特許第6463958号(P6463958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6463958即席熱風乾燥麺の製造方法及び即席熱風乾燥麺
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6463958
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】即席熱風乾燥麺の製造方法及び即席熱風乾燥麺
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/113 20160101AFI20190128BHJP
【FI】
   A23L7/113
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-243961(P2014-243961)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-106531(P2016-106531A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 夏希
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 俊男
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−060999(JP,A)
【文献】 特開昭59−098660(JP,A)
【文献】 特開昭59−088055(JP,A)
【文献】 特開平03−072854(JP,A)
【文献】 特開昭60−141246(JP,A)
【文献】 特開平11−196799(JP,A)
【文献】 特開昭53−006444(JP,A)
【文献】 特開平11−108301(JP,A)
【文献】 特開2008−017828(JP,A)
【文献】 特開平04−173079(JP,A)
【文献】 特開昭62−161370(JP,A)
【文献】 特開平09−001930(JP,A)
【文献】 特開2005−269979(JP,A)
【文献】 特開2003−310191(JP,A)
【文献】 特開平09−051775(JP,A)
【文献】 特開2015−116123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸煮又は/及びボイルによりα化処理した麺線を水分5〜17重量%となるように熱風により乾燥した後、過熱蒸気と空気の混合気体で膨化処理することを特徴とする即席熱風乾燥麺の製造方法であって、
前記過熱蒸気と空気の混合気体における空気の混合割合が18〜60%であり、
前記過熱蒸気と空気の混合気体の温度が105〜220℃であり、
前記過熱蒸気と空気の混合気体による加熱処理時間が10〜120秒であることを特徴とする即席熱風乾燥麺の製造方法。
【請求項2】
前記過熱蒸気と空気の混合気体における空気の混合割合が2050%であることを特徴とする請求項1記載の即席熱風乾燥麺の製造方法。
【請求項3】
前記過熱蒸気と空気の混合気体の温度が120180℃であることを特徴とする請求項1または2載の即席熱風乾燥麺の製造方法。
【請求項4】
前記過熱蒸気と空気の混合気体の温度が120〜140℃であることを特徴とする請求項1〜3何れか一項記載の即席熱風乾燥麺の製造方法。
【請求項5】
前記過熱蒸気と空気の混合気体による加熱処理時間が3080秒であることを特徴とする請求項1〜何れか一項記載の即席熱風乾燥麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席熱風乾燥麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺の製造方法としては、フライ(油揚げ)麺とノンフライ麺に大別することができる。フライ麺は、α化処理した麺を150℃前後の油でフライ処理して乾燥させた麺である。一方、ノンフライ麺とは、α化処理した麺を、油で揚げる以外の乾燥方法により乾燥させた麺であり、幾つか方法があるが、70〜100℃程度で風速5m/s以下程度の熱風を当てて30分から90分程度乾燥させる熱風乾燥方法が一般的である。
【0003】
熱風乾燥によるノンフライ麺は、フライ麺よりも麺線が緻密であり、より弾力のある食感を有する反面、熱湯や鍋炊き調理等による復元がフライ麺よりも時間がかかるといった課題があった。また、蒸煮等により麺が十分α化されているため、麺に透明感があり、一部の麺(例えばスパゲティーなど)を除き、生麺的な外観とは異なっていた。また、食感に関しても表面が張ったような固い食感であり、表面が柔らかく、中心部が固めで弾力のあるいわゆる生麺的な食感とは異なっていた。
【0004】
これらの問題を解決すべく、特許文献1では、蒸煮及び/又はボイルによってα化処理した麺を、熱風によって水分含量5〜17%まで乾燥した麺線に対し、高温高風速による処理、高温高風速及び飽和蒸気を併用した処理、又は過熱蒸気による処理による膨化処理を施すことを特徴とする即席熱風乾燥麺の製造方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、文献1における過熱蒸気による膨化処理方法では、過熱蒸気は非常にエネルギーが高く熱伝導性が高いため、膨化度のコントロールが難しく、僅かな調整で麺質が変化するといった課題があった。
