(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材に印加する負のバイアス電圧を−80V〜−30Vとし、かつ複数のAlTi系合金ターゲットに印加するそれぞれの電力パルスを時間的な重複を有する間隔で印加する条件で、スパッタリング法により、半金属を含む金属元素のうち、原子比率で、Alの含有比率が55%以上でありTiの含有比率が30%以上である窒化物又は炭窒化物であり、かつ膜厚が1.0μm〜3.0μmであるA層を、前記基材の表面に被覆する工程と、
複数のTiSi系合金ターゲットに印加するそれぞれの電力パルスを時間的な重複を有する間隔で印加する条件で、スパッタリング法により、半金属を含む金属元素のうち、原子比率で、Tiの含有比率が70%以上でありSiの含有比率が10%以上である窒化物又は炭窒化物であり、かつ膜厚が1.0μm〜3.0μmであるB層を、前記A層上に被覆する工程と、
を有し、
前記B層に対する前記A層の膜厚の比が0.5を超え2.0未満である被覆工具の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の被覆工具の製造方法について詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本明細書において前記A層及び前記B層を総称して「硬質皮膜」と称することがある。
【0014】
本発明者は、平滑な表面状態を達成できるスパッタリング法において、アークイオンプレーティング法で被覆した被覆工具と同等以上の耐摩耗性を発揮できる製造方法を検討した。その結果、皮膜構造、ターゲットに印加する電力制御および被覆時に基材に印加するバイアス電圧と炉内圧力の制御が重要であることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
本発明の被覆工具の製造方法は、基材に印加する負のバイアス電圧を−80V〜−30Vとし、かつ複数のAlTi系合金ターゲットに印加するそれぞれの電力パルスを時間的な重複を有する間隔で印加する条件で、スパッタリング法により、半金属を含む金属元素のうち、原子比率で、Alの含有比率が55%以上でありTiの含有比率が30%以上である窒化物又は炭窒化物であり、かつ膜厚が1.0μm〜3.0μmであるA層を、前記基材の表面に被覆する工程(A層を基材の表面に被覆する工程)と、複数のTiSi系合金ターゲットに印加するそれぞれの電力パルスを時間的な重複を有する間隔で印加する条件で、スパッタリング法により、半金属を含む金属元素のうち、原子比率で、Tiの含有比率が70%以上でありSiの含有比率が10%以上である窒化物又は炭窒化物であり、かつ膜厚が1.0μm〜3.0μmであるB層を、前記A層上に被覆する工程(B層をA層上に被覆する工程)と、を有して構成され、前記B層に対する前記A層の膜厚の比が0.5を超え2.0未満である。
【0016】
本発明の作用は明確ではないが、本発明者らは、以下のように推定している。
すなわち、本発明は、スパッタリング法により、基材の表面に前記A層及び前記B層を順次被覆することで、平滑な皮膜を得ることができると考えられる。また、A層及びB層を成膜する際に複数のターゲットを用い、これらのターゲットにパルス状の電力を、それぞれ時間的な重複を有する間隔で印加することで、ターゲットのイオン化率が高い状態を維持しながら成膜を行うことができる。そのため、A層及びB層は、緻密で密着性に優れることから、耐摩耗性にも優れる皮膜となると考えられる。
そして、A層を基材の表面に被覆する際のスパッタリングの条件として、基材に印加する負のバイアス電圧を−80V〜−30Vとすることで、A層は、面心立方格子構造(fcc構造)の結晶構造を有し、適度な残留圧縮応力を有する皮膜となるため、耐摩耗性に優れると考えられる。
さらには、基材の表面に、特定の原子比率を有するAlTiの窒化物又は炭窒化物であるA層と、特定の原子比率を有するTiSiの窒化物又は炭窒化物であるB層とをこの順で、特定の膜厚で積層することで、基材とA層、及びA層とB層との層間の密着性に優れるため、耐摩耗性に優れた被覆工具が製造されると考えられる。
このように、スパッタリングの条件と、膜の物性と、を所定のものとすることで、平滑性と耐摩耗性に優れる被覆工具の製造方法が提供されると考えられる。
【0017】
本発明の製造方法におけるA層を基材の表面に被覆する工程について説明する。
A層を基材の表面に被覆する工程は、スパッタリング法により、基材に印加する負のバイアス電圧を−80V〜−30Vとし、複数のAlTi系合金ターゲットに印加するそれぞれの電力パルスを時間的な重複を有する間隔で印加する条件で行われる。
