(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
レーダトランシーバとの関連で、本発明の実施形態を以下に説明する。但し、本発明は、例えばRF通信デバイスのRFトランシーバ等のレーダ以外の適用例にも適用することができることに留意されたい。実際、オンチップRF発振器(通常「局部発振器」又は単にLOと呼ばれる)の特性を試験するための本明細書に記載される手法は、システムの特定の適用例に依存しない。
【0013】
いわゆる「単一チップレーダ」は、1つのチップ内に、距離及び/又は速度測定に必要とされる主要RF機能を提供する回路網を含んでもよい。RF回路網を含むシリコンチップは、通常、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)と呼ばれる。レーダMMICは、中でも、RF発振器、増幅器、及びミキサ等のRFフロントエンド回路網、並びに増幅器及びアナログフィルタ等のベースバンド(及び/又は中間周波数(IF)帯域)回路網を含み得る。また、ベースバンド又はIF帯域信号をデジタル化するために、チップ内にアナログ・デジタル変換器が含まれてもよい。未来のセンサ設計では、ADC、ベースバンド回路網、及びRFフロントエンド回路網と共に、チップ内に、デジタル信号プロセッサも含まれ得る。しかしながら、現在のレーダセンサでは、信号プロセッサは、通常、別個のチップ内に実装される。
【0014】
図1は、レーダセンサの構造例を示すブロック図を示す。しかしながら、同様の構造が、通信システム等の他の適用例において使用されるRFトランシーバにも見られる。従って、少なくとも1つの送信アンテナ5(TXアンテナ)及び少なくとも1つの受信アンテナ6(RXアンテナ)が、MMIC1に含まれるRFフロントエンド10に接続される。RFフロントエンド10は、RF信号処理に必要とされる全ての回路コンポーネントを含み得る。このような回路コンポーネントは、例えば、局部発振器(LO)、RF電力増幅器、低雑音増幅器(LNA)、ラットレース結合器及びサーキュレータ等の方向性結合器、並びにベースバンド若しくはIF帯域へのRF信号のダウンコンバージョン、又はRF帯域へのベースバンド信号若しくはIF信号のアップコンバージョン用のミキサを含む。なお、単一アンテナの代わりに、アンテナアレイが使用されてもよい。図示された例は、別個のRX及びTXアンテナを有するバイスタティック(又は擬似モノスタティック)レーダシステムを示す。モノスタティックレーダシステムの場合、単一アンテナ又は単一アンテナアレイは、電磁(レーダ)信号の受信及び送信の両方に使用することができる。この場合、方向結合器(例えば、サーキュレータ)が、レーダチャネルから受信されたRF信号から、レーダチャネルに送信されるRF信号を区別するために使用されてもよい。
【0015】
周波数変調連続波(FMCW)レーダシステムの場合、TXアンテナ5によって放射される送信RF信号は、約20GHzを超える値(例えば、24GHz)〜81GHzの範囲内(例えば、自動車適用例では77GHz)にあり、いわゆる「チャープ」(周波数ランプ)から成る。RXアンテナ6によって受信されるRF信号は、レーダエコー、すなわち、いわゆるレーダ目標で後方散乱された信号を含む。既に述べた通り、受信RF信号は、ベースバンドへとダウンコンバートされ、さらに、基本的にベースバンド信号のフィルタリング及び増幅を含むアナログ信号処理(
図1を参照、ベースバンド信号処理チェーン13)を用いてベースバンドで処理される。ベースバンド信号は、最終的に、1つ又は複数のアナログ・デジタル変換器14を用いてデジタル化され、さらに、デジタル領域(
図1を参照、例えば、デジタル信号プロセッサ15に実装されるデジタル信号処理チェーン)において処理される。システム全体が、適宜のファームウェアを実行するマイクロコントローラ等のプロセッサを用いて少なくとも部分的に実装され得るシステムコントローラ16によって制御される。
図1に示すように、RFフロントエンド10及びアナログベースバンド信号処理チェーン(及び任意でADC14)は、MMIC1内に組み入れられてもよい。
