特許第6465250号(P6465250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465250
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】アクリルゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/24 20060101AFI20190128BHJP
   C08F 6/22 20060101ALI20190128BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   C08F2/24 Z
   C08F6/22
   C08L33/04
【請求項の数】16
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-506445(P2018-506445)
(86)(22)【出願日】2017年10月30日
(86)【国際出願番号】JP2017039179
(87)【国際公開番号】WO2018079785
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2018年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-213493(P2016-213493)
(32)【優先日】2016年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-13291(P2017-13291)
(32)【優先日】2017年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 奨
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩文
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−212574(JP,A)
【文献】 特開2010−126576(JP,A)
【文献】 特公昭28−005039(JP,B1)
【文献】 特開2014−050818(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/159047(WO,A1)
【文献】 特開2014−224177(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/038679(WO,A1)
【文献】 特開2011−089014(JP,A)
【文献】 特開2010−275496(JP,A)
【文献】 特開2007−056081(JP,A)
【文献】 特開昭61−136501(JP,A)
【文献】 特公昭47−19611(JP,B1)
【文献】 高岡恒郎,合成ゴムとその製造法(第11回)アクリルゴムとその製造法,日本ゴム協会誌,1972年,Vol.45, No.9,p.817(75)-820(78)
【文献】 立道秀麿,アクリルゴムの最近の動向,高分子,1960年,Vol.9, No.9,p.774-777
【文献】 本山卓彦,乳化重合,油化学,1969年,Vol.18 Supplement,p.158-165
【文献】 国沢新太郎 外,ラテックス用配合薬品(その2) 主として水相に対して作用する薬品,日本ゴム協会誌,1973年,Vol.46, No.12,p.1002(64)-1008(70)
【文献】 杉山学,ゴムの工業的合成法 第6回 アクリルゴム,日本ゴム協会誌,2016年 3月,Vol.89, No.1,p.10-15
【文献】 乳化・可溶化の技術,工学図書株式会社,1976年,第194〜197頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60,6/00−246/00
C08L 1/00−101/16
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルゴムを製造する方法であって、
ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の存在下、前記アクリルゴムを形成するための単量体を乳化重合することで、乳化重合液を得る乳化重合工程と、
前記乳化重合液に、凝固剤を添加して凝固させることで、含水クラムを得る凝固工程と、を備え
前記乳化重合工程において、前記アクリルゴムを形成するための単量体を、前記ノニオン性乳化剤、前記アニオン性乳化剤および水と混合してなる単量体乳化液の状態にて、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら乳化重合反応を行い、かつ
前記単量体乳化液中の水の使用量を、前記アクリルゴムを形成するための単量体100重量部に対し、10〜70重量部とするアクリルゴムの製造方法。
【請求項2】
前記ノニオン性乳化剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである請求項1に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項3】
前記ノニオン性乳化剤が、ポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシド共重合体である請求項1に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項4】
前記アニオン性乳化剤が、高級アルコール硫酸エステル塩である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項5】
前記アニオン性乳化剤が、ラウリル硫酸ナトリウムである請求項4に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項6】
前記ノニオン性乳化剤の使用量が、前記アクリルゴムを形成するための単量体100重量部に対して、0重量部超、4重量部以下である請求項1〜5のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項7】
前記ノニオン性乳化剤の使用量が、前記アクリルゴムを形成するための単量体100重量部に対して、0.7〜1.7重量部である請求項6に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項8】
前記アニオン性乳化剤の使用量が、前記アクリルゴムを形成するための単量体100重量部に対して、0重量部超、4重量部以下である請求項1〜7のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項9】
前記アニオン性乳化剤の使用量が、前記アクリルゴムを形成するための単量体100重量部に対して、0.35〜0.75重量部である請求項8に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項10】
前記ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の使用量を、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、10/90〜80/20とする請求項1〜9のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項11】
前記ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の使用量を、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、50/50〜75/25とする請求項10に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項12】
前記凝固剤が、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムである請求項1〜11のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項13】
前記凝固工程における凝固温度が、78〜90℃である請求項1〜12のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項14】
前記乳化重合工程において、前記単量体乳化液、重合開始剤および還元剤を、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら乳化重合反応を行う請求項1〜13のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法により得られるアクリルゴムに、架橋剤を配合する工程を備えるアクリルゴム組成物の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の製造方法により得られるアクリルゴム組成物を架橋する工程を備えるゴム架橋物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴムの製造方法に関し、さらに詳しくは、重合時における重合装置の汚れの発生を適切に抑制することができ、かつ、含水クラムの互着の発生を有効に防止可能なアクリルゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、一般に耐熱性、耐油性および耐オゾン性に優れたゴムとして知られており、自動車関連の分野などで広く用いられている。
【0003】
このようなアクリルゴムは、通常、アクリルゴムを構成する単量体混合物を乳化重合し、得られた乳化重合液に、凝固剤を添加することで凝固させ、凝固により得られた含水クラムを乾燥することで製造される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、特許文献1に記載のアクリルゴムなどの従来のアクリルゴムにおいては、凝固後の含水クラム同士の互着が発生してしまう場合があり、このような含水クラムの互着が発生してしまうと、凝固後の洗浄の効率が低下したり、含水クラムを乾燥する際の乾燥時間を長くする必要が生じたり、生産性が低下してしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−145291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、重合時における重合装置の汚れの発生を適切に抑制することができ、かつ、含水クラムの互着の発生を有効に防止可能なアクリルゴムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、アクリルゴムを形成するための単量体を乳化重合する際に、ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の存在下で乳化重合を行うことで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、アクリルゴムを製造する方法であって、ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の存在下、前記アクリルゴムを形成するための単量体を乳化重合することで、乳化重合液を得る乳化重合工程と、前記乳化重合液に、凝固剤を添加して凝固させることで、含水クラムを得る凝固工程と、を備えるアクリルゴムの製造方法が提供される。
【0009】
本発明の製造方法において、前記ノニオン性乳化剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、またはポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシド共重合体であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記アニオン性乳化剤が、高級アルコール硫酸エステル塩、またはラウリル硫酸ナトリウムであることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記ノニオン性乳化剤の使用量が、前記アクリルゴムを形成するための単量体100重量部に対して、0重量部超、4重量部以下であることが好ましく、0.7〜1.7重量部であることがより好ましい。