スパッタリング法は、上記の条件に加え、窒素ガスに対するアルゴンガスの分圧の比が3.0以下の条件で行われることが好ましい。
【0018】
ターゲットに高い電力を印加する高出力スパッタリング法では、ターゲットの過熱を抑制するためパルス状に電力を印加する。但し、ターゲットに電力を印加する個々のパルスパターンにおいて、ターゲットに電力を印加する初期では電流の立ち上がりが遅れる傾向にあり、十分な電力がターゲットに印加されずにイオン化率が低下する状態が存在する。
図1は1つのターゲットに電力を印加した際の電圧と電流の関係を示す模式図である。ターゲットに電力を印加した初期において電流の立ち上がりが遅れており、電圧と電流が共に安定するのは後半であることが確認される。これは、炉内のプラズマが失火している状態からターゲットへ電力を投入しているため、初期においては電力が安定し難いためと推定される。
【0019】
図2は複数のターゲットに印加するそれぞれの電力パルスを時間的な重複を有する間隔で印加させた場合の電圧と電流の関係を示す模式図である。
図2は3個のターゲットを用いた場合であり、個々のターゲットにはパルス状に電力が印加される。
最初に電力を印加するターゲット1では、
図1と同じように初期には電流の立ち上がりが遅れている。続いて、ターゲット1へ電力を印加している最中、つまり、炉内にプラズマが存在している状態で、ターゲット2に電力を印加することで、ターゲット2へ印加する電力が初期から安定するようになり、イオン化率が高い状態を維持することができる。同様に、ターゲット2へ電力を印加している最中に、ターゲット3に電力を印加することで、ターゲット3へ印加する電力が初期から安定する。更に、ターゲット3へ電力を印加している最中に、ターゲット1へ電力を印加することで、ターゲット1へ印加する電力が初期から安定する。このように複数のターゲットに印加する電力パルスを時間的な重複を有する間隔で印加することで、成膜中にイオン化率が高い状態が連続的に維持されるようになり、緻密で密着性に優れる硬質皮膜を達成することができる。
すなわち、複数のターゲットを用いるスパッタリング法を用いても、各ターゲットへ印加する電力の印加タイミングが考慮されず、それぞれが独立して稼働する場合には、イオン化率が高い状態が連続的に維持され難いため、緻密で密着性に優れる硬質皮膜は得られない。
なお、
図2では、ターゲットが3個の場合を例示したが、ターゲットは3個以上であってもよく、ターゲットのイオン化率の観点から、3個以上であることが好ましい。
【0020】
複数のターゲットに印加するそれぞれの電力パルスの時間的な重複は、その時間が短くなり過ぎると、プラズマが失火するおそれがある。また、時間が長くなり過ぎると、プラズマの密度が高くなりすぎてアーキングが発生し易くなる。そのため、複数のターゲットに印加するそれぞれの電力パルスの時間的な重複は、3マイクロ秒〜20マイクロ秒とすることが好ましい。更には5マイクロ秒〜15マイクロ秒が好ましい。
ターゲットへ電力を印加する前には、各ターゲットへの予め予備放電を実施することが好ましい。硬質皮膜の成膜前に予備放電を実施することで、各ターゲットへの電力放電がよりスムーズに行えるので好ましい。
【0021】
A層を基材の表面に被覆する工程における、成膜時にカソードとなるターゲットに瞬間的に印加する、最大電力密度は、0.5kW/cm
2以上とすることが好ましい。
このように、高い電力密度で瞬間的にターゲットに電力を印加することで、ターゲットのイオン化率が向上し、硬質皮膜が緻密で、密着性がより向上する。
ターゲットへ印加する最大電力密度が0.5kW/cm
2以上であると、ターゲットのイオン化を促すため、従来のスパッタリング法と比べ、皮膜の密着性に優れ、皮膜内部の空隙の発生が抑制される。最大電力密度は、1.0kW/cm
2以上であることがより好ましい。更には、最大電力密度は、1.3kW/cm
2以上であることが好ましい。
最大電力密度は、より高い方が好適であるが、高くなり過ぎるとターゲットがオーバーヒートし、成膜が安定し難くなる。このような理由から、最大電力密度は、3.0kW/cm
2以下が好ましく、2.0kW/cm
2以下がより好ましい。
【0022】
各ターゲットへ電力を印加する際の1個のターゲットに印加するパルスの幅(1周期当りの放電時間)は、0.2ミリ秒〜10.0ミリ秒であることが好ましい。
1周期当たりの放電時間が0.2ミリ秒以上であると、ターゲットのイオン化が十分行われる。また、1周期当たりの放電時間が10.0ミリ秒以下であると、放電中にターゲット表面で発生するアーキングが抑制されるため、イオン化率が向上する。
