特許第6465101号(P6465101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465101
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】透明粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20180101AFI20190128BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20190128BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J153/02
   C09J11/06
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-505216(P2016-505216)
(86)(22)【出願日】2015年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2015055121
(87)【国際公開番号】WO2015129653
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-37797(P2014-37797)
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】石黒 淳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小原 禎二
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/176258(WO,A1)
【文献】 特開2013−224431(JP,A)
【文献】 特開2001−037927(JP,A)
【文献】 特開2013−136672(JP,A)
【文献】 特開2001−040315(JP,A)
【文献】 特開2011−236365(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113883(WO,A1)
【文献】 特開2010−235772(JP,A)
【文献】 特開平08−067860(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/013631(WO,A1)
【文献】 特表2004−518770(JP,A)
【文献】 特表2001−504519(JP,A)
【文献】 米国特許第10005924(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が20:80〜60:40であるブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とする樹脂組成物[F]からなり、25℃における貯蔵弾性率が1×10〜1×10Paである透明粘着シート。
【請求項2】
樹脂組成物[F]が、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して数平均分子量300〜5000の炭化水素系重合体[G]1〜50重量部を配合してなる樹脂組成物[F]である請求項1記載の透明粘着シート。
【請求項3】
樹脂組成物[F]が、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して粘着付与剤[H]1〜50重量部を配合してなる樹脂組成物[F]である請求項1〜2記載の透明粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの光学部材(被着体)を貼り合せ固定する際に用いられる両面粘着性を有する透明粘着シートに関し、更に詳しくは、リワーク性と接着性に優れた透明粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、券売機、銀行の端末等の電子機器に用いられる表示装置では、液晶表示パネル、有機EL表示パネル等の表示パネルから一定の空隙(空気層)を設けて、タッチパネルや透明保護板を配置した構造が採用されている。しかしながら、この空隙を有する構造(例えば、表示パネルと透明保護板との間、表示パネルとタッチパネルとの間、あるいはタッチパネルと透明保護板との間に、空隙を有する構造)の場合、タッチパネルや透明保護板と空気層との屈折率差に起因して光の反射損失が大きく、良好な視認性が得られない場合がある。そのため、透明な光硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を空隙に充填して硬化する方法や、透明粘着シート等により空隙を充填する方法により、視認性を向上させると共に、保護パネルの強度を高め、衝撃で破損し破片が飛散するのを防止している(例えば特許文献1〜8)。
【0003】
また、上記の透明な充填材には、例えば、透明な充填材を介してタッチパネルを表示装置の表示面に貼着固定した後、貼り合わせ不良等の不具合があった場合は、タッチパネル及び/又は表示装置から透明な充填材を剥がし、それらを再度使用するリワーク性が求められる。
【0004】
しかし、光硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を充填し硬化する方法には、被着体との接着力が大きくなるため、リワーク性が得られないという不具合がある。また、樹脂が硬化するときの硬化収縮によって表示パネルが変形したり、硬化性樹脂の充填時に気泡が混入しやすいという問題がある。
【0005】
一方、透明粘着シートで充填する方法は、表示パネルの変形は回避可能であり、リワーク性も確保できる。
しかしながら、従来の透明粘着シートで充填する方法は、容易なリワーク性と強固な粘着性の両立について十分に満足できるものとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−174417号公報
【特許文献2】特開2005−55641号公報
【特許文献3】特開2007−297582号公報
【特許文献4】特開2008−281997号公報(US2010/0003425A1)
【特許文献5】特開2003−342542号公報
【特許文献6】特開2009−185124号公報
【特許文献7】特開2012−193264号公報
【特許文献8】特開2013−227427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、2つの光学部材(被着体)を貼着固定する際に用いられる両面粘着性を有する透明粘着シートとして、リワーク性と接着性に優れた透明粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、アルコキシシリル基が導入されてなる特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とし、25℃における貯蔵弾性率が特定の範囲内である樹脂組成物[F]からなる透明粘着シートは、低温で被着体に粘着させた状態では良好なリワーク性を有し、その後高温で加熱処理することにより強固な接着性を発現する、リワーク性と接着性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
かくして本発明によれば、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が20:80〜60:40であるブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とする樹脂組成物[F]からなり、25℃における貯蔵弾性率が1×10〜1×10Paである透明粘着シートが提供される。
また、この透明粘着シートは、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して数平均分子量300〜5000の炭化水素系重合体[G]1〜60重量部を配合してなる樹脂組成物[F]からなるものであることが好ましい。
