【文献】
市ヶ谷敦郎 外,DCTを利用した複数の直交変換によるインター符号化,映像情報メディア学会 2012年年次大会講演予稿集,日本,一般社団法人映像情報メディア学会,2012年 8月 8日,pp.1-2
【文献】
Jicheng An et al.,Non-CE7: Boundary-Dependent Transform for Inter-Predicted Residue,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,7th Meeting: Geneva, CH,2011年11月,JCTVC-G281_r1,pp.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の隣接画素非参照予測は、インター予測、イントラブロックコピー予測、及びクロスコンポーネント信号予測のうちいずれかを含むことを特徴とする、請求項1に記載の画像符号化装置。
前記直交変換選択制御手段は、前記所定の評価基準として、前記低域通過フィルタ処理の効果が所定レベル以上であるか、又は前記低域通過フィルタ処理の実行を経てRDコストとして優れている際に前記第1の組み合わせを選択する手段を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像符号化装置。
前記フィルタ処理手段は、前記隣接画素非参照予測手段によって生成された予測画像のブロック内の予測信号のうち、前記復号済み隣接信号と隣接する予測信号が平滑化されるよう当該低域通過フィルタ処理を施すことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の画像符号化装置。
前記逆直交変換選択制御手段は、前記変換種別識別信号を、前記複数種の直交変換処理のうち変換基底の端部が閉じた第1の直交変換処理と、変換基底の端部が開放した第2の直交変換処理のいずれが符号化側で適用されているかを示す符号化パラメータとして取得する手段を有することを特徴とする、請求項5に記載の画像復号装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による各実施形態の画像符号化装置及び画像復号装置について順に説明する。
【0027】
〔第1実施形態〕
(画像符号化装置)
まず、本発明による第1実施形態の画像符号化装置1における本発明に係る主要な構成要素である予測画像に係るフィルタ処理部12について
図1及び
図2を参照して説明し、その具体的な典型例の画像符号化装置1について
図3乃至
図5を参照して説明する。
【0028】
図1(a)は、本発明による第1実施形態の画像符号化装置1における予測画像に係るフィルタ処理部12周辺のブロック図であり、
図1(b)は、フィルタ処理部12によるその予測画像のフィルタ処理例を示す説明図である。
【0029】
図1(a)に示すように、本発明による第1実施形態の画像符号化装置1では、隣接画素非参照予測部11、フィルタ処理部12、予測残差信号生成部13、及び直交変換部14を備えるように構成される。
【0030】
隣接画素非参照予測部11は、原画像の符号化対象領域について、隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いることなく予測画像を生成する信号予測処理を行う機能部である。本願明細書中、このような信号予測を「隣接画素非参照予測」と称しており、隣接画素非参照予測には、例えば、フレーム間の動き補償予測を行うインター予測、同一フレームの異なる復号済みの部分画像をコピーして予測画像を生成するイントラブロックコピー(Intra Block Copy)予測、及び或るフレームの対応するブロック位置の輝度信号と色差信号とのコンポーネント信号間の相関性を利用して予測画像を生成する信号予測(本願明細書中、「クロスコンポーネント信号予測」と称する)等が含まれる。
【0031】
例えば、インター予測では、
図2(a)に示すように、或るGOP構造の複数のフレームF1〜F6において、フレームF1をIフレーム(イントラフレーム)とすると、Pフレーム(予測インターフレーム)のように過去のIフレームやPフレームを参照して予測画像を生成する場合や、Bフレーム(双予測インターフレーム)のように過去と将来のフレーム等複数のフレームを参照して予測画像を生成する。
【0032】
また、イントラブロックコピー予測では、
図2(b)に示すように、同一フレームFの異なる復号済みの部分画像Bkrを参照しコピーして予測画像Bkpを生成する。
【0033】
また、クロスコンポーネント信号予測では、
図2(c)に示すように、コンポーネント信号間の相関性を利用し、或るフレームFの対応するブロック位置の輝度信号(例えば、Y信号)の局部復号画像Bkrを参照し色差信号(例えば、U/V信号)の予測画像に対して重み付け加算による合成処理を施して色差信号(例えば、U/V信号)の修正予測画像Bkpを生成する。このようなクロスコンポーネント信号予測に関する詳細は、特開2014-158270号公報を参照されたい。
【0034】
これらの隣接画素非参照予測は、原画像の符号化対象領域のブロックに隣接する領域として復号済み領域を持ちながら、その隣接画素間の相関の高さを利用せず信号予測を行う点で共通している。
【0035】
第1実施形態におけるフィルタ処理部12は、隣接画素非参照予測部11によって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像に対して左側と上側のそれぞれに隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、該予測信号に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、予測残差信号生成部13に出力する機能部である。
【0036】
例えば、
図1(b)に示すように、フィルタ処理部12は、原画像の符号化対象領域のブロックBkoに対応する4×4の画素信号pよりなる予測画像のブロックBkpが隣接画素非参照予測部11によって生成されたとすると、該予測画像に対して左側と上側に隣接する当該予測画像のブロックBkpのブロック境界周辺における復号済み隣接信号Soを用いて、当該予測画像における最左側及び最上側の画素信号(予測信号)をフィルタ対象領域の信号Sfとして、それぞれ例えば水平方向及び垂直方向の平滑化フィルタ等の低域通過フィルタ処理を施すことにより、新たな予測信号よりなる予測画像を生成する。
【0037】
予測残差信号生成部13は、原画像の符号化対象領域のブロック(符号化対象ブロック)Bkoの各画素信号(原信号)に対する、フィルタ処理部12から得られる予測画像のブロックBkpの各画素信号(予測信号)の誤差を算出し、予測残差信号として直交変換部14に出力する。
【0038】
直交変換部14は、予測残差信号生成部13から入力された予測残差信号に対して所定の直交変換処理を施し、その変換係数の信号を生成する。例えば、この所定の直交変換処理として、DCTやDST等符号化方式で用いられる直交変換処理、或いはそれを整数に近似したH.264やH.265で規定される整数直交変換処理とすることができ、利用する符号化方式に従うものであればよい。
【0039】
第1実施形態の画像符号化装置1は、この変換係数の信号に対して量子化処理及びエントロピー符号化処理を施して外部に出力する。そして、エントロピー符号化処理では、各種符号化パラメータ等と一緒にCABACで代表される算術符号化等で符号に変換して映像を伝送することができる。尚、符号化パラメータには、インター予測パラメータやイントラ予測パラメータ、ブロック分割に係るブロックサイズのパラメータ(ブロック分割パラメータ)や量子化処理に係る量子化パラメータ等の選択設定可能なパラメータを含めて伝送することができる。
【0040】
次に、隣接画素非参照予測部11の代表的な例としてインター予測によるインター予測部11aを説明し、その予測画像のブロックの予測信号に対して、フィルタ処理部12によりフィルタ処理を施す画像符号化装置1の構成及びその動作例について、
図3乃至
図5を参照して説明する。
【0041】
図3は、本発明による第1実施形態の画像符号化装置1の一実施例を示すブロック図である。
図3に示す画像符号化装置1は、前処理部10と、インター予測部11aと、フィルタ処理部12と、予測残差信号生成部13と、直交変換部14と、量子化部15と、逆量子化部16と、逆直交変換部17と、復号画像生成部18と、ループ内フィルタ部19と、フレームメモリ20と、イントラ予測部21と、動きベクトル計算部22と、エントロピー符号化部23と、予測画像選択部24とを備える。
【0042】
前処理部10は、入力される動画像データのフレーム毎の原画像について所定のブロックサイズの符号化対象ブロックに分割し、所定の順序で予測残差信号生成部13に出力する。
【0043】
予測残差信号生成部13は、符号化対象ブロックの各画素信号に対する、フィルタ処理部12から得られる予測画像のブロックの各画素信号の誤差を算出し、ブロック単位の予測残差信号として直交変換部14に出力する。
【0044】
直交変換部14は、予測残差信号生成部13から入力された予測残差信号に対して所定の直交変換処理を施し、その変換係数の信号を生成する。
【0045】
量子化部15は、直交変換部14から得られる変換係数の信号に対して所定の量子化処理を施し、エントロピー符号化部23及び逆量子化部16に出力する。
【0046】
逆量子化部16は、量子化部15から得られる量子化後の変換係数の信号に対して逆量子化処理を施し、逆直交変換部17に出力する。
【0047】
逆直交変換部17は、逆量子化部16から得られる逆量子化後の変換係数の信号に対して逆直交変換処理を施すことにより予測残差信号を復元し、復号画像生成部18に出力する。
【0048】
復号画像生成部18は、イントラ予測部21又はインター予測部11aで予測され、フィルタ処理部12から得られた予測画像のブロックに、逆直交変換部17により復元された予測残差信号を加算して局部復号画像のブロックを生成し、ループ内フィルタ部19に出力する。
【0049】
ループ内フィルタ部19は、復号画像生成部18から得られる局部復号画像のブロックに関して、例えばアダプティブ・ループ・フィルタ(ALF:Adaptive Loop Filter)や画素適応オフセット(SAO:Sample Adaptive Offset)、デブロッキングフィルタ等のループ内フィルタ処理を施し、フレームメモリ20に出力する。これらのフィルタ処理に関するフィルタパラメータは符号化処理の付帯情報とする符号化パラメータの1つとしてエントロピー符号化部23に出力される。
【0050】
フレームメモリ20は、ループ内フィルタ部19を経て得られる局部復号画像のブロックを格納し、イントラ予測部21、インター予測部11a及び動きベクトル計算部22により利用可能な参照画像として保持する。
【0051】
イントラ予測部21は、予測画像選択部24による予測対象のフレーム内の信号のみで信号予測を行う信号選択時に、原画像の符号化対象ブロック内の画素信号(原信号)に対して、フレームメモリ20に参照画像として格納されている当該符号化対象ブロックの左側や上側に隣接する符号化し復号済みのブロックの画素信号を用いてDC予測、Planer予測、或いは方向性予測を行い、外挿により予測された画素信号(予測信号)よりなる予測画像のブロックを生成し、フィルタ処理部12に出力する。
【0052】
尚、イントラ予測部21で用いるDC予測、Planer予測、或いは方向性予測を識別するイントラ予測パラメータは符号化処理の付帯情報とする符号化パラメータの1つとしてエントロピー符号化部23に出力される。
【0053】
インター予測部11aは、予測画像選択部24によるP/Bフレームに対してフレーム間の動き補償予測を行う信号選択時に、原画像の符号化対象ブロック内の画素信号(原信号)に対して、フレームメモリ20に参照画像として格納されているデータを動きベクトル計算部22から提供される動きベクトルで動き補償することにより予測画像のブロックを生成し、フィルタ処理部12に出力する。
【0054】
動きベクトル計算部22は、フレームメモリ20に格納されている参照画像のデータに対して、ブロックマッチング技法等を用いて原画像の符号化対象ブロックに最も類似している位置を探索し、その空間的なずれを示す値を動きベクトルとして算出し、インター予測部11aに出力する。
【0055】
