(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
なお、明細書の記載において、ベクトルないし行列を示す太字表記を省略する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態における質量分布取得システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、質量分布取得システム1は、慣性モーメント測定装置10と、質量分布取得装置20と、を備える。慣性モーメント測定装置10は、回転駆動部11と、角速度検出部12と、慣性モーメント算出部13とを備える。質量分布取得装置20は、慣性モーメント取得部21と、質量分布取得部22と、形状判定部23と、結果出力部24とを備える。
【0014】
慣性モーメント測定装置10は、質量分布を求める対象である対象物の慣性モーメントを測定する。
回転駆動部11は、例えばモータなどの動力を備え、慣性モーメント測定装置10に載せられた対象物を回転させる。
角速度検出部12は、回転駆動部11が対象物を回転させるときの角速度を検出する。
慣性モーメント算出部13は、角速度検出部12が検出する角速度に基づいて、対象物の慣性モーメントを算出する。具体的には、回転駆動部11が、回転エネルギーKを出力し、角速度検出部12が角速度ωを検出した場合、慣性モーメント算出部13は、慣性モーメントI=2K/ω
2を算出する。
【0015】
図2は、慣性モーメント測定装置10の外形の例を示す概略外形図である。同図において、慣性モーメント測定装置10は、本体101と、回転軸102と、回転台103とを備える。
本体101は、回転駆動部11を収納しており、回転駆動部11が、回転軸102に回転力を加えることで、回転軸102、回転台103、および、回転台103に載せられている対象物b100を回転させる。また、本体101は、角速度検出部12を収納しており、回転軸102が回転する角速度(=対象物b100が回転する角速度)を検出する。なお、慣性モーメント算出部13も本体101に収納されていてもよいし、慣性モーメント測定装置10と別個の装置として設けられていてもよい。例えば、慣性モーメント算出部13が、慣性モーメント測定装置10と別個に設けられた汎用のコンピュータを用いて実現されていてもよい。
【0016】
回転軸102は、回転駆動部11からの回転力を回転台103に伝達する。
回転台103は、対象物の積載を受ける。そして、回転台103は、対象物が載せられた状態で回転軸102から伝達される回転力にて回転することで、対象物b100を回転させる。
なお、回転台103の慣性モーメント、対象物b100を固定する固定治具の慣性モーメントなど、慣性モーメント測定装置10の慣性モーメントを予め求めておくようにしてもよい。そして、慣性モーメント算出部13が、これらの慣性モーメントを予め記憶しておき、対象物b100の慣性モーメントを算出する際に、慣性モーメント測定装置10の慣性モーメントの影響を低減させる補正を行うようにしてもよい。これにより、対象物b100の慣性モーメントを、より高精度に求めることができる。
また、回転台103に、慣性モーメントが既知の対象物を搭載して角速度を測定することで、摩擦等によるエネルギー損失分を予め推定するようにしてもよい。そして、慣性モーメント算出部13が、対象物bの慣性モーメントを算出する際に、エネルギー損失分の影響を低減させる補正を行うようにしてもよい。これにより、対象物b100の慣性モーメントを、より高精度に求めることができる。
【0017】
質量分布取得装置20は、慣性モーメント測定装置10が測定した慣性モーメントに基づいて、対象物における質量分布を求める。特に、慣性モーメント測定装置10は、対象物の慣性モーメントを複数の回転中心の各々について測定し、質量分布取得装置20は、これら複数の慣性モーメントに基づいて、対象物の質量分布を求める。質量分布取得装置20は、例えばコンピュータを用いて実現される。
慣性モーメント取得部21は、慣性モーメント測定装置が測定した、対象物の慣性モーメントの測定値を取得する。
【0018】
質量分布取得部22は、慣性モーメント取得部が取得した慣性モーメントに基づいて、対象物の質量分布を取得(算出)する。
形状判定部23は、質量分布取得部22が取得した質量分布に基づいて、対象物の形状を判定する。具体的には、形状判定部23は、対象領域(質量分布取得装置20が処理対象とする、対象物を含む空間)が分割された各部分について、質量が所定の閾値以下となっている部分には、対象物が存在していないと判定する。
【0019】
