(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)成分および(B)成分の合計重量を基準とする割合で(A)成分が10〜97重量%、(B)成分が3〜90重量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物。
(A)成分および(B)成分の合計重量を基準とする割合で(A)成分が15〜85重量%、(B)成分が15〜85重量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物。
界面活性剤が、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルビニルエーテル、ポリブタジエン、ポリオレフィンおよびポリビニルエーテルから選択される1以上である請求項7に記載の重合性液晶組成物。
請求項1〜9のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物を配向処理した配向膜上に塗布し硬化することで得られる、液晶組成物の配向状態がチルト配向である光学異方体。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶化合物は、液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶相はネマチック相、スメクチック相、コレステリック相などであり、多くの場合ネマチック相を意味する。重合性は、光、熱、触媒などの手段により単量体が重合し、重合体を与える能力を意味する。式(1−1)で表される化合物を化合物(1−1)と表記することがある。その他の式で表される化合物についても同様である。(メタ)アクリレート[(meth)acrylate]は、アクリレート(acrylate)およびメタクリレート(methacrylate)
の一方または両方を表す。化学式において、結合手がベンゼン環を構成する炭素原子のどれとも結合していないように表示されているベンゼン環の置換基は、その結合位置が任意であることを示す。
【0022】
本発明において、重合性液晶組成物は、その成分の割合を明示しやすくするために、便宜上、溶剤を含まない系として説明される。そして、この重合性液晶組成物と溶剤とからなる溶液は、重合性液晶組成物の溶液と表記される。溶剤を含む場合は、溶剤に重合性液晶組成物の各成分を溶解することによって重合性液晶組成物の溶液が調製される。
【0023】
液晶化合物における配向は、チルト角の大きさなどに基づいてホモジニアス(homogeneous;平行)、ホメオトロピック(homeotropic;垂直)、チルト(tilted;傾き)、ツイスト(twisted;ねじれ)などに分類される。チルト角は、液晶化合物の配向状態および
支持基材の間の角度である。ホモジニアスは、配向状態が基材に平行で、かつ一方向に並んでいる状態をいう。ホモジニアス配向におけるチルト角の例は0度から5度である。ホメオトロピックは、配向状態が基材に垂直である状態をいう。ホメオトロピック配向におけるチルト角の例は、85度から90度である。チルトは、配向状態が基材から離れるにしたがって、平行から垂直に立ちあがっている状態をいう。チルト配向におけるチルト角(傾き角)の例は5度から85度である。ツイストは、配向状態が基材に平行ではあるが、らせん軸を中心に階段状にねじれている状態をいう。ツイスト配向におけるチルト角の例は0度から5度である。
【0024】
本発明の組成物は、(A)成分として式(1−1)、式(1−2)および式(1−3)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する。
【化4】
【0025】
式(1−1)、式(1−2)および式(1−3)において、
Z
11は独立して、水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;W
1は独立して水素、フッ素、またはメトキシであり;
W
2およびW
3は独立して水素またはメチルであり;
X
1は、独立して単結合または−CH
2CH
2−であり;
Z
12は独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;
W
4は水素、メチル、炭素数1〜7の直鎖アルキル、炭素数1〜7の分岐アルキル、アルコキシカルボニル(−COOR
a;R
aは炭素数1〜7の直鎖アルキル)、またはアルキルカルボニル(−COR
b;R
bは炭素数1〜15の直鎖アルキル)であり;
X
2は、独立して−O−または式(a)で表される基であり;
m1、m2、n1およびn2は独立して2〜15の整数、好ましくは2〜11の整数である。)
【0026】
本発明の組成物は、式(2−1)で表される化合物の少なくとも1つである(B)成分を含有する。
【化5】
【0027】
式(2−1)において、
Z
21は水素またはメチルであり;
R
1はアルキルエステルを含む置換基(−R
d−COOR
c、−R
d−OCOR
cまたは−R
d−CH=CH−COOR
c;R
cは炭素数1〜20(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6)の直鎖アルキル;R
dは単結合または炭素数1〜10(好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2)の直鎖アルキレン)であり;
W
5は、独立して水素、フッ素またはメトキシであり;
X
3は、独立して単結合、−COO−、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH
2CH
2−または−CH
2CH
2−COO−であり;
X
4は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、式(a)、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−COO−、または−OCO−CH
2CH
2−であり;
m3は2〜15の整数、好ましくは2〜12の整数であり;
q1は0〜2である。
(B)成分は、末端基にアルキルエステルを有することで、基材界面側との相互作用が強くなると推定されるため、(B)成分を加えることでチルト配向の発現が容易になると考えられる。
また、本発明の組成物は、(A)成分の構造が左右対称に近く、また(B)成分は(A)成分で用いられる部分構造を利用できるため容易に製造でき、低コストでチルト配向する重合性液晶組成物を得ることができる。
【0028】
本発明の組成物には、式(3−1)、式(3−2)、式(3−3)、式(3−4)、式(3−5)および式(3−6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(C)成分を含有してもよい。(C)成分を加えることでチルト角をより高めやすくなる。
【0029】
【化6】
式(3−1)において、L
1aおよびL
1bは独立して炭素数1〜4のアルキルである。R
1aおよびR
1bは独立して炭素数2〜4のアルキレンであり、好ましくは炭素数2のアルキレン、即ちエチレンである。Z
31は独立して水素またはメチルであり、好ましくは水素である。k1およびk2は独立して0〜4の整数であり、好ましくは0である。m31およびn31は独立して0〜6の整数であり、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは1である。
【0030】
【化7】
式(3−2)において、Z
32は独立して水素またはメチルであり、好ましくは水素である。m32およびn32は独立して1〜3の整数であり、好ましくは1である。L
2aおよびL
2bは独立して炭素数1〜6のアルキル、フェニル、またはフッ素であり、好ましくはメチル、フェニルまたはフッ素であり、より好ましくは、メチルまたはフェニルである。j1およびj2は独立して0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0である。
【0031】
【化8】
式(3−3)において、Z
33は独立して水素またはメチルであり、好ましくは水素である。R
3aおよびR
3bは独立して水素、メチルまたはエチルであり、好ましくは水素である。m33およびn33は独立して0〜3の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。
【0032】
【化9】
式(3−4)において、Z
34は水素またはメチルであり、好ましくは水素である。R
4aおよびR
4bは独立して水素、または炭素数1〜6のアルキルであり、好ましくは水素である。m34およびn34は独立して0〜10の整数であり、好ましくは0〜5の整数であり、より好ましくは0〜2の整数である。
【0033】
【化10】
式(3−5)において、Z
35は独立して水素またはメチルであり、好ましくは水素である。
【0034】
【化11】
式(3−6)において、Z
36は独立して水素またはメチルであり、好ましくは水素である。R
5aおよびR
5bは独立して水素または炭素数1〜6のアルキルであり、好ましくは水素である。L
2aおよびL
2bは独立して炭素数1〜6のアルキル、フェニル、またはフッ素であり、好ましくはメチル、フェニルまたはフッ素であり、より好ましくは、メチルまたはフェニルである。m35およびn35は独立して1〜3の整数であり、好ましくは1である。m36およびn36は独立して1〜3の整数であり、好ましくは1である。そして、j1およびj2は独立して0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0である。
【0035】
また、本発明の組成物は、式(4−1)および式(4−2)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(D)成分を含有してもよい。
【化12】
【0036】
式(4−1)および式(4−2)において、Z
41およびZ
42は独立して水素またはメチルである。Y
1およびY
2は独立して単結合、−(CH
2)
2−または−CH=CH−である。W
7およびW
8は独立して水素またはフッ素である。m5、m6、n5およびn6は独立して2〜15の整数であり、好ましくは2〜10の整数であり、より好ましくは2〜8の整数であり、更に好ましくは4〜6の整数である。
【0037】
また、本発明の組成物は、式(5−1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(E)成分を含有してもよい。
【化13】
【0038】
式(5−1)において、
Z
51は水素またはメチルであり;
R
51はシアノ、トリフルオロメトキシ、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシであり;
環Eは、ベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、
W
9は、独立して水素、フッ素またはメトキシであり;
X
52は、独立して単結合、−COO−、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH
2CH
2−または−CH
2CH
2−COO−であり;X
51は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、式(a)、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−COO−、または−OCO−CH
2CH
2−であり;
m7は2〜15の整数、好ましくは2〜12の整数であり;
q7は0〜2である。
【0039】
また、本発明の組成物は、式(6−1)および式(6−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(F)成分を含有してもよい。
【化14】
【0040】
式(6−1)において、
R
61は、式(R
61−A)〜(R