また、この透明粘着シートは、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して粘着付与剤[H]1〜50重量部を配合してなる樹脂組成物[F]からなるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2つの光学部材(被着体)を貼着固定する際に用いられる両面粘着性を有する透明粘着シートとして、リワーク性と接着性に優れた透明粘着シートを提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の透明粘着シートは、下記ブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化して得られるブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とし、25℃における貯蔵弾性率が特定の範囲内である樹脂組成物[F]からなる透明粘着シートである。
【0012】
1.ブロック共重合体[C]
ブロック共重合体[C]は、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有するブロック共重合体である。
【0013】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が上記範囲にあると、本発明の透明粘着性シートは耐熱性が高くなるため好ましい。
【0014】
また、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分としては、鎖状共役ジエン由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。その含有量は、重合体ブロック[A]に対して、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である 複数の重合体ブロック[A]同士は、上記の範囲を満足するものであれば、互いに同じであっても、相異なっていても良い。
【0015】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量が上記範囲にあると、本発明の透明粘着シートは柔軟性が良好になるため好ましい。
【0016】
また、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。その含有量は、重合体ブロック[B]に対して、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が増加すると、透明粘着シートの低温での柔軟性が低下し易くなる。
重合体ブロック[B]が複数有る場合には、重合体ブロック[B]同士は、上記の範囲を満足するものであれば、互いに同じであっても、相異なっていても良い。
【0017】
芳香族ビニル化合物としては、具体的には、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等の置換基としてアルキル基を有するスチレン類;4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン等の置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4−フェニルスチレン等の置換基としてアリール基を有するスチレン類;等が挙げられる。なかでも、吸湿性の観点から、スチレン、置換基としてアルキル基を有するスチレン類;等の極性基を含有しないものが好ましく、工業的な入手の容易さから、スチレンが特に好ましい。
【0018】
鎖状共役ジエン系化合物としては、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。なかでも、吸湿性の観点から、極性基を含有しないものが好ましく、工業的な入手の容易さから1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0019】
その他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物や環状ビニル化合物等のビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィン;等が挙げられる。なかでも、吸湿性の観点から、極性基を有しないものが好ましく、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0020】
ブロック共重合体[C]中の重合体ブロック[A]の数は、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下であり、ブロック[B]の数は、通常4個以下、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下である。
重合体ブロック[A]及び/又は重合体ブロック[B]が複数存在する際、重合体ブロック[A]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)及びMw(A2)とし、重合体ブロック[B]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)及びMw(B2)とした時、該Mw(A1)とMw(A2)との比(Mw(A1)/Mw(A2))、及び、該Mw(B1)とMw(B2)との比(Mw(B1)/Mw(B2))は、それぞれ2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。
【0021】
ブロック共重合体[C]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。ブロック共重合体[C]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体([A]−[B]−[A])、及び、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体([A]−[B]−[A] −[B]−[A])である。
【0022】
ブロック共重合体[C]中の、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとした時に、wAとwBとの比(wA:wB)は、20:80〜60:40、好ましくは25:75〜55:45、より好ましくは30:70〜50:50である。wAが高過ぎる場合は、得られる透明粘着シートの柔軟性が低く、粘着性が劣るほか、凹凸箇所での充填性が不良となり易い。また、wAが低過ぎる場合は、得られる透明粘着シートの耐熱性が不十分となるおそれがある。
【0023】
ブロック共重合体[C]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは50,000〜150,000、より好ましくは60,000〜100,000である。また、ブロック共重合体[C]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0024】
ブロック共重合体[C]は、例えば、リビングアニオン重合等の方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法等がある。
モノマー混合物(a)中の芳香族ビニル化合物の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。モノマー混合物(a)は、芳香族ビニル化合物以外に、鎖状共役ジエン化合物やその他のビニル化合物をモノマー成分として含有していてもよい。
モノマー混合物(b)中の鎖状共役ジエン化合物の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。モノマー混合物(b)は、鎖状共役ジエン化合物以外に、芳香族ビニル化合物やその他のビニル化合物をモノマー成分として含有していてもよい。
【0025】
2.ブロック共重合体水素化物[D]
