(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のアセットおよび制御情報がMMT方式で多重化されたコンテンツ信号を受け取り、前記コンテンツ信号を前記アセットごとに分離するとともに制御情報を抽出するマルチメディアデコーダー部と、
アプリケーションを実行するとともに前記アプリケーションからの表示を出力するアプリケーション実行部と、
前記アプリケーション実行部におけるアプリケーションのライフサイクルを制御するアプリケーション制御部と、
前記マルチメディアデコーダー部によって分離される映像アセットに基づく映像を、前記アプリケーション実行部で実行されるアプリケーションからの表示と合成する映像合成部と、
前記映像合成部が合成した結果得られた映像を出力する映像出力部と、
前記マルチメディアデコーダー部で分離される前記映像が緊急情報であるか否かを示す緊急指示情報を前記マルチメディアデコーダー部から取得し、前記映像が緊急情報であることを前記緊急指示情報が示している場合には前記アプリケーション制御部に対して前記アプリケーション実行部で実行されている前記アプリケーションを停止させるように指示するレイアウト制御部と、
前記マルチメディアデコーダー部から電子番組表データを受け取るとともに、前記電子番組表データに基づいて番組表を出力する番組表データ取得部と、
を具備し、
前記映像合成部は、前記映像に、更に前記番組表データ取得部から出力される前記番組表を合成するものであり、
前記レイアウト制御部は、前記映像が緊急情報であることを前記緊急指示情報が示している場合には、前記番組表データ取得部からの前記番組表の出力を中止させるよう指示するものであり、
前記緊急指示情報は、PA(Package Access)メッセージ内に格納される、
ことを特徴とする受信機。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
次に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態を構成する主要な装置あるいは装置群は、受信機1と、放送局設備100である。受信機1は、テレビ受像機であり、例えば個人宅やその他の場所等に設置される。また、受信機1は、携帯可能なものであってもよい。放送局設備100は、テレビ局が有する設備であり、主として、放送信号を送出するためのものである。いわゆるテレビ放送は、放送波(電波)やケーブルテレビ信号を用いて伝送されるものであるが、MMT(MPEG media transport)による伝送は、物理的な伝送媒体に依存しないため、受信機1は、テレビ放送と同様の映像コンテンツを、インターネット等の通信を経由して受信することもできる。また、テレビ放送そのものを、インターネット経由で配信するようにしてもよい。
【0015】
図1は、同実施形態による受信機の概略機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、受信機1は、チューナー部11と、IP通信部12と、MMTデコーダー部15(マルチメディアデコーダー部)と、音声伸長デコーダー部21と、映像伸長デコーダー部22と、EPG取得部23(番組表データ取得部)と、内蔵音源供給部24と、音声合成部25と、音声出力部26と、映像合成部27と、映像出力部28と、レイアウト制御部31と、アプリケーション制御部45と、キャッシュメモリ46と、アプリケーション実行部47とを含んで構成される。
【0016】
チューナー部11は、外部からの放送信号を受信し、所望の周波数(チャンネル)の信号を選択し取得する。放送信号は、例えば、電波として伝送され、またはケーブルテレビ用のケーブルを介して伝送され、受信機1によって受信されるものである。
【0017】
IP通信部12は、インターネットプロトコル(IP,Internet Protocol)を用いて、外部の装置等との間で通信を行う。この通信は、有線信号(光ケーブルや金属ケーブル等)または無線信号(通信事業者が提供する通信サービスや、無線LAN等)の手段を用いて行われる。この通信は、例えば、インターネット(the Internet)を経由して行われる。IP通信部12は、例えば、放送局側設備や、映像コンテンツ配信事業者のサーバー装置から、映像コンテンツの信号等をIPプロトコルで受信する。
【0018】