本発明の製造方法において、前記アニオン性乳化剤の使用量が、前記アクリルゴムを形成するための単量体100重量部に対して、0重量部超、4重量部以下であることが好ましく、0.35〜0.75重量部であることがより好ましい。
本発明の製造方法において、前記ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の使用量を、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、10/90〜80/20とすることが好ましく、50/50〜75/25とすることがより好ましい。
本発明の製造方法において、前記凝固剤が、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムであることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記凝固工程における凝固温度が、78〜90℃であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記乳化重合工程において、前記アクリルゴムを形成するための単量体、重合開始剤および還元剤を、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら乳化重合反応を行うことが好ましい。
本発明の製造方法において、前記アクリルゴムを形成するための単量体を、乳化剤および水と混合してなる単量体乳化液の状態にて、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら乳化重合反応を行うことが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記製造方法により得られるアクリルゴムに、架橋剤を配合する工程を備えるアクリルゴム組成物の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記製造方法により得られるアクリルゴム組成物を架橋する工程を備えるゴム架橋物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、重合時における重合装置の汚れの発生を適切に抑制することができ、かつ、含水クラムの互着の発生を有効に防止可能なアクリルゴムの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<アクリルゴム>
まず、本発明の製造方法により製造されるアクリルゴムについて説明する。
本発明の製造方法により製造されるアクリルゴムは、分子中に、主成分(本発明においては、ゴム全単量体単位中50重量%以上有するものを言う。)としての(メタ)アクリル酸エステル単量体〔アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体の意。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕単位を含有するゴム状の重合体である。
【0013】
本発明の製造方法により製造されるアクリルゴムの主成分である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などを挙げることができる。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数1〜8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、および(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エチル、および(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、およびアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0015】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数2〜8のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、および(メタ)アクリル酸4−メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルが好ましく、アクリル酸2−エトキシエチル、およびアクリル酸2−メトキシエチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0016】
本発明の製造方法により製造されるアクリルゴム中における、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、通常、50〜99.9重量%、好ましくは60〜99.5重量%、より好ましくは70〜99.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐候性、耐熱性、および耐油性が低下するおそれがあり、一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱性が低下するおそれがある。
【0017】
なお、本発明の製造方法により製造されるアクリルゴムにおいては、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30〜100重量%、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位70〜0重量%からなるものを用いることが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法により製造されるアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位に加えて、必要に応じて、架橋性単量体単位を含有していてもよい。架橋性単量体単位を形成する架橋性単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体;エポキシ基を有する単量体;ハロゲン原子を有する単量体;ジエン単量体;などが挙げられる。
【0019】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されないが、たとえば、炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、および炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルなどが挙げられる。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体を用いることにより、アクリルゴムを、カルボキシル基を架橋点として持つカルボキシル基含有アクリルゴムとすることができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における、耐圧縮永久歪み性をより高めることができる。
【0020】
炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、およびケイ皮酸などが挙げられる。
炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸の具体例としては、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸;イタコン酸;シトラコン酸;クロロマレイン酸;などが挙げられる。
炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn−ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn−ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。
これらの中でも、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルが好ましく、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル、または脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルがより好ましく、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘキシルがさらに好ましく、フマル酸モノn−ブチルが特に好ましい。これらのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。なお、上記単量体のうち、ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
【0021】
エポキシ基を有する単量体としては、特に限定されないが、たとえば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有エーテル;などが挙げられる。
【0022】
ハロゲン原子を有する単量体としては、特に限定されないが、たとえば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、およびハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
【0023】
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルの具体例としては、クロロ酢酸ビニル、2−クロロプロピオン酸ビニル、およびクロロ酢酸アリルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2−ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3−クロロプロピル、および(メタ)アクリル酸2,3−ジクロロプロピルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−(クロロアセトキシ)プロピル、および(メタ)アクリル酸3−(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸3−(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。
【0024】
ハロゲン含有不飽和エーテルの具体例としては、クロロメチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、3−クロロプロピルビニルエーテル、2−クロロエチルアリルエーテル、および3−クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和ケトンの具体例としては、2−クロロエチルビニルケトン、3−クロロプロピルビニルケトン、および2−クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。
ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物の具体例としては、p−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、o−クロロメチルスチレン、およびp−クロロメチル−α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0025】
ハロゲン含有不飽和アミドの具体例としては、N−クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
ハロアセチル基含有不飽和単量体の具体例としては、3−(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p−ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
【0026】
ジエン単量体としては、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体が挙げられる。
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、およびピペリレンなどを挙げることができる。