尚、動きベクトル計算部22で算出される動きベクトルを含むインター予測に用いたインター予測パラメータは符号化処理の付帯情報とする符号化パラメータの1つとしてエントロピー符号化部23に出力される。
【0056】
エントロピー符号化部23は、量子化部15からの出力信号や各種の符号化パラメータに対してエントロピー符号化処理を施し、符号化された動画像データのストリーム信号を出力する。
【0057】
フィルタ処理部12の一動作例について、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4に示すように、フィルタ処理部12は、イントラ予測部21又はインター予測部11aからの予測画像を入力すると(ステップS1)、当該予測画像が隣接画素非参照予測であるか否か、即ち本例では予測画像選択部24による信号選択に基づいてインター予測であるか否かを識別する(ステップS2)。尚、隣接画素非参照予測が前述したイントラブロックコピー予測やクロスコンポーネント信号予測である場合も同様である。
【0058】
続いて、フィルタ処理部12は、当該予測画像が隣接画素非参照予測ではない、即ち本例ではイントラ予測であると判定するときは(ステップS2:No)、予め定めた処理方式によりフィルタ処理を実行するか否かを判定する(ステップS5)。イントラ予測の予測画像に対してフィルタ処理を実行しない場合(ステップS5:No)、フィルタ処理部12は、当該予測信号に対してフィルタ処理を実行することなく予測残差信号生成部13に出力する(ステップS6)。一方、イントラ予測の予測画像に対してフィルタ処理を実行する場合(ステップS5:Yes)、フィルタ処理部12は、ステップS3に移行する。尚、イントラ予測の予測画像に対するフィルタ処理は、現在規定されているH.265と同様に処理すればよく、本発明の主旨とは直接関係していないため、ステップS3の説明はインター予測の予測画像に対してフィルタ処理を実行する例を説明する。
【0059】
フィルタ処理部12は、当該予測画像が隣接画素非参照予測である、即ち本例ではインター予測であると判定すると(ステップS2:Yes)、当該予測画像から予め定めたフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)を選出する(ステップS3)。例えば、
図5に例示するように、4×4の予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像の最左側と最上側の画素信号(予測信号)をフィルタ処理対象領域Sfとして定める。
【0060】
続いて、フィルタ処理部12は、当該予測画像に対して左側と上側に隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、選出したフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、予測残差信号生成部13に出力する(ステップS4)。例えば、
図5に例示するように、フィルタ処理部12は、4×4の予測画像のブロックBkp内の画素信号(予測信号)のうち、フィルタ処理対象領域Sfにおける水平フィルタ領域、垂直フィルタ領域、及び角フィルタ領域のそれぞれについて、予め定めた重み係数の平滑化フィルタ処理を施し、予測残差信号生成部13に出力する。
【0061】
尚、フィルタ処理部12によるフィルタ処理は低域通過フィルタ処理であればよく、平滑化フィルタ以外のフィルタ処理を適用することもでき、そのフィルタ処理に利用する復号済み隣接信号の領域や重み係数も
図5に示す例に限定する必要はない。例えば大サイズ符号化ブロックの場合、複数行または列に対してフィルタ処理を適用してもよい。また、フィルタ処理部12によるフィルタ処理に係るフィルタ種別やフィルタ処理対象領域、及び重み係数は、符号化処理の付帯情報として伝送するように構成することもできるが、送受間(符号化・復号間)で予め定めておけば伝送する必要もない。
【0062】
このようにフィルタ処理部12によって予測画像に対してフィルタ処理を施すことで、直交変換部14の直交変換処理の種別に関わらず、予測画像内の最左側と最上側の画素信号(予測信号)と、これに隣接する復号済み信号との間に生じる信号誤差が低減され、映像の符号化効率を改善することができる。
【0063】
(画像復号装置)
次に、本発明による第1実施形態の画像復号装置5における本発明に係る主要な構成要素であるフィルタ処理部54とその周辺機能ブロックについて
図6を参照して説明し、その具体的な典型例の画像復号装置5について
図7を参照して説明する。
【0064】
図6は、本発明による第1実施形態の画像復号装置5における予測画像に係るフィルタ処理部54周辺のブロック図である。
図6に示すように、本発明による第1実施形態の画像復号装置5では、逆直交変換部52、隣接画素非参照予測部53、フィルタ処理部54、及び復号画像生成部55を備えるように構成される。
【0065】
逆直交変換部52は、画像符号化装置1側から伝送されたストリーム信号を受信しエントロピー復号処理及び逆量子化処理を経て復元された変換係数に対して、逆直交変換処理を施し、得られる予測残差信号を復号画像生成部55に出力する。
【0066】
隣接画素非参照予測部53は、画像符号化装置1側の隣接画素非参照予測部11と対応する機能部であり、隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いることなく予測画像を生成する信号予測処理を行う。隣接画素非参照予測には、例えば、フレーム間の動き補償予測を行うインター予測、同一フレームの異なる復号済みの部分画像をコピーして予測画像を生成するイントラブロックコピー(Intra Block Copy)予測、及び或るフレームの対応するブロック位置の輝度信号と色差信号とのコンポーネント信号間の相関性を利用して予測画像を生成するクロスコンポーネント信号予測等が含まれる。
【0067】
第1実施形態のフィルタ処理部54は、画像符号化装置1側のフィルタ処理部12と対応する機能部であり、隣接画素非参照予測部53によって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像に対して左側と上側のそれぞれに隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、該予測信号に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、復号画像生成部55に出力する。
【0068】
復号画像生成部55は、後述するフィルタ処理部54から得られる予測画像のブロックに、逆直交変換部52により復元された予測残差信号を加算して復号信号よりなる復号画像のブロックを生成する機能部である。
【0069】
即ち、画像符号化装置1におけるフィルタ処理部12によって予測画像に対してフィルタ処理を経て生成された予測残差信号は、映像の符号化効率が改善された状態で伝送されており、画像復号装置5は、この伝送に係る映像を効率よく復元することができる。尚、フィルタ処理部54においても、フィルタ処理部12の場合と同様に、そのフィルタ処理は低域通過フィルタ処理であればよく、平滑化フィルタ以外のフィルタを適用することもでき、そのフィルタ処理に利用する復号済み隣接信号の領域や重み係数も適宜定めればよい。そして、画像符号化装置1側からフィルタ処理部12によるフィルタ処理に係るフィルタ種別やフィルタ処理対象領域、及び重み係数は、送受間(符号化・復号間)で予め定めておくか、又は符号化処理の付帯情報として伝送されているときは、これに従って画像復号装置5のフィルタ処理部54も同様にフィルタ処理を行うことで、その復号信号の精度を高めることができる。
【0070】
次に、隣接画素非参照予測部53の代表的な例としてインター予測によるインター予測部53aを説明し、そのインター予測による予測信号に対して、フィルタ処理部54によりフィルタ処理を施す画像復号装置5の構成及びその動作例について、
図7を参照して説明する。
【0071】
図7は、本発明による第1実施形態の画像復号装置5の一実施例を示すブロック図である。
図7に示す画像復号装置5は、エントロピー復号部50と、逆量子化部51と、逆直交変換部52と、インター予測部53aと、フィルタ処理部54と、復号画像生成部55と、ループ内フィルタ部56と、フレームメモリ57と、イントラ予測部58と、予測画像選択部59とを備える。
【0072】
エントロピー復号部50は、画像符号化装置1側から伝送されたストリーム信号を受信し、画像符号化装置1のエントロピー符号化処理に対応するエントロピー復号処理を施すことにより得られる各種符号化パラメータを各機能ブロックに出力するとともに、量子化された変換係数を逆量子化部51に出力する。各種符号化パラメータとして、例えばフィルタパラメータ、イントラ予測パラメータ及びインター予測パラメータは、それぞれループ内フィルタ部56、イントラ予測部58、及びインター予測部53aに出力される。
【0073】
逆量子化部51は、エントロピー復号部50から得られる量子化された変換係数に対して画像符号化装置1の量子化処理に対応する逆量子化処理を施し、その変換係数を逆直交変換部52に出力する。
【0074】
逆直交変換部52は、逆量子化部51から得られる変換係数に対して画像符号化装置1の直交変換処理に対応する逆直交変換処理を施すことにより予測残差信号を復元し、復号画像生成部55に出力する。
【0075】
復号画像生成部55は、イントラ予測部58又はインター予測部53aで予測され、フィルタ処理部54によって低域通過フィルタを施すことにより生成された予測画像のブロックに、逆直交変換部52により復元された予測残差信号を加算して復号画像のブロックを生成し、ループ内フィルタ部56に出力する。
【0076】
ループ内フィルタ部56は、画像符号化装置1側のループ内フィルタ処理と対応するフィルタ処理を施し、フレームメモリ57に出力する。
【0077】
フレームメモリ57は、ループ内フィルタ部56を経て得られる復号画像のブロックを格納し、イントラ予測部58及びインター予測部53aにより利用可能な参照画像として保持する。
【0078】
イントラ予測部58は、予測画像選択部59による予測対象のフレーム内の信号のみで信号予測を行う信号選択時に、イントラ予測パラメータと、フレームメモリ57に参照画像として格納されている当該復号対象ブロックの左側や上側に隣接する復号済みのブロックの画素信号を用いて、画像符号化装置1側のイントラ予測部21と対応する予測処理を施すことにより予測画像のブロックを生成し、フィルタ処理部54に出力する。
【0079】
インター予測部53aは、予測画像選択部59によるP/Bフレームに対してフレーム間の動き補償予測を行う信号選択時に、インター予測パラメータに含まれる動きベクトルを用いて、フレームメモリ20に参照画像として格納されているデータを動き補償することにより予測画像のブロックを生成し、フィルタ処理部54に出力する。
【0080】
尚、フレームメモリ57に格納された復号済のデータからフレームを構成し、復号画像として出力するよう構成することができる。
【0081】
フィルタ処理部54は、その動作として
図4及び
図5を参照して例示説明したものと同様に動作する。即ち、フィルタ処理部54における本発明に係るフィルタ処理は、当該予測画像が隣接画素非参照予測である、即ち本例ではインター予測である際に、当該予測画像から予め定めたフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)を選出し、当該予測画像に対して左側や上側に隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、当該選出したフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、復号画像生成部55に出力する。例えば、
図5に例示したように、フィルタ処理部54は、当該予測画像のブロックBkpのブロック境界周辺における復号済み隣接信号Soを用いて、当該予測画像のブロックBkp内の画素信号(予測信号)のうち、フィルタ処理対象領域Sfにおける水平フィルタ領域、垂直フィルタ領域、及び角フィルタ領域のそれぞれについて、予め定めた重み係数の平滑化フィルタ処理を施し、復号画像生成部55に出力する。
【0082】
