特許第6463330号(P6463330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6463330土壌の保水性を有効に高める湿潤剤組成物およびその特定のための関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463330
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】土壌の保水性を有効に高める湿潤剤組成物およびその特定のための関連方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20190121BHJP
   A01G 24/35 20180101ALI20190121BHJP
   C09K 17/18 20060101ALI20190121BHJP
   C08G 65/28 20060101ALI20190121BHJP
   C08L 71/08 20060101ALI20190121BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20190121BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20190121BHJP
【FI】
   A01G7/00 602C
   A01G24/35
   C09K17/18 HZBP
   C08G65/28
   C08L71/08
   C08L33/02
   C09K103:00
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-501863(P2016-501863)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公表番号】特表2016-521965(P2016-521965A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】US2014025504
(87)【国際公開番号】WO2014159948
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】61/779,486
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ピー. エリックソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンスク ロー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ニズヴィッキ
(72)【発明者】
【氏名】アイリーナ ターンヤエヴァ
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−125352(JP,A)
【文献】 特開2004−300250(JP,A)
【文献】 特開平06−157212(JP,A)
【文献】 特表2005−537337(JP,A)
【文献】 実公昭48−026660(JP,Y1)
【文献】 特表2004−517728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 24/35
G01N 33/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌の保水率を高めるための方法であって、
以下のステップ:
(a)土壌の平均含水率を、最小湿潤剤濃度レベルで測定するステップ、
(b)湿潤剤組成物を、最小湿潤剤濃度レベルを超える第一湿潤剤濃度レベルで土壌に施与するステップ、
(c)前記施与された湿潤剤組成物を有する土壌の平均含水率を、第一湿潤剤濃度レベルで測定するステップ、
(d)前記湿潤剤組成物を、第一湿潤剤濃度レベルを超える最大湿潤剤濃度レベルで土壌に施与するステップ、
(e)前記施与された湿潤剤組成物を有する土壌の平均含水率を最大湿潤剤濃度レベルで測定するステップ、
(f)前記土壌の平均含水率を、最小湿潤剤濃度レベルから最大湿潤剤濃度レベルまでの施与された湿潤剤濃度レベルでプロットして平均勾配曲線を作成するステップ、および
(g)ステップ(f)の作成された平均勾配曲線が、最小湿潤剤濃度レベルから最大湿潤剤濃度レベルまでの平均勾配曲線の全長にわたって平均含水率の増加を示し、かつ前記作成された平均勾配曲線が、0.05またはそれ未満のp値を有する場合に、前記湿潤剤組成物が土壌の保水性を高めるのに有効な湿潤剤組成物であることを決定するステップ:
によって土壌に有効な湿潤剤組成物を特定する工程;ならびに
前記有効な湿潤剤組成物の有効量を土壌に施与する工程を含み、
ここで、前記ステップ(a)、(c)および(e)の土壌の平均含水率が、水分率計を使用して測定され、かつ、前記有効な湿潤剤組成物が、一般式
【化1】
[式中、
Yは、x個の反応性ヒドロキシ基を有する有機化合物に由来し;
Zは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのアルコキシル化反応生成物に由来するヘテロコポリマーを表し、
下付文字aは、ゼロまたは正数であり、
下付文字bは、ゼロまたは正数であり、
下付文字cは、ゼロまたは正数であり、
下付文字aは、下付文字bがゼロである場合に正数であり、下付文字bは、下付文字aがゼロである場合に正数であり、および
下付文字xは、1以上である]
のポリオール組成物を含む、前記方法。
【請求項2】
最小湿潤剤濃度レベルが0であり、および/または最大湿潤剤濃度レベルが土壌百万部あたり前記湿潤剤組成物86.5部である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
土壌に有効な湿潤剤組成物を特定する工程が、さらに以下のステップ:
(h)前記湿潤剤組成物を、第一湿潤剤濃度レベルを超え、かつ最大湿潤剤濃度レベルに満たない第二湿潤剤濃度レベルで土壌に施与するステップ;および
(i)前記施与された湿潤剤組成物を有する土壌の平均含水率を、第二湿潤剤濃度レベルで、水分率計を使用して測定するステップ