61−F)のいずれかで表わされる重合性の基、水素、塩素、フッ素、シアノ、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、トリフルオロメチルまたはトリフルオロメトキシであり;
A
61は、独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイルまたはビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイルであり、1,4−シクロヘキシレンにおける1つまたは隣接しない2つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、1,4−フェニレンにおける1つまたは2つの−CH=は−N=で置き換えられてもよく、1,4−フェニレンにおける少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシまたは炭素数1〜5のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく;
X
61は、−CO−、−COCH
2−、−CO(CH
2)
2−または−COCH=CH−であり;
X
62は、独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおける少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Q
61は、単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおける
少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
q61は、1〜5の整数であり;
Z
61は、水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のハロゲン化アルキルである。
式(R
61−A)〜(R
61−F)中、Z
6aは独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のハロゲン化アルキルである。
尚、本発明においてハロゲンとは第17族元素を指し、具体的にはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素である。
【0041】
式(6−2)において、
Z
62は独立して、水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;
W
62は独立して水素、フッ素、またはメトキシであり;
X
63は、独立して−O−または式(a)で表される基であり;
X
64は、独立して−CH=CH−または−CH
2CH
2−であり;
W
63は水素、メチル、炭素数1〜7の直鎖アルキル、炭素数1〜7の分岐アルキル、アルコキシカルボニル(−COOR
a;R
aは炭素数1〜7の直鎖アルキル)、またはアルキルカルボニル(−COR
b;R
bは炭素数1〜15の直鎖アルキル)であり;
m62およびn62は独立して2〜15の整数である。
【0042】
本発明の重合性液晶組成物は室温でネマチック相を有し、光配向処理やラビング配向処理されたプラスチック基材上、光配向処理やラビング配向処理されたポリイミド等の配向膜上で、チルト配向する。本発明の組成物は、式(2−1)で示される単官能成分(すなわち、(B)成分)を含有すると配向処理された配向膜上でチルト配向する傾向が強くなり、また式(1−1)〜(1−3)で示される2官能成分(すなわち、(A)成分)はメソゲン骨格の中心構造であるフルオレン環やベンゼン環が非対称であるときもチルト配向しやすくなる。
【0043】
本発明の組成物に用いる化合物について説明する。
式(1−1)、式(1−2)および式(1−3)で表される化合物は、2つの重合性基を有する。この重合性液晶化合物の重合体は三次元構造になりうるので、1つの重合性基を有する化合物に比較して硬い重合体を与える。これらの式(1−1)、式(1−2)および式(1−3)で表される化合物は、広い温度範囲で液晶相を示す。また、これらの化合物は、チルト角の発現傾向に関してはホモジニアス配向になりやすく、添加物、支持基材の状態にもよるが、メソゲン骨格の中心構造であるフルオレン環やベンゼン環が非対称であるときにチルト配向しやすくなる傾向がある。
【0044】
式(2−1)で表される化合物は1つの重合性基を有する。式(2−1)で表される化合物は、チルト角を大きくする性質や融点を下げる性質を有する。
式(3−1)〜式(3−6)で表される化合物は液晶化合物ではない。これらの式(3−1)〜式(3−6)で表される化合物は、フルオレン構造とフェノキシド構造とを1分子中に有する化合物である。また、これらの式(3−1)〜式(3−6)で表される化合物は、液晶化合物をホメオトロピックに配向させる効果がある。以下の説明では、式(3−1)〜式(3−6)で表される化合物の総称として式(3)を用いることがある。
【0045】
式(4−1)および式(4−2)で表される化合物は、ビスフェノール骨格および2つの重合性基を有する。この重合性化合物の重合体は三次元構造になりうるので、1つの重合性基を有する化合物に比較して硬い重合体を与える。これらの式(4−1)および式(4−2)で表される化合物は、液晶性を示しても示さなくてもよい。また、これらの式(
4−1)および式(4−2)で表される化合物は、重合性液晶組成物の融点を下げる作用がある。支持基材、添加物などの条件に依存するが、これらの式(4−1)および式(4−2)で表される化合物を、他の重合性液晶化合物と併用するとホメオトロピック配向となりやすい。
【0046】
式(5−1)、式(6−1)および式(6−2)で表される化合物は、重合性液晶組成物の複屈折率(Δn)を制御するために併用してもよい。式(5−1)および式(6−1)で表される化合物はΔnを低く調整することができ、式(6−2)で表される化合物ではシンナメート結合を選定する場合にΔnを高く調整することができる。
【0047】
本発明の組成物は、式(1−1)〜(1−3)、式(2−1)、式(3−1)〜式(3−6)、式(4−1)〜式(4−2)、式(5−1)、式(6−1)および式(6−2)で表される化合物とは異なるその他の重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」ともいう)を含有してもよい。この組成物は、均一な厚みの塗膜の生成、および重合性液晶のチルト角の立ち上がり方向が異なる現象である配向欠陥の抑制のために、界面活性剤のような添加物をさらに含有してもよい。この組成物は、重合反応に適した重合開始剤、光増感剤などの添加物を含有してもよい。
この組成物は、重合体の特性を向上させるために紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、光安定剤などの添加物を含有してもよい。この組成物は支持基材にダメージを与えず、重合性液晶組成物を十分に溶解することができる有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、均一な厚さの塗膜(paint film)を生成させるのに有用である。また、重合体(液晶フィルム)に偏光特性を付与させるために二色性色素を含有してもよい。
【0048】
本発明の組成物における各成分の割合について説明する。
(A)成分の好ましい割合は、(A)成分および(B)成分の合計重量を基準として10〜97重量%である。より好ましい割合は15〜85重量%である。
(B)成分の好ましい割合は、(A)成分および(B)成分の合計重量を基準として3〜90重量%である。より好ましい割合は15〜85重量%である。
【0049】
(C)成分を利用する場合の好ましい割合は、(A)成分および(B)成分の合計重量に対する重量比で0.01〜0.20である。より好ましい重量比の範囲は0.03〜0.15である。
(D)成分を利用する場合の好ましい割合は、(A)成分および(B)成分の合計重量に対する重量比で0.01〜0.25である。より好ましい割合は0.03〜0.15である。
(E)成分を利用する場合の好ましい割合は、(A)成分および(B)成分の合計重量に対する重量比で0.01〜1.00である。より好ましい割合は0.03〜0.50である。尚、(E)成分として、末端がシアノである化合物を用いる場合は、チルト配向を発現させやすくする観点から、(A)成分および(B)成分の合計重量に対する重量比で0.03〜1.00であることが好ましい。
(F)成分を利用する場合の好ましい割合は、(A)成分および(B)成分の合計重量に対する重量比で0.01〜1.00である。より好ましい割合は0.03〜0.50である。
【0050】
その他の重合性化合物を利用する場合の好ましい添加量は、(A)成分および(B)成分の合計重量に対する重量比で0.01〜0.40であり、好ましくは0.03〜0.25である。界面活性剤、重合開始剤などのような添加物を用いるとき、その使用量は目的を達する最小量でよい。
【0051】
本発明の組成物における各成分の組み合わせについて説明する。
好ましい組み合わせは(A)成分および(B)成分の組み合わせである。
チルト角を調整する場合には、(A)成分、(B)成分および(C)成分の組み合わせ、(A)成分、(B)成分および(D)成分の組み合わせ、
(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の組み合わせが好ましい。
それぞれの組み合わせについて、(E)成分、(F)成分およびその他の重合性化合物をさらに組み合わせてもよい。
【0052】
次に、化合物の合成法を説明する。本発明に用いられる化合物は、フーベン・ヴァイル(Houben Wyle, Methoden der Organischen Chemie, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、オーガニック・シンセセーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘ
ンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載された、有機化学における合成方法を適切に組
み合わせることにより合成できる。
【0053】
式(1−1)で表される化合物の合成方法は、特開2003−238491号公報、特開2006−307150号公報に記載されている。式(1−2)で表される化合物の合成方法は、Makromol. Chem., 190, 3201-3215 (1998) 、国際公開97/00600号な
どに記載されている。式(1−3)で表される化合物の合成方法は、米国特許第5770107号明細書に記載の方法や特開2012−177087号公報を参考にできる。
α−フルオロアクリロイルオキシ(CH
2=CF−COO−)の導入法には、α−フルオロアクリル酸、α−フルオロアクリル酸クロリドを用いることもできるが、α−フルオロアクリル酸フルオリド(CH
2=CFCOOF)を作用させる方法が有用である。J. Org. Chem., 1989, 54, 5640、特開昭60−158137号公報、特開昭61−8534
5号公報などにα−フルオロアクリル酸フルオリドの合成法が記載されており、それらの方法に準じて合成が可能である。これらの化合物を出発物質として利用することにより、式(1−1)および式(1−2)で表される化合物を合成することができる。
式(2−1)および式(5−1)で表される化合物の合成方法は、Macromolecules, 26, 6132-6134 (1993)、Makromol. Chem., 183, 2311-2321 (1982)、独国特許第19504224号明細書、国際公開1997/00600号、米国特許4952334号明細書、米国特許4842754号明細書等に記載された方法で合成できる。
【0054】
式(3)で表される化合物の合成方法は、次の文献に記載されている。
式(3−1):国際公開2005/33061号