以上のように構成された第1実施形態の画像符号化装置1及び画像復号装置5によれば、予測画像の予測信号と、隣接する復号済みブロック信号との間に生じる信号誤差が低減され符号化効率が改善するため、符号化効率の高い映像符号化方式の画像符号化装置及び画像復号装置を実現することができる。即ち、予測残差信号における残差成分をより少なくすることができ、符号化伝送する情報量を低減させることにより符号化効率を改善することができる。
【0083】
〔第2実施形態〕
次に、本発明による第2実施形態の画像符号化装置1及び画像復号装置5におけるそれぞれのフィルタ処理部12,54について
図8を参照して説明する。第1実施形態のフィルタ処理部12,54では、隣接画素非参照予測によって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像に対して左側と上側のそれぞれに隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、該予測信号に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成する例を説明した。
【0084】
一方、本実施形態のフィルタ処理部12,54では、隣接画素非参照予測によって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、当該低域通過フィルタ処理で参照する当該復号済み隣接信号を用いて、当該低域通過フィルタ処理の対象とする予測信号に対して低域通過フィルタ処理を施すか否かを決定するための相関判定を行い、この相関判定の結果に応じて低域通過フィルタ処理を適用するか否かを決定するよう構成される。尚、同様な構成要素には同一の参照番号を付して説明する。従って、本実施形態のフィルタ処理部12,54は、
図3及び
図7にそれぞれ例示した画像符号化装置1及び画像復号装置5に適用することができるため、ここでは、本実施形態のフィルタ処理部12,54に係る処理内容についてのみ説明し、その更なる詳細な説明は省略する。
【0085】
図8は、本実施形態の画像符号化装置1又は画像復号装置5におけるフィルタ処理部12,54のブロック図である。また、
図9は、本実施形態の画像符号化装置1又は画像復号装置5における予測画像のフィルタ処理12,54に関するフローチャートである。
【0086】
本実施形態のフィルタ処理部12,54は、水平方向相関判定部101と、垂直方向相関判定部102と、フィルタ処理決定部103と、フィルタ処理実行部104とを備える。これらの機能ブロックの動作について
図9に示す処理例を参照しながら説明する。尚、本実施形態のフィルタ処理部12,54は、隣接画素非参照予測であるか否か、例えば、インター予測であるかイントラ予測であるかの区別なく処理するよう構成することもできるが、ここでは、本発明に係る隣接画素非参照予測の予測画像に対してフィルタ処理を施す例を説明する。
【0087】
フィルタ処理部12,54は、予測画像を入力すると(ステップS11)、水平方向相関判定部101及び垂直方向相関判定部102により、それぞれ個別に定められたフィルタ処理対象領域毎に、相関判定処理を実行する(ステップS12)。
【0088】
即ち、水平方向相関判定部101により該予測画像に対して左側に隣接する復号済み隣接信号との相関を判定し(ステップS13)、水平方向の相関が高いと判定したときは(ステップS13:Yes)、復号済み隣接信号を用いて水平フィルタ処理の実行を決定し(ステップS14)、水平方向の相関が低いと判定したときは(ステップS13:No)、水平フィルタ処理を非実行とする旨をフィルタ処理決定部103に出力する。
【0089】
同様に、垂直方向相関判定部102により該予測画像に対して上側に隣接する復号済み隣接信号との相関を判定し(ステップS15)、垂直方向の相関が高いと判定したときは(ステップS15:Yes)、復号済み隣接信号を用いて垂直フィルタ処理の実行を決定し(ステップS16)、垂直方向の相関が低いと判定したときは(ステップS15:No)、垂直フィルタ処理を非実行とする旨をフィルタ処理決定部103に出力する。
【0090】
フィルタ処理決定部103は、水平・垂直のフィルタ処理が共に実行するとして決定する旨を受け取ったか否かを判別し(ステップS17)、水平・垂直のフィルタ処理を共に実行するとして決定する旨を受け取った場合には(ステップS17:Yes)、水平・垂直双方のフィルタ処理と3タップの角フィルタ処理を実行するとして決定し(ステップS18)、水平・垂直のフィルタ処理のいずれか一方又は双方を実行しないとする旨を受け取った場合には(ステップS17:No)、水平の相関が高い時は水平方向のみのフィルタ処理、垂直方向の相関が高い時は垂直方向のみのフィルタ処理を実行するとして決定するとともに、それぞれ水平・垂直の一方のフィルタ処理のみの場合に角フィルタも水平、又は垂直のフィルタ処理を実行するとして決定する(ステップS19)。
【0091】
図9に示すステップS13〜S19までの処理順は単なる例であり順不同に構成することができる。したがって、フィルタ処理決定部103は、水平方向と垂直方向のそれぞれ個別に定められたフィルタ処理対象領域毎に相関判定を行い、フィルタ処理を「水平方向のみ実行」とするか、「垂直方向のみ実行」とするか、「水平・垂直・角の全てに実行」とするか、「水平・垂直・角のいずれも非実行」とするよう決定し、その旨をフィルタ処理実行部104に出力する。
【0092】
フィルタ処理実行部104は、フィルタ処理決定部103の判定結果に応じたフィルタ処理を行ってフィルタ処理後の予測画像を出力し(ステップS20)、フィルタ処理決定部103の判定結果が「水平・垂直・角のいずれも非実行」とする際には、フィルタ処理部12,54に入力された予測画像をそのまま出力する。
【0093】
例えば、水平方向相関判定部101は、
図10(a)に示す4つの水平方向判定領域A1〜A4のそれぞれについて、隣接画素間の差分を求め、この差分の水平方向判定領域A1〜A4における合計値が所定の閾値以下であれば相関が高いと判定し、そうでなければ相関が低いと判定する。同様に、垂直方向相関判定部102は、
図10(b)に示す4つの垂直方向判定領域B1〜B4のそれぞれについて、隣接画素間の差分を求め、この差分の垂直方向判定領域B1〜B4における合計値が所定の閾値以下であれば相関が高いと判定し、そうでなければ相関が低いと判定する。そして、相関が高い方向のフィルタ処理を
図5に示すように適用することで、フィルタ処理を「水平方向のみ実行」とするか、「垂直方向のみ実行」とするか、「水平・垂直・角の全てに実行」とするか、「水平・垂直・角のいずれも非実行」とすることができる。そして、水平又は垂直のみのフィルタ処理を実行するときは、当該予測画像のブロックの角に位置する画素(予測信号)に対して水平又は垂直のフィルタを適用する。
【0094】
尚、この相関判定領域と、フィルタ処理対象領域とを同じにする必要はないが同じくすることで処理が簡便になる。また、相関判定処理やフィルタ処理の具体的な処理方法は様々な技法が想定され、その一例を示したにすぎない点に留意する。
【0095】
本実施形態のようにフィルタ処理部12,54を構成し、それぞれ画像符号化装置1及び画像復号装置5に適用することで、符号化効率を改善しつつ、これに起因する画質の劣化を抑制することができる。
【0096】
〔第3実施形態〕
(画像符号化装置)
次に、本発明による第3実施形態の画像符号化装置1における本発明に係る主要な構成要素である予測画像に係るフィルタ処理部12及び直交変換選択制御部25について、
図1(b)及び
図11を参照して説明し、その具体的な2つの実施例の画像符号化装置1について
図5、
図12乃至
図15を参照して説明する。以下の説明は、上述の実施形態との相違点に着目して行うものとする。即ち、本実施形態において、上述の実施形態と同様な構成要素には同一の参照番号を付しており、その更なる詳細な説明は省略する。
【0097】
図11(a)は、本実施形態の画像符号化装置1における予測画像に係るフィルタ処理部12及び直交変換選択制御部25周辺のブロック図であり、
図1(b)は、フィルタ処理部12によるその予測画像のフィルタ処理例を示す説明図である。
【0098】
図11(a)に示すように、本実施形態の画像符号化装置1では、隣接画素非参照予測部11、フィルタ処理部12、予測残差信号生成部13、直交変換部14、及び直交変換選択制御部25を備えるように構成される。
【0099】
本実施形態におけるフィルタ処理部12は、直交変換選択制御部25の制御下で、隣接画素非参照予測部11によって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像に対して左側と上側のそれぞれに隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、該予測信号に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、予測残差信号生成部13に出力する機能部である。
【0100】
直交変換部14は、直交変換選択制御部25の制御下で、予測残差信号生成部13から入力された予測残差信号に対して2種類の直交変換処理のうち一方を施し、その変換係数の信号を生成する。
【0101】
例えば、この2種類の直交変換処理として、変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST(Discrete Sine Transform:離散サイン変換))か、又は変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT(Discrete Cosine Transform:離散コサイン変換))とすることができ、実数精度とするか整数精度するかについて限定するものではないが、例えば整数に近似したH.264やH.265で規定される整数直交変換処理とすることができ、利用する符号化方式に従うものであればよい。
【0102】
ここで、直交変換の基底波形の一例を
図11(b)及び
図11(c)に示す。
図11(b)及び
図11(c)に示す例は、4×4の予測残差信号のブロックに対し直交変換する際に利用可能な4点の変換基底(N=4)について、DCT変換基底(
図11(b))及びDST変換基底(
図11(c))におけるそれぞれコサイン及びサインの各周波数成分のパターンとして、低域から高域までの変換基底波形(DCTではu=0〜3、DSTではu=1〜4)を例示している。
図11(b)及び
図11(c)に示すように、DCTのu=0とDSTのu=4以外の主な違いは位相であり、対応する周波数の各変換基底(例えばu=2)は、同じ周波数で画素間相関が同値(基底振幅が同じ)であるが、位相はπ/2ずれていることが分かる。そして、いずれの変換基底波形においても、DCTでは、
図11(b)に示すように、その端点が大きい値を持ち開放となり、変換基底の端部が開放した直交変換処理を実現する。一方で、DSTでは、
図11(c)に示すように、その端点が小さい値を持ち閉じており、変換基底の端部が閉じた直交変換処理を実現する。
【0103】
なお、「変換基底の端部が閉じた直交変換処理」とは、予測残差信号のブロックにおいて当該予測参照ブロックに対し近接側となる一端が閉じたものを云い、例えば、
図11(c)に示すように、他端が開放している変換基底の非対称DSTタイプ7としてもよい。
【0104】
直交変換選択制御部25は、隣接画素非参照予測時に、所定の評価基準の基で、フィルタ処理部12により当該予測画像のブロック境界に位置する画素値(予測信号)に対し低域通過フィルタ処理を実行させたときは、この低域通過フィルタ処理後の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いるよう直交変換部14に指示し、当該所定の評価基準の基で、予測画像のブロックに当該低域通過フィルタ処理を実行させないときは、当該予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いるよう直交変換部14に指示することで、直交変換種別を選択制御する。尚、直交変換選択制御部25は、2種類の直交変換処理のうちいずれを適用したかを示す変換種別識別信号を符号化パラメータの1つとして復号側に出力する。
【0105】
直交変換選択制御部25における所定の評価基準として、2つの実施例を説明する。
【0106】
詳細は後述するが、第1実施例では、直交変換選択制御部25は、フィルタ処理部12に対し、