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有効な湿潤剤組成物が、土壌であるDinuba soil、Los Banos soil、Lubbock soil、およびNabraska soilからなる群から選択される少なくとも3種の土壌に有効な湿潤剤組成物を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記有効な湿潤剤濃度の有効量を、最小湿潤剤濃度レベルを超え、かつ最大湿潤剤濃度レベルに満たないか、または該レベルと同等の量で前記土壌に施与し、および/または前記有効な湿潤剤濃度の有効量を、土壌百万部あたり前記有効な湿潤剤組成物0超〜86.5部の範囲の量で前記土壌に施与する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、土壌の保水性を高める方法に関しており、具体的に、土壌の保水率を有効に高める湿潤剤組成物の特定方法に関する。
【0002】
水分の蒸発の制御は、多くの適用、特に、農業、造園、および建設産業において考慮すべき重要なことである。一例として、農業および造園産業における上面散布かんがい法(top spray irrigation methods)は、一般に効率が悪く、その原因は蒸発による水分損失である。したがって、かんがい用水および「天然資源の」水、例えば、雨および露を、植物(botanical articles)、例えば、農作物、草および観賞植物によって取り込む場合の利用可能性を高めるために蒸発を最小限に抑えることが望ましい。建設産業では、浮遊粉塵は、多くの場合厄介なものであり、健康問題または機械損傷を引き起こすことがある。水は、建設現場または未舗装道路での防塵に使用されることが多い。しかし、大気粉塵は、濡れ面の乾燥において問題となりうるため、水分の蒸発を最小限に抑えて防塵処理が有効である期間を長くすることが望ましい。
【0003】
水分の蒸発を遅らせる方法、特に造園用途のための方法は、これまで調査されてきた。例えば、吸収性繊維材料と草の種子との組合せを含む芝生の種子組成物が使用され、前記吸収性繊維材料は、水分の蒸発を遅くして草の種子の成長を促進するために用いられる。しかし、前記組成物を濡れた状態で使用することは、前記吸収性繊維材料の存在に起因する困難なポンプ圧送性によって妨げられるため、前記組合せは使用しにくいことがある。
【0004】
吸収性ポリマーは、すでに開発されてきた。例えば、高吸収性ポリマー(しばしば当該技術分野でSAPと呼ばれる)は、様々な用途でよく知られているものであり、その重量の何倍もの水分を吸収する能力がある。SAPは、種々の化学形態で市販されており、置換されたおよび置換されていない天然および合成ポリマー、例えば、デンプンアクリロニトリルグラフト重合体の加水分解生成物、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリレート、スルホン化ポリスチレン、加水分解ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリルなどが含まれる。SAPは、種々の用途、例えば、衛生用品、または液体吸収機能が最大の焦点である別の用途で使用されることが公知である。しかし、SAPの多くは、いったん液体を吸収すると、この液体をすぐに放出しないため、SPAの多くは、液体の蒸発を遅らせる一方、液体の周囲環境への放出をさらにもたらすことが望まれる補液(hydration)用途には好適でない。
【0005】
イソシアネートおよびポリエステルモノールの湿潤剤組成物も、当該技術分野において、潤滑剤、界面活性剤、および増粘剤として、別のウレタン含有成分を含む樹脂系内で使用されている。さらに、ポリエステルモノールは、イソシアネートプレポリマー中で使用されており、ここで、前記モノールは、イソシアネートプレポリマー中に残留するイソシアネート基でポリイソシアネートをキャップ化してさらなる反応を防ぐために使用される。
【0006】
前述を考慮すると、広範囲の散布濃度にわたって保水性を高める新規組成物を決定するための、土壌の保水性を高める方法を提供する機会が依然としてある。
【0007】
本発明は、有効な湿潤剤組成物の有効量を土壌に施与することによって土壌の保水性を高める方法を提供する。前記有効な湿潤剤組成物は、この湿潤剤組成物を最小湿潤剤濃度レベルで、最小湿潤剤濃度レベルを超える第一湿潤剤濃度レベルで、および第一湿潤剤濃度レベルを超える最大湿潤剤濃度レベルで土壌に施与して、施与した湿潤剤濃度レベルそれぞれでの平均含水率を測定することによって特定される。前記方法には、さらに、前記施与した湿潤剤濃度レベルそれぞれでの土壌の平均含水率をプロットして平均勾配曲線を作成することが含まれる。前記方法には、さらに、作成した平均勾配曲線が、この平均勾配曲線の最小湿潤剤濃度レベルから最大湿潤剤濃度レベルまでの全長にわたって平均含水率の増加を示し、かつ前記作成した平均勾配曲線が、0.05またはそれ未満のp値を有する場合に、前記湿潤剤組成物が、土壌の保水性を高めるのに有効な湿潤剤組成物であることを決定することが含まれる。
【0008】
関連する実施態様において、この方法は、比較的大量の類似の土壌または類似の土壌のクラス全体に有効でありうる特定の湿潤剤組成物を特定するために拡大適用することができる。例えば、特定の実施態様において、前述の方法によって展開されたポリオール組成物は、米国各地で見られる4種の典型的な土壌型で表される世界中で見られる大部分の土壌型にわたり、保湿レベルを高めるのに有効であることが判明した。
【0009】
本発明は、1種または複数の土壌への施与に有効な湿潤剤組成物、およびこの有効な湿潤剤組成物を含む処理された土壌も提供する。
【0010】
本発明の方法は、特定の土壌または近縁種の群の土壌の保水性を高めるのに有効でありうる湿潤剤組成物を特定するための、統計的に妥当かつ再現可能な方法を提供する。
【0011】
本発明の別の利点は、添付図に関連して考慮される場合に、以下の詳細な説明を参照することでよりよく理解されるのと同様に、容易に理解される。
【0012】
図1および図2は、本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料A)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示している。
【0013】
図3および図4は、本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料B)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示している。
【0014】
