(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を用いて説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態における放射線治療システムについて説明する。
図1は本実施形態における放射線治療システムの全体概略構成を示す図である。本実施形態における放射線治療システムは、治療放射線として荷電粒子線を用いて動体追跡粒子線治療を行うものであり、主に治療放射線発生装置1、ビーム輸送系5、及び治療室9から構成されている。
【0014】
治療放射線発生装置1は、図示しないイオン源、前段治療放射線加速装置としてのライナック2及びシンクロトロン3を有する。ビーム輸送系5は治療放射線発生装置1と治療室9とを接続するビーム経路7、ビーム経路7の途中に設けられた四極電磁石(図示せず)及び偏向電磁石4、6、8を有する。治療室9は略筒状のガントリー11、照射装置10、透視X線発生装置12、13、X線検出器14、15、カウチ17を有する。
【0015】
イオン源(図示せず)より発生した治療放射線(荷電粒子ビーム)はライナック2により前段加速され、シンクロトロン3に入射する。シンクロトロン3でさらに加速された荷電粒子ビームはビーム輸送系5に出射される。
【0016】
シンクロトロン3から出射された治療放射線は、ビーム経路7を通過しながら四極電磁石(図示せず)によって収束し、偏向電磁石4,6,8によって方向を変えて治療室9に入射する。ビーム輸送系5の一部(偏向電磁石6,8、ビーム経路7の一部)は、ガントリー11と一体に回転するようガントリー11に設置されている。
【0017】
ビーム輸送系5から治療室9内に入射した荷電粒子ビームは、照射装置10からカウチ17上に配置された照射対象16に向けて照射される。照射装置10は、ガントリー11に設置されており、ガントリー11の回転制御によって任意の角度に調整できる。
【0018】
ガントリー11の内部機器構成について
図2を用いて説明する。ガントリー11には、照射対象16内のターゲット18に向けて治療放射線を照射する照射装置10が設置されており、さらに透視X線発生装置12,13及びX線検出器14,15のそれぞれの組合せからなる透視X線撮影装置がそれぞれのX線の経路が直交するように設置されている。なお、透視X線発生装置12,13とX線検出器14,15は、必ずしもガントリー11の内部に配置されている必要はなく、天井や床などの固定された場所に配置されていても良い。
【0019】
治療放射線をターゲット18に照射するためには、照射対象16は予め設定された位置に精度良く配置されている必要がある。操作者は透視X線撮影装置12〜15による照射対象16のX線画像を確認しながらカウチ17を移動させ、照射対象16を予め設定された位置に配置する。
【0020】
照射装置10は照射対象16に照射する治療放射線のサイズを決定し、照射対象16内におけるターゲット18の形状に適した線量分布を形成する。
【0021】
本実施形態の粒子線治療システムに備えられた制御システム50について、
図3を用いて説明する。
図3は制御システム50の制御ブロックを示す図である。制御システム50は、中央制御装置51、加速器制御装置52、ガントリー制御装置53、照射制御装置54、透視X線撮影制御装置55、カウチ制御装置56、撮影間隔設定装置60を備えている。
【0022】
中央制御装置51は、加速器制御装置52、ガントリー制御装置53、照射制御装置54、透視X線撮影制御装置55及びカウチ制御装置56に接続され、これらの間で必要な情報を送受信することにより制御システム50を制御する。
【0023】
加速器制御装置52は、治療放射線発生装置1及びビーム輸送系5に接続され、これらを制御する。ガントリー制御装置53はガントリー11に接続され、ガントリー11の回転を制御する。照射制御装置54は照射装置10内の機器を制御し、照射対象16内で意図する線量分布を形成するように治療放射線を照射する。
【0024】
透視X線撮影制御装置55は透視X線撮影発生装置12,13、X線検出器14,15に接続され、これらを制御する。カウチ制御装置56はカウチ17に接続され、これを制御する。
【0025】
透視X線撮影制御装置55は、撮影制御装置57、画像生成装置58、照射判定装置59を備えている。撮影制御装置57は透視X線発生装置12、13に所定の撮影間隔でX線撮影信号を送信し、透視X線撮影のタイミングを制御する。
【0026】