本発明に係るブロック共重合体水素化物[D]は、上記のブロック共重合体[C]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化したものである。その水素化率は、通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、成形した透明粘着シートの耐光性、耐熱性が良好である。ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、H−NMRによる測定において求めることができる。
【0026】
不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、国際公開WO2011/096389号、国際公開WO2012/043708号等に記載された方法が挙げられる。
【0027】
上記した方法で得られるブロック共重合体水素化物[D]は、水素化触媒及び/又は重合触媒を、ブロック共重合体水素化物[D]を含む反応溶液から除去した後、反応溶液から回収される。回収されたブロック共重合体水素化物[D]の形態は限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後のアルコキシシリル基の導入に供することができる。
【0028】
ブロック共重合体水素化物[D]の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは50,000〜150,000、より好ましくは60,000〜100,000である。
また、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、成形した透明粘着シートの耐熱性や機械的強度が維持される。
【0029】
3.変成ブロック共重合体水素化物[E]
本発明で使用する変成ブロック共重合体水素化物[E]は、上記ブロック共重合体水素化物[D]に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物と反応させることにより、アルコキシシリル基が導入されたものである。アルコキシシリル基は、ブロック共重合体水素化物[D]に、アルキレン基やアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していても良い。
【0030】
アルコキシシリル基の導入量は、通常、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。アルコキシシリル基の導入量が多過ぎると、得られる変性ブロック共重合体水素化物[E]を所望の形状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、ゲルが発生したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下する等の問題を生じ易くなる。一方、アルコキシシリル基の導入量が少な過ぎると、得られる本発明の透明粘着シートをガラス、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以降、「PETフィルム」と略す)、トリアセチルセルロースフィルム(以降、「TACフィルム」と略す)等の被着体と接着する場合に十分な接着力が得られないという不具合が生じるおそれがある。アルコキシシリル基が導入されたことは、IRスペクトルで確認することができる。また、アルコキシシリル基の導入量は、H−NMRスペクトル(導入量が少ない場合は積算回数を増やす)にて算出することができる。
【0031】
用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、ブロック共重合体水素化物[D]とグラフト重合し、ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入するものであれば特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアリルトリアルコキシシラン;ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン等のジアルコキシアルキルビニルシラン;p−スチリルトリメトキシシラン等のp−スチリルトリアルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルアルキルジアルコキシシラン;、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;等が好適に用いられる。
【0032】
これらのエチレン性不飽和シラン化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。
【0033】
過酸化物としては、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用される。例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−(2−t一ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が好適に用いられる。
【0034】
これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。過酸化物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、通常0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量である。
【0035】
上記のブロック共重合体水素化物[D]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法は特に限定されない。例えば、二軸混練機にて所望の温度で所望の時間混練することによりアルコキシシリル基を導入することができる。本発明のブロック共重合体水素化物[D]では、その温度は、通常180〜220℃、好ましくは185〜210℃、より好ましくは190〜200℃である。加熱混練時間は、通常0.1〜10分、好ましくは0.2〜5分、より好ましくは0.3〜2分程度である。温度、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。
【0036】
本発明に係る変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、原料として用いたブロック共重合体水素化物[D]の分子量と実質的には変わらない。ただし、過酸化物の存在下でエチレン性不飽和シラン化合物と反応させるため、重合体の架橋反応、切断反応も併発し、分子量分布は大きくなる。THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000〜200,000、好ましくは50,000〜150,000、より好ましくは60,000〜100,000である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、本発明の透明粘着シートの機械強度が良好で、リワーク時のシートの破断や引き裂けを低減できるため好ましい。
【0037】
4.変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とする樹脂組成物[F]
本発明に係る樹脂組成物[F]は、変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とするものである。変性ブロック共重合体水素化物[E]の含有量は、本発明の効果が得られる観点から、樹脂組成物全体に対し、通常60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、ガラス、PETフィルム、TACフィルム等の被着体との粘着シートの柔軟性を調整したり、粘着性を調整するために、変性ブロック共重合体水素化物[E]に低分子量の炭化水素系重合体[G]及び/又は粘着付与剤[H]等を配合することができる。また更に、耐熱安定性、耐光安定性、加工性等を高めるために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤等を配合することもできる。
