(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464563
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】被覆された微粒子の製造法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
C08F2/44 Z
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-66727(P2014-66727)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-189813(P2015-189813A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅士
【審査官】
松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−143968(JP,A)
【文献】
特開平07−070212(JP,A)
【文献】
特開2009−280791(JP,A)
【文献】
特開2004−205481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 − 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散安定剤、乳化剤を含む水溶液中で微粒子をポリジビニルベンゼン、ポリスチレン、ポリグリシジルメタクリレートから選択される高分子ポリマーで被覆する際に、1回の被覆に用いられる高分子ポリマーの量が、微粒子の単位表面積あたり0.01〜0.5g/m2であって、同一の前記高分子ポリマーでの被覆処理を3回以上繰り返すことを特徴とする、被覆された微粒子の製造方法。
【請求項2】
微粒子が磁性体を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆された微粒子の製造方法に関し、特に高分子ポリマーで被覆された微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粒子を高分子ポリマーで被覆する際には、有機溶媒若しくは水系にて実施している。特に水系にて実施する際には条件により過剰な重合が起こり、このことが原因で高分子ポリマーの粗大物や微粒子凝集体が生成するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、微粒子を高分子ポリマーで被覆する際に、水系にて実施しても過剰な重合を起こしにくく、高分子ポリマーの粗大物や微粒子凝集体の生成を抑制することができる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下の方法をとることで、上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)微粒子を高分子ポリマーで被覆する際に、1回の被覆に用いられる高分子ポリマーの量が、微粒子の単位表面積あたり0.01〜0.5g/m
2であることを特徴とする、被覆された微粒子の製造方法。
(2)微粒子が磁性体を有する、(1)に記載の方法。
(3)上述の(1)又は(2)に記載の方法を複数回繰り返して行う、(1)又は(2)に記載の方法。
【0006】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0007】
本発明で用いられる微粒子とは、ガラス、金属、セラミックス等の無機物であってもよく、また高分子ポリマー等の有機物であってもよい。ここでいう高分子ポリマーは、後述する被覆に用いる高分子ポリマーと同じであってもよく、また異なっていてもよい。また本発明に用いられる微粒子は磁性体を含むものであってもよい。微粒子の粒子径は0.1から50μmが好ましく、さらには1から10μmが好ましい。また微粒子は細孔を有しても有さなくてもよい。
【0008】
本発明では、微粒子を高分子ポリマーで被覆するが、これは既に高分子ポリマーとして存在しているものを用いて微粒子を被覆してもよいが、微粒子表面でモノマーを重合させて高分子ポリマーを生成させつつ被覆してもよい。ここで微粒子表面とは、微粒子の外表面ばかりでなく、細孔を有する微粒子の場合は細孔内表面をも含めるものとする。また被覆とは、微粒子の少なくとも一部を覆うことを意味し、微粒子全体を覆うものであってもよい。
【0009】
ここで被覆に用いられる高分子ポリマーとしては、その組成、重合度には特に限定はなく、例えばポリジビニルベンゼン、ポリスチレン、ポリグリシジルメタクリレート等があげられる。
【0010】
本発明では、微粒子を高分子ポリマーで被覆する際に、1回の被覆に用いられる高分子ポリマーの量が、微粒子の単位表面積あたり0.01〜0.5g/m
2であることを特徴とする。この1回の被覆に用いられる高分子ポリマーの量は、好ましくは0.02〜0.3g/m
2、さらに好ましくは0.05〜0.2g/m
2である。
【0011】
この被覆処理は1回だけ行ってもよいが、複数回繰り返して行ってもよい。好ましくは3回以上、さらに好ましくは4回以上行うことにより、微粒子表面をより均一に被覆することができる。なお被覆回数の上限は特に限定されるものではないが、効果との兼ね合いで好ましくは20回以下、更に好ましくは10回以下である。
【0012】
