特許第6464861号(P6464861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464861
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】先端可動カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
   A61M25/092 510
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-60313(P2015-60313)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-179007(P2016-179007A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西澤 健夫
(72)【発明者】
【氏名】大坪 雅人
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−094353(JP,A)
【文献】 実開平02−138215(JP,U)
【文献】 特開2013−192670(JP,A)
【文献】 特開2001−280330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルチューブと、前記カテーテルチューブの近位端側に設けられた操作部とを備えた先端可動カテーテルであって、
前記操作部は、
その中心部に第1貫通穴を有する第1保持部と、
その中心部に前記第1貫通穴に対応する第2貫通穴を有する第2保持部と、
その中心部に前記第1貫通穴および前記第2貫通穴に対応する第3貫通穴を有し、前記第1保持部および前記第2保持部に挟み込まれた状態で、該第1保持部および該第2保持部に回転自在に保持された略円板状の回転操作部材と、
略円柱状の軸部の一端部に前記第2貫通穴よりも大きいフランジ部を、他端部に第1雌ねじ部を有し、該第1雌ねじ部が前記第2貫通穴を介して前記第3貫通穴に挿入された回転軸部材と、
前記第1貫通穴よりも小径の首部の一端部に前記第1貫通穴よりも大きい頭部を、他端部に該第1貫通穴よりも大きい外径を有し、前記第1雌ねじ部に螺合される雄ねじ部を有するノブ部材とを備え、
前記第1貫通穴の内周の少なくとも一部に、前記雄ねじ部をねじ込むことにより前記雄ねじ部が前記第1貫通穴を通過することを可能とするねじ山を有する第2雌ねじ部を設け、前記第2雌ねじ部が、前記第1雌ねじ部の中心軸に対して傾斜した中心軸を有することを特徴とする先端可動カテーテル。
【請求項2】
前記第2雌ねじ部の前記中心軸は、前記ノブ部材の前記雄ねじ部が、前記第2保持部が存在する側と反対側から前記第1貫通穴にねじ込まれたときに、前記ノブ部材の前記頭部が前記カテーテルチューブの遠位端側に傾くように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の先端可動カテーテル。
【請求項3】
前記第1雌ねじ部の外径よりも前記軸部の外径を小径に設定し、
前記第1雌ねじ部に前記軸部と反対側の端部から該軸部まで至るスリット部を設け、
前記第3貫通穴の内周に、前記第1雌ねじ部が該第3貫通穴に挿入される際には前記スリット部を通過し、完全に挿入された状態では前記軸部に位置するように、内側を指向した突起部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の先端可動カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の治療や検査等を行うために用いられる医療用処置具であるカテーテルに関し、特に、先端部を自在に偏向することが可能な先端可動カテーテル(Steerable Catheter)に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔、管腔または血管等を通して、各種の臓器(例えば、心臓)等の目的組織まで挿入されるカテーテル(例えば、電極カテーテル、アブレーションカテーテル、カテーテルシースを含む)においては、その挿入や目的組織への接近の容易化等を図るため、体内に挿入されるカテーテルの遠位端(先端)の向きを、体外に配置されるカテーテルの近位端(基端)側に設けられた操作部を操作することにより偏向できるようにした先端可動カテーテルが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
