(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464644
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】光源装置及びこの光源装置を備えたプロジェクタ
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20190128BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20190128BHJP
F21V 9/00 20180101ALI20190128BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20190128BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20190128BHJP
【FI】
G03B21/14 A
F21S2/00 330
F21V9/00
F21V9/40 200
F21Y115:10
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-202066(P2014-202066)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-71234(P2016-71234A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】宮田 忠明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松尾 英典
(72)【発明者】
【氏名】笹室 岳
【審査官】
村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−522986(JP,A)
【文献】
特開2013−072901(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0085143(US,A1)
【文献】
特開2012−123967(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0140185(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/038434(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00−21/10
G03B21/12−21/13
G03B21/134−21/30
G03B33/00−33/16
H04N5/66−5/74
F21K9/00−9/90
F21S2/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の波長帯域の光を出射する光源と、前記第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域の光を出射する光源とを含む複数の光源と、
前記複数の光源から出射された光を集光する光学レンズとを有し、
前記光学レンズが、
1つの主軸を中心として半径方向に所定の幅を有する同心円状に形成されたレンズ領域を複数有し、
該複数のレンズ領域が、前記第1の波長帯域の光に対して一定の焦点距離を有する第1のレンズ領域と、前記第2の波長帯域の光に対して前記一定の焦点距離を有する第2のレンズ領域と、を含み、
前記第1のレンズ領域と第2のレンズ領域とは、それぞれ領域内において非球面係数が異なる光源装置。
【請求項2】
前記光学レンズは、
前記第1のレンズ領域は、前記主軸を中心として半径方向に所定の幅を有する同心円状に形成され、前記第1の波長帯域の光に対して所定の焦点距離を有し、
前記第2のレンズ領域は、前記主軸を中心として、前記第1のレンズ領域よりも外周側において半径方向に所定の幅を有する同心円状に形成され、前記第2の波長帯域の光に対して前記第1のレンズ領域の焦点と同じ焦点を有する請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第1のレンズ領域は円形レンズであり、
前記第2のレンズ領域は、前記円形レンズの周囲に形成された円環状レンズまたは円環状レンズの一部を切り落とした形状のレンズである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第1のレンズ領域の境界と、前記第2のレンズ領域の境界とが一致する
ことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記第1のレンズ領域から第2のレンズ領域へ至るまでの表面が段差を有する
ことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記光源は、前記第1の波長帯域の光を出射する第1の光源と、前記第2の波長帯域の光を出射する第2の光源とを有し、
前記第1のレンズ領域を臨む位置に前記第1の波長帯域の光を出射する光源の出射面を配置し、
前記第2のレンズ領域を臨む位置に前記第2の波長帯域の光を出射する光源の出射面を配置した、
ことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載された光源装置。
【請求項7】
前記第1および第2の波長帯域の光を出射する光源が、各々対応するコリメートレンズを有し、
前記光源から出射される光は前記主軸に対し略平行な光である、
ことを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記第1の波長帯域が500〜780nmの波長帯域、前記第2の波長帯域が370〜500nmの波長帯域であって、
複数の前記第1の波長帯域の光を出射する光源を、前記主軸を中心として同心円状に配置し、
複数の前記第2の波長帯域の光を出射する光源を、前記主軸を中心として、前記第1の波長帯域の光を出射する光源よりも外側に同心円状に配置した
ことを特徴とする請求項1から7のうちいずれか一項に記載された光源装置。
【請求項9】
前記光学レンズの前記光源とは反対側において、
前記第2の波長帯域の光を前記第1の波長帯域の光を含む波長帯域の光に変換する蛍光体層を有する
ことを特徴とする請求項1から8のうちいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記第1の波長帯域が370〜500nmの波長帯域、前記第2の波長帯域が500〜780nmの波長帯域であって、
複数の前記第1の波長帯域の光を出射する光源を、前記主軸を中心として同心円状に配置し、
複数の前記第2の波長帯域の光を出射する光源を、前記主軸を中心として、前記第1の波長帯域の光を出射する光源よりも外側に同心円状に配置した
ことを特徴とする請求項1から7のうちいずれか一項に記載された光源装置。
【請求項11】
前記光学レンズの前記光源とは反対側において、
前記第1の波長帯域の光を前記第2の波長帯域の光を含む波長帯域の光に変換する蛍光体層を有する
ことを特徴とする請求項1から7、10のうちいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項12】
同心円状に複数の透過領域が形成された回転ホイールを有し、
前記蛍光体層は、前記複数の透過領域のうちいずれかに形成され、
前記光学レンズは、前記光源から出射された光を、前記回転ホイールに形成された前記複数の透過領域を通過する円周上に集光させる
ことを特徴とする請求項9または11に記載の光源装置。
【請求項13】
前記請求項1から12のうちいずれか一項に記載された光源装置と、
画像データに基づいて、前記光源装置から出射された複数の波長帯域の光を順次変調して画像を形成する光変調手段と、
前記画像を拡大して投射する投射手段と、
を備えたプロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及びこの光源装置を備えたプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、時分割で複数の波長の光を取り出し、取り出された複数の波長の光を順次変調することで画像を形成して投影する時分割式のプロジェクタが普及している。このような時分割式のプロジェクタに用いる光源装置として、例えば、白色光を出力する光源と、複数のカラーフィルタが貼られた回転ホイールとを備えて、光源から出射された白色光を、一定速度で回転する回転ホイールに入射させて、時分割で複数の波長の光(例えば、青、緑、赤色光)を取り出すものが知られている。
【0003】
また、レーザダイオードを始めとする単波長の光を出力する光源により、カラーフィルタの代わりに蛍光体層を有する回転ホイールを用いて、これにレーザダイオード等の光源から出射された単波長の光を入射させることで、時分割で複数の波長の光を取り出す光源装置も提案されている。さらに上述した光源装置の中には、例えば特許文献1に示すように、赤色光および青色光を出射するレーザ光源と、赤色光および青色光を透過させるとともに青色光を励起光として緑色光の蛍光を発生させる機能を有する発光板と、発光板を回転させるホイールモータと、レーザ光源からの出射光を発光板へ導光するとともに発光板からの出射光を外部へと導光する導光光学系とを有するものがある。
【0004】
