(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程b)で生産される乾燥バイオマスが、バイオマスを含む培養ブロスの噴霧乾燥により直接生産されるか、又は培養ブロスから得られる湿潤バイオマスの乾燥により生産される、請求項1に記載の方法。
工程b)で生産される乾燥バイオマスが、噴霧乾燥器、ペーストミルドライヤー、フラッシュドライヤー、流動層乾燥機、又は回転乾燥機における乾燥により生産される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
工程b)で生産され、工程c)でピリピロペンを得るために用いられる乾燥バイオマスが、工程a)の培養中に生産されるピリピロペンの少なくとも95%を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
ピリピロペン生産生物が、ペニシリウム(Penicillium)、ユーペニシリウム(Eupenicillium)又はアスペルギルス(Aspergillus)属に属する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
ピリピロペン生産生物が、ペニシリウム・コプロビウム(Penicillium coprobium)、ペニシリウム・グリセオフルバム(Penicillium griseofulvum)、ユーペニシリウム・レティキュロスポラム(Eupenicillium reticulosporum)及びアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)からなる群より選択される、請求項1〜9又は11のいずれか一項に記載の方法。
ピリピロペンが、メタノール、トルエン及びエチルベンゼンからなる群より選択される、又はそれらの少なくとも二つの混合物である溶媒による抽出によって乾燥バイオマスから得られる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
ピリピロペン生産生物が、ペニシリウム・コプロビウム(Penicillium coprobium)、ペニシリウム・グリセオフルバム(Penicillium griseofulvum)、ユーペニシリウム・レティキュロスポラム(Eupenicillium reticulosporum)及びアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)からなる群より選択される、請求項17に記載の乾燥バイオマス。
式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物が、請求項17〜19のいずれか一項に記載の乾燥バイオマスの抽出により得られる式I又は式IIの少なくとも一つの化合物から生産される、請求項16又は20に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一般定義
用語「ピリピロペン」は、式Iの化合物を意味する。
【0024】
【化1】
式中、R1、R2、R3及びR4は、表1に示される組み合わせを有する。
【0025】
【表1】
説明のために、式I及び表1によって記載される用語「ピリピロペンA」は、1,7,11-トリ-O-アセチルピリピロペンAとしても知られる、式IIの化合物を意味する。
【0026】
【化2】
好ましいピリピロペンは、表1に記載されるピリピロペンA〜ピリピロペンOを含み、好ましくはピリピロペンA、E及びOであり、ピリピロペンAが最も好ましい。式II、式III、式IV、及び式Vによって記載される化合物もまた好ましい。
【0027】
用語「1,7,11-トリ-デアセチルピリピロペンA」は、式IIIの化合物を意味する。
【0028】
【化3】
用語「式IVの化合物」は、
R1及びR3がシクロプロピルカルボニルオキシを表し、
R2がヒドロキシル、シクロプロピルカルボニルオキシ、又は2-シアノベンゾイルオキシを表し、
R4がヒドロキシルを表す、
式Iの化合物を意味する。
【0029】
好ましくは、式IVの化合物は、
R1がヒドロキシルを表し、
R2及びR3がシクロプロピルカルボニルオキシを表し、
R4がヒドロキシル、又はシクロプロピルカルボニルオキシを表す、組み合わせを含む。
【0030】
用語「1,11-ジ-O-シクロプロパンカルボニル-1,7,11-トリデアセチルピリピロペンA」は式Vの化合物を意味する:
【0031】
【化4】
式I、式II、式III、式IV及び式Vによって記載されるピリピロペンは、これらの化合物の塩もまた含む。好ましくは、式I、式IV及び式Vの化合物の塩。かかる塩の例として、農業上又は園芸上許容される酸付加塩、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、又は酢酸塩が挙げられる。
【0032】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、ピリピロペン生産生物の乾燥バイオマスを生産するための方法、かかる乾燥バイオマスからピリピロペンを得るための方法、並びに乾燥バイオマスから得られるピリピロペンから式III及び/又は式IV及び/又は式Vの化合物を生産するための方法に関する。
【0033】
本発明はさらに、乾燥バイオマス自身、並びにピリピロペン又は式III及び/又は式IV及び/又は式Vの化合物を得るための乾燥バイオマスの使用、並びに乾燥バイオマスの、殺虫剤としての、又は殺虫剤を生産するための使用に関する。
【0034】
したがって、本発明は、少なくとも一つのピリピロペンを得るための方法であって、
a)少なくとも一つのピリピロペンが生産される培養条件で、培養ブロス中でピリピロペン生産生物を培養する工程、
b)工程a)で得られるバイオマスの少なくとも一部から乾燥バイオマスを生産する工程、
c)工程b)で生産される乾燥バイオマスから少なくとも一つのピリピロペンを得る工程
を含む、前記方法を含む。
【0035】
得られるピリピロペン(pyropyropene)は、ピリピロペンの誘導体を生産するために用いられ得る。好ましいピリピロペンの誘導体は、式IIIの化合物、式IVの化合物、及び式Vの化合物である。
【0036】
したがって、本発明のさらなる実施形態は、ピリピロペンの誘導体を生産するための方法、好ましくは式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物を生産するための方法であって、
a)少なくとも一つのピリピロペンを含む乾燥バイオマスからピリピロペンを得る工程、
b)工程a)で得られるピリピロペンから少なくとも一つのピリピロペンの少なくとも一つの誘導体を生産する工程、好ましくは、工程a)で得られるピリピロペンから、式IIIの化合物、式IVの化合物及び式Vの化合物からなる群より選択される少なくとも一つのピリピロペンの誘導体を生産する工程
を含む前記方法である。
【0037】
本発明の他の実施形態は、ピリピロペンの誘導体を生産するための方法、好ましくは式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物、好ましくは式Vの化合物を生産するための方法であって、
a)少なくとも一つのピリピロペンが生産される培養条件で、培養ブロス中でピリピロペン生産生物を培養する工程、
b)工程a)で得られるバイオマスの少なくとも一部から乾燥バイオマスを生産する工程、
c)工程b)で生産される乾燥バイオマスから少なくとも一つのピリピロペンを得る工程、
d)工程c)で得られるピリピロペンから少なくとも一つのピリピロペンの少なくとも一つの誘導体を生産する工程、好ましくは工程c)で得られるピリピロペンから、式IIIの化合物、式IVの化合物及び式Vの化合物からなる群より選択される化合物の群から選択される少なくとも一つのピリピロペンの誘導体を生産する工程
を含む前記方法である。
【0038】
上記方法で得られるピリピロペンは、好ましくは本分野で利用可能な方法に従って、例えば以下でさらに記載される方法によって、抽出により乾燥バイオマスから得られる。
【0039】
得られるピリピロペンは、例えば、各ピリピロペンを、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%に近い純度の化合物を生産するために本分野で利用可能な方法によって精製され得るか、又はピリピロペンの誘導体を生産する方法のための抽出のために、依然として溶媒に含まれたままで用いられ得る。
【0040】
ピリピロペン生産生物の培養
少なくとも一つのピリピロペンを含むバイオマスは、ピリピロペン生産生物の発酵により生産され得る。ピリピロペン生産生物は、その天然の遺伝子セットにより、又は少なくとも一つのピリピロペンの生合成の一つの、幾つかの、若しくは全ての工程を提供する遺伝子について組換え体であるために、ピリピロペンを生産する能力を有する任意の種類の微生物細胞である。