カテーテルチューブの先端部の偏向すべき部分は、例えば先端に行くにしたがってその硬度が段階的に低く設定されており、その先端に一体的に内挿されたリング(プルリング)の180°対向位置に一対のワイヤのそれぞれの遠位端を接続し、該一対のワイヤのそれぞれの近位端において、一方のワイヤ(第1ワイヤ)を引っ張り、他方のワイヤ(第2ワイヤ)を弛ませることにより、チューブ先端の向きを制御できるようにしている。
【0004】
このようなカテーテルチューブの近位端側に設けられる操作部としては、例えば下記特許文献1に開示されるように、略円板状の回転操作部材を一対の保持部材で挟み込んだ状態で回転自在に保持し、回転操作部材を時計方向または反時計方向に回転させることにより、一方のワイヤを引っ張り、他方のワイヤを緩めるようにしたものが知られている。
【0005】
回転操作部材および一対の保持部材には、回転操作部材の回転中心を中心とする貫通穴が互いに対応するようにそれぞれ形成されている。これらの貫通穴には、略円柱状の軸部の一端部にフランジ部を有し、他端部に雌ねじ部を有する回転軸部材が挿入され、雄ねじ部および頭部を有するノブ部材の該雄ねじ部が回転軸部材の雌ねじ部に螺合される。ノブ部材を回転軸部材に強固にねじ込むことにより、一対の保持部材により回転操作部材が強く挟持されて、該回転軸部材の回転が制限され、したがってカテーテルチューブの先端部の形状が固定される。これと反対に、ノブ部材の回転軸部材に対する螺合を緩めることにより、該回転操作部材の回転の制限が解除されて、カテーテルチューブの先端部の形状を任意に変更し得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3162588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような従来技術によると、ノブ部材は回転軸部材に螺合されることにより、保持されているため、何らかの理由によりノブ部材を緩めすぎてしまった場合には、回転軸部材に対する螺合が解除されてしまい、ノブ部材が脱落する場合があるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、操作部を構成する部品の脱落を防止できる先端可動カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る先端可動カテーテルは、
カテーテルチューブと、前記カテーテルチューブの近位端側に設けられた操作部とを備えた先端可動カテーテルであって、
前記操作部は、
その中心部に第1貫通穴を有する第1保持部と、
その中心部に前記第1貫通穴に対応する第2貫通穴を有する第2保持部と、
その中心部に前記第1貫通穴および前記第2貫通穴に対応する第3貫通穴を有し、前記第1保持部および前記第2保持部に挟み込まれた状態で、該第1保持部および該第2保持部に回転自在に保持された略円板状の回転操作部材と、
略円柱状の軸部の一端部に前記第2貫通穴よりも大きいフランジ部を、他端部に第1雌ねじ部を有し、該第1雌ねじ部が前記第2貫通穴を介して前記第3貫通穴に挿入された回転軸部材と、
前記第1貫通穴よりも小径の首部の一端部に前記第1貫通穴よりも大きい頭部を、他端部に該第1貫通穴よりも大きい外径を有し、前記第1雌ねじ部に螺合される雄ねじ部を有するノブ部材とを備え、
前記第1貫通穴の内周の少なくとも一部に、前記雄ねじ部をねじ込むことにより前記雄ねじ部が前記第1貫通穴を通過することを可能とするねじ山を有する第2雌ねじ部を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る先端可動カテーテルにおいて、
前記第2雌ねじ部は、前記第1雌ねじ部の中心軸に対して傾斜した中心軸を有するようにすることができる。
【0011】
本発明に係る先端可動カテーテルにおいて、
前記第2雌ねじ部の前記中心軸は、前記ノブ部材の前記雄ねじ部が、前記第2保持部が存在する側と反対側から前記第1貫通穴にねじ込まれたときに、前記ノブ部材の前記頭部が前記カテーテルチューブの遠位端側に傾くように傾斜させて設けることができる。
【0012】
本発明に係る先端可動カテーテルにおいて、
前記第1雌ねじ部の外径よりも前記軸部の外径を小径に設定し、
前記第1雌ねじ部に前記軸部と反対側の端部から該軸部まで至るスリット部を設け、