【0039】
低分子量の炭化水素系重合体[G]は、本発明に係る樹脂組成物[F]の柔軟性を改善するために配合することができる。炭化水素系重合体[G]は変性ブロック共重合体水素化物[E]に均一に溶解ないし分散できるものが好ましく、数平均分子量300〜5,000の炭化水素系重合体[G]が好ましい。炭化水素系重合体[G]の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−1−オクテン、エチレン・α−オレフィン共重合体等の低分子量体及びその水素化物;ポリイソプレン、ポリイソプレン−ブタジエン共重合体等の低分子量体及びその水素化物等が挙げられる。これらの中でも、特に透明性、耐光性に優れた粘着性樹脂組成物が得られる点で、低分子量のポリイソブチレン水素化物、低分子量のポリイソプレン水素化物が好ましい。
【0040】
炭化水素系重合体[G]の分子量は、THFを溶媒とするGPCにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で、通常300〜5,000、好ましくは500〜4,000、より好ましくは1,000〜3,000である。Mnが300を下回る場合は、炭化水素系重合体[G]を配合した変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とする樹脂組成物[F]を溶融成形する際に気泡を発生し易くなるため好ましくない。また、Mnが5,000を超える場合は、炭化水素系重合体[G]を配合した変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とする樹脂組成物[F]の透明性が低下し易く、光学用途での使用に不適当となるため好ましくない。
【0041】
本発明に使用する樹脂組成物[F]は、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して炭化水素系重合体[G]を、通常60重量部以下、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜40重量部配合して得られる。炭化水素系重合体[G]の配合量を多くすると柔軟性は高められるが、透明性が低下し易くなる。配合量を上記範囲となるようにすると、透明性を維持し、本発明の透明粘着シートの柔軟性をリワークし易い範囲に調整することができるため好ましい。
【0042】
粘着付与剤[H]は、本発明に係る樹脂組成物[F]の粘着性を向上するために配合することができる。粘着付与剤[H]としては、ロジン系樹脂;テルペン系樹脂;クマロン・インゲン樹脂;スチレン系樹脂;脂肪族系、脂環族系又は芳香族系の石油樹脂;及びそれらの水素添加物等が挙げられ、これらの中から選択される少なくとも1種を使用できる。
【0043】
本発明に使用する樹脂組成物[F]は、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して粘着付与剤[H]を、通常60重量部以下、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜40重量部配合して得られる。粘着付与剤[H]の配合量を多くすると粘着性は高められるが、被着体との剥離性は低下し、リワーク性は低下する。配合量を上記範囲となるようにすることで、透明粘着シートの粘着性をリワークし易い範囲に調整することができるため好ましい。
【0044】
炭化水素系重合体[G]及び粘着付与剤[H]の配合量は、本発明の透明粘着シートの温度25℃での貯蔵弾性率が1×10〜5×10Pa、透明粘着シートと被着体を粘着固定した際の、温度25℃で測定する180°剥離強度[剥離速度100mm/分]が0.1〜2.0N/cm、となるように適宜選択される。
【0045】
変性ブロック共重合体水素化物[E]に低分子量の炭化水素系重合体[G]及び/又は粘着付与剤[H]を配合する方法としては、例えば、二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機等で変性ブロック共重合体水素化物[E]を溶融状態にして低分子量の炭化水素系重合体[G]及び/又は粘着付与剤[H]を混練する方法;二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機等でブロック共重合体水素化物[D]を溶融状態にして低分子量の炭化水素系重合体[G]及び/又は粘着付与剤[H]を混練した後、この樹脂組成物とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法;ブロック共重合体水素化物[D]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる際に同時に低分子量の炭化水素系重合体[G]及び/又は粘着付与剤[H]も混練する方法;等が挙げられる。
【0046】
本発明に使用する樹脂組成物[F]は、耐熱安定性、耐光安定性、加工性等を高めるために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤等が配合されてもよく、これらの配合剤は、単独でも、2種以上併用して配合してもよい。これらの配合剤の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
【0047】
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤としては、構造中に、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基、あるいは、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基等を有している化合物が挙げられる。
【0048】
変性ブロック共重合体水素化物[E]に上記添加剤を配合する方法は、特に制約されない。例えば、添加剤を、二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機等で変性ブロック共重合体水素化物[E]あるいは変性ブロック共重合体水素化物[E]に、炭化水素系重合体[G]及び/又は粘着付与剤[H]を配合してなる樹脂組成物[F]を溶融状態にして、添加剤を混練する方法等が挙げられる。
【0049】
5.透明粘着シート
本発明の透明粘着シートは、変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とする樹脂組成物[F]からなるシートであり、可視光線領域の透過性が優れるものである。本発明の透明粘着シートの波長450〜700nmでの光線透過率は、厚さ300nmのシートで、通常88%以上、好ましくは89%以上、より好ましくは90%以上である。
【0050】
本発明の透明粘着シートは、被着体に対する粘着性とリワーク性を確保する観点から、25℃における貯蔵弾性率が1×10〜1×10Pa、好ましくは2×10〜5×10Pa、より好ましくは3×10〜1×10Paであることが望ましい。これにより、例えば、本発明の透明粘着シートを介してタッチパネルを表示装置の表示面に貼着固定した後、透明粘着シートをタッチパネルや表示装置の表示面から剥離させたりすることができ、タッチパネルや表示装置を再度利用することが可能となる。貯蔵弾性率が1×10Paを下回る場合は、樹脂組成物[F]からなるシートが軟らか過ぎて、剥離時に伸びが大き過ぎてリワーク性が劣る場合がある。貯蔵弾性率が1×10Paを超える場合は、樹脂組成物[F]からなるシートが硬過ぎて粘着性が劣る場合がある。変性ブロック共重合体水素化物[E]の貯蔵弾性率が高い場合は、炭化水素系重合体[G]を配合することにより貯蔵弾性率を低下させ、望ましい貯蔵弾性率にすることができる。粘着付与剤[H]の配合によっても貯蔵弾性率は低下するため、望ましい貯蔵弾性率になるように、炭化水素系重合体[G]及び粘着付与剤[H]の配合量を、上述した範囲内で適宜調整することができる。
【0051】