撮影間隔設定装置60は図示しない表示装置及び入力装置を備え、操作者による治療放射線照射不可時の透視X線撮影間隔の設定・確認を可能としている。撮影間隔設定装置60は撮影制御装置57に接続されており、照射不可時の撮影間隔の設定値を撮影制御装置57に送信する。撮影制御装置57は、後述する標準撮影間隔(第1撮影間隔)と照射不可時撮影間隔(第2撮影間隔)とを切り替えて、間欠的なX線撮影を行う。ここでいう撮影間隔とは、間欠的な透視X線撮影において、ある撮影開始時から次の撮影開始時までの時間幅を意味する。
【0027】
X線撮影信号を受信した透視X線発生装置12,13は、それぞれターゲット18に向けて透視X線を照射し、ターゲット18を透過した透視X線はそれぞれ対向するX線検出器14,15によって検出される。X線検出器14,15は、検出した透視X線を電気信号に変換して画像生成装置58に送信する。
【0028】
画像生成装置58はX線検出器14,15から得られた前記電気信号情報を基に透視X線撮影画像を生成し、当該画像データを照射判定装置59に送信する。照射判定装置59は撮影画像データを基にターゲット18の座標を計算し、予め設定された照射許可領域(以下、ゲート領域)内にターゲット18が存在するか否かを判定する。
【0029】
上記座標計算において、ターゲット18の周辺組織とターゲット18の識別が困難である場合、ターゲット18付近にX線を吸収するマーカを埋め込み、透視X線撮影制御装置55により撮影する。撮影画像上に探索領域を設定し、その中でテンプレートマッチングを行い、テンプレートに対して最もマッチングスコアが高い位置を求めることによりマーカ位置が決定される。なお、マーカを用いずに直接ターゲットをテンプレートマッチングにより位置計測しても良い。この際に、大きな探索領域を用いると上記マッチング時間の増加をもたらし、透視X線画像の撮影時間と認識終了時間の差が増大することにより追跡精度を悪化させる恐れがある。一方で小さな探索領域を用いると、ターゲット18の移動速度が速い場合や急な動きがあった場合、撮影画像間のターゲット18の移動後の位置が探索領域からはみ出し、ターゲット18を見失う恐れがある。そのため、治療に必要な追跡精度でターゲット18の位置変動を計測するには、ターゲット18の移動速度に合った探索領域と撮影間隔を用いる必要がある。
【0030】
照射判定装置59は、計測したターゲット18の座標が前記ゲート領域内に存在するか否かを判定し、その判定結果を照射許可信号として中央制御装置51に送信する。ゲート領域を用いたゲート照射におけるターゲット座標及び照射許可信号のタイミングチャートの一例を
図4に示す。
図4に示すように、照射許可信号は、ターゲット座標がゲート領域(照射許可領域)内にないときはOFFとなり、ターゲット座標がゲート領域(照射許可領域)内にあるときはONとなる。
【0031】
中央制御装置51は照射許可信号がONになると加速器制御装置52及び照射制御装置54に照射開始信号を送信し、加速器制御装置52及び照射制御装置54は治療放射線発生装置1及び照射装置10をそれぞれ制御してターゲット18に治療放射線を照射する。以上の手順を経て、移動性臓器内のターゲット18に対して精度の良い治療放射線照射が行われる。
【0032】
〜治療処理の流れ〜
本実施形態における放射線治療システムによる動体追跡粒子線治療の処理フローについて
図5を用いて説明する。
【0033】
まず、操作者は透視X線撮影装置12〜15を用いて得た透視X線撮影画像を参照しながら、カウチ17上の照射対象16が所定の照射位置に配置されるようにカウチ17の位置を調整し、ターゲット18の移動範囲及び速度を確認する(ステップ100)。
【0034】
ステップ100に続いて、操作者はターゲット18の移動範囲及び速度を参考に標準撮影間隔及び照射不可時撮影間隔を決定し、撮影間隔設定装置60に設定する(ステップ101)。ここでいう標準撮影間隔とは、治療放射線を照射中に行われるX線撮影の撮影間隔であり、照射精度を確保できる程度に小さな値が設定される。なお、標準撮影間隔が透視X線撮影制御装置55に予め固定で設定されている場合は、ここでの設定は不要である。一方、照射不可時撮影間隔とは、治療放射線の非照射中に行われるX線撮影の撮影間隔であり、照射不可時は照射精度を確保する必要が無いため標準撮影間隔よりも大きな値が設定される。但し、治療放射線の非照射中もターゲット18の位置を追跡する必要があるため、少なくともターゲット18を追跡できる程度には小さな値を設定する必要がある。
【0035】
ステップ101に続いて、透視X線撮影制御装置55は透視X線撮影装置12〜15を制御し、ターゲット18の位置確認のための間欠的な透視X線撮影を開始する(ステップ102)。なお、撮影開始直後の撮影間隔は照射不可時撮影間隔とする。
【0036】