上述したレーザ光源は、青色レーザ発光素子および赤色レーザ発光素子を各々16個ずつ備え、合計32個のレーザ発光素子を4行8列のマトリクス状に配列している。また、このマトリクス状の配列において、青色レーザ発光素子と赤色レーザ発光素子とは、市松状に、すなわち縦横交互に隣接して配列されている。このようなレーザ光源から出射された赤色光と青色光は、反射ミラーによって集光レンズに向かって反射され、集光された光はさらにダイクロイックミラーおよび集光レンズ群を透過して発光板に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−123967号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された光源装置のように、異なる複数の波長帯域光を出射するレーザ光源を用いる場合、集光レンズを透過するときに色収差が生じるため、波長帯域の違いに応じて焦点距離に差が生じ、発光板の面に形成されるスポット径にズレが生じてしまう場合がある。これにより、例えば発光板に形成した蛍光体に所定の波長帯域の光を照射したときに、所期の明るさの蛍光が得られず、プロジェクタによって投影された映像が暗くなってしまう虞があった。また、上述した色収差を補正するために例えばアクロマートレンズを追加した場合、光源装置の重量やコストが増加するという問題が生じてしまう。
【0007】
従って、本発明の目的は、異なる波長帯域の光を出射する複数の光源を用いた場合であっても、重量やコストを増加させることなく、集光レンズの透過時に色収差を生じにくくすることができる光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る光源装置の1つの実施態様では、少なくとも第1の波長帯域の光を出射する光源と、第2の波長帯域の光を出射する光源とを含む複数の光源と、
前記複数の光源から出射された光を集光する光学レンズとを有し、
前記光学レンズが、
1つの主軸を中心として半径方向に所定の幅を有する同心円状に形成されたレンズ領域を複数有し、
該複数のレンズ領域が、前記第1の波長帯域の光に対して一定の焦点距離を有する第1のレンズ領域と、前記第2の波長帯域の光に対して前記一定の焦点距離を有する第2のレンズ領域と、を含む。
【0009】
上述した構成により、複数の光源から出射された第1および第2の波長帯域の光が、光学レンズを透過すると双方の光の焦点が一致するため、色収差を補正するための手段を別途追加することなく、蛍光体層に形成されるスポット径にズレを生じにくくすることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の実施形態の光源装置は、異なる波長帯域の光を出射する複数の光源を用いた場合であっても、重量やコストを増加させることなく、集光レンズの透過時に色収差を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の光源装置の1つの実施形態を示す模式図である。
【
図2】同光源装置が備える集光レンズの形状を示す外観図である。
【
図3】同光源装置の集光レンズに対するレーザダイオードの配置を示す模式図である。
【
図4】同光源装置における集光レンズの焦点距離について説明するための説明図である。
【
図5】同光源装置が備える回転ホイールの構成を示す模式図である。
【
図6】同光源装置における集光レンズの形状に関する他の実施形態を示す模式図である。
【
図7】本発明のプロジェクタの1つの実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の光源装置及びこの光源装置を備えたプロジェクタについて、以下に図面を用いながら詳細に説明する。まず、
図1を参照して本発明に係る光源装置の一実施形態について説明する。この図に示すように、本実施形態の光源装置1は、大別すると光源10、集光レンズ20、回転ホイール30、モータ40、および受光レンズ50によって構成されている。
【0013】
光源10は、赤色光(第1の波長帯域の光)を出射するレーザダイオード11Rと、青色光(第2の波長帯域の光)を出射するレーザダイオード11Bとを含む複数の光源からなり、異なる複数の波長帯域の光を出射する。ここで、レーザダイオード11Rが出射する光の波長帯域は、575〜780nmであり、レーザダイオード11Bが出射する光の波長帯域は、420〜500nmである。光源10は、レーザダイオード11Rおよび11Bを複数ずつ備えており、集光レンズ20の主軸OAを中心として、主軸OAに近い側に複数のレーザダイオード11Rを、遠い側に複数のレーザダイオード11Bが配置されている。各種レーザダイオード11の配置については、
図3を参照して後に詳しく説明する。レーザダイオード11RおよびBから出射された光は、それぞれに対応するコリメートレンズ12を透過して光学レンズである集光レンズ20へ出射される。
【0014】