本発明の透明粘着シートは、低温で被着体に粘着させた状態では良好なリワーク性を有し、その後高温で加熱処理することにより、強固な接着性を発現することを特徴とする。透明粘着シートを被着体に粘着させる温度は、通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜70℃である。
透明粘着シートを被着体に粘着させる方法としては、透明粘着シートを被着体に重ね合わせた後、ゴムローラで圧着する方法、真空ラミネータで圧着する方法、オートクレーブで圧着する方法等の方法が挙げられる。良好なリワーク性を確保する観点から、透明粘着シートの粘着性は、180°剥離強度の値が、好ましくは0.1〜2.0N/cm、より好ましくは0.2〜1.5N/cm、更に好ましくは0.3〜1.0N/cmなるようにすることが望ましい。貯蔵弾性率が高い変性ブロック共重合体水素化物[E]の粘着性は低いため、粘着付与剤[H]を配合することにより粘着性を高め、粘着付与剤の配合量により、粘着固定した際の剥離強度を好ましい範囲に調整することができる。貯蔵弾性率が低い変性ブロック共重合体水素化物[E]の粘着性は高くなるが、より望ましい剥離強度にするために粘着付与剤を配合することも可能である。
【0052】
本発明の透明粘着シートを被着体にリワーク可能な状態に粘着固定した後、外観等に不具合が無ければ再加熱処理して強固に接着固定することができる。再加熱の温度は、通常80〜180℃、好ましくは90〜170℃、より好ましくは100〜160℃である。
接着固定した後の180°剥離強度は、通常3.0N/cm以上、好ましくは5.0N/cm以上、より好ましくは7.0N/cm以上となるようにするのが望ましい。
【0053】
本発明の透明粘着シートの厚みは、通常20〜500μm、好ましくは30〜300μm、より好ましくは40〜150μmである。透明粘着シートの厚みをこの範囲にすることにより、被着体から剥離する際に透明粘着シートが破断することを抑制でき、被着体との間に空隙を残さず充填することができるため好ましい。
【0054】
本発明の透明粘着シートの製造方法に特に制限は無く、公知の溶融押出し成形法等が採用できる。フィルムの成形条件は、成形方法により適宜選択されるが、例えば、溶融押出し成形法による場合は、変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とする樹脂組成物[F]の樹脂温度は、通常120〜220℃、好ましくは130〜200℃、より好ましくは140〜190℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度が低過ぎる場合は、流動性が悪化し、成形されたシートの加熱収縮が大きくなり易く、また、樹脂温度が高過ぎる場合は、成形されたシートの被着体への接着性が低下し易くなる。
【0055】
本発明においては、変性ブロック共重合体水素化物[E]を主成分とする樹脂組成物[F]を押出機内で溶融して、当該押出機に取り付けられたダイスから押出す前に、溶融状態の樹脂をギヤーポンプやポリマーフィルターを通すことができる。ギヤーポンプを使用することにより、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚さむらを低減させることができる。また、ポリマーフィルターを使用することにより、樹脂中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れた透明粘着シートを成形することができる。
【0056】
本発明の透明粘着シートは、異なる組成の2種以上の樹脂組成物[F]を使用した多層のシートであってもよい。また、ブロッキングを防止し、取り扱いを容易にするために、透明粘着シートの片面又は両面にエンボス加工を施したり、例えば離形性のPETフィルムやポリオレフィンフィルム等を重ねたりして保存することができる。
【0057】
本発明の透明粘着シートは、タッチパネルと表示装置の貼り合わせやタッチパネルと透明カバーの貼り合せの他、合せガラスの貼り合せ、薄膜ガラスの貼り合せ、薄膜ガラスの液晶表示装置への貼り合せ、照明装置の透明樹脂基板への薄膜ガラスの貼り合せ等に使用することができる。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
【0059】
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物の分子量は、THFを溶離液とするGPCによる標準ポリスチレン換算値として38℃において測定した。測定装置としては、HLC8020GPC(東ソー社製)を用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[D]の主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、H−NMRスペクトルを測定して算出した。
(3)透明粘着シートの透明性
透明粘着シート(厚さ150μm)2枚を重ねて、2枚の離形性PETフィルムの間に挟み、真空ラミネータを使用して、温度60℃で、5分間真空脱気した後、10分間真空加圧成形して厚さ300μmの光線透過率測定用透明粘着シートを作製した。このシートを、紫外可視分光光度計(製品名「V−570」、日本分光社製)を使用して、波長470nm、550nm及び650nmでの光線透過率を測定した。
【0060】
(4)貯蔵弾性率
透明粘着シート(厚さ150μm)を重ねてプレス成形し、厚さ1.0mmのシートを作成した。このシートから幅10mm、長さ50mmの試験片を作成し、粘弾性測定装置(製品名「ARES」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を使用して25℃における貯蔵弾性率を測定した。
(5)透明粘着シートの粘着性
透明粘着シート(厚さ150μm)を、シート端部に非接着部位を設けて白板ガラス板(厚さ2mm、幅100mm、長さ70mm)と重ね合わせた後、オートクレーブ中に入れ、温度50〜70℃、圧力0.9MPaの条件で10分処理して粘着固定し、剥離強度測定用の試験片を作成した。作成した試験片をオートクレーブから取り出し、常温にて120分間静置した後、シート面を15mm幅に切り目を入れ、オートグラフ(製品名「AGS−10KNX」、島津製作所社製)を使用して、シートの非接着部位から、剥離速度100mm/分で、JIS K 6854−2を参考にして180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
(6)リワーク性
透明粘着シート厚さ(150μm)を介して、縦100mm、横70mm、厚さ210μmの薄膜ガラス(Shott社製)の片面にITO膜を蒸着し、ITO膜蒸着面と、表面がTAC保護フィルムである縦100mm、横70mm、厚さ0.2mmの偏光フィルム(テックジャム社販売)を重ね合わせ、オートクレーブに投入して、温度50〜70℃、圧力0.9MPaの条件で10分処理して貼り合せ、リワーク性評価用の試験片を作成した。作成した試験片をオートクレーブから取り出し、常温にて120分間静置した。
偏光フィルムと透明粘着シートの粘着部位及びITO蒸着ガラス面と透明粘着シートの粘着部位から手で剥離し、薄膜ガラスの割れ、偏光フィルム表面及びITO蒸着ガラス面を目視で観察してリワーク性を評価した。薄膜ガラスが割れずに透明粘着シートが容易に剥離でき、偏光フィルム表面及びITO蒸着ガラス面に粘着剤が残っていない場合を「○」(良好)、容易に剥離できずガラスが割れる場合、及び/又は、剥離できた場合も粘着剤の剥離残りや剥離跡がある場合を「×」(不良)として評価した。
【0061】
(7)透明粘着シートの接着性
粘着性評価で作成したのと同様の白板ガラスに、透明粘着シートを粘着固定した試験片を再度オートクレーブに投入して、温度100℃、圧力0.9MPaの条件で20分処理して、貼り合せ、接着性評価用の試験片とした。作製した試験片をオートクレーブから取り出し、常温にて120分間静置した後、シート面を15mm幅に切り目を入れ、オートグラフを使用して、シートの非接着部位から、剥離速度100mm/分で、JIS K 6854−2を参考にして180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