【0016】
図2は、例えばレーダ距離測定デバイスに含まれるようなRF受信チャネルの受信パス(受信チャネル)を示す。本例によれば、受信チャネルは、RF入力信号S
RX、及びRF入力信号S
RXをベースバンド又はIF帯域にダウンコンバートするために使用されるRF発振器信号S
LO(ミキサ基準信号)が供給されるミキサ12を含む。RF入力信号S
RXは、アンテナ(
図1を参照、RXアンテナ6)によって提供されてもよく、ミキサ12に供給される前に事前増幅されてもよい。本例では、増幅RF入力信号(信号S
RX’)は、RF増幅器11によって提供され、及びRF発振器信号S
LOは、例えば、位相ロックループ(PLL)において結合された電圧制御発振器(VCO)を含み得る局部発振器LOによって生成される。しかしながら、RF発振器信号S
LOは、実際の適用例に応じた他の回路によって提供されてもよい。レーダ距離測定デバイスにおいて使用される場合、RF発振器信号S
LOは、約20GHz〜81GHzの範囲内(通常、約77GHz)となり得る。しかしながら、より高い、又はより低い周波数も適用可能となり得る。いわゆる周波数変調連続波(FMCW)レーダセンサの場合、RF発振器信号S
LOは、通常、周波数変調される。しかしながら、FMCWレーダの動作原理は、それ自体知られており、従って、本明細書ではそれ以上説明を行わない。ミキサ12及びミキサ12の上流に配置される全ての回路コンポーネントは、RFフロントエンド10のパーツと見なすことができる。本例では、ダウンコンバージョンは、1つのミキサ12によって、1つのステップで達成される。あるいは、ダウンコンバージョンは、直列接続された2つ以上のミキサを用いて、2つ以上のステップで達成されてもよい。
【0017】
上述の通り、1つ又は複数のアンテナ及びデジタル信号プロセッサコアが、RFフロントエンド(RF回路網及びミキサ)及びベースバンド信号処理チェーンと同じチップパッケージ内に含まれてもよい。実質的にレーダ距離測定システム全体が単一のチップパッケージに組み入れられるので、このシステムは、システムインパッケージ(SiP)とも呼ばれる。しかしながら、ADC及びシステムのデジタル部分(通常、CMOS技術を用いて製造される)は、1つ又は複数の別個のチップ内に配置されてもよい。同様に、アンテナは、別個のパッケージ内に配置されてもよい。一部の実施形態では、RF及びベースバンド回路網、並びに1つ又は複数のアンテナのパッケージ化のために、いわゆる埋込ウエハレベルボールグリッドアレイ(eWLB)パッケージが用いられる。
【0018】
既に述べた通り、ミキサ12は、RF入力信号S
RX’(増幅アンテナ信号)をベースバンドにダウンコンバートする。各ベースバンド信号(ミキサ出力信号)は、S
BBで表される。ダウンコンバージョンは、単一の段階で(すなわち、RF帯域からベースバンドへ)、又は1つ若しくは複数の中間段階(RF帯域からIF帯域へ、及び続いてベースバンドへ)を経て達成されてもよい。ベースバンド信号S
BBは、次に、例えば信号処理チェーン13によって提供されるアナログベースバンド信号処理を受ける。信号処理チェーン13は、不要のサイドバンド又はイメージ周波数を抑制する少なくとも1つのアナログフィルタを含む。信号処理チェーン13は、以下のコンポーネント:ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、及びベースバンド増幅器の少なくとも1つを含み得る。フィルタリングされたベースバンド信号(信号処理チェーン13の出力信号)は、S
BB’によって表される。RF入力信号をベースバンドへとダウンコンバートするためにミキサを利用するレシーバは、ホモダインレシーバとして、それ自体知られており、従って、それ以上より詳細に説明を行わない。フィルタリングされたベースバンド信号S
BB’は、次に、サンプリングされ、デジタル信号S
