(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記紫外線発光装置の接着部を形成するための接着剤であって、含フッ素脂肪族環構造を有するフルオロポリマーを含む下記接着剤(A)または下記接着剤(B)のいずれかからなることを特徴とする接着剤。
紫外線発光装置:波長200〜400nmの紫外線を発生させる発光素子と、前記発光素子から発生する紫外線が透過する光学部材と、前記発光素子と前記光学部材とを接着する、接着剤から形成される接着部と、を備え、前記光学材料が含フッ素脂肪族環構造を有するフルオロポリマーから形成されている。
接着剤(A):前記フルオロポリマーのガラス転移温度が30〜100℃であり、かつ、紫外線遮断剤を含まない接着剤。
接着剤(B):前記フルオロポリマーと紫外線遮断剤とを含む接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の用語の定義は、本明細書および請求の範囲にわたって適用される。
ポリマーの「単位」は、単量体が重合することによって形成された、該単量体に由来する、ポリマーの構成部分を示す。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合反応によって得られた重合体を化学変換することによって該単位の一部の構造が別の構造に変換された単位であってもよい。
「含フッ素脂肪族環構造」とは、環の主骨格を構成する炭素原子の少なくとも一部に、フッ素原子またはフッ素含有基が結合している脂肪族環構造を意味する。フッ素含有基としては、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、=CF
2等が挙げられる。該環の主骨格を構成する炭素原子の一部に、含フッ素基以外の置換基が結合していてもよい。
「脂肪族環構造」とは、芳香族性を有さない飽和または不飽和の環構造を意味する。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素−炭素原子間に1個存在する酸素原子(−C−O−C−)である。
「ペルフルオロアルキル基」とは、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基である。「ペルフルオロアルキレン基」とは、アルキレン基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基である。
「ペルフルオロポリマー」とは、炭素原子に結合した水素原子を有しない含フッ素ポリマーをいう。
「ガラス転移温度」(以下、「T
g」ともいう。)とは、JIS K 7121:2012年版に準拠して測定される中間点ガラス転移温度(T
mg)を意味する。
本明細書においては、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」とも記し、式(1)で表される単位を「単位(1)」とも記す。他の式で表される化合物、単位等についても同様に記す。
【0017】
〔接着剤〕
本発明の接着剤は、下記紫外線発光装置の接着部を形成するための接着剤であって、含フッ素脂肪族環構造を有するフルオロポリマーを含む下記接着剤(A)または下記接着剤(B)のいずれかからなることを特徴とする接着剤。
紫外線発光装置:波長200〜400nmの紫外線を発生させる発光素子と、前記発光素子から発生する紫外線が透過する光学部材と、前記発光素子と前記光学部材とを接着する、接着剤から形成される接着部と、を備える。
接着剤(A):前記フルオロポリマーのガラス転移温度が30〜100℃であり、かつ、紫外線遮断剤を含まない接着剤。
接着剤(B):前記フルオロポリマーと紫外線遮断剤とを含む接着剤。
【0018】
前記発光素子としては、LED素子、半導体レーザ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。前記光学部材としては、レンズ、光ファイバ、透光窓、プリズム、導光板、樹脂ファイバ、光学ミラー、回折格子等が挙げられる。光学部材は、フルオロポリマーからなるかまたは少なくとも接着部に接する表面はフルオロポリマーからなることが好ましい。発光素子の接着部に接する表面部分もフルオロポリマーからなっていてもよい。発光素子や光学部材を形成するこのようなフルオロポリマーを、以下「ポリマー(I)」という。
接着部が接する発光素子の表面および光学部材の表面は種々の部品からなる。該表面を形成する材料としては、光学特性に優れかつ接着部との親和性に優れる点から、含フッ素脂肪族環構造を有するフルオロポリマーが好ましい。
【0019】
(接着剤(A))
接着剤(A)は、含フッ素脂肪族環構造を有するフルオロポリマーであって、ガラス転移温度が30〜100℃であるポリマー(以下、「ポリマー(II)」ともいう。)を有する。接着剤(A)は、必要に応じて、ポリマー(II)および紫外線遮断剤以外の成分をさらに含んでもよい。接着剤(A)は、必要に応じて、溶媒をさらに含んでもよい。
接着剤(A)は、接着剤(A)中のポリマー(II)のT
g以上の温度でベークすると、接着剤(A)中のポリマー(II)が低粘性化し、発光素子または発光部材の表面の凹凸に浸透し、アンカー効果が得られる。
【0020】
従来、含フッ素脂肪族環構造を有するポリマーの主鎖末端にカルボキシ基、アルコキシカルボニル基等の反応性官能基を導入することで、他の材料との密着性を高める手法は提案されている。これらの反応性官能基は、初期の密着性の向上には有効であるが、波長200〜400nmの紫外線に曝されると分解し、反応性官能基による密着性向上効果は失われる。しかし、接着剤(A)にあっては、アンカー効果等の物理的作用によって他の材料からなる部材と密着するため、反応性官能基が波長200〜400nmの紫外線により分解しても、優れた密着性が維持される。
【0021】
(ポリマー(II))
ポリマー(II)としては、下記単位(a)と下記単位(b)とを有するポリマーが好ましい。必要に応じて、単位(a)および単位(b)以外の単位(以下、「単位(c)」ともいう。)をさらに有してもよい。ポリマー(II)が単位(a)を有することで、後述するポリマー(I)からなる光学部材の表面との親和性に優れる。ポリマー(II)が単位(b)を有することで、ポリマー(II)中の反応性官能基が発光素子または発光部材を形成する材料と化学反応する。そのため、発光素子と光学部材との間に初期の優れた密着性が得られる。
ポリマー(II)は、接着性を高める反応性官能基の存在を除いて、ペルフルオロポリマーであることが好ましい。したがって、ポリマー(II)を構成する単位は、反応性官能基を有する単量体に基づく単位を除いて、ペルフルオロ単量体(すなわち、炭素原子に結合した水素原子を有しない含フッ素単量体)に基づく単位(以下、「ペルフルオロ単位」ともいう。)であることが好ましい。反応性官能基を有する含フッ素単量体に基づく単位についても、その反応性官能基の部分(たとえば、単位(b)におけるX)を除いて、炭素原子に結合した水素原子を有しないことが好ましい。
反応性官能基については後で詳述する。
【0022】
<単位(a)>
単位(a)は、含フッ素脂肪族環構造を有する単位である。
単位(a)はペルフルオロ単位であることが好ましい。
含フッ素脂肪族環構造における含フッ素脂肪族環は、環骨格が炭素原子のみから構成される炭素環構造のものであってもよく、環骨格に炭素原子以外の原子(ヘテロ原子)を含む複素環構造のものであってもよい。該ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子等が挙げられる。
含フッ素脂肪族環の環骨格を構成する原子の数は、4〜7個が好ましく、5または6個が特に好ましい。すなわち、脂肪族環は4〜7員環であることが好ましく、5または6員環が特に好ましい。
【0023】
単位(a)における含フッ素脂肪族環構造は、ポリマー(II)の主鎖を構成してもよく、側基に含まれてもよい。接着部の機械的強度と化学的安定性に優れる点で、ポリマー(II)の主鎖を構成することが好ましい。