前記第3貫通穴の内周に、前記第1雌ねじ部が該第3貫通穴に挿入される際には前記スリット部を通過し、完全に挿入された状態では前記軸部に位置するように、内側を指向した突起部を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の先端可動カテーテルによれば、何らかの理由によりノブ部材を緩めすぎてしまい、回転軸部材に対する螺合が解除されてしまった場合であっても、第2保持部の第2貫通穴よりも雄ねじ部の外径が大きいため、ノブ部材が操作部(第1保持部)から脱落することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の先端可動カテーテルの外観構成を示す平面図である。
図2図1のA−A線に沿った断面図である。
図3】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのグリップ部および操作部の構成を分解して示す側面図である。
図4】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのグリップ表部材の構成を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのグリップ裏部材の構成を示す平面図である。
図6】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのグリップ表部材の保持部の構成を示す断面図ある。
図7】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのグリップ裏部材の保持部の構成を示す断面図ある。
図8】本発明の実施形態の先端可動カテーテルの操作部の構成を示す平面図である。
図9】本発明の実施形態の先端可動カテーテルの操作部の構成を示す側面図である。
図10】本発明の実施形態の先端可動カテーテルの所定角度回転した場合における操作部の側面図である。
図11】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのノブ部材の構成を示す正面図である。
図12】本発明の実施形態の先端可動カテーテルの回転軸部材の構成を示す正面図である。
図13】本発明の実施形態の先端可動カテーテルの回転軸部材の構成を示す側面図である。
図14】本発明の実施形態の先端可動カテーテルの回転軸部材の構成を示す平面図である。
図15】本発明の実施形態の先端可動カテーテルの回転軸部材の取付時の手順を示す一部断面図である。
図16】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのノブ部材の取付時の手順を示す一部断面図(その1)である。
図17】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのノブ部材の取付時の手順を示す一部断面図(その2)である。
図18】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのノブ部材の取付時の手順を示す一部断面図(その3)である。
図19】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのノブ部材の取付時の手順を示す一部断面図(その4)である。
図20】本発明の実施形態の先端可動カテーテルのノブ部材の取付時の手順を示す一部断面図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。本実施形態の先端可動カテーテルとしてのカテーテルシース(先端可動シース)は、例えば、カテーテルアブレーションを行う際に、心電を検出するための電極カテーテルや患部を焼灼するためのアブレーションカテーテル等に先行して挿入され、これらの電極カテーテルやアブレーションカテーテル等を案内するカテーテルである。以下では、本発明が適用される先端可動カテーテルとして、カテーテルシースを例に説明するが、電極カテーテルやアブレーションカテーテル、その他の先端可動カテーテルにも本発明を適用することができる。
【0016】
なお、カテーテルアブレーションとは、心臓に生じる不整脈を治療するための治療法であり、その先端部に高周波電極を有するアブレーションカテーテルを血管を経由して心臓内の不整脈の原因となっている心筋組織まで挿入し、該心筋組織またはその近傍を60〜70℃程度で焼灼して凝固壊死せしめ、不整脈の回路を遮断する治療法である。
【0017】