式(3−2)〜式(3−4):特開2005−338550号公報
式(3−4):特開2002−293762号公報
式(3−5):特開2005−272485号公報
式(3−6)の前駆体(エポキシアクリレート前駆体):特開2002−348357号公報
式(4−1)および式(4−2)で表される化合物の合成方法は、特開2007−16213号公報に記載されている。
式(6−1)で表される化合物の合成方法は、特開2011−246365号公報に記載されている。式(6−2)で表される化合物の合成方法は、米国特許5770107号明細書に記載されている。
【0055】
次に、成分化合物を例示する。式(1−1)で表される化合物の好ましい例を次に示す。
【化15】
【0056】
式(1−1−A)〜(1−1−D)において、Z
11は、独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり、m1およびn1はそれぞれ独立して、2〜15の整数、好ましくは2〜11の整数である。
【0057】
式(1−2)で表される化合物の好ましい例を次に示す。
【化16】
【0060】
式(1−2−A)〜(1−2−L)において、Z
12は、独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり、m2およびn2はそれぞれ独立して、2〜15の整数、好ましくは2〜11の整数である。
【0061】
式(1−3)で表される化合物の好ましい例を次に示す。
【化19】
【0062】
式(1−3−A)〜(1−3−B)において、Z
11は、独立して水素、フッ素、メチ
ルまたはトリフルオロメチルであり、W
1は、独立して水素またはフッ素であり、m1およびn1はそれぞれ独立して、2〜15の整数、好ましくは2〜11の整数である。式(1−3−A)〜(1−3−B)で表される化合物はトランス体であることが好ましく、両方の−CH=CH−がトランス型をとることがより好ましい。
【0063】
式(2−1)で表される化合物の好ましい例を次に示す。
【化20】
【0066】
式(2−1−A)〜式(2−1−I)において、
Z
21は水素、またはメチルであり、
W
5は水素またはフッ素であり、
R
1およびm3は上記と同様である。
式(2−1−D)および式(2−1−E)において、トランス体がより好ましい。
【0067】
式(3−1)〜式(3−6)で表される化合物の好ましい例を次に示す。
【化23】
ここに、Z
31は独立して水素またはメチルであり、R
1aおよびR
1bは独立して炭素
数2〜4のアルキレンであり、そしてm31およびn31は独立して0〜6の整数である。
【0068】
【化24】
ここに、Z
32は独立して水素またはメチルであり、そしてm32およびn32は独立して1〜3の整数である。
【0069】
【化25】
ここに、Z
33は独立して水素またはメチルであり、そしてm33およびn33は独立して0〜3の整数である。
【0070】
【化26】
ここに、Z
34は水素またはメチルであり、そしてm34およびn34は独立して0〜10の整数である。
【0071】
【化27】
ここに、Z
35は独立して水素またはメチルである。
【0072】
【化28】
ここに、Z
36は独立して水素またはメチルであり、m35およびn35は独立して1〜3の整数であり、m36およびn36は独立して1〜3の整数である。
【0073】
式(4−1)および式(4−2)で表される化合物の好ましい例を次に示す。
【化29】
【0075】
式(4−1−A)〜式(4−1−C)において、Z
41は独立して水素またはメチルであり、W
7は独立して水素またはフッ素であり、そしてm5およびn5は、独立して2〜15の整数である。式(4−2−A)〜式(4−2−C)において、Z
42は独立して水素またはメチルであり、W
8は独立して水素またはフッ素であり、そしてm6およびn6は、独立して2〜15の整数である。式(4−1−B)および式(4−2−B)において、トランス体が好ましく、両方の−CH=CH−がトランス型をとることがより好ましい。
【0076】
式(5−1)で表される化合物の好ましい例を次に示す。
【化31】
【0079】
式(5−1−A)〜式(5−1−Q)において、
Z
51は水素、またはメチルであり、
W
9は水素またはフッ素であり、
R
51は炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、トリフルオロメトキシであり、m7は2〜15、好ましくは2〜12の整数である。
式(5−1−G)〜式(5−1−J)において、トランス体がより好ましい。
【0080】
式(6−1)で表される化合物の好ましい例を次に示す。
【化34】
【0082】
【化36】
式(6−1−1)〜式(6−1−19)において、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、トリフルオロメチルまたはトリフルオロメトキシである。また、式(6−1−9)、式(6−1−16)および式(6−1−18)において、トランス体がより好ましい。
【0085】
【化39】
式(6−1−28)、式(6−1−32)および式(6−1−37)で表される化合物は、トランス体であることが好ましい。式(6−1−33)で表される化合物はトランス体であることが好ましく、両方の−CH=CH−がトランス型をとることがより好ましい。
【0086】
式(6−2)で表される化合物の好ましい例を次に示す。
【化40】
【0087】
式(6−2−A)〜式(6−2−F)において、
Z
62は独立して、水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり、
W
63は水素、メチル、炭素数1〜7の直鎖アルキル、炭素数1〜7の分岐アルキルであり、
R
aは炭素数1〜7の直鎖アルキルであり、
R
bは炭素数1〜15の直鎖アルキルであり、
m62およびn62は独立して2〜15の整数である。
式(6−2−A)、式(6−2−C)および式(6−2−E)において、トランス体が好ましく、両方の−CH=CH−がトランス型をとることがより好ましい。
【0088】
さらに、式(1−1)〜式(1−3)、式(2−1)、式(3−1)〜式(3−6)、式(4−1)、式(4−2)、式(5−1)、式(6−1)および式(6−2)で表される化合物の好ましい具体例を次に示す。
【0095】
【化47】
式(1−3−A−1)〜式(1−3−A−4)、式(1−3−B−1)〜式(1−3−B
−4)において、トランス体が好ましく、両方の−CH=CH−がトランス型をとることがより好ましい。
【0098】
【化50】
式(2−1−12)〜式(2−1−15)において、トランス体がより好ましい。
【0100】
式(3)で表される化合物の具体例を次に示す。
【化52】
これらの式において、nはそれぞれ独立して、1〜4の整数である。
【0101】
【化53】
これらの式において、nはそれぞれ独立して、1〜3の整数である。
【0102】
【化54】
これらの式において、nはそれぞれ独立して、1〜3の整数である。
【0103】
【化55】
これらの式において、nはそれぞれ独立して、0〜2の整数である。
【0106】
式(3−1−1)、式(3−2−1)、式(3−3−1)または式(3−6−1)で表
される化合物を含む市販品として、大阪ガスケミカル製のオグソール(登録商標)EA−0250T、オグソールEA−0500、オグソールEA−1000、CA−0400、CA−0450T、ONF−1、BPEFA、GA−1000等が挙げられる。これらの市販品を用いてもよい。
【0107】
式(4)で表される化合物の具体例を次に示す。
【化58】
式(4−1−2)〜式(4−1−4)において、トランス体が好ましく、両方の−CH=CH−がトランス型をとることがより好ましい。
【0110】
【化61】
式(4−2−5)〜式(4−2−7)において、トランス体が好ましく、両方の−CH=CH−がトランス型をとることがより好ましい。
【0112】
次に、式(5−1)で表される化合物の好ましい例を示す。
【化63】
【0115】
【化66】
式(5−1−16)〜式(5−1−23)において、トランス体がより好ましい。
【0123】
【化74】
式(5−1−65)および式(5−1−66)において、トランス体がより好ましい。
【0125】
【化76】
式(6−1−16−1)において、トランス体がより好ましい。
【0126】
【化77】
式(6−2−A−1)〜式(6−2−A−4)において、トランス体が好ましく、両方の−CH=CH−がトランス型をとることがより好ましい。
【0127】
【化78】
式(6−2−C−1)〜式(6−2−C−3)において、トランス体が好ましく、両方の−CH=CH−がトランス型をとることがより好ましい。
【0128】
【化79】
式(6−2−E−1)〜式(6−2−E−3)において、トランス体がより好ましく、両方の−CH=CH−がトランス型をとることがより好ましい。
【0129】
次に、その他の重合性化合物、添加物、有機溶剤を例示する。これらの化合物は市販品でもよい。その他の重合性化合物の例は、重合性基を1つ有する化合物、重合性基を2つ有する化合物、重合性基を3つ以上有する化合物、1化合物中に水酸基を含む官能基を有し、アクリロイルまたはメタクリロイルを有する非液晶性の重合性化合物、カルボキシルを有する重合性化合物、リン酸基を有する重合性化合物である。
【0130】
重合性基を1つ有するが水酸基を含む官能基を有さない化合物の例は、スチレン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、脂肪酸ビニル(例:酢酸ビニル)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(例:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など)、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(アルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(ヒドロキシアルキルの炭素数1〜1
8)、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル(アミノアルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のエーテル酸素含有アルキルエステル(エーテル酸素含有アルキルの炭素数3〜18、例:メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、およびブチルカルビルエステル)、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、末端が炭素原子数1〜6のアルキルによってキャップされたポリエチレングリコール(繰り返し単位数(重合度)が2〜20)のモノ(メタ)アクリル酸エステル、末端が炭素原子数1〜6のアルキルによってキャップされたポリプロピレングリコ−ル(繰り返し単位数(重合度)が2〜20)のモノ(メタ)アクリル酸エステル、および末端が炭素原子数1〜6のアルキルによってキャップされたエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体(重合度2〜20)等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステルである。
【0131】
重合性基を2つ有するが水酸基を含む官能基を有さない化合物の例は、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート(ビスコート V#700)、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびこれらの化合物のメタクリレート化合物などである。これらの化合物は、重合体の被膜形成能をさらに高めるのに適している。
【0132】