図1(b)に示すようなフィルタ処理対象領域の信号を選出させ、復号済み隣接信号を用いて低域通過フィルタ処理の仮実行を指示し、フィルタ処理部12から、当該フィルタ処理の実行/非実行の各予測画像を予測ブロック情報(est1)として取得する。続いて、直交変換選択制御部25は、この予測ブロック情報(est1)から、当該フィルタ処理の実行/非実行の各予測画像を比較し、その予測領域の端点(即ち、予測画像のブロックの外周部に位置する画素信号に対する予測残差信号)の影響が当該ブロックサイズ(本例では4×4を例示するが、ブロックサイズは問わない)に対し相対的に大きいと判断されるときは、当該フィルタ処理の実行後の予測画像をフィルタ処理部12から予測残差信号生成部13に出力させる。そして、直交変換選択制御部25は、この低域通過フィルタ処理後の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いるよう直交変換部14に指示するよう制御する。
【0107】
一方、直交変換選択制御部25は、フィルタ処理部12から得られる当該フィルタ処理の実行/非実行の各予測画像を比較し、その予測領域の端点(即ち、予測画像のブロックの外周部に位置する画素信号に対する予測残差信号)の影響が当該ブロックサイズ(本例では4×4を例示するが、ブロックサイズは問わない)に対し相対的に小さいと判断されるときは、当該フィルタ処理について非実行の予測画像をフィルタ処理部12から予測残差信号生成部13に出力させる。そして、直交変換選択制御部25は、この低域通過フィルタ処理について非実行の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いるよう直交変換部14に指示するよう制御する。
【0108】
ここで、当該予測領域の端点の影響が当該ブロックサイズ(本例では4×4を例示するが、ブロックサイズは問わない)に対し相対的に大きいか否かは、様々な評価方法が想定されるが、例えば、当該予測領域の端点の密度分布の分散値と、当該ブロックサイズ全体の密度分布の分散値との割合比較で所定レベル以上であるか否かで判定すればよい。このように、第1実施例では、直交変換選択制御部25は、当該フィルタ処理によるフィルタ処理効果が所定レベル以上であるか否かの判定基準を基に、フィルタ処理の実行の有無を決定し、更にフィルタ処理の実行の有無に応じて適用する直交変換処理の種別を決定し、フィルタ処理部12及び直交変換部14を制御する。
【0109】
また、第2実施例では、直交変換選択制御部25は、フィルタ処理部12に対し、
図1(b)に示すようなフィルタ処理対象領域の信号を選出させ、復号済み隣接信号を用いて低域通過フィルタ処理の仮実行を指示し、そのフィルタ処理の実行時に変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いて直交変換して量子化処理及びエントロピー符号化処理した場合と、そのフィルタ処理の非実行時に変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いて直交変換して量子化処理及びエントロピー符号化処理した場合における、発生符号化量(R)と符号化歪み量(D)のレート歪み情報(est2)を取得して比較し、RDコストとして優れている方の組み合わせ(例えばフィルタ処理の実行・DSTの組み合わせと、フィルタ処理の非実行・DCTの組み合わせ)を選択する。
【0110】
このようなRD最適化により、直交変換選択制御部25は、「フィルタ処理の実行・変換基底の端部が閉じた直交変換処理」の組み合わせが優れていれば、当該フィルタ処理の実行後の予測画像をフィルタ処理部12から予測残差信号生成部13に出力させ、この低域通過フィルタ処理後の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いるよう直交変換部14に指示するよう制御する。
【0111】
一方、「フィルタ処理の非実行・変換基底の端部が開放した直交変換処理」の組み合わせが優れていれば、直交変換選択制御部25は、当該フィルタ処理について非実行の予測画像をフィルタ処理部12から予測残差信号生成部13に出力させ、この低域通過フィルタ処理について非実行の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いるよう直交変換部14に指示するよう制御する。
【0112】
このように、第2実施例では、直交変換選択制御部25は、RD最適化を基に、フィルタ処理の実行の有無を決定し、更にフィルタ処理の実行の有無に応じて適用する直交変換処理の種別を決定し、フィルタ処理部12及び直交変換部14を制御する。
【0113】
最終的に、本実施形態の画像符号化装置1は、直交変換部14から得られる変換係数の信号に対して量子化処理及びエントロピー符号化処理を施して外部に出力する。そして、エントロピー符号化処理では、各種符号化パラメータなどと一緒にCABACで代表される算術符号化などで符号に変換して映像を伝送することができる。尚、符号化パラメータには、本発明に係る変換種別識別信号の他、インター予測パラメータやイントラ予測パラメータ、ブロック分割に係るブロックサイズのパラメータ(ブロック分割パラメータ)や量子化処理に係る量子化パラメータなどの選択設定可能なパラメータを含めて伝送することができる。
【0114】
以下、より具体的に、隣接画素非参照予測部11の代表的な例としてインター予測によるインター予測部11aとし、直交変換選択制御部25における所定の評価基準として、上述の各実施例を適用した画像符号化装置1の構成例をそれぞれ説明する。
【0115】
(第1実施例)
図12は、本実施形態の画像符号化装置1の第1実施例を示すブロック図である。
図12に示す画像符号化装置1は、前処理部10と、インター予測部11aと、フィルタ処理部12と、予測残差信号生成部13と、直交変換部14と、量子化部15と、逆量子化部16と、逆直交変換部17と、復号画像生成部18と、ループ内フィルタ部19と、フレームメモリ20と、イントラ予測部21と、動きベクトル計算部22と、エントロピー符号化部23と、予測画像選択部24と、直交変換選択制御部25とを備える。
【0116】
直交変換部14は、直交変換選択制御部25の制御下で、予測残差信号生成部13から入力された予測残差信号に対して所定の直交変換処理を施し、その変換係数の信号を生成する。
【0117】
第1実施例におけるフィルタ処理部12は、直交変換選択制御部25の制御下で、低域通過フィルタ処理の実行と非実行が制御され、該実行時に隣接画素非参照予測であるインター予測部11aによって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像に対して左側と上側のそれぞれに隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、該予測信号に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、予測残差信号生成部13に出力する。該非実行時にはインター予測部11aによって生成された予測画像を、予測残差信号生成部13に出力する。尚、イントラ予測など隣接画素非参照予測以外の予測時には、フィルタ処理部12は、フィルタ処理の実行の有無は予め定めた方式に従うものとする。
【0118】
第1実施例における直交変換選択制御部25の動作について
図13を参照して説明する。
図13は、本実施形態の画像符号化装置1における第1実施例の直交変換選択制御部25の処理に関するフローチャートである。まず、直交変換選択制御部25は、例えばフィルタ処理部12又は予測画像選択部24から通知を受けて、フィルタ処理部12で処理する予測画像が隣接画素非参照予測であるか否かを判別する(ステップS1)。
【0119】
隣接画素非参照予測時に(ステップS1:Yes)、直交変換選択制御部25は、フィルタ処理部12に対し、フィルタ処理対象領域の信号を選出させ、復号済み隣接信号を用いて低域通過フィルタ処理の仮実行を指示する(ステップS2)。
【0120】
例えば、フィルタ処理部12は、
図5に例示するように、4×4の予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像の最左側と最上側の画素信号(予測信号)をフィルタ処理対象領域Sfとして定める。続いて、フィルタ処理部12は、当該予測画像に対して左側と上側に隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、選出したフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成する。例えば、
図5に例示するように、フィルタ処理部12は、4×4の予測画像のブロックBkp内の画素信号(予測信号)のうち、フィルタ処理対象領域Sfにおける水平フィルタ領域、垂直フィルタ領域、及び角フィルタ領域のそれぞれについて、予め定めた重み係数の平滑化フィルタ処理を施すことで当該フィルタ処理後の予測画像を生成する。
【0121】
尚、フィルタ処理部12によるフィルタ処理は低域通過フィルタ処理であればよく、平滑化フィルタ以外のフィルタ処理を適用することもでき、そのフィルタ処理に利用する復号済み隣接信号の領域や重み係数も
図5に示す例に限定する必要はない。例えば大サイズ符号化ブロックの場合、複数行または列に対してフィルタ処理を適用してもよい。また、フィルタ処理部12によるフィルタ処理に係るフィルタ種別やフィルタ処理対象領域、及び重み係数は、符号化処理の付帯情報として伝送するように構成することもできるが、送受間(符号化・復号間)で予め定めておけば伝送する必要もない。
【0122】
続いて、
図13を参照するに、直交変換選択制御部25は、フィルタ処理部12から、当該フィルタ処理の実行/非実行の各予測画像を予測ブロック情報(est1)として取得する(ステップS3)。
【0123】
続いて、直交変換選択制御部25は、この予測ブロック情報(est1)から、当該フィルタ処理の実行/非実行の各予測画像を比較し、その予測領域の端点(即ち、予測画像のブロックの外周部に位置する画素信号に対する予測残差信号)の影響が当該ブロックサイズ(本例では4×4を例示するが、ブロックサイズは問わない)に対し相対的に大きいか否かにより、当該フィルタ処理の効果が所定レベル以上であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0124】
当該予測領域の端点の影響が当該ブロックサイズに対し相対的に大きいと判断されるとき(ステップS4:Yes)、直交変換選択制御部25は、当該フィルタ処理の実行後の予測画像をフィルタ処理部12から予測残差信号生成部13に出力させ、この低域通過フィルタ処理後の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いるよう直交変換部14に指示する(ステップS5)。
【0125】
一方、当該予測領域の端点の影響が当該ブロックサイズに対し相対的に小さいと判断されるとき(ステップS4:No)、直交変換選択制御部25は、当該フィルタ処理について非実行の予測画像をフィルタ処理部12から予測残差信号生成部13に出力させ、この低域通過フィルタ処理について非実行の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いるよう直交変換部14に指示する(ステップS6)。
【0126】
尚、イントラ予測など隣接画素非参照予測以外の予測時には(ステップS1:No)、直交変換選択制御部25は、フィルタ処理の実行の有無、及び直交変換種別は予め定めた方式に従って実行するようフィルタ処理部12及び直交変換部14を制御する(ステップS7)。
【0127】
このように、第1実施例では、直交変換選択制御部25は、当該フィルタ処理によるフィルタ処理効果が所定レベル以上であるか否かの判定基準を基に、フィルタ処理の実行の有無及び適用する直交変換処理の種別を決定するようフィルタ処理部12及び直交変換部14を制御する。そして、直交変換選択制御部25は、当該2種類の直交変換処理のうちのいずれを適用したかを示す変換種別識別信号を符号化パラメータの1つとしてエントロピー符号化部23を経て復号側に出力する。
【0128】
以上のように、当該フィルタ処理によるフィルタ処理効果が所定レベル以上であるか否かの判定基準を基に、フィルタ処理の実行の有無及び適用する直交変換処理の種別を決定しフィルタ処理部12及び直交変換部14を制御するため、予測残差信号における残差成分をより少なくすることができ、符号化伝送する情報量を低減させることにより符号化効率を改善することができる。