まず、図1図2および図3を参照する。カテーテルシース1は、カテーテルチューブとしてのシース本体2と、操作部3、グリップ部4、一対のワイヤ5a,5b、ノブ部材6および回転軸部材7とを概略備えて構成されている。
【0018】
シース本体2は中空のチューブからなり、図示は省略しているが、例えば網状のステンレス等からなるブレード層および複数の樹脂層を含む多層チューブが用いられる。シース本体2の遠位端側の一部はその向きが任意に偏向可能な偏向部21となっており、偏向部21はその余の部分よりも硬度が低く(柔軟に)設定されており、さらに偏向部21においてはその先端にいくにしたがって徐々にまたは段階的に硬度が低くなるように設定されている。なお、シース本体2の材質は、可撓性を備えるものであれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーであることが好ましく、例えば、ポリエーテルブロックアミド共重合体などのポリアミド系エラストマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルなどが用いられる。
【0019】
シース本体2の近位端側に取り付けられた操作部3およびグリップ部4には、シース本体2の近位端側の部分が挿通される挿通孔が形成されていて、グリップ部4の近位端には、シースハブ49aが取り付けられている。シースハブ49aは内腔を有していて、シースハブ49aの近位端側にはグリップ部4内のシース本体2が、シースハブ49aの内腔とシース本体2のメインルーメン22とが連通するように取り付けられている。また、シースハブ49aの遠位端側には、止血弁を備えたカテーテル挿入口が形成されている。カテーテルシース1の使用時(処置時)には、上述した電極カテーテルやアブレーションカテーテルがシースハブ49aのカテーテル挿入口から挿入され、シース本体2のメインルーメン22に案内されて、それぞれの先端部が処置すべき心筋組織まで導かれる。また、シースハブ49aの側部には、側注管が形成されていて、その側注管にはチューブ49bを介して三方活栓49cが取り付けられている。三方活栓49cには、例えばシリンジなどを取り付けて、体内の血液を吸引したり、体内に薬液を送り込んだりすることができる。
【0020】
シース本体2の厚肉内には、メインルーメン22に略平行する一対のサブルーメン23a,23bが形成されている。サブルーメン23a,23bは、互いに180度対向した位置に形成されており、これらのサブルーメン23a,23b内には、ステンレス等の金属からなる第1ワイヤ5aおよび第2ワイヤ5bがそれぞれ挿通されている。
【0021】
シース本体2の遠位端(偏向部21の先端近傍)には、円環状のプルリング(リング部材)24がメインルーメン22内に内挿されるかたちで一体的に取り付けられており、プルリング24の180度対向位置には、第1ワイヤ5aおよび第2ワイヤ5bの遠位端が接続固定されている。
【0022】
第1ワイヤ5aおよび第2ワイヤ5bの近位端は、シース本体2の近位端側に設けられた操作部3の内部においてシース本体2に設けられた側孔から引き出されて、操作部3(後述する回転操作部材31)にそれぞれ接続されている。操作部3はグリップ部4の先端(遠位端)側に設けられた保持部42(42a,42b)に保持されている。
【0023】
グリップ部4は、図3図5に示すように、互いに略対称形状を有するグリップ表部材4aおよびグリップ裏部材4bからなり、操作部3を保持部42(42a,42b)においてグリップ表部材4aおよびグリップ裏部材4bで挟み込むかたちで回転自在に保持した状態で互いに一体化されている。シース本体2はグリップ部4の先端部43(43a,43b)の先端開口から内部に導かれる。なお、グリップ部4の材質は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミドなどが用いられる。
【0024】
グリップ表部材4aの保持部(第1保持部)42aには、図4および図6に示すように、その外側(図6において上側)の略中央部に略円形に凹陥した円形凹陥部45aが形成されており、その内側(図6において下側)の略中央部に略円形に陥没した円形凹陥部48aが形成されている。円形凹陥部45aおよび円形凹陥部48aの中央部には、貫通穴(第1貫通穴)46aが形成されている。円形凹陥部45aの先端部43a側の一部には、ノブ受け部47aが形成されている。
【0025】