また、良好な食感を得るために過熱蒸気処理の条件を強くした場合には、膨化ムラや乾燥ムラができたり、過熱蒸気処理初期に麺線に結露した水分の影響で麺線が軟化し、一度固まった麺塊の形状が変化したり、麺線同志が結着したり、その後の乾燥において麺塊が収縮して喫食時のほぐれが悪くなったりするなどの問題が生じたり、その逆に膨化ムラやほぐれ改善等のために過熱処理条件を弱くした場合には、喫食時のほぐれは悪化しないが、膨化度が弱く、復元性や食感の面で満足のいくものが得られにくくなるなど、膨化処理条件を調整し、膨化ムラ、乾燥ムラなく、良好な喫食時のほぐれや食感を有する即席熱風乾燥麺を得るための手段として、未だ課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−60999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、過熱蒸気による膨化処理において課題であった膨化処理の条件調整を容易化し、乾燥ムラ、膨化ムラが少なく、喫食時のほぐれがよく、生麺的な食感を有する即席麺を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、鋭意研究した結果、蒸煮及び/又はボイルによってα化処理した麺を、熱風によって水分含量5〜17重量%まで乾燥した麺線に対して、過熱蒸気と空気を混合した気体により過熱蒸気処理を施すことにより、膨化処理の条件調整を容易化することができ、乾燥ムラ、膨化ムラが少なく、喫食時のほぐれがよく、生麺的な食感を有する即席麺を製造できることを見出し本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、蒸煮又は/及びボイルによりα化処理した麺線を水分5〜17重量%となるように熱風により乾燥した後、過熱蒸気と空気の混合気体で膨化処理することを特徴とする乾燥麺の製造方法である。
【0010】
また、本発明における過熱蒸気と空気の混合気体における空気の混合割合が13〜60%であることが好ましい。
【0011】
また、本発明における過熱蒸気と空気の混合気体の温度は、105〜220℃であることが好ましい。
【0012】
また、本発明における過熱蒸気と空気の混合気体による加熱処理時間は、10〜120秒であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、過熱蒸気による膨化処理において課題であった膨化処理の条件調整が容易化され、乾燥ムラ、膨化ムラが少なく、喫食時のほぐれがよく、生麺的な食感を有する即席麺を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
なお、本発明において製造する即席熱風乾燥麺の種類は、特に限定されず、通常、当技術分野で知られるいかなるものであってもよい。例えば、うどん、そば、中華麺、パスタ等が挙げられる。
【0015】
1.原料配合
本発明に係る即席熱風乾燥麺には、通常の即席麺の原料が使用できる。すなわち、原料粉としては、小麦粉、そば粉、及び米粉等の穀粉、並びに馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の各種澱粉を単独で使用しても、または混合して使用してもよい。前記澱粉として、生澱粉、α化澱粉、エーテル化澱粉等の加工澱粉等を使用することもできる。また、本発明では、これら原料粉に対して即席麺の製造において一般に使用されている食塩やアルカリ剤、各種増粘剤、麺質改良剤、カロチン色素等の各種色素及び保存料等を添加することができる。これらは、原料粉と一緒に粉体で添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。
【0016】
2.混捏、圧延、及び切り出し
即席麺を製造する常法に従って、前記即席麺原料を混練することによって麺生地を製造する。より具体的には、前記原料粉に練り水を加え、ついでミキサーを用いて各種材料が均一に混ざるように良く混練して麺生地を製造する。上述のようにして麺生地を製造した後に、前記麺生地を複合機で圧延して麺帯を製造し、前記麺帯を圧延して、切刃を用いて切り出す事によって生麺線を製造する。この時、複数の麺帯を複合して多層の麺帯を製造してから圧延、切り出しを行って麺線を製造してもよい。
【0017】
3.α化工程
次いで得られた生麺線を、常法により蒸煮及び/又はボイルによってα化処理する。蒸煮の方法としては、飽和水蒸気による加熱だけでなく、過熱水蒸気により加熱することもできる。過熱蒸気による加熱の場合には、生麺的な食感を得やすく好ましい。過熱蒸気による加熱方法としては、例えば特許4438969のよるに過熱蒸気による加熱処理と水分補給工程を繰り返すことにより、麺線のα化を促進する技術が挙げられる。
【0018】
4.着味工程
本発明においては、このようにしてα化処理した麺線にスプレーや浸漬等により調味液(着液)を付着させ味付けを行うこともできる。また、麺線同士の結着防止のため、乳化剤や増粘多糖類などの麺線に付着させることもできる。着味工程は必ずしも行う必要はなく、省略しても構わない。
【0019】
5.カット及び投入
次いで、麺線を1食分20〜50cmにカットする。カットした麺線は、リテーナと呼ばれる乾燥器具に投入する。
【0020】
6.熱風乾燥工程