ステップ102に続いて、中央制御装置51は加速器(シンクロトロン3)の運転状態を判別する(ステップ103)。シンクロトロン3の1運転周期は、例えば
図6に示すように、加速・出射準備・出射可能・減速の4つの運転状態で構成されており、加速器制御装置52から送信されるタイミング信号に基づいて制御される。中央制御装置51は、このタイミング信号に基づいてシンクロトロン3の運転状態が1運転周期における加速・出射準備・出射可能・減速のいずれであるかを判別し、その判別結果を透視X線撮影制御装置55に送信する。
【0037】
ステップ103に続いて、透視X線撮影制御装置55は、中央制御装置51から受信した判別結果に基づいて、シンクロトロン3の運転状態が「出射可能」であるか否かを判定する(ステップ104)。
【0038】
ステップ104でYES(シンクロトロン3の運転状態が出射可能)と判定された場合は、透視X線撮影制御装置55は撮影間隔を標準撮影間隔に設定する(ステップ105)。一方、ステップ104でNO(シンクロトロン3の運転状態が出射不可)と判定された場合は、透視X線撮影制御装置55の撮影制御装置57は、撮影間隔を撮影間隔設定装置60によって設定された照射不可時撮影間隔に変更し(ステップ106)、ステップ103に戻る。
【0039】
ステップ105に続いて、照射判定装置59は画像生成装置58から得られた撮影画像を基にターゲット位置を確認し、ゲート領域内にターゲット18が存在するか否かを判定する(ステップ107)。
【0040】
ステップ107でYES(ゲート領域内にターゲット18が存在する)と判定された場合は、照射判定装置59から中央制御装置51に送信されるゲート信号はONとなり、中央制御装置51は加速器制御装置52、照射制御装置54に出射許可信号を送信して治療放射線をターゲット18に照射する(ステップ108)。一方、ステップ107でNO(ゲート領域内にターゲット18が存在しない)と判定された場合は、ステップ103に戻る。
【0041】
ステップ108に続いて、照射制御装置54は照射装置10内に備えられた線量モニタより照射された粒子の総照射線量を計測し、総照射線量が治療計画で定めた線量(計画線量)に達したか否かを判定する(ステップ109)。
【0042】
ステップ109でYES(総照射線量が計画線量に達した)と判定された場合は、照射制御装置54は中央制御装置51に照射完了信号を送信し、中央制御装置は加速器制御装置52、照射制御装置54、透視X線撮影制御装置55に治療終了信号を送信して治療を終了する。一方、ステップ109でNO(総照射線量が計画線量に達していない)と判定された場合は、ステップ103に戻る。
【0043】
〜効果〜
本実施形態によれば、シンクロトロン3を備えた放射線治療システムにおいて、シンクロトロン3が放射線を出射できる運転状態にあるとき(治療放射線の照射可能時)は照射精度を確保できる値に設定された標準撮影間隔でX線撮影が行われ、シンクロトロン3が放射線を出射できない運転状態にあるとき(治療放射線の照射不可時)は、標準撮影間隔よりも大きくかつターゲット18を追跡できる値に設定された照射不可時撮影間隔でX線撮影が行われるため、ターゲット18への照射精度を確保しつつ、治療中のX線撮影の頻度を抑えることにより透視X線撮影装置12〜15の負荷を低減できる。
【0044】
〜変形例〜
本実施形態では、本発明を動体追跡照射手法として迎撃照射手法を用いた放射線治療システムに適用した場合を例に説明したが、追尾照射手法を用いたシステムにも同様に適用可能である。その場合、
図5に示したフローにおいて、ゲート領域内にターゲット18が存在するか否かの判定処理(ステップ105)が不要となる。
【0045】
また、本実施形態における撮影間隔は、加速器の運転状態が出射可能か否かに応じて標準撮影間隔又は照射不可時撮影間隔のいずれかにしか変更されないが(ステップ105,106)、加速器の運転状態を更に細かく識別し、それらの運転状態に応じて標準撮影間隔から照射不可時撮影間隔の間で段階的に変更する事も可能である。
【0046】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態における放射線治療システムについて説明する。本実施形態における放射線治療システムは、治療放射線として荷電粒子線を用いて動体追跡粒子線治療を行うものであり、その全体概略構成は
図1に示した第1の実施形態におけるものと同様である。なお、本実施形態では、
図1中のライナック2、シンクロトロン3をサイクロトロン、シンクロサイクロトロン等に置き換えることも可能である。
【0047】