MMTデコーダー部15は、チューナー部11で受信した映像コンテンツの信号や、IP通信部12で受信した映像コンテンツの信号を受け取り、デコードする。MMTデコーダー部15が受け取る信号は、MMTの方式で多重化されており、映像アセットや、音声アセットや、データアセットや、データアセット等を含む。また、MMTデコーダー部15が受け取る信号は、制御情報を含んでいる。この制御情報には、レイアウト設定テーブルや、MPテーブルや、その他のテーブルが含まれる。そして、MMTデコーダー部15は、抽出された音声アセットのデータを音声伸長デコーダー部21に供給する。また、MMTデコーダー部15は、受け取った信号から抽出した電子番組表(Electronic Program Guide,EPG)の情報をEPG取得部23に供給する。電子番組表の情報は、例えば、放送信号内のサービスインフォメーションに含まれる形で伝送される。また、MMTデコーダー部15は、供給された信号から抽出した制御情報のうち、レイアウト制御に関する情報を、レイアウト制御部31に供給する。また、MMTデコーダー部15は、放送信号から抽出したイベントメッセージを、アプリケーション実行部47上で稼働するアプリケーションに渡す。
つまり、MMTデコーダー部15は、複数のアセットおよび制御情報が多重化されたコンテンツ信号を受け取り、そのコンテンツ信号をアセットごとに分離するとともに制御情報を抽出する。
【0019】
音声伸長デコーダー部21は、MMTデコーダー部15から供給された音声のデータを伸長し音声合成部25に供給する。
映像伸長デコーダー部22は、MMTデコーダー部15から供給された映像のデータをデコードし、所定画素数、且つ所定フレームレートの映像として、映像合成部27に供給する。
【0020】
EPG取得部23は、MMTデコーダー部から供給される電子番組表のデータに基づき、また利用者からの操作等に基づき、見やすい形式の番組表を成形し、映像合成部27に供給する。EPG取得部23は、通常、受信機1の利用者がリモコン装置等のボタンを操作することにより、利用者が望む単数または複数のサービス(チャンネル)および時間帯の番組表を出力する。また、同じくリモコン操作等に基づき、利用者がテレビの放送番組の映像に画面を切り替えたときには、EPG取得部23は、番組表の出力を中止する。また、EPG取得部23は、レイアウト制御部31から番組表の出力を中止するよう指示を受けたときにも、その時点で出している番組表の出力を中止する。
つまり、EPG取得部23は、MMTデコーダー部15から電子番組表データを受け取るとともに、電子番組表データに基づいて番組表を出力する。
【0021】
内蔵音源供給部24は、予め内蔵音源のデータを内部のメモリに記憶するとともに、アプリケーション実行部47上で稼働するアプリケーション等からの指示に基づき、指定された音源のデータを音声合成部25に供給する。
音声合成部25は、音声伸長デコーダー部21から受け取る音声と、内蔵音源供給部24から供給される音源とを混合し、音声出力部26に供給する。
音声出力部26は、音声合成部25から供給される音声を、出力する。音声を出力するためのスピーカー等は、受信機1の内部に備えていても良く、また受信機1の外部に存在していても良い。
【0022】
映像合成部27は、映像伸長デコーダー部22からの出力と、EPG取得部23からの出力と、アプリケーション実行部47上で実行されるアプリケーションからの文字・映像・画像等の出力とを合成し、映像出力部28に供給する。なお、映像合成部27が、さらに、字幕アセットに基づくテキストで構成されるレイアウトや、文字スーパーアセットに基づくテキストで構成されるレイアウトをも合成するようにしても良い。なお、映像合成部27は、上記の映像等を合成する際に、レイアウト制御情報に基づいて各表示要素(映像、文字等)のレイアウトを決定するが、ここではその詳細な説明を省略する。また、後述するように、アプリケーション実行部47から映像合成部27が受け取る映像には、データ放送に基づくコンテンツも含まれる。
つまり、映像合成部27は、MMTデコーダー部15によって分離される映像アセットに基づく映像を、アプリケーション実行部47で実行されるアプリケーションからの表示と合成する。また、映像合成部27は、映像に、更にEPG取得部23から出力される番組表を合成する。
【0023】
映像出力部28は、映像合成部27によって合成された映像の信号を受け、その映像を出力する。映像を出力するためのディスプレイデバイスは、受信機1の内部に備えていても良く、また受信機1の外部に存在していても良い。
【0024】