重合性基を3つ以上有するが水酸基を含む官能基を有さない化合物の例は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールEO付加トリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスコート V#802(官能基数=8)、ビスコート V#1000(官能基数=平均14)である。「ビスコート」は大阪有機化学株式会社の商品名である。官能基が16以上のものはPerstorp Specialty Chemicalsが販売しているBoltorn H20(16官能)、Boltorn H30(32官能)、Boltorn H40(64官能)を原料にそれらをアクリル化することで得られる。
【0133】
1化合物中に水酸基を含む官能基を有し、アクリロイルまたはメタクリロイルを有する非液晶性の重合性化合物は市販品でもよい。好ましい例は、ブタンジオールモノアクリレート、ブチルグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物(長瀬産業製デナコール(登録商標)DA−151)、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールメタクリレート(日油製ブレンマー(登録商標)GLM)、グリセロールアクリレート、グリセリンジメタクリレート(日油製ブレンマーGMRシリーズ)、グ
リセロールトリアクリレート(長瀬ケムテックス製EX−314)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒製BHEA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(日本触媒製HEMA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(日本触媒製HPA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(日本触媒製HPMA)、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、フェノキシヒドロキシプロピルアクリレート(共栄社化学製M−600A)、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学製G−201P)、日本化薬製カヤラッド(登録商標)R−167、トリグリセロールジアクリレート(共栄社化学製 エポキシエステル80MFA)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、4−(2−アクリロイロキシエチ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド、4−(3−アクリロイロキシ−n−プロプ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド、4−(2−メタクリロイロキシエチ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド、4−(4−アクリロイロキシ−n−ブチ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド、4−(6−アクリロイロキシ−n−ヘキシ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド、4−(6−アクリロイロキシ−n−ヘキシ−1−イロキシ)−2−メチルベンゾイックアシッド、4−(6−メタクリロイロキシ−n−ヘキシ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド、4−(10−アクリロイロキシ−n−デシ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド、2-アクリロイルオ
キシエチルアシッドフォスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフ
ェートが挙げられる。
【0134】
重合度2〜20のポリエチレングリコールのモノメタアクリル酸エステルとしては下記式(7−1)に例示されるように、日油製ブレンマー PE−90(n=2)、PE−200(n=4.5)、PE−350(n=8)が挙げられる。ここで、ポリエチレングリコール鎖の繰り返し単位数(重合度)は、2〜10であることがより好ましい。nは平均構成単位数を表す。
【0136】
重合度2〜20のポリエチレングリコールのモノアクリル酸エステルとしては下記式(7−2)に例示されるように、日油製ブレンマー AE−90(n=2)、AE−200(n=4.5)、AE−400(n=10)が挙げられる。ここで、ポリエチレングリコール鎖の繰り返し単位数(重合度)は、2〜10であることがより好ましい。
【0138】
重合度2〜20のポリプロピレングリコールのモノメタアクリル酸エステルとしては、下記式(7−3)に例示されるように、日油製ブレンマー PP−1000(n=4〜6)、PP−500(n=9)、PP−800(n=13)が挙げられる。ここで、ポリプロピレングリコール鎖の繰り返し単位数(重合度)は、3〜13であることがより好ましい。
【0140】
重合度2〜20のポリプロピレングリコールのモノアクリル酸エステルとしては、下記式(7−4)に例示されるように、日油製ブレンマー AP−150(n=3)、AP−400(n=6)、AP−550(n=9)、AP−800(n=13)が挙げられる。ここで、ポリプロピレングリコール鎖の繰り返し単位数(重合度)は、3〜13であることがより好ましい。
【0142】
ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタアクリル酸エステルとしては、下記式(7−5)で例示されるように、日油製ブレンマー 50PEP−300が挙げられる。ここで、Rを意味するエチレンまたはプロピレンは、ランダム共重合から成る。エチレンオキシとプロピレンオキシの平均構成単位数(m)は、それぞれ、2.5及び3.5である。以下のmについても、各アルキレンの平均構成単位数を表す。
【0144】
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタアクリル酸エステルとしては、下記式(7−6)で例示されるように、日油製ブレンマー 70PEP−350B(m=5、n=2)が挙げられる。
【0146】
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリル酸エステルとしては
、ブレンマーAEPシリーズが挙げられる。
ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノメタアクリル酸エステルとしては、下記式(7−7)で例示されるように、日油製ブレンマー 55PET−400、30PET−800、55PET−800が挙げられる。ここで、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)鎖の繰り返し単位数は2〜10であることがより好ましい。式中で、Rを意味するエチレンまたはブチレンは、ランダム共重合から成る。エチレンオキシとブチレンオキシの平均構成単位数(m)は、それぞれ、55PET−400では5と2であり、30PET−800では6と10であり、55PET−800では10と5である。
【0148】
ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノアクリル酸エステルとしては、日油製ブレンマーAETシリーズが挙げられる。
ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノメタアクリル酸エステルとしては、下記式(7−8)で例示されるように、日油製ブレンマー 30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800が挙げられる。ここで、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)鎖の繰り返し単位数は3〜10であることがより好ましい。式中で、Rを意味するプロピレンオキシまたはブチレンオキシは、ランダム共重合から成る。プロピレンとブチレンの平均構成単位数(m)は、それぞれ、30PPT−800では4と8であり、50PPT−800では7と6であり、70PPT−800では10と3である。
【0150】
ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノアクリル酸エステルとしては、日油製ブレンマー APTシリーズが挙げられる。
プロピレングリコールポリブチレングリコールモノ((メタ)アクリル酸エステル)としては、日油製ブレンマー10PPB−500B(n=6)が下記式(7−9)で例示され、10APB−500B(n=6)が下記式(7−10)で例示される。ここで、プロピレングリコールポリブチレングリコール鎖の繰り返し単位数は6であることが、より好ましい。
【0152】
カルボキシルを有する重合性化合物の好ましい具体例としては以下であり、市販品でもよい。
2−メタクリロイロキシエチルコハク酸(共栄社化学製ライトエステルHO−MS(N)、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(共栄社化学製ライトエステルHO−HH(N)、2−アクリロイロキシエチルコハク酸(共栄社化学製ライトアクリレートHOA−MS(N)、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(共栄社化学製ライトアクリレートHOA−HH(N)、2−アクリロイロキシエチルフタル酸(共栄社化学製ライトアクリレートHOA−MPL(N)、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸(共栄社化学製ライトアクリレートHOA−MPE(N)、
4−(2−アクリロイロキシエチ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド(Synthon Chemicals製ST01630)、
4−(3−アクリロイロキシ−n−プロプ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド(Synthon Chemicals製ST02453)、
4−(2−メタクリロイロキシエチ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド(Synthon Chemicals製ST01889)、
4−(4−アクリロイロキシ−n−ブチ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド(Synthon Chemicals製ST01680)、
4−(6−アクリロイロキシ−n−ヘキシ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド(Synthon Chemicals製ST00902)、
4−(6−アクリロイロキシ−n−ヘキシ−1−イロキシ)−2−メチルベンゾイックアシッド(Synthon Chemicals製ST03606)、
4−(6−メタクリロイロキシ−n−ヘキシ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド(Synthon Chemicals製ST01618)、
4−(10−アクリロイロキシ−n−デシ−1−イロキシ)ベンゾイックアシッド(Synthon Chemicals製ST03604)等が挙げられる。
リン酸基を有する重合性化合物の好ましい具体例としては以下であり、市販品でもよい。2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(共栄社化学製ライトアクリレ