本実施形態における放射線治療システムでは、治療放射線のエネルギー変更を照射装置10内に設置されたエネルギー変更装置(後述)を用いて行うため、エネルギー変更装置の稼動中は治療放射線の照射は行われず、この間にX線撮影の撮影間隔を拡大しても照射精度に影響は無い。
【0048】
本実施形態における照射装置10の内部機器構成について
図7を用いて説明する。照射装置10は線量モニタ300、ワブラー電磁石301、散乱体302、リッジフィルター303、エネルギー変更装置304、マルチリーフコリメータ305、ボーラス306を備えている。
【0049】
図7において、治療放射線発生装置1(
図1)から出射された治療放射線はビーム輸送系5(
図1)を経由して照射装置10の図示左側から入射し、照射装置10の図示右側からターゲット18(
図2)に向けて照射される。治療放射線はそのエネルギーに依存して、ある一定の深さに線量付与のピーク(以下、ブラッグピーク)を持つ。治療放射線は線量モニタ300でビーム線量が測定され、ワブラー電磁石301で拡大される。そして、治療放射線は散乱体302で散乱され、アルミニウム等を用いたリッジフィルター303によりターゲット18の厚さに応じてブラッグピークの幅が拡大される。拡大されたブラッグピークを拡大ブラッグピークと呼ぶ。
【0050】
さらに、治療放射線のエネルギーは複数のアクリル樹脂板等で構成されたエネルギー変更装置304により、ターゲット18の体表面からの深さに応じて変更される。その後、複数(多葉)のリーフ板からなるリーフ部とリーフ板のそれぞれを駆動するリーフ駆動機構(図示せず)を備えたマルチリーフコリメータ305により、治療放射線の照射野はターゲット18の外周形状に合わせて制限される。そして、治療放射線の飛程はボーラス306によりターゲット18の深さ形状に合わせて制限される。
【0051】
なお、
図7は散乱体照射法を用いた場合の照射装置10の内部機器構成の一例を示したものであるが、スキャニング照射法を用いる場合は、ワブラー電磁石301、散乱体302、リッジフィルター303、マルチリーフコリメータ305、ボーラス306に代えて、治療放射線を照射面に対して走査するための走査電磁石を備えた構成となる。その場合、ワブラー電磁石301、散乱体302、リッジフィルター303、マルチリーフコリメータ305、ボーラス306を用いて行っていた、治療放射線による生体内でのブラッグピークの深さ方向位置の照射野は、シンクロトロンの場合は加速器のエネルギーを調整するとともにエネルギー変更装置304により治療放射線の到達深さを調整することで形成され、サイクロトロンの場合はエネルギー変更装置304により治療放射線の到達深さを調整することで形成される。
【0052】
本実施形態における放射線治療システムに備えられた制御システムの構成は、
図3に示した第1の実施形態におけるものと同様である。以下、中央制御装置51及び照射制御装置54の制御のうち、第1の実施形態と相違する部分を説明する。
【0053】
照射制御装置54は、中央制御装置51からの照射許可信号を受信すると、ターゲット18の形状に合わせた治療放射線を照射するように照射装置10内の各機器に制御信号を送信する。ターゲット18に対する治療放射線の拡大ブラックピークの体表面からの深さを変更する際、中央制御装置51は照射制御装置54へエネルギー変更装置稼働信号を送信する。エネルギー変更装置稼働信号を受信した照射制御装置54は照射装置10のエネルギー変更装置304を稼働させる。エネルギー変更装置304の稼働中(エネルギーの変更中)は治療放射線の照射を行わない。
【0054】
〜治療処理の流れ〜
本実施形態における放射線治療システムによる動体追跡粒子線治療の処理フローについて
図8を用いて説明する。
【0055】
まず、操作者は透視X線撮影装置12〜15を用いて得た透視X線撮影画像を参照しながら、カウチ17上の照射対象16が所定の照射位置に配置されるようにカウチ17の位置を調整し、ターゲット18の移動範囲及び速度を確認する(ステップ500)。
【0056】
ステップ500に続いて、操作者はターゲット18の移動範囲及び速度を基に標準撮影間隔及び照射不可時撮影間隔を決定し、撮影間隔設定装置60に設定する(ステップ501)。なお、標準撮影間隔が透視X線撮影制御装置55に予め固定で設定されている場合は、ここでの設定は不要である(ステップ501)。
【0057】
ステップ501に続いて、透視X線撮影制御装置55は透視X線撮影装置12〜15を制御し、ターゲット18の位置計測のための間欠的な透視X線撮影を開始する(ステップ502)。なお、撮影開始直後の撮影間隔は照射不可時撮影間隔とする。
【0058】