結果出力部24は、質量分布取得部22が取得した質量分布を示す情報を出力する。また、結果出力部24は、形状判定部23が取得した対象物の形状を示す情報を出力する。結果出力部が、質量分布を示す情報を出力する方法や、形状を示す情報を出力する方法としていろいろな方法を用いることができる。例えば、結果出力部24が、液晶パネル等の表示画面を有し、これらの情報を表示するようにしてもよい。あるいは、結果出力部24が通信回路を有し、これらの情報を他の装置へ送信するようにしてもよい。
なお、質量分布取得装置20において、形状判定部23は必須ではない。質量分布取得装置20が形状判定部23を備えていなくてもよい。
【0020】
次に、質量分布取得部22が慣性モーメントから対象物の質量分布を求める処理について説明する。
まず、対象物の寸法が決定すれば、対象物の質量分布と任意の回転中心における慣性モーメントとの関係を求めることができることについて説明する。
ある直線を回転中心(回転軸)として角速度ωで回転する剛体をn個の小部分に分割して考える。このとき、回転半径r
i、質量m
iの小部分が持つ運動エネルギーK
iは、式(1)のように表される。
【0022】
従って、対象物全体の運動エネルギーは、式(2)のように表される。
【0024】
但し、Iは慣性モーメントを示し、式(3)のように表される。
【0026】
従って、対象物に運動エネルギー(回転エネルギー)を加え、その時の角速度ωを測定すれば、慣性モーメントIを求めることができる。
なお、微小体積ΔVの質量をΔmとすると、密度ρは式(4)のように表される。
【0028】
微小部分の体積を0に近付けることにより、慣性モーメントIは、式(5)のような積分の式で表される。
【0030】
次に、密度が異なる2つの部分を有する細長い棒を例に、質量分布の推定について説明する。
図3は、密度が異なる2つの部分を有する細長い棒の例を示す図である。同図に示す棒b111(対象物)は、部分b121と、部分b122とが、同図に向かって左からb121、b122の順で結合して構成されている。部分b121の長さはl
1、断面積はS
1、質量はw
1である。また、部分b122の長さはl
2、断面積はS
2、質量はw
2である。
部分b121の密度、部分b122の密度をそれぞれρ
1、ρ
2とし、回転軸の、部分b121の左端からの距離をt(0≦t≦l1)とする。回転軸からの距離zについて、慣性モーメントI(t)は、式(6)のように表される。
【0032】
ここで、異なる2つの回転軸の、部分b121の左端からの距離を、それぞれt
1、t
2とし、これら2つの回転軸それぞれで棒b111を回転させた場合の慣性モーメントをI(t
1)、I(t
2)とする。これらの慣性モーメントI(t
1)、I(t
2)を精度よく測定できれば、式(7)に示される2次の連立方程式により、各部分の質量を求めることができる。
【0034】
式(7)を行列式で表すと、式(8)のようになる。
【0036】
ここで、I
2、R
22、W
2を式(9)のように定める。
【0038】
I
2、R
22、W
2は、それぞれ、慣性モーメントベクトル、応答行列、質量ベクトルである。
式(8)は、式(10)のように表される。
【0040】
応答行列R
22の逆行列をR
22−とすると、質量ベクトルW
2を求める式は、式(11)のようになる。
【0042】
このように、慣性モーメントベクトルI
2と、質量ベクトルW
2との関係を示す応答行列R
22を予め得ることができる。測定により慣性モーメントベクトルI
2を得ることで、質量ベクトルW
2を推定することができる。
さらに、回転軸の位置(部分b121の左端からの距離)をt
1からt
mまでのm通りに変えて慣性モーメントの測定数を増やし、I(t
1)からI(t
m)までの測定データを用いて質量を推定する場合、式(8)は式(12)のようになる。
【0044】
また、式(10)は、式(13)のようになる。
【0046】
但し、I
m、R
m2は、式(14)のように表される。
【0048】
一方、W
2は、式(9)に示したのと同じである。
実際には、慣性モーメントベクトルI
mに測定誤差E
rrが加えられるため、式(15)のようになる。
【0050】
慣性モーメントベクトルI
m−mは、回転軸の位置をm通りに変えて測定された、m個の慣性モーメントを示す。
未知数よりも多くの測定データを用いることで、最小二乗法などにより解の信頼性を高めることができる。
【0051】
次に、密度が異なるn個の部分を有する細長い棒を例に、質量分布の推定について説明する。
図4は、密度が異なるn個の部分を有する細長い棒の例を示す図である。同図に示す棒b211は、部分b221と、部分b222と、・・・、部分b22nとが、同図に向かって左からb221、b222、・・・、b22nの順で結合して構成されている。部分b221の長さはl