【0041】
好適なピリピロペン生産生物及びそのそれぞれの培養条件の例は、Pure Appl. Chem., vol. 71, No. 6, pp. 1059-1064, 1999、Bioorganic Medicinal Chemistry Letter vol. 5, No. 22, p. 2683、日本特許出願公開番号1996-239385、日本特許出願公開番号1994-184158、WO 2004/060065、日本特許出願公開番号1996-259569に記載されている。
【0042】
好ましいピリピロペン生産生物は、ペニシリウム属、ユーペニシリウム属、又はアスペルギルス属に属する微生物であり、ピリピロペン生産生物の好ましい種は、ペニシリウム・コプロビウム、ペニシリウム・グリセオフルバム、ユーペニシリウム・レティキュロスポラム又はアスペルギルス・フミガーツス及び特にペニシリウム・コプロビウムである。これらのピリピロペン生産生物の好ましい株は、ペニシリウム・コプロビウムPF-1169株(Journal of Technical Disclosure No. 500997/2008)、ペニシリウム・グリセオフルバムF1959株(WO2004/060065)、ユーペニシリウム・レティキュロスポラムNRRL-3446株(WO2004/060065)及びアスペルギルス・フミガーツスFO1289、例えばその変異体であるアスペルギルス・フミガーツスFO1289-2501(WO94/09147)であり、特にペニシリウム・コプロビウムPF1169が最も好ましい。
【0043】
ピリピロペン生産生物は、通常一より多い式Iの化合物を生産し、例えばWO94/109147には、アスペルギルス・フミガーツスFO1289がピリピロペンA、ピリピロペンB、ピリピロペンC及びピリピロペンDを生産できることが記載されている。
【0044】
したがって、本発明で生産され用いられる乾燥バイオマスから、一つの又は幾つかのピリピロペンを得ることが可能である。
【0045】
ピリピロペン生産生物は、微生物細胞、例えばピリピロペンの生産のための生合成経路の遺伝子の一部しか含まないが、発行条件中でピリピロペンの前駆体が供給されるアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)でもあり得る。かかる微生物は、例えばCA2787829 及びCA2788058に記載されている。
【0046】
ピリピロペン生産生物は、好ましくは懸濁培養等の多量の液体で培養される。好ましい方法は、好気条件下での振盪培養、撹拌下での通気を伴う培養、又は深部好気培養であり、特に撹拌下の通気は最も多くの場合において有利である。
【0047】
発酵法は、通常バイオリアクターにおいて行われる。バイオリアクターは典型的に温度、pH、酸素分圧、及び二酸化炭素レベル等の培養条件の調節を可能とする。例えば、バイオリアクターは典型的に、例えば配管に取り付けたポートを用いて、酸素又は窒素の様な気体成分が液体培養に通気されることを可能とするように設定可能である。バイオリアクターは、加圧され得る。それはまた、同化できる窒素及び/又は炭素源の連続的な又は継続的な供給を可能とするように適合され得る。
【0048】
バイオリアクターは、例えば、5リットル、10リットル、又は20リットルの実験室スケールの適用のための少容量を含み得るが、5000リットル、10000リットル、40000リットル、50000リットル、100000リットル、150000リットル、200000リットル、又はさらに多い容量等の大容量にもまた適応し得る。
【0049】
発酵は、生産されるバイオマスの規則的な回収又は除去を含む連続的な方法であり得るか、又は発酵が開始した後に一以上の炭素及び/又は窒素源の添加を含む、反復フェドバッチ(fed-batch)法等のバッチ法であり得る。したがって、発酵法は、他の方法又は新鮮培養が始まる前に、中止又は停止され、生産されたバイオマスは培養ベッセルから取り除かれ得る。
【0050】
炭素及び窒素源は、別々の組成物で提供され得る。これは、異なる供給源が異なる滅菌条件に供され得、さらにそれにより炭素及び窒素又は他の栄養の発酵中の相対的な量の差異を可能とするためである。異なる栄養源は別々に供給され得るか、又は同時に供給され得るか、又は組み合わせた調製物として供給され得、好ましくは液体で供給される。
【0051】
栄養源は、複合源、限定培地、又は個々の若しくは単離された化合物であり得る。非複合源が好ましく、したがって化合物は高純度で添加され得、一般的な(又は市販の)化学物質であり得る。
【0052】
好適な窒素源として、アンモニア又はアンモニウムイオンが挙げられる。ここでの利点は、アンモニアがpH調節剤として作用し得ることである。これは、アンモニウム塩の形態で、例えば硝酸塩、硫酸塩若しくはリン酸塩又はアンモニウムイオン自身、例えば水酸化アンモニウムの水溶液の形態で供給され得る。他の無機窒素源、例えば硝酸ナトリウム、尿素、又はアスパラギン若しくはグルタミン等のアミノ酸もまた用いられ得る。菌がリゾプス(Rhizopus)属である場合、硝酸塩は、好ましくは窒素源として用いられない。複合窒素源として、酵母加水分解物、一次酵母(primary yeast)、ダイズ粕、カゼインの加水分解物、酵母、酵母抽出物又は米糠が挙げられる。
【0053】
炭素源は、マルトデキストリン、エンバク粉、オートミール、糖蜜、植物(例えばダイズ)油、麦芽エキス又はデンプン等の複合源を含み得る。好ましい炭素源は非複合炭素源、例えば糖、例えばフルクトース、マルトース、スクロース、キシロース、マンニトール、グルコース、ラクトース、クエン酸、酢酸、グリセロール又はエタノールである。
【0054】
水溶液は、発酵を補助する他の物質、例えばキレート剤(例えばクエン酸)、消泡剤(例えばダイズ油)、ビタミン(例えばチアミン及び/又はリボフラビン)、任意の不可欠な触媒金属(例えば、マグネシウム若しくはカルシウム等のアルカリ土類金属、又は亜鉛若しくは鉄、並びに/又はコバルト及び銅等の他の金属)、リン(例えばリン酸塩)及び/又はイオウ(例えば硫酸塩)をさらに含み得る。好ましくは、水溶液は低イオウ含量、例えば3.0 g/l未満、好ましくは2.0g/l又は1.0g/l未満のイオウを有する。
【0055】
好ましくは、発酵中のpH、温度、及び/又は(水溶液の)酸素含量は調節される。これはpH、温度、及び/又は酸素含量を一定に、又は所望の範囲内に保つためであり得る。発酵中の水溶液のpHは、pH 2〜pH 8、例えばpH 3〜pH 7、任意にpH 4〜pH 6であり得るが、例えばpH 6〜pH 8でもあり得る。
【0056】
発酵中の水溶液の温度は、15°C〜40°C、又は18°C〜40°C、例えば20°C〜35°C、任意に25°C〜33°Cであり得る。多くの場合、増殖は約26 °C〜37 °Cで起こる。
【0057】
発酵中に混合が生じることが重要である。これは、例えば水溶液への通気による曝気により達成され得る。これは、増殖細胞に酸素を提供するという追加の目的も果たし得る。曝気又は混合の他の手段として、例えばインペラ(impeller)を用いる撹拌が挙げられる。撹拌によるエネルギー入力は、通常1〜20 W/Lの値、及び好ましくは2〜5 W/Lの値に調整されるべきである。
【0058】
撹拌は、水中翼(hydrofeil)の軸方向の流れをもたらし得るか、又は例えばタービンにおける流れと同様に、水性の媒体がインペラから放射状に外側に押し出されるように設計され得る。曝気及び/又は撹拌の一つの利点は、水溶液の酸素含量が比較的高く維持され得ることである。これは少なくとも(空気飽和の点で)10%、例えば少なくとも15%、任意に少なくとも20%であり得る。
【0059】
ピリピロペンの生産は、培地及び培養条件、又は用いる生物に応じて変動する。したがって、発酵は1〜40日、例えば5〜20日又は10〜18日に及び得るが、任意により短いもの、例えば2〜4日であり得る。通常、発行条件はピリピロペンの生産中に培養される生物によって好まれる発行条件と同様又は同一であるように選択される。ピリピロペンの蓄積は、2日〜25日で通常そのピークに達する。より短い発酵は、連続的な発酵法ではなく、バッチ法に適している。
【0060】
好ましい実施形態では、利用可能な糖含量は、最大5 g/l、好ましくは発酵の後に向けて最大1 g/lに調整され、すなわち糖は添加されず、糖含量がこの値以下となるときにのみ発酵を終了させる。
【0061】
本発明の一実施形態では、発酵中に生産されるバイオマスは、バイオマスを含む培養ブロスの噴霧乾燥により乾燥バイオマスに直接変換される。好ましくは、バイオマスの細胞は、乾燥工程が行われる前に、例えば下記の方法により殺傷される。
【0062】
本発明の他の実施形態では、発酵中に生産されるバイオマスは、その後乾燥バイオマスを生産するために用いられる湿潤バイオマスを生産するために、培養ブロスから単離される。