なお、本実施形態では、光源としてレーザダイオードを用いているが、代わりにLEDを用いてもよい。また、各レーザダイオードに対応して設けられたコリメートレンズ12は、必要に応じて一部または全てを省略してもよい。
【0015】
集光レンズ20は、光源10から出射された赤色光および青色光が、後述する蛍光体層32R,32Gにおいて所定のスポット径を形成するように、各色の光を集光する。
図2に集光レンズ20の外観形状を示す。この図において(a)は集光レンズ20の断面形状を示す図であり、(b)は集光レンズ20の正面(光が透過する面)を示す図である。
【0016】
図2(b)に示すように、集光レンズ20の正面は円形であり、中心から半径R1の円形領域が第1のレンズ領域LN1になっており、中心から半径R1の距離を内周縁とし、半径R2の距離を外周縁とする円環形状の領域が第2のレンズ領域LN2になっている。ここで、第1のレンズ領域LN1は、半径R1の幅を有する同心円状に形成されたレンズ領域ということもできる。また、第2のレンズ領域LN2は、第1のレンズ領域よりも外周側において半径方向に所定の幅(R2−R1)を有する同心円状に形成されているともいえる。
【0017】
第1および第2のレンズ領域は、一定の波長帯域に対して所定の屈折率を有する同一の材質からなっており、
図2(a)に示す第1のレンズ領域LN1における非球面係数AC1と、第2のレンズ領域LN2における非球面係数AC2とは、互いに異なる値になっている。また、各波長帯域の光は、各々対応するレンズ領域を透過した後(つまり集光レンズ20の光源10とは反対の側)に、回転ホイール30に形成された蛍光体層32Rおよび32Gの表面において、形成されるスポットSPの直径および形成位置が一致するように設定されている。なお、曲率半径r1は、第1の波長帯域の光が透過したときに、焦点距離がf(
図4参照)となる値であり、曲率半径r2は、第2の波長帯域の光が透過したときに、焦点距離がfとなる値である。また、
図2(b)の破線で示すように、第1のレンズ領域LN1の外周縁と、第2のレンズ領域LN2の内周縁とは一致しており、両者は連続的に接続している。
【0018】
なお、
図2に示した集光レンズ20は、1つのレンズにおいて2つのレンズ領域を設けていたが、例えば、同一の材質からなる円形レンズと、円環形状レンズとを組み合わせてもよい。すなわち、円形レンズが第1のレンズ領域LN1に対応し、円環形状レンズが第2のレンズ領域LN2に対応する。そして、円形レンズの直径と、円環形状レンズの内周縁の直径とを同寸法として、円環形状レンズの内周縁に円形レンズを嵌め込む。また、これらレンズは両端をカットされていてもよく、レンズの外形がIカットやDカット形状であってもよい。
【0019】
図3に、集光レンズ20の第1のレンズ領域LN1および第2のレンズ領域LN2に入射する光源10からの出射光を示す。なお、この図ではコリメートレンズ12の図示を省略している。
図3に示すように、本実施形態では、4つのレーザダイオード11Rが、レンズの主軸OAを中心として一点鎖線で示す同心円状に均等間隔で配置され、その外側に、4つのレーザダイオード11Bが、レンズの主軸OAを中心として二点鎖線で示す同心円状に均等間隔で配置されている。赤色光を発光するレーザダイオードよりも青色光を発光するレーザダイオードの方が、青色のほかに蛍光体励起にも光出力を必要とするため、光出力が高く消費電力も大きくなるため、発熱量が多く、レーザダイオード11Bをレーザダイオード11Rよりも外側に配置することで、光源10の冷却がより効果的に行われるようにしている。また、一般に長波長よりも短波長の方が、材料の屈折率が高いため、レンズの曲率半径も大きくでき、よりレンズ作製が容易となる。
【0020】
また、
図3において、4つのレーザダイオード11Bが、レンズの主軸OAを中心として一点鎖線で示す同心円状に均等間隔で配置され、その外側に、4つのレーザダイオード11Rが、レンズの主軸OAを中心として二点鎖線で示す同心円状に均等間隔で配置されていてもよい。この場合、赤色(例えば約620ナノメートル)を蛍光する蛍光体層32Rを回転ホイールに備え、赤色光が蛍光体層に所定の角度範囲内で入射したときは透過し、所定の入射角度範囲外で入射したときは反射する性質の誘電体膜を設けた構成にしてもよい。例えば、そのような誘電体膜を、高角度(例えば45度以上)で入射する光は透過し、低角度(例えば0度〜45度)で入射する光は反射するような角度異存性を有する誘電体膜とすることで、レーザダイオード11Rから誘電体膜に入射する光を透過させ、蛍光体層32Rから誘電体膜に戻る光の多くを反射させることができ、蛍光体層32Rにより波長変換された光を有効に利用することができる点で好ましい。
【0021】