含フッ素脂肪族環構造が「主鎖を構成する」とは、含フッ素脂肪族環構造の環骨格を構成する炭素原子のうち、少なくとも1つが、ポリマーの主鎖を構成する炭素原子であることを意味する。重合性二重結合に由来する2個の炭素原子がポリマーの主鎖を構成することより、言い換えれば、含フッ素脂肪族環構造の環を構成する炭素原子の1個または隣接する2個が1つの重合性二重結合に由来する炭素原子であることを意味する。
たとえば、単位(a)が、モノエン系単量体が付加重合することによって形成されたものである場合、重合性二重結合に由来する2個の炭素原子が主鎖を構成し、その2個の炭素原子が環骨格の隣接する2個の炭素原子であるか、または、その2個の炭素原子のうちの1個が環骨格の炭素原子である。また、単位(a)が、ジエン系単量体が環化重合することによって形成されたものである場合、2つの重合性二重結合に由来する合計4個の炭素原子が主鎖を構成し、その4個の炭素原子のうちの2〜4個が環骨格を構成する炭素原子である。
【0024】
単位(a)のうち、含フッ素脂肪族環構造が主鎖を構成するものとしては、ジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成された単位、環状含フッ素単量体に基づく単位等が挙げられる。
【0025】
ジエン系含フッ素単量体とは、2個の重合性二重結合およびフッ素原子を有する単量体である。ジエン系含フッ素単量体の場合、環化重合により単位(a)が形成される。
重合性二重結合としては、特に限定されないが、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。これらの重合性二重結合においては、炭素原子に結合した水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。
ジエン系含フッ素単量体としては、下記化合物(ma1)が好ましい。
CF
2=CF−Q−CF=CF
2 ・・・(ma1)。
(ただし、Qは、フッ素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよく、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基である。)
【0026】
式(ma1)中、Qにおけるペルフルオロアルキレン基の炭素数は1〜6であり、1〜5が好ましく、1〜3が特に好ましい。該ペルフルオロアルレン基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、直鎖状が特に好ましい。
該ペルフルオロアルキレン基は、フッ素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。フッ素原子以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
該ペルフルオロアルキレン基は、エーテル性酸素原子を有していてもよい。
Qとしては、エーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキレン基が好ましい。その場合、該ペルフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、該ペルフルオロアルキレン基の一方の末端に存在していてもよく、該ペルフルオロアルキレン基の両末端に存在していてもよく、該ペルフルオロアルキレン基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、該ペルフルオロアルキレン基の一方の末端に存在していることが好ましい。
【0027】
Qは下式(q−1)および下式(q−2)で表される基が好ましい。
−(CR
1R
2)
h− ・・・(q−1)
−(CR
3R
4)
iO(CR
5R
6)
j− ・・・(q−2)
(ただし、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基またはトリフルオロメトキシ基である。hは2〜4の整数であって複数のR
1およびR
2はそれぞれ異なっていてもよく、iおよびjはそれぞれ0〜3の整数であって、i+jは1〜3の整数であり、iが2または3の場合複数のR
3およびR
4はそれぞれ異なっていてもよく、jが2または3の場合複数のR
5およびR
6はそれぞれ異なっていてもよい。)
hは2または3であることが好ましくR
1およびR
2はすべてフッ素原子であるか1つまたは2つを除いてすべてフッ素原子であることが好ましい。iは0であってかつjは1または2であることが好ましく、R
5およびR
6はすべてフッ素原子であるか1つまたは2つを除いてすべてフッ素原子であることが好ましい。
【0028】
化合物(ma1)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CF
2=CFOCF
2CF=CF
2、
CF
2=CFOCF(CF
3)CF=CF
2、
CF
2=CFOCF
2CF
2CF=CF
2、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)CF=CF
2、
CF
2=CFOCF(CF
3)CF
2CF=CF
2、
CF
2=CFOCFClCF
2CF=CF
2、
CF
2=CFOCCl
2CF
2CF=CF
2、
CF
2=CFOCF
2OCF=CF
2、
CF
2=CFOC(CF
3)
2OCF=CF
2、
CF
2=CFOCF
2CF(OCF
3)CF=CF
2、
CF
2=CFCF
2CF=CF
2、
CF
2=CFCF
2CF
2CF=CF
2、
CF
2=CFCF
2OCF
2CF=CF
2。
【0029】
環状含フッ素単量体としては、含フッ素脂肪族環を含み、該含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体、含フッ素脂肪族環を含み、該含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子と含フッ素脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を有する単量体等が挙げられる。
環状含フッ素単量体としては、下記の化合物(ma2)または化合物(ma3)が好ましい。
【0030】
【化2】
(ただし、X
1、X
2、X
3、X
4、Y
1およびY
2はそれぞれ独立に、フッ素原子、エーテル性酸素原子が介在してもよいペルフルオロアルキル基、またはエーテル性酸素原子が介在してもよいペルフルオロアルコキシ基であり、X
3およびX
4は相互に結合して環を形成してもよい。)
【0031】
式(ma2)および(ma3)中、X
1、X
2、X
3、X
4、Y
1およびY
2におけるペルフルオロアルキル基の炭素数は、1〜7が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜4が特に好ましい。該ペルフルオロアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、直鎖状が特に好ましい。該ペルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等が好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
X
1、X
2、X
3、X
4、Y
1およびY
2におけるペルフルオロアルコキシ基としては、前記ペルフルオロアルキル基に酸素原子(−O−)が結合したものが挙げられ、トリフルオロメトキシ基が特に好ましい。
前記ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基の炭素数が2以上である場合、該ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基の炭素原子間にエーテル性酸素原子(−O−)が介在してもよい。
【0032】
式(ma2)中、X
1はフッ素原子であることが好ましい。
X
2はフッ素原子、トリフルオロメチル基または炭素数1〜4のペルフルオロアルコキシ基であることが好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメトキシ基が特に好ましい。