保持部42aの貫通穴46aの内面の基端部側(先端部43aと反対側)には、貫通穴46aの中心軸AX1に対して、グリップ部4の軸方向に沿って角度θ1だけ傾斜した軸AX2を中心軸としたねじ山を有する部分雌ねじ部(第2雌ねじ部)44aが形成されている。(すなわち、部分雌ねじ部(第2雌ねじ部)44aの中心軸AX2は、後述するノブ部材6の雄ねじ部65が、後述する保持部(第2保持部)42bが存在する側と反対側から貫通穴(第1貫通穴)46aにねじ込まれたときに、ノブ部材6の頭部がシース本体2(カテーテルチューブ)の遠位端側に傾くように傾斜している。)部分雌ねじ部44aのねじ山の頂点角度は、本実施形態では25度としている。但し、部分雌ねじ部44aは、このピッチより小さくても、大きくてもよい。また、部分雌ねじ部44aに代えて、保持部42aの貫通穴46aに、1ピッチ以上のねじ山を有する雌ねじ部としてもよい。なお、ここでは部分雌ねじ部44aのねじ山の稜線は当然に円弧状となっているものとするが、近似的に直線状としてもよい。なお、角度θ1は、本実施形態では25度に設定している。
【0026】
グリップ裏部材4bの保持部(第2保持部)42bには、図5および図7に示すように、その外側(図7において下側)の略中央部に略円形に凹陥した円形凹陥部45bが形成されており、その内側(図7において上側)の略中央部に略円形に凹陥した円形凹陥部48bが形成されている。円形凹陥部45bおよび円形凹陥部48bの中央部には、グリップ表部材4aの貫通穴46aに対応して、貫通穴(第2貫通穴)46bが形成されている。保持部42bの貫通穴46bの中心軸は、保持部42aの貫通穴46aの中心軸AX1に略一致している。
【0027】
操作部3は、図8図10に示すように、固定操作部材38と、固定操作部材38に回転可能に支持された回転操作部材31とを概略備えて構成されている。固定操作部材38は、シース本体2が挿通される前方連通部38aおよび後方連通部(不図示)を備えている。また、固定操作部材38は、上下(図9および図10において上下方向)に貫通する略円形の貫通部(不図示)を備えている。
【0028】
回転操作部材31は、第1回転操作部材31aおよび第2回転操作部材31bから構成されている。第1回転操作部材31aは、略円板状の円板部と、左右に突出する一対の分割把持部32a,32aとを有している。分割把持部32a,32aには後述する第2回転操作部材31bの分割把持部32b,32bに形成された凸部に嵌合する凹部(不図示)がそれぞれ形成されている。第1回転操作部材31aの一方の面(図9および図10において上面)には、円形に陥没する円形陥没部33が形成されており、円形陥没部33には、一対の窓部34,34が形成されている。
【0029】
第1回転操作部材31aの中心部には貫通穴(第3貫通穴)35が形成されている。回転操作部材31の一方の面(図9および図10において上面)には、貫通穴35の周囲において該一方の面側(図9および図10において上側)に突出する環状突出部36aが形成されている。
【0030】
第2回転操作部材31bは、略円板状の円板部と、左右に突出する一対の分割把持部32b,32bとを有している。分割把持部32bには第1回転操作部材31aの分割把持部32a,32aに形成された凹部に嵌合する凸部(不図示)がそれぞれ形成されている。
【0031】
第2回転操作部材31bの中心部には貫通穴(第3貫通穴)35が形成されている。回転操作部材31bの該一方の面(図9および図10において下面)には、貫通穴35の周囲において下側(図9および図10において下側)に突出する環状突出部36bが形成されている。
【0032】
回転操作部材31(第2回転操作部材31b)の貫通穴35の内周には、その180度対向位置にそれぞれ中心に向かって突出する突起部37,37が形成されている。これらの突起部37,37の幅は、後述する雌ねじ部73に形成されたスリット部74の幅よりも僅かに小さいに寸法に設定されている。これらの突起部37,37は、特に限定されないが、本実施形態では、図8に示すように、回転操作部材31の一対の把持部32,32の中心を通る線L1に対して、突起部37,37の中心を通る線L2のなす角度θ2が48度となるように形成されている。なお、突起部37の数は、本実施形態のように2つが最適であるが、1つでもよい。
【0033】
固定操作部材38の一方の面(図9および図10において上面)側に第1回転操作部材31aを配置し、他方の面(図9および図10において下面)側に第2回転操作部材31bを配置して、第1回転操作部材31aと第2回転操作部材31bとで固定操作部材38を挟み込み、第1回転操作部材31aの分割把持部32aに設けられた凹部と第2回転操作部材31bの分割把持部32bに設けられた凸部とを嵌合させることにより、回転操作部材31a,31bが固定操作部材38に回転可能に取り付けられる。