レイアウト制御部31は、MMTデコーダー部15から、映像のレイアウトを制御するための情報であるレイアウト制御情報を受け取る。本実施形態において、レイアウト制御情報の中には、受信している映像および音声が緊急情報であるか否かを示す緊急指示情報が含まれている。本実施形態では、レイアウト制御情報内においてこの緊急指示情報は、レイアウト設定テーブル内のレイヤー順序に格納されるが、その詳細については、後で説明する。そして、レイアウト制御部31は、取得した緊急指示情報に基づいて、現在の映像および音声が緊急情報(緊急ニュースや、緊急災害情報等)であるか否かを判別する。
その判定の結果、現在の映像および音声が緊急情報である場合には、レイアウト制御部31は、その緊急情報の提示を妨げる可能性のある映像等および音声が出力されなくなるように制御する。具体的には、レイアウト制御部31は、現在の映像および音声が緊急情報である場合には、アプリケーション実行部47で稼働中のアプリケーションを停止させるとともに、EPG取得部23からの番組表の出力を中止させる。
つまり、レイアウト制御部31は、MMTデコーダー部15で分離される映像が緊急情報であるか否かを示す緊急指示情報をMMTデコーダー部15から取得し、その映像が緊急情報であることを緊急指示情報が示している場合にはアプリケーション制御部45に対してアプリケーション実行部47で実行されているアプリケーションを停止させるように指示する。また、レイアウト制御部31は、映像が緊急情報であることを緊急指示情報が示している場合には、EPG取得部23からの番組表の出力を中止させるよう指示する。
【0025】
アプリケーション制御部45は、アプリケーション実行部47におけるアプリケーションの実行を制御する。例えば、アプリケーション制御部45は、アプリケーションのライフサイクル(フェッチ、起動、停止等)を制御する。アプリケーション制御部45は、不図示のアプリケーション情報テーブル(AIT)を必要に応じてIP通信部12経由で取得する。そして、アプリケーション制御部45は、取得したアプリケーション制御テーブルに基づいて、アプリケーションのコードを取得するとともに、利用者からの操作に基づいて、あるいは放送サービスに連動して、アプリケーションを起動させたり停止させたりする。なお、キャッシュメモリ46内にアプリケーションの有効なコードが記憶されている場合には、アプリケーション制御部45はキャッシュからそのコードを読み出して、アプリケーション実行部47で起動させる。また、アプリケーション制御部45は、レイアウト制御部31からの指示に基づいて、稼働中のアプリケーションをすべて一斉に停止させる場合がある。
つまり、アプリケーション制御部45は、アプリケーション実行部47におけるアプリケーションのライフサイクルを制御する。
【0026】
キャッシュメモリ46は、取得したアプリケーションコードを受信機1内に貯えておくための記憶手段である。キャッシュメモリ46は、例えば、半導体メモリ等を用いて実現される。
【0027】
アプリケーション実行部47は、アプリケーション制御部45による制御に基づいて、アプリケーションを実行させることのできる環境である。具体的な例としては、アプリケーション実行部47は、HTML5ブラウザを用いて実現され、HTML5およびJavaScript(登録商標)で記述されたコードを、提示ないしは実行させる。また、アプリケーション実行部47は、MMTデコーダー部15からイベントメッセージを受け取った際には、そのメッセージを必要なアプリケーションに渡す。なお、アプリケーション実行部47は、個々のアプリケーションが出力する映像および音声を、それぞれ、映像合成部27および音声合成部25に渡す。なおこのとき、音声に関しては、内蔵音源供給部24から供給される音源を利用する。
つまり、アプリケーション実行部47は、アプリケーションを実行するとともにアプリケーションからの表示を出力する。
【0028】
アプリケーションには様々な種類のものがある。アプリケーション実行部47において実行されるアプリケーションの一つは、データ放送によって配信されるデータを、適切な形式に整えて出力する機能を有するものである。また、別のアプリケーションは、利用者がビデオオンデマンド(VOD)を視聴できるようにする機能を有する。
【0029】
次に、上述した受信機1によって受信される映像等のコンテンツを送出する側の装置等の構成について説明する。
図2は、本実施形態における放送局設備の構成を示す機能構成図である。同図に示すように、放送局設備100は、送出制御装置51と、緊急情報切替装置52と、MMT制御情報送出部71と、音声圧縮エンコーダー部72と、映像圧縮エンコーダー部73と、データ放送送出部74と、EPG送出部75と、多重化装置81と、変調・送信機82と、IP通信装置83と、アプリケーション用サーバー装置91と、を含んで構成される。
【0030】