1、断面積はS
1、質量はw
1である。部分b222の長さはl
2、断面積はS
2、質量はw
2である。・・・部分b22nの長さはl
n、断面積はS
n、質量はw
nである。
この場合、式(15)は、式(16)のようになる。
【0053】
但し、R
mnは、R
m2をn列に拡張した応答行列である。また、W
nは、W
2をn次元に拡張したベクトルである。R
mnの内容(各要素の値)は、回転軸の位置と注目領域の寸法とに基づいて決定することができる。ここでいう注目領域とは、質量を求める対象となる空間である。
式(16)に基づいて、質量分布の推定ベクトルW
n’を求める式(17)を得られる。
【0055】
但し、R
mn+は、R
mnのムーア・ペンローズ一般逆行列を示す。ムーア・ペンローズ一般逆行列によれば、任意の応答行列R
mnに対して何らかの逆行列を得られる。
形状を考慮したnよりも多いm通りの回転軸についてm個の慣性モーメントを測定する(m個の観測方程式を得る)ことで、最小二乗法等により質量分布の推定精度を高めることができる。
【0056】
式(17)は、棒形状に限らず任意の形状に一般化することができる。質量分布取得部22は、式(17)に基づいて対象物の質量分布を求める。
具体的には、まず、対象物を含む空間である対象領域を複数の部分に分割する。例えば、対象領域を解析単位となるメッシュに分割する。質量分布取得装置20のユーザが当該分割を行うようにしてもよいし、質量分布取得部22が自動的に当該分割を行うようにしてもよい。
【0057】
また、質量分布取得部22は、応答行列のムーア・ペンローズ一般逆行列R
mn+を取得する。質量分布取得装置20のユーザがR
mn+を入力するようにしてもよいし、質量分布取得部22がR
mn+を算出するようにしてもよい。
そして、質量分布取得部22は、慣性モーメント測定装置10による慣性モーメントの測定値を式(17)に代入して、対象物の質量分布を算出する。
【0058】
なお、質量分布取得部22が、応答行列のムーア・ペンローズ一般逆行列に代えて、最小二乗型一般逆行列またはノルム最小型一般逆行列を取得するようにしてもよい。特に、未知数(方程式にて解くべき変数の数)に対して計測数(測定にて得られた慣性モーメントの数)が多い場合、最小二乗型一般逆行列を用いることが考えられる。一方、未知数に対して計測数が少ない場合、ノルム最小型一般逆行列を用いることができる。なお、ムーア・ペンローズ一般逆行列は、未知数に対して計測数が多い場合も少ない場合も適用可能である。
【0059】
次に、密度が異なる2つの円柱の部分を有する対象物を例に、質量分布の推定について説明する。
図5は、密度が異なる2つの円柱の部分を有する対象物の例を示す図である。同図に示す対象物b311は、円柱形状の2個の部分b321と、b322とが、同図に向かって左からb321、b322の順で結合して構成されている。部分b321の長さはl
1、半径はr
1、重心はG
1、質量はw
1である。部分b322の長さはl
2、半径はr
2、重心はG
2、質量はw
2である。
また、部分b321の左端から回転軸までの距離をtとし、回転軸から重心G
1、G
2までの距離を、それぞれ、e
1、e
2とする。
このとき、部分b321の重心G
1まわりの慣性モーメントI
G1は、式(18)のように表される。
【0061】
また、部分b322の重心G
2まわりの慣性モーメントI
G2は、式(19)のように表される。
【0063】
対象物b311全体の、点Pまわり(回転軸まわり)の慣性モーメントI
Pは、平行軸の定理より、式(20)のようになる。
【0065】
ここで、距離e
1は、式(21)のように表される。
【0067】
距離e
2は、式(22)のように表される。
【0069】
従って、I
pは、式(23)のようになる。
【0071】
従って、質量w
1、w
2が未知の場合でも、異なる2つの回転軸の位置(部分b321の左端からの位置)t
1、t
2それぞれに対する慣性モーメントI(t
1)、I(t
2)を精度よく求めることで、式(24)の連立方程式により、質量w
1、w
2を求めることができる。
【0073】
ここで、式(24)を行列式で表すと、式(25)のようになる。
【0075】
式(25)は、式(26)のように表される。
【0077】
但し、I
c2、R
c22は、式(27)のように表される。
【0079】
R
c22の逆行列をR
c22−として、式(27)は、式(28)のようになる。
【0081】
式(28)に示されるように、異なる2つの回転軸(回転中心)に対する慣性モーメントI
p(t
1)、I
p(t
2)を取得できれば、2つの質量w
1、w