1周期当たりの放電時間は、上記観点から、0.5ミリ秒〜8.0ミリ秒がより好ましく、1.0ミリ秒〜6.0ミリ秒がさらに好ましい。
【0023】
ターゲットへの電力の印加は、ターゲットに瞬間的に極めて高い電力を印加するだけでなく、A層を基材の表面に被覆する工程におけるターゲットに印加する電力密度の平均値(平均電力密度)を、0.15kW/cm
2以上とすることが好ましい。ここで、平均電力密度(Pa)は、最大電力密度(Pp)、1周期当たりの放電時間(Pt)、周波数(f)の積で求められる。
平均電力密度が0.15kW/cm
2以上であると、放電時に十分な出力が得られ、ターゲットのイオン化率が向上するため、従来のスパッタリング法に比べ、皮膜の密着性に優れ皮膜内部に空隙の発生が抑制される。更には、0.25kW/cm
2以上であることが好ましい。上記と同様の観点から、平均電力密度は0.30kW/cm
2以上であることが好ましい。
平均電力密度は、高くなり過ぎると、ターゲットがオーバーヒートし、破損する場合がある。そのため、平均電力密度は、0.50kW/cm
2以下とすることが好ましい。
【0024】
A層を基材の表面に被覆する工程において用いるターゲットは、AlTi系合金ターゲットである。具体的には、Alの含有比率(原子%)が55%以上、Tiの含有比率(原子%)が30%以上のAlTi系合金ターゲットを用いることが好ましい。
【0025】
A層を基材の表面に被覆する工程は、基材に印加する負のバイアス電圧を−80V〜−30Vとすることが重要である。
基材に印加する負のバイアス電圧が−30Vより大きい(−30Vよりもプラス側である)と、成膜されたA層に、六方最密充填構造(hcp構造)を有するAlNが多くなり被覆工具の耐摩耗性に劣る。バイアス電圧は、−40V以下(−40Vよりもマイナス側である)であることがより好ましい。
また、基材に印加する負のバイアス電圧が−80Vより小さい(−80Vよりマイナス側である)と、成膜されたA層に過剰な残留圧縮応力が生じるため、皮膜が突発的な欠損を生じてしまい、結果として耐摩耗性に劣る。バイアス電圧は、−70V以上(−70Vよりもプラス側)であることが好ましい。
【0026】
A層を基材の表面に被覆する工程は、スパッタガスとしてアルゴン(Ar)ガス、反応ガスとして窒素(N
2)ガスを炉内に導入してA層を基材の表面に被覆することが好ましい。A層の被覆において、窒素ガスの分圧(P
N2)に対してアルゴンガスの分圧(P
Ar)が大きくなり過ぎると、A層に反応ガスと反応しない金属が含まれるとともに、過多にアルゴンを含有して耐摩耗性が低下する傾向にある。そして、アルゴンガスと窒素ガスの分圧比(P
Ar/P
N2)を3.0以下にすることでより耐摩耗性に優れるAlTi系の窒化物又は炭窒化物であるA層が得られる。更には、アルゴンガスと窒素ガスの分圧比(P
Ar/P
N2)を2.5以下とすることが好ましい。
【0027】
一方、被覆工具の耐摩耗性の観点からは、アルゴンガスと窒素ガスの分圧比(P
Ar/P
N2)の下限は限定されるものではない。窒素ガスの分圧(P
N2)に対してアルゴンガスの分圧(P
Ar)は、ターゲット表面の窒化が抑えられ、スパッタ率を良好に保つ成膜速度の観点から、1.0以上とすることが好ましく、1.3以上であることがより好ましい。
【0028】
A層を基材の表面に被覆する工程は、成膜時の炉内圧力が0.40Pa〜0.80Paであることが好ましい。成膜時の炉内圧力が0.80Pa以下であると、気体分子の平均自由工程が長く維持され、ターゲット表面でイオン化したターゲットが基材に達するまでの間に周囲のガスと衝突し、エネルギーを失い中性粒子に戻ることを抑制できる。また、炉内圧力が0.40Pa以上であると、ターゲットのスパッタが十分に行われるため成膜速度が向上する。
【0029】
A層を基材の表面に被覆する工程は、成膜温度が、300℃〜650℃であることが好ましい。
【0030】
本発明のA層を基材の表面に被覆する工程において、前述の条件のスパッタリング法により基材の表面に被覆されるA層は、半金属を含む金属元素のうち、原子比率で、Alの含有比率が55%以上でありTiの含有比率が30%以上である窒化物又は炭窒化物であり、かつ、膜厚が1.0μm〜3.0μmである。
【0031】
基材の表面に、A層を被覆することで、後述するB層の密着性が高まり優れた耐摩耗性を発揮することができる。
