナと、前記第2の放送波を第2の偏波で送信する第2の送信アンテナと、を備え、前記所定の
伝送パラメータは、受信側で
受信信号から前記第2の放送波を抽出して復調する際に必要となる所要C/Nを満たすように設定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る第1受信装置は、第1の送信装置から送信される送信波を復調する受信装置であって、前記送信アンテナから送信される前記送信波を受信する受信アンテナと、前記送信波を復調して前記第1の送信信号の復調信号を生成する第1の復調部と、前記第1の送信信号の復調信号を変調して前記第1の放送波のレプリカを生成するレプリカ生成部と、前記送信波から前記第1の放送波のレプリカを差し引いて前記第2の放送波を抽出する減算部と、前記減算部により抽出された前記第2の放送波を復調して前記第2の送信信号の復調信号を生成する第2の復調部と、を備えること
により情報レートを増加させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る第2の受信装置は、第2の送信装置から送信される前記第1の放送波及び前記第2の放送波が空間多重された送信波を復調する受信装置であって、前記第1の偏波用の第1の受信アンテナと、前記第2の偏波用の第2の受信アンテナと、前記第1の受信アンテナにより受信した前記送信波を復調して前記第1の送信信号の復調信号を生成する第1の復調部と、前記第1の送信信号の復調信号を変調して、前記第2の受信アンテナにより受信される前記第1の放送波のレプリカを生成するレプリカ生成部と、前記第2の受信アンテナにより受信した
受信信号から前記第1の放送波のレプリカを差し引いて前記第2の放送波を抽出する減算部と、前記減算部により抽出された前記第2の放送波を復調して前記第2の送信信号の復調信号を生成する第2の復調部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、現在のISDB−T方式による地上デジタル放送の受信について後方互換性を保ちながら、現在の放送チャンネル(周波数帯域)を増やすことなく伝送可能な情報レートを増加させることができる。すなわち、本発明によれば、従来の受信装置では従来と同様にISDB−T方式の地上デジタル放送を受信でき、本発明の受信装置を用いれば情報レートが増加されたデジタル放送を受信することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る送信装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示す例では、送信装置1は、第1の変調部11と、第2の変調部12と、電力合成部13と、送信アンテナ14と、を備える。
【0019】
図2は、送信装置1が送信する送信波のスペクトルを示す模式図である。放送波Aは、現在のISDB−T方式に準拠した信号とする。一方、放送波Bは、情報レートを増加させるために付加される信号である。放送波Aと放送波Bの送信電力には大きな差を持たせ、その電力差Pは、放送波Bが放送波Aの受信に妨害を与えない程度とする。つまり、放送波Bの電力は、放送波Aよりも、同一チャンネル干渉の混信保護比以上低い電力とする。放送波Bの信号形式として、効率的に情報を伝送できる新しい伝送方法を規定することができるが、放送チャンネルを増やさないことを考えると、占有帯域幅は放送波Aの占有帯域幅である6MHzを超えないことが望ましい。
【0020】
第1の変調部11は、ISDB−T方式に準拠した伝送パラメータにより送信信号aを変調して放送波Aを生成し、電力合成部13に出力する。
【0021】
第2の変調部12は、所定の伝送パラメータにより送信信号bを変調して放送波Bを生成し、電力合成部13に出力する。放送波Bの伝送パラメータは、受信側で受信信号(送信波C)から放送波Bを抽出して復調する際に必要となる所要C/Nを満たすように設定される。ここで、放送波Bは放送波Aと直交性を確保するという制限はないため、放送波Bの伝送方式を放送波Aと独立して選択することができる。
【0022】
電力合成部13は、第1の変調部11により生成された放送波A、及び第2の変調部12により生成された放送波Bを多重した送信波Cを生成し、送信アンテナ14に出力する。
【0023】
送信アンテナ14は、電力合成部13により生成された送信波Cを送信する。
【0024】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