【0034】
このように構成された操作部3がグリップ表部材4aの保持部42aとグリップ裏部材4bの保持部42bとで挟み込まれて一体化された際には、固定操作部材38はグリップ表部材4aおよびグリップ裏部材4bに固定されるとともに、環状突出部36aが保持部42aの円形凹陥部48aに僅かな間隙をもって遊嵌され、環状突出部36bが保持部42bの円形凹陥部48bに僅かな間隙をもって遊嵌されることにより、回転操作部材31がグリップ部4(保持部42a,42b)に対して回転自在に保持されるようになっている。
【0035】
なお、回転操作部材31(第1回転操作部材31a、第2回転操作部材31b)および固定操作部材38の材質は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミドなどが用いられる。
【0036】
操作部3がグリップ表部材4aの保持部42aとグリップ裏部材4bの保持部42bとで挟み込まれて組み上げられた状態で、先端部43(43a,43b)の先端開口から導入されたシース本体2の近位端側は、固定操作部材38の前方連通部38aおよび後方連通部を通過して、グリップ部4の近位端にあるシースハブ4aまで導かれる。
【0037】
ノブ部材6は、図11に示すように、首部64の一端部に頭部を、他端部に雄ねじ部65を備えている。頭部は、つまみ部61、円板部62および円形突出部63から構成されている。首部64は、保持部42aの貫通穴46aよりも小径に設定されているとともに、後述する回転軸部材7の雌ねじ部73の内径よりも小径に設定されている。円形突出部63は、保持部42aの貫通穴46aよりも大きい外径を有しており、保持部42aの円形凹陥部45aに僅かな間隙をもって遊嵌可能となっている。雄ねじ部65は、保持部42aの貫通穴46aよりも僅かに大きい外径を有し、後述する回転軸部材7の雌ねじ部74に螺合されるねじ山を有している。ノブ部材6の材質としては、例えばアルミニウムやステンレスが用いられる。
【0038】
回転軸部材7は、図12図14に示すように、略円柱状の軸部71の一端部にフランジ部72を、他端部に雌ねじ部(第1雌ねじ部)73を有している。軸部71は、保持部42bの貫通穴46bよりも小径に形成されているとともに、回転操作部材31の貫通穴35に設けられた一対の突起部37,37の互いの対向する間隔よりも僅かに小さい外径に設定されている。
【0039】
フランジ部72は、略円板状に形成されており、その外径が保持部42bの貫通穴46bよりも大径に設定されているとともに、保持部42bの円形凹陥部45bに僅かな間隙をもって遊嵌するように形成されている。雌ねじ部73は略円筒形状に形成され、その外径は、軸部71よりも大径であり、保持部42bの貫通穴46bよりも僅かに小径であり、回転操作部材31の貫通穴35に僅かな間隙をもって遊嵌するように形成されている。
【0040】
雌ねじ部73の内周にはノブ部材6の雄ねじ部64が螺合されるねじ山が形成されている。雌ねじ部73には、組み上げられた際に、シース本体2の近位端側の部分が通過するためのスリット部74が形成されている。このスリット部74の幅は、シース本体2の外形を考慮して、これが通過し得る程度の寸法に設定されている。回転軸部材7の材質としては、ノブ部材6と同様に、例えばアルミニウムやステンレスが用いられる。
【0041】
上述したグリップ部4を組み立てる際には、図3に示した状態から、操作部3をグリップ表部材4aの保持部42aとグリップ裏部材4bの保持部42bとで挟み込んで、操作部3をグリップ部4に保持した状態で一体化する。
【0042】
その後、図15に示すように、グリップ部4bの貫通穴46bから、回転軸部材7の雌ねじ部73側を挿入する。このとき、回転操作部材31を、図1に示したニュートラル状態(回転操作部材31の一対の把持部32,32の中心を結ぶ線がグリップ部4の軸方向に対して略直交するように設定した状態)から45度程度時計方向に回転した状態とし(すなわち、一対の突起部37,37の中心を結ぶ線L2がシース本体2の延在方向に略一致した状態とし)、この状態で、回転操作部材31の貫通穴35に形成された一対の突起部37,37が回転軸部材7の雌ねじ部73のスリット部74を通過するとともに、シース本体2が該スリット部74内を通過するように、回転軸部材7の中心軸周りの回転位置を調整して、雌ねじ部73を回転操作部材31の貫通穴35に挿入し、回転軸部材7のフランジ部72を保持部42bの円形凹陥部45bに位置させる。