X
3およびX
4はそれぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が特に好ましい。
X
3およびX
4は相互に結合して環を形成してもよい。前記環の環骨格を構成する原子の数は、4〜7個が好ましく、5〜6個であることがより好ましい。
【0033】
式(ma3)中、Y
1およびY
2はそれぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基または炭素数1〜4のペルフルオロアルコキシ基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0034】
化合物(ma2)の好ましい具体例として、化合物(ma21)〜(ma25)が挙げられる。
化合物(ma3)の好ましい具体例として、化合物(ma31)〜(ma32)が挙げられる。
【0036】
単位(a)としては、下記単位(a1)〜(a6)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
下記単位(a1)〜(a4)は化合物(ma1)の環化重合により形成された単位であり、化合物(ma1)の環化重合により下記単位(a1)〜(a4)の少なくとも1種が生成する。その際、下記単位(a1)〜(a4)のうち、脂肪族環の環骨格を構成する原子の数が5または6個となる構造の単位が生成しやすい。それらの単位の2種以上が含まれるポリマーが生成することもある。言い換えれば、化合物(ma1)としては、下記単位(a1)〜(a4)における、Q中の原子を含めた環骨格を構成する原子の数が5または6個となる構造の化合物(ma1)が好ましい。
下記単位(a5)は化合物(ma2)から形成された単位であり、下記単位(a6)は化合物(ma3)から形成された単位である。
【0038】
単位(a)としては、発光素子と光学部材とを接着する際に、ポリマー(II)が、後述するポリマー(I)からなる光学部材の表面との親和性に優れる点、およびポリマー(II)の化学的安定性に優れる点で、ジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成された単位が好ましい。
ポリマー(II)が有する単位(a)は1種でも2種以上でもよい。
【0039】
<単位(b)>
単位(b)は、下式(b)で表される単位である。
【0040】
【化5】
(ただし、R
fは、エーテル性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基であり、Xは、COOH、COOR、SO
2F、SO
3RまたはSO
3Hであり、Rは、炭素数1〜5のアルキル基である。)
【0041】
式(b)中、R
fにおけるペルフルオロアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましい。該ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜7がより好ましく、2〜5が特に好ましい。
該ペルフルオロアルキレン基はエーテル性酸素原子を有していてもよい。この場合、ペルフルオロアルキレン基中のエーテル性酸素原子の数は、1個でもよく2個以上でもよい。
R
fの具体例としては、下記のものが挙げられる。
−CF
2CF
2CF
2−、
−CF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2−、
−CF
2CF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2−、
−CF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
2−。
【0042】
COOR、SO
3RにおけるRのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましい。該アルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Xとしては、COOCH
3、SO
2F、COOH、SO
3Hが好ましい。
【0043】
単位(b)としては、式中の−O−R
f−Xが下記のいずれかであるものが好ましい。
−OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2COOCH
3、
−OCF
2CF
2CF
2COOCH
3、
−OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2SO
2F、
−OCF
2CF
2CF
2COOH、
−OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
2COOCH
3、
−OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2SO
3H。
【0044】
ポリマー(II)が有する単位(b)は1種でも2種以上でもよい。
単位(b)は、CF
2=CF−O−R
f−Xを重合させることにより形成できる。
【0045】
<単位(c)>
単位(c)は、単位(a)および単位(b)以外の他の単位である。
単位(c)としては、単位(a)単位(b)それぞれを形成する単量体と共重合可能な単量体に基づくものであればよく、特に限定されない。たとえば、重合性二重結合と反応性官能基とを有する単量体に基づく単位(ただし、単位(b)を除く。)(以下、「単位(c1)」ともいう。)、テトラフルオロエチレン等の含フッ素オレフィンに基づく単位、含フッ素ビニルエーテルに基づく単位等が挙げられる。
重合性二重結合としては、CF
2=CF−、CF
2=CH−、CH
2=CF−、CFH=CF−、CFH=CH−、CF
2=C<、−CF=CF−等が挙げられる。
単位(c)としては、単位(c1)を除いて、ペルフルオロ単位であることが好ましい。単位(c1)の場合は、その反応性官能基の部分を除いて、炭素原子に結合した水素原子を有しないことが好ましい。
【0046】
<組成>
ポリマー(II)中の単位(a)と単位(b)との合計の含有量は、ポリマー(II)を構成する全単位の合計に対して50〜100モル%であり、75〜100モル%が好ましく、85〜100モル%が特に好ましい。単位(a)と単位(b)との合計の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、ポリマー(II)がポリマー(I)からなる部材の表面との親和性、および接着剤から形成される接着部とポリマー(I)からなる部材との密着性に優れる。
【0047】
ポリマー(II)中の単位(a)と単位(b)とのモル比(a/b)は、70/30〜99/1であることが好ましく、80/20〜99/1が特に好ましい。a/bが前記範囲内であれば、ポリマー(II)のT
gが後述の範囲内となりやすい。また、a/bが前記範囲の下限値以上であれば、発光素子と光学部材とを接着する際に、ポリマー(II)が、ポリマー(I)からなる部材の表面との親和性に優れ、接着剤から形成される接着部とポリマー(I)からなる部材との間の密着性が優れる。また、a/bが前記範囲の上限値以下であれば、ポリマー(I)以外の他の材料(金属、合金等)からなる部材を接着する場合に、初期(接着直後)の密着性がより優れる。
【0048】
<反応性官能基>
反応性官能基は、ベーク等を行った際に、反応性官能基を有するポリマーの分子間、または該ポリマー以外の他の物質(金属、合金等)と反応して化学結合(水素結合、共有結合等)を形成し得る反応性を有する基を意味する。
反応性官能基としては、たとえば、カルボキシ基、酸ハライド基、アルコキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、カーボネート基、スルホ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、チオール基、シラノール基等が挙げられる。
【0049】
ポリマー(II)は、反応性官能基として少なくとも、単位(b)に由来するもの(−O−R