ートP−1A(N))、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(共栄
社化学製ライトエステルP−1M)、共栄社化学製ライトエステルP−2M、日本化薬製KAYAMER(登録商標) PM−2)等が挙げられる。
【0153】
界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられる。
イオン性界面活性剤としては、チタネート系化合物、イミダゾリン、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族または芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ラウリルアミド
プロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の化合物が挙げられる。
【0154】
非イオン性界面活性剤の種類としては、ビニル系、シリコーン系、フッ素系、炭化水素系等が挙げられるが、ビニル系のものが好ましい。
ビニル系としては、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルビニルエーテル、ポリブタジエン、ポリオレフィン、およびポリビニルエーテル等から選択される1以上が挙げられる。
シリコーン系としては、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルシロキサン、特殊変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、表面処理シロキサン等が挙げられる。
フッ素系はフッ素系ポリマー等が挙げられる。
炭化水素系としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、パラフィン、流動パラフィン、塩素化ポリプロピレン、塩素化パラフィン、塩素化流動パラフィン等が挙げられる。
具体例としては、特開2011−246365号公報の段落0196に記載のシリコーン系の非イオン性界面活性剤、同公報の段落0197に記載のフッ素系の非イオン性界面活性剤、同公報の段落0199に記載のアクリル系ポリマーを主成分とした非イオン性界面活性剤、および特開2009−242563号公報の段落0019に記載のフッ素系の非イオン性界面活性剤やシリコーン系の非イオン性界面活性剤、あるいは、ビニル系の非イオン界面活性剤であるTEGO Flow300、TEGO Flow370およびTEGO FlowZFS460(以上、エボニック社製)等が挙げられる。
【0155】
界面活性剤は単独でも、二以上を混合して用いてもよい。
中でも、非イオン性であるビニル系の界面活性剤は、塗膜表面への偏析する度合いがシリコーン系やフッ素系と比較して弱い(過度に局在化しない)ため、配向欠陥の抑制およびチルト配向の発現に有利であると考えられる。ビニル系の界面活性剤の中でも、ポリアルキルアクリレート(アクリルポリマー)又はポリアルキルメタクリレート等がより好ましい。
このようなビニル系のアクリルポリマーやアクリルコポリマーを主成分とした界面活性剤としては、ポリフローシリーズ(ポリフローNo.7、No.50E、No.50EHF、No.54N、No.75、No.77、No.85、No.85HF、No.90、No.90D−50、No.95、又はNo.99C)(共栄社化学(株)製)、TEGO Flowシリーズ(TEGO Flow300、370、又はZFS460、)(エボニック社製)、BYKシリーズ(BYK350、352、354、355、356、358N、361N、381、392、394、3441、又は3440)(ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0156】
上記のような界面活性剤を加えることで、空気界面側の垂直配向を適度に抑制し、また液晶分子の界面からの立ち上がり方向を一方向に揃えていると推測されるため、配向欠陥を抑制することができると考えられる。また、界面活性剤は、チルト配向における液晶分子の立ち上がり方向の均一性制御や、組成物を支持基材などに均一に塗布するのを容易にするなどの効果を有する。
また、基材への塗れ性を最適化するには、(基材)湿潤剤として分類される界面活性剤をチルト配向への影響を及ぼさない範囲で併用してもよい。湿潤剤は重合性液晶溶液の表面張力を低下させ、塗工基材への塗れ性を向上させる効果を有する。このような湿潤剤としては、ポリフローシリーズ(KL−100、KL−700、LE−604、605、606)、TEGO Twinシリーズ(4000)(エボニック社製)、TEGO Wetシリーズ(KL245、250、260、265、270、280、500、505、510、520)(エボニック社製)、などが挙げられる。
界面活性剤は重合性液晶化合物と一体化させるために重合性基を有していてもよい。界面活性剤に導入される重合性基としては、UV反応型の官能基や熱重合性を有する官能基などが挙げられる。重合性液晶化合物との反応性の観点からUV反応型の官能基が好ましい。界面活性剤の好ましい割合は、界面活性剤の種類、組成物の組成比などにより異なるが、(A)成分および(B)成分の合計重量に対する重量比で0.0001〜0.05であり、より好ましくは0.0003〜0.03である。
【0157】
重合性液晶組成物の重合速度を最適化するために、公知の光重合開始剤を用いてもよい。光重合開始剤の好ましい添加量は、(A)成分および(B)成分の合計重量に対する重量比で0.0001〜0.20である。この重量比のより好ましい範囲は0.001〜0.15である。さらに好ましい範囲は0.01〜0.15である。
光重合開始剤の例は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア(登録商標)1173)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア(登録商標)651)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)、イルガキュア127、イルガキュア500(イルガキュア184とベンゾフェノンの混合物)、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア754、イルガキュア1300、イルガキュア819、イルガキュア1700、イルガキュア1800、イルガキュア1850、イルガキュア1870、ダロキュア4265、ダロキュアMBF、ダロキュアTPO、イルガキュア784、イルガキュア754、イルガキュアOXE01、イルガキュアOXE02、アデカアークルズNCI−831、アデカアークルズNCI−930およびアデカオプトマーN−1919である。光重合開始剤は単独でも、二以上を混合して用いてもよい。上記のダロキュアおよびイルガキュアはどちらもBASFジャパン株式会社から販売されている商品の名称である。アデカアークルズおよびアデカオプトマーはどちらも株式会社ADEKAから販売されている商品の名称である。これらに公知の増感剤(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチル−4ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアEDB)、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアEHA)など)を添加してもよい。
【0158】
光ラジカル重合開始剤のその他の例は、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物などである。
【0159】
式(6)で表される化合物を利用する際、重合性基として(R
61−B)〜(R
61−F)を有する場合は、公知の光カチオン重合開始剤を用いてもよい。光カチオン重合開始剤の好ましい添加量は、カチオン重合性化合物の全重量に基づく重量比で0.0001〜0.1である。より好ましい重量比は0.001〜0.07である。
【0160】
光カチオン重合開始剤の具体的な商品名の例は、サンアプロ(株)製のCPIシリーズ(CPI−100P、200K等)、UCCの製品のサイラキュアーUVI−6990、サイラキュアーUVI−6974およびサイラキュアーUVI−6992、(株)ADEKA製のアデカオプトマーSPシリーズ(SP−150、SP−170、SP−171、SP−056、SP−066、SP−130、SP−140、SP−082、SP−10
3、SP−601、SP−606およびSP−701)、ローディア(株)製のPHOTOINITIATOR2074、BASFジャパン(株)製のイルガキュアー250、270、290、和光純薬工業(株)製のWPIシリーズ、WPAGシリーズ、GEシリコンズの製品のUV−9380Cの他、みどり化学(株)からTPSシリーズ、TAZシリーズ、DPIシリーズ、BPIシリーズ、MDSシリーズ、DTSシリーズ、SIシリーズ、PIシリーズ、NDIシリーズ、PAIシリーズ、NAIシリーズ、NIシリーズ、DAMシリーズ、MBZシリーズ、PYRシリーズ、DNBシリーズ、NBシリーズ等多数の製品が販売されている。
【0161】
ラジカル重合開始剤と光酸発生剤の併用時に、塩が発生し、重合阻害が生じることが予測される場合には、光酸発生剤を光塩基発生剤に変更するとよい。光塩基発生剤の具体的な商品名の例は、和光純薬工業(株)製のWPBGシリーズ(WPBG−018、WPBG−027、WPBG−082、WPBG−140、WPBG−165、WPBG−166、WPBG−167、WPBG−168、WPBG−172、WPBG−266等)である。
【0162】
本発明には熱重合開始剤を用いてもよい。具体的な商品名の例は、(株)ADEKA製のアデカオプトンシリーズ(CP−66)、三新化学工業(株)製のサンエイド(主剤)
SI−60、SI−80、SI−100、SI−110、SI−145、SI−150、SI−160、SI−180、サンエイド(助剤)SIである。これらは光ラジカル開始剤および光カチオン重合開始剤と併用、または光ラジカル開始剤と併用してもよい。
【0163】
1種または2種以上の連鎖移動剤を重合性液晶組成物に加えて、光学異方体の機械特性を制御することが可能である。連鎖移動剤を用いることによりポリマー鎖の長さまたはポリマーフィルムにおける2つの架橋ポリマー鎖の長さを制御することができる。これらの長さを同時に制御することもできる。連鎖移動剤の量を増大させると、ポリマー鎖の長さは減少する。好ましい連鎖移動剤は、チオール化合物およびスチレンダイマーである。
単官能性チオールの例はドデカンチオール、2−エチルへキシル−(3−メルカプトプロピオネートである。多官能性チオールの例は、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(カレンズMT BD1)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT PE1)、および1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(カレンズMT NR1)である。「カレンズ」は昭和電工株式会社の商品名である。上記以外のチオール化合物としては、国際公開2013/080855号の段落0042〜0043に記載のチオール化合物や、国際公開2008/077261号のp.23の11行目〜p.24の27行目に記載の化合物が挙げられる。スチレンダイマーの例は、α―メチルスチレンダイマー(2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン)、1,1−ジフェニルエチレンである。また、キノエクスター QE−2014も利用できる。「キノエクスター」は川崎化成工業株式会社の商品名である。
【0164】
重合性液晶組成物には、保存時の重合開始を防止するために重合防止剤を添加することができる。公知の重合防止剤を使用できるが、その好ましい例は、2,5−ジ(t−ブチル)ヒドロキシトルエン(BHT)、ハイドロキノン、メチルブルー、ジフェニルピクリン酸ヒドラジド(DPPH)、ベンゾチアジン、4−ニトロソジメチルアニリン(NIDI)、o−ヒドロキシベンゾフェノンなどである。重合防止剤は単独でも、二以上を混合して用いてもよい。