図5および図6は、本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料C)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示している。
【0015】
図7および図8は、本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料D)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示している。
【0016】
図9および図10は、本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料E)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示している。
【0017】
図11および図12は、本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料F)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示している。
【0018】
図13および図14は、本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料G)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示している。
【0019】
図15および図16は、本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料H)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示している。
【0020】
図17および図18は、本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料I)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示している。
【0021】
図19および図20は、本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料J)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示している。
【0022】
土壌の保水性を高めるための方法が提供される。具体的には、本発明は、湿潤剤組成物であって、有効量で土壌に施与される場合に、土壌の保水率を有効に高める湿潤剤組成物を特定するための方法を提供する。特定の土壌または土壌の群での使用方法から結果として生じる有効な湿潤剤組成物も提供される。
【0023】
前記湿潤剤組成物は、一般的に、多くの場合、極性液体成分を有する溶液形態で土壌に施与され、処理された土壌を形成し、前記溶液を有する土壌の処理後に前記溶液からの極性液体成分の蒸発または損失の速度を遅くする働きをする。前記溶液から前記極性液体成分が蒸発または損失した後でも、前記湿潤剤組成物が前記土壌に残留することがある。このように前記土壌に残留している前記湿潤剤組成物は、その後に、処理された土壌に施与される極性液体を保持するか、または前記湿潤剤組成物の施与前に前記土壌にすでに存在している極性液体を保持することがある。前記湿潤剤組成物は、土壌からの極性液体の蒸発または損失を遅らせることが望ましい用途、例えば、以下のさらなる詳細に記載される農産業、植物産業および建設産業における用途に理想的である。
【0024】
前記「極性液体成分」とは、任意の極性化合物またはそれらの化合物の組み合わせであって、周囲温度約21℃で液体であり、かつ溶液(本願記載の異なる成分、例えば、前記極性液体成分とは異なると明確に記載される湿潤剤組成物は別とする)中に存在しているものを意味する。したがって、前記極性液体化合物は、水;アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノール;酸、例えば、酢酸およびギ酸;およびそれらの組み合わせを含む1種または複数の極性液体成分を含んでいてよいが、これに制限されない。多くの適用の場合、前記極性液体成分は、一般に、実質的に水しか含まない。別の言い方をすれば、この実施態様において、前記極性液体成分は、一般に、水しか含まない、しかし、極性液体化合物の定義に当てはまるが、前記溶液中に含まれることが意図されない不純物または別の化合物は、前記溶液中に微量で(すなわち、前記極性液体成分の総質量を基準とする1質量%未満または1質量%の総質量で)存在していてもよい。水の他に、または水の代替物として、前記極性液体成分は、不凍化合物、例えば、プロピレングリコールおよび/またはエチレングリコールを含んでいてよい。本発明は、任意の極性液体成分が保持されることが望まれる(この極性液体成分の蒸発または損失を遅くすることが望まれる)任意の適用に有益であるため、特定の適用にとって極性液体成分として前記溶液中に存在している複数の極性液体化合物の組合せが有効であるか、または水以外の極性液体が存在することが有効であってよいと理解される。
【0025】
本発明の目的の場合、「極性液体」または「極性液体成分」という用語は、土壌に関連して、代替的に「水分」と表されてよい。したがって、例えば、土壌に関連する「含水率」という用語は、土壌の前記極性液体含有量または極性液体成分含有量を指す。同様に、土壌に関連する「保水」という用語は、前記極性液体または極性液体成分を保持する土壌の能力を意味する。別の言い方をすれば、「水分」という用語は、本願では「極性液体」という用語と同じ意味で用いられる。
【0026】
前記湿潤剤組成物で処理される土壌とは、様々な目的のための種々の土壌の型を意味する。例えば、1つの実施態様において、前記湿潤剤組成物は、粉塵除去、補液、ならびに液体および/または半固体組成物の固化抑制(例えば、拡大適用された補液による)を含む目的のであって、これに限定されない目的のために土壌に施与されてよい。すべての実施態様において、前記土壌は、前記湿潤剤組成物の土壌への施与の直前に未かく乱(undisturbed)であってよい。具体的には、前記土壌は、前記湿潤剤組成物の施与直前に地面に配置されるか、または発見された状態であってよい。
【0027】
前述の通り、本発明は、一般に、特定の湿潤剤組成物が、施与された湿潤レベル濃度の範囲にわたって、特定の土壌または類似の土壌の群の保水性を高めるのに「有効な湿潤組成物」であるかどうかを決定する方法に関する。その場合、前記方法は、湿潤剤組成物の特定のクラスが、1種の特定の土壌または特定の土壌の群における使用に好適であるかどうかを決定するための使用に展開されてよい。