f−XにおけるX)を有する。
ポリマー(II)は、単位(b)に由来するもの以外の他の反応性官能基を有してもよく、有しなくてもよい。他の反応性官能基は、ポリマー(II)の主鎖末端に結合していてもよく、側基に含まれてもよい。たとえば前出の単位(c1)を有する場合、他の反応性官能基を側基に含むものとなる。
【0050】
<T
g>
ポリマー(II)のT
g(以下、「T
gII」ともいう。)は、30〜100℃であり、40〜95℃が好ましく、60〜90℃が特に好ましい。
T
gIIが前記範囲の上限値以下であれば、接着部が優れたタック性を有する。また、ポリマー(I)や他の材料からなる部材を接着する際のベーク(たとえば100℃以上のベーク)で接着剤の粘性が下がり、部材の表面の凹凸に接着剤が浸透し、接着部と部材との間の接着にアンカー効果が得られる。これらタック性やアンカー効果により、前記の部材と接着部とが優れた密着性を有する。該密着性は物理的作用(タック性、アンカー効果)によるものであるため、波長200〜400nmの紫外線に曝された場合でも密着性が低下しにくい。
T
gIIが前記範囲の下限値以上であれば、LED等の紫外線発光装置を構成する部材に求められる耐熱性や耐ヒートサイクル性を充分に有する。たとえば80℃以上の高温条件下や−40〜80℃のヒートサイクル条件下でも、接着部が溶融しにくく、接着している部材が剥離しにくい。
【0051】
T
gIIは、前記の範囲内であることに加えて、ポリマー(I)のT
g(以下、「T
gI」ともいう。)以下であることが好ましく、(T
gI−50℃)以上T
gI以下がより好ましく、(T
gI−50℃)以上(T
gI−10℃)以下が特に好ましい。T
gIIがT
gI以下であれば、発光素子と光学部材とを接着する際に、ポリマー(II)が、ポリマー(I)からなる部材の表面との親和性に優れ、接着部とポリマー(I)からなる部材との間の密着性に優れる。
【0052】
T
gIIは、ポリマー(II)中の単位(b)の含有量、単位(a)の種類等によって調整できる。たとえば単位(b)の含有量が多いほど、T
gIIが低くなる傾向がある。単位(a)が単位(a1)や単位(a2)である場合と、単位(a3)である場合とを比べると、単位(a)が単位(a1)や単位(a2)である場合の方が、T
gIIが低くなる傾向がある。
【0053】
<分子量>
ポリマー(II)の質量平均分子量は、1万〜15万が好ましく、3万〜13万がより好ましく、3万〜12万が特に好ましい。ポリマー(II)の質量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、接着部の機械的強度に優れ、上限値以下であれば、溶媒への溶解性に優れる。
ポリマー(II)の平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィにより測定される。
【0054】
接着剤(A)中のポリマー(II)の含有量は、接着剤(A)中の固形分に対して50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。ポリマー(II)の含有量が前記の下限値以上であれば、発光素子と光学部材とを接着する際に、ポリマー(II)が、ポリマー(I)からなる部材の表面との親和性に優れ、接着部とポリマー(I)からなる部材との間の密着性に優れる。
接着剤(A)中の固形分に対するポリマー(II)の割合の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。任意に配合される紫外線遮断剤以外の成分等の含有量に応じて適宜設定できる。
なお、接着剤(A)の固形分濃度は、接着剤の塗布方法、形成しようとする塗膜の厚さ等に応じて適宜設定すればよく、1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。
【0055】
(他の成分)
ポリマー(II)および紫外線遮断剤以外の成分としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されない。たとえば、屈折率を上げるためのSiO
2。ZrO
2、TiO
2等のゾル、接着性を向上するためのアミノシランやエポキシシラン等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
なお、ポリマー(I)〜(III)、溶媒および紫外線遮断剤以外の成分を、以下、「他の成分」ともいう。
材料(A)中の他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分の種類に応じて適宜設定できる。
【0056】
(溶媒)
材料(A)における溶媒としては、少なくともポリマー(II)を溶解する溶媒が用いられる。材料(A)が紫外線遮断剤として無機粒子および有機粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、ポリマー(II)を溶解する溶媒は、紫外線遮断剤を分散する分散媒としての機能を有してもよい。
溶媒としては、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒等が挙げられる。「プロトン性溶媒」とは、プロトン供与性を有する溶媒である。「非プロトン性溶媒」とは、プロトン供与性を有さない溶媒である。
【0057】
プロトン性溶媒としては、以下に示すプロトン性非含フッ素溶媒、プロトン性含フッ素溶媒等が挙げられる。
メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタオール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、乳酸メチル等のプロトン性非含フッ素溶媒。
2−(ペルフルオロオクチル)エタノール等の含フッ素アルコール、含フッ素カルボン酸、含フッ素カルボン酸のアミド、含フッ素スルホン酸等のプロトン性含フッ素溶媒。
【0058】
非プロトン性溶媒としては、以下に示す非プロトン性非含フッ素溶媒、非プロトン性含フッ素溶媒等が挙げられる。
ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、デカリン、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、ジメトキシエタン、モノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジグライム、トリグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート(PGMEA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、アニソール、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン、メチルナフタレン等の非プロトン性非含フッ素溶媒。
1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のポリフルオロ芳香族化合物、ペルフルオロトリブチルアミン等のポリフルオロトリアルキルアミン化合物、ペルフルオロデカリン等のポリフルオロシクロアルカン化合物、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のポリフルオロ環状エーテル化合物、ペルフルオロポリエーテル、ポリフルオロアルカン化合物、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等の非プロトン性含フッ素溶媒。
【0059】
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。またこれらの他にも広範な化合物が使用できる。
これらのうち、ポリマー(II)の溶解に用いる溶媒としては、ポリマー(II)の溶解度が大きく、良溶媒である点で、非プロトン性含フッ素溶媒が好ましい。
溶媒として、ポリマー(I)からなる部材等の、接着しようとする部材を溶解する溶媒を用いることも好ましい。これにより、該部材と接着部との間の密着性がより優れる。