A層におけるAlは、硬質皮膜に耐熱性を付与する元素であり、金属元素のうちAlの含有比率(原子%)を最も多く含有することで、優れた耐熱性を発現し、被覆工具の耐摩耗性が向上する。そして硬質皮膜に十分な耐熱性を付与するために、金属元素の総量に対してAlの含有比率(原子%)は55%以上とする。すなわち、Alの含有比率(原子%)が55%未満であると、被覆工具の耐摩耗性に劣る。より好ましいAlの含有比率(原子%)は60%以上である。更には、Alの含有比率(原子%)は65%以上であることが好ましい。
被覆工具に、より高い耐摩耗性を付与するためには、Alの含有比率(原子%)を、金属元素の総量に対して75%以下とすることが好ましく、より好ましいAlの含有比率(原子%)は70%以下である。
A層におけるTiは、硬質皮膜に耐摩耗性を付与すると共に面心立方格子構造(fcc構造)の結晶構造にするために重要な元素である。A層における金属元素のうちTiの含有量が30%未満であると、硬質皮膜の耐摩耗性が低下すると共に、脆弱な六方最密充填構造(hcp構造)のAlNが多くなるため被覆工具の耐摩耗性に劣る。
A層の結晶構造をfcc構造とした上でより高い耐摩耗性を付与するには、Tiの含有比率(原子%)を、金属元素の総量に対して30%以上とする。A層は、周期律表の4a族、5a族、6a族の元素およびSi、Bから選択される1種または2種以上の元素を10%以下の含有量で含んでもよい。
【0032】
A層の膜厚(Ta)は、1.0μm〜3.0μmである。A層の膜厚が1.0μm未満であると、被覆工具に耐熱性を付与する効果が十分でないため、被覆工具の耐摩耗性が低下する傾向にある。また、A層の膜厚が3.0μmを超えると、密着性が低下し易く被覆工具を切削加工に用いた場合、切削加工の初期段階で、被覆工具の刃先稜線近傍において皮膜剥離が発生し易くなる。A層の膜厚は、1.2μm〜1.8μmが好ましい。
【0033】
本発明における基材としては、特に制限されるものではなく、用途や目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、超硬合金、冷間工具鋼、高速度工具鋼、プラスチック金型用鋼、熱間工具鋼等を用いることができる。これらの基材の中でも、A層との密着性の向上効果が高い観点から、炭化物が多く、基材自体の皮膜剥離が発生し易い、炭素含有量が1質量%以上の高炭素鋼や超硬合金が好ましい。具体的には、切削工具に適用する場合、Co含有量が5質量%〜15質量%のWC−Co基超硬合金であることが好ましい。
【0034】
次に、本発明の製造方法におけるB層を前記A層上に被覆する工程について説明する。
B層をA層上に被覆する工程は、スパッタリング法により、複数のTiSi系合金ターゲットに印加するそれぞれの電力パルスを時間的な重複を有する間隔で印加する条件で行われる。
A層上に高い残留圧縮応力を有する皮膜を被覆することで、被覆工具は耐摩耗性と耐熱衝撃性が向上し、より優れた耐久性を発揮することができる。
【0035】
B層をA層上に被覆する工程における、ターゲットにパルスを印加する方法、重複時間、1周期当たりの放電時間、最大電力密度、及び平均電力密度は、前述のA層と同じ条件を用いることが好ましい。
【0036】
B層をA層上に被覆する工程において用いるターゲットは、TiSi系合金ターゲットである。具体的には、Tiの含有比率(原子%)が70%以上、Siの含有比率(原子%)が10%以上のTiSi系合金ターゲットを用いることが好ましい。
【0037】
B層をA層上に被覆する工程では、基材に印加する負のバイアス電圧は、−200V〜−20Vとすることが好ましい。B層の被覆時に基材に印加する負のバイアス電圧が−20V以下(−20Vを含みマイナス側)であると、皮膜に高い残留圧縮応力が生じるため、皮膜が突発的な欠損を生じ難くなる。また、バイアス電圧が−200V以上(−200Vを含みプラス側)であると、硬質皮膜の硬度が向上するため、耐摩耗性が向上する。
本発明の製造方法をボールエンドミルに適用した場合、B層の被覆時に基材に印加する負のバイアス電圧は、−70V〜−40Vの範囲で優れた耐摩耗性が発揮される。また、本発明の製造方法をスクエアエンドミルに適用した場合、B層の被覆時に基材に印加する負のバイアス電圧は、−150V〜−70Vの範囲で優れた耐摩耗性が発揮される。
B層の被覆では、用途や加工条件により基材に印加する負のバイアス電圧を−200V〜−20Vから適宜選択することが好ましい。
【0038】
B層をA層上に被覆する工程は、スパッタガスとしてアルゴン(Ar)ガス、反応ガスとして窒素(N
2)ガスを導入して、B層をA層上に被覆することが好ましい。B層をA層上に被覆する工程におけるTiSi系合金ターゲットは、AlTi系合金ターゲットより低い窒素ガスの分圧(P