【0129】
特に、隣接画素非参照予測時でも、当該フィルタ処理後の予測画像のブロックを基に得られる予測残差信号のブロックに対し、隣接画素信号間の相関を利用し、また、変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いるため、位相のみならず当該予測領域の端点に対応する変換基底の特徴に合致し、より顕著に符号化効率を改善することができる。
【0130】
(第2実施例)
次に、第2実施例を説明する。
図14は、本実施形態の画像符号化装置1の第2実施例を示すブロック図である。
図14において、
図12と同様な構成要素には同一の参照番号を付しており、その更なる詳細な説明は省略する。
【0131】
第2実施例におけるフィルタ処理部12は、第1実施例と同様に、直交変換選択制御部25の制御下で、低域通過フィルタ処理の実行と非実行が制御され、該実行時に隣接画素非参照予測であるインター予測部11aによって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像に対して左側と上側のそれぞれに隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、該予測信号に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、予測残差信号生成部13に出力する。該非実行時にはインター予測部11aによって生成された予測画像を、予測残差信号生成部13に出力する。尚、イントラ予測など隣接画素非参照予測以外の予測時には、フィルタ処理部12は、フィルタ処理の実行の有無は予め定めた方式に従うものとする。
【0132】
第2実施例における直交変換選択制御部25の動作について
図15を参照して説明する。
図15は、本実施形態の画像符号化装置1における第2実施例の直交変換選択制御部25の処理に関するフローチャートである。まず、直交変換選択制御部25は、例えばフィルタ処理部12又は予測画像選択部24から通知を受けて、フィルタ処理部12で処理する予測画像が隣接画素非参照予測であるか否かを判別する(ステップS11)。
【0133】
隣接画素非参照予測時に(ステップS11:Yes)、直交変換選択制御部25は、フィルタ処理部12に対し、
図1(b)に示すようなフィルタ処理対象領域の信号を選出させ、復号済み隣接信号を用いて低域通過フィルタ処理の仮実行を指示する(ステップS12)。
【0134】
続いて、直交変換選択制御部25は、フィルタ処理部12のフィルタ処理の実行時に、直交変換部14に対して変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いて当該フィルタ処理の実行後の予測画像をフィルタ処理部12から予測残差信号生成部13に出力させ、この低域通過フィルタ処理後の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックを直交変換させ、量子化部15及びエントロピー符号化部23により量子化処理及びエントロピー符号化処理した場合と、フィルタ処理部12のフィルタ処理の非実行時に、直交変換部14に対して変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いて当該フィルタ処理について非実行の予測画像をフィルタ処理部12から予測残差信号生成部13に出力させ、この低域通過フィルタ処理について非実行の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックを直交変換させ、量子化部15及びエントロピー符号化部23により量子化処理及びエントロピー符号化処理した場合における、それぞれの発生符号化量(R)と符号化歪み量(D)のレート歪み情報(est2)を、それぞれ量子化部15及びエントロピー符号化部23から取得する(ステップS13)。
【0135】
続いて、直交変換選択制御部25は、このレート歪み情報(est2)から、いずれの組み合わせ(例えばフィルタ処理の実行・DSTの組み合わせと、フィルタ処理の非実行・DCTの組み合わせ)がRDコストとして優れているかを比較して判定する(ステップS14)。
【0136】
当該フィルタ処理の実行、且つ変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いるほうがRDコストとして優れていると判断されるときは(ステップS14:Yes)、当該フィルタ処理の実行後の予測画像をフィルタ処理部12から予測残差信号生成部13に出力させ、この低域通過フィルタ処理後の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いるよう直交変換部14に指示する(ステップS15)。
【0137】
一方、当該フィルタ処理の非実行、且つ変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いるほうがRDコストとして優れていると判断されるときは(ステップS14:No)、当該フィルタ処理について非実行の予測画像をフィルタ処理部12から予測残差信号生成部13に出力させ、この低域通過フィルタ処理について非実行の予測画像のブロックを基に予測残差信号生成部13から得られる予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いるよう直交変換部14に指示する(ステップS16)。
【0138】
尚、イントラ予測など隣接画素非参照予測以外の予測時には(ステップS11:No)、直交変換選択制御部25は、フィルタ処理の実行の有無、及び直交変換種別は予め定めた方式に従って実行するようフィルタ処理部12及び直交変換部14を制御する(ステップS17)。
【0139】
このように、第2実施例では、直交変換選択制御部25は、RD最適化により選択した結果を基に、フィルタ処理の実行の有無及び適用する直交変換処理の種別を決定しフィルタ処理部12及び直交変換部14を制御する。そして、直交変換選択制御部25は、当該2種類の直交変換処理のうちのいずれを適用したかを示す変換種別識別信号を符号化パラメータの1つとしてエントロピー符号化部23を経て復号側に出力する。
【0140】
以上のように、直交変換選択制御部25は、RD最適化により選択した結果を基に、フィルタ処理の実行の有無及び適用する直交変換処理の種別を決定しフィルタ処理部12及び直交変換部14を制御するため、予測残差信号における残差成分をより少なくすることができ、符号化伝送する情報量を低減させることにより符号化効率を改善することができる。
【0141】
特に、隣接画素非参照予測時でも、当該フィルタ処理の実行を許容し、当該フィルタ処理後の予測画像のブロックを基に得られる予測残差信号のブロックに対し、隣接画素信号間の相関を利用し、また、変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いるため、位相のみならず当該予測領域の端点に対応する変換基底の特徴に合致し、より顕著に符号化効率を改善することができる。
【0142】
(画像復号装置)
次に、本実施形態の画像復号装置5における本発明に係る主要な構成要素であるフィルタ処理部54及び逆直交変換選択制御部60の周辺機能ブロックについて
図16を参照して説明し、その具体的な典型例の画像復号装置5について
図17を参照して説明する。
【0143】
図16は、本実施形態の画像復号装置5における予測画像に係るフィルタ処理部54及び逆直交変換選択制御部60周辺のブロック図である。
図16に示すように、本実施形態の画像復号装置5では、逆直交変換部52、隣接画素非参照予測部53、フィルタ処理部54、復号画像生成部55、及び逆直交変換選択制御部60を備えるように構成される。
【0144】
逆直交変換部52は、逆直交変換選択制御部60の制御下で、画像符号化装置1側から伝送されたストリーム信号を受信しエントロピー復号処理及び逆量子化処理を経て復元された変換係数に対して、逆直交変換処理を施し、得られる予測残差信号を復号画像生成部55に出力する。
【0145】
フィルタ処理部54は、画像符号化装置1側のフィルタ処理部12と対応する機能部であり、逆直交変換選択制御部60の制御下で、低域通過フィルタ処理の実行と非実行が制御され、該実行時に隣接画素非参照予測部53によって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像に対して左側と上側のそれぞれに隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、該予測信号に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、復号画像生成部55に出力する。該非実行時には隣接画素非参照予測部53によって生成された予測画像を、復号画像生成部55に出力する。尚、イントラ予測など隣接画素非参照予測以外の予測時には、フィルタ処理部54は、符号化側と対応し、フィルタ処理の実行の有無は予め定めた方式に従うものとする。
【0146】
逆直交変換選択制御部60は、隣接画素非参照予測時に、画像符号化装置1側から得られる変換種別識別信号を参照し、処理対象の変換係数に対し変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いた旨を示すとき、当該復元した変換係数に対し当該変換基底の端部が閉じた逆直交変換処理(例えば、IDST)を適用するよう逆直交変換部52に対して指示することで選択制御するとともに、対応する当該低域通過フィルタ処理を実行するようフィルタ処理部54に指示する。
【0147】
一方、画像符号化装置1側から得られる変換種別識別信号を参照し変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いた旨を示すとき、逆直交変換選択制御部60は、当該復元した変換係数に対し当該変換基底の端部が開放した逆直交変換処理(例えば、IDCT)を適用するよう逆直交変換部52に対して指示することで選択制御するとともに、対応する当該低域通過フィルタ処理を非実行とするようフィルタ処理部54に指示する。
【0148】
即ち、画像符号化装置1におけるフィルタ処理部12によって予測画像に対してフィルタ処理を経て生成された予測残差信号は、変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を経て、映像の符号化効率が改善された状態で伝送されており、画像復号装置5は、この伝送に係る映像を効率的に復元することができる。尚、フィルタ処理部54においても、フィルタ処理部12の場合と同様に、そのフィルタ処理は低域通過フィルタ処理であればよく、平滑化フィルタ以外のフィルタを適用することもでき、そのフィルタ処理に利用する復号済み隣接信号の領域や重み係数も適宜定めればよい。そして、画像符号化装置1側からフィルタ処理部12によるフィルタ処理に係るフィルタ種別やフィルタ処理対象領域、及び重み係数は、送受間(符号化・復号間)で予め定めておくか、又は符号化処理の付帯情報として伝送されているときは、これに従って画像復号装置5のフィルタ処理部54も同様にフィルタ処理を行うことで、その復号信号の精度を高めることができる。
【0149】
次に、隣接画素非参照予測部53の代表的な例としてインター予測によるインター予測部53aを説明し、そのインター予測による予測信号に対して、逆直交変換部52及びフィルタ処理部54を選択制御する逆直交変換選択制御部60を適用した画像復号装置5の構成例を説明する。
【0150】
図17は、本実施形態の画像復号装置5の一実施例を示すブロック図である。
図17に示す画像復号装置5は、エントロピー復号部50と、逆量子化部51と、逆直交変換部52と、インター予測部53aと、フィルタ処理部54と、復号画像生成部55と、ループ内フィルタ部56と、フレームメモリ57と、イントラ予測部58と、予測画像選択部59と、逆直交変換選択制御部60とを備える。
【0151】
逆直交変換部52は、逆直交変換選択制御部60の制御下で、逆量子化部51から得られる変換係数に対して画像符号化装置1の直交変換処理に対応する逆直交変換処理を施すことにより予測残差信号を復元し、復号画像生成部55に出力する。
【0152】
フィルタ処理部54は、逆直交変換選択制御部60の制御下で、その動作として