送出制御装置51は、放送信号の送出に関する制御を行う装置である。その制御の一つとして、通常番組による放送を送出するか、緊急情報に基づく放送を送出するかを区別し、その区別に応じた信号を出力する。具体的には、送出制御装置51は、外部から、緊急情報の発生に関する信号を取り込む。この信号により、送出制御装置51は、現在送出すべき映像および音声が、通常放送のものか緊急情報のものかを区別する。そして、送出制御装置51は、その区別に応じて、緊急情報切替装置52に対して、切替制御信号を供給する。また、送出制御装置51は、その区別に応じた緊急指示情報を、レイアウト制御情報の一部に含めて、MMT制御情報送出部71に供給する。この緊急指示情報の詳細については後述する。
つまり、送出制御装置51は、緊急情報切替装置52に対して通常番組を送出するか緊急情報を送出するかを切り替えるための切替制御信号を供給するとともに、送出する制御情報内に、通常番組を送出するか緊急情報を送出するかを表す緊急指示情報を格納するよう制御する。
【0031】
緊急情報切替装置52は、送出制御装置51からの制御に基づいて、映像および音声のそれぞれについて、通常番組を送出するか、緊急放送を送出するかを切り替える機能を有する。具体的には、緊急情報切替装置52は、通常番組の映像と緊急放送の映像とを入力可能とし、通常時には通常番組の映像を出力する。そして、送出制御装置51からの切替制御信号が「緊急情報発生」を示すと、緊急情報切替装置52は、切り替えを行い、緊急放送の映像を出力する。音声についても同様に、緊急情報切替装置52は、通常番組の音声と緊急放送の音声とを入力可能とし、通常時には通常番組の音声を出力する。そして、送出制御装置51からの切替制御信号が「緊急情報発生」を示すと、緊急情報切替装置52は、切り替えを行い、緊急放送の音声を出力する。
つまり、緊急情報切替装置52は、送出する映像および音声のそれぞれについて、通常番組を送出するか緊急情報を送出するかを切り替える。
【0032】
MMT制御情報送出部71は、放送信号をMMTで伝送する際の制御信号を生成する。
この制御信号を生成する際、MMT制御情報送出部71は、必要なレイアウト制御情報を送出制御装置51から受け取る。送出制御装置51から供給されるレイアウト制御情報には、緊急指示情報が含まれる。この緊急指示情報は、送出する映像および音声が、緊急情報に関するものであるか、通常放送によるものであるかを示す。なお、本実施形態では、後述するように、MMT制御情報送出部71は、レイアウト設定テーブル内のデータ項目であるlayer_orderに、この緊急指示情報を格納する。
つまり、MMT制御情報送出部71は、緊急指示情報を、レイアウト設定テーブルにおけるデータ項目であるレイヤー順序に格納する。
【0033】
音声圧縮エンコーダー部72は、緊急情報切替装置52から出力される音声信号を所定の方式でエンコードして出力する。
映像圧縮エンコーダー部73は、緊急情報切替装置52から出力される映像信号を所定の方式でエンコードして出力する。
データ放送送出部74は、データ放送として送出するためのデータを出力する。
EPG送出部75は、電子番組表(EPG)の情報を出力する。
【0034】
多重化装置81は、MMT制御情報送出部71から出力される制御情報と、音声圧縮エンコーダー部72から出力される音声のデータと、映像圧縮エンコーダー部73から出力される映像のデータと、データ放送送出部74から出力されるデータ放送用のデータと、EPG送出部75から出力される番組表のデータとを、MMTで伝送するための形式で多重化する。そして、多重化装置81は、多重化された結果のデータを、変調・送信機82またはIP通信装置83のいずれかから送出する。なお、多重化装置81が上記以外のデータ(例えば、字幕のテキストのデータや、文字スーパーのテキストのデータなど)をさらに多重化するようにしても良い。
つまり多重化装置81は、少なくとも、緊急情報切替装置52から出力される映像および音声と、緊急指示情報を含んだ制御情報とを、多重化して出力する。
【0035】
変調・送信機82は、多重化装置81から出力されるデータを、放送波として送信する。変調・送信機82から送信される放送波は空中線から輻射される。また、変調・送信機82は、ケーブルテレビ用のケーブル経由での送信を行っても良い。
IP通信装置83は、多重化装置81から出力されるデータを、IPプロトコルを用いた通信によって、ネットワーク経由で外部に送信する。このネットワークは、たとえば、インターネットである。また、IP通信装置83は、受信機1とアプリケーション用サーバー装置91との間の、IPプロトコルによる双方向の通信を仲介する。