N2)で、完全な窒化物皮膜が形成され易い膜種である。そのため、B層の被覆においては、A層の被覆時よりも窒素ガスの分圧(P
N2)を低くすることができる。
B層をA層上に被覆する工程におけるアルゴンガスと窒素ガスの分圧比(P
Ar/P
N2)は、6.0以下とすることが好ましい。分圧比を6.0以下とすることで、アークイオンプレーティング法と同等以上の耐摩耗性を安定して再現できる。分圧比(P
Ar/P
N2)は、5.5以下とすることがより好ましく、5.0以下とすることがさらに好ましい。
【0039】
一方、B層の被覆においても、ターゲット表面の窒化が抑えられ、スパッタ率が向上する観点から、アルゴンガスと窒素ガスの分圧比(P
Ar/P
N2)は、2.0以上とすることが好ましい。分圧比(P
Ar/P
N2)は、3.0以上とすることがより好ましく、4.0以上とすることがさらに好ましい。
【0040】
B層をA層上に被覆する工程は、成膜時の炉内圧力が0.40Pa〜0.80Paであることが好ましい。成膜時の炉内圧力が0.80Pa以下であると、気体分子の平均自由工程が長く維持され、ターゲット表面でイオン化したターゲットが基材に達するまでの間に周囲のガスと衝突し、エネルギーを失い中性粒子に戻ることを抑制できる傾向にある。また、炉内圧力が0.40Pa以上であると、ターゲットのスパッタが十分に行われるため成膜速度が向上する。
【0041】
B層をA層上に被覆する工程は、成膜温度が、300℃〜650℃であることが好ましい。
【0042】
本発明のB層をA層上に被覆する工程において、前述の条件のスパッタリング法によりA層上に被覆されるB層は、半金属を含む金属元素のうち、原子比率で、Tiの含有比率が70%以上でありSiの含有比率が10%以上である窒化物又は炭窒化物であり、かつ、膜厚が1.0μm〜3.0μmである。
【0043】
A層上に、B層を被覆することで、被覆工具は優れた耐摩耗性および耐酸化性を発揮することができるため耐久性に優れる。
B層における金属(半金属を含む)元素のSiの含有比率(原子%)が10%未満であると、硬質皮膜に付与される残留圧縮応力が低く、被覆工具の耐摩耗性に劣る。B層におけるSiの含有比率は、B層の残留圧縮応力をより高めるため観点から、金属元素の総量に対して15%以上とすることが好ましい。
【0044】
B層におけるTiは、硬質皮膜に耐摩耗性を付与すると共に面心立方格子構造(fcc構造)の結晶構造にするために重要な元素である。B層における金属元素のうちTiの含有量が70%未満であると、耐摩耗性及び耐酸化性に劣るため被覆工具の耐摩耗性に劣る。
【0045】
B層に高い残留圧縮応力を付与して、被覆工具に高い耐摩耗性と耐酸化性を付与する観点から、B層におけるTiとSiとの合計の含有比率(原子%)が、B層に含まれる金属元素の総量に対して85%以上とすることが好ましく、90%以上とすることが好ましい。
B層は、Ti及びSi以外の金属元素として、例えば、周期律表の4a族、5a族、6a族の元素およびAl、Bから選択される1種または2種以上の元素などを含んでもよい。
【0046】
B層の膜厚(Tb)は、1.0μm〜3.0μmである。B層の膜厚(Tb)が1.0μm未満であると、被覆工具に高い残留圧縮応力を付与する効果が十分でないため、熱衝撃に対する耐久性が低く、被覆工具の耐摩耗性が低下する。また、B層の膜厚が3.0μmを超えると、被覆工具を切削加工に用いた場合、切削の初期段階で、被覆工具の刃先稜線近傍において皮膜剥離が発生し易くなる。B層の膜厚は、1.2μm〜1.8μmが好ましい。
【0047】
アークイオンプレーティング法で被覆した被覆工具と同等以上の耐摩耗性を再現するには、A層及びB層の膜厚の制御が重要である。
A層の膜厚(Ta)が1.0μm〜3.0μmであり、B層の膜厚(Tb)が1.0μm〜3.0μmである。そして、本発明の製造方法により製造される被覆工具は、前記A層及び前記B層の膜厚をそれぞれ制御することに加えて、膜厚比率を制御することも重要である。
前記B層に対する前記A層の膜厚の比率(Ta/Tb)は、0.5を超え2.0未満(0.5<Ta/Tb<2.0)である。
Ta/Tbが0.5以下であると、被覆工具に過剰に残留圧縮応力を付与され、被覆工具を切削加工に用いた場合、切削の初期段階で、被覆工具の刃先稜線近傍において皮膜剥離が発生し易くなる。また、Ta/Tbが2.0以上であると、被覆工具に残留圧縮応力を付与する効果が十分でなく、被覆工具の熱衝撃に対する耐久性が低くなるため、耐摩耗性が低下する傾向がある。