溶媒の沸点は、接着剤(1)を塗布した際に均一な塗膜を形成しやすいことから、65〜220℃が好ましく、70〜220℃が特に好ましい。
溶媒の含有量は、接着剤(A)の固形分濃度に応じて設定される。
【0060】
(接着剤(A)の調製方法)
接着剤材料(A)は、ポリマー(II)またはその溶液を得て、必要に応じて他の成分、溶媒等を混合することにより調製できる。
ポリマー(II)またはその溶液は、所望のものが市販されていればそれを用いてもよく、各種原料化合物から重合等の適当な方法により製造してもよい。たとえば、特許第2526641号公報等に記載された製造方法に準じてポリマー(II)を製造できる。
【0061】
(接着剤(B))
接着剤(B)は、含フッ素脂肪族環構造を有するフルオロポリマー(以下、接着剤(B)中に含まれる該フルオロポリマーを「ポリマー(III)」ともいう。)と紫外線遮断剤とを含む接着剤である。接着剤(B)が紫外線遮断剤を含むと、波長200〜400nmの紫外線によるポリマー(III)の劣化や分解、それに伴う密着性の低下がより生じにくい。接着剤(B)がポリマー(III)と紫外線遮断剤を含むことで、接着部が波長200〜400nmの紫外線を光源とする紫外線発光装置に用いられるポリマー(I)からなる部材を、他の材料からなる部材やポリマー(I)からなる他の部材に対し、優れた密着性で接着できる。また、該密着性が、波長200〜400nmの紫外線や高温(たとえば50〜90℃)に曝されても低下しにくく、耐光性や耐熱性にも優れる。
【0062】
上記の効果を奏する理由として、含フッ素脂肪族環構造を有するためにポリマー(III)がポリマー(I)からなる部材の表面との親和性に優れ、紫外線発光装置の光源からの波長200〜400nmの紫外線が紫外線遮断剤によって吸収および/または反射されるために、ポリマー(III)に照射される紫外線の量が少なくなり、紫外線によるポリマー(III)の主鎖や反応性官能基の分解が抑制されること等が挙げられる。
【0063】
接着剤(B)は、必要に応じて、ポリマー(III)および紫外線遮断剤以外の成分をさらに含んでもよい。
接着剤(B)は、必要に応じて、溶媒をさらに含んでいてもよい。
【0064】
(ポリマー(III))
ポリマー(III)は、含フッ素脂肪族環構造を有する。
ポリマー(III)は、反応性官能基が存在する場合はその反応性官能基部分を除いて、ペルフルオロポリマーであることが好ましい。
含フッ素脂肪族環構造としては、ポリマー(II)の単位(a)における含フッ素脂肪族環構造と同様のものが挙げられる。
ポリマー(III)としては、たとえば、前記単位(a)を有するフルオロポリマーが挙げられる。単位(a)としては、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する単位が好ましく、ジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成された単位、環状含フッ素単量体に基づく単位が特に好ましい。
ジエン系含フッ素単量体、環状含フッ素単量体はそれぞれ、単位(a)の説明で挙げたものと同様であり、好ましい態様も同様である。
ポリマー(III)は、単位(a)以外に、たとえば前述の単位(b)、単位(c)を有していてもよい。
【0065】
単位(a)としてジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成された単位を有する場合、単位(a)の割合は、ポリマー(III)を構成する全単位の合計に対し、50モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。
単位(a)として環状含フッ素単量体に基づく単位を有する場合、単位(a)の割合は、ポリマー(III)を構成する全単位の合計に対し、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。
なお、ジエン系含フッ素単量体と環状含フッ素単量体との共重合により得られる重合体は、環状含フッ素単量体に基づく単位を有するポリマーとして考える。
【0066】
ポリマー(III)は、反応性官能基を有することが好ましい。
接着剤(B)が、ポリマー(I)からなる部材とポリマー(I)以外の他の材料からなる部材とを接着する場合や、ポリマー(I)が反応性官能基を有する場合、ポリマー(III)が反応性官能基を有すると、他の材料やポリマー(I)の反応性官能基と反応し、より優れた密着性が得られる。また、接着剤(B)が紫外線遮断剤を含むため、反応性官能基の紫外線による分解が生じにくく、反応性官能基による効果が長期にわたって発揮されやすい。
反応性官能基としては、前記と同様のものが挙げられる。
反応性官能基としては、カルボキシ基、酸ハライド基、アルコキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、カーボネート基、スルホ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、チオール基、シラノール基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、カルボキシ基またはアルコキシカルボニル基が特に好ましい。
反応性官能基は、ポリマー(III)の主鎖末端に結合していてもよく、側基に含まれてもよい。側基に含まれる場合には、前述のポリマー(II)中の単位(b)を含むポリマーであることが好ましい。その際、ポリマー(III)中の単位(a)と単位(b)との合計の含有量の好ましい範囲としては、ポリマー(II)と同様のものが挙げられる。製造しやすい点からは、主鎖末端に結合していることが好ましい。主鎖末端に反応性官能基が含まれる場合には、重合開始剤または連鎖移動剤として反応性官能基を有する化合物を使用して得られるポリマーであることが好ましい。
【0067】
ポリマー(III)としては、反応性官能基を有しかつジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成された単位を有するポリマーが好ましく、ジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成された単位からなり、主鎖末端に反応性官能基を有するポリマーが特に好ましい。
【0068】
ポリマー(III)のT
gは、30〜180℃が好ましい。ポリマー(II)で説明したように、タック性やアンカー効果に優れる点からは、30〜100℃がより好ましく、40〜95℃がさらに好ましく、60〜90℃が特に好ましい。
【0069】
(紫外線遮断剤)
紫外線遮断剤は、紫外線を吸収する機能および紫外線を反射する機能のいずれか一方または両方を有する添加剤である。
紫外線遮断剤としては、特に限定されず、公知のものを使用できる。接着剤の貯蔵安定性に優れる点では、無機粒子および有機粒子からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
無機粒子および有機粒子からなる群から選択される少なくとも1種である場合の紫外線遮断剤の平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.01〜3μmが特に好ましい。
【0070】
無機粒子としては、金属粒子、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子、金属炭化物粒子、炭素同素体、ガラス粒子、セラミクス粒子、複酸化物粒子等が挙げられる。具体例としては、Al粒子、AlN粒子、Al
2O
3粒子、Ag粒子、Au粒子、BN粒子、BaTiO
3粒子、Bi
2O
3粒子、CeO
2粒子、CoO粒子、Cr粒子、CrO
3粒子、Cu粒子、CuO粒子、Dy
2O
3粒子、Er
2O
3粒子、Eu
2O
3粒子、Fe粒子、Fe
2O
3粒子、Fe
2O
5粒子、Gd
2O
3粒子、Ho
2O
3粒子、In
2O
3粒子、ITO粒子、La
2O
3粒子、Lu
2O
3粒子、MgO粒子、Mn
3O
4粒子、Mo粒子、Nd
2O
3粒子、Ni粒子、NiO粒子、Pd粒子、Pr
6O
11粒子、Pt粒子、Sc