RXDIGに変換(アナログ・デジタル変換器14)され、これは、次に、例えば信号プロセッサ15を用いてデジタル領域でさらに処理される。ベースバンドの代わりにIFバンドへのダウンコンバージョンの場合、IF信号は、本例におけるベースバンド信号と同じように処理され、続いて、IF信号のデジタル復調及びさらなるデジタル処理のためにデジタル化されてもよい。デジタル信号処理は、例えば、適宜のソフトウェア命令を実行するデジタル信号プロセッサ(DSP)を用いて行われてもよい。このために、1つ又は複数のプロセッサコアが、アナログ信号処理チェーン13と同じチップ内に組み入れられてもよい。しかしながら、本実施態様では、デジタル信号プロセッサらは、通常、別々の半導体チップ内に設けられる。
【0019】
図2は、RFレシーバ又はトランシーバの受信パスを示す。いわゆるバイスタティック又は擬似モノスタティックレーダシステムでは、レシーバ及びトランスミッタが別個のアンテナを使用するので、レシーバは、トランスミッタから分離してもよい。しかしながら、
図1に示されるのと同様の構造を有した受信パスが、RF信号の送信及び受信に同じアンテナが使用されるモノスタティックレーダシステムにも見られ、本説明は、モノスタティックレーダシステムにも当てはまる。
【0020】
図3は、位相ロックループ(PLL)において結合された電圧制御発振器VCOから成るRF発振器の一実施態様例を示す。このようなRF発振器は、例えば
図2に示されるように、RFトランシーバ又はレシーバにおいて局部発振器LOとして使用されてもよい。
【0021】
図3に示される例によれば、局部発振器LOは、フラクショナルN多係数分周器を備えたPLLを含む。このようなフラクショナルN多係数分周器は、多係数分周器MMD、及び有効分周係数として有理数を得るように、(整数)分周係数を連続的に変更するように構成されたΣ−Δ変調器SDMから成る。このようなPLLの基本原理は、それ自体知られており、例えば、(非特許文献1)に記載されている。
【0022】
PLLは、発振器VCOの制御入力(発振器制御信号S
CTRL)に応じて設定される、f
LOとして表される周波数を有する発振出力信号S
LOを生成する電圧制御発振器VCOを含む。発振出力信号S
LOは、一定の分周比Mを適用する分周器DIVを用いて、事前分周されてもよい。ある具体例では、分周比Mは、約80GHzの発振器周波数f
LOが、約2.5GHzの事前分周発振器周波数f
LO(事前分周発振器信号S
LO’)に変換されるように、32でもよい。信号S
LO’は、次に、選択可能(整数)分周比Nを有する多係数分周器MMDに供給されてもよい。つまり、分周器MMDは、その入力に供給される周波数を分周し、f
PLLと表される周波数を有する分周器出力信号S
PLLを生成するように構成され、f
LO’=N・f
PLL、及びf
LO=N・M・f
PLLである。分周比Nは、分周器MMDの選択入力に供給される信号に基づいて選択可能である。分周器MMDの出力信号S
PLL(周波数f
PLL)は、PLLクロック信号とも呼ばれる。レーダ適用例では、RF発振器周波数f
LOは、76GHz〜81GHzでもよいが、PLLクロック信号S
PLLは、160MHz〜200MHzの範囲内のPLLクロック周波数f
PLLを有してもよい。事前分周器DIVを使用する代わりに、発振器信号S
LOは、多係数分周器MMDに直接供給されてもよく、すなわち、発振器周波数f
LOの事前分周が、省かれてもよい。
【0023】
分周器出力信号S
PLL、及び周波数f
REFを有する基準信号S
REFは、位相検出器PD(位相比較器としても知られる)に供給される。実施態様に応じて、位相周波数検出器PFDが、代わりに用いられてもよい。位相検出器及び位相周波数検出器は、PLLの分野において一般的に用いられており、従って、これ以上より詳細に説明を行わない。
【0024】
本例では、基準信号S
REFは、通常(但し、必ずしもそうである必要はない)水晶発振器である基準発振器XTALの周波数f
CLK(システムクロック周波数とも呼ばれる)を逓倍するように構成された周波数逓倍器FQMによって提供されてもよい。つまり、周波数f
REFは、水晶発振器の共振周波数によって(間接的に)決定されてもよい。あるいは、基準信号S