2を算出することができる。
さらに、回転軸の位置tをm通りに変えて慣性モーメントの測定数を増やし、I
p(t
1)からI
p(t
m)までの測定データを用いれば、式(29)のようになる。
【0083】
式(29)は、式(30)のように表される。
【0085】
但し、I
cm、R
cm2は、式(31)のように表される。
【0087】
慣性モーメントの測定誤差E
rrが加わっていても、最小二乗法等により解の信頼性を高めることができる。
次に、密度が異なるn個の円柱の部分を有する対象物を例に、質量分布の推定について説明する。
図6は、密度が異なるn個の円柱の部分を有する対象物の例を示す図である。同図に示す対象物b411は、円柱形状のn個の部分b421と、部分b422と、・・・、部分b42nとが、同図に向かって左からb421、b422、・・・、b42nの順で結合して構成されている。部分b421の長さはl
1、半径はr
1、重心はG
1、質量はw
1である。部分b422の長さはl
2、半径はr
2、重心はG
2、質量はw
2である。・・・部分b42nの長さはl
n、半径はr
n、重心はG
n、質量はw
nである。
また、部分b421の左端から回転軸までの距離をtとし、回転軸から重心G
1、G
2・・・G
nまでの距離を、それぞれ、e
1、e
2、・・・、e
nとする。
この場合、式(20)は、式(32)のように拡張される。
【0089】
これにより、m個の慣性モーメントの測定値を含む慣性モーメントベクトルI
cm−mと、n個の未知数を含む質量ベクトルW
nとの関係R
cmmを算出することができる。このため、nよりも多いm個の測定データを用いることで、式(33)のように、最小二乗法などにより解の信頼性を高めることができる。
【0091】
式(33)に基づいて、質量分布の推定ベクトルW
n’を求める式(34)を得られる。
【0093】
但し、R
cmm+は、R
cmmのムーア・ペンローズ一般逆行列を示す。
次に、密度が異なる2つの部分を有する細長い棒の質量分布の推定例について説明する。
図3に示した、密度が異なる2つの部分b121およびb122を有する細長い棒b111について、質量w
1=360キログラム(kg)、質量w
2=240キログラムを求める問題を考える。部分b121、b122は、それぞれ、長さがl
1=1.2メートル(m)、l
2=3.6メートルであるとする。
回転軸が部分b121の左端からt(0≦t≦l
1)の距離にあるときの慣性モーメントは、上述した式(12)、(13)のように表される。
また、式(13)より式(35)を得られる。
【0095】
但し、R
m2+は、R
m2のムーア・ペンローズ一般逆行列を示す。
部分b121およびb122の寸法が既知の場合には、質量分布に対する慣性モーメントを調べることができるため、応答行列R
m2を取得することができ、慣性モーメントの測定値を示す慣性モーメントベクトルI
mから質量分布を求める(推定する)ことができる。
【0096】
いま、回転軸の位置(部分b121の左端からの距離)tを、t
1=0メートル、t
2=0.3メートル、t
3=0.6メートル、t
4=0.9メートル、t
5=1.2メートル、の5通りに変えて、慣性モーメントを測定し、質量分布w
1およびw
2を推定する場合を模擬する。慣性モーメントの測定値を模擬するために、慣性モーメントの正解値それぞれに、平均0、標準偏差0.4キログラム平方メートル(kgm
2)の正規分布に従う誤差を乱数として加えた。この標準偏差の値0.4は、市販されているエンジン主観性モーメント測定装置の例を参考に決定した。
【0097】
図7は、質量分布の推定結果の例を示す図である。同図では、乱数シードを50通りに変えて質量分布の推定を行った結果を示している。同図において、質量分布の正解値を四角(■)で示し、推定値を丸(○)で示している。正解値、推定値ともに、w
1=360キログラム、w
2=240キログラムの付近に示されている。
図8は、
図7の質量分布の推定結果のうち、正解値および推定値の付近を拡大した図である。同図において、w
1=360キログラム、w
2=240キログラムの位置に正解値の点P101が表示されている。また、w
1が360キログラム前後、w
2=240キログラム付近の位置に、点P102など、推定値を示す点が複数表示されている。
図7および
図8に示すように、w
2の推定精度が特に高く、w
1についても、1キログラム程度の精度で推定できている。
【0098】
次に、対象物の質量分布の推定から対象物の形状を推定する例について説明する。
図3に示した、密度が異なる2つの部分b121およびb122を有する細長い棒b111について、質量w
1=360キログラム、質量w