非共役ジエン単量体の具体例としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、および(メタ)アクリル酸2−ジシクロペンタジエニルエチルなどを挙げることができる。
【0027】
上記架橋性単量体の中でも、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体を用いた場合には、アクリルゴムをカルボキシル基含有アクリルゴムとすることができる。アクリルゴムを、カルボキシル基含有アクリルゴムとすることにより、耐油性、耐熱性を良好なものとしながら、耐圧縮永久歪み性を向上させることができる。
【0028】
本発明の製造方法により製造されるアクリルゴム中における、架橋性単量体単位の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。架橋性単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の機械的特性や耐熱性を良好なものとしながら、耐圧縮永久歪み性をより適切に高めることができる。
【0029】
本発明の製造方法により製造されるアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、および必要に応じて用いられる架橋性単量体単位に加えて、これらと共重合可能な他の単量体の単位を有していてもよい。このような共重合可能な他の単量体としては、芳香族ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、アクリルアミド系単量体、その他のオレフィン系単量体などが挙げられる。
【0030】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0031】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。
その他のオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0032】
これら共重合可能な他の単量体の中でも、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルが好ましく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびエチレンがより好ましい。
【0033】
共重合可能な他の単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。本発明のアクリルゴム中における、これら共重合可能な他の単量体の単位の含有量は、通常、49.9重量%以下、好ましくは39.5重量%以下、より好ましくは29.5重量%以下である。
【0034】
<アクリルゴムの製造方法>
次いで、本発明のアクリルゴムの製造方法について説明する。
本発明のアクリルゴムの製造方法は、
ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の存在下、アクリルゴムを形成するための単量体を乳化重合することで、乳化重合液を得る乳化重合工程と、
前記乳化重合液に、凝固剤を添加して凝固させることで、含水クラムを得る凝固工程と、を備える。
【0035】
<乳化重合工程>
本発明の製造方法における、乳化重合工程は、ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の存在下、アクリルゴムを形成するための単量体を乳化重合することで、乳化重合液を得る工程である。
【0036】
本発明の製造方法によれば、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いることにより、乳化重合時における重合装置(たとえば、重合槽)への重合による凝集物の付着による汚れの発生を有効に抑制しつつ、凝固により得られる含水クラムの互着の発生を有効に防止できるものである。特に、本発明の製造方法によれば、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いることにより、含水クラムの互着の発生を有効に防止できるものである。なお、含水クラムの互着が発生してしまうと、凝固後の洗浄の効率が低下したり、含水クラムを乾燥する際の乾燥時間を長くする必要が生じたり、生産性が低下してしまうという問題がある。これに対し、本発明の製造方法によれば、このような含水クラムの互着の発生を有効に防止できるものである。
【0037】
ノニオン性乳化剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレンオキシドノニルフェノールなどのポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどのポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシドグリコールなどのポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシド共重合体等が挙げられる。なお、ノニオン性乳化剤としては、重量平均分子量が1万未満のものが好ましく、重量平均分子量が500〜8000のものがより好ましく、重量平均分子量が600〜5000がさらに好ましい。また、アニオン性乳化剤としては、たとえば、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステルナトリウムなどの高級燐酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0038】
本発明の製造方法における、乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対する、用いる乳化剤の総量で、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜4重量部、さらに好ましくは1〜3重量部である。また、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤を組み合わせて用いる場合における、ノニオン性乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、0重量部超、4重量部、好ましくは0.1〜3重量部、より好ましくは0.5〜2重量部、さらに好ましくは0.7〜1.7重量部であり、アニオン性乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、0重量部超、4重量部、好ましくは0.1〜3重量部、より好ましくは0.5〜2重量部、さらに好ましくは0.35〜0.75重量部である。また、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いる場合における使用比率は、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、1/99〜99/1が好ましく、10/90〜80/20がより好ましく、25/75〜75/25がさらに好ましく、50/50〜75/25がさらにより好ましく、重合時における重合装置の汚れの発生をより適切に防止するという観点より、65/35〜75/25が特に好ましい。
【0039】
また、本発明の製造方法においては、ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の存在下で乳化重合を行えばよく、乳化重合に際しては、ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤以外の乳化剤、たとえば、カチオン性乳化剤をさらに用いてもよい。カチオン性乳化剤としては、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0040】
また、乳化重合に際しては、定法に従って、ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤以外に、重合開始剤、重合停止剤などを用いることができる。
【0041】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;などを用いることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.001〜1.0重量部である。
【0042】
また、重合開始剤としての有機過酸化物および無機過酸化物は、還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することが好ましい。組み合わせて用いる還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ヘキサメチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸(塩);エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸(塩);糖類;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムの亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウムなどのピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウムの亜燐酸(塩);ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウムなどのピロ亜燐酸(塩);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが挙げられる。これらの還元剤は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.0003〜0.5重量部である。
【0043】
重合停止剤としては、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノンなどが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0044】
水の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは100〜300重量部である。
【0045】
乳化重合に際しては、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0046】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法で行ってもよいが、半回分式が好ましい。具体的には、重合開始剤および還元剤を含む反応系中に、重合に用いる単量体を、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応をおこなうなど、重合に用いる単量体、重合開始剤、および還元剤のうち少なくとも1種については、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行うことが好ましく、重合に用いる単量体、重合開始剤、および還元剤の全てについて、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行うことがより好ましい。これらを連続的に滴下しながら重合反応を行うことにより、乳化重合を安定的に行うことができ、これにより、重合反応率を向上させることができる。なお、重合は通常0〜70℃、好ましくは5〜50℃の温度範囲で行なわれる。
【0047】
また、重合に用いる単量体を連続的に滴下しながら重合反応を行う場合には、重合に用いる単量体を、乳化剤および水と混合し、単量体乳化液の状態とし、単量体乳化液の状態で連続的に滴下することが好ましい。単量体乳化液の調製方法としては特に限定されず、重合に用いる単量体の全量と、乳化剤の全量と、水とをホモミキサーやディスクタービンなどの攪拌機などを用いて攪拌する方法などが挙げられる。単量体乳化液中の水の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは10〜70重量部、より好ましくは20〜50重量部である。
【0048】