REFは、周波数逓倍なしに、基準発振器XTALによって直接提供されてもよい。基準周波数f
REFは、例えば、160MHz〜200MHzの範囲内でもよいが、基準発振器XTALによって提供されるシステムクロック周波数f
CLKは、例えば、40MHz〜80MHzの範囲内である。本例では、周波数逓倍器FQMは、2〜5の逓倍率を用いる。但し、適用例に応じて、異なる逓倍率及びf
CLK、f
PLL、及びf
LOの周波数値が使用されてもよい。
【0025】
位相(周波数)検出器P(F)Dの出力信号S
CTRLは、通常、位相検出器の出力段に含まれるチャージポンプによって生成される。出力信号S
CTRLは、制御ループの帯域幅を決定するループフィルタLFによってフィルタリングされたエラー信号と見なすことができる。チャージポンプは、通常、電流信号をループフィルタへと送る。ループフィルタLFの出力信号は、発振器VCOの発振器周波数f
LOを調節し、それにより、制御ループを閉じるための制御信号S
CTRLとして使用される。閉ループは、周波数f
LOが、分周器出力信号S
PLL及び基準信号S
REFの位相が一致する値に継続的に調整される。つまり、位相が「固定」される。チャージポンプを含む位相(周波数)検出器P(F)Dの様々な実施態様は、当該分野において、それ自体知られており、従って、本明細書において、これ以上より詳細には説明を行わない。
【0026】
一般的に、分周器MMDによって使用される分周比Nは、整数である。非整数分周比を得るために、平均(及び有効)分周比が有理数となるように、整数比Nが、Σ−Δ変調器SDMによって変調されてもよい。Σ−Δ変調器SDMは、PLLクロック信号S
PLL(クロック周波数f
PLL)によってクロックされてもよく、有理数(例えば、0〜1又は0〜2)を表す(例えばデジタル)入力値rが供給される。Σ−Δ変調器SDMの出力で生成される値Rは、入力値rに等しい平均値を有する整数値である。整数オフセット値Xが、変調器出力信号Rに加算されてもよい(N=X+R)。合計値Nは、平均で、X+rに等しく、その後、合計値Nに応じて分周比を設定する分周器MMDの選択入力に供給される。つまり、分周器MMDは、変調器出力に応じてS
PLLのクロックサイクル毎に、最新の分周比Nを受信する。Σ−Δ変調により、平均分周比は、X+rであり、すなわち、分数値rによって増加された整数比Xである。あるいは、整数オフセットが、既に入力値rに含まれていてもよい。この場合、rは、0〜1の端数ではなく、特定区間(例えば、区間[2,8]内の有理数である)。通常、MASH3変調器とも呼ばれる三次MASH(多段雑音整形)構造を有するΣ−Δ変調器が使用される。
【0027】
分周器MMDによって使用される(有効有理)分周比Nを適宜に調整することによって、RF発振器信号S
LOの周波数変調を達成することができる。レーダ適用例では、周波数変調は、特に、いわゆるチャープ信号(スイープ信号としても知られる)を生成するために用いられる。チャープ信号、又は単にチャープは、周波数が時間と共に増加する(「アップチャープ」)又は減少する(「ダウンチャープ」)信号である。チャープ信号は、一般的に、ソナー及びレーダ適用例において使用されるが、スペクトル拡散通信等の他の適用例においても使用される。実際には、周波数変動は、線形(線形チャープ、周波数ランプ)、指数関数的(指数チャープ)、又は双曲線形(双曲線チャープ)でもよい。周波数変調RF発振器信号S
LOを生成する効率的な方法の1つは、フラクショナルN分周器の(有理)分周比X+rを適宜に変化させることである。
【0028】
図2に見られるように、発振器信号S
LOは、受信RF信号S
RX’をベースバンドにダウンコンバートするためにミキサによって使用されるミキサ基準信号としても使用される。所望の信号(すなわち、所望のチャープ信号)に加えて、局部発振器信号S
LOは、雑音、具体的には、振幅及び位相雑音を含み、位相雑音は、レーダ距離及び速度測定の感度及び精度を低下させ得るので、より問題がある。局部発振器信号S
LOは、ミキサによって使用されるので、位相雑音は、ベースバンドへと直接変換され、従って、ベースバンド信号S