【0063】
細胞の殺傷
発酵中に生産されるバイオマスは、好ましくはその培養ブロスからの分離の前に殺傷されるが、本発明の方法の後期でも殺傷され得る。バイオマスの細胞は、本分野で知られる方法により殺傷され得る。好ましくは、細胞は発酵後に直接熱処理により殺傷される。熱処理は、培養ベッセル又は専用装置において行われ得る。本発明の幾つかの実施形態では、殺傷は、ある程度の滞留時間を有する連続的ラン装置においても行われ得る。熱処理が用いられる場合、加熱(例えば加熱殺菌)が一般的に好ましいが、凍結も一つの可能性である。加熱による細胞の殺傷は、通常5〜180分の時間間隔で、好ましくは30〜90分の時間間隔で、60°C〜120°C、好ましくは70°C〜90°Cの温度で行われる。
【0064】
発酵ブロスへの熱入力は、プレート式熱交換器又はパイプ式熱交換器の様な熱交換装置又は熱線によって達成され得るが、高められた温度での水等の物質の混合によっても達成され得る。物質のかかる混合の一例は、水蒸気の注入である。
【0065】
ピリピロペン含有バイオマスの殺傷のための温度は、40°C〜200°C、好ましくは50〜120°C及びさらにより好ましくは60〜80°Cで変動し得る。バイオマスの殺傷のための、装置中の高められた温度での対応滞留時間は、通常の実験によって各個々の場合の条件、例えば培養ベッセル又は細胞の殺傷のための専用装置の容量及びデザイン並びにバイオマスを提供する生物に適合され得る。典型的に、滞留時間は1〜500分又は10〜120分又は5〜80分から選択される。あるいは、バイオマスの細胞は、化学的処理により殺傷され得る。かかる化学的処理は本分野において容易に利用可能である。例えば、安息香酸又はアジ化ナトリウム(sodium acide)は、0.1%〜10%の量(容量/容量)で発酵ブロスに添加された場合、通常細胞を殺傷する。
【0066】
あるいは、又はそれに加えて、微生物は培養ブロスからのバイオマスの分離後に、又は有機再懸濁培地に再懸濁されているときに、又は有機再懸濁培地からのバイオマスの分離後に、又はバイオマスの均質化中に、又はバイオマスの乾燥中に、又はこれらの可能性の組み合わせによって殺傷され得る。
【0067】
バイオマスの分離:
発酵過程中に生産されるバイオマスは、本分野で知られる方法により培養ブロスから分離され得る。バイオマスは、培養ブロスの全容量から分離され得るか、又は連続的な発酵を可能とするために、全容量の一部のみから分離され得る。バイオマスの分離は、確立された方法、好ましくは濾過又は遠心分離によって、例えば限外濾過、精密濾過、デカンテーション、又は濾過及び遠心分離の組み合わせによって行われ得る。
【0068】
濾過は、本分野で用いられる通常の濾過技術、例えば振動分離機(vibratory separator)、振動スクリーン濾過機(vibrating screen filter)、円振動分離機(circular vibratory separator)、回転円筒濾過機(rotary drum filter)、直線/傾斜モーションシェイカー(motion shaker)、圧力ストレイナー(pressure strainer)を用いて、接線濾過によって、ベルト濾過、回転濾過、濾過圧力を介して、又はフィルターからなる障壁がバイオマスを分離し、バイオマスなしに液相が通過することを可能とする同様の技術によって行われ得る。用いられるフィルター技術に応じて、濾過方法は通常、例えば濾過圧力が用いられる場合、約0.5〜15 barの圧力で行われ、例えば回転円筒濾過機が用いられる場合、0.01〜0.9 barの様な通常未満の圧力で行われる。
【0069】
バイオマスの分離中に用いられる温度は、通常5°C〜80°Cであるが、特にバイオマスの細胞が熱の適用により殺傷され、バイオマスが培養ブロスから分離され、その後バイオマス及び培養ブロスが冷却時間になる場合には、より高いものであり得る。
【0070】
振動分離機は、少なくとも一つの振動スクリーンフィルターを含み得る。バイオマスもまた、フィルター材料に有意に付着するべきではない。好ましいフィルター材料は、多孔質セラミックス又はポリプロピレンであり、他の材料の使用もまた同様に可能である。
【0071】
本発明に特に好適な濾過の一例は、クロスフロー濾過としても知られる接線濾過である。接線濾過(TFF)は、液体から固体を精製するために膜系及び流れの力を使用する分離技術である。TFFで用いる好ましい孔径は、発酵ブロス中の溶質及びデブリが素通りするが、バイオマスが維持されることを可能とする。
【0072】
濾過手順のための好適なメッシュサイズとして、1000マイクロメーター未満、又は800マイクロメーター未満、又は600マイクロメーター未満、又は500マイクロメーター未満、又は400マイクロメーター未満、又は300マイクロメーター未満、又は200マイクロメーター未満、又は180マイクロメーター未満、又は150マイクロメーター未満、又は120マイクロメーター未満、又は100マイクロメーター未満、又は90マイクロメーター未満、又は80マイクロメーター未満、又は70マイクロメーター未満、又は60マイクロメーター未満、又は50マイクロメーター未満、又は40マイクロメーター未満、又は30マイクロメーター未満、又は20マイクロメーター未満が挙げられる。幾つかの実施形態では、106マイクロメーター振動スクリーンフィルターが用いられる。106マイクロメーター以外のメッシュサイズを有するフィルター、又は振動タイプ以外のフィルターもまた用いられ得る。
【0073】
幾つかの実施形態では、濾過は室温で及び大気圧下で行われる。他の実施形態では、濾過は高められた又は低められた温度及び/又は圧力で行われる。
【0074】
遠心分離は、混合物の分離のための遠心力の使用を含む方法である。混合物のより密度の高い成分は、遠心分離器の軸から離れて移動するのに対し、混合物のより密度の低い成分は、軸に向かって移動する。有効重力を増加させることによって(すなわち、遠心分離の速度を増加させることによって)より密度の高い物質、通常個体が、より密度の低い物質、通常液体から、密度に従って分離する。遠心分離のための好ましい機械は、デカンタ型遠心分離機及び高速ディスクスタック(disc stack)遠心分離機である。
【0075】
デカンタ型遠心分離機は、バイオマスを含む培養ブロスを回転シリンダー(spinning cylinder)にポンピングすることにより働き得る。遠心力がバイオマスを外壁に対して押すのにつれて、内部の回転スクロールは、バイオマスを一端のディスチャージに向けて壁に対して移動させ得る。デカンタ型遠心分離器のディスチャージ端は、減少径を適合させるスクロールと共に減少径を有し得る。バイオマスは、減少径によって作られる勾配を前進するので、バイオマスは連続的に除去され得る。
【0076】
高速ディスクスタック遠心分離機は、傾斜するディスクの軌道の外側に培養ブロスを押し得る。培養ブロスに含まれるバイオマスは、ディスクの下方の斜面に押され、培養ブロスから分離される。バイオマスは、高速ディスクスタック遠心分離機の下方側に連続的に又は断続的に排出され得るのに対し、培養ブロスはディスクに沿って上方に出口に押される。
【0077】
培養ブロス(湿潤バイオマス)から分離されたバイオマスは、通常発酵中に生産される95%(重量/重量)より多い、好ましくは97%より多い、及びより好ましくは99%より多いピリピロペンを含む。したがって、分離される培養ブロス中のピリピロペン含量は、通常5%(重量/重量)未満、好ましくは3%未満、及びより好ましくは1%未満である。
【0078】
ピリピロペンの単離に用いられる乾燥バイオマスは、上記技術により得られる湿潤バイオマスを乾燥させることによって直接的に生産され得る。これらの技術は、通常15%より多く90%未満の残留水分含量(重量/重量)を有する湿潤バイオマスを生産する。好ましくは30%より多く90%未満の、さらにより好ましくは40%より多く90%未満の、又は50%より多く90%未満である。
【0079】
しかしながら、不可欠でないが、湿潤バイオマスが乾燥バイオマスを生産するために用いられるさらに前に、湿潤バイオマスの水分含量を低減されることが通常有利である。したがって、湿潤バイオマスは、湿潤バイオマスに直接適用される機械的圧力の使用を含む(さらなる)液体除去工程に供され得る。適用される機械的圧力の量は、液相へのピリピロペンの喪失をもたらすのであれば、バイオマスの微生物細胞の有意な割合の破壊をもたらすべきでないが、代わりに、単に、後の乾燥のために望ましいレベルまでバイオマスを脱水するのに十分であるべきである。したがって、湿潤バイオマスは通常発酵で生産される95%(重量/重量)より多い、好ましくは97%より多い、及びより好ましくは99%より多いピリピロペンを未だ含む。したがって、分離された液相中のピリピロペン含量は、発酵中に生産されるピリピロペンの通常5%(重量/重量)未満、好ましくは3%未満、及びより好ましくは1%未満である。