図3に示す例では、受信装置2は、受信アンテナ21と、第1の復調部22と、レプリカ生成部23と、減算部24と、第2の復調部25と、を備える。受信装置2は送信装置1から送信される送信波Cを受信して復調する。
【0025】
従来のISDB−T方式用の受信装置が、送信装置1から送信される送信波Cを受信したとすると、放送波Bは放送波Aの受信に妨害を与えない低い電力なので、放送波Bを雑音とみなして、放送波Aのみを従来どおりに受信することができる。
【0026】
受信アンテナ21は、送信装置1の送信アンテナ14から送信される送信波Cを受信する。
【0027】
第1の復調部22は、受信アンテナ21を介して受信した送信波Cを復調して送信信号aの復調信号a’を生成し、外部及びレプリカ生成部23に出力する。第1の復調部22は、従来のISDB−T方式用の受信装置と同じ復調処理を行うものであり、放送波Bは放送波Aの受信に妨害を与えない低い電力なので、放送波Bを雑音とみなして、放送波Aのみを従来どおりに受信する。よって、復調信号a’の情報レートは、従来のISDB−T方式による情報レートと同じである。
【0028】
一方、送信信号bの復調信号b’を得るためには、送信波Cから放送波Aを除去して放送波Bを抽出する必要がある。この処理はいわゆる干渉波キャンセルとして多くの手法が知られている。以下にその例を示す。
【0029】
レプリカ生成部23は、第1の復調部22により復調された復調信号a’を送信装置1の第1の変調部11と同じ伝送パラメータにより変調して、放送波Aのレプリカである放送波A’を生成し、減算部24に出力する。
【0030】
減算部24は、受信アンテナ21を介して受信した送信波Cからレプリカ生成部23により生成された放送波A’を差し引いて、放送波Bを推定した放送波B’を抽出し、第2の復調部25に出力する。
【0031】
第2の復調部25は、減算部24により抽出された放送波B’を復調し、送信信号bの復調信号b’を得る。ここで、放送波Bの送信電力は放送波Aに比べて低いので、放送波Bの受信C/Nも同様に低くなる。したがって、低いC/Nでも復調できるように、送信装置1で放送波Bの伝送パラメータを設定しなければならない。
【0032】
以上の結果、ここで考えてきた放送チャンネルからは、復調信号a’と復調信号b’の情報が得られ、その情報レートは、従来のISDB−T方式に比べて復調信号b’に相当する情報レート分だけ増加したことになる。
【0033】
つぎに、送信装置1における放送波Bの重畳について説明する。まず、放送波Bの電力は放送波Aに妨害を与えないような電力に制限にする必要がある。ISDB−Tの同一チャンネル干渉の混信保護比は、ARIB STD−B21によれば28[dB]であるから、放送波Aと放送波Bの電力差Pを28[dB]とする。このとき、放送エリア内に配置される受信装置2では、問題なく放送波Aを復調することができる。
【0034】
つぎに、受信装置2における放送波Bの復調を考えると、放送波Bの受信電力(すなわち受信C/N)が十分に大きければ、受信装置2は放送波Bを問題なく復調できる。総務省令第108号「基幹放送局の開設の根本的基準」の十五(3)によれば、放送区域(放送エリア)の最低の電界強度の値は1[mV/m]と規定されている。よって、放送波Aの放送エリアのフリンジ(外周)近傍では、放送波Aの電界は、単位をdBμV/mで表すと、60[dBμV/m]となる。その場合、同じ場所での放送波Bの電界は60−28=32[dBμV/m]となり、放送波Bの受信C/Nは放送波Aの受信C/Nに比べて非常に低い値となる。
【0035】
一方、変調方式が64QAM、内符号の符号化率が7/8の伝送パラメータで、エラーフリーを得るための所要C/Nの値は、ARIB STD−B31によれば22[dB]である。また、OFDM復調入力信号のC/Nが22[dB](いわゆる所要C/N)を得るための所要電界は回線計算から導出でき、ARIB STD−B31によれば51[dBμV/m]である。よって、放送波Bの電界が32[dBμV/m]のときのOFDM復調入力信号のC/Nは、22−(51−32)=3[dB]となる。
【0036】
したがって、放送波Aのエリア内において放送波Bも受信できるようにするためには、送信装置1は放送波Bの伝送方式に所要C/Nが3[dB]以下の方式を用いればよい。その結果、その伝送方式に応じた情報レートの増加を見込むことができる。例えば、放送波Bに現在のISDB−Tと同様の伝送方式や誤り訂正符号を用いて変調方式をBPSK(符号化率1/2)とすると、所要C/Nは3[dB]程度であるため、放送波Aのエリア内に配置された受信装置2での復調が可能となる。この場合には約2[Mbps]の情報レートの増加を見積ることができる。