【0036】
アプリケーション用サーバー装置91は、IP通信装置83を介して、通信ネットワーク経由で外部の装置との間の通信を行う。例えば、アプリケーション用サーバー装置91は、受信機1において稼働するアプリケーションからの要求に応じて、必要なデータを、同アプリケーションに対して送る。
【0037】
以上、説明したように、放送局設備100によれば、通常放送による映像および音声の送出と、緊急情報による映像および音声の送出とを切り替えることができる。また、この放送局設備100によれば、MMTの制御情報の中に緊急指示情報を含めて送出することができる。これにより、受信機1側では、緊急指示情報におうじたレイアウト制御を行うことができる。具体的には、受信機1側では、緊急情報による放送が始まると、アプリケーションを停止させたり、電子番組表の表示を停止させたりする。これにより、受信機1は、アプリケーションからの出力や電子番組表の表示などに邪魔されることなく、緊急情報の映像および音声を提示することができる。
【0038】
次に、映像のレイアウトを制御するための情報について説明する。
図3は、受信機1が、映像コンテンツの制御信号の一部として受信するレイアウト設定テーブル(Layout Configuration Table,LCT)のデータ構成、およびデータ例を示す概略図である。同図において、データ構造は、ブロック構造を有する言語によって表されている。また、各データ項目に付記された数値は、そのデータ項目のサイズ(ビット数)である。なお、レイアウト設定テーブルはPA(Package Access)メッセージ内に含まれる。
【0039】
本実施形態では、レイアウト設定テーブル内に、緊急指示情報を格納する。また、本実施形態では、レイアウト設定テーブル内のlayer_order(レイヤー順序)のデータ項目を、緊急指示情報を格納するために利用する。このようにlayer_orderに緊急指示情報を格納することにより、既存のデータ構造を変更する必要がなく、従来規格との間の親和性が高くなる。
【0040】
ただし、レイアウト設定テーブル内の既存のデータ項目に緊急指示情報を格納することは必須ではなく、放送局設備100側から受信機1側に伝送される制御情報の中のどこかのテーブル内に、緊急指示情報のためのあらたなデータ項目を設けるようにしても良い。
一例として、レイアウト設定テーブル内にあらたにデータ項目を設けるようにしても良い。
【0041】
図示するように、レイアウト設定テーブルは2重のループの構造を有する。外側のループは、レイアウト番号とデバイスIDの組み合わせに対応する。そして、内側のループは、領域番号に対応する。
レイアウト設定テーブル内の各項目について、下に説明する。
(1)number_of_loop(レイアウト・デバイス数)は、このテーブルで設定するレイアウトとデバイスの組み合わせの総数を示す。
【0042】
以下の(2)から(10)までの範囲内に含まれるデータ項目は、レイアウトとデバイスの組み合わせごとにN回繰り返される。ここで、Nは、上記のnumber_of_loopで示される整数である。
(2)layout_number(レイアウト番号)は、各レイアウトの番号を示す。レイアウト番号「0」はデフォルトのレイアウト設定に対応する。一つのレイアウトが複数のデバイスから構成されることも可能である。
(3)device_id(デバイスID)は、クライアント端末の番号を示す。デバイスID「0」は、メインデバイスに対応する。
(4)number_of_region(領域数)は、当該レイアウトの当該デバイスにおける領域数を示す。
【0043】
以下の(5)から(10)までのデータ項目は、当該レイアウトの当該デバイスにおける領域ごとにM回繰り返される。ここで、Mは、上記のnumber_of_regionで示される整数である。
(5)region_number(領域番号)は、各領域の番号を示す。領域番号「0」は、デフォルトの領域番号である。なお、同一レイアウトの異なるデバイスには、異なる領域番号を割り当てる。
(6)left_top_pos_x(左上水平位置)は、当該領域の左上の水平位置(x座標)を、水平方向の全画素数に対する割合(百分率)で示す。全画面表示の左側を0とし、全画面表示の右側を100とする。
(7)left_top_pos_y(左上垂直位置)は、当該領域の左上の垂直位置(y座標)を、垂直方向の全画素数に対する割合(百分率)で示す。全画面表示の上側を0とし、全画面表示の下側を100とする。
(8)right_down_pos_x(右下水平位置)は、当該領域の右下の水平位置を、水平方向の全画素数に対する割合で示す。