ステップ502に続いて、中央制御装置51は照射制御装置54からの情報を基にエネルギー変更装置304の稼働状態を確認し(ステップ503)、エネルギー変更装置304が稼働中か否かを判定する(ステップ504)。
【0059】
ステップ504でYES(エネルギー変更装置304が非稼動中)と判定された場合は、撮影制御装置57は中央制御装置51からの信号を受けて撮影間隔を標準撮影間隔に戻す(ステップ505)。一方、ステップ504でNO(エネルギー変更装置304が稼働中)と判定された場合は、撮影制御装置57は中央制御装置51からの信号を受けて撮影間隔を照射不可時撮影間隔に変更し(ステップ506)、ステップ503に戻る。
【0060】
ステップ505に続いて、照射判定装置59は画像生成装置58から受信した撮影画像を基にターゲット18の位置を確認し、ゲート領域内にターゲット18が存在するか否かを判定する(ステップ505)。
【0061】
ステップ507でYES(ゲート領域内にターゲット18が存在する)と判定された場合は、中央制御装置51は照射許可信号を加速器制御装置52及び照射制御装置54に送信し、加速器制御装置52及び照射制御装置54は治療放射線発生装置1及び照射装置10をそれぞれ制御して治療放射線をターゲット18に治療放射線を照射する(ステップ508)。ステップ507でNO(ゲート領域内にターゲット18が存在しない)と判定された場合は、ステップ503に戻る。
【0062】
ステップ508に続き、照射制御装置54は、照射装置10内に設けられた線量モニタ300によって照射された粒子の総照射線量を計測し、総照射線量が治療計画で定めた線量(計画線量)に達したか否かを判定する(ステップ509)。
【0063】
ステップ509でYES(総照射線量が計画線量に達した)と判定された場合は、照射制御装置54は治療終了信号を中央制御装置51に送信し、中央制御装置51は加速器制御装置52、照射制御装置54、透視X線撮影制御装置55に治療終了信号を送信して治療を終了する。ステップ509でNO(総照射線量が計画線量に達していない)と判定された場合は、ステップ503に戻る。
【0064】
〜効果〜
本実施形態によれば、エネルギー変更装置304によって治療放射線のエネルギーを変更する放射線治療システムにおいて、エネルギー変更装置304の非稼働中(治療放射線の照射可能時)は照射精度を確保できる標準撮影間隔でX線撮影が行われ、エネルギー変更装置304の稼働中(治療放射線の照射不可時)は、標準撮影間隔よりも大きくかつターゲット18を追跡するのに十分な照射不可時撮影間隔でX線撮影が行われるため、ターゲット18への照射精度を確保しつつ、X線撮影の頻度を抑えることにより透視X線撮影装置12〜15の負荷を低減できる。
【0065】
〜変形例〜
本実施形態では、本発明を動体追跡照射手法として迎撃照射手法を用いた放射線治療システムに適用した場合を例に説明したが、追尾照射手法を用いたシステムにも同様に適用可能である。その場合、
図8に示したフローにおいて、ゲート領域内にターゲットが存在するか否かの判定処理(ステップ507)が不要となる。
【0066】
また、本実施形態における撮影間隔は、エネルギー変更装置が稼動中か否かに応じて標準撮影間隔又は照射不可時撮影間隔のいずれかにしか変更されないが(ステップ505,506)、エネルギー変更装置の稼動状態を更に細かく識別し、それらの稼動状態に応じて標準撮影間隔から照射不可時撮影間隔の間で段階的に変更する事も可能である。
【0067】
また、本実施形態では、エネルギー変更装置304が照射装置10に設置された場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、ビーム輸送系5などに設置されていても良い。
【0068】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態による放射線治療システムについて説明する。
図9及び
図10は本実施形態による放射線治療システムの全体概略構成をそれぞれ放射線治療装置の側面図及び正面図とともに示す図である。本実施形態における放射線治療システムは、治療放射線として荷電粒子線またはX線・γ線を用いて動体追跡粒子線治療を行うものであり、治療放射線の照射野の形成は照射装置に設置されたマルチリーフコリメータ605を用いて行うため、マルチリーフコリメータ605の稼働中は治療放射線の照射は行われず、この間にX線撮影の撮影間隔を拡大しても照射精度に影響は無い。以下、治療放射線としてX線を用いた場合の一例を示す。
【0069】
図9及び