また、重合に用いる単量体、重合開始剤、および還元剤の全てについて、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行う場合には、これらは別々の滴下装置を用いて重合系に滴下してもよいし、あるいは、少なくとも重合開始剤と還元剤とについては、予め混合し、必要に応じて水溶液の状態として同じ滴下装置から重合系に滴下してもよい。滴下終了後は、さらに重合反応率向上のため、任意の時間反応を継続してもよい。
【0049】
<凝固工程>
本発明の製造方法における、凝固工程は、上記乳化重合工程により得られた乳化重合液に、凝固剤を添加することで、含水クラムを得る工程である。
【0050】
凝固剤としては、特に限定されないが、たとえば、1〜3価の金属塩が挙げられる。1〜3価の金属塩は、水に溶解させた場合に1〜3価の金属イオンとなる金属を含む塩であり、特に限定されないが、たとえば、塩酸、硝酸および硫酸等から選ばれる無機酸や酢酸等の有機酸と、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウムおよびスズ等から選ばれる金属との塩が挙げられる。また、これらの金属の水酸化物なども用いることもできる。
【0051】
1〜3価の金属塩の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、塩化チタン、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化スズなどの金属塩化物;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛、硝酸チタン、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸スズなどの硝酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸チタン、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸スズなどの硫酸塩;等が挙げられる。これらのなかでも、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸ナトリウムが好ましい。その中でも1価または2価の金属塩が好ましく、より好ましくは、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムであり、ゴム組成物とした際におけるスコーチ安定性をより向上させることができるという観点より、さらに好ましくは硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムである。また、これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0052】
凝固剤の使用量は、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部であり、その下限は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上、さらに好ましくは3重量部以上であり、また、その上限は、好ましくは40重量部以下、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは12重量部以下である。本発明の製造方法によれば、乳化重合を行う際に、ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の存在下で乳化重合を行うものであることから、凝固剤の使用量を上記のように比較的少ない量とした場合でも、アクリルゴムの凝固を良好に行うことができるものである。そして、これにより、凝固により得られる含水クラム中の凝固剤量を低減することができ、これにより、含水クラムの互着の発生を有効に防止できるものである。
【0053】
凝固温度は特に限定されないが、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜90℃、さらに好ましくは78〜90℃である。
【0054】
また、本発明の製造方法においては、凝固剤を添加して凝固させる前の乳化重合液に、アクリルゴムに配合する配合剤のうち一部の配合剤、具体的には、老化防止剤、滑剤およびエチレンオキシド系重合体のうち少なくともいずれかについては、予め含有させておくことが好ましい。すなわち、老化防止剤、滑剤およびエチレンオキシド系重合体のうち少なくともいずれかについては、乳化重合液中に既に配合された状態とし、これらを配合した乳化重合液に対し、凝固を行うことが好ましい。
【0055】
たとえば、老化防止剤を、凝固を行う前の乳化重合液に予め含有させておくことにより、後述する乾燥工程における乾燥時の熱によるアクリルゴムの劣化を有効に抑制することができるものである。具体的には、乾燥時の加熱による劣化に起因するムーニー粘度の低下を、効果的に抑制することができ、さらには、ゴム架橋物とした場合における、常態の引張強度や破断伸びなどを効果的に高めることができるものである。加えて、凝固を行う前の乳化重合液の状態において、老化防止剤を配合することにより、老化防止剤を適切に分散させることができるため、老化防止剤の配合量を低減させた場合でも、その添加効果を充分に発揮させることができるものである。具体的には、老化防止剤の配合量を、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜2重量部、より好ましくは0.2〜1.2重量部と比較的少ない配合量としても、その添加効果を充分に発揮させることができるものである。なお、老化防止剤を、凝固を行う前の乳化重合液中に含有させた場合でも、後の凝固や洗浄、乾燥などにおいて、添加した老化防止剤は、実質的に除去されることはないため、その添加効果を充分発揮できるものである。また、老化防止剤を乳化重合液に含有させる方法としては、乳化重合後であって、かつ、凝固を行う前の乳化重合液に添加する方法や、乳化重合を行う前の溶液に添加する方法が挙げられるが、乳化重合を行う前の溶液に添加した場合には、重合装置の汚れなどが発生するおそれがあるため、乳化重合後であって、かつ、凝固を行う前の乳化重合液に添加する方法の方が好ましい。
【0056】
老化防止剤としては、特に限定されないが、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2’−メチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物などの硫黄原子を含有しないフェノール系老化防止剤;2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−6−メチルフェノール、2,2’−チオビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなどのチオフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’―(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;2−メルカプトベンズイミダゾールなどのイミダゾール系老化防止剤;6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5−ジ−(t−アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの老化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、滑剤を凝固前の乳化重合液中に予め含有させておくことにより、得られるアクリルゴムに、滑剤を良好に分散させた状態にて含有させることができ、その結果として、得られるアクリルゴムの粘着性を適切に低下させることができ、これにより、乾燥時における乾燥機への付着を防止することができ、乾燥時の操業性を向上させることができ、しかも、アクリルゴム組成物とした場合に、ロール加工性に優れたものとすることができる。滑剤の添加量は、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜0.4重量部、より好ましくは0.15〜0.3重量部、さらに好ましくは0.2〜0.3重量部である。なお、滑剤を凝固前の乳化重合液中に含有させた場合でも、後の凝固や洗浄、乾燥などにおいて、予め配合した滑剤は、実質的に除去されることはないため、乳化重合液中に含有させた場合でも、その添加効果を充分発揮できるものである。
【0058】
滑剤としては、特に限定されないが、燐酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、高級脂肪酸、などが挙げられる。また、滑剤を乳化重合液に含有させる方法としては、乳化重合後であって、かつ、凝固を行う前の乳化重合液に添加する方法や、乳化重合を行う前の溶液に添加する方法が挙げられる。
【0059】
さらに、エチレンオキシド系重合体を、凝固前の乳化重合液中に予め含有させておくことにより、乳化重合液の凝固性を向上させることができ、これにより、凝固工程における凝固剤量を低減させることができることから、最終的に得られるアクリルゴム中の残留量を低減でき、ゴム架橋物とした場合における、耐水性をより高めることができる。エチレンオキシド系重合体しては、主鎖構造として、ポリエチレンオキシド構造を有する重合体であればよく、特に限定されないが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体などが挙げられ、この中でもポリエチレンオキシドが好適である。エチレンオキシド系重合体の配合量は、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.6重量部、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部である。また、エチレンオキシド系重合体の重量平均分子量は好ましくは1万〜100万、より好ましくは1万〜20万、さらに好ましくは2万〜12万である。また、エチレンオキシド系重合体を乳化重合液に含有させる方法としては、乳化重合後であって、かつ、凝固を行う前の乳化重合液に添加する方法や、乳化重合を行う前の溶液に添加する方法が挙げられる。
【0060】
なお、凝固前の乳化重合液に、老化防止剤、滑剤およびエチレンオキシド系重合体を予め含有させる場合における添加順序は特に限定されず、適宜、選択すればよい。
【0061】
そして、これら老化防止剤、滑剤および/またはエチレンオキシド系重合体を、予め凝固前の乳化重合液に含有させた場合においても、上記と同様の条件にて、乳化重合液に対し、凝固剤を添加して凝固操作を行うことで、含水クラムを得ることができる。
【0062】
<洗浄工程>
本発明の製造方法においては、上記した凝固工程において得られた含水クラムに対して、洗浄を行う洗浄工程をさらに備えていることが好ましい。
【0063】
洗浄方法としては、特に限定されないが、洗浄液として水を使用し、含水クラムとともに、添加した水を混合することにより水洗を行う方法が挙げられる。水洗時の温度としては、特に限定されないが、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜50℃であり、混合時間は1〜60分、より好ましくは2〜30分である。
【0064】
また、水洗時に、含水クラムに対して添加する水の量としては、特に限定されないが、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を効果的に低減することができるという観点より、含水クラム中に含まれる固形分(主として、アクリルゴム成分)100重量部に対して、水洗1回当たりの水の量が、好ましくは50〜9,800重量部、より好ましくは300〜1,800重量部である。
【0065】
水洗回数としては、特に限定されず、1回でもよいが、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減するという観点より、好ましくは2〜10回、より好ましくは3〜8回である。なお、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減するという観点からは、水洗回数が多い方が望ましいが、上記範囲を超えて洗浄を行っても、凝固剤の除去効果が小さい一方で、工程数が増加してしまうことにより生産性の低下の影響が大きくなってしまうため、水洗回数は上記範囲とすることが好ましい。