【0080】
機械的圧力は、本分野で知られる方法を用いることによって、例えばベルトフィルタープレス、スクリュープレス、フィニッシャープレス、フィルタープレス、圧力ストレイナー、又は本目的に好適な任意の他の手段を用いることによって、湿潤バイオマスに用いられ得る。好ましくは、ベルトフィルタープレスが、本目的のために用いられる。
【0081】
ベルトフィルタープレスは、通常小さなミクロンサイズの開口を有する二つの緊張したベルト間を通過するスラリー又はペースト(例えば湿潤バイオマス)に機械的圧力を適用する脱水装置である。緊張したベルトは、曲がりくねった減少径のロールを通過する。ほとんどのベルトフィルタープレスは、三つの異なる区域:多孔質のベルトを介して重力により遊離の液体が排出される重力区域、固体が圧力適用のために調製されるウェッジ区域、及び調整可能な圧力が重力により排出された固体に適用される圧力区域を有する。その後、ベルトはベルトの開口部からジュースを圧搾する一連のローラーを通過し得る。その後、固化した固体は、ユニット操作の終わりで二つのベルトが分離する場所で排出され得る。ジュースは、ユニットの底で皿に滴り得、そこで重力を用いてそれは共通の開口部を介して排出され得、さらなる処理のために下流に送られ得る。
【0082】
スクリュープレスは、物質をスクリューオーガー(screw auger)に似ている装置に導入することによって、働き得る。スクリュープレスの回転軸は、機器中に物質を運び得、そこで物質が進行するにつれて、スクリューのねじ山の間の距離又はフライティング(flighting)はより小さくなるか、又は軸がより広くなる。フライティングの距離が減少すると、ねじ山の間の全容量は減少し、圧縮効果が生じる。湿潤バイオマスは、これらのフライティング間で圧縮され得、液体は排出され得る。回転軸はスクリュー中に湿潤バイオマスを保持し得るが液体が排出されることを可能とする、小さなミクロンサイズのメッシュスクリーンによって包まれ得る。
【0083】
フィニッシャープレスは、スクリュープレスと同様に働き得るが、ねじ山を有するスクリューの代わりに、スクリーンサイズにあわせて物質を押し得るパドルを有する回転軸が存在する。湿潤バイオマスの残りの固層は、その後フィニッシャープレスの外に排出され得る。チャンバーフィルタープレス又は膜フィルタープレスとして設計されるフィルタープレスをはじめとするフィルタープレスは、容積式ポンプ及び湿潤バイオマスの一連のフィルターチャンバーへのポンピングの使用によって働き得る。フィルターチャンバーは、容積式ポンプの圧力を用いて液体を外へ押し得る小さなミクロンサイズの開口を有し得る。十分な個体がフィルターの内部に蓄積したら、液体はさらに抽出され得ず、「圧搾」はフィルターチャンバー中の空気袋(bladder)に水又は空気を注入することによって導入され得、膜フィルタープレスを用いた際に濾過ケーキへのさらなる圧力を生じる。空気袋が外に押し出すと、壁が内側に押すと同時に、フィルターチャンバーへのさらなる圧力が働き得る。さらなる液体が遊離し得る。液体が十分に除去されると、フィルタープレスチャンバーが開き得、湿潤バイオマスが排出され得る。
【0084】
機械的圧力を適用するための上記技術の一以上が、本発明における使用のために湿潤バイオマスから液体を除去するために、単独で又は組み合わせて用いられ得る。
【0085】
したがって、少なくとも一つのピリピロペンを得るための方法及びピリピロペンの誘導体を生産するための方法は、後に乾燥バイオマスを生産するために用いられる湿潤バイオマスを得るための、培養ブロスからのバイオマスの分離工程を含み得る。
【0086】
湿潤バイオマスを得るための工程は、濾過により、遠心分離により、好ましくは上記技術を用いて行われ得るか、又は濾過及び遠心分離の組み合わせにより行われ得、機械的圧力の適用工程、再度の好ましくは上記機械的圧力の適用工程を含んでも含まなくてもよい。
【0087】
したがって、少なくとも一つのピリピロペンを得るための方法及びピリピロペンの誘導体を生産するための方法は、振動分離機、振動スクリーンフィルター、円振動分離機、回転円筒フィルター、直線/傾斜モーションシェイカー、圧力ストレイナー、接線濾過を用いることによる、ベルトフィルター、ロータリーフィルター、フィルタープレスによる培養ブロスからのバイオマスの分離工程を含み得、なかでも振動分離機及び接線濾過が好ましい。好ましい遠心分離のための機器は、デカンタ型遠心分離機及び高速ディスクスタック遠心分離機である。
【0088】
幾つかの実施形態では、上記の様に生産される湿潤バイオマスは、フィルターベルトプレス、スクリュープレス、フィニッシャープレス、フィルタープレス、又は圧力ストレイナーを用いることによる機械的圧力の適用工程を用いることによって水分含量を減少させるように処置される。好ましくは、本目的のためにベルトフィルタープレスが用いられる。
【0089】
望ましくない成分の低減及び/又は短期保管
本発明のほとんどの実施形態では、培養ブロスからの分離によって、又は機械的圧力の適用後に生産される湿潤バイオマスは、後に保管又はピリピロペンの精製のいずれかのために用いられる乾燥バイオマスを生産するために直接用いられる。
【0090】
しかしながら、本発明の様々な実施形態では、湿潤バイオマスは、ピリピロペンの精製又は後期において湿潤バイオマスの取り扱いの問題を引き起こし得る培養ブロスの量を低減するために取り扱い中にさらに精製され、及び/又は保管タンクにおける短期保管に供される。
【0091】
湿潤バイオマスのさらなる精製によって低減され得る培養ブロスの内容物は、例えば、塩、残留糖、又は発酵中に生産される他の成分、例えば脂肪酸及び油の様な親油性成分である。
【0092】
したがって、湿潤バイオマスのさらなる処理は、さらなる精製のための一以上の洗浄工程を含んでも含まなくてもよく、ここで湿潤バイオマスは、ピリピロペンの溶解度が非常に低い培地(再懸濁培地)に再懸濁される。したがって、洗浄工程のために用いられる培地は、好ましくは親油性であり、疎水性成分の親油性混合物からなり得る。一実施形態では、再懸濁培地は水である。他の実施形態では、再懸濁培地はpHバッファー、例えばリン酸塩又はTRIS若しくはアンモニア塩の水溶液、又は安息香酸、安息香酸塩、ソルビン酸(sobic acid)、ソルビン酸塩の様な保存剤又は同様の効果を有することが本分野で知られる他の保存剤の水溶液である。
【0093】
好ましくは、湿潤バイオマスは、機械的圧力の適用後ではなく、培養ブロスからの分離後に直接再懸濁される。
【0094】
再懸濁培地の温度は、再懸濁培地の凝固点と沸点の間で変動し得、好ましくは温度は5°C〜50°Cであり、より好ましくは、温度は10°C〜30°Cである。再懸濁培地は、培養ブロスからバイオマスを分離するために用いられ得るのと同一又は同様の技術を用いることによって、バイオマスから分離され得る。バイオマスは、同じ又は異なる再懸濁培地に数回再懸濁され得る。通常、再懸濁培地の容量は、湿潤バイオマスの各量を生産するために用いられる培養ブロスの容量の70%、60%、50%、30%、25%、10%、又は5%未満であるが、湿潤バイオマスの容量の1倍、2倍、又は3倍以上の様により多いものであり得る。
【0095】
一以上の再懸濁工程後に培養ブロスからの分離後に生産される、又は機械的圧力の適用後に生産される湿潤バイオマスは、保管タンク、好ましくは冷却した保管タンクにおいて保管され得る。特定の実施形態では、冷却した保管タンクは、50°C未満、又は40°C未満、又は30°C未満、又は25°C未満、又は20°C未満、又は15°C未満、又は10°C未満、又は5°C未満、又は2°C未満であるが、湿潤バイオマスの凝固温度より高い温度で維持される。冷却した保管タンクは、室温未満の温度、好ましくは10°C未満、又は5°C未満、又は2°C未満であるが、湿潤バイオマスの凝固温度より高い温度で維持される。
【0096】
湿潤バイオマスは、かかる条件下で、例えば輸送中、数時間から数か月まで保管され得る。短期保管の好ましい時間は、5時間より長く5か月までであるが、湿潤バイオマスが湿潤バイオマス自身、又は湿潤バイオマスの取り扱い中に導入される他の微生物の生細胞を含む場合には、好ましくは1又は2か月を超えないべきである。保管について湿潤バイオマスを安定化するためのさらなる方法は、pH1〜5まで、保管について、又は保管の間、湿潤バイオマスのpHを低下させることである。この方法で安定化されたバイオマスは、通常数日間〜数週間の期間、保管され得る。保管時間を延長するために、両方の方法を組み合わせること、すなわち冷却された保管タンクにおける低下したpHでの保管もまた可能である。
【0097】
均質化