図10において、放射線治療システムは主に放射線治療装置600と制御システム700とで構成されており、放射線治療装置600はライナック601、重金属ターゲット603、マルチリーフコリメータ605、ガントリー607、コリメータ装置608、カウチ610、照射台611、X線検出器612,613、透視X線発生装置614,615を備えている。
【0070】
ライナック601により加速された電子線602は、重金属ターゲット603に衝突することで治療放射線604を発生させる。ライナック601と重金属ターゲット603とは放射線発生装置を構成している。治療放射線604は、コリメータ装置608に内蔵されたマルチリーフコリメータ605の開口形状を調整することによってその照射野が整形される。コリメータ装置608は放射線照射装置を構成している。照射台611の上部には照射対象609を配置するためのカウチ610が取り付けられており、照射台611によって照射対象609の照射位置を上下方向に調整することができ、カウチ610によって照射対象609の照射位置を水平方向に調整することができる。
【0071】
本実施形態における制御システム700について
図11を用いて説明する。
図11は制御システム700の制御ブロックを示す図である。制御システム700は、撮影制御装置701、画像生成装置702、照射判定装置703、照射制御装置704、撮影間隔設定装置705を備えている。
【0072】
撮影間隔設定装置705は、図示しない表示装置及び入力装置を備え、操作者による照射不可時撮影間隔の設定・確認を可能としている。撮影間隔設定装置705は撮影制御装置701に接続されており、照射不可時設定間隔の設定値を撮影制御装置701に送信する。
【0073】
撮影制御装置701は、標準撮影間隔又は照射不可時撮影間隔で透視X線発生装置614,615にX線撮影信号を送信することにより間欠的なX線撮影を行う。
【0074】
X線撮影信号を受信した透視X線発生装置614,615は、ターゲット606に向けてそれぞれ透視X線を照射し、ターゲット606を透過した透視X線はそれぞれ対向するX線検出器612,613によって検出される。X線検出器612,613は、検出した透視X線を電気信号に変換し、画像生成装置702に送信する。
【0075】
画像生成装置702は、X線検出器612,613から受信した電気信号を基に透視X線撮影画像を生成し、当該画像データを照射判定装置703に送信する。照射判定装置703は、画像生成装置702から受信した画像データを基にターゲット606の位置を計算し、予め設定された照射許可領域(以下、ゲート領域)内にターゲット606が存在するか否かを判定する。照射判定装置703はターゲット606がゲート領域内に存在するときは照射許可信号を、上記ターゲット606が存在しないときは照射不可信号を照射制御装置704に送信する。
【0076】
照射制御装置704は、照射判定装置703からの照射許可信号を受信すると、ライナック601に照射許可信号を送信し、電子線602を重金属ターゲット603に衝突させることで治療放射線604を発生させる。また、照射制御装置704は、治療計画で定めた線量分布でターゲット606に治療放射線604を照射するようにマルチリーフコリメータ605の開口形状を調整する。なお、マルチリーフコリメータ605の開口形状を調整している間、治療放射線604の照射は停止させる。
【0077】
〜治療処理の流れ〜
本実施形態における放射線治療システムによる動体追跡放射線治療の処理フローについて
図12を用いて説明する。
【0078】
まず、操作者は透視X線撮影装置612〜615を用いて得た透視X線撮影画像を参照しながら、カウチ610上の照射対象609が所定の照射位置に配置されるようにカウチ610を移動させ、ターゲット606の移動範囲及び速度を確認する(ステップ800)。
【0079】
ステップ800に続いて、操作者はターゲット606の移動範囲及び速度を基に標準撮影間隔及び照射不可時撮影間隔の値を決定し、撮影間隔設定装置705に設定する(ステップ801)。なお、標準撮影間隔が撮影制御装置701に予め固定で設定されている場合は、ここでの設定は不要である。
【0080】
ステップ801に続いて、撮影制御装置701は透視X線撮影装置612〜615を制御し、ターゲット606の位置計測のための間欠的な透視X線撮影を開始する(ステップ802)。なお、撮影開始直後の撮影間隔は照射不可時撮影間隔とする。
【0081】
ステップ802に続いて、撮影制御装置701は照射制御装置704からの情報を基にマルチリーフコリメータ605の稼働状態を確認し(ステップ803)、マルチリーフコリメータ605が稼働中か否かを判定する(ステップ804)。
【0082】