【0066】
また、本発明の製造方法においては、水洗を行った後、さらに洗浄液として酸を使用した酸洗浄を行ってもよい。酸洗浄を行うことにより、ゴム架橋物とした場合における耐圧縮永久歪み性をより高めることができるものであり、アクリルゴムがカルボキシル基を有するカルボキシル基含有アクリルゴムである場合に、この酸洗浄による耐圧縮永久歪み性の向上効果は特に大きいものとなる。酸洗浄に用いる酸としては、特に限定されず、硫酸、塩酸、燐酸などを制限なく用いることができる。また、酸洗浄において、含水クラムに酸を添加する際には、水溶液の状態で添加することが好ましく、好ましくはpH=6以下、より好ましくはpH=4以下、さらに好ましくはpH=3以下の水溶液の状態で添加すること好ましい。また、酸洗浄の方法としては、特に限定されないが、たとえば、含水クラムとともに、添加した酸の水溶液を混合する方法が挙げられる。
【0067】
また、酸洗浄時の温度としては、特に限定されないが、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜50℃であり、混合時間は1〜60分、より好ましくは2〜30分である。酸洗浄の洗浄水のpHは、特に限定されないが、好ましくはpH=6以下、より好ましくはpH=4以下、さらに好ましくはpH=3以下である。なお、酸洗浄の洗浄水のpHは、たとえば、酸洗浄後の含水クラムに含まれる水のpHを測定することにより求めることができる。
【0068】
酸洗浄を行った後には、さらに水洗を行うことが好ましく、水洗の条件としては上述した条件と同様とすればよい。
【0069】
<乾燥工程>
また、本発明の製造方法においては、上記洗浄工程において洗浄を行った含水クラムに対し、乾燥を行う乾燥工程をさらに備えていることが好ましい。
【0070】
乾燥工程における、乾燥方法としては、特に限定されないが、たとえば、スクリュー型押出機、ニーダー型乾燥機、エキスパンダー乾燥機、熱風乾燥機、減圧乾燥機などの乾燥機を用いて、乾燥させることができる。また、これらを組み合わせた乾燥方法を用いてもよい。さらに、乾燥工程により乾燥を行う前に、必要に応じて、含水クラムに対し、回転式スクリーン、振動スクリーンなどの篩;遠心脱水機;などを用いたろ別を行ってもよい。
【0071】
たとえば、乾燥工程における乾燥温度は、特に限定されず、乾燥に用いる乾燥機に応じて異なるが、たとえば、熱風乾燥機を用いる場合には、乾燥温度は80〜200℃とすることが好ましく、100〜170℃とすることがより好ましい。
【0072】
本発明の製造方法によれば、以上のようにしてアクリルゴムを得ることができる。
【0073】
このようにして製造されるアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)(ポリマームーニー)は、好ましくは10〜80、より好ましくは20〜70、さらに好ましくは25〜60である。
【0074】
また、本発明の製造方法により製造されるアクリルゴムは、アクリルゴム中に含まれる凝固剤の残留量が、好ましくは9,000重量ppm以下であり、より好ましくは7,000重量ppm以下、さらに好ましくは5,000重量ppm以下、特に好ましくは3,500ppm以下である。凝固剤の残留量の下限は、特に限定されないが、好ましくは10重量ppm以上である。アクリルゴム中における凝固剤の残留量を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物とした場合における、耐水性をより優れたものとすることができる。なお、凝固剤の残留量は、たとえば、アクリルゴムに対し、元素分析を行い、凝固剤に含まれる元素の含有量を測定することにより求めることができる。また、凝固剤の残留量を上記した量とする方法としては、特に限定されないが、エチレンオキシド系重合体の存在下で、凝固工程における凝固を78℃以上の温度にて行う方法に加えて、凝固剤の添加量を上述した範囲とする方法や、上述したように、水洗条件を調整する方法などが挙げられる。
【0075】
さらに、本発明のアクリルゴムは、アクリルゴム中に含まれるノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との合計の残留量が、好ましくは22,000重量ppm以下であり、より好ましくは20,000重量ppm以下、さらに好ましくは18,000重量ppm以下、特に好ましくは17,000重量ppm以下である。乳化剤の残留量の下限は、特に限定されないが、好ましくは10重量ppm以上、より好ましくは200重量ppm以上、さらに好ましくは500重量ppm以上である。アクリルゴム中における乳化剤のノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との合計の残留量を上記範囲とすることにより、含水クラムの互着の発生の防止効果をより高めることができる。なお、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤との合計の残留量は、たとえば、アクリルゴムに対し、GPC測定を行い、GPC測定により得られた測定チャート中の、乳化剤に対応する分子量のピーク面積から求めることができる。
【0076】
<アクリルゴム組成物>
本発明のアクリルゴム組成物は、上記した本発明の製造方法により得られるアクリルゴムに架橋剤を配合してなるものである。
【0077】
架橋剤としては、特に限定されないが、たとえば、ジアミン化合物などの多価アミン化合物、およびその炭酸塩;硫黄;硫黄共与体;トリアジンチオール化合物;多価エポキシ化合物;有機カルボン酸アンモニウム塩;有機過酸化物;ジチオカルバミン酸金属塩;多価カルボン酸;四級オニウム塩;イミダゾール化合物;イソシアヌル酸化合物;有機過酸化物;などの従来公知の架橋剤を用いることができる。これらの架橋剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。架橋剤としては、架橋性単量体単位の種類に応じて適宜選択することが好ましい。
【0078】
これらのなかでも、本発明の製造方法により製造されるアクリルゴムが、架橋性単量体単位としてのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を有する場合には、架橋剤として、多価アミン化合物、およびその炭酸塩を用いることが好ましい。
【0079】
多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、炭素数4〜30の多価アミン化合物、およびその炭酸塩が好ましい。このような多価アミン化合物、およびその炭酸塩の例としては、脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩、ならびに芳香族多価アミン化合物などが挙げられる。
【0080】
脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、およびN,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメートが好ましい。
【0081】
芳香族多価アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、4,4’−メチレンジアニリン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、および1,3,5−ベンゼントリアミンなどが挙げられる。これらの中でも、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが好ましい。
【0082】
本発明のアクリルゴム組成物中における架橋剤の含有量は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.2〜4重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、ゴム弾性を充分なものとしながら、ゴム架橋物としての機械的強度を優れたものとすることができる。
【0083】
また、本発明のアクリルゴム組成物は、さらに架橋促進剤を含有していることが好ましい。架橋促進剤としては、特に限定されないが、本発明の製造方法により製造されるアクリルゴムが、架橋性基としてのカルボキシル基を有するものであり、かつ、架橋剤が多価アミン化合物、またはその炭酸塩である場合には、グアニジン化合物、ジアザビシクロアルケン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、脂肪族一価二級アミン化合物、および脂肪族一価三級アミン化合物などを用いることができる。これらのなかでも、グアニジン化合物、ジアザビシクロアルケン化合物、および脂肪族一価二級アミン化合物が好ましく、グアニジン化合物が特に好ましい。これらの塩基性架橋促進剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0084】
グアニジン化合物の具体例としては、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジンなどが挙げられる。ジアザビシクロアルケン化合物の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノ−5−ネンなどが挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩の具体例としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。第三級ホスフィン化合物の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。
【0085】
脂肪族一価二級アミン化合物は、アンモニアの水素原子の二つを脂肪族炭化水素基で置換した化合物である。水素原子と置換する脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜30のものである。脂肪族一価二級アミン化合物の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジセチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、およびジオクタデシルアミンなどが挙げられる。
【0086】
脂肪族一価三級アミン化合物は、アンモニアの三つの水素原子全てを脂肪族炭化水素基で置換した化合物である。水素原子と置換する脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜30のものである。脂肪族一価三級アミン化合物の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、およびトリドデシルアミンなどが挙げられる。
【0087】
本発明のアクリルゴム組成物中における、架橋促進剤の含有量は、アクリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部であり、より好ましくは0.5〜7.5重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の引張強度および耐圧縮永久歪み性をより向上させることができる。
【0088】
また、本発明のアクリルゴム組成物は、上記各成分以外に、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を配合することができる。このような配合剤としては、たとえば、シリカやカーボンブラックなどの補強性充填剤;炭酸カルシウムやクレーなどの非補強性充填材;老化防止剤;光安定剤;スコーチ防止剤;可塑剤;加工助剤;粘着剤;滑剤;潤滑剤;難燃剤;防黴剤;帯電防止剤;着色剤;架橋遅延剤;などが挙げられる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0089】