【0028】
一般に、本発明の方法には、含水率が評価される特定の土壌を決定すること、および土壌の試料(つまり、土壌試料)を、いくつかの対象の所望の最小湿潤剤濃度値にて前記土壌の含水率を測定する試験が含まれる。本願記載の目的の場合、「対象の所望の最小湿潤剤濃度レベル」は、本願定義の通り、ゼロ(つまり、前記湿潤剤組成物の前記土壌への施与前)であるか、またはゼロを上回っていてもよく(つまり、最少量の湿潤剤組成物の土壌への施与後)、これ以下では「最小湿潤剤濃度レベル」を意味する。
【0029】
前記湿潤剤組成物は、濃縮物としてか、またはより典型的には、前述の記載通り、極性液体成分を有する溶液形態で土壌に施与される。前記「湿潤剤濃度レベル」という用語は、前記極性液体成分を含まない、湿潤組成物それ自身の濃度を意味する。
【0030】
前記土壌は、その場合、最小湿潤剤濃度レベルを上回って(つまり、第一湿潤剤濃度レベルで)、追加量の前記湿潤組成物(つまり、前記湿潤剤組成物は、土壌に施与されるか、または別の方法で土壌に導入される)と接触させてよく、処理された土壌は、第一湿潤剤濃度レベルでの含水率が再評価される。好ましくは、この評価は、最小湿潤剤濃度レベルと同じ試験状態下に(つまり、同一温度および同一相対湿度で)実施される。代替的に、別個の土壌試料を、第一湿潤剤濃度レベルで前記湿潤剤濃縮物と接触させて、第一湿潤剤濃度レベルで含水率を評価してよい。
【0031】
前記土壌試料を追加量の前記湿潤剤組成物と接触させてよいため、前記土壌試料に施与される湿潤剤組成物の総量は、対象の所望の最大湿潤剤濃度レベルであり、処理された土壌試料は、最大湿潤剤濃度レベルでの含水率が再評価される。本願記載の目的の場合、「対象の所望の最大湿潤剤濃度レベル」は、本願記載の通り、「最大湿潤剤濃度レベル」を意味する。代替的に、別個の土壌試料を、最大湿潤剤濃度レベルでの湿潤剤濃縮物と接触させて、最大湿潤剤濃度レベルでの含水率を評価されてよい。
【0032】
特定の実施態様において、土壌の最大湿潤剤濃度レベルは、土壌100万部あたり前記湿潤剤組成物86.5部である。別の言い方をすれば、処理された土壌は、未処理土壌100万部あたり前記湿潤剤組成物を最大86.5部含む。
【0033】
任意に、前記土壌を、最小と最大の湿潤剤濃度レベルの間であり、かつ第一湿潤剤濃度レベルとは異なる1つまたは複数の湿潤剤濃度レベルで前記湿潤組成物とも接触させて、これらの代替的な湿潤剤濃度レベルそれぞれ(つまり、第二湿潤剤濃度レベル)で、処理された土壌の含水率が評価される。
【0034】
施与された湿潤剤濃度レベルそれぞれでの前記処理された土壌の含水率を、追加の土壌試料で1回または複数回再現して(つまり、少なくとも1回追加)、最小湿潤剤濃度レベルから最大湿潤剤濃度レベルまでの施与された湿潤剤濃度レベルそれぞれの平均含水率を作成する。
【0035】
平均勾配曲線は、その場合、施与された湿潤剤濃度レベルそれぞれにて、測定された前記処理された土壌の含水率を平均化すること、およびこの平均値を、最小湿潤剤濃度レベルと最大湿潤剤濃度レベルとの間の、施与された湿潤剤濃度レベルそれぞれを考慮に入れる方法で(好ましくは、市販の統計ソフトウェア、例えば、SAS Institute of Cary(ノースカロライナ)から入手可能なJMP statistical softwareを使用)最小湿潤剤濃度レベルから最大湿潤剤濃度レベルまでの曲線上にプロットすることによって作成される。さらに、p値0.05での平均勾配曲線と関連する誤差上限勾配曲線および誤差下限勾配曲線の図表は、前記統計ソフトウェア、またはさらなる市販の統計ソフトウェアを使用してもプロットされる。
【0036】
前記「p値」は、統計上、成功の母集団比率を表す。したがって、p値は、実際に観察されたものと少なくとも同程度に極端な検定統計量を得る可能性である。本発明の目的の場合、p値0.05は、得られた平均試験値が、統計的に有意な平均含水率値の算出された範囲から外れる機会が20回のうち1回あることを意味する。別な言い方をすれば、p値0.05は、平均試験値が所望の値域内にある信頼度が95%であることを意味する。本発明の目的の場合、p値は、最小湿潤剤濃度レベルから最大湿潤剤濃度レベルまでの湿潤剤濃度レベルの範囲の平均勾配曲線にわたる、土壌の平均含水率における許容偏差に関しており、依然として統計的に有意である。
【0037】
以下の例から作成した図1〜20で説明するように、0.05またはそれ未満のp値は、平均勾配曲線(平均勾配曲線は、図1〜20中で参照番号25と示される)から確認することができ、上側誤差線(上側誤差線は、図1〜20中で参照番号30と示される)および下側誤差線(下側誤差線は、図1〜20中で参照番号35と示される)が関連づけされている。架空の横線が、最小湿潤剤濃度レベルと最大湿潤剤濃度レベルとの間の平均勾配曲線25の少なくともいくつかの点に沿って上側誤差線および下側誤差線30、35と交差するように描画することができる場合、平均勾配曲線25のp値は、0.05またはそれ未満であり、したがって、作成された平均勾配線は、統計的に有意に信頼度95%であると見なされる。前記架空の線が、上側および下側誤差線30、35のどちらとも交差しない場合、作成された平均勾配曲線25は、0.05またはそれ未満のp値を有しておらず、したがって、作成された平均勾配線25は、統計的に有意に信頼度95%であるとは見なされない。
【0038】
平均勾配曲線25が正(つまり、平均含水率が、連続して、最小湿潤剤濃度レベルから最大湿潤剤濃度レベルまでの平均勾配曲線25の全長にわたって増加する場合)であり、かつここで、p値が、0.05またはそれ未満であると測定される場合、前記湿潤剤組成物は、本発明の目的の場合、評価される土壌の保水性を高めるのに「有効な湿潤剤組成物」と見なされる。
【0039】
平均勾配曲線25が負(つまり、平均含水率が、最小湿潤剤濃度レベルから最大湿潤剤濃度レベルまでの平均勾配曲線25の全長にわたって連続的に増加しない場合)であるか、または測定されたp値が、0.05を超える場合、前記湿潤剤組成物は、本発明の目的の場合、評価される土壌の保水性を高めるのに「有効でない」または「無効な」湿潤剤組成物であると見なされる。
【0040】