【0037】
さらに、誤り訂正符号としてLDPC符号のような現在のISDB−T方式の誤り訂正符号より訂正能力の高い符号を用いれば、所要C/NはISDB−T方式よりも2〜3[dB]程度の改善を見込むことができる。これより、変調方式としてQPSK(符号化率1/2)を採用することも可能となる。この場合には4[Mbps]程度の情報レートの増加を見積もることができる。
【0038】
また、放送波Bの受信可能なエリアを限定する(すなわち、放送波Aは受信できるが放送波Bは受信できないエリアが存在することを可とする)ことを許容すれば、放送波Bの情報レートがより大きくなるような伝送パラメータを選択することも可能である。このときは、放送波Bの情報レートが大きくなるに従って所要C/Nも大きくなり、放送波Bの受信可能なエリアは小さくなることになる。例えば、放送波Bの変調方式としてISDB−T方式の伝送パラメータの一つであるQPSK(符号化率2/3)を採用すると、所要C/Nは6.6[dB]となる。この場合には、放送波Bを受信できるエリアは放送波Aの電界が51−(22−6.6)+28=63.6[dBμV/m]のエリアに限られるが、5.4[Mbps]程度の情報レートの増加を見積もることができる。
【0039】
上述したように、第1の実施形態に係る送信装置1は、放送波A及び放送波Aよりも同一チャンネル干渉の混信保護比以上低い電力の放送波Bを多重した送信波Cを送信アンテナ14により送信する。放送波AはISDB−T方式に準拠した伝送パラメータを用いて生成され、放送波Bは受信側で受信信号(送信波C)から該放送波Bを抽出して復調する際に必要となる所要C/Nを満たす伝送パラメータを用いて生成される。また、第1の実施形態に係る受信装置2は、送信アンテナ14から送信される送信波Cを受信し、送信波Cを復調して送信信号aの復調信号a’を生成するとともに、送信波Cから放送波Aのレプリカを差し引いた放送波B’を復調して送信信号bの復調信号b’を生成する。
【0040】
かかる構成により、第1の実施形態によれば、現在のISDB−T方式による地上デジタル放送の受信について後方互換性を保ちながら、現在の放送チャンネル(周波数帯域)を増やすことなく伝送可能な情報レートを、放送波Bによる信号の情報レートだけ増加させることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
つぎに、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では放送波A及び放送波Bを多重して同一の偏波で送信するが、第2の実施形態では、放送波A及び放送波Bの交差偏波により空間多重を行う。
【0042】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る送信装置の構成例を示すブロック図である。
図4に示す例では、送信装置1は、第1の変調部11と、第2の変調部12と、第1の送信アンテナ31と、第2の送信アンテナ32と、を備える。
【0043】
第1の変調部11は、ISDB−T方式に準拠した伝送パラメータにより送信信号aを変調して放送波Aを生成し、第1の送信アンテナ31に出力する。
【0044】
第2の変調部12は、所定の伝送パラメータにより送信信号bを変調して放送波Bを生成し、第2の送信アンテナ32に出力する。第1の実施形態と同様に、放送波Bの伝送パラメータは、受信側で受信信号(送信波C)から放送波Bを抽出して復調する際に必要となる所要C/Nを満たすように設定される。
【0045】
第1の送信アンテナ31は、第1の偏波用の送信アンテナであり、第1の変調部11により生成された放送波Aを第1の偏波で送信する。また、第2の送信アンテナ32は、第2の偏波用の送信アンテナであり、第2の変調部12により生成された放送波Bを第2の偏波で送信する。第1の偏波及び第2の偏波は互いに交差する偏波とし、本実施形態では、例えば水平偏波及び垂直偏波とする。あるいは、右旋円偏波及び左旋円偏波としてもよい。第1の送信アンテナ31から送信される放送波A、及び第2の送信アンテナ32から送信される放送波Bは、空間合成されて送信波Cとなる。
【0046】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