さらに、本発明のアクリルゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した本発明のアクリルゴム以外のゴム、エラストマー、樹脂などをさらに配合してもよい。たとえば、上述した本発明のアクリルゴム以外のアクリルゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムなどの、アクリルゴム以外のゴム;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマーなどのエラストマー;ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂などの樹脂;などを配合することができる。なお、上述した本発明のアクリルゴム以外のゴム、エラストマー、および樹脂の合計配合量は、アクリルゴム100重量部に対して、好ましくは50重量部以下、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下である。
【0090】
本発明のアクリルゴム組成物は、アクリルゴムに、架橋剤、およびその他必要に応じて用いられる各種配合剤を配合し、バンバリーミキサーやニーダーなどで混合、混練し、次いで、混練ロールを用いて、さらに混練することなどにより調製される。
【0091】
各成分の配合順序は、特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応や分解しやすい成分である架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合することが好ましい。
【0092】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のアクリルゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のアクリルゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、およびロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、130〜220℃、好ましくは150〜190℃であり、架橋時間は、通常、2分〜10時間、好ましくは3分〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、および熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0093】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、本発明のゴム架橋物は、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1〜48時間行う。加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
【0094】
そして、このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、たとえば、自動車等の輸送機械、一般機器、電気機器等の幅広い分野において、O−リング、パッキン、オイルシール、ベアリングシール等のシール材;ガスケット;緩衝材、防振材;電線被覆材;工業用ベルト類;チューブ・ホース類;シート類;等として好適に用いられる。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0096】
[ムーニー粘度(ML1+4、100℃)]
アクリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)をJIS K6300に従って測定した。
【0097】
[乳化重合後の乳化重合液中の凝集物含有量]
乳化重合後の乳化重合液について、固形分の含有割合(乳化重合液全体を1とした時の割合)を測定し、次いで、乳化重合後の乳化重合液100gを精秤した後、重量既知の200メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、乳化重合液を除去した。これを、105℃で60分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定し、下記式に基づいて凝集物含有割合(単位:重量%)を求めた。
凝集物含有率(重量%)={(α−β)/(γ×Δ)}×100
ここで、αは乾燥後の金網および乾燥凝集物の重量、βは金網の重量、γは乳化重合液の重量、Δは乳化重合液の固形分の含有割合をそれぞれ示す。
なお、乳化重合液の固形分の含有割合は、乳化重合液について乾燥を行い、乾燥前乳化重合液の重量と、乾燥後の重量とから下記式に基づいて求めた。
乳化重合液の固形分の含有割合(Δ)=乾燥後の重量/乾燥前乳化重合液の重量
【0098】
[洗浄後の含水クラムの互着性]
洗浄後の含水クラム15gを、内径が10mmの円筒に入れ、1MPaで30秒間圧縮することで、クラム粒子同士を接着させて、円筒状の成形体とした。そして、得られた円筒状の成形体を、クリップに挟むことで吊るし、円筒状の成形体を構成する少なくとも一部のクラム粒子が落下するまでの時間を落下時間として測定した。落下時間が短いほど、洗浄後の含水クラムの互着性が低い(互着し難い)と判断することができる。
【0099】
[乾燥後のアクリルゴムの水分量]
乾燥後のアクリルゴムを、アルミ皿に乗せ、100℃のオーブンにて、1時間乾燥を行い、乾燥前後のアクリルゴムの重量より、下記式にしたがって、乾燥後のアクリルゴムの水分量を求めた。
乾燥後のアクリルゴムの水分量(重量%)=[(乾燥前重量(g)−1時間乾燥後重量(g))÷乾燥前重量(g)]×100
【0100】
[ムーニースコーチ試験]
アクリルゴム組成物について、JIS K6300に従い、125℃の測定条件下でムーニースコーチの測定を行い、ムーニースコーチ時間t5(分)、ムーニースコーチ時間t35(分)、およびムーニー粘度の最低値Vmを測定した。t5、t35の値が大きいほど、スコーチ安定性に優れると判断でき、また、Vmの値が小さいほど、成形時の加工性に優れると判断できる。
【0101】
[高湿条件保存後のムーニースコーチ試験]
アクリルゴム組成物を、40℃、90%RHの高湿環境に、168時間保存した後、高湿環境に保存したアクリルゴム組成物について、JIS K6300に従い、125℃の測定条件下でムーニースコーチの測定を行い、ムーニースコーチ時間t5(分)、ムーニースコーチ時間t35(分)、およびムーニー粘度の最低値Vmを測定した。t5、t35の値が大きいほど、スコーチ安定性に優れると判断でき、また、Vmの値が小さいほど、成形時の加工性に優れると判断できる。
【0102】
[引張強度、伸び]
アクリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに170℃、4時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、シート状のゴム架橋物を得た。得られたゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。次にこの試験片を用いて、JIS K6251に従い引張強度および伸びを測定した。
【0103】
[耐水性]
アクリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに170℃、4時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、シート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたシート状のゴム架橋物から、3cm×2cm×0.2cmの試験片に切り取り、JIS K6258に準拠して、得られた試験片を温度80℃に調整した蒸留水中に70時間浸漬させる浸漬試験を行い、浸漬前後の試験片の体積変化率を下記式にしたがって、測定した。浸漬前後の体積変化率が小さいほど、水に対する膨潤が抑制されており、耐水性に優れると判断できる。
浸漬前後の体積変化率(%)=(浸漬後の試験片の体積−浸漬前の試験片の体積)÷浸漬前の試験片の体積×100
【0104】
〔製造例1〕
ホモミキサーを備えた混合容器に、純水46.294部、アクリル酸エチル49.3部、アクリル酸n−ブチル49.3部、フマル酸モノn−ブチル1.4部、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール 2FG」、花王社製)0.567部、およびノニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンドデシルエーテル(商品名「エマルゲン 105」、重量平均分子量:約1500、花王社製)1.4部を仕込み、攪拌することで、単量体乳化液を得た。
【0105】
次いで、温度計、攪拌装置を備えた重合反応槽に、純水170.853部、および、上記にて得られた単量体乳化液2.97部を投入し、窒素気流下で温度12℃まで冷却した。次いで、重合反応槽中に、上記にて得られた単量体乳化液145.29部、還元剤としての硫酸第一鉄0.00033部、還元剤としてのアスコルビン酸ナトリウム0.264部、および、重合開始剤としての2.85重量%の過硫酸カリウム水溶液7.72部(過硫酸カリウムの量として0.22部)を3時間かけて連続的に滴下した。その後、重合反応槽内の温度を23℃に保った状態にて、1時間反応を継続し、重合転化率が95%に達したことを確認し、重合停止剤としてのハイドロキノンを添加して重合反応を停止し、乳化重合液を得た。なお、得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、全く凝集物が確認されず、0重量%であり、さらには、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れも確認されなかった。
【0106】
そして、重合により得られた乳化重合液100部に対し、老化防止剤としての3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル(商品名「Irganox 1076」、BASF社製)0.3部(乳化重合液を製造する際に用いた仕込みの単量体の合計(すなわち、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、フマル酸モノn−ブチルの合計)100部に対して1部)、ポリエチレンオキシド(重量平均分子量(Mw)=10万)0.011部(乳化重合液を製造する際に用いた仕込みの単量体の合計100部に対して0.039部)、および滑剤としてのポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸(商品名「フォスファノール RL−210」、重量平均分子量:約500、東邦化学工業社製)0.075部(乳化重合液を製造する際に用いた仕込みの単量体の合計100部に対して0.25部)を混合することで混合液を得た。そして、得られた混合液を凝固槽に移し、この混合液100部に対して、工業用水60部を添加して、85℃に昇温した後、温度85℃にて、混合液を撹拌しながら、凝固剤としての硫酸ナトリウム3.3部(混合液に含まれる重合体100部に対して11部)を連続的に添加することにより、重合体を凝固させた後、ろ別してこれによりアクリルゴム(A1)の含水クラムを得た。
【0107】
次いで、上記にて得られた含水クラムの固形分100部に対し、工業用水388部部を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの水洗を行った。なお、本製造例では、このような水洗を4回繰り返した。
【0108】
次いで、上記にて水洗を行った含水クラムの固形分100部に対し、工業用水388部および濃硫酸0.13部を混合してなる硫酸水溶液(pH=3)を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの酸洗を行った。なお、酸洗後の含水クラムのpH(含水クラム中の水のpH)を測定したこところ、pH=3であった。次いで、酸洗を行った含水クラムの固形分100部に対し、純水388部を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの純水洗浄を行い、純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0109】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A1)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A1)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。得られたアクリルゴム(A1)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A1)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0110】