2O
3粒子、Si粒子、SiC粒子、Si
3N
4粒子、SiO
2粒子、Sm
2O
3粒子、Sn粒子、SnO
2粒子、SrTiO
3粒子、Ta粒子、Tb
4O
7粒子、Ti粒子、TiC粒子、TiN粒子、TiO
2粒子、Tm
2O
3粒子、W粒子、WC粒子、Y
2O
3粒子、Yb
2O
3粒子、Zn粒子、ZnO粒子、ZrC粒子、ZrO
2粒子、コバルトブルー、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、グラフェン、フラーレン、ゼオライト等が挙げられる。
有機粒子としては、樹脂粒子等が挙げられる。具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子、ポリフェニレンスルフィド粒子、ポリアミドイミド粒子、ポリエーテルスルホン粒子、エポキシ粒子、ナイロン粒子、ポリメタクリル酸エステル粒子等が挙げられる。
これらの粒子はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記の中では、カーボンブラック、PTFE粒子、TiO
2粒子、SiO
2粒子、ZnO粒子、ZrO
2粒子が好ましい。
【0071】
接着剤(B)中の紫外線遮断剤の含有量は、紫外線遮断剤の種類によっても異なるが、ポリマー(III)に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。紫外線遮断剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、接着部の耐光性に優れる。紫外線遮断剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、接着部の初期の密着性、接着剤の表面平坦性等に優れる。
【0072】
材料(B)中のポリマー(III)と紫外線遮断剤との合計の含有量は、接着剤(B)中の固形分に対して50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。ポリマー(III)と紫外線遮断剤との合計の含有量が前記の下限値以上であれば、部材と接着部とが優れた密着性を有する。
接着剤(B)中の固形分に対するポリマー(III)と紫外線遮断剤との合計の割合の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。任意に配合される他の成分の含有量に応じて適宜設定できる。
なお、接着剤(B)の固形分は、ポリマー(III)と紫外線遮断剤と他の成分との合計量である。
【0073】
(他の成分)
他の成分としては、第一の態様における他の成分と同様のものが挙げられる。
接着剤(B)中の他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分の種類に応じて適宜設定できる。
【0074】
(溶媒)
接着剤(B)における溶媒としては、少なくともポリマー(III)を溶解する溶媒が用いられる。ポリマー(III)を溶解する溶媒は、紫外線遮断剤を分散する分散媒としての機能を有してもよい。
溶媒としては、第一の態様における溶媒と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0075】
溶媒の含有量は、接着剤(B)の固形分濃度に応じて設定される。
材料(B)の固形分濃度は、接着剤の塗布方法、形成しようとする塗膜の厚さ等に応じて適宜設定すればよく、1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。
【0076】
(接着剤(B))
接着剤(B)は、ポリマー(III)またはその溶液と、紫外線遮断剤と、必要に応じて他の成分、溶媒等を混合することにより調製できる。
ポリマー(III)またはその溶液は、所望のものが市販されていればそれを用いてもよく、各種原料化合物から重合等の適当な方法により製造してもよい。たとえば、特許第2526641号公報等に記載された製造方法に準じてポリマー(III)を製造できる。
【0077】
〔紫外線発光装置〕
図1は、本発明における紫外線発光装置の一例を示す概略断面図である。
この例の紫外線発光装置10は、発光素子1と、ポリマー(I)からなるレンズ(光学部材)9と、発光素子1とレンズ9とを接着する接着部11と、を備える。
発光素子1は、基板3と、波長200〜400nmの紫外線を発生するLEDダイ5と、枠状の支持台7と、を備える。
LEDダイ5は基板3の表面に実装されている。
支持台7は、基板3上に、LEDダイ5を囲むように配置されている。
レンズ9は、LEDダイ5の上方にLEDダイ5から離間して、支持台7の開口を塞ぐように配置されている。
紫外線発光装置10においては、基板3と支持台7とレンズ9とによって、LEDダイ5を収容する空間Sが形成されている。
【0078】
基板3としては、プリント配線基板、リードフレーム等が挙げられる。
LEDダイ5が発生する紫外線の波長は200〜400nmであり、200〜370nmが好ましい。紫外線の波長が短いほど、本発明の有用性が高い。
LEDダイ5の材質としては、GaAs、AIN、AlGaN、AlInGaN等が挙げられる。
【0079】
支持台7は、側壁部7aと天面部7bとを有する。天面部7bには開口7cが形成されている。側壁部7aの内壁の上端には、全周にわたって溝7dが形成されている。溝7dに接着部11が設けられている。
支持台7の材料としては、コバール(Ni−Co合金)、Cu−Zn系銅合金、Cu−Fe系銅合金、Cr−Zr系銅合金、ステンレス等の合金、Cu、Al、Ni等の金属、アルミナ等のセラミックス、ガラス等が挙げられる。これらのうち、軽量かつ耐久性に優れる点で、合金、セラミックス、Alが好ましい。
【0080】
レンズ9は、上面がドーム形状で下面が平坦な砲弾型のレンズ本体9aと、レンズ本体9aの下端部の周面に全周にわたって設けられた鍔部9bとからなる。
鍔部9bの幅(基板3の表面に対して垂直方向における幅)は、支持台7の溝7dの幅とほぼ同じである。
レンズ本体9aの直径は、支持台7の開口7cの直径と同じかわずかに小さい大きさであり、鍔部9bの直径は、支持台7の開口7cの直径より大きく、かつ側壁部7aの内径よりも小さい大きさとされている。これにより、支持台7の開口7cの下側からレンズ9を開口7cに挿入したときに、鍔部9bの上面が天面部7bの下面と接するようになっている。
レンズ9は、鍔部9bの先端が接着部11と接しており、接着部11により支持台7に固定されている。
【0081】
この例においては、接着部11が、本発明の接着剤から形成される。
たとえば、以下の手順で紫外線発光装置10が得られる。まず、支持台7の溝7dの位置に接着剤を塗布し、必要に応じて乾燥する。次いで、支持台7の開口7cの下側からレンズ9を開口7cに挿入して鍔部9bを、乾燥させた接着剤と接触させ、その状態でベークする。これにより、乾燥させた接着剤が接着部11となり、接着部11によって支持台7とレンズ9とが接着される。次いで、レンズ9が接着された支持台7を、LEDダイ5が実装された基板3上に配置することで、紫外線発光装置10が得られる。
【0082】
接着剤の塗布方法としては、特に限定されず、公知の塗布方法を利用できる。たとえば、スピンコート法、ポッティング法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。
塗布後の乾燥方法としては、特に限定されず、公知の乾燥方法を利用できる。加熱、真空、加熱と真空の併用等が挙げられる。
【0083】
支持台7とレンズ9とを接着する際のベーク温度は、典型的には、接着剤中のポリマーのT
g以上の温度であり、T
gIおよび接着剤中のポリマーのT
gのうち高い方のT
g以上の温度が好ましく、T
gIおよび接着剤中のポリマーのT
gのうち高い方のT
g+50℃以上の温度が特に好ましい。
ベーク温度の上限は、特に限定されないが、レンズ9が劣化しにくい点で、T
gIおよび接着剤中のポリマーのT
gのうち高い方のT
g+100℃以下が好ましく、T
gIおよび接着剤中のポリマーのT
gのうち高い方のT
g+80℃以下が特に好ましい。
【0084】