図5を参照して例示説明したものと同様に動作する。即ち、フィルタ処理部54における本実施形態に係るフィルタ処理は、当該予測画像が隣接画素非参照予測である、即ち本例ではインター予測である際に、当該予測画像から予め定めたフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)を選出し、当該予測画像に対して左側や上側に隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、当該選出したフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、復号画像生成部55に出力する。例えば、
図5に例示したように、フィルタ処理部54は、逆直交変換選択制御部60の制御下で、当該予測画像のブロックBkpのブロック境界周辺における復号済み隣接信号Soを用いて、当該予測画像のブロックBkp内の画素信号(予測信号)のうち、フィルタ処理対象領域Sfにおける水平フィルタ領域、垂直フィルタ領域、及び角フィルタ領域のそれぞれについて、予め定めた重み係数の平滑化フィルタ処理を施し、復号画像生成部55に出力する。
【0153】
逆直交変換選択制御部60の動作について
図18を参照して説明する。
図18は、本実施形態の画像復号装置5における一実施例の逆直交変換選択制御部60の処理に関するフローチャートである。まず、逆直交変換選択制御部60は、現在の処理状態が、隣接画素非参照予測であるか否かを予測画像選択部59からの通知を受けて把握する(ステップS21)。
【0154】
続いて、逆直交変換選択制御部60は、隣接画素非参照予測時に(ステップS21:Yes)、画像符号化装置1から得られる変換種別識別信号を参照し、変換係数に対し変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いたものか、変換係数に対し変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いたものかを判別する(ステップS22)。
【0155】
続いて、逆直交変換選択制御部60は、変換係数に対し変換基底の端部が閉じた直交変換処理(例えば、DST)を用いたものと判別したとき(ステップS23:Yes)、当該低域通過フィルタ処理を実行するようフィルタ処理部54に指示するとともに、逆量子化部51を経て復元した変換係数に対し当該変換基底の端部が閉じた逆直交変換処理(例えば、IDST)を適用するよう逆直交変換部52に対して指示することで選択制御し、フィルタ処理部54を経て得られる予測画像に加算する予測残差信号を逆直交変換部52に生成させる(ステップS24)。
【0156】
一方、変換係数に対し変換基底の端部が開放した直交変換処理(例えば、DCT)を用いたものと判別したとき(ステップS23:No)、逆直交変換選択制御部60は、当該低域通過フィルタ処理を非実行とするようフィルタ処理部54に指示するとともに、逆量子化部51を経て復元した変換係数に対し当該変換基底の端部が開放した逆直交変換処理(例えば、IDCT)を適用するよう逆直交変換部52に対して指示することで選択制御し、フィルタ処理部54を経て得られる予測画像に加算する予測残差信号を逆直交変換部52に生成させる(ステップS25)。
【0157】
尚、イントラ予測など隣接画素非参照予測以外の予測時には(ステップS21:No)、逆直交変換選択制御部60は、フィルタ処理の実行の有無、及び直交変換種別は予め定めた方式に従って実行するよう逆直交変換部52及びフィルタ処理部54を制御する(ステップS26)。
【0158】
以上のように、逆直交変換選択制御部60は、画像符号化装置1から得られる変換種別識別信号を参照することで、適用する逆直交変換処理の種別及びフィルタ処理の実行の有無を決定し逆直交変換部52及びフィルタ処理部54を制御するため、画像符号化装置1側で予測残差信号における残差成分をより少なくし、少ない情報量で復号することができ、符号化側及び復号側の一連の処理で符号化効率を改善することができる。
【0159】
特に、隣接画素非参照予測時でも、符号化装置1側と対応して、当該フィルタ処理後の予測画像のブロックを基に得られる予測残差信号のブロックに対し、変換基底の端部が閉じた逆直交変換処理(例えば、IDST)を用いるため、位相のみならず当該予測領域の端点に対応する変換基底の特徴に合致し、より顕著に符号化効率を改善することができる。
【0160】
以上のように構成された本実施形態の画像符号化装置1及び画像復号装置5によれば、予測画像の予測信号と、隣接する復号済みブロック信号との間に生じる信号誤差が低減され符号化効率が改善するため、符号化効率の高い映像符号化方式の画像符号化装置及び画像復号装置を実現することができる。
【0161】
〔第4実施形態〕
(画像符号化装置)
次に、本発明による第4実施形態の画像符号化装置1における本発明に係る主要な構成要素である予測画像に係るフィルタ処理部12について、
図19及び
図20を参照して説明し、その具体的な典型例の画像符号化装置1について、
図4、
図21及び
図22を参照して説明する。以下の説明は、上述の実施形態との相違点に着目して行うものとする。即ち、本実施形態において、上述の実施形態と同様な構成要素には同一の参照番号を付しており、その更なる詳細な説明は省略する。
【0162】
包括的には、本実施形態の画像符号化装置1は、インター予測に用いる予測画像に対してもイントラ予測と同様に、符号化し復号済の隣接信号を利用して例えば低域通過フィルタ処理を適用することで、インター予測の予測画像の最左側及び最上側の領域に対する予測残差信号を小さくするとともに、予測残差信号のブロックをブロック分割して、当該低域通過フィルタ処理の方向性に応じてDST及びDCTのいずれかを適用する。尚、現在のH.265の規格上では、DSTが適用できる予測画像のブロックサイズは小さいもの(例えば4×4)のみに制限されている。そこで、本実施形態の画像符号化装置1では、より大きい予測画像のブロックにおけるインター予測では、この予測画像に当該低域通過フィルタ処理を適用後、予め定めた規定のブロックサイズ(例えば、当該規格上のDSTの適用が許されるブロックサイズ)までブロック分割を行った後、DST及びDCTのいずれを適用するかをフラグ無しに決定し、対応する直交変換処理を実行するよう構成する。
【0163】
図19(a)は、本実施形態の画像符号化装置1における予測画像に係るフィルタ処理部12周辺のブロック図であり、
図19(b)は、フィルタ処理部12によるその予測画像のフィルタ処理例を示す説明図である。
【0164】
図19(a)に示すように、本実施形態の画像符号化装置1では、隣接画素非参照予測部11、フィルタ処理部12、予測残差信号生成部13、及び直交変換部14を備えるように構成される。直交変換部14は、ブロック分割部141及び直交変換選択適用部142を備える。
【0165】
本実施形態におけるフィルタ処理部12は、隣接画素非参照予測部11によって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像に対して左側と上側のそれぞれに隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、該予測信号に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、予測残差信号生成部13に出力する機能部である。
【0166】
例えば、
図19(b)に示すように、フィルタ処理部12は、原画像の符号化対象領域のブロックBkoに対応する8×8の画素信号pよりなる予測画像のブロックBkpが隣接画素非参照予測部11によって生成されたとすると、該予測画像に対して隣接する当該予測画像のブロックBkpのブロック境界周辺における復号済み隣接信号Soを用いて、当該予測画像における最左側及び最上側の画素信号(予測信号)をフィルタ対象領域の信号Sfとして、それぞれ例えば水平フィルタ、垂直フィルタ及び角フィルタなどの平滑化フィルタ(図示する両矢印)などの低域通過フィルタ処理を施すことにより、新たな予測信号よりなる予測画像を生成する。
【0167】
より具体的に、
図19(b)に示す例では、予測画像のブロックBkpの上側の平滑化フィルタ対象画素については、横方向に同一座標に位置する復号済み隣接信号(局部復号画像の画素信号)を用いて平滑化フィルタ処理を行い、左側の平滑化フィルタ対象画素については、縦方向に同一座標に位置する復号済み隣接信号(局部復号画像の画素信号)を用いて平滑化フィルタ処理を行う。上側且つ左側に位置する対象画素については、上側、左側の局部復号映像の画素を用いて平滑化フィルタ処理を行う。尚、
図19(b)に示す例では、参照画素2画素を用いた3タップの平滑化フィルタ処理を適用している。例えば、1/4[1 2 1]などの低域通過フィルタ処理を適用する。尚、低域通過フィルタ処理のタップ数や参照画素については、この例の限りではない。
【0168】
直交変換部14は、ブロック分割部141及び直交変換選択適用部142を備えており、ブロック分割部141は、予測残差信号生成部13から入力された予測残差信号のブロックに対して予め指定されたブロック形状に分割して直交変換選択適用部142に出力し、直交変換選択適用部142は、ブロック分割された予測残差信号の各ブロックについて、フィルタ処理部12によるフィルタ処理を適用した位置に応じた複数種の直交変換処理(縦方向/横方向DSTと、縦方向/横方向DCTの組み合わせ)を選択適用する。
【0169】
例えば、
図19(b)に示すように、ブロック分割部141は、8×8の画素信号pよりなる予測画像のブロックBkpに対する予測残差信号のブロックを4×4の予測残差信号の4つのブロック(左上、右上、左下及び右下)に分割して直交変換選択適用部142に出力する。このとき、直交変換選択適用部142は、ブロック分割部141により分割された分割ブロックのうち、平滑化フィルタ処理を適用した画素位置を含む上端及び左端に位置する予測残差信号の分割ブロックに対して、復号済み隣接信号のブロックに対する相関性の高さを利用した変換係数を扱うことができるよう、平滑化フィルタ処理を適用した位置に応じた複数種の直交変換処理(縦方向/横方向DSTと、縦方向/横方向DCTの組み合わせ)を適用し、その他の分割ブロックについては縦・横方向DCTの直交変換処理を適用する。尚、縦方向とは垂直方向を意味し、横方向とは水平方向を意味する。ここでは、縦方向DST及び横方向DCTよりなる直交変換処理を第1直交変換処理とし、横方向DST及び縦方向DCTよりなる直交変換処理を第2直交変換処理とし、縦・横方向DSTよりなる直交変換処理を第3直交変換処理とし、縦・横方向DCTよりなる直交変換処理を第4直交変換処理とする。
【0170】
尚、
図19(b)に示す例では、8×8の画素信号pよりなる予測画像のブロックBkpに対する予測残差信号のブロックを4×4の予測残差信号の4つのブロック(左上、右上、左下及び右下)に分割する例を示したが、予め定められた規定のブロックサイズ(本例では4×4)に対し縦・横に2倍したサイズ(本例では8×8)よりも大きいブロックサイズの予測画像のブロックに対応する予測残差信号のブロックについては、復号済み隣接信号と隣接する位置の分割ブロック(本例では上端及び左端に位置する分割ブロック)は、規定(本例では4×4)のブロックサイズとし、その他のブロックは可能な限り大きいブロックサイズとなるよう分割した上で、符号化する画像の特徴に応じた再分割を適宜行っていくのが好適である。例えば符号化する画像の特徴に応じて、
図20(a)に示すように、32×32のブロックサイズの予測残差信号のブロックの上端及び左端に位置する分割ブロックを4×4とし、その上端及び左端から遠ざかるに従って拡大したブロックサイズの分割ブロックとなるよう分割することができる。このようにブロック分割を行うことで、後段の直交変換選択適用部142では、平滑化フィルタ処理対象画素位置が含まれる予測残差信号の分割ブロックについて、その信号特性に適した直交変換を選択し適用することが可能となる。
【0171】
例えば、直交変換選択適用部142は、
図20(a)に示すように、分割された予測残差信号の分割ブロックのうち、平滑化フィルタ処理を適用した画素が最上側にある場合(即ち平滑化フィルタ処理の適用方向が垂直方向である場合)、当該最上側に位置する予測残差信号の分割ブロックBkt1に対して縦方向DST及び横方向DCTの第1直交変換処理を適用し(