BB内、及びデジタル信号S
RXDIG(
図2を参照)内にも含まれる。
【0029】
信号処理において、位相雑音は、時に「ジッター」と呼ばれる、時間領域の不安定性によって引き起こされる、波形の位相における急激で、短期間の不規則変動の周波数領域表現である。上述の通り、位相雑音は、重要な品質パラメータであり、局部発振器LOによって生成される位相雑音の量を知ることが重要となり得る。例えば、自動車レーダセンサのような一部の適用例において、各単一MMICが、自動試験(エンドオブライン試験)中に、位相雑音が指定の範囲内にあるか否かをチェックするために試験される。
【0030】
図4は、ブロック図に基づいて、例えば、レーダセンサ(
図2を参照)のMMIC内に組み入れられた局部発振器LO等のRF発振器によって生成される位相雑音を測定するための技術の1つを示す。
図2に示される試験回路を形成する回路コンポーネントは、エンドオブライン試験中にMMICを試験するために使用することができる自動試験装置(ATE)2内に含まれてもよい。試験回路は、被試験体(DUT)、すなわちMMIC1に含まれる局部発振器LOと比較して、非常に低い雑音電力を生成する低雑音RF基準発振器21を含む。従って、位相雑音を解析する技術は、基準発振器技術とも呼ばれる。従って、DUTによって生成される発振器信号S
LOは、ミキサ22のRF入力に送られるが、低雑音基準発振器信号S
TESTは、発振器信号S
LOをベースバンドへとダウンコンバートするために、ミキサ22の基準入力に供給される。ミキサ出力において結果として生じるベースバンド信号は、S
PNと表される。不要なイメージ周波数を除去するためにフィルタリングされ(フィルタ23)、低雑音増幅器(LNA)24によって増幅され得る信号S
PNは、基本的に、発振器信号S
LOに含まれる位相雑音を含む。フィルタリング及び増幅が行われた信号S
PN’は、次に、ADC25によってデジタル化され、さらに、例えば、デジタル信号プロセッサ26又はパーソナルコンピュータのCPU及び適宜のソフトウェアを用いて、デジタル領域で処理される。通常、所望の情報は、例えば、周知の高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて計算することができる、位相雑音のパワースペクトル密度(PSD)に基づく。
【0031】
基準発振器技術に従って集積発振器を試験するために使用することができるATEシステムが、市場で入手できる。一例は、TeradyneのUltraFLEX Test Systemである。しかしながら、それらのシステムは、幾分高価であり、基本的にATEシステムによって提供される限られた数のミキサにより、少数のMMICのみを同時に試験することができる。さらに、オンチップ局部発振器と同じ周波数範囲(すなわち、レーダ適用例の場合、76〜81GHzの範囲)で動作する低雑音基準発振器は、標準ATEでは利用できない。但し、最大約6GHzまでの周波数で動作する基準発振器は、容易に利用できる。
【0032】
図5は、
図2の例に示されるような、RFフロントエンド10(局部発振器LO、RF増幅器11、ミキサ12、アナログベースバンド処理チェーン13)、アナログ・デジタル変換器14、及びデジタル信号プロセッサ15を含むRFトランシーバ(又はレシーバ)の受信経路の一実施形態を示す。局部発振器は、例えば
図3に示されるようなPLLを含む。この点について、説明の繰り返しを回避するために、
図2及び3が参照される。
図2の例と比較して、MMIC1に組み入れられたRFフロントエンド10は、追加のミキサ22’を含む。ミキサ22’のRF入力は、分周発振器信号S
LO’がミキサ22’のRF入力に供給されるように、局部発振器LOのPLLに結合される。ミキサ22’の基準入力は、低雑音基準発振器信号S
TESTが注入され得るテストパッドP1又はテストピンに結合される。低雑音基準発振器21は、ATE2の一部でもよい。ミキサ22’の出力も、ダウンコンバートされた雑音信号S
PNが引き出され得るさらなるテストパッドP2又はさらなるテストピンに結合される。