【0043】
回転軸部材7をこの状態まで挿入すると、回転操作部材31の突起部37,37は、雌ねじ部73のスリット部74を通過して、軸部71の一端部(図15において上端部)に至るので、この状態で、回転操作部材31を反時計方向に回転させると、突起部37,37が雌ねじ部73の軸部71側の端面(段差面)に干渉し、回転軸部材7が保持部42b(回転操作部材31)から抜け出せない状態となる。
【0044】
次いで、ノブ部材6を保持部42に装着する。まず、図16に示すように、ノブ部材6の中心軸AX3を保持部42aの中心軸AX1に対して先端部43a側に傾けつつ、円形突出部63の先端部43側の一部をノブ受け部47aに位置させ、雄ねじ部65の先端部43a側の一部を貫通穴46aに斜めに挿入する。この状態では、図17に示すように、ノブ部材6の中心軸AX3は、保持部42aの部分雌ねじ部44aの中心軸AX2に略一致した状態となる。また、この状態では、図17に示すように、雄ねじ部65の基端部側(先端部43と反対側)の一部は、保持部42aの部分雌ねじ部44aに干渉し、このままではこれ以上の挿入はできない。
【0045】
この状態から、ノブ部材6を回転(ここでは時計方向とする)させて、雄ねじ部65を部分雌ねじ部44aにねじ込むと、図18に示すように、雄ねじ部65が部分雌ねじ部44aに螺合し、雄ねじ部65の基端部側の一部が回転に応じて貫通穴46a内に入り込み、ノブ部材7の中心軸AX3の保持部42aの中心軸AX1に対する傾斜角度が徐々に小さくなる。ノブ部材7をさらに回転させると、図19に示すように、雄ねじ部65の基端部側の一部が部分雌ねじ部44aを通過し、雄ねじ部65の全体が貫通穴46aを通過して、円形凹陥部48aに至り、ノブ部材6の中心軸AX3が保持部42aの中心軸AX1に略一致する。この状態では、貫通穴46aの内径よりも、雄ねじ部65の外径の方が大きいため、ノブ部材6は保持部42aから抜け出せない状態となる。
【0046】
この状態で、雄ねじ部65の先端が回転軸部材7の雌ねじ部73の先端に至るので、ノブ部材6を回転(ここでは時計方向とする)させて、雄ねじ部65を雌ねじ部73に螺合させ、図20に示すように、ノブ部材6の円形突出部63が保持部42aの円形凹陥部45aの底面に当接するまでねじ込み、組み立てを完了する。
【0047】
図1に示したニュートラル状態では、第1ワイヤ5aおよび第2ワイヤ5bが両者とも無張力状態(または略均等に緩く緊張した状態)となり、シース2の先端の偏向部21は、同図に示す通り、直線状に延びた状態となる。
【0048】
このニュートラル状態から、回転操作部材31を第1方向(図1において矢印B1の方向)に回転させると、この回転に伴い、第1ワイヤ5aが引っ張られ、第2ワイヤ5bが緩められることにより、先端の偏向部21が図1において矢印B3に示すように偏向される。
【0049】
これと反対に、回転操作部材31を第2方向(図1において矢印B2方向)に回転させると、第1ワイヤ5aが緩められ、第2ワイヤ5bが引っ張られることにより、先端の偏向部21が図1において矢印B4に示すように偏向される。
【0050】
シース2の先端の偏向部21を偏向させた状態で、偏向部21の形状を固定したい場合には、つまみ部61を把持してノブ部材6を時計方向に回転させることにより、図20に示すように、ノブ部材6の雄ねじ部65が回転軸部材7の雌ねじ部73にねじ込まれ、ノブ部材6の円形突出部63と回転軸部材7のフランジ部72とにより、保持部42aと保持部42bとが互いに近接する方向に押圧され、これに伴い、回転操作部材31が保持部42aと保持部42bとで強固に挟持される。その結果、回転操作部材31が現在位置で固定され、シース2の先端の偏向部21の形状が固定される。
【0051】
シース2の先端の偏向部21の形状の固定を解除したい場合(偏向状態を調整したい場合)には、上記と反対に、つまみ部61を把持してノブ部材6を反時計方向に回転させることにより、ノブ部材6の雄ねじ部65の回転軸部材7の雌ねじ部73に対するねじ込みが緩み、保持部42aと保持部42bとの近接する方向への押圧が解除され、回転操作部材31が保持部42aと保持部42bとにより緩く挟持された状態となる。その結果、回転操作部材31が回転し得る状態となり、シース2の先端の偏向部21の形状の固定が解除されて、把持部32を把持して回転操作部材31を回転操作することにより偏向部21の偏向状態を調整することができる。