(8)耐熱性
透明粘着シート(厚さ150μm)2枚を重ねて、2枚の白板ガラス(厚さ2mm、長さ100mm、幅50mm)の間に挟み、真空ラミネータを使用して、温度100℃で、5分間真空脱気した後、10分間真空加圧成形して白板ガラスで挟まれた試験片を作製した。この試験片を、片側の白板ガラスのみを保持して垂直に立て、100℃のオーブン中に24時間保存した後、試験片の概観を目視観察した。ガラスの位置ズレや発泡等の異常が無い場合を「○」(良好)、異常が認められた場合を「×」(不良)として評価した。
【0062】
[参考例1]
変性ブロック共重合体水素化物[E1]
(ブロック共重合体[C1]の製造)
充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、及びn−ジブチルエーテル0.475部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウムの15%シクロヘキサン溶液0.60部を加えて、重合を開始させ、攪拌しながら60℃で60分反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点で重合転化率は99.5%であった。
次に、脱水イソプレン50.0部を加え、そのまま30分攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、60分攪拌を続けた。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。ここでイソプロピルアルコール0.5部を加えて、反応を停止させた。得られたブロック共重合体[C1]の重量平均分子量(Mw)は69,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、wA:wB=50:50であった。
【0063】
(ブロック共重合体水素化物[D1]の製造)
次に、上記重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)8.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は73,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、コーヨ化学研究所社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にてろ過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。連続して溶融ポリマーを、濃縮乾燥器に連結した孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター社製)により、温度260℃でろ過した後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物[D1]のペレット96部を作成した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は72,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.11、水素化率はほぼ100%であった。
【0064】
(変性ブロック共重合体水素化物[E1]の製造)
得られたブロック共重合体水素化物[D1]のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60〜70秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット95部を得た。
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解した後、脱水したメタノール400部中に注いで変性ブロック共重合体水素化物[E1]を凝固させ、濾別した後、25℃で真空乾燥して変性ブロック共重合体水素化物[E1]のクラム9.0部を単離した。
このもののFT−IRスペクトルでは、1090cm−1にSi−OCH基、825cm−1と739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075cm−1、808cm−1及び766cm−1と異なる位置に観察された。
また、H−NMRスペクトル(重クロロホルム中)では3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づく吸収帯が観察され、ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[D1]の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。
【0065】
[参考例2]
変性ブロック共重合体水素化物[E2]の製造
(ブロック共重合体[C2]の製造)
スチレンとイソプレンを5回に分け、スチレン14.0部、イソプレン30.0部、スチレン12.0部、イソプレン30.0部及びスチレン14.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウムの15%シクロヘキサン溶液を0.58部とする以外は参考例1と同様に重合反応を行い、反応を停止させた。得られたブロック共重合体[C2]の重量平均分子量(Mw)は71,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.07、wA:wB=40:60であった。
【0066】
(ブロック共重合体水素化物[D2]の製造)
次に、上記重合体溶液を、参考例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D2]の重量平均分子量(Mw)は75,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加し、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D2]のペレット94部を製造した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D2]の重量平均分子量(Mw)は74,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.13、水素化率はほぼ100%であった。
【0067】
(変性ブロック共重合体水素化物[E2]の製造)
得られたブロック共重合体水素化物[D2]のペレット100部を使用する以外は、参考例1と同様にして、変性ブロック共重合体水素化物[E2]のペレット93部を得た。
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E2]を参考例1と同様に分析した結果、ブロック共重合体水素化物[D2]の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.7部が結合したことが確認された。
【0068】
[参考例3]
変性ブロック共重合体水素化物[E3]の製造
(ブロック共重合体[C3]の製造)
スチレンとイソプレンを3回に分け、スチレン12.0部、イソプレン76.0部、スチレン12.0部をこの順に加え、n−ブチルリチウムの15%シクロヘキサン溶液を0.50部に変えて重合を開始する以外は参考例1と同様に重合及び反応停止を行った。得られたブロック共重合体[C3]の重量平均分子量(Mw)は81,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=24:76であった。
【0069】
(ブロック共重合体水素化物[D3]の製造)