ステップ804でYES(マルチリーフコリメータ605が非稼動中)と判定された場合は、撮影制御装置701は撮影間隔を標準撮影間隔に戻す(ステップ805)。一方、ステップ804でNO(マルチリーフコリメータ605が稼働中)と判定された場合は、撮影制御装置701は撮影間隔を照射不可時撮影間隔に変更し(ステップ806)、ステップ803に戻る。
【0083】
ステップ805に続いて、照射判定装置703は画像生成装置702から得られた撮影画像を基にターゲット606の位置を確認し、ゲート領域内にターゲット606が存在するか否かを判定する(ステップ807)。
【0084】
ステップ807でYES(ゲート領域内にターゲット606が存在する)と判定した場合は、照射判定装置703は照射許可信号を照射制御装置704に送信し、照射制御装置704はライナック601を制御して治療放射線604をターゲット606に照射する(ステップ808)。一方、ステップ807でNO(ゲート領域内にターゲット606が存在しない)と判定された場合は、ステップ803に戻る。
【0085】
ステップ808に続いて、照射制御装置704は治療放射線604の経路上に設けられた線量モニタ(図示せず)により照射された治療放射線の総照射線量を計測し、総照射線量が治療計画で定めた線量(計画線量)に達したか否かを判定する(ステップ809)。
【0086】
ステップ809でYES(総照射線量が計画線量に達した)と判定された場合は、治療を終了する。一方、ステップ809でNO(総照射線量が計画線量に達していない)と判定された場合は、ステップ801に戻る。
【0087】
〜効果〜
本実施形態によれば、マルチリーフコリメータ605の開口形状を変更することにより治療放射線の照射野を整形する放射線治療システムにおいて、マルチリーフコリメータ605の非稼働中(治療放射線の照射可能時)は照射精度を確保できる標準撮影間隔でX線撮影が行われ、マルチリーフコリメータ605の稼働中(治療放射線の照射不可時)は、標準撮影間隔よりも大きくかつターゲット606を追跡するのに十分な照射不可時撮影間隔でX線撮影が行われるため、ターゲット606への照射精度を確保しつつ、X線撮影の頻度を抑えることにより透視X線撮影装置612〜615の負荷を低減できる。
【0088】
〜変形例〜
本実施形態では、治療放射線としてX線を用いた場合の例を説明したが、荷電粒子線を用いた場合も同様に説明できる。
【0089】
また、本実施形態における撮影間隔は、マルチリーフコリメータが稼動中か否かに応じて標準撮影間隔又は照射不可時撮影間隔のいずれかにしか変更されないが(ステップ805,806)、マルチリーフコリメータの稼動状態を更に細かく識別し、それらの稼動状態に応じて標準撮影間隔から照射不可時撮影間隔の間で段階的に変更する事も可能である。
【0090】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態における放射線治療システムについて説明する。本実施形態は、第1から第3の実施形態のいずれかに基づき、加速器、エネルギー変更装置又はマルチリーフコリメータ等(以下、治療装置側という)が照射不可の状態にある間だけでなく、ターゲットがゲート領域内に存在しない間においても透視X線撮影の撮影間隔を広げることを可能とするものである。
【0091】
本実施形態が第1又は第2の実施形態に基づく場合の放射線治療システムに備えられる制御システムの構成は、
図3に示した第1の実施形態におけるものと同様であり、本実施形態が第3の実施形態に基づく場合の放射線治療システムに備えられる制御システムの構成は、
図11に示した第1の実施形態におけるものと同様である。
【0092】
〜治療処理の流れ〜
本実施形態が第1又は第2の実施形態に基づく場合の放射線治療システムによる動体追跡放射線治療の処理フローについて
図13を用いて説明する。
【0093】
まず、操作者は透視X線撮影装置12〜15を用いて得た透視X線撮影画像を参照しながら、カウチ17上の照射対象16が所定の照射位置に配置されるようにカウチ17を移動させ、ターゲット18の移動範囲及び速度を確認する(ステップ900)。
【0094】
ステップ900に続いて、操作者はターゲット18の移動範囲及び速度を基に標準撮影間隔及び照射不可時撮影間隔の値を決定し、ゲート領域からのターゲット18の距離に応じた撮影間隔の値を決定し撮影間隔設定装置60に設定する(ステップ901)。なお、標準撮影間隔について、透視X線撮影制御装置55に予め固定で設定されている場合は、ここでの設定は不要である。
【0095】
ステップ901に続いて、透視X線撮影制御装置55は透視X線撮影装置12〜15を制御し、ターゲット18の位置計測のための間欠的な透視X線撮影を開始する(ステップ902)。なお、撮影開始直後の撮影間隔は照射不可時撮影間隔とする。