【0165】
重合性液晶組成物の保存性を向上させるために、酸素阻害剤を添加することもできる。
組成物内で発生するラジカルは雰囲気中の酸素と反応しパーオキサイドラジカルを与え、重合性化合物との好ましくない反応が促進される。これを防ぐ目的で酸素阻害剤を添加することが好ましい。酸素阻害剤の例はリン酸エステル類である。
【0166】
重合性液晶組成物の耐候性を更に向上させるために、紫外線吸収剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤)および酸化防止剤等を添加してもよい。これらは単独でも、二以上を混合して用いてもよい。紫外線吸収剤の例は、チヌビンPS、チヌビンP、チヌビン99−2、チヌビン109、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン328、チヌビン329、チヌビン384−2、チヌビン571、チヌビン900、チヌビン928、チヌビン1130、チヌビン400、チヌビン405、チヌビン460、チヌビン479、チヌビン5236、アデカスタブLA−32、アデカスタブLA−34、アデカスタブLA−36、アデカスタブLA−31、アデカスタブ1413、およびアデカスタブLA−51である。「チヌビン(登録商標)」はチバ ホールディング インコーポレーテッドの登録商標であり、BASFジャパン株式会社の商品名である。また、「アデカスタブ(登録商標)」は株式会社ADEKAの商品名である。
【0167】
光安定剤の例は、チヌビン111FDL、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292、チヌビン622、チヌビン770、チヌビン765、チヌビン780、チヌビン905、チヌビン5100、チヌビン5050、5060、チヌビン5151、キマソーブ119FL、キマソーブ944FL、キマソーブ944LD、アデカスタブLA−52、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87、サイテック社製のサイアソーブUV−3346、Uvinul4050H、Uvinul4077H、Uvinul4092H、Uvinul5050H、Uvinul5062Hおよびグッドリッチ社のグッドライトUV−3034である。「キマソーブ(登録商標)」およびUvinulはBASFジャパン株式会社の商品名である。
【0168】
酸化防止剤の例は、株式会社ADEKA製のアデカスタブAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−80、並びに住友化学株式会社から販売されているスミライザー(登録商標)BHT、スミライザーBBM−S、およびスミライザーGA−80、並びにBASFジャパン株式会社から販売されているIrganox(登録商標)1076、Irganox1010、Irganox3114、およびIrganox245である。これらの市販品を用いてもよい。あるいは特開2008−44989号公報の段落0008〜段落0014に記載の酸化防止剤を用いてもよい。
【0169】
重合性液晶組成物には、支持基材との密着性を制御するために、シランカップリング剤をさらに添加してもよい。具体的には、ビニルトリアルコキシシシラン、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3-トリエトキシシリル−1−プロパ
ンアミン、3-トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)、3−グリシ
ドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−クロロトリアルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどである。別の例は、これらの化合物において、アルコキシ(3つ)のうちの1つをメチルに置き換えられたジアルコキシメチルシランである。好ましいシランカップリング剤は、3−アミノプロピルトリエトキシシランである。シランカップリング剤は単独でも、二以上を混合して用いてもよい。
【0170】
重合性液晶組成物には、偏光特性や蛍光特性を付与するために、二色性色素や蛍光色素をさらに添加してもよい。二色性色素としては、(1)二色比が高いもの、(2)分子長軸と平行な方向での吸光係数が高いもの、又は(3)重合性液晶組成物に対する相溶性又
は溶解性が高いものが好ましく、例えば、アントラキノン類やアゾ類のようにゲスト−ホスト方式の液晶表示素子で用いられる色素を単独で、又は混合して使用することができる。また、二色性色素は重合性基を有していてもよい。
二色性色素の好ましい添加量は、(A)成分および(B)成分の合計重量に対する重量比で0.01〜0.50である。この重量比のより好ましい範囲は0.01〜0.40である。さらに好ましい範囲は0.01〜0.30である。二色性色素の例としては、三井化学ファインから販売されているSI−486、SI−426、SI−483、SI−412、SI−428、長瀬産業から販売されているG−205、G−206、G−207、G−241、G−472、LSB−278、LSB−335等が挙げられる。これらの市販品を用いてもよい。
【0171】
本発明の重合性液晶組成物はそのまま支持基材面に塗布できる。しかしながら、塗工を容易にするために、溶剤が支持基材を侵食しないようであれば重合性液晶組成物を溶剤で希釈してもよい。この溶剤は単独でも使用できるし、2つ以上を混合して使用してもよい。溶剤の例はエステル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤および脂環式炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、およびアセテート系溶剤である。
【0172】
エステル系溶剤の好ましい例は、酢酸アルキル(例:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチルおよび酢酸イソペンチル)、酢酸シクロヘキシル、トリフルオロ酢酸エチル、プロピオン酸アルキル(例:プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルおよびプロピオン酸ブチル)、酪酸アルキル(例:酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチルおよび酪酸プロピル)、マロン酸ジアルキル(例:マロン酸ジエチル)、グリコール酸アルキル(例:グリコール酸メチルおよびグリコール酸エチル)、乳酸アルキル(例:乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸n-プロピル、乳酸ブチルおよび乳酸エチルヘキシル)、モノアセチン
、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンである。
【0173】
アミド系溶剤の好ましい例は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、N−メチルカプロラクタムおよびジメチルイミダゾリジノンである。
【0174】
アルコール系溶剤の好ましい例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール、t−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ブタノール、2−エチルブタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、1−ドデカノール、エチルヘキサノール、3、5、5−トリメチルヘキサノール、n−アミルアルコール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−3−メトキシブタノール、シクロヘキサノールおよびメチルシクロヘキサノールである。
【0175】
エーテル系溶剤の好ましい例は、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビス(2−プロピル)エーテル、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテルおよびテトラヒドロフラン(THF)
である。
【0176】
グリコールモノアルキルエーテル系溶剤の好ましい例は、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例:エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:プロピレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、およびジエチレングリコールメチルエチルエーテルである。
【0177】
芳香族炭化水素系溶剤の好ましい例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、テルペン誘導体(p−サイメン、1,4−シネオール、1,8−シネオール、D−リモネン、D−リモネンオキサイド、p−メンタン、α−ピネン、β―ピネン、γ−テルピネン、ターピノーレンおよびテトラリンである。ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤の好ましい例はクロロベンゼンである。脂肪族炭化水素系溶剤の好ましい例は、ヘキサンおよびヘプタンである。ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤の好ましい例は、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンである。脂環式炭化水素系溶剤の好ましい例は、シクロヘキサン、メチルシクロへキサンおよびデカリンである。
【0178】
ケトン系溶剤の好ましい例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、およびメチルプロピルケトンである。
【0179】
アセテート系溶剤の好ましい例は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、および1−メトキシ−2−プロピルアセテートである。
【0180】
重合性液晶化合物の溶解性の観点からは、アミド系溶剤、芳香族炭化水素系、ケトン系溶剤の使用が好ましく、溶剤の沸点を考慮すると、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤の併用も好ましい。溶剤の選択に関して特に制限はないが、支持基材としてプラスチック基板を用いる場合は、基板の変形を防ぐために乾燥温度を低くすること、および溶剤が基板を侵食しないようにする必要がある。このような場合に好ましく用いられる溶剤としては、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、アセテート系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤である。
【0181】
重合性液晶組成物の溶液における溶剤の割合は、この溶液の全重量を基準として、通常0〜95%である。この範囲の下限は支持基材が溶剤による侵食を受ける場合を考慮した
数値である。そしてその上限は、溶液粘度、溶剤コストおよび溶剤を蒸発させる際の時間や熱量といった生産性を考慮した数値である。この割合の好ましい範囲は0〜90%であり、より好ましい範囲は0〜85%である。
【0182】
以下の説明では、重合性液晶組成物を硬化して得られる液晶フィルムを光学異方体と称することがある。光学異方体は、次のようにして形成させることができる。まず、重合性液晶組成物あるいはその溶液を支持基材上に塗布し、加熱・乾燥させて塗膜を形成させる。つぎに、その塗膜に光照射して重合性液晶組成物を重合させ、塗膜中の組成物が液晶状態で形成するネマチック配向を固定化する。
