【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
(実験1)
<空気含有による効果>
(実施例1−1)
小麦粉750g、澱粉250gを粉体混合し、これに食塩20g、かんすい9.75g、重合リン酸塩1g、リン酸ナトリウム1.5gを溶解した練水410mlを加え、常圧ミキサーで15分間混練して麺生地(ドウ)を得た。
【0035】
得られた麺生地を整形、複合して麺帯化し、圧延を繰り返して最終麺厚1.55mmとした後、切刃16番角で麺線を切り出した。
【0036】
切り出された麺線をただちに2分間にわたって蒸煮処理した後、1L当り食塩10g、を溶解した着味液に6秒間浸漬した後、引き延ばして約40cmとなるように麺線をカットした。
【0037】
カットした麺線155gをリテーナに充填して90℃で18分乾燥した後、温度を85℃にしてさらに20分熱風乾燥した。この時の水分が12.5%であった。
【0038】
180℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(50L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射し、30秒間過熱蒸気処理を行い即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、460g/m
3であり、温度は140℃であった。
【0039】
ここで空気の混合割合(Z)は、数式2及び数式3より下記に求められる。
混合気体のモル数(N)は数式2より、1 x 1000 / (0.082 x (273 +140))=29.5(mol)と求められる。
次に混合気体の絶対湿度が460g/m
3であることから1000L当たりの水蒸気のモル数は、460/18=25.6(mol)となる。
したがって混合気体における空気の混合割合は、(29.5−25.6)/29.5 x 100=13(%)となる
【0040】
上記の結果より麺線がさらされる状態における実施例1−1の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が13%で、温度が140℃であることがわかる。
【0041】
(実施例1−2)
180℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(100L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射する以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、435g/m
3であり、温度は140℃であった。
【0042】
実施例1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例1−2の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が18%で、温度が140℃であることがわかる。
【0043】
(実施例1−3)
180℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(190L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射する以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、335g/m
3であり、温度は140℃であった。
【0044】
実施例1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例1−3の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が37%で、温度が140℃であることがわかる。
【0045】
(実施例1−4)
180℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(415L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射する以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、275g/m
3であり、温度は140℃であった。
【0046】
実施例1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例1−4の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が48%で、温度が140℃であることがわかる。
【0047】
(実施例1−5)
180℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(830L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射する以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、215g/m
3であり、温度は140℃であった。
【0048】
実施例1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例1−5の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が60%で、温度が140℃であることがわかる。
【0049】
(実施例1−6)
180℃の過熱蒸気(120kg/h)と、圧縮空気(415L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射する以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、340g/m
3であり、温度は140℃であった。
【0050】
実施例1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例1−6の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が36%で、温度が140℃であることがわかる。
【0051】
(比較例1−1)
圧縮空気を混合しない以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。
このときの麺線がさらされる付近の温度は、140℃であった。
【0052】
(比較例1−2)
190℃の過熱蒸気(40kg/h)で処理する以外は、比較例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。
このときの麺線がさらされる付近の温度は、140℃であった。
【0053】
(比較例1−3)
180℃の過熱蒸気(120kg/h)で処理する以外は、比較例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。
このときの麺線がさらされる付近の温度は、140℃であった。
【0054】
これらのサンプルをポリスチレン製の容器に入れて500mlの熱湯を注加し、蓋をして4分放置して復元し、喫食した。喫食時の評価方法は、ベテランのパネラー5人によって官能評価を行い、喫食時のほぐれ、膨化ムラ、乾燥ムラの有無、生麺的な食感について総合的評価を行った。
官能評価は、非常に良好なものを5点、良好なものを4点、普通(可)なものを3点、悪いものを2点、著しく悪いものを1点とした。
【0055】
実験1の官能評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
比較例1−1〜1−3で示すように過熱蒸気に空気を混合しない場合には、良好な食感をえるために過熱蒸気の蒸気流量が高く(加熱を強く)すると、喫食時のほぐれの悪化や膨化ムラ、乾燥ムラが発生し、その結果、食感にもムラがでるため、蒸気流量を弱くせざるをえず、膨化による食感を調整することは困難となる。
【0058】
それに対し、実施例1−1〜1−5で示すように過熱蒸気に空気を混合することで、過熱蒸気流量を比較例1−1と同様にした場合でも、喫食時のほぐれや膨化ムラ、乾燥ムラが改善し、良好な食感の即席乾燥麺が得られることがわかる。しかしながら、実施例1−1〜1−3で示すように、空気の混合割合の増加による膨化ムラ、乾燥ムラ改善に伴い、食感は、よくなっていくが、実施例1−4、実施例1−5で示すように空気の混合割合が高くなりすぎると逆に、表面の張りが増し、芯の粘りが弱くなることがわかる。