湿潤バイオマスは、さらなる乾燥のために直接用いられるか、又は例えば機械的圧力の適用によって、湿潤バイオマスを乾燥させるための、又はバイオマスの乾物含量を高めるためのさらなる工程が行われる前に、均質化され得る。特に、湿潤バイオマスが30%、25%、20%、15%、10%、又は5%未満の比較的低い乾物含量(重量/容量)を有する及び/又はいくらかの時間保管された場合、乾燥前に、又はさらに機械的圧力を適用する前に、バイオマスを均質化することが得策である。均質化は、単にさらなる処理を促進するために、湿潤バイオマスの固体及び液体成分の均質な分布をもたらす、例えばベルトフィルタープレス、スクリュープレス、フィニッシャープレス、フィルタープレス、又は乾物含量を高めるために適した任意の他の手段への湿潤バイオマスの均質な供給をもたらすための目的を有し得るか、又は、例えば、ペーストミルドライヤー、噴霧乾燥器、フラッシュドライヤー、流動層乾燥機、又は回転乾燥機の供給材料として、さらなる乾燥のための湿潤バイオマスの均質な供給を提供するための目的を有し得る。
【0098】
均質な固体及び液体成分の分布並びに湿潤バイオマスの細胞壁の破壊は、ローターステーター分散機(rotor stator dispersing mashine)又は他の均質化装置によって達成され得る。ローターステーター分散機は、比較的低い乾物含量、例えば30%、25%、20%、15%、10%、又は5%未満の乾物含量を有する湿潤バイオマスを均質化するための好ましい手段である。
【0099】
エクスパンダー(expander)又は押し出し機は、湿潤バイオマスを形作り、及び/又は均質化するために用いられ得る。押出条件が細胞壁の破壊を最小化する様に調整され得るため、押し出し機が好ましい。押出は、好適な(例えば円又は正方形の穴を有する)型板を通過すると、延長された円柱様構造(円柱状及び/又は円の断面を有し得るもの)を形成するために用いられ得る。これらの延長された構造は、円柱様構造の長い部分を切断する回転刃等のカッターを用いて、さらに顆粒に形成され得る。「スパゲッティー」の押出後の顆粒は、好ましくは15%未満、例えば10%未満、及び任意に3〜7%の水分含量を有する。顆粒は、0.3〜10 mm、例えば0.7〜5 mm、任意に1〜3 mmの直径を有し得る。押出は、湿潤バイオマスのシート又は層を形成するためにも用いられ得る。これは、一以上の溝の通過によって達成され得る。これらの形態は、ローラー及び/又は円柱等の一以上の移動表面の使用によっても調製され得る。これらは、同じ方向、又は異方向に移動し得、一、二又は最大五のかかる表面が存在し得る。シートまたは層は、0.3〜10 mm、例えば0.7〜5 mm、任意に1〜3 mmの厚さを有し得る。
【0100】
押し出し機により処理される湿潤バイオマスは、好ましくは、乾燥バイオマスを生産するために、流動層乾燥機において乾燥され得る。
【0101】
本発明の幾つかの実施形態では、湿潤バイオマスの細胞壁を破壊するために均質化工程を使用することが有利であり得る。本明細書で用いる細胞壁の破壊は、個々の細胞又は多細胞構造のレベルで生物の組織化を妨げる機械的又は化学的手順を包含する。細胞壁の破壊として、例えば、粉砕(milling)、せん断(chopping)、破砕(shredding)、粉砕(smashing)、圧縮(pressing)、断裂(tearing)、浸透圧による溶解、又は生物学的構造を分解する化学処理が挙げられる。単に例として、細胞壁の破壊は、ナイフミル、及びボールミル等、又はそれらの組み合わせを適用することによる粉砕段階を用いることによって達成され得る。
【0102】
少なくとも一つのピリピロペンを得るための方法及びピリピロペンの誘導体を生産するための方法は、乾燥バイオマスを生産するために湿潤バイオマスが用いられる前に、例えば再懸濁培地における再懸濁によって、及び/又は短期保管工程及び/又は均質化工程によって、望ましくない成分を低減するために湿潤バイオマスを処理するさらなる工程を含み得る。
【0103】
したがって、上記方法は、湿潤バイオマスが、再懸濁培地に再懸濁される、及び/又は均質化される、及び/又は5g/l未満のグルコース含量を有する、及び/又15%より多く90%未満の水分含量を有する、工程を含み得る。
【0104】
乾燥バイオマスの生産
ピリピロペンを単離するために用いられる乾燥バイオマスは、望ましいオーダーにおいて、15%未満の残留水分含量を有する。より好ましくは、乾燥バイオマスは、望ましいオーダーにおいて、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%又は3%未満の残留水分含量を有する。残留水分の含量は、再び望ましいオーダーにおいて、実施例に記載されている様に、Aufhauser法、ハロゲン(IR)スケール法及び/又はカールフィッシャー法の方法に従って測定される。
【0105】
乾燥バイオマスの生産は、噴霧乾燥器、ペーストミルドライヤー、フラッシュドライヤー、流動層乾燥機、若しくは回転乾燥機を用いることによって、又は上記残留水分含量まで湿潤バイオマスを乾燥させるために好適な任意の他の手段によって、例えば凍結乾燥又は単純なトレードライヤーの使用によって行われ得る。乾燥バイオマスを生産するための好ましい方法は、噴霧乾燥器又はペーストミルドライヤーにおける乾燥による。
【0106】
乾燥バイオマスは、機械的圧力の適用の様な湿潤バイオマスの水分含量を低減するさらなる工程を含む、上記の培養ブロスからのバイオマスの分離のための任意の種類の方法により湿潤バイオマスから生産され得る。しかしながら、乾燥バイオマスは、例えば噴霧乾燥器を用いることによって、発酵において用いられる培養ブロスから分離されていないバイオマスを乾燥させることによっても生産され得る。
【0107】
噴霧乾燥は、一般的に用いられる、高温気体を用いて液体供給物を乾燥させる方法である。噴霧乾燥器は、液体流、例えば湿潤バイオマスを利用し、溶質を個体として、液体を蒸気として分離する。入力流は、高温の蒸気流にノズルを介して噴霧され、蒸発させられる。噴霧乾燥器のノズルは通常調節可能であり、典型的に、熱伝達及び水の蒸発率を最大化するために液滴を可能な限り小さくするように調節される。しかしながら、ノズルは入力流によって含まれるバイオマスの一部による遮断を避けるために調整されなければならない、好ましくは、入力流のバイオマスは、より小さな粒子を生産するために、及び噴霧乾燥のための入力流として用いられる前に細胞壁を破壊するために均質化される。得られる乾燥個体は、用いられるノズルのサイズに応じて、細かく、粉としての一貫性を有し得る。
【0108】
本明細書において、噴霧乾燥の条件の調整に関わる各パラメーターの正確な値を提供することは可能ではない、なぜならこれらのパラメーター及びそれらに関連する値は、用いられる噴霧乾燥装置のタイプに依存するからである。目安として、噴霧乾燥法は、80%〜99.5%、好ましくは88%〜92%(重量/重量)の残留水分含量を有する湿潤バイオマスを用いて最も好ましく用いられ得るが、発酵の培養ブロス中にまだ含まれるバイオマスから直接的に乾燥バイオマスを生産するためにも用いられ得る。
【0109】
ノズルは、0.5〜10mmの開口を有するべきである。湿潤バイオマスを噴霧するためにノズルの末端に適用される圧力は、約2〜250 barであり得、装置の入口での熱気の圧力は、約100〜2000 mbarの過圧であり得る。
【0110】
入口気温は、好ましくは80°C 〜350°C、好ましくは120°C〜180°Cである。
【0111】
出口温度は、好ましくは20°C 〜200°C、好ましくは60°C〜100°Cである。
【0112】
フラッシュドライヤーは、脱水された又は本質的に低い水分含量を有する固体に典型的に用いられる。「気流乾燥機」としても知られるフラッシュドライヤーは、通常、20%〜90%(重量/重量)の残留水分含量を有する湿潤バイオマスを乾燥するために用いられる。これらの乾燥機は典型的に、湿潤物質を乾燥ダクトに運ぶ高温の空気の流れに湿潤物質を分散させる。気流からの熱は、それが乾燥ダクトを介して運ばれる間に、物質を乾燥させる。フラッシュドライヤー及び気流乾燥機のより詳細な説明は、フラッシュドライヤーについて記載されているUS Patent No. 4,214,375、並びに気流乾燥機について記載されているUS Patent No. 3,789,513及び4,101,264中に見出だされ得る。
【0113】
フラッシュドライヤーは、高温の空気がループの外側へと接線方向に注入される、密閉されたループ系に、湿潤バイオマスを落とし得る。熱された空気は、湿潤バイオマスを管の外縁に沿って運び、それにより連続的に乾燥させる。
【0114】
粒子が空気に自由に流れ出ることができるのに十分に粒子のサイズが小さくなると、気流によって駆動される壁に沿う物質の回転を有することによって、粒径低減効果が生じ得る。粒径及び水分含量が所望のレベルまで低減すると、粒子はループの内部に位置する排出パイプに沿って、回収装置に運ばれ得る。
【0115】