使用できる支持基材は、ガラスおよびプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムの例は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース、トリアセチルセルロースおよびその部分鹸化物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、又はシクロオレフィン系樹脂などのフィルムである。
【0183】
シクロオレフィン系樹脂としてノルボルネン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。これらの中で、不飽和結合を有さないか、又は不飽和結合が水素添加されたものが好適に用いられる。例えば、1種又は2種以上のノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体の水素添加物、1種又は2種以上のノルボルネン系モノマーの付加(共)重合体、ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマー(エチレン、α−オレフィン等)との付加共重合体、ノルボルネン系モノマーとシクロオレフィン系モノマー(シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等)との付加共重合体、及び、これらの変性物等が挙げられる。具体的には、ZEONEX(登録商標)、ZEONOR(登録商標、日本ゼオン社製)、ARTON(JSR社製)、TOPAS(登録商標、チコナ社製)、APEL(登録商標、三井化学社製)、エスシーナ(登録商標、積水化学工業社製)、OPTOREZ(日立化成社製)等が挙げられる。
【0184】
これらのプラスチックフィルムは、一軸延伸フィルムであってよく、二軸延伸フィルムであってもよい。これらのプラスチックフィルムは、例えば、コロナ処理やプラズマ処理などの親水化処理、あるいは疎水化処理などの表面処理を施したものであってもよい。親水化処理の方法は特に制限はないが、コロナ処理あるいはプラズマ処理が好ましく、特に好ましい方法はプラズマ処理である。プラズマ処理は、特開2002−226616号公報、特開2002−121648号公報などに記載されている方法を用いてもよい。
また、液晶フィルムとプラスチックフィルムとの密着性を改良するためにアンカーコート層を形成させてもよい。このようなアンカーコート層は液晶フィルムとプラスチックフィルムの密着性を高めるものであれば、無機系、有機系のいずれの材料であっても何ら問題はない。また、プラスチックフィルムは積層フィルムであってもよい。プラスチックフィルムに代えて、表面にスリット状の溝をつけたアルミニウム、鉄、銅などの金属基板や、表面をスリット状にエッチング加工したアルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラスなどのガラス基板などを用いることもできる。
【0185】
これらのガラス、プラスチックフィルム等の支持基材には、重合性液晶組成物の塗膜形成に先立って、ラビングによる物理的、機械的な表面処理が行われてもよい。あるいは、偏光UVによる光配向処理が行われてもよい。チルト配向を形成させる場合、ラビングによる表面処理は支持基材に直接施されていてもよく、または支持基材上に予め配向膜を設
け、その配向膜にラビング処理を施してもよい。
配向膜の例は、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコールなどである。特に好ましい配向膜はポリイミドである。チルト角の平均チルト角を上げるためにポリイミドに側鎖成分を導入した配向膜を利用してもよい。ラビング処理には任意の方法が採用できるが、通常はレーヨン、綿、ポリアミドなどの素材からなるラビング布を金属ロールなどに捲き付け、支持基材または配向膜に接した状態でロールを回転させながら移動させる方法、ロールを固定したまま支持基材側を移動させる方法などが採用される。支持基材の種類によっては、その表面に酸化ケイ素を傾斜蒸着して配向能を付与することもできる。光配向膜を用いる場合、チルト配向を形成させる場合は偏光UVを照射する際に基材を斜めにするとよい。
【0186】
重合性液晶組成物またはその溶液を塗工する際、均一な膜厚を得るための塗布方法の例は、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法およびダイコート法である。特に、塗布時に重合性液晶組成物にせん断応力がかかるワイヤーバーコート法等を、ラビング等による基材の表面処理を行わないで液晶材料の配向を制御する場合に用いてもよい。
【0187】
重合性液晶組成物の溶液を調製する際には、重合性液晶組成物を溶解させる能力を有し、更に本発明の重合性液晶組成物から得られるチルト配向層の均一配向性を維持し、支持基材への溶剤ダメージが最小となる溶剤から選択される。このような溶剤の例は、重合性液晶組成物の溶液を調製する際に用いられる前記の溶剤である。そして、その使用量も重合性液晶組成物の均一配向性を維持し、支持基材への溶剤ダメージが最小となる範囲内で設定される。
【0188】
本発明の重合性液晶組成物あるいはその溶液を塗工するときには、溶剤を含む場合は塗布後に溶剤を除去して、支持基材上に膜厚の均一な重合性液晶層、即ち重合性液晶組成物の層を形成させる。溶剤除去の条件は特に限定されない。溶剤がおおむね除去され、重合性液晶組成物の塗膜の流動性がなくなるまで乾燥すればよい。室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けなどを利用して溶剤を除去することができる。
重合性液晶組成物に用いる化合物の種類と組成比によっては、塗膜を乾燥する過程で、塗膜中の重合性液晶組成物のネマチック配向が完了していることがある。従って、乾燥工程を経た塗膜は、後述する熱処理工程を経由することなく、重合工程に供することができる。
【0189】
塗膜を熱処理する際の温度および時間、光照射に用いられる光の波長、光源から照射する光の量などは、重合性液晶組成物に用いる化合物の種類と組成比、光重合開始剤の添加の有無やその添加量などによって、好ましい範囲が異なる。従って、以下に説明する塗膜の熱処理の温度および時間、光照射に用いられる光の波長、および光源から照射する光の量についての条件は、あくまでもおよその範囲を示すものである。
【0190】
塗膜の熱処理は、溶剤が除去され重合性液晶組成物の均一配向性が得られる条件で行うことが好ましい。熱処理方法の一例は、前記重合性液晶組成物がネマチック液晶相を示す温度まで塗膜を加温して、塗膜中の重合性液晶組成物にネマチック配向を形成させる方法である。重合性液晶組成物がネマチック液晶相を示す温度範囲内で、塗膜の温度を変化させることによってネマチック配向を形成させてもよい。この方法は、上記温度範囲の高温域まで塗膜を加温することによって塗膜中にネマチック配向を概ね完成させ、次いで温度を下げることによってさらに秩序だった配向にする方法である。重合性液晶組成物の均一配向性が得られる条件によっては、重合性液晶組成物の液晶相から等方相への転移点温度
(透明点温度)以上で行ってもよい。この方法は、等方相となる温度まで塗膜を加熱し、その後、ネマチック配向となる温度まで冷却することにより、さらに秩序だった配向にする方法である。
上記のどちらの熱処理方法を採用する場合でも、熱処理温度は、通常、室温(25℃)〜150℃である。この温度の好ましい範囲は室温(25℃)〜140℃であり、より好ましい範囲は室温(25℃)〜130℃、さらに好ましい範囲は室温(25℃)〜120℃である。
熱処理時間は、通常5秒〜2時間である。この時間の好ましい範囲は10秒〜40分であり、より好ましい範囲は20秒〜20分である。重合性液晶組成物からなる層の温度を所定の温度まで上昇させるためには、熱処理時間を5秒以上にすることが好ましい。生産性を低下させないためには、熱処理時間を2時間以内にすることが好ましい。このようにして本発明のチルト配向した重合性液晶層が得られる。
【0191】
重合性液晶層中に形成された重合性液晶化合物のネマチック配向状態は、光照射により重合することによって固定化される。光照射に用いられる光の波長は特に限定されない。電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)などを利用することができる。通常は、紫外線または可視光線を用いればよい。波長の範囲は、通常150〜500nmである。好ましい範囲は250〜450nmであり、より好ましい範囲は300〜400nmである。光源の例は、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などである。光源の好ましい例は、メタルハライドランプやキセノンランプ、超高圧水銀ランプおよび高圧水銀ランプである。光源と重合性液晶層との間にフィルターなどを設置して特定の波長領域のみを通すことにより、照射光源の波長領域を選択してもよい。
光源から照射する光量は、通常2〜5000mJ/cm
2である。光量の好ましい範囲
は10〜3000mJ/cm
2であり、より好ましい範囲は100〜2000mJ/cm
2である。光照射時の温度条件は、上記の熱処理温度と同様に設定されることが好ましい。また、重合環境の雰囲気は窒素雰囲気、不活性ガス雰囲気、空気雰囲気のいずれでもよいが、窒素雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気が硬化性を向上させる観点から好ましい。
【0192】
本発明の重合性液晶層およびこれを光や熱などにより重合させた光学異方体を様々な光学素子に用いる場合、または液晶表示装置に用いる光学補償素子として適用する場合には、厚み方向におけるチルト角の分布の制御が極めて重要となる。
【0193】
チルト角を制御する方法の一つは、重合性液晶組成物に用いる液晶性化合物の種類や組成比などを調整する方法である。この重合性液晶化合物に他の成分を添加することによっても、チルト角を制御することができる。光学異方体のチルト角は、重合性液晶組成物中の溶剤の種類や溶質濃度、他の成分の1つとして加える界面活性剤の種類や添加量などによっても制御することができる。
支持基材または重合体被膜の種類やラビング条件、重合性液晶組成物の塗膜の乾燥条件や熱処理条件などによっても、光学異方体のチルト角を制御することができる。支持基材としてガラスを用い、配向膜としてポリイミド系のラビング配向膜を用いる場合は、乾燥温度を重合性液晶が等方相に変化する温度(透明点)付近あるいは透明点温度以上まで加熱することで配向欠陥を低減できる場合がある。また、配向後の光重合工程での照射雰囲気や照射時の温度なども光学異方体のチルト角に影響を与える。即ち、光学異方体の製造プロセスにおけるほとんど全ての条件が多少なりともチルト角に影響を与えると考えてよい。
従って、重合性液晶組成物の最適化と共に、光学異方体の製造プロセスの諸条件を適宜選択することにより、任意のチルト角にすることができる。
【0194】
チルト配向は、液晶分子の配向状態が基材から離れるにしたがって、基材面に対して平行から垂直に立ちあがっている状態をいう。チルト配向におけるチルト角(傾き角)の例は5度から85度である。この配向状態は、ラビング処理や光配向処理等の表面処理を行った配向膜上に(A)成分と(B)成分を添加した本発明の重合性液晶組成物の塗膜を支持基材表面に形成させることによって得られる。
本発明においてチルト角を高く制御するためには、(A)成分として式(1−1)で表される化合物および/又は式(1−3)で表される化合物を用いる場合、フルオレンの構造として9−メチルフルオレン(すなわち、W
2およびW
3の一方がメチルで他方が水素である)を用いることが好ましい。式(1−2)で表される化合物を用いる場合は、W
