(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6464937
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンター用インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20190128BHJP
C09D 11/328 20140101ALI20190128BHJP
C09B 67/44 20060101ALI20190128BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20190128BHJP
C07C 233/36 20060101ALI20190128BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20190128BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20190128BHJP
C09B 45/16 20060101ALN20190128BHJP
【FI】
C09D11/38
C09D11/328
C09B67/44 A
C09B67/20 K
C09B67/20 L
C07C233/36
B41J2/01 501
B41M5/00 120
!C09B45/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-121132(P2015-121132)
(22)【出願日】2015年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-2264(P2017-2264A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】山田 智和
(72)【発明者】
【氏名】尾島 治
(72)【発明者】
【氏名】荒川 博道
【審査官】
菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−60661(JP,A)
【文献】
特開2010−275397(JP,A)
【文献】
特開平10−158550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/38
B41J 2/01
B41M 5/00
C07C 233/36
C09B 67/20
C09B 67/44
C09D 11/328
C09B 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機溶剤可溶性染料、バインダー樹脂、アルコール系有機溶剤を含有するインクジェットプリンター用インク組成物において、一般式(1)で示されるアミドアミン化合物を0.1〜10重量%含むことを特徴とするインクジェットプリンター用インク組成物。
【化1】
(1)
(一般式(1)において、R
1は炭素原子数1〜17の直鎖または分岐していてもよいアルキル基を表し、R
2及びR
3はメチル基を表し、nは1〜8の整数を表す。)
【請求項2】
前記アルコール系有機溶剤が、炭素原子数4以下の低級アルコールである請求項1に記載のインクジェットプリンター用インク組成物。
【請求項3】
前記有機溶剤可溶性染料がアゾ系クロム錯塩染料である請求項1または2に記載のインクジェットプリンター用インク組成物。
【請求項4】
コンティニュアス記録方式用である請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェットプリンター用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンティニュアス記録方式用に使用するインクジェットプリンター用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、ノズルよりインクを吐出して被記録媒体に付着させる方式であり、該ノズルと被記録媒体が非接触状態にあるため、曲面や凹凸した不規則な形状を有する表面に対して、良好な印刷を行うことができる。
これらインクジェット記録方式としては、たとえばコンティニュアス方式(荷電制御方式)、静電吸引方式、圧電素子を用いてインクに機械的振動又は変位を与えるピエゾ方式、インクを加熱して発泡させそのときの圧力を利用するサーマル方式等が知られている。この中で主にマーキング用途に使用されるコンティニアス方式によるインクジェット記録用インクは、液媒体として有機溶剤を使用しており、色材として有機溶剤に可溶な染料(溶剤可溶性染料、または水不溶性染料ともいう)を、記録媒体にインクを定着させるためのバインダー樹脂を含む。
【0003】
通常インクジェットプリンター用インク組成物には、安全衛生上問題がないこと、耐水性に優れること、乾燥したインク皮膜の再溶解性に優れること、プリンターの使用環境温度(特に低温域)でも安定した溶解度や吐出安定性を保てること、等が要求される。
例えば、インクの吐出口で乾燥固化したインク皮膜がインクに再溶解できずに凝集物として析出すると、吐出口が目詰まりしたり、吐出口での目詰まり防止のためにインクジェットプリンターのインク流路に設置されているフィルターを目詰まりさせて吐出不能となってしまう。従ってインクに使用する染料やバインダー樹脂は、インク媒体である有機溶剤にできるだけ容易に溶解し、再溶解性に優れたものを選定する必要がある。