図5の例では、ダウンコンバートされた雑音信号S
PNは、信号S
PNがフィルタリングされ(フィルタ23)、増幅され(LNA24)、及びデジタル化される(アナログ・デジタル変換器25)ATE2において、さらに処理される。結果として生じるデジタル信号は、
図4を参照して上記で説明した通り、デジタル領域においてさらに処理される(
図5を参照、デジタル信号プロセッサ26において実施されるスペクトル解析)。要するに、信号S
PNに含まれる位相雑音のパワースペクトル密度(PSD)又は関連の信号パラメータは、パーソナルコンピュータ等のCPU等のデジタル信号プロセッサを用いて計算することができる。本例では、上述のパラメータは、1つ又は複数の特定の周波数値(例えば、100kHz、300kKz、及び1000kHz)に関して、テストパッド/ピンP2で提供された信号S
PNのPSDである。続いて、ATE2は、上述の信号パラメータ(例えば、特定周波数でのPSD値)が、既定の仕様に適合するか否かをチェックすることができる。このチェックの結果は、各MMICに不合格の印を付けるため、又は各MMICを選別するために使用することができる合格/不合格判断である。
【0033】
追加のミキサ22’をMMIC1のRFフロントエンド10に組み入れることにより、複雑さの程度が低いATEシステムを用いたMMICのエンドオブライン試験が可能となる。さらに、同時に試験することができるMMICの数は、大幅に増加し、基本的に、ATEシステムにおいて利用可能なADCチャネルの数によってのみ制限される。
【0034】
なお、位相雑音測定/解析は、電圧制御発振器VCOの出力で提供される局部発振器信号S
LOに基づくのではなく、電圧制御発振器VCOに対して、その下流で結合された分周器DIVの出力で提供される分周発振器信号S
LO’に基づく。上述の通り、分周器DIVは、測定中に変化しない一定の分周比Mを有する。一定の分周比は、必ずしも分周比が固有であることを意味しない。一定の分周比は、設定可能でもよいが、試験測定中は変化しない。実際の実施態様に基づいて、単一の分周器DIVの代わりに、直列接続された2つ以上の分周器が存在してもよい。ミキサ22’のRF入力に供給される信号S
LO’は、電圧制御発振器VCOの下流であるが、フラクショナルN分周器FNDの上流であるPLL内のいずれの分周器の出力においても引き出すことができる。
【0035】
説明用の例として、分周器DIVに関して、分周比M=32であると仮定する。さらに、76.8GHz(80GHz)の局部発振器周波数f
LOを仮定すると、分周局部発振器信号S
LO’の周波数は、2.4GHz(2.5GHz)である。従って、76.8GHz〜80GHzの周波数範囲が、2.4GHz〜2.5GHzの周波数範囲にマッピングされる。率Mによる局部発振器信号S
LOの事前分周により、基準発振器信号S
TESTの周波数は、
図4の例に見られるように、非常に低く、例えば、80GHzの代わりに2.5GHzとなり得る。ATEシステムは、EHF(又はSHF)帯域の代わりに、UHF帯域の基準信号を生成する低雑音基準発振器21を設けるだけでよい。
【0036】
図6は、
図2の例に示されるようなRFトランシーバ(又はレシーバ)の受信経路の代替実施形態を示す。局部発振器は、例えば
図3に示されるようなPLLを含む。
図5の前の例と同様に、追加のミキサ22’が、RFフロントエンド10に含まれる。ミキサ22’のRF入力は、分周発振器信号S
LO’がミキサ22’のRF入力に供給されるように、局部発振器LOのPLLに結合される。ミキサ22’の基準入力は、低雑音基準発振器信号S
TESTが注入され得るテストパッドP1又はテストピンに結合される。但し、出力信号S
PNは、さらなるテストパッドP2(
図5の実施形態ではライン)に向けられるのではなく、レーダセンサの通常動作中に受信レーダ信号を処理するように構成された受信経路に配置されるベースバンド信号処理チェーン13の入力にある回路ノードN1に向けられる。
【0037】
本例では、ダウンコンバートされた発振器信号S