ペーストミルドライヤーは、他の乾燥機で乾燥させることが通常困難である湿ったケーキ、スラリー、又はペーストの乾燥のために用いられる。好ましくは、ペーストミルドライヤーは、5%〜80%(重量/重量)の残留水分含量を有する湿潤バイオマスを乾燥させるために用いられる。
【0116】
ペーストミルドライヤーは、湿潤バイオマスを、懸濁効果を生じさせる空気圧によって物質の懸濁をもたらす撹拌バットで乾燥させ得る。物質は、スクリューフィーダーによって変速駆動を介して縦型乾燥チャンバーに供給され、そこで空気によって加熱され、同時に、特別に設計された、通常乾燥チャンバー内で回転するファン様構造であるディスインテグレーターによって崩壊させられ、それによって回転ミキサーの様な機能を果たす。空気の加熱は、直接的又は間接的に適用に依存し得る。サイズが低減された粒子に存在する乾燥バイオマスは、乾燥チャンバーの上部の分級機に運ばれ、サイクロン又はバグハウス(bag-house)等の回収装置に気流によって運ばれ、そこでその後、物質が回収される。
【0117】
回転乾燥機は、湿潤物質、例えば、加熱された空気との接触により乾燥され、回転シリンダーの内部に輸送される湿潤バイオマスを連続的に供給することによって機能し、運搬装置及び撹拌機として作用する回転容器を有する。好ましくは、回転乾燥機は、5%〜80%(重量/重量)の残留水分含量を有する湿潤バイオマスを乾燥させるために用いられる。
【0118】
流動層乾燥機は、通常ペーストの形態の物質の同時乾燥及び崩壊のために用いられる。流動層乾燥機は、上向きの円錐底部を有する円柱状の乾燥チャンバーを含み得る。湿潤バイオマスは、流動化及び乾燥媒体のための環状分配機から、乾燥チャンバーの壁と円錐底部の間を実質的に輪状に伸びるスリットを介してチャンバーに供給される。攪拌機は、チャンバーにおいて同軸性に配置され、前記攪拌機のブレードは、円錐底部と平行である。好ましくは、攪拌機のブレードは、円錐底部から少しの距離で配置される。流動層乾燥機の例はUS 4581830に開示されている。流動層乾燥機の異なるデザインが働き得、物質(例えば湿潤バイオマス)を、物質を直接的に又は間接的に通過する加熱された空気と共に振動ベッドに導入することによって物質乾燥し得る。振動及び空気は、乾燥される表面積を増加させ得る物質の流動化懸濁液を生じさせ得る。好ましくは、流動層乾燥機は、5%〜80%(重量/重量)の残留水分含量を有する湿潤バイオマスを乾燥させるために用いられる。
【0119】
乾燥手順、特にフラッシュドライヤー、ペーストミルドライヤー、回転乾燥機、流動層乾燥機、若しくはトレードライヤー等、又はそれらの組み合わせを用いる乾燥手順は、25°Cより高い、又は50°Cより高い、又は75°Cより高い、又は100°Cより高い、又は125°Cより高い、又は150°Cより高い、又は175°Cより高い、又は200°Cより高い、又は225°Cより高い、又は250°Cより高い、又は275°Cより高い、又は300°Cより高い、又は325°Cより高い、又は350°Cより高い、又は375°Cより高い、又は400°Cより高い、又は425°Cより高い、又は450°Cより高い、又は475°Cより高い、又は500°Cより高い入口温度(乾燥機の入口での温度)を有する乾燥機の気流を用いる。
【0120】
好ましくは、入口温度は、25°C〜50°C、又は50°C〜75°C、又は75°C〜100°C、又は100°C〜125°C、又は125°C〜150°C、又は150°C〜175°C、又は175°C〜200°C、又は200°C〜225°C、又は225°C〜250°C、又は250°C〜275°C、又は275°C〜300°C、又は300°C〜325°C、又は325°C〜350°C、又は350°C〜375°C、又は375°C〜400°C、又は400°C〜425°C、又は425°C〜450°C、又は450°C〜475°C、又は475°C〜500°C、又は500°Cより高い。
【0121】
幾つかの実施形態では、入口温度は、50°C〜100°C、又は100°C〜150°C、又は150°C〜200°C、又は200°C〜250°C、又は250°C〜300°C、又は300°C〜350°C、又は350°C〜400°C、又は400°C〜450°C、又は450°C〜500°C、又は500°Cより高い。
【0122】
幾つかの実施形態では、出口温度(乾燥機の出口の温度)は、300°C未満、又は275°C未満、又は250°C未満、又は225°C未満、又は200°C未満、又は175°C未満、又は150°C未満、又はl25°C未満、又は100°C未満、又は75°C未満、又は50°C未満、又は25°C未満である。
【0123】
幾つかの実施形態では、出口温度は、300°C〜275°C、又は275°C〜250°C、又は250°C〜225°C、又は225°C〜200°C、又は200°C〜175°C、又は175°C〜150°C、又は150°C〜125°C、又は125°C〜100°C、100°C〜75°C、又は75°C〜50°C、又は50°C〜25°C、又は25°C未満である。
【0124】
幾つかの実施形態では、出口温度は、300°C〜250°C、又は250°C〜200°C、又は200°C〜150°C、又は150°C〜100°C、100°C〜50°C、又は50°C〜25°C、又は25°C未満である。
【0125】
幾つかの実施形態では、乾燥のために用いられる空気は、不燃性の気体、例えば窒素(N
2)によって置換される。これは、本乾燥法により生産される乾燥バイオマスが、高い割合の小粒子径を有する場合に、特に重要である。
【0126】
トレードライヤーは、典型的に実験作業及び小パイロットスケールの乾燥操作に用いられる。トレードライヤーは、対流加熱及び蒸発に基づいて働く。湿潤バイオマスは、熱及び蒸発した水を除去するための通気孔を用いて効率的に乾燥され得る。熱気は乾燥させるために循環される。トレードライヤーは、産物が温度感受性である場合には、乾燥させるために減圧圧力又は真空も用い得、凍結乾燥機に類似するが、使用するのにより低コストで簡単にスケールアップできる。
【0127】
上記乾燥技術に換えて、乾燥バイオマスは、フリーズドライ(freeze drying)又は低温乾燥(cryodessication)としても知られる凍結乾燥によっても生産され得る。凍結乾燥過程は、物質の凍結及びその後の周囲の圧力の低減及び物質中の凍結水分が固相から気体へ昇華するのに十分な熱の添加を含む。トレードライヤーの使用と同様に、凍結乾燥は、ほとんど、本発明のあまり好ましくない実施形態である小パイロットスケール操作のために用いられる。
【0128】
様々な流動化剤(flow agent)(例えば、沈降シリカ、フュームドシリカ(fumed silica)、ケイ酸カルシウム、及びナトリウムアルミニウムケイ酸塩等のシリカ由来の産物)が、乾燥前又は後にバイオマスに添加され得る。高脂肪、吸湿性、又は粘着性の粉へのこれらの物質の適用は、乾燥後の固化又は凝集を防ぎ、乾燥粉の自由な流動を促進する。これは粘着を低減するだけでなく、乾燥表面における物質の集積及び酸化もまた低減する。
【0129】
乾燥バイオマス
上記の通り、ピリピロペンを単離するために用いられる乾燥バイオマスは、好ましくは10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、又は3%未満の残留水分含量(重量/重量)を有する。好ましくは、80%、85%、90%、95%より多い、又は98%より多い乾燥バイオマスの粒径が、0.01 mm〜5 mm、又は3 mm未満、好ましくは1 mm未満及びより好ましくは0.5 mm未満である。
【0130】
均質化の直後、又はその後できるだけ早くに測定される平均粒径は、好ましくは10 μm未満、25 μm未満、又は100 μm未満である。幾つかの実施形態では、平均粒径は1 μm〜10 μm、1 μm〜15 μm、10 μm〜100 μm又は1 μm〜40 μmである。幾つかの実施形態では、平均粒径は10 μmより大きく最大100 μmである。幾つかの実施形態では、平均粒径は10 μm〜100 μmである。
【0131】
ミリングは、スイベル又は固定パーツを有する機械的システム手段によって特定の粒径を生産するために乾燥バイオマスに対して実施され得る。かかるパーツはハンマー、スクリーン、又は他方に対して圧力をかける回転シリンダーである。
【0132】
培養ブロスからの湿潤バイオマスの分離のための、機械的圧力を適用するための、湿潤バイオマスの乾燥のための又はミリングのための代表的な技術は、説明のためだけに記載され、本願の範囲を制限することを意図するものではない。本説明を読んだ当業者は、同じ結果を達成するために他の技術が用いられ得ることを理解するだろう。
【0133】
乾燥バイオマスの保管