〔製造例2〕
ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンドデシルエーテルに代えて、ポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシドグリコール(商品名「プロノン208」、日油社製)1.4部を使用した以外は、製造例1と同様にして、単量体乳化液を得た。次いで、得られた単量体乳化液を用いて、製造例1と同様にして、乳化重合を行うことで、乳化重合液を得た。得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、全く凝集物が確認されず、0重量%であり、さらには、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れも確認されなかった。
【0111】
次いで、上記にて得られた乳化重合液を用い、製造例1と同様にして、混合液の調製および凝固操作を行うことで、アクリルゴム(A2)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A2)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0112】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A2)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A2)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。得られたアクリルゴム(A2)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A2)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0113】
〔製造例3〕
ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンドデシルエーテルに代えて、ポリエチレンオキシドモノステアレート(商品名「ノニオンS40」、日油社製)1.4部を使用した以外は、製造例1と同様にして、単量体乳化液を得た。次いで、得られた単量体乳化液を用いて、製造例1と同様にして、乳化重合を行うことで、乳化重合液を得た。得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、全く凝集物が確認されず、0重量%であり、さらには、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れも確認されなかった。
【0114】
次いで、上記にて得られた乳化重合液を用い、製造例1と同様にして、混合液の調製および凝固操作を行うことで、アクリルゴム(A3)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A3)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0115】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A3)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A3)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。得られたアクリルゴム(A3)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A3)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0116】
〔製造例4〕
ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンドデシルエーテルに代えて、ポリエチレンオキシドノニルフェノール(商品名「ノイゲンEA70」、第一工業製薬社製)1.4部を使用した以外は、製造例1と同様にして、単量体乳化液を得た。次いで、得られた単量体乳化液を用いて、製造例1と同様にして、乳化重合を行うことで、乳化重合液を得た。得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、全く凝集物が確認されず、0重量%であり、さらには、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れも確認されなかった。
【0117】
次いで、上記にて得られた乳化重合液を用い、製造例1と同様にして、混合液の調製および凝固操作を行うことで、アクリルゴム(A4)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A4)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0118】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A4)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A4)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。得られたアクリルゴム(A4)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A4)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0119】
〔製造例5〕
凝固を行う際における、凝固剤として、硫酸ナトリウム3.3部に代えて、硫酸マグネシウム1.1部(混合液に含まれる重合体100部に対して3.7部)を使用した以外は製造例1と同様にして、乳化重合、混合液の調製および凝固操作を行い、アクリルゴム(A5)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A5)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0120】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A5)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A5)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。得られたアクリルゴム(A5)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A5)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0121】
〔製造例6〕
ノニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンドデシルエーテルの使用量を1.4部から0.7部に変更した以外は、製造例1と同様にして、単量体乳化液を得た。次いで、得られた単量体乳化液を用いて、製造例1と同様にして、乳化重合を行うことで、乳化重合液を得た。得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、凝集物は0.6重量%と微量であり、さらには、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れも確認されなかった。
【0122】
次いで、上記にて得られた乳化重合液を用い、製造例1と同様にして、混合液の調製および凝固操作を行うことで、アクリルゴム(A6)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A6)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0123】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A6)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A6)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。得られたアクリルゴム(A6)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A6)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0124】
〔製造例7〕
ノニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンドデシルエーテルの使用量を1.4部から1.2部に変更した以外は、製造例1と同様にして、単量体乳化液を得た。次いで、得られた単量体乳化液を用いて、製造例1と同様にして、乳化重合を行うことで、乳化重合液を得た。得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、凝集物は0.1重量%と極微量であり、さらには、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れも確認されなかった。
【0125】
次いで、上記にて得られた乳化重合液を用い、製造例1と同様にして、混合液の調製および凝固操作を行うことで、アクリルゴム(A7)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A7)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0126】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A7)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A7)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。得られたアクリルゴム(A7)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A7)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0127】
〔製造例8〕
アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウムの使用量を0.567部から0.8部に変更した以外は、製造例1と同様にして、単量体乳化液を得た。次いで、得られた単量体乳化液を用いて、製造例1と同様にして、乳化重合を行うことで、乳化重合液を得た。得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、全く凝集物が確認されず、0重量%であり、さらには、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れも確認されなかった。
【0128】
次いで、上記にて得られた乳化重合液を用い、製造例1と同様にして、混合液の調製および凝固操作を行うことで、アクリルゴム(A8)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A8)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0129】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A8)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A8)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。得られたアクリルゴム(A8)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A8)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0130】