次に、上記重合体溶液を用いて、参考例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D3]の重量平均分子量(Mw)は86,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D3]のペレット95部を作製した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D3]の重量平均分子量(Mw)は85,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.12、水素化率はほぼ100%であった。ブロック共重合体水素化物[D3]のペレットは、ペレット100部に対してブロッキング防止剤としてエチレンビスステアリン酸アマイドの微粉0.05部を付着させた。
【0070】
(変性ブロック共重合体水素化物[E3]の製造)
得られたブロック共重合体水素化物[D3]のペレット100部を使用する以外は、参考例1と同様にして変性ブロック共重合体水素化物[E3]のペレット82部を得た。
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E3]を参考例1と同様に分析した結果、ブロック共重合体水素化物[D3]の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.9部が結合したことが確認された。
【0071】
[参考例4]
(イソプレン重合体水素化物[G3]の製造)
充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン400部、脱水イソプレン25.0部、n−ジブチルエーテル7.5部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウムの15%シクロヘキサン溶液20.0部を加えて重合を開始させ、攪拌しながら60℃で30分反応させた。
次に、脱水イソプレン75.0部を3回に分けて30分おきに加え、その後60分攪拌を続けた。この時点で重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、反応液に、イソプロピルアルコール3.0部を加えて反応を停止させた。得られたイソプレン重合体の数平均分子量(Mn)は1,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
次に、上記重合体溶液を攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(日揮触媒化成社製、製品名「E22U」、ニッケル担持量60%)1.5部、及び脱水シクロヘキサン50部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、更に溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度160℃、圧力4.5MPaにて4時間水素化反応を行った。水素化反応後のイソプレン重合体水素化物[G3]の数平均分子量(Mn)は1,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、であった。
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノ−ル系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、ゼータプラス(登録商標)フィルター30H(キュノ社製、孔径0.5〜1μm)にてろ過して微小な固形分を除去した。このろ液を、減圧下で50℃に加温してシクロヘキサン200部を留去させ、濃縮した。この濃縮した溶液にイソプロピルアルコール500部を加え、水素化ポリイソプレンを粘稠な液状体として分離させた。
上澄み液を除去した後、120℃、減圧下で24時間保持して揮発成分を除去し、イソプレン重合体水素化物[G3]76部を得た。
得られたイソプレン重合体水素化物[G3]の数平均分子量(Mn)は2,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、水素化率はほぼ100%であった。
【0072】
[実施例1]
(樹脂組成物[F1])
参考例1で得られたアルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット100部に、粘着付与剤[H]であるテルペン系樹脂水素化物[H1](製品名「クリアロン(登録商標)P105」、ヤスハラケミカル社製)25部、及び紫外線吸収剤である2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(製品名「Tinuvin(登録商標)329」、BASFジャパン社製)0.2部を混合し、液状物を添加できるサイドフィーダーを備えた二軸押出機を用いて、樹脂温度190℃で押し出した。一方、サイドフィーダーから炭化水素系重合体[G]としてイソブテン重合体水素化物[G1](製品名「パールリーム(登録商標)24」、日油社製)、GPCによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量:2,200)を、変性ブロック共重合体水素化物[E1]100部に対して30部の割合となるように連続的に添加して、全容を混練した。十分混練した樹脂組成物は、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングして樹脂組成物[F1]のペレット142部を得た。
【0073】
(押出しシート化)
得られた樹脂組成物[F1]のペレットを、25mmφのスクリューを備えた押出し機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅300mm)、キャストロール及び離形フィルム供給装置を備えたシート引取機を使用し、溶融樹脂温度150℃、Tダイ温度150℃、キャストロール温度40℃の成形条件にて、キャストロール面に離形用のPETフィルム(厚さ50μm)を供給しながら、PETフィルム上に樹脂組成物[F1]からなる透明粘着シート(厚さ150μm)を押出し成形した。得られた透明粘着シートは、PETフィルムと共にロールに巻き取り回収した。
【0074】
(透明粘着シートの評価)
得られた透明粘着シートを使用して、光線透過率、貯蔵弾性率、粘着性(粘着固定温度70℃)、リワーク性(粘着固定温度70℃)、接着性、及び耐熱性の評価を行った。光線透過率は470nm、550nm、650nmの各波長で90%以上を示し、透明性に優れていた。貯蔵弾性率は1.0×10Paで柔軟であった。粘着性は、剥離強度が0.2N/cmであり、粘着固定でき且つ容易に剥がすことができた。
リワーク性は、薄膜ガラスが割れずにITO蒸着ガラス表面及び偏光フィルム表面から剥がすことができ、表面に粘着性樹脂組成物も残らず、良好であった。接着性は、剥離強度が7N/cmであり、容易に剥がすことはできず強固な接着性を示した。耐熱性評価では異常は認められなかった。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例2]
(樹脂組成物[F2])
イソブテン重合体水素化物[G1]に代えて、イソブテン重合体[G2](製品名「日石ポリブテン HV−300」、数平均分子量1,400、JX日鉱日石エネルギー社製)を使用し、変性ブロック共重合体水素化物[E1]100部に対して20部の割合となるように連続的に添加する以外は実施例1と同様にして混練して、変性ブロック共重合体水素化物[E1]に、粘着付与剤[H1]、イソブテン重合体[G2]及び紫外線吸収剤が配合された樹脂組成物[F2]のペレット129部を得た。
(押出しシート化)
得られた樹脂組成物[F2]のペレットを使用し、実施例1と同様にして透明粘着シート(厚さ150μm)を作製した。
(透明粘着シートの評価)
得られた透明粘着シートを使用して、光線透過率、貯蔵弾性率、粘着性(粘着固定温度70℃)、リワーク性(粘着固定温度70℃)、接着性及び耐熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例3]
(樹脂組成物[F3])