本発明の方法について、モノマーを重合させて高分子ポリマーを生成させつつ被覆する場合を例にして、以下により具体的に説明する。
【0013】
まず、分散安定剤、乳化剤を含む水溶液に微粒子を分散させる。この際に回転数は50rpm以上300rpm以下であることが好ましい。ここで分散安定剤としては特に限定されるものではないが、例えばポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが例示される。また乳化剤としては特に限定されるものではないが、例えばウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウムなどが例示される。加温はしても良いが40℃以下が好ましい。
【0014】
次に、高分子ポリマーのモノマーを微粒子分散液に添加する。この際、予め少量の分散安定剤、乳化剤をモノマー水溶液に加えておくことが好ましく、ホモジナイザーなどで乳化操作をしておくことがさらに好ましい。また。このときの回転数は50rpm以上300rpm以下が好ましい。また加温しても良いが40℃以下が好ましい。モノマーを全量添加した後に、40℃以上に加熱することが好ましい。本発明では、モノマー水溶液を添加する際、1回の被覆に用いられる高分子ポリマーの量が、微粒子の単位表面積あたり0.01g/m
2〜0.5g/m
2となるように換算して添加する。そしてこの被覆操作を合計で3回以上繰り返して行うことが好ましい。被覆が終了した微粒子は通常の方法で分離・回収することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、微粒子に高分子ポリマーを被覆する際に過剰な重合を抑制し、高分子ポリマーの粗大物や微粒子凝集体の生成を抑制することが可能である。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。しかし本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0017】
(比較例1)
室温にて、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5%、ポリオキシエチレンステアリルエーテル0.5%の水溶液50mLに微粒子1g(粒子径2.5μm、磁性体としてマグネタイト(Fe
3O
4)を表面に有するポリジビニルベンゼン微粒子)を回転数100rpmにて分散させた。ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5%、ポリオキシエチレンステアリルエーテル0.5%の水溶液5mLにグリシジルメタクリレート1.35g、エチレングリコールジメタクリレート0.15g、V−65 0.03gを添加し、ホモジナイザーにて30秒間乳化した。これを微粒子分散液に回転数100rpmを維持したまま2分かけて添加した。全量添加した後に60℃に加熱し、この状態を維持したまま15時間反応させた。これは微粒子単位表面積あたり0.75g/m
2の高分子ポリマー(エチレングリコールジメタクリレートで架橋されたポリグリシジルメタクリレート)を用いたことに相当する。反応終了後、網目40μmの金網にてろ過したところ0.53gの反応物が金網上に残った。網目40μmの金網を通過した懸濁液を網目20μmにてろ過したところ、0.32gの反応物が金網上に残った。二つの金網を通過した反応物は0.23gであった。
【0018】
(実施例1)
室温にて、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5%、ポリオキシエチレンステアリルエーテル0.5%の水溶液50mLに微粒子1g(粒子径2.5μm、磁性体としてマグネタイト(Fe
3O
4)を表面に有するポリジビニルベンゼン微粒子)を回転数100rpmにて分散させた。ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5%、ポリオキシエチレンステアリルエーテル0.5%の水溶液1.25mLにグリシジルメタクリレート0.34g、エチレングリコールジメタクリレート0.04g、V−65 0.008gを添加し、ホモジナイザーにて30秒間乳化した。これを微粒子分散液に回転数100rpmを維持したまま2分かけて添加した。全量添加した後に60℃に加熱し、この状態を維持したまま15時間反応させた。これは微粒子単位表面積あたり0.19g/m
2の高分子ポリマー(エチレングリコールジメタクリレートで架橋されたポリグリシジルメタクリレート)を用いたことに相当する。反応終了後にウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5%、ポリオキシエチレンステアリルエーテル0.5%の水溶液にて洗浄を実施した後に、上述の高分子ポリマーによる被覆反応をさらに3回繰り返して行ない、合計で4回の被覆を行なった。4回目の反応終了後、網目40μmの金網にてろ過したところ、ほぼすべての反応物が金網を通過した。網目40μmの金網を通過した懸濁液を網目20μmにてろ過したところ、0.15gの反応物が金網上に残った。二つの金網を通過した反応物は1.12gであった。比較例1と比較して実施例1では4.9倍の微粒子を得た。比較例1と比べて、実施例1の方法によれば、高分子ポリマーの原料モノマーの過剰な重合を抑制し、高分子ポリマーの粗大物や微粒子凝集体の生成を抑制できることが明らかである。