また、レーザダイオード11Rの各出射面は第1のレンズ領域LN1を臨む位置に配置され、レーザダイオード11Bの各出射面は第2のレンズ領域LN2を臨む位置に配置されている。これにより、レーザダイオード11Rおよび11Bから出射された光は、集光レンズ20の主軸OAと平行に出射され、レーザダイオード11Rの出射光は第1のレンズ領域LN1へ入射し、レーザダイオード11Bの出射光は第2のレンズ領域LN2へ入射する。そして、
図4に示す様に、第1のレンズ領域LN1へ入射したレーザダイオード11Rの出射光および第2のレンズ領域LN2へ入射したレーザダイオード11Bの出射光は、いずれも焦点Fを通過する。
【0022】
なお、光源10が有するレーザダイオード11R,11Bの数は、
図3に示した4つに限らず適宜変更してもよい。また、同一円周状に配置された各レーザダイオード間の配置間隔は均等にする必要もない。さらに、レーザダイオード11Rおよび11Bの出射光が、各々、第1のレンズ領域LN1および第2のレンズ領域LN2に入射し、かつ、双方の出射光の焦点が一致するのであれば、各レーザダイオードは必ずしも同一円周状に配置する必要は無く、また、同一円周は1つに限らず2つ以上を形成してもよい。
【0023】
図1に戻り、回転ホイール30は、光を透過させる透明な円板状の部材であり、その中心はモータ40の駆動軸40aに固定されている。ここで、回転ホイール30の素材は、光の透過率が高い素材であれば、ガラス、樹脂、サファイアなどを使用することができる。
図5に回転ホイール30の外観を示す。この図において(a)は光源10と対向する面(以下、「入射面」または「表面」ともいう。)を示し、(b)は、
図1に示す矢印Aの方向から見た回転ホイール30の面、すなわち受光レンズ50と対向する面(以下、「出射面」または「裏面」ともいう。)を示している。また、
図5(a)における破線の円で示すスポットSPは、集光レンズ20によって集光された光源10からの入射光が当たる領域を示している。さらに、
図5(b)における破線の円で示す蛍光領域FLは、光源10からの入射光よって後述する蛍光体層が発光する領域を示している。
【0024】
図5に示すように、回転ホイール30には、同心円状に複数の透過領域が形成されており、具体的には円周方向に三等分された3つの透過領域TR1,TR2,TR3が設けられている。すなわち、透過領域TR1,TR2,TR3は、各々、回転ホイール30の中心を頂点とし、120゜の角度範囲を有する扇形の領域となっている。なお、
図5(a)に示す回転ホイール30の入射面において、半径Rの距離から回転ホイール30の外周縁までの幅W1を有する円環形状の領域を透過領域とし、これを複数の領域に分割してもよい。そして、
図5(a)に示すように、入射側には誘電体膜が形成されている。すなわち、透過領域TR1,TR2,TR3には、各々、第2の波長帯域の光を透過し、その他の波長帯域(第1の波長帯域を含む)の光を反射する誘電体膜31が形成されている。ただし、透過領域TR3については、誘電体膜31を形成せず、全波長帯域の光を透過させてもよい。
【0025】
また、
図5(b)に示すように、回転ホイール30の出射面には回転ホイール30の外周縁に沿って幅W2(誘電体膜の幅W1よりも狭いことが望ましい。)を有する蛍光体層が形成されている。ここで、透過領域TR1には、レーザダイオード11Bから出射された第2の波長帯域の光を、レーザダイオード11Rから出射された光の波長帯域を含む第1の波長帯域の光に変換する蛍光体層32Rが形成されている。また、透過領域TR2には、レーザダイオード11Bから出射された第2の波長帯域の光を、緑色(約500〜560ナノメートルの波長帯域)の光に変換する蛍光体層32Gが形成されている。これに対して、透過領域TR3には蛍光体層が形成されていない。
【0026】
なお、蛍光体層32Rの具体的な材料の一例としては、(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu、CaAlSiN
3:Eu、SrAlSiN
3:Eu、K
2SiF
6:Mnを挙げることができる。また、蛍光体層32Gの具体的な材料の一例としては、β-SiAlON:Eu、Lu
3Al
5O
12等の酸化物系蛍光体を挙げることができる。
【0027】
上述した構成の回転ホイール30に対して光源10の出射光が透過領域TR1へ入射した場合は、レーザダイオード11Rの出射光は誘電体膜31で反射するが、レーザダイオード11Bの出射光は誘電体膜31を透過して、蛍光体層32Rへ入射する。これにより、蛍光体層32Rは赤色の蛍光を発生する。また、光源10の出射光が透過領域TR2へ入射した場合は、レーザダイオード11Rの出射光は誘電体膜31で反射し、レーザダイオード11Bの出射光は誘電体膜31を透過して、蛍光体層32Gへ入射する。これにより、蛍光体層32Gは緑色の蛍光を発生する。さらに、光源10の出射光が透過領域TR3へ入射した場合は、レーザダイオード11Rの出射光は誘電体膜31で反射し、レーザダイオード11Bの出射光は誘電体膜31を透過して、そのまま回転ホイール30から出射される。これにより、回転ホイール30の回転に応じて赤色(蛍光)、緑色(蛍光)および青色(レーザダイオード11Bの出射光)の光が順次出射される。