また、プリンターの使用環境温度は一定ではなく、場合によっては冬場0℃以下の環境もありうる。物質の溶解度は温度により影響を受けることから、有機溶剤に溶解した染料やバインダー樹脂も低温環境では一部析出してしまうことがある。このようにインクの一部が不溶化すると、粘度等インク物性が変化して吐出が不安定となってしまう。従ってインク原料は、使用環境温度、特に溶解性の低下する低温環境下でも溶解安定性の良好な材料を選定する必要がある。
その他、耐水性の良好な印刷皮膜を要求される場合は、水に不溶あるいは難溶であり,できるだけ水との親和性の低い材料を選定する必要がある。
【0004】
従来コンティニュアス方式のインクジェットプリンター用のインクとしては、有機溶剤の主成分としてメチルエチルケトンを使用したものが主流であり、金属、ガラス、各種プラスチックヘの密着性、印刷皮膜の耐水性に優れたインクが得られる(例えば特許文献1)。メチルエチルケトンは極性が中程度であるため、前記再溶解性や溶解安定性、印刷皮膜の耐水性を満足するようなインク材料の選定は比較的容易であった。しかしながらメチルエチルケトン等のケトン系溶剤は、毒性が強く、安全衛生上問題がある。
【0005】
これに対し、ケトン系溶剤を使用せず低級アルコール系溶剤を使用するコンティニュアス方式のインクジェットプリンター用のインクが提案されている(例えば特許文献2参照)。低級アルコール系溶剤では溶解する染料の種類に限りがあることから、文献2ではエステル系溶剤を溶解助剤として使用している。しかしながら該インクであっても、特に低温で長時間保管した場合、十分な溶解安定性が得られずに吐出不良が発生する場合があった。
【0006】
染料のアルコール系溶剤に対する溶解性を向上させるため、筆記具用油性インク分野では、アミドアミン化合物を添加することが知られている(例えば特許文献3)。しかしながら特許文献3には、低温における溶解安定性やインクジェットインクに適用した場合の知見はなんら記載されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−72236号公報
【特許文献2】特開2002−60661号公報
【特許文献3】特開2003−292863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、安全性が高く、特に低温環境下に置かれた後でも再溶解性や溶解安定性に優れたインクジェットプリンター用インク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、低級アルコール系有機溶剤を主溶剤とし、印刷皮膜の優れた耐水性の発現に不可欠な有機溶剤可溶性染料を色材として使用し、且つ該有機溶剤可溶性染料の溶解安定剤として、特定構造のアミドアミン化合物を併用することにより、有機溶剤可溶性染料の特に低温環境下に置かれた後の再溶解性や溶解安定性が改善され、安全性に優れたインクジェットプリンター用インク組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、少なくとも有機溶剤可溶性染料、バインダー樹脂、アルコール系有機溶剤を含有するインクジェットプリンター用インク組成物において、一般式(1)で示されるアミドアミン化合物を0.1〜10重量%含むインクジェットプリンター用インク組成物を提供する。
【0011】
【化1】
(1)
(一般式(1)において、R
1は炭素原子数1〜17の直鎖または分岐していてもよいアルキル基を表し、R
2及びR
3はメチル基を表し、nは1〜8の整数を表す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明により、安全性が高く、特に低温環境下に置かれた後でも再溶解性や溶解安定性に優れたインクジェットプリンター用インク組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(有機溶剤可溶性染料)
本発明において、有機溶剤可溶性染料とは、有機溶剤に可溶な染料を指す。該染料は逆に水への溶解度が低いことから水不溶性染料と称されることもある。本願においては、インクの媒体となる有機溶剤(好ましくはアルコール系有機溶剤)に可溶で且つ印字後の印刷皮膜が所望の耐水性を発現できるような水に対して低い溶解性を有しておれば特に限定なく使用することができる。目安としては、有機溶剤として後述の炭素原子数が4以下の低級アルコールに易溶解であるような染料が好ましい。このような有機溶剤可溶性染料として金属を含む有機溶剤可溶性染料が挙げられる。
【0014】
有機溶剤可溶性染料等の例としては、例えばC.I.ソルベントブラック22、27、29、34、43、45、C.I.アシッドバイオレット66、C.I.ソルベントオレンジ62、C.I.ソルベントレッド8、89、91、92、122,124、127、C.I.ソルベントイエロー19、21、83、83:1、62、79、等が挙げられ、印刷皮膜の耐水性、耐光性等の観点から、アゾ系クロム錯塩染料が好ましい。炭素原子数が4以下の低級アルコールに可溶で水に難溶もしくは不溶なアゾ系クロム錯塩染料としては特に限定はないが、例えばC.I.ソルベントブラック27、29、43、C.I.ソルベントレッド91、122、C.I.ソルベントイエロー21,等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