【0059】
実施例1−6は、実施例1−3とほぼ同様の空気の混合割合で過熱蒸気の流量を高くした試験区であるが、過熱蒸気の流量を高くしたにも関わらず、喫食時のほぐれや膨化ムラ、乾燥ムラは悪化せず、食感は、実施例1−3よりも芯の粘りが増し良好となった。上記の結果より、過熱蒸気の流量を強くした場合にでも喫食時のほぐれや膨化ムラ、乾燥ムラは悪化せず、食感を調整できることがわかる。
【0060】
上記の結果より、過熱蒸気に空気を混合することで喫食時のほぐれがよく、膨化ムラ、乾燥ムラの少ない、食感の良好な麺を得ることが出来ることがわかる。また、過熱蒸気の流量を高く(加熱を強く)した場合でも、喫食時のほぐれや膨化ムラ、乾燥ムラは悪化せずに食感の調整を調整できることがわかる。
【0061】
(実験2)
<温度による効果>
(実施例2−1)
130℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(190L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射し、30秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、400g/m
3であり、温度は105℃であった。
【0062】
実施例1−1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例2−1の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が31%で、温度が105℃であることがわかる。
【0063】
(実施例2−2)
150℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(190L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射し、30秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、370g/m
3であり、温度は120℃であった。
【0064】
実施例1−1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例2−1の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が33%で、温度が120℃であることがわかる。
【0065】
(実施例2−3)
260℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(190L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射し、30秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、310g/m
3であり、温度は180℃であった。
【0066】
実施例1−1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例2−3の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が36%で、温度が180℃であることがわかる。
【0067】
(実施例2−4)
220℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(190L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射し、30秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の温度は220℃であった。絶対湿度については、検出機器の温度限界を超えているため測定できなかった。
【0068】
絶対湿度は不明であるが、実施例2−1〜2−3の測定結果から考えて、空気の混合割合は、30〜40%程度であと推測する。実施例2−4の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合は不明だが、温度が220℃であることがわかる。
【0069】
これらのサンプルをポリスチレン製の容器に入れて500mlの熱湯を注加し、蓋をして4分放置して復元し、喫食した。喫食時の評価方法は、ベテランのパネラー5人によって官能評価を行い、喫食時のほぐれ、膨化ムラ、乾燥ムラの有無、生麺的な食感について総合的評価を行った。
官能評価は、非常に良好なものを5点、良好なものを4点、普通(可)なものを3点、悪いものを2点、著しく悪いものを1点とした。
【0070】
実験2の官能評価結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例2−1では、喫食時のほぐれや膨化ムラ・乾燥ムラが少なく良好であるが、混合気体の温度が低いため、膨化度合が若干弱く、食感はやや表面が硬めであった。実施例2−2、実施例1−3、実施例2−3では、喫食時のほぐれ、膨化ムラ、乾燥ムラが少なく、良好であり、食感についても適度に膨化しており、良好であった。実施例2−3では、実施例1−3と比較し、やや膨化が強く、食感としてやや柔らかかった。実施例2−4では、喫食時のほぐれや膨化ムラ・乾燥ムラが少なく良好であるが、混合気体の温度が低いため、膨化度合が若干高く、食感はやや表面が柔らかった。また、麺塊に若干の変色が認められた。
(実験3)
<処理による効果>
(実施例3−1)
過熱蒸気と空気を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に10秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−3と同様に即席麺サンプルを製造した。
【0073】
(実施例3−2)
過熱蒸気と空気を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に60秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−3と同様に即席麺サンプルを製造した。
【0074】
(実施例3−3)
過熱蒸気と空気を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に80秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−3と同様に即席麺サンプルを製造した。
【0075】
(実施例3−4)
過熱蒸気と空気を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に120秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−3と同様に即席麺サンプルを製造した。
【0076】
これらのサンプルをポリスチレン製の容器に入れて500mlの熱湯を注加し、蓋をして4分放置して復元し、喫食した。喫食時の評価方法は、ベテランのパネラー5人によって官能評価を行い、喫食時のほぐれ、乾燥した麺塊の膨化ムラ、乾燥ムラの有無、生麺的な食感について総合的評価を行った。
官能評価は、非常に良好なものを5点、良好なものを4点、普通(可)なものを3点、悪いものを2点、著しく悪いものを1点とした。
【0077】
実験3の官能評価結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
実施例3−1では、処理時間が短く、膨化度合が低いため、食感は実施例1−3と比較して表面がやや硬めであったが、喫食時のほぐれや膨化ムラ、乾燥ムラに関しては、良好であった。また、実施例3−3、実施例3−4では、若干麺全体が実施例1−3と比較して全体的に弾性が強くなり、実施例3−4では、若干の変色が認められた。
【0080】
以上より、鋭意研究した結果、蒸煮及び/又はボイルによってα化処理した麺を、熱風によって水分含量5〜17重量%まで乾燥した麺線に対して、過熱蒸気と空気を混合した気体により過熱蒸気処理を施すことにより、過熱蒸気による膨化処理において課題であった膨化処理の条件調整が容易化され、乾燥ムラ、膨化ムラが少なく、喫食時のほぐれがよく、生麺的な食感を有する即席麺を製造することができることがわかる。