図20(b)参照)、平滑化フィルタ処理を適用した画素が最左側にある場合(即ち平滑化フィルタ処理の適用方向が水平方向である場合)、当該最左側に位置する予測残差信号の分割ブロックBkt2に対して横方向DST及び縦方向DCTの第2直交変換処理を適用する(
図20(c)参照)。そして、平滑化フィルタ処理を適用した画素が当該最上側であり、且つ当該最左側にある場合(即ち平滑化フィルタ処理の適用方向が角フィルタ処理の適用方向である場合)、当該角領域に位置する分割ブロックBkt3に対して縦・横方向DSTの第3直交変換処理を適用する。また、平滑化フィルタ処理を適用した画素が存在しない予測残差信号の分割ブロックBkt4については、縦・横方向にDCTの第4直交変換処理を適用する。
図19(b)のようにブロック分割した場合も同様に直交変換処理を行う。これにより、復号済み隣接信号のブロックに対する相関性の高さを最大限に利用した変換係数を扱うことができる。
【0172】
次に、隣接画素非参照予測部11の代表的な例としてインター予測によるインター予測部11aを説明し、その予測画像のブロックの予測信号に対して、フィルタ処理部12によりフィルタ処理を施す画像符号化装置1の構成及びその動作例について、
図21乃至
図23を参照して説明する。
【0173】
図21は、本実施形態の画像符号化装置1の一実施例を示すブロック図である。
図21に示す画像符号化装置1は、前処理部10と、インター予測部11aと、フィルタ処理部12と、予測残差信号生成部13と、直交変換部14と、量子化部15と、逆量子化部16と、逆直交変換部17と、復号画像生成部18と、ループ内フィルタ部19と、フレームメモリ20と、イントラ予測部21と、動きベクトル計算部22と、エントロピー符号化部23と、予測画像選択部24とを備える。
【0174】
直交変換部14は、予測残差信号生成部13から入力された予測残差信号に対して所定の直交変換処理を施し、その変換係数の信号を生成する。特に、直交変換部14は、ブロック分割部141及び直交変換選択適用部142を備えており、ブロック分割部141は、予測残差信号生成部13から入力された予測残差信号のブロックに対して予め指定されたブロック形状に分割して直交変換選択適用部142に出力し、直交変換選択適用部142は、ブロック分割された予測残差信号の各分割ブロックについて、フィルタ処理部12によるフィルタ処理を適用した位置に応じた複数種の直交変換処理(縦方向/横方向DSTと、縦方向/横方向DCTの組み合わせ)を適用する。これらのブロック分割処理に関するブロック分割パラメータは符号化処理の付帯情報とする符号化パラメータの1つとしてエントロピー符号化部23(及び逆直交変換部17)に出力される。
【0175】
逆直交変換部17は、逆量子化部16から得られる逆量子化後の変換係数の信号に対して逆直交変換処理を施すことにより予測残差信号を復元し、復号画像生成部18に出力する。特に、逆直交変換部17は、ブロック分割されていた変換係数に対して、
図20と同様に直交変換処理の種別を判定し、各直交変換処理と対応する逆直交変換処理を施し、並列処理可能に得られる予測残差信号の各分割ブロックを結合して予測画像のブロックサイズに対応するブロックを再構成し、復号画像生成部18に出力する。
【0176】
フィルタ処理部12の一動作例について、
図22を参照して説明する。
図22に示すように、フィルタ処理部12は、イントラ予測部21又はインター予測部11aからの予測画像を入力すると(ステップS1)、当該予測画像が隣接画素非参照予測であるか否か、即ち本例では予測画像選択部24による信号選択に基づいてインター予測であるか否かを識別する(ステップS2)。尚、隣接画素非参照予測が前述したイントラブロックコピー予測やクロスコンポーネント信号予測である場合も同様である。
【0177】
続いて、フィルタ処理部12は、当該予測画像が隣接画素非参照予測ではない、即ち本例ではイントラ予測であると判定するときは(ステップS2:No)、予め定めた処理方式によりフィルタ処理を実行するか否かを判定する(ステップS5)。イントラ予測の予測画像に対してフィルタ処理を実行しない場合(ステップS5:No)、フィルタ処理部12は、当該予測信号に対してフィルタ処理を実行することなく予測残差信号生成部13に出力する(ステップS6)。一方、イントラ予測の予測画像に対してフィルタ処理を実行する場合(ステップS5:Yes)、フィルタ処理部12は、ステップS3に移行する。尚、イントラ予測の予測画像に対するフィルタ処理は、現在規定されているH.265と同様に処理すればよく、本発明の主旨とは直接関係していないため、ステップS3の説明はインター予測の予測画像に対してフィルタ処理を実行する例を説明する。
【0178】
フィルタ処理部12は、当該予測画像が隣接画素非参照予測である、即ち本例ではインター予測であると判定すると(ステップS2:Yes)、当該予測画像から予め定めたフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)を選出する(ステップS3)。例えば、
図19(b)に示す例では、8×8の予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像の最左側と最上側の画素信号(予測信号)をフィルタ処理対象領域Sfとして定める。
【0179】
続いて、フィルタ処理部12は、当該予測画像に対して左側と上側に隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、選出したフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、予測残差信号生成部13に出力する(ステップS4)。
【0180】
尚、フィルタ処理部12によるフィルタ処理は低域通過フィルタ処理であればよく、平滑化フィルタ以外のフィルタ処理を適用することもでき、そのフィルタ処理に利用する復号済み隣接信号の領域や重み係数も
図19(b)に示す例に限定する必要はない。また、フィルタ処理部12によるフィルタ処理に係るフィルタ種別やフィルタ処理対象領域、及び重み係数は、符号化処理の付帯情報として伝送するように構成することもできるが、送受間(符号化・復号間)で予め定めておけば伝送する必要もない。
【0181】
このようにフィルタ処理部12によって予測画像に対してフィルタ処理を施すことで、直交変換部14の直交変換処理の種別に関わらず、予測画像内の最左側と最上側の画素信号(予測信号)と、これに隣接する復号済み信号との間に生じる信号誤差が低減され、映像の符号化効率を改善することができる。
【0182】
次に、直交変換部14の一動作例について、
図23を参照して説明する。
図23に示すように、直交変換部14は、ブロック分割部141により、予測残差信号生成部13から入力された予測残差信号のブロックに対して予め指定されたブロック形状に分割する(ステップS11)。このとき、ブロック分割部141は、8×8より大きいブロックサイズの予測画像のブロックに対して(例えば32×32のブロックサイズの予測画像に対して)、その上端及び左端に位置する予測残差信号の分割ブロックを規定(本例では4×4)のブロックサイズとし、その他のブロックは可能な限り大きいブロックサイズとなるよう分割した上で、符号化する画像の特徴に応じた再分割を適宜行う。
【0183】
続いて、直交変換部14は、直交変換選択適用部142により、分割された予測残差信号の分割ブロックに対して直交変換処理を施す際に、フィルタ処理部12によるフィルタ処理を適用した画素位置を含むか否か(即ち、予測画像の最上側又は最左側の画素位置を含むブロックの予測残差信号であるか否か)を判定し(ステップS12)、当該フィルタ処理を適用した画素位置を含む分割ブロックではないと判定したとき(ステップS12:No)、当該予測残差信号の分割ブロックに対して縦・横方向にDCTの第4直交変換処理を適用する(ステップS15)。
【0184】
一方、フィルタ処理部12によるフィルタ処理を適用した画素位置を含む分割ブロックであると判定したとき(ステップS12:Yes)、フィルタ処理部12による垂直方向のフィルタ処理のみを適用したか(即ち、予測画像の最上側の画素のみを含むブロックの予測残差信号であるか)を判定し(ステップS13)、当該垂直方向のフィルタ処理のみを適用したのであれば(ステップS13:Yes)、当該予測残差信号の分割ブロックに対して縦方向DST及び横方向DCTの第1直交変換処理を適用する(ステップS16)。
【0185】
続いて、当該垂直方向のフィルタ処理のみを適用したものではないとき(ステップS12:No)、フィルタ処理部12による水平方向のフィルタ処理のみを適用したか(即ち、予測画像の最左側の画素のみを含むブロックの予測残差信号であるか)を判定し(ステップS14)、当該水平方向のフィルタ処理のみを適用したのであれば(ステップS14:Yes)、当該予測残差信号の分割ブロックに対して横方向DST及び縦方向DCTの第2直交変換処理を適用する(ステップS17)。
【0186】
そして、フィルタ処理部12による水平及び垂直方向のフィルタ処理を適用したと判定されるとき(即ち、予測画像の最上側、且つ最左側の画素位置を含むブロックの予測残差信号であるとき)(ステップS14:No)、当該予測残差信号の分割ブロックに対して縦・横方向DSTの第3直交変換処理を適用する(ステップS18)。
【0187】
尚、
図23では、その処理内容の理解を高めるために、逐次的に直交変換処理を行うように説明したが、実装上では並列処理可能である。これにより、復号済み隣接信号のブロックに対する相関性の高さを最大限に利用した変換係数を扱うことができる。
【0188】
(画像復号装置)
次に、本実施形態の画像復号装置5における本発明に係る主要な構成要素であるフィルタ処理部54とその周辺機能ブロックについて
図24を参照して説明し、その具体的な典型例の画像復号装置5について
図25を参照して説明する。
【0189】
図24は、本実施形態の画像復号装置5における予測画像に係るフィルタ処理部54周辺のブロック図である。
図24に示すように、本実施形態の画像復号装置5では、逆直交変換部52、隣接画素非参照予測部53、フィルタ処理部54、及び復号画像生成部55を備えるように構成される。また、逆直交変換部52は、逆直交変換選択適用部521及びブロック再構成部522を備える。
【0190】
逆直交変換部52は、画像符号化装置1側から伝送されたストリーム信号を受信しエントロピー復号処理及び逆量子化処理を経て復元された変換係数に対して、逆直交変換処理を施し、得られる予測残差信号を復号画像生成部55に出力する。特に、逆直交変換部52は、逆直交変換選択適用部521及びブロック再構成部522を備えており、逆直交変換選択適用部521は、画像符号化装置1側によってブロック分割されていた変換係数に対して、
図23と同様に直交変換処理の種別を判定し、画像符号化装置1における直交変換処理と対応する逆直交変換処理を施し、予測残差信号の分割ブロックをブロック再構成部522に出力する。ブロック再構成部522は、並列処理可能に得られる予測残差信号の分割ブロックを結合して予測画像のブロックサイズに対応するブロックを再構成し、復号画像生成部55に出力する。
【0191】
次に、隣接画素非参照予測部53の代表的な例としてインター予測によるインター予測部53aを説明し、そのインター予測による予測信号に対して、フィルタ処理部54によりフィルタ処理を施す画像復号装置5の構成及びその動作例について、
図25を参照して説明する。
【0192】
図25は、本実施形態の画像復号装置5の一実施例を示すブロック図である。
図25に示す画像復号装置5は、エントロピー復号部50と、逆量子化部51と、逆直交変換部52と、インター予測部53aと、フィルタ処理部54と、復号画像生成部55と、ループ内フィルタ部56と、フレームメモリ57と、イントラ予測部58と、予測画像選択部59とを備える。
【0193】
逆直交変換部52は、逆量子化部51から得られる変換係数に対して画像符号化装置1の直交変換処理に対応する逆直交変換処理を施すことにより予測残差信号を復元し、復号画像生成部55に出力する。特に、逆直交変換部52は、逆直交変換選択適用部521及びブロック再構成部522を備えており、逆直交変換選択適用部521は、画像符号化装置1側によってブロック分割されていた変換係数に対して逆直交変換処理を施し、予測残差信号の分割ブロックをブロック再構成部522に出力する。ブロック再構成部522は、並列処理可能に得られる予測残差信号の分割ブロックを結合して予測画像のブロックサイズに対応するブロックを構成し、復号画像生成部55に出力する。