図5に示す例では、受信装置4は、第1の受信アンテナ41と、第2の受信アンテナ42と、第1の復調部22と、レプリカ生成部23と、減算部24と、第2の復調部25と、を備える。受信装置4は、送信装置3から送信される放送波A及び放送波Bが空間多重された送信波Cを受信して復調する。なお、放送波Aのみを復調する場合には、第1の受信アンテナ41だけあればよい。
【0047】
第1の受信アンテナ41は第1の偏波用の受信アンテナであり、第2の受信アンテナ42は第2の偏波用の受信アンテナである。受信アンテナの交差偏波識別度をX[dB]とすると、送信波Cを第1の受信アンテナ41により受信すると、第2の偏波の受信電力についてはX[dB]の減衰を受ける。また、送信波Cを第2の受信アンテナ42により受信すると、第1の偏波の受信電力ついてはX[dB]の減衰を受ける。
【0048】
第1の復調部22は、第1の受信アンテナ41により受信した送信波C1を復調して送信信号aの復調信号a’を生成し、外部及びレプリカ生成部23に出力する。第1の復調部22は、従来のISDB−T方式用の受信装置と同じ復調処理を行うものであり、放送波Bは放送波Aの受信に妨害を与えない受信電力とすることが必要である。UHF帯テレビ放送の受信アンテナは、Recommendation ITU−R BT.419−3によると、受信アンテナの交差偏波識別度は16[dB]である。したがって、ISDB−Tの同一チャンネル干渉の混信保護比を満足するための放送波Aと放送波Bの電力差Pは、28−16=12[dB]でよい。
【0049】
レプリカ生成部23は、第1の復調部22により復調された復調信号a’を送信装置1の第1の変調部11と同じ伝送パラメータにより変調して、第1の受信アンテナ41により受信される放送波Aのレプリカである放送波A’を生成する。そして、第2の受信アンテナ42により受信される放送波Aのレプリカを生成するため、放送波A’を受信アンテナの交差偏波識別度であるX[dB]だけ減衰させた放送波A”を生成し、減算部24に出力する。
【0050】
減算部24は、第2の受信アンテナ42により受信した送信波C2からレプリカ生成部23により生成された放送波A”を差し引いて、放送波Bを推定した放送波B’を抽出し、第2の復調部25に出力する。
【0051】
第2の復調部25は、減算部24により抽出された放送波B’を復調し、送信信号bの復調信号b’を得る。
【0052】
第1の実施形態と同様に、放送波Aのエリア内で放送波Bが受信可能な所要C/Nを考えると、放送エリアのフリンジにおける放送波Bの電界は60−12=48[dBμV/m]となり、このときの受信C/Nは22−(51−48)=19[dB]となる。これより放送波BはISDB−T方式の64QAM(符号化率2/3)での送信も可能となり、16[Mbps]程度の情報レートの増加を見積もることができる。また、第1の実施形態と同様に、放送波Bの誤り訂正符号にISDB−Tよりも訂正能力の高い符号を利用することにより、さらに情報レートの増加を見込むこともできる。
【0053】
上述したように、第2の実施形態に係る送信装置3は、放送波Aを第1の送信アンテナ31から第1の偏波で送信し、放送波Aよりも同一チャンネル干渉の混信保護比から受信アンテナの交差偏波識別度を差し引いた値以上低い電力の放送波Bを第2の送信アンテナ32から第2の偏波で送信して、放送波A及び放送波Bを空間多重する。放送波AはISDB−T方式に準拠した伝送パラメータを用いて生成され、放送波Bは受信側で受信信号(送信波C)から該放送波Bを抽出して復調する際に必要となる所要C/Nを満たす伝送パラメータを用いて生成される。また、第2の実施形態に係る受信装置4は、第1の送信アンテナ31から送信される送信波Cを第1の偏波用の第1の受信アンテナ41で受信し、第2の送信アンテナ32から送信される送信波Cを第2の偏波用の第2の受信アンテナ42で受信する。そして、送信波Cを復調して送信信号aの復調信号a’を生成するとともに、送信波Cから放送波Aのレプリカを差し引いた放送波B’を復調して送信信号bの復調信号b’を生成する。
【0054】
かかる構成により、第2の実施形態によれば、交差偏波多重を用いることにより、第1の実施形態よりも放送波Bの送信電力を大きくすることができる。そのため、第1の実施形態よりもさらに情報レート増加をさせることができるようになる。
【0055】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。