4がメチル、炭素数1〜7のアルキル、アルコキシカルボニル(−COOR
b:R
bは炭素数1〜7の直鎖アルキル)を用いることが好ましい。
一方、式(1−1)で表される化合物、式(1−3)で表される化合物において、W
2およびW
3の両方がメチルである場合、融点が上がる傾向があるため耐熱性が必要な用途に好ましい。
(B)成分としては、式(2−1)で表される化合物を複数種併用して用いてもよい。末端基としてのR
1中のR
cが炭素数1〜10の直鎖アルキルであることが好ましい。より好ましくはR
cが炭素数1〜6の直鎖アルキルであり、R
dが単結合である。また、液晶性と溶媒に対する溶解度の観点から、q1は1が好ましい。
【0195】
チルト配向における配向欠陥を低減させるために界面活性剤を添加してもよい。また、チルト角を高くするために式(3)で表される化合物、式(4)で表される化合物を併用してもよい。
【0196】
光学異方体の厚さは、目的とする素子に応じたレタデーションや光学異方体の複屈折率によって適当な厚さが異なる。従って、その範囲を厳密に決定することはできないが、好ましい光学異方体の厚さは、0.05〜50μmである。そして、より好ましい範囲は0.1〜20μmであり、さらに好ましい範囲は0.5〜10μmである。光学異方体の好ましいヘイズ値は1.5%以下であり、好ましい透過率は80%以上である。より好ましいヘイズ値は1.0%以下であり、より好ましい透過率は95%以上である。透過率については、可視光領域でこれらの条件を満たすことが好ましい。
【0197】
光学異方体は、液晶表示素子(特に、アクティブマトリックス型およびパッシブマトリックス型の液晶表示素子)に適用する光学補償素子として有効である。この光学異方体を光学補償膜として使用するのに適している液晶表示素子の型の例は、IPS型(イン・プレーン・スイッチング)、OCB型(光学的に補償された複屈折)、TN型(ツィステッド・ネマティック)、STN型(スーパー・ツィステッド・ネマティック)、ECB型(電気的に制御された複屈折)、HAN型(ハイブリッド・アラインド・ネマティック)、DAP型(整列相の変形効果)、CSH型(カラー・スーパー・ホメオトロピック)、VAN/VAC型(垂直配向したネマチック/コレステリック)、OMI型(光学モード干渉)、SBE型(超複屈折効果)などである。さらにゲスト−ホスト型、強誘電性型、反強誘電性型などの表示素子用の位相レターダーとして、この光学異方体を使用することもできる。なお、光学異方体に求められるチルト角の厚み方向の分布や厚みなどのパラメーターの最適値は、補償すべき液晶表示素子の種類とその光学パラメーターに強く依存するので、素子の種類によって異なる。
【0198】
光学異方体は、偏光板などと一体化した光学素子としても使用することができ、この場合は液晶セルの外面に配置させられる。しかしながら、光学補償素子としての光学異方体は、セルに充填された液晶への不純物の溶出がないかまたは少ないので、液晶セルの内面に配置させることも可能である。例えば、特許4899828号公報(特開2008−134530号公報)に開示されている方法を応用すれば、光学補償層が液晶セル中に形成
された液晶表示組成を得ることができる。二色性色素を添加した光学異方体は偏光特性を有するので、例えば特許4778192号公報(特表2004−535483号公報)、特開平11−337898号公報、特開平11−101964号公報、国際公開2005−45485号に開示されている方法を応用すれば、可視角度制御部材とすることができる。
【実施例】
【0199】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例における評価法を次に示す。
<重合条件>
窒素雰囲気下において、室温(25℃)で250Wの超高圧水銀灯(ウシオ電機株式会社製)を用いて20mW/cm
2(365nm)の強度の光を30秒間照射。
<液晶配向状態の確認>
クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に得られた光学異方体を狭持して、光学異方体面に垂直方向(傾斜角は0度)から光を照射した。照射の傾斜角を0度から例えば50度に増大させながら透過光の変化を観察した。照射を傾ける方向は、ラビング配向処理方向(液晶の長軸方向)に一致させた。垂直方向からの透過光が最大であり、垂直方向を中心にラビング方向の左右で透過光強度が対称であることが確認された場合には、ホモジニアス配向(
図2参照)であると判断した。ホモジニアス配向では、液晶の配向ベクトルが支持基板と平行であるからである。一方、垂直方向を中心にラビング方向の左右で非対称の変化であることが確認された場合には、この液晶分子の配向ベクトルが支持基板(ガラス)に対して傾いていることを示すため、チルト配向(
図1参照)であると判断した。
【0200】
<偏光解析装置を用いた測定>
シンテック(株)製偏光解析装置(商品名;OPTIPRO)を用いて、光学異方体に550nmの波長の光を照射し、この光の入射角度をフィルム面に対して垂直方向からラビング方向に傾斜させながらレタデーションを測定した。レタデーションはΔn×dで表される。Δnは光学異方性であり、dは重合体フィルムの厚さである。
【0201】
使用した化合物を以下に示す。
【化89】
【0202】
式(1−1−3)で表される化合物は、特開2003−238491号公報(特許4036076号公報)に記載の方法で合成した。
式(1−3−A2)で表されるトランス体の化合物は、特開2012−177087号公報に記載の方法で合成した。
式(2−1−3)で表される化合物は、米国特許4248754号公報に記載の方法と同様にして合成した。
式(5−1−3)で表される化合物は、Macromolecules, 26, 6132-6134(1993) に記載の方法と同様にして合成した。
式(5−1−7)で表される化合物は、Makromol. Chem., 183, 2311-2321 (1982) に記
載の方法と同様にして合成した。
式(6−1−12−1)で表される化合物は、特開2011−246365号公報に記載の方法で合成した。
【0203】
[実施例1]
[重合性液晶組成物(1)の溶液の調製]
化合物(1−1−3):化合物(2−1−3)=50:50の重量比で、これらの化合
物を混合した。この混合物の合計重量に対する重量比で0.05の重合開始剤イルガキュア(登録商標)907、同0.001のイルガノックス(登録商標)1076、同0.002のTEGOFLOW(登録商標)370(ビニル系の界面活性剤)を添加した。その後、シクロペンタノンを加えて、重合性液晶化合物の混合物の濃度が35重量%である重合性液晶組成物(1)の溶液を得た。
【0204】
ガラス基板(松波スライドガラス:S−1112)上に高プレチルト角(OCB配向モード)用ポリアミック酸(リクソンアライナー:PIA−5580 JNC(株)製)を塗布し、80℃で3分間乾燥後、230℃で30分間焼成し、レーヨン製のラビング布でラビング処理した(ラビング処理済み配向膜)。次に、重合性液晶組成物(1)の溶液を、ラビング処理済み配向膜付きガラス基板上にスピンコートにより塗布した。この基板を120℃で2分間加熱、室温で2分間冷却し、溶剤が除去された塗膜を紫外線により窒素気流下で重合させて液晶フィルム(光学異方体)を得た。得られた光学異方体をクロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に入れ、基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがないことを確認し、配向が均一であると判断した。この光学異方体のレタデーションを測定したところ、
図1のような結果であり、非対称であることからチルト配向であり、平均チルト角は33°であることが分かった。
【0205】
[実施例2]
実施例1記載の重合性液晶組成物(1)において、化合物(1−1−3):化合物(2−1−3)=30:70の重量比としたこと以外は、実施例1記載の方法と同様な方法で重合性液晶組成物(2)の溶液を得て、光学異方体を形成した。得られた光学異方体のレタデーションを測定したところ、
図1と同様な傾向であり、平均チルト角は40°であることが分かった。また、得られた光学異方体をクロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に入れ、基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがないことを確認し、配向が均一であると判断した。
【0206】
[実施例3]
実施例1記載の重合性液晶組成物(1)において、化合物(1−1−3):化合物(1−3−A2):化合物(2−1−3)=25:25:50の重量比としたこと以外は、実施例1記載の方法と同様な方法で重合性液晶組成物(3)の溶液を得て、光学異方体を形成した。得られた光学異方体のレタデーションを測定したところ、
図1と同様な傾向であり、平均チルト角は35°であることが分かった。また、得られた光学異方体をクロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に入れ、基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがないことを確認し、配向が均一であると判断した。
【0207】
[実施例4]
化合物(1−1−3):化合物(2−1−3)=57:43の重量比で混合し、この混合物の合計量に対する重量比で0.43の化合物(5−1−3)、同0.0067のTEGOFLOW(登録商標)370(ビニル系の界面活性剤)、同0.05の重合開始剤イルガキュア(登録商標)907、同0.001のイルガノックス(登録商標)1076を添加したこと以外は、実施例1記載の方法と同様な方法で重合性液晶組成物(4)の溶液を得て、光学異方体を形成した。得られた光学異方体のレタデーションを測定したところ、
図1と同様な傾向であり、平均チルト角は33°であることが分かった。また、得られた光学異方体をクロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に入れ、基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがないことを確認し、配向が均一であると判断した。
【0208】
[比較例1]
化合物(1−1−3)に対して、重量比1.00の化合物(5−1−7)、同0.0040のTEGOFLOW(登録商標)370(ビニル系の界面活性剤)、同0.05の重
合開始剤イルガキュア(登録商標)907、同0.001のイルガノックス(登録商標)1076を添加したこと以外は、実施例1記載の方法と同様な方法で重合性液晶組成物(5)の溶液を得て、光学異方体を形成した。得られた光学異方体のレタデーションを測定したところ、
図2のような結果であり、ほぼ左右対称であることから平均チルト角が5°程度と水平配向に近い状態となったことが分かった。
【0209】
上記の結果から、化合物(2−1−3)のような末端基としてエステル部位を有する重合性液晶化合物を用いることで、チルト角を有する光学異方体を容易に形成することができる。
【0210】
[実施例5]
化合物(1−1−3):化合物(2−1−3)=37:63の重量比で混合し、この混合物の合計量に対する重量比で0.25の化合物(6−1−12−1)、同0.0063のTEGOFLOW(登録商標)370(ビニル系の界面活性剤)、同0.05の重合開始剤イルガキュア(登録商標)907、同0.001のイルガノックス(登録商標)1076を添加したこと以外は、実施例1記載の方法と同様な方法で重合性液晶組成物(6)の溶液を得て、光学異方体を形成した。得られた光学異方体のレタデーションを測定したところ、
図1と同様な傾向であり、平均チルト角は32°であることが分かった。また、得られた光学異方体をクロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に入れ、基板を暗視野の状態にしたところ光抜けがないことを確認し、配向が均一であると判断した。