〔製造例9〕
凝固を行う際における、凝固剤として、硫酸ナトリウム3.3部に代えて、塩化カルシウム1.1部(混合液に含まれる重合体100部に対して3.7部)を使用した以外は製造例1と同様にして、乳化重合、混合液の調製および凝固操作を行い、アクリルゴム(A9)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A9)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0131】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A9)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A9)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。得られたアクリルゴム(A9)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A9)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0132】
〔製造例10〕
ノニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンドデシルエーテルを使用しなかった以外は、製造例1と同様にして、単量体乳化液を得た。次いで、得られた単量体乳化液を用いて、製造例1と同様にして、乳化重合を行うことで、乳化重合液を得た。得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、凝集物含有量は2.1重量%であり、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れが確認された。
【0133】
次いで、上記にて得られた乳化重合液を用い、製造例1と同様にして、混合液の調製および凝固操作を行うことで、アクリルゴム(A10)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A10)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0134】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A10)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A10)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、水分量は2.5重量%であり、110℃で1時間の乾燥では不十分であるものと判断できる。また、得られたアクリルゴム(A10)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A10)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0135】
〔製造例11〕
ノニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンドデシルエーテルを使用しなかった以外は、製造例1と同様にして、単量体乳化液を得た。次いで、得られた単量体乳化液を用いて、製造例1と同様にして、乳化重合を行うことで、乳化重合液を得た。得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、凝集物含有量は2.1重量%であり、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れが確認された。
【0136】
次いで、上記にて得られた乳化重合液を用い、製造例1と同様にして、混合液の調製および凝固操作を行うことで、アクリルゴム(A11)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A11)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0137】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で2.5時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A11)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A11)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。また、得られたアクリルゴム(A11)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A11)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0138】
〔製造例12〕
ノニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンドデシルエーテルを使用せず、かつ、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウムの使用量を0.567部から1.701部に変更した以外は、製造例1と同様にして、単量体乳化液を得た。次いで、得られた単量体乳化液を用いて、製造例1と同様にして、乳化重合を行うことで、乳化重合液を得た。得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、全く凝集物が確認されず、0重量%であり、さらには、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れも確認されなかった。
【0139】
次いで、上記にて得られた乳化重合液を用い、製造例1と同様にして、凝固剤としての硫酸ナトリウムの使用量を3.3部から10部(混合液に含まれる重合体100部に対して33.3部)に変更した以外は、混合液の調製および凝固操作を行うことで、アクリルゴム(A12)の含水クラムを得て、さらに、得られたアクリルゴム(A12)の含水クラムについて、製造例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、および純水洗浄を行った。そして、洗浄後の含水クラムについて、上記方法にしたがって、洗浄後の含水クラムの互着性の測定を行った。結果を表1に示す。なお、製造例12においては、凝固剤としての硫酸ナトリウムの量を、製造例1と比較して、3.3部から10部に増加させているが、硫酸ナトリウムの量を増加させないと凝固できなかったとの理由による。
【0140】
次いで、洗浄後の含水クラムを、熱風乾燥機にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A12)を得た。得られた乾燥後のアクリルゴム(A12)について、上記方法にしたがって、水分量を測定したところ、実質的に水分を含有しないものであり、0重量%であった。得られたアクリルゴム(A12)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A12)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0141】
〔製造例13〕
アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウムを使用しなかった以外は、製造例1と同様にして、単量体乳化液を得た。次いで、得られた単量体乳化液を用いて、製造例1と同様にして、乳化重合を行うことで、乳化重合液を得た。得られた乳化重合液について、上記方法にしたがって、乳化重合液中の凝集物含有量を測定したところ、凝集物含有量は20重量%であり、攪拌装置内に凝集物の付着による汚れが極めて顕著であった。さらには、得られた乳化重合液は、凝集物含有量が多すぎて、その後の凝固操作等を行うことができないものであった。
【0142】
〔実施例1〕
バンバリーミキサーを用いて、製造例1で得られたアクリルゴム(A1)100部に、クレー(商品名「サティントンクレー5A」、竹原化学工業社製、焼成カオリン)30部、シリカ(商品名「カープレックス1120」、Evonik社製)15部、シリカ(商品名「カープレックス67」、Evonik社製)35部、ステアリン酸2部、4, 4’−ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラック CD」、大内新興化学工業社製)2部、および、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越シリコーン社製、シランカップリング剤)1部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、ヘキサメチレンジアミンカーバメート(商品名「Diak#1」、デュポンダウエラストマー社製、脂肪族多価アミン化合物)0.6部、および1,3−ジ−o−トリルグアニジン(商品名「ノクセラーDT」、大内新興化学工業社製、架橋促進剤)2部を配合して、混練することにより、アクリルゴム組成物を得た。
【0143】
そして、得られたアクリルゴム組成物を用いて、上記方法にしたがい、ムーニースコーチ試験、条件保存後のムーニースコーチ試験、引張強度、伸び、および耐水性の各測定・評価を行った。結果を表2に示す。
【0144】
〔実施例2〜9〕
製造例1で得られたアクリルゴム(A1)に代えて、製造例2〜9で得られたアクリルゴム(A2)〜(A9)をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に測定・評価を行った結果を表2に示す。
【0145】
〔比較例1〜3〕
製造例1で得られたアクリルゴム(A1)に代えて、製造例10〜12で得られたアクリルゴム(A10)〜(A12)をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に測定・評価を行った結果を表2に示す。
【0146】
【表1】
(*1)単量体乳化液作製のための配合剤の添加量は、仕込み単量体100部に対する配合量で示した。
(*2)凝固前の乳化重合液に添加した配合剤の添加量は、乳化重合液100部に対する配合量で示した。
(*3)凝固工程で使用した凝固剤の添加量は、乳化重合液に、老化防止剤、ポリエチレンオキシド、および/または滑剤を添加することにより得られた混合液100部に対する配合量で示した。
【0147】
【表2】
【0148】
表1,2に示すように、ノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤の存在下、アクリルゴムを形成するための単量体を乳化重合を行った製造例1〜9により得られたアクリルゴムは、得られる乳化重合液中における凝集物の発生が十分に抑制されており、そのため、このような凝集物に起因する攪拌装置内の汚れも発生せず、また、含水クラムの互着も抑制されており、さらには、このような製造例1〜9により得られたアクリルゴムを用いて得られるゴム架橋物は、耐水性に優れるものであった(製造例1〜9、実施例1〜9)。
【0149】
一方、ノニオン性乳化剤を使用しなかった製造例10,11においては、得られた乳化重合液中に凝集物が発生してしまい、このような凝集物の付着による攪拌装置内の汚れが発生してしまう結果となり、さらには、含水クラムの互着が発生する結果となり、乾燥効率にも劣るものであった(製造例10,11、比較例1,2)
また、ノニオン性乳化剤を使用しない一方で、アニオン性乳化剤の使用量を増加させた製造例12においては、乳化重合液中における凝集物の発生は抑制できたものの、含水クラムの互着が発生する結果となった(製造例12、比較例3)
さらに、アニオン性乳化剤を使用しなかった製造例13においては、得られた乳化重合液中に凝集物が顕著に発生してしまい、このような凝集物の付着による攪拌装置内の汚れが顕著に発生してしまう結果となり、さらには、凝集物が顕著であったため、その後の凝固操作等を行うことができなかった(製造例13)。