Ta/Tbは、上記の観点から、0.6<Ta/Tb<1.8であることが好ましく、0.7<Ta/Tb<1.6であることがより好ましい。
【0048】
本発明の被覆工具の製造方法は、前記A層及び前記B層を被覆する工程以外に、その他の工程を有してもよい。
その他の工程としては、前処理工程等が挙げられる。
【0049】
前処理工程としては、A層の被覆前に、基材をガスボンバード処理や金属イオンボンバード処理する工程が挙げられる。基材の表面をガスや金属イオンでボンバード処理することにより、基材の表面にある酸化物が除去され、基材とA層との密着性をより向上することができる。
【0050】
本発明の製造方法で製造された被覆工具は、基材とA層の密着性をより向上させるため、必要に応じて、基材とA層との間に別途層を設けてもよい。例えば、金属、窒化物、炭窒化物、炭化物のいずれかからなる層を基材とA層との間に設けてもよい。
【0051】
本発明の製造方法で製造された被覆工具は、B層上に別途硬質皮膜を設けてもよい。また、A層とB層の間にA層とB層の混合傾斜皮膜を設けてもよい。さらには、A層とB層を相互積層させてもよい。
【0052】
本発明の製造方法で製造された被覆工具は、例えば、高硬度鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼、鋳鋼、炭素鋼の切削加工用に用いる切削工具に用いることができる。具体的には、ボールエンドミル、多刃エンドミル、インサート、ドリル、カッター、ブローチ、リーマ、ホブ、ルーター等が挙げられる。また、金型、パンチ等の工具にも優れた耐摩耗性を発揮する。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
実施例1では、ボールエンドミルに本発明におけるA層及びB層を被覆し、高硬度鋼の切削評価を実施した。
【0055】
<基材1>
基材1として、組成がWC(bal.)−Co(8質量%)−Cr(0.5質量%)−VC(0.3質量%)、WC平均粒度0.6μm、硬度93.9HRA(ロックウェル硬さ、JIS G 0202に準じて測定した値)からなる超硬合金製の2枚刃ボールエンドミル(ボール半径5mm、日立ツール株式会社製)を準備した。
【0056】
<高出力スパッタリング法による成膜方法>
本発明例1−1〜本発明例1−5および比較例1−1〜比較例1−8は、スパッタ蒸発源を6機搭載できるスパッタリング装置を使用した。これらの蒸着源のうち、AlTi系合金ターゲットを3個、TiSi系合金ターゲットを3個、をそれぞれ蒸着源として装置内に設置した。なお、寸法がφ16cmのターゲットを用いた。
基材をスパッタリング装置内のサンプルホルダーに固定し、基材にバイアス電源を接続した。なお、バイアス電源は、独立して基材に負のバイアス電圧を印加する構造となっている。基材は、毎分2回転で自転しかつ、固定治具とサンプルホルダーを介して公転する。基材とターゲット表面との間の距離は100mmとした。
導入ガスは、Ar、及びN
2を用い、スパッタリング装置に設けられたガス供給ポートから導入した。
【0057】
<ボンバード処理>
まず基材1に硬質皮膜を被覆する前に、以下の手順で基材にボンバード処理を行った。
スパッタリング装置内のヒーターにより基材温度が430℃になった状態で30分間の加熱を行った。その後、スパッタリング装置内に設置された真空容器(チャンバー)内を減圧し、圧力が5.0×10
−3Paに達した後、Arガスをチャンバー内に導入し、圧力を0.8Paに調整した。そして、基材1に−170Vの直流バイアス電圧を印加して、Arイオンによる基材1のクリーニング(ボンバード処理)を実施した。
【0058】
<AlTiN(A層)の成膜>
次いで、以下の手順でA層を基材1の表面に被覆した。
チャンバー内の圧力を5.0×10
−3Paに真空排気し、基材1の温度を430℃とした。そして、チャンバー内にArガスを導入して圧力を0.43Paとし、その後、導入するN
2ガスの流量を変化させてチャンバー内の圧力を下記表1に示すチャンバー内圧力に調整した。そして、3個のAlTi系合金ターゲットに、順次、1周期当りの放電時間が4.0ミリ秒、電力パルスが重複する時間を10マイクロ秒とする電力パルスを印加して、基材1の表面にA層を被覆した。このとき、電力パルスの最大電力密度は、1.5kW/cm
2、平均電力密度は0.37kW/cm
2であった。
なお、各本発明例及び比較例におけるそれぞれのA層は、下記表1に示すように、バイアス電圧、N
2分圧、分圧比、成膜温度、膜厚を変更することで作製した。
【0059】
<TiSiN(B層)の成膜>