したがって、この分析は、特定の湿潤剤組成物か、または特定のクラスの湿潤剤組成物が、評価される特定の土壌で使用するのに有効(つまり、「有効な湿潤剤組成物」)であるかどうかを決定するための使用を拡大するための枠組みを提供する。いったん湿潤剤組成物が、特定の土壌に有効な湿潤剤組成物であると決定されれば、この湿潤剤組成物は、最大湿潤剤濃度レベルまたはそれを下回る濃度レベルで(つまり、有効量で)特定の土壌に施与されてよく、前記土壌に施与された濃度レベルに相応して保水性が高められた処理された土壌をもたらす。
【0041】
本発明による方法は、多種多様な土壌の保水性を高めるのに有効な湿潤剤組成物であることが見いだされたポリオール組成物の範囲を特定するために使用されている。具体的に、特定の実施態様において、前記方法により展開された前記ポリオール組成物は、米国各地に見られる4種の異なる典型的な土壌型によって代表される最も知られる土壌型における保水率を高めるのに有効な湿潤剤組成物であることが分かっている。これらの典型的な土壌には、Dinuba soil、Los Banos soil、Lubbock soil、およびNebraska soilが含まれており、その組成および特徴は、以下の第1表に示される。湿潤剤組成物が、前記典型的な土壌型の少なくとも3種において「有効な湿潤剤組成物」である場合、この湿潤剤組成物は、高い保水率をもたらし、したがって、米国および世界中に見られる大部分の土壌において有効な湿潤剤組成物であることが一般に考えられる。以下で使用される通り、「有効な湿潤剤組成物」という用語は、本願で提供される方法により決定される、前記典型的な土壌の少なくとも3種の土壌で有効である湿潤剤組成物を指す。前記4種の典型的な土壌試料の組成を、以下の第1表中に提供する。
【0042】
【表1】
【0043】
特定の実施態様において、前述の方法により特定された有効な湿潤剤組成物は、一般式:
【化1】
[式中、
Yは、x個の反応性ヒドロキシ基を有する有機化合物に由来し、
Zは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのアルコキシル化反応生成物に由来するヘテロコポリマーを表し、
下付文字aは、ゼロまたは正数であり、
下付文字bは、ゼロまたは正数であり、
下付文字cは、ゼロまたは正数であり、
下付文字aは、下付文字bがゼロである場合に正数であり、下付文字bは、下付文字aがゼロである場合に正数であり、および
下付文字xは、1以上である]
によるポリオール組成物を含む。
【0044】
特定の関連する実施態様において、ヘテロコポリマーZは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとブチレンオキシドとのアルコキシ化反応生成物に由来するものである。さらに別の関連する実施態様において、ヘテロコポリマーZは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとスチレンオキシドとのアルコキシル化反応生成物に由来するものである。さらに、別の実施態様において、ヘテロコポリマーZは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとブチレンオキシドとスチレンオキシドとのアルコキシル化反応生成物に由来するものである。
【0045】
特定の実施態様において、(CH2CHCH3O)cは、前記ポリオール組成物の総質量の多くても10質量%を構成する。
【0046】
特定の実施態様において、前述の方法により特定された有効な湿潤剤組成物は、一般式:
【化2】
[式中、
Phは、フェニル基であり;
Yは、x個の反応性ヒドロキシ基を有する有機化合物に由来し;
Zは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのアルコキシル化反応生成物に由来するヘテロコポリマーを表し、
下付文字aは、ゼロまたは正数であり、
下付文字bは、ゼロまたは正数であり、
下付文字cは、ゼロまたは正数であり、
下付文字dは、正数であり、
下付文字aは、下付文字bがゼロである場合に正数であり、
下付文字bは、下付文字aがゼロである場合に正数であり、および
下付文字xは、1以上である]
によるポリオール組成物を含む。
【0047】
特定の関連する実施態様において、ヘテロコポリマーZは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとブチレンオキシドとのアルコキシル化反応生成物に由来するものである。さらに別の関連する実施態様において、ヘテロコポリマーZは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとスチレンオキシドとのアルコキシル化反応生成物に由来するものである。さらに、別の実施態様において、ヘテロコポリマーZは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとブチレンオキシドとスチレンオキシドとのアルコキシル化反応生成物に由来するものである。
【0048】
特定の実施態様において、(CH2CH(Ph)O)dは、前記ポリオール組成物の総質量の多くても10質量%を構成し、ここで、Phは、フェニル基を表す。
【0049】
特定の実施態様において、前述の実施態様のいずれかによるポリオール組成物の質量平均分子量(MW)は、2000〜6000g/molの範囲、例えば、2700〜3300g/molの範囲であり、例えば、3000g/molである。
【0050】
特定の実施態様において、Yは、単官能性アルコール(つまり、1個の反応性ヒドロキシ基を有する有機化合物)、二官能性アルコール(つまり、2個の反応性ヒドロキシ基を有する有機反応性アルコール)、または多官能性アルコール(つまり、3個またはそれ以上の反応性ヒドロキシ基を有する有機反応性アルコール)に由来するものであってよい。特定の実施態様において、Yは、飽和アルコールに由来するが、特定の別の実施態様において、不飽和アルコールに由来するものであるか、または飽和および不飽和アルコールの組み合わせに由来するものであってよい。
【0051】
特定の実施態様において、Yは、反応官能性ヒドロキシ基の数が異なる、少なくとも2種の有機アルコールの混合物に由来するものである。
【0052】
典型的な単官能性アルコールには、一般式RCH2OHを有する単純な第一級アルコール、一般式RR’CHOHを有する第二級アルコール、または一般式RR’R’’COHを有する第三級アルコールが含まれており、ここで、R、R’、およびR’’は、アルキル基を意味する。
【0053】
さらに別の典型的な単官能性アルコールには、反応性ヒドロキシ基を1個だけ有するアリールアルカノールまたはジアリ−ルアルカノール、例えば、ナフトールが含まれる。