【0028】
なお、蛍光体層32Rおよび32Gによって発生した蛍光は、回転ホイール30の入射面側(光源10側)にも出射されるが、これらの蛍光は、各々対応する誘電体膜31によって反射されて回転ホイール30の出射面側へ出射される。これにより、蛍光体層で発生した蛍光を、光源装置1の出射光として効率良く利用することができる。
【0029】
また、回転ホイール30の入射面側において、透過領域TR1に形成した誘電体膜31の代わりにARコートを施せば、透過領域TR1へ入射したレーザダイオード11Rの光は、蛍光体層32Rを散乱・反射しつつ透過して回転ホイール30の出射面側へ出射させることもできる。
【0030】
また、光源10からの光が透過領域TR3に入射している途中で、レーザダイオード11Bを消灯し、レーザダイオード11Rを発光させて、透過領域TR3から赤色光を出射させてもよい。この場合、回転ホイール30の入射面側において、透過領域TR3に形成された誘電体膜31の一部を、赤色光の波長帯域を透過させることができる誘電体膜か、またはARコートに置き換える。
【0031】
さらに、透過領域TR3の出射面側に、光を拡散させる拡散面を形成し、レーザダイオード11Bから出射された青色光に、回転ホイール30の回転中に上述した散乱面を透過させて、青色光を動的に拡散させることによってスペックルノイズを低減させてもよい。
【0032】
図1に戻り、モータ40は、ブラシレス直流モータであり、駆動軸40aと集光レンズ20の主軸OAとが平行になるように配置されている。また、駆動軸40aに対して回転ホイール30の面が垂直となるように固定され、再生する動画のフレームレート(1秒当たりのフレーム数。単位は[fps])に基づく回転速度で、
図5の矢印Bに示す方向に回転させる。例えば、60[fps]の動画を再生可能とする場合、回転ホイール30の回転速度は毎秒60回転の整数倍に定めるとよい。受光レンズ50は、コリメートレンズであり、蛍光体層32Rおよび32Gで発生した蛍光を集光して、光源装置1の出射光として出射する。
【0033】
上述した構成の光源装置1においては、光源10から出射されたレーザダイオード11Bおよび11Rの光は集光レンズ20によって集光され、回転ホイール30に照射される。このとき、レーザダイオード11Rの赤色光およびレーザダイオード11Bの青色光は、集光レンズ20の主軸OA上の同じ位置に焦点が形成される。回転ホイール30はモータ40によって
図5の矢印Bの方向に回転しており、集光レンズ20によって集光されたスポットSPが、透過領域TR1上に位置しているときは、レーザダイオード11Rの赤色光は誘電体膜31で反射するが、レーザダイオード11Bの青色光は誘電体膜31を透過して蛍光体層32Rに入射する。これにより、青色光によって蛍光体層32Rが励起されて赤色の蛍光が発生し、受光レンズ50へ出射される。
【0034】
なお、レーザダイオード11Rの赤色光を蛍光体層32Rへ入射させる構成にした場合は、入射した赤色光が蛍光体層32Rを散乱・反射しながら透過して、蛍光体層32Rで生じた赤色の蛍光と共に受光レンズ50へ出射される。この場合、発光効率が低いため出力が不足するが、レーザダイオード11Rから出射される赤色光によって補強することができる。さらに、レーザダイオード11Rから出射した光をレンズ20にて集光するが、集光サイズ(スポットの大きさ)をレーザダイオード11Bと同じ程度とすることで、受光レンズでの光結合効率を高めることができる。この場合、レーザダイオード11Rの赤色光が蛍光体層32Rによって散乱し、回転ホイール30から出射されるときには蛍光体に近い出射角度となるため、集光サイズは小さいほうが好ましい。
【0035】
次に、スポットSPが透過領域TR2上に位置しているときは、誘電体膜31によってレーザダイオード11Bの青色光は透過することができるが、レーザダイオード11Rの赤色光は反射される。これにより、蛍光体層32Gにはレーザダイオード11Bの青色光だけが入射して緑色光が発生し、受光レンズ50へ出射される。このとき、蛍光体層32Gで発生した緑色光の一部は光源10側にも出射されるが、誘電体膜31で反射して受光レンズ50側へ出射される。これにより、蛍光体層32Gで発生した緑色光を、光源装置の出射光として効率良く利用することができる。
【0036】