次いで、以下の手順でB層をA層上に被覆した。
チャンバー内の圧力が0.52PaになるようにN
2ガスの流量を調整した。そして、3個のTiSi系合金ターゲットに、順次、1周期当りの放電時間が4.0ミリ秒、電力パルスが重複する時間を10マイクロ秒とする電力パルスを印加してA層上にB層を被覆した。このとき、電力パルスの最大電力密度は、1.5kW/cm
2、平均電力密度は0.37kW/cm
2であった。
なお、各本発明例及び比較例におけるそれぞれのB層は、下記表1に示すように、バイアス電圧、N
2分圧、分圧比、成膜温度、膜厚を変更することで作製した。
【0060】
<皮膜組成>
A層及びB層の皮膜組成は、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA;日本電子(株)製JXA−8900R)を用いて分析した。分析は、皮膜の最表面に対し試験片を5度傾けた皮膜断面を鏡面研後実施した。そして分析値は、加速電圧10kV、試料電流5×10
−8A、計数時間10秒とした測定を5回実施し、その平均値とした。表1に、皮膜組成の分析結果を示す。数値は原子比率を示す。
【0061】
<アークイオンプレーティング法による成膜方法>
従来例1−1として、アークイオンプレーティング法で被覆した試料を準備した。
アークイオンプレーティング法による被覆は、優れた切削性能を示す標準的な成膜条件(下記表1に示す成膜条件)を適用した。
成膜には、AlTi系合金ターゲットと、TiSi系合金ターゲットと、をそれぞれ1個ずつ用いた。なお、アークイオンプレーティング法では、寸法がφ10.5cmのターゲットを用いた。
成膜の手順としては、まず、Arイオンによる基材のクリーニングを実施した。
続いて、アークイオンプレーティング装置内に設置された容器内の圧力を5.0×10
−3Paに真空排気して、基材の温度を430℃とし、容器内の圧力が4PaになるようにN
2ガスを導入した。
そして、基材に印加するバイアス電圧を−100V、カソードに150Aの電流を供給して膜厚1.5μmのAlTiN層を成膜した。次いで、基材に印加するバイアス電圧を−50V、カソードに150Aの電流を供給して膜厚1.5μmのTiSiN層を成膜した。
【0062】
<被覆工具の評価>
作製した本発明例1−1〜本発明例1−5、比較例1−1〜比較例1−8、及び従来例1−1の被覆工具を用いて切削試験を行った。表1に各被覆工具の切削試験の結果を示す。切削条件は以下の通りである。
(条件)
・切削方法:湿式加工、底面切削
・被削材:HPM(登録商標)38(52HRC)(日立金属株式会社製)
・切り込み:軸方向、0.2mm、径方向、0.2mm
・切削速度:314.0m/min
・一刃送り量:0.2mm/刃
・切削油:水溶性エマルション加圧供給
・切削距離:300m
・評価方法:切削加工後、走査型電子顕微鏡を用いて倍率150倍で観察し、工具と被削材が擦過した幅を実測し、そのうちの擦過幅が最も大きい部分を最大摩耗幅とした。
【0063】
【表1】
【0064】
本発明例1−1〜本発明例1−5は、アークイオンプレーティング法で被覆した被覆工具(従来例1−1)より、最大摩耗幅が約20μmも抑制され、本発明の製造方法により製造された被覆工具は優れた耐摩耗性を示すことが確認された。
比較例1−1〜比較例1−3、比較例1−7、及び比較例1−8は、アークイオンプレーティング法で被覆した被覆工具と同程度の最大摩耗幅であり、本発明例と比較して耐摩耗性に劣ることがわかる。
比較例1−4は、A層のAl量が少なく、P
Ar/P
N2も大きいため、本発明例と比較して耐摩耗性に劣ることがわかる。
比較例1−5は、B層のSi量が少なく、残留圧縮応力の付与が不十分であるため、本発明例と比較して耐摩耗性に劣ることがわかる。
【0065】
(実施例2)
実施例2では、スクエアエンドミルに本発明におけるA層及びB層を被覆し、Ni基超耐熱合金の切削加工の初期段階における損傷状態(初期摩耗)を評価した。
【0066】
<基材2>
基材2として、組成がWC(bal.)−Co(11質量%)−TaC(0.4質量%)−Cr
3C
2(0.9質量%)、WC平均粒度0.6μm、硬度92.4HRA(ロックウェル硬さ、JIS G 0202に準じて測定した値)、からなる超硬合金製のスクエアエンドミル(半径5mm 日立ツール株式会社製)を準備した。
【0067】
<高出力スパッタリング法による成膜方法>
本発明例2−1〜本発明例2−6および比較例2−1〜比較例2−8は、基材を上記基材2に変更し、下記表2に示すように、バイアス電圧、N
2分圧、分圧比、成膜温度、膜厚を変更した以外は、実施例1と同様の手順で作製した。