有機溶剤可溶性染料のインク組成物中の含有量は、印刷物に十分な濃度を与える点から、インク組成物全量に対し4〜10重量%、特に5〜8重量%が好ましい。
【0015】
(バインダー樹脂)
本発明で使用するバインダーとしての樹脂は,前記炭素原子数が4以下の低級アルコールに可溶で、低温での溶解安定性の良好なものであれば全て使用できる。具体的にはスチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ロジンマレイン酸樹脂、ケトン樹脂、セルロース系樹脂、ブチラール樹脂、ロジンエステル等が挙げられるが,これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂は1種又は2種類以上混合して用いることもできる。これらの樹脂の、本発明のインクジェットプリンター用インク組成物中の含有量は、インクに適度な粘度を与える点,および印刷皮膜に良好な耐摩耗性,耐水性等の皮膜性能を与える点からインク全量に対し5〜15重量%、特に7〜10重量%が好ましい。また、皮膜形成性が不十分である場合には、最低造膜温度のより低いバインダー樹脂を用いることも出来るが、バインダー樹脂用可塑剤を併用することも出来る。可塑剤としては、例えばトルエンスルホンアミド、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、ジオクチルアジペート等が挙げられる。
【0016】
(アルコール系有機溶剤)
本発明のインク組成物の媒体である有機溶剤としては、アルコール系有機溶剤を使用する。
本発明で使用するアルコール系有機溶剤は、中でも炭素原子数が4以下の低級アルコールがなお好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールが挙げられる。本発明においては、これらを1種又は2種以上混合して用いることができる。複数種混合して使用する場合は、炭素原子数4以上の低級アルコール中のエタノール含量が60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが特に好ましい。
【0017】
また、前記アルコール系有機溶剤は、インクの電気電導度を高めるためにインク全量に対しエタノール含有量を60重量%以上、特に65重量%以上とすることが好ましい。このとき、精製水を添加して濃度を調整することができる。また、エタノールを85.5重量%含有する混合溶剤が変性アルコールという名称で販売されており、これを用いることもできる。
【0018】
(一般式(1)で示されるアミドアミン化合物)
本発明においては、一般式(1)で示されるアミドアミン化合物をインク全量に対し0.1〜10重量%含むことが特徴である。
【0020】
一般式(1)において、R
1は炭素原子数1〜17の直鎖または分岐していてもよいアルキル基を表す。また、R
2及びR
3はメチル基を表し、nは1〜8の整数を表す。
具体的には、前記アルキル基R
1は、炭素原子数が大きい場合には溶媒に溶解しにくくなり、それ自身が不溶化したり、インキ中の他の組成物を不溶化してしまうため、炭素原子数が17以下となることが好ましい。より具体的には炭素原子数が2〜17であることが好ましい。
【0021】
一般式(1)において、R
2及びR
3はメチル基であることが必須である。本発明においてはエチル基等の炭素原子数が2以上のアルキル基であると、低温環境下に置かれた後の再溶解性や溶解安定性に劣ってしまう。これは定かではないが、R
2及びR
3がメチル基であると染料中の窒素原子と適度な親和性が保たれるが、R
2及びR
3が長鎖になるほど染料中の窒素原子への親和性を低下させてしまうのではと推定している。
【0022】
前記アミドアミン化合物は、前記一般式(1)で示される構造のうち1種もしくは複数種を混合して使用することができる。また前記アミドアミン化合物は、インキ全量に対し0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の範囲で使用する。0.1重量%未満では充分な析出抑制効果を発揮できず、10重量%を越えて添加した場合、インク粘度が増加しノズルからのインクの吐出が不安定化したり、あるいは印刷対象物とインクとの接着性の低下や印刷皮膜の強度が低下するなどの問題が生じることがある。
【0023】
一般式(1)で示されるアミドアミン化合物は、前記有機溶剤可溶性染料の有機溶剤に対する溶解性、特に低温時の溶解安定性を高め、インクの保管時や、インクジェットプリンターの設置環境でインクが低温に曝される際、前記有機溶剤可溶性染料や前記有機溶剤可溶性染料とインクに使用されている他の材料との相互作用により生じる析出物等の発生を抑制する効果がある。この効果の理由については定かではないが、アミン構造部分が、有機溶剤可溶性染料分子のアゾ骨格部分に吸着し、アルキルアミド部分が有機溶剤への親和性を有することで、有機溶剤可溶性染料の溶解性が低下しても、アミドアミンが有機溶剤可溶性染料分子の凝集に対する障害となり、析出を防止していると推定される。
【0024】
(その他の添加物 溶解助剤)