上記技術のいずれかによって生産された、又は同様の技術によって生産された乾燥バイオマスは、保管タンクに保管され得る。保管タンクは、通常50°C未満、又は40°C未満、又は30°C未満、又は25°C未満、又は20°C未満、又は15°C未満、又は10°C未満、又は5°C未満、又は2°C未満だが、好ましくは凝固温度より高い温度で維持される。
【0134】
乾燥バイオマスは、かかる条件下で数時間保管され得るか、又は長期保管のために保管され得る。保管された乾燥バイオマスは、好ましくは10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、又は3%未満の残留水分含量(重量/重量)を有する。
【0135】
好ましい保管期間は、約5時間から最大数年間である。さらにより好ましい保管期間は、約5時間より長く約1年未満であるが、他の期間、例えば約1週間〜約12か月、約2週間〜約24か月、例えば約1か月〜約18か月、約4時間〜約6か月を選択することも可能である。
【0136】
したがって、少なくとも一つのピリピロペンを得るための方法及びピリピロペンの誘導体を生産するための方法は、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、又は3%未満の残留水分含量(重量/重量)を有する乾燥バイオマスを使用し、含まれるピリピロペンが得られる前に、約5時間から最大数年間保管され得る。
【0137】
乾燥バイオマスを生産するための工程をはじめとする、生産されるピリピロペンの抽出前の湿潤バイオマスの全ての取り扱いは、バイオマスの貴重な量を失うリスクを含むが、回収される乾燥バイオマスの量に基づいて、抽出により発酵中に生産されるピリピロペンの少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又はさらにそれより高い収率を得ることが可能である。
【0138】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも一つのピリピロペンを含み、
a)10%未満の水分含量、又は
b)0.01 mm〜5 mmの粒径、又は
c)10%未満の水分含量及び0.01 mm〜5 mmの粒径
を有するピリピロペン生産生物の乾燥バイオマスである。好ましくは、それらの特徴を有する乾燥バイオマスは、ペニシリウム、ユーペニシリウム又はアスペルギルス属に属するピリピロペン生産生物に由来し、さらにより好ましくは、ペニシリウム・コプロビウム、ペニシリウム・グリセオフルバム、ユーペニシリウム・レティキュロスポラム又はアスペルギルス・フミガーツス、特にそれらの上記株の一つに由来する。一実施形態では、乾燥バイオマスは、ペニシリウム・コプロビウムに由来し、例えばペニシリウム・コプロビウムPF1169に由来する。
【0139】
乾燥バイオマスは、好ましくは少なくともピリピロペンAを含むが、一以上のピリピロペンの組み合わせも含み得、例えば乾燥バイオマスは、ピリピロペンA、ピリピロペンB、ピリピロペンC及びピリピロペンDもまた含み得る。
【0140】
ピリピロペンの抽出及び精製
乾燥バイオマスからのピリピロペンの抽出は、本分野で知られる方法に従って、例えばWO2004/060065、WO94/09147又はWO2011/108155に記載されている様に実施され得る。抽出のための好適な溶媒としては、
−1〜6の炭素原子を有するアルコール、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、n-ヘキサノール、及びアルコール、例えば2-エチル-ヘキサノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール;
−芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、エチレンベンゼン、クロロベンゼン、シメン、キシレン、メシチレン、ベンゾトリフルオリド;
−エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、n-酢酸ブチル、酢酸イソブチル;
−エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン;
−二極性非プロトン溶媒、例えばN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N,N′-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、アセトニトリル;
−極性有機溶媒、例えばピリジン、ハロゲン化炭水化物溶媒、例えばジクロロメタン及びクロロホルム;
−ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン;
−ニトリル、例えばアセトニトリル及びイソブチロニトリル
が挙げられる。
【0141】
本明細書で用いられる用語「溶媒」は、上記溶媒の二以上の混合物もまた含む。溶媒は通常、0°C〜溶媒の沸点の範囲の温度で適用され、好ましくは、溶媒は20°C〜60°Cの範囲の温度で適用される。
【0142】
本発明の一実施形態では、抽出のために用いられる溶媒は、メタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、エチレンベンゼン、クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン、又はこれらの溶媒の少なくとも二つの混合物からなる群より選択される有機溶媒である。さらなる実施形態では、溶媒は、メタノール、トルエン及びエチレンベンゼン又はそれらの少なくとも二つの混合物、特にメタノール/トルエン混合物又はメタノール/エチレンベンゼン混合物を含む。
【0143】
通常、可能な限り完全にピリピロペンを抽出するために、抽出は乾燥バイオマスに対して数回行われる。抽出されたピリピロペンを含む溶媒は、バイオマスから濾過により分離される。
【0144】
濾過抵抗は、特定の用いられた溶媒及び用いられた乾燥バイオマスの残留水分含量に依存する。
【0145】
本発明の幾つかの実施形態では、濾過抵抗は、好ましさの程度が高くなる順に:5*10
13 mPas/m
2未満、4*10
13 mPas/m
2未満、3*10
13 mPas/m
2未満、2*10
13 mPas/m
2未満である。
【0146】
抽出に用いられる溶媒に含まれるピリピロペンを精製するための方法は、本分野において容易に利用可能である。幾つかの代表的な方法は、WO94/09147、WO2004/060065及びWO2011/108155に記載されている。
【0147】
上記方法により得られるピリピロペンは、ピリピロペンのさらなる誘導体、例えばEP1889540、EP2119361、EP2196815、EP2426124に記載されている誘導体、特に好ましくは式III、式IV及び式Vの化合物を作製するために用いられる。
【0148】
式IIIの化合物の生産のための方法は、日本特許出願公開番号1996-259569に記載されている。
【0149】
式IV及び式Vの化合物の生産のための方法は、WO2006/129714に記載されている。
【0150】
式Vの化合物の生産のための特に好ましい方法は、EP13151492.9及びUS61/753023に記載され、その両方が全体において参照により含まれる。
【0151】
本発明はまた、
a)10%未満の水分含量、又は
b)0.01 mm〜5 mmの粒径、又は
c)10%未満の水分含量及び0.01 mm〜5 mmの粒径
を有する乾燥バイオマスから、式Iの少なくとも一つの化合物を得るための、又は式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物を生産するための方法を包含する。好ましくは、それらの特徴を有する乾燥バイオマスは、ペニシリウム、ユーペニシリウム又はアスペルギルス属に属するピリピロペン生産生物に由来し、さらにより好ましくは、ペニシリウム・コプロビウム、ペニシリウム・グリセオフルバム、ユーペニシリウム・レティキュロスポラム又はアスペルギルス・フミガーツス、特にそれらの上記株の一つに由来する。一実施形態では、乾燥バイオマスは、ペニシリウム・コプロビウムに由来し、例えばペニシリウム・コプロビウムPF1169に由来する。
【0152】
乾燥バイオマスは、好ましくは少なくともピリピロペンAを含むが、一以上のピリピロペンの組み合わせも含み得、例えば乾燥バイオマスは、ピリピロペンA、ピリピロペンB、ピリピロペンC及びピリピロペンDを含み得る。
【0153】
好ましくは、本方法は、式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物を生産すためのに用いられても用いられなくてもよい、好ましくは式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物を生産するために、さらにより好ましくは式Vの化合物を生産するために用いられる、式IIの化合物を得る工程を含む。本方法は、有害生物防除組成物を生産するために式II、式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物、好ましくは式Vの化合物を用いる工程もまた含み得る。有害生物防除組成物は、好ましくは殺虫剤である。