リテーナに充填した麺線を熱風により5〜17重量%になるように乾燥する。熱風の条件は特に問わないが50〜100℃程度に乾燥することが好ましい。熱風乾燥工程後の麺線の好ましい水分は、麺線の太さ、幅などの形状により異なるが、低すぎると後述する高温高風速熱風処理工程で膨化が進まず、高すぎると膨化が進み過ぎ良好な食感が得られにくい。好ましくは水分6〜14.5重量%、特に好ましくは、8〜12.5重量%程度に乾燥することが望ましい。ここにおける水分とは、麺塊全体を粉砕して均質化したものの水分をいう。 水分(重量%)の測定については、常圧加熱乾燥法によって行えばよい。具体的には、105℃の乾熱庫で4時間乾燥した後、常温まで冷却し、乾燥前の重量と、乾燥後の重量との差より算出すればいい。
【0021】
7.過熱蒸気処理工程
熱風乾燥工程で乾燥した麺塊に対して過熱蒸気と空気の混合気体を用いて膨化処理する。過熱蒸気とは、飽和水蒸気を大気圧下で100℃よりも高い温度に過熱したものをいうが、本発明においては、過熱蒸気に空気を混合した混合気体を過熱蒸気処理に用いる。
【0022】
過熱蒸気に空気を混合しない場合には、膨化度合を調整するため処理する過熱蒸気の使用量を多くすると、麺線同志の結着や麺塊の収縮により喫食事のほぐれが著しく悪くなり、食感に関しては、表面の膨化が進みすぎ、表面が柔らかくなり過ぎたり、膨化ムラ、乾燥ムラに起因する食感ムラが目立つ。それに対し、過熱蒸気と空気の混合気体を用いることにより、処理する混合気体の流量を多くしても、麺線同志の結着や麺塊の収縮が著しく悪くなることはなく、膨化ムラ、食感ムラも少なく膨化および食感の調整が容易となる。
【0023】
本発明において過熱蒸気と空気の混合割合とは、実際に過熱蒸気が乾燥した麺線に接触する際の過熱蒸気を空気の混合割合をいい、具体的には、実際に麺線がさらされる付近の温度t(℃)ならびに絶対湿度w(g/m)を測定することにより、理想気体の状態方程式より算出される。なお、絶対湿度、温度の測定機器は、rotronic社製の型番HP22−Aで行った。また、本発明に使用した蒸気庫内は、コンベアが通った開放系であるため、常圧下であるが、常圧下でない密閉系で行う場合には、圧力を加味して計算する必要があるため、別途圧力を測定する必要がある。
【0024】
具体的には、下記のように算出すればよい。以下に理想気体の状態方程式を示す。
【0025】
【数1】
【0026】
本発明においてPは、過熱蒸気と空気の混合気体の全圧であり、Tは、過熱蒸気と空気の混合気体の絶対温度(273℃+過熱蒸気と空気の混合気体温度(t))であり、1m(1000L)当たりの過熱蒸気と空気の混合気体のモル数(N)は下記のように求められる。ちなみに常圧下においては、P=1atmであるため、PはNを求める式に関係なく計算できる。
【0027】
【数2】
【0028】
空気の混合割合は、過熱蒸気と空気の混合気体のモル数(N)に対する空気のモル数(A)で表すことができ、具体的には下記の式で求められる。
【0029】
【数3】
【0030】
本発明において、空気の混合割合は、13〜60%が好ましい。空気の混合割合が13%未満であると麺線同志の結着や麺塊の収縮により喫食事のほぐれが悪くなり、食感に関しては表面の膨化が進み表面が柔らかくなり、芯に調理感が出るが、膨化ムラ、乾燥ムラに起因する食感ムラが目立つ。逆に空気の混合比が60%を超えると麺線の結着や麺塊の収縮はほとんど見られず、ほぐれは良好になるものの、食感に関しては、表面の乾燥が進み過ぎ、表面が硬く芯に調理感がなく、食感的に好ましくなくなる。より好ましい空気の混合割合は、20〜50%、さらに好ましくは、20〜40%である。
【0031】
過熱蒸気処理工程における混合気体の温度については、過熱蒸気に空気を含有することにより、特許文献1よりも幅広い範囲での調整が可能となる。過熱蒸気処理工程における混合気体の温度は、麺線がさらされる温度として105〜220℃が好ましい。105℃未満では、膨化度が弱く、また、結露した水分の蒸発が遅く、生麺な自然な外観が得られにくく、食感、ほぐれも共に好ましくない。逆に220℃を越えると麺線が褐変し、好ましくない。より好ましい温度としては、120〜180℃ さらに好ましくは、120〜140℃が好ましい。
【0032】
過熱蒸気処理工程における混合気体の処理時間についても、過熱蒸気に空気を含有することにより、特許文献1よりも幅広い範囲での調整が可能となる。過熱蒸気処理工程における混合気体の処理時間としては、10〜120秒が好ましい。10秒未満では、充分な膨化処理効果が得られず、120秒以上では、麺線が褐変する。
好ましい処理時間としては30〜80秒、さらに好ましくは30〜60秒が好ましい。
【0033】
以上のように、蒸煮及び/又はボイルによってα化処理した麺を、熱風によって水分含量5〜17重量%まで乾燥した麺線に対して、過熱蒸気と空気を混合した気体により膨化処理を施すことにより、過熱蒸気による膨化処理において課題であった膨化処理の条件調整が容易化され、乾燥ムラ、膨化ムラが少なく、喫食時のほぐれがよく、生麺的な食感を有する即席麺を製造することができることがわかる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
(実験1)
<空気含有による効果>
(実施例1−1)
小麦粉750g、澱粉250gを粉体混合し、これに食塩20g、かんすい9.75g、重合リン酸塩1g、リン酸ナトリウム1.5gを溶解した練水410mlを加え、常圧ミキサーで15分間混練して麺生地(ドウ)を得た。