【0068】
<アークイオンプレーティング法による成膜方法>
従来例2−1は、基材を上記基材2に変更した以外は、従来例1−1と同様にして作製した。
【0069】
<被覆工具の評価>
作製した本発明例2−1〜本発明例2−6、比較例2−1〜比較例2−8、及び従来例2−1の被覆工具を用いて切削試験を行った。表2に各被覆工具の切削試験の結果を示す。
・切削方法:側面切削
・被削材:質量%で、Ni−19%Cr−18.7%Fe−3.0%Mo−5.0%(Nd+Ta)−0.8%Ti−0.5%Al−0.03%Cの組成を有するNi基合金(時効硬化処理済み)
・切込み:軸方向6mm、径方向0.3mm
・切削速度:40m/min
・一刃送り量:0.04mm/刃
・切削油:水溶性切削油
・切削距離:0.2m
・評価方法:切削加工後、走査型電子顕微鏡を用いて倍率150倍で観察し、工具と被削材が擦過した幅を実測し、そのうちの擦過幅が最も大きい部分を最大摩耗幅とした。
【0070】
【表2】
【0071】
本発明例2−1〜本発明例2−6の初期摩耗は、アークイオンプレーティング法で被覆した被覆工具と同等レベルを示し、本発明の製造方法により製造された被覆工具は優れた耐摩耗性を示すことが確認された。
比較例2−1、及び比較例2−2は、A層の被覆時に基材に印加する負のバイアス電圧が−100Vであったため、本発明例と比較して耐摩耗性に劣ることがわかる。
比較例2−3、及び比較例2−4は、A層のAl量が少なく、P
Ar/P
N2も大きいため、本発明例と比較して耐摩耗性に劣ることがわかる。
比較例2−5は、B層のSi量が少ないため、本発明例と比較して耐摩耗性に劣ることがわかる。
【0072】
本発明の製造方法で被覆した被覆工具は、実施例1および実施例2のいずれの切削条件においても、従来のアークイオンプレーティング法を適用した被覆工具と同等以上の優れた耐摩耗性を示すことが確認された。
【0073】
図3に本発明例で被覆した被覆工具の断面観察写真(20,000倍)の一例を示す。
図4にアークイオンプレーティング法で被覆した被覆工具の断面観察写真(20,000倍)の一例を示す。
本発明例はアークイオンプレーティング法で被覆したものと同様に、緻密で空隙がほとんどない皮膜であることが確認される。また、本発明例はアークイオンプレーティング法で被覆したものより平滑な表面状態であることが確認される。
【0074】
図5、及び
図7に、本発明例で被覆した被覆工具の表面観察写真(1,000倍、及び5,000倍)の一例を示す。
図6、及び
図8に、アークイオンプレーティング法で被覆した被覆工具の表面観察写真(1,000倍、及び5,000倍)の一例を示す。表面観察からも、アークイオンプレーティング法で被覆したものはドロップレットが多く、スパッタリング法で被覆した本発明例は平滑な表面状態であることが確認される。
【0075】
図9に本発明例で被覆した被覆工具の表面観察写真(20,000倍)の一例を示す。
図10にアークイオンプレーティング法で被覆した被覆工具の表面観察写真(20,000倍)の一例を示す。高倍率での表面観察からでも、本発明例とアークイオンプレーティング法で被覆した皮膜はいずれも空隙が少なく緻密であることが確認される。
【0076】
参考のため、
図11、及び
図12に、単体のターゲットを用いた従来の高出力スパッタリング法で作製した被覆工具の表面観察写真を示す。従来の高出力スパッタリング法で作製した皮膜表面は、本発明例やアークイオンプレーティング法で作製した皮膜に比べて、表面にある粒子間の隙間が確認される。
これは、ターゲットに高い電力を印加する高出力スパッタリング法であっても、単体のターゲットを用いる場合には、ターゲットに電力を印加した初期においてターゲットのイオン化が不十分であるため、緻密な皮膜を成膜することができないことによる。そして、このような皮膜を被覆した被覆工具では、アークイオンプレーティング法で被覆した被覆工具に比べて耐摩耗性に劣る。
【0077】
実施例1および実施例2では、工具径が10mmと大きく、硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの影響が小さい試験条件である。そのため、工具径に対して硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの影響が大きくなる、例えば、刃先径が5mm以下の小径エンドミル等の小径工具に本願発明の製造方法を適用することで、従来のアークイオンプレーティング法で被覆した被覆工具よりも更なる耐摩耗性の向上が見込まれる。