【0054】
典型的な単純な二官能性アルコール、またはジオールには、2個のヒドロキシ基を含む単純な化学化合物、例えば、エチレングリコール;1,4−ブタンジオール;プロピレン−1,3−ジオール;などが含まれる。
【0055】
典型的な単純な多官能性アルコール、例えば、トリオール、テトラオールおよび多官能性アルコールには、グリセリン、ペンタエリトリトールなどが含まれる。
【0056】
一例として、典型的な土壌での使用のために特定され、前述の方法により形成された、限定されない湿潤剤組成物は、反応生成物:(i)三官能性アルコール(つまり、3個の反応性ヒドロキシ基を有する有機反応性アルコール)3質量%、(ii)エチレンオキシド10〜15質量%、および(iii)プロピレンオキシド82〜87質量%を含む第一ポリオール組成物である。特定の実施態様において、前記三官能性アルコールは、グリセリンである。これらの実施態様において、第一級ポリオール組成物は、多くても10質量%のプロピレンオキシドでキャップ化される。特定の実施態様において、第一級ポリオール組成物は、2000〜6000g/molの範囲、例えば、2700〜3300g/molの範囲の、例えば、3000g/molの質量平均分子量(MW)を有する。
【0057】
さらに別の実施態様において、第二級ポリオール組成物は、第一級ポリオール組成物と併用して使用してよく、ここで、第二級ポリオール組成物は、以下の反応生成物:(i)単官能性アルコールまたは二官能性アルコール3〜8質量%、(ii)エチレンオキシド82〜97質量%、および(iii)プロピレンオキシド0〜10質量%を含む。第二級ポリオール組成物の質量平均分子量は、2000〜6000g/molの範囲である。
【0058】
別の例となる、典型的な土壌での使用のために特定され、前述の方法により形成された、限定されない湿潤剤組成物は、以下の反応生成物を含むポリオール組成物である:(i)三官能性アルコール2.5〜3.1質量%、(ii)エチレンオキシド50〜80質量%、および(iii)プロピレンオキシド16.9〜47.5質量%。特定の実施態様において、前記三官能性アルコールはグリセリンである。特定の実施態様において、この追加のポリオール組成物は、2000〜6000g/molの範囲、例えば、3600g/molの質量平均分子量(MW)を有する。
【0059】
さらに別の実施態様において、前記有効な湿潤剤組成物は、グラフトポリオール分散液を含み、ここで、ポリアクリル酸ホモポリマー5〜25質量%が、前述の本発明により形成されたポリオール組成物中に分散している。これらの特定の実施態様において、前記グラフトポリオール分散液は、アクリル酸、マクロマーと反応調節剤(reaction moderator)との、遊離ラジカル重合開始剤の存在下での反応により形成される。
【0060】
したがって、本発明は、統計的に妥当で、かつ湿潤組成物が、特定の土壌または近縁の群の土壌の保水性を高めるのに有効であるかどうかを特定するための再現可能な方法を提供する。特定の実施態様において、前記方法は、前述の典型的な土壌の少なくとも3種の土壌において保水性を高めるのに有効な湿潤剤組成物を特定するものであり、したがって、全てではないがほとんどの、米国および世界中で知られている土壌型にわたって保水性を高めるのに有効な湿潤剤組成物であると見なされる。本発明は、前述の方法にしたがって形成される有効な湿潤剤組成物だけでなく、施与された湿潤剤組成物の有効量を含む土壌も提供する。湿潤剤組成物の有効量は、本願記載の通り、最小湿潤剤濃度レベル(つまり、最小湿潤剤濃度レベルがゼロである場合は0部を超えるか、または最小湿潤剤濃度レベルであり、ここで、最小湿潤剤濃度レベルはゼロではない)から土壌百万部あたり86.5部までである。
【0061】
本発明の種々の実施態様の説明において依拠される任意の範囲および部分範囲は、個別におよび一括して添付の特許請求の範囲内に含まれ、ならびに、全体および/または部分値が明確に本願に記載されていない場合でも、そのような値を含む全ての範囲を説明および想到するとも理解される。当業者は、列挙された範囲および部分範囲が、本発明のさまざまな実施態様を充分に説明し、かつ可能にし、そのような範囲および部分範囲がさらに関連の2分の1、3分の1、4分の1、5分の1などに詳細に説明されえることを容易に認識している。
【0062】
単なる一例として、「0.1〜0.9」の範囲は、下側3分の1、つまり、0.1〜0.3、中程3分の1、つまり、0.4〜0.6、および上側3分の1、つまり、0.7〜0.9とさらに詳細に説明されてよく、これは、個別におよび一括して添付の特許請求の範囲内であり、個別および/または一括して依拠されてよく、添付の特許請求の範囲内の特別な実施態様のための適切な根拠を提供する。さらに、「少なくとも」、「を超える」、「未満」、「以下」などの範囲を定義または変更する用語に関して、このような用語が部分範囲および/または上限または下限を含むと理解される。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、本質的に、少なくとも10〜35の部分範囲、少なくとも10〜25の部分範囲、25〜35の部分範囲などを含み、部分範囲それぞれは、個別におよび一括して依拠され、かつ添付の特許請求の範囲内の特別な実施態様のために適切な根拠を提供しうる。最後に、開示された範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特別な実施態様のために依拠されてよく、ならびにこれに適切な根拠を提供する。最後に、開示された範囲内の個々の数は、依拠されてよく、添付の特許請求の範囲内の特別な実施態様のために適切な根拠を提供する。例えば、「1〜9」の範囲は、種々の個々の整数、例えば3も、小数点(または分数)を含む個々の数、例えば4.1も含んでおり、これは、依拠されてよく、添付の特許請求の範囲内の特別な実施態様のために適切な根拠を提供する。
【0063】