本発明においては、前記アミドアミン化合物を使用することで低温保存時に安定なインクを得ることができるが、その効果をさらに高める目的でエステル系溶剤を併用することができる。エステル系溶剤としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアルキレート、カルボン酸エステル、アルコキシカルボン酸エステル等が好ましい。プロピレングリコールモノアルキルエーテルアルキレートの、モノアルキルエーテルを構成するアルキル基の炭素原子数及びアルキレートを構成するアルキル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。該アルキル基は直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。このうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等がさらにより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0025】
カルボン酸エステルとしては、カルボン酸残基を構成するアシル基の炭素原子数が2〜7であり、酸素原子に結合する基が炭素原子数1〜6のアルキル基であることが好ましい。該アシル基は直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。このうち、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸ヘキシル等がより好ましく、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸ヘキシル等がさらにより好ましく、プロピオン酸エチルが特に好ましい。アルコキシカルボン酸エステルは、カルボン酸残基の炭素原子に結合する水素原子の1個以上がアルコキシ基で置換されたものであり、アルコキシ基を構成するアルキル基の炭素原子数が1〜6であり、カルボン酸残基を構成するアシル基の炭素原子数が2〜7であり、酸素原子に結合する基が炭素原子数1〜6のアルキル基であることが好ましい。該アルキル基は直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。このうち、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロポキシプロピオン酸メチル、ブトキシプロピオン酸メチル、イソブトキシプロピオン酸エチル、ペンチルオキシプロピオン酸ペンチル、ヘキシルオキシプロピオン酸ヘキシル等がより好ましく、エトキシプロピオン酸エチルが特に好ましい。これらのエステル系溶剤を1種又は2種以上用いることができる。これらのエステル系溶剤の含有量は、低温での有機溶剤可溶性染料の溶解安定性の点から、有機溶剤可溶性染料の含有重量に対し50重量%以上、特に60重量%以上であることが好ましい。
【0026】
本発明のインクジェットプリンター用インク組成物は、前記有機溶剤可溶性染料、前記バインダー樹脂、炭低級アルコール系有機溶剤を含有し、かつケトン系溶剤を実質的に含有しないものである。実質的に含有しないとは、人体への安全衛生上問題を与えない程度含有することは許容する意味である。本発明においてケトン系溶剤は0.1%以下とすることが好ましく、全く含有しないことが特に好ましい。
【0027】
(導電性付与剤)
本発明のインクジェットプリンター用インク組成物をコンティニュアス方式に使用する場合は、導電性付与剤を併用する。本発明に使用できる導電性付与剤としては、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸アンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラメチルアンモニウム等が好ましい
【0028】
これら導電性付与剤の使用量は特に限定なく通常知られた範囲内で使用できる。一般的に導電性付与剤を除いたインキ組成物の全量100重量部に対して0.2〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜7重量部であり、さらに好ましくは0.3〜1重量部である。
【0029】
(その他添加剤)
本発明のインクジェットプリンター用インク組成物は、得られるインク皮膜の耐摩耗性,耐転写性,耐スクラッチ性等の印字皮膜性能を高めるために、シリコーン系化合物、フッ素系化合物等であって、本発明に使用する混合溶剤に可溶な化合物を添加することができる。
シリコーン系化合物としては、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンレジン等が挙げられる。具体的には、信越化学工業製のKF−56(シリコーンオイル)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製のTSF−410(高級脂肪酸変性シリコーンオイル)、TSF−4446、4460(ポリエーテル変性シリコーンオイル)、TSF−4710(アミノ変性シリコーンオイル)、信越化学工業製のKP−316、360A(シリコーンレジン)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明においては、これらを1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0030】