【0035】
得られた麺生地を整形、複合して麺帯化し、圧延を繰り返して最終麺厚1.55mmとした後、切刃16番角で麺線を切り出した。
【0036】
切り出された麺線をただちに2分間にわたって蒸煮処理した後、1L当り食塩10g、を溶解した着味液に6秒間浸漬した後、引き延ばして約40cmとなるように麺線をカットした。
【0037】
カットした麺線155gをリテーナに充填して90℃で18分乾燥した後、温度を85℃にしてさらに20分熱風乾燥した。この時の水分が12.5%であった。
【0038】
180℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(50L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射し、30秒間過熱蒸気処理を行い即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、460g/mであり、温度は140℃であった。
【0039】
ここで空気の混合割合(Z)は、数式2及び数式3より下記に求められる。
混合気体のモル数(N)は数式2より、1 x 1000 / (0.082 x (273 +140))=29.5(mol)と求められる。
次に混合気体の絶対湿度が460g/mであることから1000L当たりの水蒸気のモル数は、460/18=25.6(mol)となる。
したがって混合気体における空気の混合割合は、(29.5−25.6)/29.5 x 100=13(%)となる
【0040】
上記の結果より麺線がさらされる状態における実施例1−1の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が13%で、温度が140℃であることがわかる。
【0041】
(実施例1−2)
180℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(100L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射する以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、435g/mであり、温度は140℃であった。
【0042】
実施例1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例1−2の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が18%で、温度が140℃であることがわかる。
【0043】
(実施例1−3)
180℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(190L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射する以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、335g/mであり、温度は140℃であった。
【0044】
実施例1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例1−3の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が37%で、温度が140℃であることがわかる。
【0045】
(実施例1−4)
180℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(415L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射する以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、275g/mであり、温度は140℃であった。
【0046】
実施例1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例1−4の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が48%で、温度が140℃であることがわかる。
【0047】
(実施例1−5)
180℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(830L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射する以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、215g/mであり、温度は140℃であった。
【0048】
実施例1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例1−5の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が60%で、温度が140℃であることがわかる。
【0049】
(実施例1−6)
180℃の過熱蒸気(120kg/h)と、圧縮空気(415L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射する以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、340g/mであり、温度は140℃であった。