図2は、本発明における紫外線発光装置の他の一例を示す概略断面図である。
この例の紫外線発光装置20は、発光素子21と、光ファイバ(光学部材)29と、発光素子21と光ファイバ29とを接着する接着部31と、を備える。
発光素子21は、基板23と、波長200〜400nmの紫外線を発生するLEDダイ25と、ポリマー(I)からなる封止材27とを備える。
基板23は、LEDダイ25を実装するための配線23aと、凹部23bとを有し、配線23aは、凹部23bの底面に設けられている。凹部23bの底面にLEDダイ25が実装され、凹部23b内に封止材27が充填されている。発光素子21の上面は、封止材27によって平坦面となっている。発光素子21の上面の封止材27の部分に、接着部31によって光ファイバ29が固定されている。
【0085】
基板23の材質としては、コバール、Al、セラミック等が挙げられる。
配線23aの材質としては、Au、Ag、Al、Cu等が挙げられる。
LEDダイ25としては、前記のLEDダイ5と同様のものが挙げられる。
光ファイバ29の材質としては、石英、サファイア、ペルフルオロフッ素樹脂(たとえば実施例で使用のCTX−809S(商品名、旭硝子社製)中のポリマー)等が挙げられる。
【0086】
発光素子21の封止材27の上に光ファイバ29を配置し、光ファイバ29の下端部の周囲に本発明の接着剤を塗布し、必要に応じて乾燥した後、ベークすることにより、封止材27と光ファイバ29とが接着され、紫外線発光装置20が得られる。
接着剤の塗布方法よび乾燥方法は前記と同様であり、ベークの好ましい範囲も前記と同様である。
【0087】
図3は、本発明における紫外線発光装置の他の一例を示す概略断面図である。
この例の紫外線発光装置40は、発光素子41と、ポリマー(I)からなる平板上の透光窓(光学部材)49と、発光素子41と透光窓49とを接着する接着部51と、を備える。
発光素子41は、基板43と、フレーム45と、波長200〜400nmの紫外線を発生する複数のLEDダイ47とを備える。
LEDダイ47は基板43の表面に実装されている。フレーム45は、基板43上に、複数のLEDダイ47を囲むように配置されている。フレーム45の上面に接着部51が形成されている。透光窓49は、フレーム45の上にフレーム45の開口を塞ぐように配置され、接着部51によってフレーム45と接着されている。フレーム45の高さはLEDダイ47の高さよりも高く、LEDダイ47と透光窓49は離間している。
紫外線発光装置40においては、基板43とフレーム45と透光窓49とによって、複数のLEDダイ47を収容する空間Sが形成されている。
【0088】
基板43およびフレーム45の材質としては、Al、シリコン、セラミックス、SiC、GaN、ガラス、タングステン、モリブデン、サファイア等が挙げられる。基板43とフレーム45の材質は同一であっても異なっていてもよい。
LEDダイ47としては、前記のLEDダイ5と同様のものが挙げられる。
【0089】
発光素子41のフレーム45の上面に本発明の接着剤を塗布し、必要に応じて乾燥する。次いで、フレーム45の上に透光窓49を配置し、乾燥させた接着剤と接触させた状態でベークする。これにより、乾燥させた接着剤が接着部51となり、接着部51によってフレーム45と透光窓49とが接着され、紫外線発光装置40が得られる。
接着剤の塗布方法および乾燥方法は前記と同様であり、ベークの好ましい範囲も前記と同様である。
【0090】
なお、本発明における紫外線発光装置は、上記の例に限定されない。上記の例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
紫外線発光装置は、
図1〜3に示すものに限定されない。
光学部材であるレンズ、光ファイバ、透光窓の形状は前記のものに限定されない。
発光素子は、発光素子1、21、41以外の構成のLED素子を用いてもよい。
【0091】
(発光素子や光学部材を形成するポリマー(I))
ポリマー(I)は、含フッ素脂肪族環構造を有するフルオロポリマーが好ましい。
ポリマー(I)は、反応性官能基が存在する場合はその反応性官能基部分を除いて、ペルフルオロポリマーであることが好ましい。
含フッ素脂肪族環構造としては、ポリマー(II)の単位(a)における含フッ素脂肪族環構造と同様のものが挙げられる。
ポリマー(I)としては、たとえば、前記単位(a)を有するポリマーが挙げられる。単位(a)としては、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する単位が好ましく、ジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成された単位、環状含フッ素単量体に基づく単位が特に好ましい。
ジエン系含フッ素単量体、環状含フッ素単量体はそれぞれ、単位(a)の説明で挙げたものと同様であり、好ましい態様も同様である。
ポリマー(I)は、単位(a)以外に、たとえば前述の単位(b)、単位(c)を有していてもよい。
【0092】
単位(a)としてジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成された単位を有する場合、単位(a)の割合は、ポリマー(I)を構成する全単位の合計に対し、50モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。
単位(a)として環状含フッ素単量体に基づく単位を有する場合、単位(a)の割合は、ポリマー(I)を構成する全単位の合計に対し、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。
【0093】
ポリマー(I)は、反応性官能基を有してもよく、有しなくてもよい。反応性官能基としては、前記と同様のものが挙げられる。
反応性官能基を有する場合、反応性官能基は、ポリマー(I)の主鎖末端に結合していてもよく、側基に含まれてもよい。
波長200〜400nmの紫外線に対する透明性、耐光性の点では、ポリマー(I)は反応性官能基を有しないことが好ましい。したがって、前述の単位(b)、単位(c)を有さず、主鎖末端に結合する基が反応性官能基以外の基(たとえばトリフルオロメチル基)であることが好ましい。
【0094】
ポリマー(I)のT
gは90℃以上であることが好ましく、100〜180℃であることが特に好ましい。本実施態様における紫外線発光装置の光学素子と接着部の組合せ、すなわちポリマー(I)とポリマー(II)の組合せにおいては、ポリマー(I)のT
gがポリマー(II)のT
gよりも高くなるように組み合わせることが好ましい。
【0095】
ポリマー(I)からなる部材を備える発光素子や、ポリマー(I)からなる光学部材は、所望のものが市販されていればそれを用いてもよく、ポリマー(I)を用いて製造してもよい。ポリマー(I)は、所望のものが市販されていればそれを用いてもよく、各種原料化合物から重合等の適当な方法により製造してもよい。たとえば、特許第2526641号公報等に記載された製造方法に準じてポリマー(I)を製造できる。ポリマー(I)の市販品としては、サイトップ(登録商標、旭硝子社製)等が挙げられる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
後述の例1〜10のうち、例3、5〜6および8〜10が実施例であり、例1〜2および4が比較例であり、例7が参考例である。
各例で使用した材料および評価方法を以下に示す。
【0097】
(使用材料)
光学部材(1):下記フルオロポリマー(1)を、厚さ200μmのフィルム状になるようプレス成形したもの。
フルオロポリマー(1):ペルフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)(以下、「BVE」ともいう。)を環化重合して得られたホモポリマーであって、主鎖末端基がCF
3であるポリマー。
フルオロポリマー(1)は、CTX−809S(商品名、旭硝子社製)の溶媒を除去することにより得た。
【0098】
光学部材(2):下記フルオロポリマー(2)を、厚さ200μmのフィルム状になるようプレス成形したもの。