フッ素系化合物としては、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。具体的には、DIC社製のメガファックF−470、F−173、F−177等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明においては、これらを1種又は2種類以上混合して用いることができる。また、上記のシリコーン系化合物と混合して用いることもできる。
【0031】
本発明のインクジェットプリンター用インク組成物は、各原料を混合し、十分に撹拌、溶解した後、必要に応じて濾過することによって調製することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記述中の「部」は重量部を表す。
【0033】
(実施例1)
表1の配合割合に従ってコンティニュアス記録方式用ジェットプリンター用インク組成物を調製し、十分に撹拌、溶解した後、この溶液を0.45μmのポアサイズのメンブランフィルターを用いて濾過することによってコンティニュアス方式用のジェットプリンター用インク組成物を得た。なお、表1中の原料の配合量は重量部を表す。
【0034】
(実施例2)
実施例1と同様に、表1の配合割合に従ってコンティニュアス記録方式用ジェットプリンター用インク組成物を調製し、十分に撹拌、溶解した後、この溶液を0.45μmのポアサイズのメンブランフィルターを用いて濾過することによってコンティニュアス方式用のジェットプリンター用インク組成物を得た。
【0035】
【表1】
【0036】
以下に表1で記載された原料を説明する。
ジョンクリル67:BASF社製 スチレンアクリル樹脂
YSポリスターN125:ヤスハラケミカル製 テルペンフェノール樹脂
DBS:ジブチルセバケート
TSF−4460:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製ポリエーテル変性シリコーンオイル
KF−56:信越化学工業製 シリコーンオイル
IPA:イソプロピルアルコール
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DEGMEE:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
アミドアミンA:ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド
アミドアミンB:ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド
【0037】
(比較例1〜3)
実施例1と同様に、表2の配合割合に従ってコンティニュアス記録方式用ジェットプリンター用インク組成物を調製し、十分に撹拌、溶解した後、この溶液を0.45μmのポアサイズのメンブランフィルターを用いて濾過することによってコンティニュアス方式用のジェットプリンター用インク組成物を得た。
【0038】
【表2】
【0039】
(試験例1 インク粘度の測定)
実施例1〜2、及び比較例1〜3で得たインクの粘度を、東機産業株式会社製 E型粘度計TV−20でコーン型ローターを用いて測定した。測定温度は20℃で実施した。その測定結果を、実施例1、2については表1、比較例1〜3については表2に示す。
【0040】
(試験例2 再溶解性試験 低温保存後ろ過残渣試験)
実施例1〜2、及び比較例1〜3で得たインク30gを、−5℃×1週間の保存試験を実施し、室温(約23℃)に3時間放置後、ポアサイズ0.6μmのメンブレンフィルターで吸引濾過し、メンブレンフィルター上のろ過残渣物にソルミックスAP−7(日本アルコール販売製 変性アルコール:エタノール/IPA/ノルマルプロパノール混合溶液)を注ぎ洗浄した後、メンブレンフィルター上の濾過残渣物の残存状態を観察した。
その時の評価基準を下記に示す。
ろ過残渣判定基準
○:濾過残渣物は無い
△:濾過残渣物が数個ある。
×:濾過残渣物が多数ある。
その測定結果を、実施例1、2については表1、比較例1〜3については表2に示す。
【0041】
(試験例3 溶解安定性試験)
(株)日立産機システム製のコンティニュアス方式のインクジェットプリンターを用い、実施例1〜2及び比較例1〜3のインクを−5℃の環境下で1週間保存した。該インクを室温に3時間放置後、普通紙に印刷を行った。
この結果,実施例1、2のインクは鮮明な印刷画像が得られ、吐出安定性も良好であった。これは、インク温度が−5℃の低温域から室温まで変化しても、インクは安定であることを示している。
これに対し、比較例1〜3のインクは印刷乱れが発生した。これはインク温度が−5℃の低温域から室温まで変化した際、有機溶剤に溶解した染料やバインダー樹脂が一部析出したと考えられる。
【0042】
記の結果より、有機溶剤可溶性染料と一般式(1)で示されるアミドアミン化合物、及びエタノール系有機溶剤を含有する本発明のインク組成物は、長期間低温保存した後も、再溶解性や溶解安定性に優れていた。
一方、一般式(1)で表されるアミドアミン化合物を含まないインク(比較例1)、一般式(1)で表されるアミドアミン化合物ではない、R
2及びR
3がエチル基であるアミドアミン化合物を使用したインクでは、長期間低温保存した後の再溶解性や溶解安定性は劣る結果となった。