(9)right_down_pos_y(右下垂直位置)は、領域の右下の垂直位置を、垂直方向の全画素数に対する割合で示す。
(10)layer_order(レイヤー順序)は、当該領域の奥行き方向の相対位置を示す。
前述のとおり、本実施形態では、このデータ項目に緊急指示情報を格納する。つまり、layer_order(レイヤー順序)は、直近で伝送されている映像アセットおよび音声アセットの内容が、緊急情報であるか否かを表す。緊急情報とは、例えば、緊急地震速報や、緊急ニュースや、緊急を要する災害情報などである。具体的には、layer_orderの値が「1」のとき「緊急指示である」ことを表し、layer_orderの値が「0」のとき「緊急指示ではない」ことを表す。なお、この値と意味の対応関係を適宜変えても良い。
【0044】
図3に示しているレイアウト設定テーブルのデータ例は、2つのレイアウトを含んでいる。つまり、number_of_loopの値は「2」である。それらの各々のレイアウトは、1つのデバイスIDに対応している。つまり、レイアウト番号とデバイスIDとの組み合わせが2つあり、その各々が、レイアウト設定テーブル内の外側のループに対応する。
【0045】
第1のレイアウト:第1のレイアウトのレイアウト番号は「0」である。また、デバイスIDは「0」である。このレイアウトは1つの領域を含んでいる。つまり、number_of_regionの値は「1」である。その領域の領域番号(region_number)は「0」である。この領域の範囲を百分率値のx−y座標で表すと、左上が(x,y)=(0,0)、右下が(x,y)=(100,100)である。そして、ここでは、layer_order(レイヤー順序)の値が「0」であり、これは「緊急指示ではない」ことを表す。
【0046】
第2のレイアウト:第2のレイアウトのレイアウト番号は「1」である。また、デバイスIDは「0」である。このレイアウトは1つの領域を含んでいる。つまり、number_of_regionの値は「1」である。その領域の領域番号(region_number)は「0」である。この領域の範囲を百分率値のx−y座標で表すと、左上が(x,y)=(0,0)、右下が(x,y)=(100,100)である。そして、ここでは、layer_order(レイヤー順序)の値が「1」であり、これは「緊急指示である」ことを表す。
【0047】
なお、以下において便宜上、レイアウト番号「0」で指定されるレイアウトを「レイアウト制御OFF」と呼び、レイアウト番号「1」で指定されるレイアウトを「レイアウト制御ON」と呼ぶ。
【0048】
図4は、伝送されるMP(MMT Package)テーブルのアセットループ内における、MPU提示領域指定記述子の例を示す概略図である。なお、MPUは、Media Processing Unitの略である。同図における(A)は「レイアウト制御OFF」中であることを示し、(B)は「レイアウト制御ON」中であることを示す。
【0049】
図4(A)において、descriptor_tag(記述子タグ)の値「0x8003」は、この記述子がMPU提示領域指定記述子であることを表す。また、descriptor_length(記述子長)は、当該記述子のサイズを表し、適切な値が設定される。また、mpu_sequence_number(MPUシーケンス番号)はXXであり、layout_number(レイアウト番号)は「0」であり、region_number(領域番号)は「0」である。
また、同図(B)において、descriptor_tag(記述子タグ)およびdescriptor_length(記述子長)は、上記の同図(A)と同様である。また、同図(B)に示す例は、1個のループを含み、当該ループ内に設定されているmpu_sequence_number(MPUシーケンス番号)はYYであり、layout_number(レイアウト番号)は「1」であり、region_number(領域番号)は「0」である。
なお、上のXXおよびYYは、それぞれ設定される適切な値を表す。
【0050】
つまり、
図4に示すMPU提示領域指定記述子では、MPUシーケンス番号XXにおいてレイアウト制御OFFとなり、即ち、レイアウト番号「0」が指定される。また、MPUシーケンス番号YYにおいてレイアウト制御ONとなり、即ち、レイアウト番号「1」が指定される。
【0051】
図3および
図4に例示したレイアウト制御情報に基づく、レイアウト制御部31の動作は、次の通りである。即ち、レイアウト制御部31は、受信機1が受信する信号内の緊急指示情報の値を監視する。具体的には、レイアウト制御部31は、レイアウト設定テーブル内の、各レイアウトにおけるlayer_orderの値を監視する。