PNをフィルタリング及びデジタル化するタスクは、組み入れられたベースバンド信号処理チェーン13(例えば、フィルタ及び増幅器を含む)及び組み入れられたアナログ・デジタル変換器14によって達成される。結果として生じるデジタル信号S
PNDIG(回路ノードN2において得られる)は、次に、それがATE2によって引き出され得るテストパッドP2に向けられる。ATE2は、
図5の前の例で説明されたようなデジタル領域でデジタル信号を処理するデジタル信号プロセッサを含む。デジタル信号S
PNDIGは、低電圧差動信号伝送(LVDS)を用いてATE2に向けられてもよい。従って、テストパッドP2は、ATE2への差動信号伝送を可能にする2つのパーツから成ってもよい。追加のミキサ22’の出力信号S
PNの処理を除いて、
図6の実施形態は、
図5の前の実施形態と同じであり、上記の記載が参照される。
【0038】
図7は、
図5の前の実施形態の変更形態である、さらなる実施形態例を示す。
図5と比較して、ミキサ22’の出力信号S
PNは、さらなるテストパッドP2に直接向けられるのではなく、MMIC1に含まれるアナログベースバンド信号処理チェーン13によって事前処理される。従って、ミキサ22’の出力は、ノードN1(アナログベースバンド信号処理チェーン13の入力)に結合され、回路ノードN1’(アナログベースバンド信号処理チェーン13の出力)は、事前処理されたミキサ出力信号S
PN’が提供されるさらなるテストパッドP2に接続される。
図6の例と比較して、オンチップで利用可能なADC14の代わりに、ATEのADC25が使用される。
【0039】
図8は、
図6の前の実施形態に対する代替例を示す。
図8の実施形態は、デジタル信号処理が、ATE2に組み入れられるDSPの代わりに、レーダデバイスのDSP15によって達成されることを除き、基本的に
図6の実施形態と同一である。従って、ATE2は、基本的に、基準発振器信号S
TESTを提供すればよい。
図6の前の実施形態と比較して、テストパッドP2及びテストパッドP2と回路ノードN2との間の信号接続は、省かれてもよい。DSP15は、
図6の前の例におけるATE(
図6を参照、ブロック25)のプロセッサと同じようにデジタル信号S
PNDIGを処理するように構成される。従って、1つ又は複数の周波数値でデジタル信号S
PNDIGの電力(例えば、パワースペクトル密度、PSD)を計算するように構成された機能ブロック151が、DSP15内に(例えば適宜のソフトウェアを用いて)実装されてもよい。信号電力は、基本的に、局部発振器LOの位相雑音によって支配される。計算された電力値が指定の最大値と適合するか否かをチェックするように構成された、さらなる機能ブロック152が、DSP15内に含まれてもよい。このようなチェックの結果は、「合格」(仕様に準拠した雑音電力)又は「不合格」(仕様に準拠しない雑音電力)となり得る。ATEは、ブール情報の形態(試験合格/不合格)で、DSP15から試験結果を受信してもよい。
【0040】
図5〜8に示された実施形態の様々な局面は、さらなる実施形態を得るために組み合わせることができることに留意されたい。例えば、2つのテストパッドP1及びP2を超えるテストパッドが、ATEを接続する様々な選択肢を提供するために設けられてもよい。例えば、
図7の実施形態は、デジタル信号をATE(
図6を参照)に提供するために、ミキサ22’(
図5を参照)の出力に直接接続される追加のテストパッド、及び/又はADC14の出力(回路ノードN2)に接続されるさらなるテストパッドが追加されてもよい。
【0041】
図9は、内部RF発振器を試験する外部基準発振器信号S
TESTを受信可能なMMICの一般例を示す。「内部」という用語は、各回路コンポーネントがMMIC内に組み入れられることを示すために使用され、「外部」という用語は、各回路コンポーネントが、試験されるMMICから切り離して実装されることを示すために使用される。外部及び内部信号は、類似して区別される。従って、外部基準発振器信号S