以下の例は、本発明を詳細に説明することを目的とするが、本発明を限定するものと見なされない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料A)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図2】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料A)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図3】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料B)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図4】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料B)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図5】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料C)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図6】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料C)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図7】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料D)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図8】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料D)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図9】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料E)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図10】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料E)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図11】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料F)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図12】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料F)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図13】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料G)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図14】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料G)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図15】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料H)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図16】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料H)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図17】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料I)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図18】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料I)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図19】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料J)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
図20】本発明の方法により、2つのMettler moisture balanceを使用して、4種の典型的な土壌型における1種の湿潤剤組成物(試料J)の含水率をプロットしたFit Model Analysisのグラフを示す図
【0065】

1.一般式
【化3】
による湿潤剤の作製および組成:
一般に、一般式
【化4】
によるポリオール組成物の製造方法は以下の通りである。まず、反応性OH単位を有する分子(つまり、有機化合物)を反応器に導入した。次に、新規の分子のZ(ヘテロ系)の割合を作るために、エチレンオキシド(EO)、および/またはプロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BO)および/またはスチレンオキシド(SO)を、同時に、それぞれの所望の含有率で個々に前記反応器に導入した。これらの分子を、アルコキシル化反応によってランダムに反応させて、反応性OH単位を有する比較的大きい分子を製造した。前記分子が形成した時点で、EOまたはPOまたはSOを、前記反応器に導入し(同時ではない)、EOまたはPOまたはSO単位を繰り返すブロックを有する分子を製造した。EOまたはPOまたはSOは、最終分子の所望サイズ(分子量)に達するまで前記反応器に導入した。
【0066】
一般的な方法により製造した特定の試験試料A〜Iは、以下の第2表に示されており、下記の%はすべて製造された試料における個々の成分(開始剤%、Za%、(EO)b%、(PO)c%、(SO)d%)の総質量である。さらに、第2表中の試料A〜Iに対するMWはすべて、質量平均分子量であり、最も近い100に丸められている。
【0067】
【表2】
【0068】
2.試料Jの作製(試料Hのポリエーテルポリオール中に分散された15%ポリアクリル酸ホモポリマーを有するグラフトポリオール分散液)
一般に、試料Jの製造方法は以下の通りである。まず、試料H(上記第2表に示されるポリエーテルポリオール)、アクリル酸、マクロマー、反応調整剤、および遊離ラジカル重合開始剤を、同時に反応器に導入した。次に、アクリル酸、マクロマー、および反応調整剤を、遊離ラジカル重合開始剤の存在下に反応させて、加熱した。製造したグラフトポリオール分散液(試料J)は、試料H中に分散されたポリアクリル酸ホモポリマー15質量%を含んでいた。