【0052】
そして、緊急指示情報の値が「0」であったとき、レイアウト制御部31は、アプリケーション制御部45に対しても、EPG取得部23に対しても、特別のアクションを行わない。よって、この場合、映像合成部27は、通常の放送による映像と、EPG取得部23から出力される番組表と、アプリケーション実行部47上で稼働するアプリケーションからの出力とを、指定されたレイアウトで合成する。ここで、指定されたレイアウトとは、受信した特定のアセットによる映像等を画面上のどの座標の領域に表示するかということや、重なる(オーバーレイされる)提示要素の前後関係の順序や、アプリケーションからの座標を指定した画面出力等である。このとき、レイアウトの指定によっては、放送の映像が、アプリケーションからの出力や電子番組表などに覆われてしまう場合もある。
【0053】
そして、緊急指示情報の値が「1」であったとき、レイアウト制御部31は、アプリケーション制御部45に対して、稼働中のすべてのアプリケーションを停止させるよう、指示する。この指示に基づき、アプリケーション制御部45は、アプリケーション実行部47において稼働中のすべてのアプリケーションを停止させる。これにより、アプリケーション実行部47からの、映像合成部27への映像出力も、音声合成部25への音声出力も停止される。また、緊急指示情報の値が「1」であったとき、レイアウト制御部31は、EPG取得部23に対して、電子番組表の出力を中止するよう指示する。これにより、EPG取得部23は、たとえ電子番組中の表示出力中であっても、その表示を中止する。これにより、映像合成部27へは、アプリケーション実行部47からもEPG取得部23からも映像が渡されない。よって、映像合成部27は、映像伸長デコーダー部22の映像を、アプリケーション等からの出力で覆われない状態で、映像出力部28に供給する。つまり、緊急情報の放送による映像および音声が、確実に視聴者に伝わる。
なお、緊急指示情報の値が「1」以外の非零値であった場合に、緊急指示情報の値が「1」のときと同様の動作をするようにしても良い。
【0054】
図5は、レイアウト制御のONまたはOFFによる、画面の変化の例を示す概略図である。同図において、左側に示す画面例は、レイアウト制御OFFの状態でのものである。
また、右側に示す画面例は、レイアウト制御ONの状態のものである。左側の画面例では、データ放送やハイブリッドキャストによるアプリケーションからの出力が表示されている。ハイブリッドキャストは、テレビ放送とインターネットによる通信とを融合して実現されるサービスのことをいう。この左側の画面では、利用者はこれらのデータ放送ないしはハイブリッドアプリケーションからの出力を視聴しているため、この画面の背後に通常の放送の映像が隠されていても特に問題が生じない。ここで、緊急ニュース放送が始まる場合を想定する。既に述べた放送局設備側の各装置の動作により、映像および音声は、通常放送から緊急放送に切り替えられる。また、放送局設備側では、映像や音声のMPU提示領域指定記述子のlayout_numberを「0」から「1」に変更する。これにより、受信機1側では、既に説明した動作により、レイアウト制御ONの状態に移行する。すると、レイアウト制御部31からの指示により、データ放送の提示も含め、すべてのアプリケーションが停止される。電子番組表が表示されている場合には、電子番組表の表示も中止される。つまり、受信機1が出力する映像は、放送の映像に切り替わる。このように、レイアウト制御ONに移行した結果、右側の、緊急ニュース放送の映像が表示される。そして、緊急ニュース放送が終了し、通常の番組に復帰すると、放送局設備側の各装置の動作により、映像および音声は、緊急放送から通常放送に切り替えられる。また、放送局設備側では、映像や音声のMPU提示領域指定記述子のlayout_numberを「1」から「0」に変更する。これにより、受信機1側では、レイアウト制御OFFの状態に移行する。そして、レイアウト制御OFFの状態になると、あらたにアプリケーションを起動させることなどが可能となり、同図の左側の画面例に戻る。
【0055】
なお、本実施形態では、データ放送アセットについては、MPU提示領域指定記述子を配置しない。その理由は、MPU(MPU with non-timed media data)にカプセル化して伝送するためである。ただし、データ放送を表示するプレーンはマルチメディアプレーンであり、これは映像を表示するプレーンでもある。データ放送アセットはlayer_order(レイヤー順序)を「0」とみなすため、緊急情報の放送中は、データ放送アセットは映像アセットの裏に隠れることとなる。