【0096】
ステップ902に続いて、透視X線撮影制御装置55は照射制御装置54からの情報を基に治療放射線の照射可否を確認し(ステップ903)、照射可能か否かを判定する(ステップ904)。ここでいう治療放射線の照射可否とは、治療装置側が治療放射線を照射できる状態にあるか否かを意味する。
【0097】
ステップ904でYES(照射可能)と判定された場合は、透視X線撮影制御装置55は撮影間隔を標準撮影間隔に戻す(ステップ905)。一方、ステップ904でNO(照射不可)と判定された場合は、透視X線撮影制御装置55は撮影間隔を照射不可時撮影間隔に変更し(ステップ906)、ステップ903に戻る。
【0098】
ステップ905に続いて、照射判定装置59は画像生成装置58から得られた撮影画像を基にターゲット18の位置を確認し、ゲート領域内にターゲット18が存在するか否かを判定する(ステップ907)。
【0099】
ステップ907でYES(ゲート領域内にターゲット18が存在する)と判定した場合は、照射判定装置59は中央制御装置51に照射許可信号を送信し、中央制御装置51は照射制御装置54に照射許可信号を送信し、照射制御装置54は照射装置10を制御して治療放射線をターゲット18に照射する(ステップ908)。
【0100】
一方、ステップ907でNO(ゲート領域内にターゲット18が存在しない)と判定された場合は、照射判定装置59はゲート領域からのターゲット18の距離を算出し、この距離情報と照射不可信号を中央制御装置51に送信する(ステップ910)。
【0101】
中央制御装置51は撮影制御装置57に上記距離に応じて撮影間隔を変更する信号を送信し(ステップ911)、ステップ903に戻る。ここでいう撮影間隔の変更とは、ゲート領域からターゲット18までの距離が大きければ撮影間隔を拡大し、ゲート領域からターゲット18までの距離が小さければ撮影間隔を縮小することを意味する。なお、ゲート領域内にターゲット18が存在しないときは、ゲート領域からターゲット18までの距離に関係なく標準撮影間隔よりも大きい一定の撮影間隔(例えば、照射不可時撮影間隔)に変更しても良い。
【0102】
ステップ910に続いて、照射制御装置54は治療放射線の経路上に設けられた線量モニタ(図示せず)により照射された粒子の総照射線量を計測し、総照射線量が治療計画で定めた線量(計画線量)に達したか否かを判定する(ステップ909)。
【0103】
ステップ909でYES(総照射線量が計画線量に達した)と判定された場合は、治療を終了する。一方、ステップ909でNO(総照射線量が計画線量に達していない)と判定された場合は、ステップ903に戻る。
【0104】
なお、本実施形態が第3の実施形態に基づく場合の放射線治療システムによる動体追跡放射線治療の処理フローは、
図3に示した照射判定装置59、中央制御装置51及び撮影制御装置57の各機能が
図11に示した照射判定装置703、照射制御装置704及び撮影制御装置701によってそれぞれ実現される点を除き、第1又は第2の実施形態に基づく場合と同様である。
【0105】
〜効果〜
加速器、エネルギー変更装置又はマルチリーフコリメータ等の治療装置側が照射不可の状態にある間に撮影間隔を拡大するとともに、ターゲット18がゲート領域内に存在しない間においても撮影間隔を拡大することにより、撮影装置の負荷を低減できる。さらに、ターゲット18がゲート領域内に存在しない間において、ゲート領域からターゲット18までの距離に応じて撮影間隔を変更することにより、撮影のタイミングとターゲット18がゲート領域内に入る瞬間とのずれが極小化し、ターゲット18がゲート領域内に入る瞬間のターゲット18の位置を特定することができる。これにより、ターゲット18がゲート領域内にあるときにより多くの治療放射線を照射することが可能となり、治療時間を短縮することができる。
【0106】
〜変形例〜
本実施形態における撮影間隔は、治療装置側の状態が照射可能か否かに応じて標準撮影間隔又は照射不可時撮影間隔のいずれかにしか変更されないが(ステップ905,906)、治療装置側の状態を更に細かく識別し、それらの状態に応じて標準撮影間隔から照射不可時撮影間隔の間で段階的に変更する事も可能である。
【0107】
<その他の変形例>
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が考えられる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の一部を追加・削除・置換をすることも可能である。