フルオロポリマー(2):ペルフルオロアリルビニルエーテル(以下、「AVE」ともいう。)を環化重合して得られたホモポリマーであって、主鎖末端基がCOOHであるポリマー。
フルオロポリマー(2)は、特許第2526641号公報の実施例1に準じてAVEを環化重合した後、国際公開第2010/032759号の製造例1に準じて得られた重合体に熱処理を行った後、末端基を加水分解してCOOHとした。
【0099】
光学部材(3):下記フルオロポリマー(3)を、厚さ200μmのフィルム状になるようプレス成形したもの。
フルオロポリマー(3):2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソールとテトラフルオロエチレンとの共重合体であるテフロン(登録商標)AF1600。テフロン(登録商標)AF1600を溶媒に溶解してなるテフロン(登録商標)AF1600S(三井・デュポンフロロケミカル社製)の溶媒を除去することより得た。
【0100】
光学部材(1)〜(3)は、波長200〜400nmでの透過率は80%以上と高かった。なお、該透過率は、分光光度計UV−3100(型番、島津製作所社製)により測定した。
【0101】
(評価方法)
ガラス転移温度(T
g):
JIS K 7121:2012年版に準拠して測定した中間点ガラス転移温度である。
【0102】
評価サンプル作成方法:
スピンコータに3cm角の基板(材質:コバール)を設置し、毎分1,000回の回転数で回転させ、基板表面に接着剤を0.5mL滴下し、150℃で1時間ベークして乾燥膜を形成した。次いで、2cm角に切った光学部材を乾燥膜の上に載せ、150℃で2時間ベークした。これにより、基板/接着部/光学部材の層構成の評価サンプルを得た。
【0103】
初期密着(碁盤目法):
評価サンプル(基板/接着部/光学部材)の光学部材に、Cotec社製クロスカットガイドCCI−2(型番)を用いてカッターで2mm×2mmサイズのセルを25マス切った。その後、該光学部材上にセロテープ(登録商標)(ニチバン社製、型番:CT−18)を貼り、剥離する操作を10回行った。評価サンプルの光学部材面を20倍光学顕微鏡で観察し、25マスのうち剥離しなかったマスの数を数えた。
上記の結果から、剥離しなかったマスの数が20個以上であった場合を○(良好)、剥離しなかったマスの数が20個未満であった場合を×(不良)とした。
【0104】
耐光性:
波長185nmをカットする蛍光管からなる低圧水銀灯(ウシオ電機社製、型番:SUV−40L)を、照度10mW/cm
2になるよう調整し、評価サンプルの光学部材面に紫外線(波長254nm)を200時間照射した。照射後、初期密着と同じ碁盤目法で密着性を評価した。
【0105】
耐熱性:
評価サンプルを垂直に立て、80℃オーブンに200時間入れて加熱した。その後、光学部材の脱離や位置のずれの有無を目視で確認した。
光学部材の脱離が起きず、初期(加熱前)と同じ位置であった場合を○(良好)、光学部材の脱離が起きた場合と、脱離が起きなくても初期の位置から1mm以上ずれた場合を×(不良)とした。
【0106】
(製造例1)
3−アミノプロピルトリメトキシシランを濃度0.1質量%になるようにエタノールで希釈して接着剤(a)を得た。
【0107】
(製造例2)
CTL−809A(商品名、旭硝子社製)にペルフルオロトリブチルアミンを追加して、フルオロポリマー(4)が濃度4質量%の溶液を調整し、接着剤(b)とした。フルオロポリマー(4)は、前記フルオロポリマー(2)と同様のBVEを環化重合して得られたホモポリマーであって、主鎖末端基がCOOHであるポリマーであり、T
gは108℃であった。
【0108】
(製造例3)
特許第2526641号公報の実施例11を参照し、以下の手順でフルオロポリマー(5)を製造した。
BVEの24.5gと、CF
2=CF−OCF
2CF
2CF
2COOCH
3(以下、「MXM」ともいう。)の3gと、重合開始剤としてパーロイルIPP(商品名、日本油脂社製)の0.04gとをアンプルに入れ、40℃で24時間反応させてフルオロポリマー(5)を得た。フルオロポリマー(5)の組成は、BVEの環化重合により形成された単位/MXMに基づく単位=9/1(モル比)であり、T
gは73℃であった。
得られたフルオロポリマー(5)をペルフルオロトリブチルアミンに、濃度4質量%となるように溶解して接着剤(c)を得た。
【0109】
(製造例4)
BVEの量を7.9gとし、MXMの量を13gとした以外は例1と同様に反応を行ってフルオロポリマー(6)を得た。フルオロポリマー(6)の組成は、BVEの環化重合により形成された単位/MXMに基づく単位=4/6(モル比)であり、T
gは10℃であった。
得られたフルオロポリマー(6)をペルフルオロトリブチルアミンに、濃度4質量%となるように溶解して接着剤(d)を得た。
【0110】
(製造例5)
製造例2で製造した溶液にカーボンブラック(三菱化学社製、品番:MA−600)を、カーボンブラックがフルオロポリマーに対して7質量%となるように分散させて接着剤(e)を得た。
【0111】
(製造例6)
前記フルオロポリマー(2)をペルフルオロトリブチルアミンに、濃度4質量%となるように溶解して接着剤(f)を得た。
【0112】
(製造例7)
製造例2で製造した溶液にPTFE微粒子(旭硝子社製、品番:L170A)を、PTFE微粒子がフルオロポリマーに対して7質量%となるように分散させて接着剤(g)を得た。
【0113】
(製造例8)
製造例2で製造した溶液にTiO
2微粒子(堺化学工業社製、品番:D−2667)を、TiO
2微粒子がフルオロポリマーに対して7質量%となるように分散させて接着剤(h)を得た。
【0114】
(製造例9)
BVEの100gと、連鎖移動剤としてメタノールの0.5gと、重合開始剤としてパーロイルIPP(商品名、日本油脂社製)の0.7gとをオートクレーブ(耐圧ガラス製)を入れて密閉した。オートクレーブ内で40℃で22時間反応させて、BVEの環化重合体を得た。該重合体の固有粘度は、30℃のペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中で0.2dl/gであった。次に該重合体を熱風循環式オーブン中で、大気雰囲気下にて300℃で1時間熱処理し、さらにメタノール中に60℃で20時間浸漬した。次いで100℃で24時間真空乾燥させてフルオロポリマー(7)を得た。フルオロポリマー(7)は、主鎖末端がCOOCH
3であるポリマーであり(IRスペクトル分析で確認。)、T
gは108℃であった。
得られたフルオロポリマー(7)をペルフルオロトリブチルアミンに、濃度4質量%となるように溶解した。さらに、カーボンブラック(三菱化学社製、品番:MA−600)を、カーボンブラックがフルオロポリマーに対して7質量%となるように分散させて、接着剤(i)を得た。
【0115】
(例1〜10)
各製造例で得た接着剤を用いて評価サンプルを作製し、初期密着、耐光性、耐熱性を評価した。結果を表1に示す。また、各例で評価サンプルの作製に用いた光学部材の種類と該光学部材を構成するフルオロポリマーのT
gを表1に併記する。
なお、初期密着の評価結果が×であった例1については、耐光性および耐熱性の評価は行わなかった。
【0116】
【表1】
【0117】
本発明の接着剤を使用した例3、5〜6および8〜10は初期密着、耐光性、耐熱性が全て優れていた。
密着性向上のために一般的に用いられているシランカップリング剤を用いた例1は初期密着が悪かった。
T
gが100℃超のフルオロポリマーを用いた例2は、耐光性が悪かった。
T
g10℃のポリマーを用いた例4は、耐熱性が劣っていた。
また、例2〜4の結果から、BVEとMXMとの比率を変化させることで、T
gを幅広く変化させ得ることが確認できた。AVEのホモポリマーを用いている例7の接着剤(f)では、T
gを選択することができない。幅広いT
gを選択できることは、接着する部材の選択の幅が広がる等の点で有利な効果である。
なお、2014年7月15日に出願された日本特許出願2014−144975号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。