2=0キログラムを求める問題を考える。部分b121、b122は、それぞれ、長さがl
1=1.2メートル(m)、l
2=3.6メートルであるとする。これにより、対象物の長さは1.2メートルであるが、対象物の形状が不明であり、注目領域として長さ4.8メートルの領域について質量分布を求める場合を模擬する。
【0099】
いま、回転軸の位置(部分b121の左端からの距離)tを、t
1=0メートル、t
2=0.3メートル、t
3=0.6メートル、t
4=0.9メートル、t
5=1.2メートル、の5通りに変えて、慣性モーメントを測定し、質量分布w
1およびw
2を推定する場合を模擬する。慣性モーメントの測定値を模擬するために、慣性モーメントの正解値それぞれに、平均0、標準偏差0.4キログラム平方メートル(kgm
2)の正規分布に従う誤差を乱数として加えた。
【0100】
図9は、質量分布の推定結果の例を示す図である。同図では、乱数シードを50通りに変えて質量分布の推定を行った結果を示している。同図において、質量分布の正解値を四角(■)で示し、推定値を丸(○)で示している。正解値、推定値ともに、w
1=360キログラム、w
2=0キログラムの付近に示されている。
図10は、
図9の質量分布の推定結果のうち、正解値および推定値の付近を拡大した図である。同図において、w
1=360キログラム、w
2=0キログラムの位置に正解値の点P201が表示されている。また、w
1が360キログラム前後、w
2=0キログラム付近の位置に、点P202など、推定値を示す点が複数表示されている。
図9および
図10に示されるように、質量w
2の推定値がほぼ0になっている。
このように、質量がほぼ0になっている領域について、形状判定部23は、対象物が存在していない領域であると判定する。これにより、形状判定部23は、対象物の形状を求める。具体的には、形状判定部23は、対象領域が分割された各部分について、質量が所定の閾値以下か否かを判定する。そして、形状判定部23は、質量が閾値以下であると判定した部分には、対象物が存在していないと判定する。これにより、質量分布取得装置20が対象とする領域が、対象領域よりも大きく設定されていても、形状判定部23は、対象物の形状を検出することができる。また、形状判定部23は、対象物内部の空洞を検出することができる。
【0101】
次に、
図11を参照して質量分布取得装置20の動作について説明する。
図11は、質量分布取得装置20が行う処理手順の例を示すフローチャートである。
同図の処理において、慣性モーメント取得部21は、慣性モーメント測定装置10が複数の回転軸の各々について測定した慣性モーメントを取得する(ステップS101)。
次に、質量分布取得部22は、ステップS101で得られた慣性モーメントに基づいて、対象物の質量分布を取得する(ステップS102)。具体的には、質量分布取得部22は、ステップS101で得られた慣性モーメントを式(17)に代入して質量分布を算出する。
次に、形状判定部23は、ステップS102で得られた質量分布に基づいて、対象物の形状を判定する(ステップS103)。具体的には、形状判定部23は、対象領域を分割した部分のうち、質量が所定の閾値以下となっている部分について、対象物が存在していないと判定する。
そして、結果出力部24は、ステップS102で得られた対象物の質量分布、および、ステップS103で得られた対象物の形状を出力する(ステップS104)。
その後、
図11の処理を終了する。
【0102】
以上のように、慣性モーメント取得部21は、対象物の慣性モーメントの測定値を複数の回転軸の各々について取得する。そして、質量分布取得部は、慣性モーメント取得部が取得した慣性モーメントに基づいて、対象物の質量分布を求める。
これにより、質量分布取得装置20では、慣性モーメントを測定可能な任意の対象物を任意の部分に分割した場合に、質量分布を求めることができる。
【0103】
また、形状判定部23は、質量分布取得部22が取得した質量分布に基づいて、対象物の形状を判定する。
これにより、質量分布取得装置20が対象とする領域が、対象領域よりも大きく設定されていても、形状判定部23は、対象物の形状を検出することができる。また、形状判定部23は、対象物内部の空洞を検出することができる。
【0104】
なお、質量分布取得装置20が行う演算および制御の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することで各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0105】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。