【0052】
本実施形態によると、ノブ部材6の雄ねじ部65の外径は、保持部42aの貫通穴46aよりも大きいため、ノブ部材6を緩めすぎて、ノブ部材6の雄ねじ部65の回転軸部材7の雌ねじ部73に対する螺合が完全に解除されてしまった場合でも、ノブ部材6が保持部42(グリップ部4)から脱落することがない。したがって、このような場合であっても、ノブ部材6の雄ねじ部65を回転軸部材7の雌ねじ部73に再度ねじ込むことにより、元の状態に容易に戻すことができる。なお、ノブ部材6を保持部42から取り外すことが必要となった場合には、図16図19に示した手順と逆の手順を行うことにより、これを行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、部分雌ねじ部44aの中心軸AX2が、貫通穴46aの中心軸AX1に対して傾斜しているので、ノブ部材6を緩めすぎて、ノブ部材6の雄ねじ部65の回転軸部材7の雌ねじ部73に対する螺合が完全に解除された後に、それに気が付かずにノブ部材6をさらに回転させてしまった場合であっても、ノブ部材6の雄ねじ部65が部分雌ねじ部44を通過してしまう可能性が小さく、ノブ部材6が保持部42(グリップ部4)から脱落する可能性が小さくなっている。
【0054】
また、本実施形態では、部分雌ねじ部44aの中心軸AX2が、ノブ部材6の雄ねじ部65が、保持部42bが存在する側と反対側から貫通穴46aにねじ込まれたときに、ノブ部材6の頭部がシース本体2の遠位端側に傾くように傾斜しているので、ノブ部材6が保持部42(グリップ部4)から脱落する可能性がさらに小さくなっている。なぜなら、カテーテルシース1の使用者(医師)は、シース2の汚染を防止するためにシース2を下側に向けないように配慮しながらカテーテルシース1を取り扱うので、重力によってノブ部材6が脱落する方向に傾く可能性が小さくなるからである。
【0055】
また、ノブ部材6を緩めすぎて、ノブ部材6の雄ねじ部65の回転軸部材7の雌ねじ部73に対する螺合が完全に解除されてしまった場合でも、回転軸部材7は、保持部42bの貫通穴46bおよび回転操作部材31の貫通穴35に挿入された状態で、回転操作部材31の貫通穴35に設けられた一対の突起部37,37により、雌ねじ部73の軸部71側の端面(段差面)において軸方向に移動できないように係止されているため、回転軸部材7が保持部42から脱落する可能性も小さくなっている。
【0056】
なお、回転軸部材7を保持部42から取り外すことが必要となった場合には、回転軸部材7の雌ねじ部73のスリット部74が突起部37,37に対応する位置となるように、回転操作部材31または回転軸部材7を回転させることにより、回転軸部材7を引き抜くことができる。
【0057】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0058】
例えば、上述した実施形態では、部分雌ねじ部44aの中心軸AX2は、ノブ部材6の雄ねじ部65が、保持部(第2保持部)42bが存在する側と反対側から貫通穴(第1貫通穴)46aにねじ込まれたときに、ノブ部材6の頭部がシース本体2(カテーテルチューブ)の遠位端側に傾くように設定したが、これに限定されず、同様のときに、ノブ部材6の頭部がシース本体2(カテーテルチューブ)の近位端側に傾くように設定し、あるいは他の方向に傾くように設定してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…カテーテルシース
2…シース本体
21…偏向部
22…メインルーメン
3…操作部
31…回転操作部材
31a…第1回転操作部材
31b…第2回転操作部材
32…把持部
35…貫通穴(第3貫通穴)
36a,36b…環状突出部
37…突起部
38…固定操作部材
4…グリップ部
42(42a,42b)…保持部(第1保持部、第2保持部)
43(43a,43b)…先端部
44a…部分雌ねじ部(第2雌ねじ部)
45a,45b…円形凹陥部
46a,46b…貫通穴(第1貫通穴、第2貫通穴)
47a…ノブ受け部
48a,48b…円形凹陥部
5a,5b…ワイヤ
6…ノブ部材
61…つまみ部
62…円板部
63…円形突出部
64…首部
65…雄ねじ部
7…回転軸部材
71…軸部
72…フランジ部
73…雌ねじ部(第1雌ねじ部)
74…スリット部
図1
図2
図3
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