イソブテン重合体水素化物[G1]に代えて、参考例4で作成したイソプレン重合体水素化物[G3](数平均分子量2,000)を使用し、変性ブロック共重合体水素化物[E1]100部に対して20部の割合となるように連続的に添加する以外は実施例1と同様にして混練して、変性ブロック共重合体水素化物[E1]に、粘着付与剤[H1]、イソプレン重合体水素化物[G3]及び紫外線吸収剤が配合された樹脂組成物[F3]のペレット130部を得た。
(押出しシート化)
得られた樹脂組成物[F3]のペレットを使用し、実施例1と同様にして透明粘着シート(厚さ150μm)を作製した。
(透明粘着シートの評価)
得られた透明粘着シートを使用して、光線透過率、貯蔵弾性率、粘着性(粘着固定温度70℃)、リワーク性(粘着固定温度70℃)、接着性及び耐熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例4]
(樹脂組成物[F4])
変性ブロック共重合体水素化物[E1]に代えて参考例2で作成した変性ブロック共重合体水素化物[E2]を使用し、変性ブロック共重合体水素化物[E2]100部に対して粘着付与剤[H1]を30部にし、炭化水素系重合体[G]を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして混練して、変性ブロック共重合体水素化物[E2]に、粘着付与剤[H1]及び紫外線吸収剤が配合された樹脂組成物[F4]のペレット122部を得た。
(押出しシート化)
得られた樹脂組成物[F4]のペレットを使用し、実施例1と同様にして透明粘着シート(厚さ150μm)を作製した。
(透明粘着シートの評価)
得られた透明粘着シートを使用して、光線透過率、貯蔵弾性率、粘着性(粘着固定温度70℃)、リワーク性(粘着固定温度70℃)、接着性及び耐熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
[実施例5]
(樹脂組成物[F5])
変性ブロック共重合体水素化物[E1]に代えて参考例2で作成した変性ブロック共重合体水素化物[E2]100部を使用する以外は、実施例1と同様にして混練して、変性ブロック共重合体水素化物[E2]に、粘着付与剤[H1]、イソブテン重合体水素化物[G1]及び紫外線吸収剤が配合された樹脂組成物[F5]のペレット138部を得た。
(押出しシート化)
得られた樹脂組成物[F5]のペレットを使用し、実施例1と同様にして透明粘着シート(厚さ150μm)を作製した。
(透明粘着シートの評価)
得られた透明粘着シートを使用して、光線透過率、貯蔵弾性率、粘着性(粘着固定温度70℃)、リワーク性(粘着固定温度70℃)、接着性及び耐熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
[実施例6]
(樹脂組成物[F6])
変性ブロック共重合体水素化物[E1]に代えて参考例3で作成した変性ブロック共重合体水素化物[E3]を使用し、変性ブロック共重合体水素化物[E3]100部に対して粘着付与剤[H1]を15部にし、炭化水素系重合体[G]を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして混練して、変性ブロック共重合体水素化物[E3]に、粘着付与剤[H1]及び紫外線吸収剤が配合された樹脂組成物[F6]のペレット106部を得た。
(押出しシート化)
得られた樹脂組成物[F6]のペレットを使用し、実施例1と同様にして透明粘着シート(厚さ150μm)を作製した。
(透明粘着シートの評価)
得られた透明粘着シートを使用して、光線透過率、貯蔵弾性率、粘着性(粘着固定温度70℃)、リワーク性(粘着固定温度70℃)、接着性及び耐熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例1]
(樹脂組成物[F’7])
変性ブロック共重合体水素化物[E1]100部に対し、炭化水素系重合体[G]を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして混練して、変性ブロック共重合体水素化物[E1]に、粘着付与剤[H1]及び紫外線吸収剤が配合された樹脂組成物[F’7]のペレット108部を得た。
(押出しシート化)
得られた樹脂組成物[F’7]のペレットを使用し、実施例1と同様にして透明粘着シート(厚さ150μm)を作製した。
(透明粘着シートの評価)
得られた透明粘着シートを使用して、光線透過率、貯蔵弾性率、粘着性(粘着固定温度70℃)、リワーク性(粘着固定温度70℃)、接着性及び耐熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
[比較例2]
(樹脂組成物[F’8])
変性ブロック共重合体水素化物[E1]に代えて参考例3で作成した変性ブロック共重合体水素化物[E3]100部を使用する以外は、実施例1と同様にして混練して、変性ブロック共重合体水素化物[E3]に、粘着付与剤[H1]、イソブテン重合体水素化物[G1]及び紫外線吸収剤が配合された樹脂組成物[F’8]のペレット132部を得た。
(押出しシート化)
得られた樹脂組成物[F’8]のペレットを使用し、実施例1と同様にして透明粘着シート(厚さ150μm)を作製した。
(透明粘着シートの評価)
得られた透明粘着シートを使用して、光線透過率、貯蔵弾性率、粘着性(粘着固定温度50℃)、リワーク性(粘着固定温度50℃)、接着性及び耐熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
[比較例3]
(樹脂組成物[F’9])
変性ブロック共重合体水素化物[E1]100部に対して粘着付与剤[H1]を30部にし、イソブテン重合体水素化物[G1]を65部にする以外は、実施例1と同様にして混練して、変性ブロック共重合体水素化物[E1]に、粘着付与剤[H1]、イソブテン重合体水素化物[G1]及び紫外線吸収剤が配合された樹脂組成物[F’9]のペレット172部を得た。
(押出しシート化)
得られた樹脂組成物[F’9]のペレットを使用し、実施例1と同様にして透明粘着シート(厚さ150μm)を作製した。
(透明粘着シートの評価)
得られた透明粘着シートを使用して、光線透過率、貯蔵弾性率、粘着性(粘着固定温度50℃)、リワーク性(粘着固定温度50℃)、接着性及び耐熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示す結果から以下のことがわかる。
本発明の透明粘着シートは、可視光領域での光線透過率が高く、温度25℃における貯蔵弾性率が1×10〜1×10Paの範囲にあり、且つ、70℃の比較的低い温度で被着体と貼り合せた場合は、剥離強度が2N/cm以下の容易に剥離できる粘着性及び良好なリワーク性を示し、より高い温度(100℃)に再加熱することにより3N/cm以上の強固な接着性を発現する。温度80℃での保存でも外観変化は無く、耐熱性も良好である(実施例1〜6)。
一方、透明粘着シートの温度25℃における貯蔵弾性率が1×10Paを超える場合は、70℃の温度で被着体と貼り合せた場合に、ほとんど粘着性を示さず、剥離強度は0.1N/cmに満たず、仮固定に不適当である。また、より高い温度(100℃)に再加熱した場合も接着力は弱く、剥離強度は3N/cmに満たない(比較例1)。
透明粘着シートの温度25℃における貯蔵弾性率が1×10Paを下回る場合は、より低温(50℃)で被着体と貼り合せることにより、粘着性を制御することができ、剥離強度を2N/cm以下にすることができるが、剥離時に透明粘着シートが著しく伸び、リワークの作業性が劣る。また、耐熱性試験ではガラスの位置ズレが生じ、耐熱性が不良となる(比較例2)。
数平均分子量が5,000以下の炭化水素系重合体[G]でも配合量が多過ぎる場合、貯蔵弾性率が1×10Paに満たず、剥離時に透明粘着シートが著しく伸び、リワークの作業性が劣り、また、耐熱性も低く、透明性も低下し光学用には不適になる(比較例3)。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の透明粘着シートは、2つの光学部材(被着体)を貼着固定する際に用いられる両面粘着性を有する透明粘着シートとして、リワーク性と接着性に優れ、タッチパネルと偏光フィルム、タッチパネルとカバーガラス等を貼着固定する光学用透明粘着シートとして有用である。