TESTは、外部信号源(例えばATE2)によって生成され、チップパッド(テストパッド/ピン)P1を介してMMICに供給される。チップ上では、チップパッドP1は、MMICに組み入れられるミキサ22’の基準入力に接続される。局部発振器LOは、(レーダ適用例の場合)EHF又はSHF帯域の発振周波数f
LOを有し得る局部発振器信号S
LOを生成する。分周器DIV’は、局部発振器LOに結合され、例えばUHF帯域内に存在し得る低下周波数f
LO’(例えば、整数率だけ低下された)を有する発振器信号S
LO’を(局部発振器信号S
LOに基づいて)生成するように構成される。分周器出力信号S
LO’は、局部発振器信号S
LOと同一又は類似の雑音特性を有し(すなわち、雑音特性が、分周によって維持される)、従って、分周器出力信号S
LO’は、上記で説明した通り、所望の雑音パラメータ(例えば、ベースバンドの特定の周波数におけるパワースペクトル密度)を測定するために、さらに処理される(すなわち、ミキサ22’によってダウンコンバートされる、デジタル化される等、
図5〜8も参照)。
【0042】
分周器は、局部発振器LO内に含まれるPLLフィードバックループにおいて結合されるのではなく、局部発振器出力に独立して接続されることが言及されるべきである。しかしながら、発振器信号S
LO’は、
図5〜8の例に示されるように、フィードバックループ内に含まれる分周器(一定の分周比を持つ)で引き出されてもよい。
図9の例では、上記で説明した通り、ミキサ出力は、オンチップで(
図8を参照)、又は外部ATE内で(
図5〜7を参照)処理されてもよい。
【0043】
図10は、MMICに組み入れられたRF発振器を試験するための一方法例を示すフローチャートである。従って、(内部)RF局部発振器信号(例えば、
図5〜9を参照、信号S
LO)の周波数は、低下周波数を持つRF信号(例えば、
図5〜9を参照、信号S
LO’)を生成するために、一定の分周比によって分周される(
図10を参照、ステップS1)。既に述べた通り、分周器は、局部発振器のPLLフィードバックループ内に含まれてもよく(例えば、
図5〜8を参照、分周器DIV)、又は局部発振器に独立して接続されてもよい(例えば、
図9を参照、分周器DIV’)。低下周波数を有するRF信号は、ミキサ出力信号を生成するためにダウンコンバートされ(
図10を参照、ステップS2)、それによって、MMICのテストパッドで受信された外部基準発振器信号(
図5〜9を参照、ミキサ22’に供給されるパッドP1の信号S
TEST)を使用する。ミキサ出力信号(
図5〜9を参照、信号S
PN)は、所望の試験結果を得るために処理される(例えば、
図5〜8に示される例に関して説明された通り)。
【0044】
本発明が、1つ又は複数の実施態様に関して図示及び説明されたが、添付の請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、説明用の例に対して変形及び/又は変更を行うことができる。特に上記のコンポーネント又は構造(ユニット、アセンブリ、デバイス、回路、システム等)によって行われる様々な機能について、そのようなコンポーネントを説明するために使用された用語(「意味する」(“means”)に対する言及を含む)は、特記がない限り、(例えば、機能的に同等の)説明されるコンポーネントの指定の機能を行うコンポーネント又は構造に、たとえ、本発明の本明細書において例示された実施態様例においてその機能を行う開示の構造と構造的に同等でなくとも対応するものとする。
【0045】
加えて、本発明の特定の特徴が、幾つかの実施態様の内の1つのみに関して開示されたかもしれないが、このような特徴は、要望に応じて、及び所与又は特定の適用例にとって有利となるように、他の実施態様の他の1つ又は複数の特徴と組み合わせられてもよい。さらに、「含む」(“including”)、「含む」(“includes”)、「有する」(“having”)、「有する」(“has”)、「備えた」(“with”)、又はそれらの異形が、詳細な説明又は特許請求の範囲において使用される限りにおいて、それらの用語は、「含む」(“comprising”)という用語と同様に包括的であることが意図される。