【0050】
実施例1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例1−6の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が36%で、温度が140℃であることがわかる。
【0051】
(比較例1−1)
圧縮空気を混合しない以外は、実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。
このときの麺線がさらされる付近の温度は、140℃であった。
【0052】
(比較例1−2)
190℃の過熱蒸気(40kg/h)で処理する以外は、比較例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。
このときの麺線がさらされる付近の温度は、140℃であった。
【0053】
(比較例1−3)
180℃の過熱蒸気(120kg/h)で処理する以外は、比較例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。
このときの麺線がさらされる付近の温度は、140℃であった。
【0054】
これらのサンプルをポリスチレン製の容器に入れて500mlの熱湯を注加し、蓋をして4分放置して復元し、喫食した。喫食時の評価方法は、ベテランのパネラー5人によって官能評価を行い、喫食時のほぐれ、膨化ムラ、乾燥ムラの有無、生麺的な食感について総合的評価を行った。
官能評価は、非常に良好なものを5点、良好なものを4点、普通(可)なものを3点、悪いものを2点、著しく悪いものを1点とした。
【0055】
実験1の官能評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
比較例1−1〜1−3で示すように過熱蒸気に空気を混合しない場合には、良好な食感をえるために過熱蒸気の蒸気流量が高く(加熱を強く)すると、喫食時のほぐれの悪化や膨化ムラ、乾燥ムラが発生し、その結果、食感にもムラがでるため、蒸気流量を弱くせざるをえず、膨化による食感を調整することは困難となる。
【0058】
それに対し、実施例1−1〜1−5で示すように過熱蒸気に空気を混合することで、過熱蒸気流量を比較例1−1と同様にした場合でも、喫食時のほぐれや膨化ムラ、乾燥ムラが改善し、良好な食感の即席乾燥麺が得られることがわかる。しかしながら、実施例1−1〜1−3で示すように、空気の混合割合の増加による膨化ムラ、乾燥ムラ改善に伴い、食感は、よくなっていくが、実施例1−4、実施例1−5で示すように空気の混合割合が高くなりすぎると逆に、表面の張りが増し、芯の粘りが弱くなることがわかる。
【0059】
実施例1−6は、実施例1−3とほぼ同様の空気の混合割合で過熱蒸気の流量を高くした試験区であるが、過熱蒸気の流量を高くしたにも関わらず、喫食時のほぐれや膨化ムラ、乾燥ムラは悪化せず、食感は、実施例1−3よりも芯の粘りが増し良好となった。上記の結果より、過熱蒸気の流量を強くした場合にでも喫食時のほぐれや膨化ムラ、乾燥ムラは悪化せず、食感を調整できることがわかる。
【0060】
上記の結果より、過熱蒸気に空気を混合することで喫食時のほぐれがよく、膨化ムラ、乾燥ムラの少ない、食感の良好な麺を得ることが出来ることがわかる。また、過熱蒸気の流量を高く(加熱を強く)した場合でも、喫食時のほぐれや膨化ムラ、乾燥ムラは悪化せずに食感の調整を調整できることがわかる。
【0061】
(実験2)
<温度による効果>
(実施例2−1)
130℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(190L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射し、30秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、400g/mであり、温度は105℃であった。
【0062】
実施例1−1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例2−1の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が31%で、温度が105℃であることがわかる。
【0063】
(実施例2−2)
150℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(190L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射し、30秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、370g/mであり、温度は120℃であった。
【0064】
実施例1−1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例2−1の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が33%で、温度が120℃であることがわかる。
【0065】
(実施例2−3)
260℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(190L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射し、30秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の絶対湿度は、310g/mであり、温度は180℃であった。
【0066】
実施例1−1と同様に算出すると、麺線がさらされる状態における実施例2−3の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合が36%で、温度が180℃であることがわかる。
【0067】
(実施例2−4)
220℃の過熱蒸気(80kg/h)と、圧縮空気(190L/min)を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に噴射し、30秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−1と同様に即席麺サンプルを製造した。このときの麺線がさらされる付近の蒸気庫内の温度は220℃であった。絶対湿度については、検出機器の温度限界を超えているため測定できなかった。
【0068】
絶対湿度は不明であるが、実施例2−1〜2−3の測定結果から考えて、空気の混合割合は、30〜40%程度であと推測する。実施例2−4の過熱蒸気と空気の混合気体は、空気の混合割合は不明だが、温度が220℃であることがわかる。
【0069】
これらのサンプルをポリスチレン製の容器に入れて500mlの熱湯を注加し、蓋をして4分放置して復元し、喫食した。喫食時の評価方法は、ベテランのパネラー5人によって官能評価を行い、喫食時のほぐれ、膨化ムラ、乾燥ムラの有無、生麺的な食感について総合的評価を行った。
官能評価は、非常に良好なものを5点、良好なものを4点、普通(可)なものを3点、悪いものを2点、著しく悪いものを1点とした。
【0070】
実験2の官能評価結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例2−1では、喫食時のほぐれや膨化ムラ・乾燥ムラが少なく良好であるが、混合気体の温度が低いため、膨化度合が若干弱く、食感はやや表面が硬めであった。実施例2−2、実施例1−3、実施例2−3では、喫食時のほぐれ、膨化ムラ、乾燥ムラが少なく、良好であり、食感についても適度に膨化しており、良好であった。実施例2−3では、実施例1−3と比較し、やや膨化が強く、食感としてやや柔らかかった。実施例2−4では、喫食時のほぐれや膨化ムラ・乾燥ムラが少なく良好であるが、混合気体の温度が低いため、膨化度合が若干高く、食感はやや表面が柔らかった。また、麺塊に若干の変色が認められた。
(実験3)
<処理による効果>
(実施例3−1)
過熱蒸気と空気を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に10秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−3と同様に即席麺サンプルを製造した。
【0073】
(実施例3−2)
過熱蒸気と空気を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に60秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−3と同様に即席麺サンプルを製造した。
【0074】
(実施例3−3)
過熱蒸気と空気を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に80秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−3と同様に即席麺サンプルを製造した。
【0075】
(実施例3−4)
過熱蒸気と空気を混合した混合気体を蒸気庫内で乾燥した麺線に120秒間過熱蒸気処理を行う以外は実施例1−3と同様に即席麺サンプルを製造した。
【0076】
これらのサンプルをポリスチレン製の容器に入れて500mlの熱湯を注加し、蓋をして4分放置して復元し、喫食した。喫食時の評価方法は、ベテランのパネラー5人によって官能評価を行い、喫食時のほぐれ、乾燥した麺塊の膨化ムラ、乾燥ムラの有無、生麺的な食感について総合的評価を行った。
官能評価は、非常に良好なものを5点、良好なものを4点、普通(可)なものを3点、悪いものを2点、著しく悪いものを1点とした。
【0077】
実験3の官能評価結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
実施例3−1では、処理時間が短く、膨化度合が低いため、食感は実施例1−3と比較して表面がやや硬めであったが、喫食時のほぐれや膨化ムラ、乾燥ムラに関しては、良好であった。また、実施例3−3、実施例3−4では、若干麺全体が実施例1−3と比較して全体的に弾性が強くなり、実施例3−4では、若干の変色が認められた。
【0080】
以上より、鋭意研究した結果、蒸煮及び/又はボイルによってα化処理した麺を、熱風によって水分含量5〜17重量%まで乾燥した麺線に対して、過熱蒸気と空気を混合した気体により過熱蒸気処理を施すことにより、過熱蒸気による膨化処理において課題であった膨化処理の条件調整が容易化され、乾燥ムラ、膨化ムラが少なく、喫食時のほぐれがよく、生麺的な食感を有する即席麺を製造することができることがわかる。