【0056】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同様の事項についてはここでは記載を省略し、本実施形態特有の事項を中心に述べる。
第2実施形態における各装置(受信機1や、放送局設備100内の各装置)の機能構成自体は、第1実施形態におけるそれらとほぼ同様である。
但し、第2実施形態においては、緊急情報が発生した場合における、放送局設備100側から受信機1側への通知のしかたが、第1実施形態におけるそれとは異なる。
【0057】
第1実施形態においては、レイアウト設定テーブル上では、緊急指示情報が「0」(通常放送を表す)であるレイアウト(例えば、レイアウト番号0)と、緊急指示情報が「1」(緊急情報を表す)であるレイアウト(例えば、レイアウト番号1)との両方を常に格納していた。放送局設備100側からは、そのようなレイアウト設定テーブルが送出されていた。そして、映像アセットや音声アセットにおけるMPU提示領域指定記述子のレイアウト番号として「0」を指定するか「1」を指定するかにより、受信機1側で使用されるべきレイアウトを指示していた。つまり、この例では、レイアウト番号0が指定された場合には通常放送であり、レイアウト番号1が指定された場合には緊急情報である。
【0058】
これに対して、本実施形態では、放送局設備100は、所定のレイアウトにおける緊急指示情報を「0」とするか「1」とするかを切り替えて信号を送出することにより、受信機1に対して、現在送出されている映像等が通常放送であるか緊急情報であるかを伝える。つまり、放送局設備100内において、送出制御装置51からの指示により、MMT制御情報送出部71が送出する制御情報において、受信機1側で参照すべきレイアウトにおける緊急指示情報を、「0」と「1」とで切り替える。
【0059】
なお、受信機1は、MPU提示領域指定記述子内で指定されたレイアウト番号に応じて、レイアウト設定テーブル内の指定されたレイアウトを参照し、そのレイアウト内の緊急指示情報によって、現在の映像等が通常放送であるか緊急情報であるかを把握し、緊急情報である場合にはアプリケーションを停止させるなどの動作(第1実施形態で述べたとおりの動作)を行う。よって、本実施形態の信号が放送局設備100側から送られた場合にも、第1実施形態における場合と同様に、緊急情報を確実に視聴者に届けることができる。
【0060】
[コンピュータープログラムによる実施]
なお、上述した第1実施形態または第2実施形態における各装置の機能の一部または全部をコンピューターで実現するようにしても良い。その場合、各装置の機能を実現するためのプログラムをコンピューター読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピューターシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0061】
以上、複数の実施形態を説明したが、本発明はさらに次のような例でも実施することが可能である。
受信機1がEPG取得部23を備えなくても良い。この場合、レイアウト制御部31は、緊急放送時にも、EPG取得部23に対する制御を行うことはなく、アプリケーションの強制終了の制御のみを行う。
また、緊急指示情報を格納する場所は、レイアウト設定テーブル内のlayer_orderには限定されない。緊急指示情報のための格納領域を新たに設けるようにしても良い。
上述した実施形態では、MMTによって放送局設備100側から受信機1側に信号を伝送していたが、伝送方式はMMTに限定されない。MMT以外の伝送方式においても、制御情報の一部として緊急指示情報を放送局設備100側から受信機1側に伝達し、受信機1側で同様の制御を行うことが可能である。
【0062】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【解決手段】映像合成部は、マルチメディアデコーダー部によって分離される映像アセットに基づく映像を、アプリケーション実行部で実行されるアプリケーションからの表示と合成する。映像出力部は、映像合成部が合成した結果得られた映像を出力する。レイアウト制御部は、マルチメディアデコーダー部で分離される映像が緊急情報であるか否かを示す緊急指示情報をマルチメディアデコーダー部から取得し、緊急情報であることを緊急指示情報が示している場合にはアプリケーション制御部に対してアプリケーション実行部で実行されている前記アプリケーションを停止させるように指示する。