【0069】
3.土壌試料の作製(一般)
土壌試料を手でバラバラにして、10番のふるい(目開き0.0787インチ)にかけた。前記土壌の含水率を105℃のmoisture balanceで測定したため、土壌中の湿潤剤の量は、土壌の乾燥重量を基準とした。次に、脱イオン水中の第1表のポリオール組成物2000、5000および8000ppmの溶液を作製した。
【0070】
次に、前記湿潤剤組成物(試料A〜J)1.25グラムを、土壌437.5グラム(乾燥重量を基準とする)を入れたプラスチック容器に加えて、次に、この混合物を少なくとも30分間回転させた。次に、混合した土壌および湿潤剤組成物を、10番のふるいに少なくとも2回かけて、塊を細分化した。次に、前記試料を、使用する必要があるまで密閉プラスチック容器に貯蔵した。
【0071】
処理された土壌および未処理の土壌の均一の試料を、蓋のないペトリ皿16×50mmに置いた。このペトリ皿を、密封された大型プラスチック容器内の棚に置いた。このプラスチック容器、および前記棚の下側をろ紙で裏打ちした。このろ紙は、脱イオン水で湿らせてあり、小型のファンを前記プラスチック容器に導入して空気循環を保証した。もう1片のろ紙を前記ファンの出口側に置いた。このろ紙のサイズは、充分に大きいため、前記プラスチック容器の底部に接する。前記ペトリ皿を前記棚に置いた後、脱イオン水を前記プラスチック容器の底部に注いで、貯水容器の役割をさせ、前記ろ紙を、毛管現象により浸透させた。試料を備える前記ペトリ皿を、試験する前に、前記プラスチック容器内に最低7日間置いた。
【0072】
4.試料の評価
前記土壌試料の含水率を、2つのMettler moisutre balanceで測定した。1つのmoisture balanceは、土壌試料3.1〜3.2グラムを、等温温度40℃で設定点4まで乾燥させた。もう1つのmoisutre balanceは、土壌試料5.3〜5.4グラムを等温温度105℃で設定点3まで乾燥させた。最大7種の試料を、土壌、湿潤剤および湿潤剤レベルの組み合わせそれぞれで試験して、試験回数は、土壌の密度および入手可能な試料の量によって変化させた。周囲温度および相対湿度は、それぞれテスト実行時に測定した。
【0073】
前記moisutre balance workの結果を、JMP statistical analysis software(SAS Institute of Cary(ノースカロライナ)から入手可能)を使用して分析した。
【0074】
土壌型と湿潤剤との組み合わせそれぞれの結果を分析した。第一段階は、多変量分析を使用し、4またはそれ以上のマハラノビス値(Mahalanobis value)を有する異常値データ点を除外した。次に、JMPソフトウェアによって、含水率データを、周囲温度、前記moisutre balanceの温度、相対湿度、および個々の試料における湿潤剤の濃度レベルを基準とする個々の寄与に分けることができた。この技術の場合、Fit Model分析を使用し、水分値をY値として扱う一方、湿潤剤濃度レベル、周囲温度、相対湿度、およびmoisutre balanceの温度を、モデリング効果(model effect)として扱った。この分析の場合、モデリング効果は、交差項または指数を含まない線と見なした。前記モデルを、切片を有する標準最小二乗適合に選んだ。
【0075】
周囲温度および相対湿度をJMP analysisに組み込む必要があった、それというのは、水分測定が、温度および湿度が天候条件によって大いに異なる実験室で実施されたからである。JMP softwareのPrediction Profilerを、すべてのモデリング効果を基礎とする平均水分値の予測判断材料としてのみ使用した。0.05またはそれ未満のp値は、モデリング効果のいずれかの統計的有意性を決定するためのカットオフであった。0.05のp値とは、実験が20回繰り返された場合、このうち19回において含水率の平均値が、モデリング効果が設計空間内の任意のレベルで一定に保たれる場合に、数字としてグラフの左側に示されたエラーバーの上限および下限の範囲内に入ることが予期されることを意味する。前記試料それぞれの結果は、4つの典型的な土壌型(Dinuba、Los Banos、Lubbock、およびNebraska)それぞれでの試料A〜Jそれぞれに関して以下の第3表にまとめられている。土壌試料それぞれの測定を確認する添付のFit Model analysisのグラフは、図1〜20に図示されており、以下の第3表にまとめられた通り、平均勾配曲線25を説明するプロット、および試料それぞれの誤差上限および誤差下限30、35を含む。
【0076】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0077】
第3表および相応の図1〜20が示す通り、試料B、E、F、G、IおよびJは、本発明の方法により決定される、すべての典型的な土壌での使用に「有効な湿潤剤組成物」と見なされた、それというのは、これらの試料が、前記土壌試料における湿潤剤組成物の0〜86.5ppmまでの平均勾配曲線25の長さにわたって、勾配値の上昇を示したからであり、およびこれらの試料の平均p値が、試験した少なくとも3種の土壌型の場合に0.05未満であったからである。逆に言うと、試料A、C、DおよびHは、特定の典型的な土壌での「有効な湿潤剤組成物」と見なされる一方、提供された方法によるすべての典型的な土壌における使用に「有効ではない」とされた、それというのは、これらの試料は、0〜86.5ppmまでの平均勾配曲線25の長さにわたって、前記土壌試料における湿潤剤組成物の勾配値を上昇させること、および平均p値が、試験された少なくとも3種の前記土壌型の場合に0.05未満であることのどちらももたらさないことである。
【0078】
本開示は、実例となる方法で説明されており、使用されている用語は、限定よりもむしろ説明の性質であることが意図される。上記の教示を考慮すると、本願開示の多くの修正および変更は可能である。したがって、本開示は、添付の請求項の範囲内で、詳細に記載されたもの以外も実践されてよいと理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
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図20