さらに、スポットSPが透過領域TR3上に位置しているときは、誘電体膜31によってレーザダイオード11Rの赤色光が反射されて回転ホイール30を透過せず、レーザダイオード11Bの青色光のみが回転ホイール30を透過する。そして、回転ホイール30を透過した青色光は、波長帯域を維持したまま受光レンズ50側へ出射される。なお、回転ホイール30の回転中において、スポットSPが透過領域TR2およびTR3上に位置しているときに、レーザダイオード11Rの発光を停止(消灯)するように制御してもよい。
【0037】
以上のように、光源装置1は、回転ホイール30の回転に応じて赤色、緑色、青色の光を順番に、かつ繰り返し出射する。ここで、本実施形態では、複数の光源の波長帯域として青色光と赤色光を採用したが、各々の波長帯域の光に対して同じ焦点距離となる集光レンズを用いれば、これ以外の波長帯域の光を採用してもよい。また、複数の波長帯域の光のうち、一の波長帯域の光によって励起される蛍光体層に加え、他の波長帯域の光によって励起される更なる蛍光体層を回転ホイールに形成してもよい。
【0038】
(レンズの形状に関する他の実施形態)
上述した集光レンズ20の形状は、
図2(a)に示したように、集光レンズ20の断面において、第1のレンズ領域LN1と第2のレンズ領域LN2との境界が連続していた。すなわち、第1のレンズ領域LN1の境界と、第2のレンズ領域LN2の境界とが、段差無く直接的につながっていた。これに対して
図6に示す形状の集光レンズ21は、第1のレンズ領域LN1の境界と、第2のレンズ領域LN2の境界とに段差DLを設けて、第1のレンズ領域LN1の厚み(主軸OA方向の長さ)を減らしている(
図6(a)参照)。なお、
図6において、
図2に示した各部と同じものについては同一の符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0039】
図6に示す集光レンズ21のように、光源装置1に用いる集光レンズを、フレネルレンズのような形状にして、集光レンズの厚みを減らすことにより、光源装置1を小型・軽量化することができる。ただし、各レーザダイオードが入射する面については一様な形状を有していることが好ましい。レーザダイオード間の形状についてはこの限りではない。なお、
図2および
図6に示すように、曲率半径r1とr2との関係は、r1<r2となる。
【0040】
(光源装置1の応用例)
次に
図7を参照して、
図1に示した光源装置1を、いわゆる1チップ方式のDLPプロジェクタにおける光源装置として用いた場合の概略構成について説明する。なお、
図7において、
図1に示した各部と同じものについては同一の符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0041】
図7に示すプロジェクタ100において、光源装置1から出射された光は、光変調手段であるDMD(Digital Micromirror Device)素子110で反射され、投射手段であるレンズ120によって集光されて、スクリーンSに投影される。DMD素子110は、スクリーンSに投影された画像の各画素に相当する微細なミラーをマトリックス状に配列したものであり、各ミラーの角度を変化させてスクリーンSへ出射する光を、マイクロ秒単位でオン/オフすることができる。ここで、ミラーの角度を、光源装置1から出射された光がレンズ120へ反射するようにした場合がオンの状態であり、レンズ120へ反射しないようにした場合がオフの状態である。
【0042】
また、各ミラーをオンにしている時間とオフにしている時間の比率によって、レンズ120へ入射する光の階調を変化させることにより、投影する画像の画像データに基づいた階調表示が可能になる。これにより、光源装置1から順次出射される赤色光、緑色光、青色光の各々に対して、個々のミラーで階調制御を行うことにより、スクリーンSにカラー画像(動画も含む)を投影することができる。レンズ120は、主に投射レンズから構成され、DMD素子110によって形成された画像を、所定の大きさに拡大してスクリーンSに投射する。
【0043】
なお、本実施形態では、光変調手段としてDMD素子を用いているが、これに限られるものではなく、用途に応じて、その他任意の光変調素子を用いることができる。また、本発明に係る光源装置およびこの光源装置を用いたプロジェクタは、上述した実施形態に限られるものではなく、その他の様々な実施形態が本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 光源装置
10 光源
11B,11R レーザダイオード
12 コリメートレンズ
20,21 集光レンズ(光学レンズ)
30 回転ホイール
31 誘電体膜
32R,32G 蛍光体層
40 モータ
40a 駆動軸
50 受光レンズ
100 プロジェクタ
110 DMD素子(光変調手段)
120 レンズ(投射手段)