【0194】
フィルタ処理部54は、その動作として
図22を参照して例示説明したものと同様に動作する。即ち、フィルタ処理部54における本発明に係るフィルタ処理は、当該予測画像が隣接画素非参照予測である、即ち本例ではインター予測である際に、当該予測画像から予め定めたフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)を選出し、当該予測画像に対して左側や上側に隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)を用いて、当該選出したフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、復号画像生成部55に出力する。例えば、
図19(b)に例示したように、フィルタ処理部54は、当該予測画像のブロックBkpのブロック境界周辺における復号済み隣接信号Soを用いて、当該予測画像のブロックBkp内の画素信号(予測信号)のうち、フィルタ処理対象領域Sfにおける水平フィルタ領域、垂直フィルタ領域、及び角フィルタ領域のそれぞれについて、予め定めた重み係数の平滑化フィルタ処理を施し、復号画像生成部55に出力する。
【0195】
以上のように構成された本実施形態の画像符号化装置1及び画像復号装置5によれば、予測画像の予測信号と、隣接する復号済みブロック信号との間に生じる信号誤差が低減され符号化効率が改善するため、符号化効率の高い映像符号化方式の画像符号化装置及び画像復号装置を実現することができる。即ち、予測残差信号における残差成分をより少なくすることができ、符号化伝送する情報量を低減させることにより符号化効率を改善することができる。
【0196】
〔第5実施形態〕
次に、本発明による第5実施形態の画像符号化装置1及び画像復号装置5におけるそれぞれのフィルタ処理部12,54周辺の構成について
図26を参照して説明する。上述の第4実施形態のフィルタ処理部12,54では、隣接画素非参照予測によって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像に対して左側と上側のそれぞれに隣接する「復号済みの信号(復号済み隣接信号)のみ」を用いて、該予測信号に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成する例を説明した。
【0197】
一方、本実施形態のフィルタ処理部12,54では、ブロック分割部141のブロック分割処理に基づく分割ブロックごとの局部復号画像を取得し、この局部復号画像を取得する度に隣接画素非参照予測によって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)を置き換えて、予測残差信号の分割ブロックのブロックサイズ単位で、当該置き換えられた予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)のうち、該予測画像に対して左側と上側に隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)及び分割ブロックごとの局部復号画像を用いて、それぞれのブロックサイズに応じた低域通過フィルタ処理を施すよう構成される。
【0198】
従って、
図26(a),(b)に示すように、フィルタ処理部12,54は、ブロック分割部141のブロック分割処理に基づく分割ブロックごとの局部復号画像を取得し、この局部復号画像を取得する度に隣接画素非参照予測によって生成された予測画像のブロック内の画素信号(予測信号)を置き換えて予測画像を更新し、この更新した予測画像に対して左側と上側に隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)及び分割ブロックごとの局部復号画像を用いて、それぞれのブロックサイズに応じた低域通過フィルタ処理を施すよう構成される点で、それぞれ
図19(a)及び
図24に示す構成と相違しているが、他の構成要素の動作は同様である。
【0199】
その一例の動作として、
図26(b)に示す逆直交変換部52におけるブロック再構成部522は、
図24に示す構成と相違して、処理対象の分割ブロックの位置を定めて予測画像と対応するブロックサイズに再構成する際に、処理対象の分割ブロック以外の領域はダミーデータで補完する。これにより、分割ブロックごとの局部復号画像が得られるように構成することができる。或いは、分割ブロックごとの局部復号画像が得られるように別ループを構成してもよい。従って、本実施形態の画像符号化装置1における逆直交変換部17も、本実施形態の逆直交変換部52と同様に構成すればよい。尚、第4実施形態の場合でも同様であるが、フレームメモリ20では、分割ブロックごとの局部復号画像を参照信号として利用できるよう保持することができる。
【0200】
図27は、本実施形態の画像符号化装置1又は画像復号装置5における予測画像のフィルタ処理12,54に関するフローチャートである。また、
図28は、本実施形態の画像符号化装置1又は画像復号装置5における予測画像のフィルタ処理12,54に関する説明図である。
【0201】
まず、フィルタ処理部12,54は、予測画像を入力すると、ブロック分割部141のブロック分割処理に基づく分割ブロックごとの局部復号画像を取得し、予測画像に対して置き換えて更新した予測画像を生成する(ステップS21)。例えば、
図28に例示するように、8×8の予測画像のブロックBkpは、例えば白抜き矢印に示す順に4分割されたブロックサイズの局部復号画像のブロックBkLで逐次置き換えられて更新されることになるが、以下の処理は1つの分割ブロックごとの局部復号画像で予測画像を更新した際の動作を示している(例えば、図示“STEP1”)。
【0202】
続いて、フィルタ処理部12,54は、当該予測画像が隣接画素非参照予測であるか否か、例えばインター予測であるか否かを識別する(ステップS22)。尚、隣接画素非参照予測が前述したイントラブロックコピー予測やクロスコンポーネント信号予測である場合も同様である。
【0203】
続いて、フィルタ処理部12,54は、当該予測画像が隣接画素非参照予測ではない、例えばイントラ予測であると判定するときは(ステップS22:No)、予め定めた処理方式によりフィルタ処理を実行するか否かを判定する(ステップS25)。イントラ予測の予測画像に対してフィルタ処理を実行しない場合(ステップS25:No)、フィルタ処理部12,54は、当該予測信号に対してフィルタ処理を実行することなく予測残差信号生成部13や復号画像生成部55に出力する(ステップS26)。一方、イントラ予測の予測画像に対してフィルタ処理を実行する場合(ステップS25:Yes)、フィルタ処理部12,54は、ステップS23に移行する。尚、イントラ予測の予測画像に対するフィルタ処理は、現在規定されているH.265と同様に処理すればよく、本発明の主旨とは直接関係していないため、ステップS23の説明はインター予測の予測画像に対してフィルタ処理を実行する例を説明する。
【0204】
フィルタ処理部12,54は、当該予測画像が隣接画素非参照予測である、即ち本例ではインター予測であると判定すると(ステップS22:Yes)、当該予測画像から予め定めたフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)を選出する(ステップS23)。例えば、
図28に例示するように、本例では4×4の分割ブロック単位で、隣接信号に対する最左側と最上側の画素信号(予測信号)をフィルタ処理対象領域Sfとして定める。
【0205】
続いて、フィルタ処理部12,54は、分割ブロックの局部復号画像で置換した予測画像に対して分割ブロックごとに左側及び/又は上側に隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)及び当該局部復号画像を用いて、選出したフィルタ処理対象領域の画素信号(予測信号)に対して低域通過フィルタ処理を施すことにより新たな予測信号よりなる予測画像を生成し、予測残差信号生成部13や復号画像生成部55に出力する(ステップS24)。
【0206】
このように予測画像の左側及び/又は上側に隣接する復号済みの信号(復号済み隣接信号)と、分割ブロックごとに左側及び/又は上側に隣接する当該局部復号画像を用いて低域通過フィルタ処理を施すことにより、例えば、
図28に例示するように、8×8の予測画像のブロックBkpは、その上側及び左側のみならず、本例では十字となる分割ブロックの境界位置で、その画素信号が平滑化される(例えば、図示“STEP2”)。
【0207】
本実施形態のようにフィルタ処理部12,54を構成し、それぞれ画像符号化装置1及び画像復号装置5に適用することで、符号化効率を改善しつつ、これに起因する画質の劣化を抑制することができる。特に、大きい値の予測残差信号となりうる予測画像の最左側又は最上側に位置する分割ブロック以外の分割ブロック(ブロック分割したときの予測画像の内側に位置するブロック)の信号においても、分割ブロックごとの最左側及び最上側の予測残差信号の値を小さくすることができる。
【0208】
尚、本実施形態の例では、全ての分割ブロックがフィルタ処理対象の画素位置を含むこととなるため、縦方向又は横方向のDSTを常時適用することになる。このため、本実施形態の例では、ブロック分割する際のブロック形状は、第4実施形態のように、対応する予測残差信号のブロックにおける上端及び左端に位置する分割ブロックは、規定(本例では4×4)のブロックサイズとし、その他のブロックは可能な限り大きいブロックサイズとなるよう分割した上で、符号化する画像の特徴に応じた再分割を適宜行っていくのが好適である。その上端及び左端から遠ざかるに従って拡大したブロックサイズとなるよう分割する必要は無く、全てDSTの適用が可能な規定サイズ(本例では4×4)まで分割し、
図23に示すような処理順に従ってDSTを適用することができる。
【0209】
また、上述の第4実施形態と本実施形態とを比較すると、第4実施形態では予測残差信号の各分割ブロックが独立して処理できるため並列処理可能であるというメリットがあり、一方、本実施形態では分割ブロック単位の局部復号画像を逐次利用できるため、符号化効率のより大きな改善が期待できる。
【0210】
また、符号化対象ブロックごとに、ブロック分割のブロック形状を可変に設定し、符号化パラメータの1つとしてブロック分割パラメータを伝送することができるため、第4実施形態と本実施形態とを組み合わせた実施形態とすることもできる。
【0211】
各実施形態の画像符号化装置1、及び画像復号装置5をそれぞれコンピュータとして機能させることができ、当該コンピュータに、本発明に係る各構成要素を実現させるためのプログラムは、当該コンピュータの内部又は外部に備えられるメモリに記憶される。コンピュータに備えられる中央演算処理装置(CPU)等の制御で、各構成要素の機能を実現するための処理内容が記述されたプログラムを、適宜、メモリから読み込んで、各実施形態の画像符号化装置1、及び画像復号装置5の各構成要素の機能をコンピュータに実現させることができる。ここで、各構成要素の機能をハードウェアの一部で実現してもよい。
【0212】
以上、特定の実施形態の例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前述した例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、上述した各実施形態の例では、符号化対象領域、予測画像、及び直交変換処理対象のブロックサイズを同じとする例を説明したが、予測画像のブロックサイズを符号化対象領域よりも小さくすることや、直交変換処理対象のブロックサイズを予測画像よりも小さくして処理する場合にも同様に適用することができる。また、直交変換処理は、用途に応じて符号化処理に用いられているものをそのまま利用できるし、別のものとしてもよい。
【0213】
また、上述した各実施形態の例では、画像復号装置5は、対応する画像符号化装置1によってフィルタ処理を施された予測画像に基づいて符号化された予測残差信号に関する変換係数を対象に復号する例を説明したが、原画像に対するブロック端部の復元精度を問題にしない用途であれば、本発明に係る画像復号装置5は、フィルタ処理を介することなく符号化された信号に対しても同じ処理で復号することができる。