【0154】
式I又は式IIの化合物から式III、式IV又は式Vの化合物を得るための方法、これらの化合物を活性成分として用いて殺虫剤をはじめとする有害生物防除組成物を生産するための方法は、例えば、EP2223599、EP2119361及びEP1889540に開示され、それらは全体において本明細書に含まれる。
本発明の様々な態様を以下に示す。
1.少なくとも一つのピリピロペンを得るための方法であって、
a)少なくとも一つのピリピロペンが生産される培養条件で、培養ブロス中でピリピロペン生産生物を培養する工程、
b)工程a)で得られるバイオマスの少なくとも一部から乾燥バイオマスを生産する工程、
c)工程b)で生産される乾燥バイオマスから少なくとも一つのピリピロペンを得る工程を含む、前記方法。
2.工程b)で生産される乾燥バイオマスが、バイオマスを含む培養ブロスの噴霧乾燥により直接生産されるか、又は培養ブロスから得られる湿潤バイオマスの乾燥により生産される、上記1に記載の方法。
3.a)濾過及び/若しくは遠心分離、又は
b)濾過及び機械的圧力の適用、又は
c)濾過及び/若しくは遠心分離及び機械的圧力の適用
により、湿潤バイオマスが培養ブロスから得られる、上記2に記載の方法。
4.湿潤バイオマスが、
a)再懸濁培地に再懸濁される、
b)均質化される、
c)5g/l未満のグルコース含量を有する、
d)15%より多く、90%未満の水分含量を有する、
e)a)〜d)の少なくとも二つの組み合わせを有する、
上記2又は3に記載の方法。
5.工程b)で生産される乾燥バイオマスが、噴霧乾燥器、ペーストミルドライヤー、フラッシュドライヤー、流動層乾燥機、又は回転乾燥機における乾燥により生産される、上記1〜4のいずれかに記載の方法。
6.工程b)で生産される乾燥バイオマスが、噴霧乾燥器又はペーストミルドライヤーにおける乾燥により生産される、上記1〜5のいずれかに記載の方法。
7.工程b)で生産される乾燥バイオマスが、工程c)でピリピロペンが得られる前に、約5時間から最大数年保管される、上記1〜6のいずれかに記載の方法。
8.工程b)で生産される乾燥バイオマスが、10%未満の残留水分含量を有する、上記1〜7のいずれかに記載の方法。
9.80%を超える工程b)で生産される乾燥バイオマスが、0.01mm〜5mmの粒径を有する、上記1〜8のいずれかに記載の方法。
10.工程b)で生産され、工程c)でピリピロペンを得るために用いられる乾燥バイオマスが、工程a)の培養中に生産されるピリピロペンの少なくとも95%を含む、上記1〜9のいずれかに記載の方法。
11.ピリピロペン生産生物が、ペニシリウム(Penicillium)、ユーペニシリウム(Eupenicillium)又はアスペルギルス(Aspergillus)属に属する、上記1〜10のいずれかに記載の方法。
12.ピリピロペン生産生物が、ペニシリウム・コプロビウム(Penicillium coprobium)、ペニシリウム・グリセオフルバム(Penicillium griseofulvum)、ユーペニシリウム・レティキュロスポラム(Eupenicillium reticulosporum)及びアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)からなる群より選択される、上記1〜9又は11のいずれかに記載の方法。
13.ピリピロペン生産生物が、ペニシリウム・コプロビウム(Penicillium coprobium)である、上記1〜12のいずれかに記載の方法。
14.ピリピロペンが、メタノール、トルエン及びエチルベンゼンからなる群より選択される、又はそれらの少なくとも二つの混合物である溶媒による抽出によって乾燥バイオマスから得られる、上記1〜13のいずれかに記載の方法。
15.ピリピロペンが、溶媒による抽出によって乾燥バイオマスから得られ、溶媒が、5*10
13 mPas/m
2未満の濾過抵抗を有する濾過工程によりバイオマスから分離される、上記1〜14のいずれかに記載の方法。
16.式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物を生産するための方法であって:
a)上記1〜15のいずれかに記載の方法によってピリピロペンを得る工程、
b)工程a)で得られるピリピロペンから式III、式IV又は式Vの化合物を生産する工程
を含む、前記方法。
17.少なくとも一つのピリピロペンを含み、
a)10%未満の水分含量、又は
b)0.01 mm〜5 mmの粒径、又は
c)10%未満の水分含量及び0.01 mm〜5 mmの粒径
を有する、ピリピロペン生産生物の乾燥バイオマス。
18.ピリピロペン生産生物が、ペニシリウム・コプロビウム(Penicillium coprobium)、ペニシリウム・グリセオフルバム(Penicillium griseofulvum)、ユーペニシリウム・レティキュロスポラム(Eupenicillium reticulosporum)及びアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)からなる群より選択される、上記17に記載の乾燥バイオマス。
19.ピリピロペン生産生物が、ペニシリウム・コプロビウム(Penicillium coprobium)である、上記17又は18に記載の乾燥バイオマス。
20.上記17〜19のいずれかに記載の乾燥バイオマスから、式I又は式IIの少なくとも一つの化合物を得るための、又は式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物を生産するための方法。
21.式I又は式IIの少なくとも一つの化合物が、上記17〜19のいずれかに記載の乾燥バイオマスの抽出により得られる、上記20に記載の方法。
22.式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物が、上記17〜19のいずれかに記載の乾燥バイオマスの抽出により得られる式I又は式IIの少なくとも一つの化合物から生産される、上記16又は20に記載の方法。
23.式IIの化合物が、上記17〜19のいずれかに記載の乾燥バイオマスの抽出により得られる、上記16、20、21、又は22のいずれかに記載の方法。
24.式IIの化合物が、式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物を生産するために得られて用いられ、好ましくは式Vの化合物を生産するために用いられる、上記23に記載の方法。
25.式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物、好ましくは式Vの化合物が、式IIの化合物からその生産後に得られるか単離される、上記16又は20〜24のいずれかに記載の方法。
26.式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物、好ましくは式Vの化合物が、有害生物防除組成物、好ましくは殺虫剤を生産するためにさらに用いられる、上記16又は20〜25のいずれかに記載の方法。
27.式Iの少なくとも一つの化合物を得るための、上記17〜19のいずれかに記載の乾燥バイオマスの使用。
28.式IIの化合物を得るための、上記17〜19のいずれかに記載の乾燥バイオマスの使用。
29.式III、式IV又は式Vの少なくとも一つの化合物を生産するための方法における、上記17〜19のいずれかに記載の乾燥バイオマスの使用。
30.上記16及び20〜26のいずれかに記載の方法における、上記17〜19のいずれかに記載の乾燥バイオマスの使用。
【実施例】
【0155】
実施例1:ペーストミルドライヤーにおける乾燥による7%の残留水分含量を有する乾燥バイオマスの生産及びエチルベンゼンによるピリピロペンAの抽出
ペーストミルドライヤーにおける乾燥及びピリピロペンAのさらなる抽出には、フェドバッチ培養由来のペニシリウム・コプロビウムの懸濁バイオマスを用いた。微生物であるP.コプロビウムを、10m
3の作業容量を有する16.5m
3の発酵槽において培養した。回収した培養ブロスは、10 m
3の容量を含んでおり、バイオマスの内部に位置する1.8%〜2%(重量/容量)のピリピロペンを含む6〜8%(重量/容量)のバイオマスを含んでいた(ピリピロペンAのHPLC分析及びバイオマス含量の決定については、以下を参照されたい)。
【0156】
回収した培養ブロスを、熱不活性化手順により処理し、760x760のサイズを有する26プレートを含むフィルタープレス装置における濾過によって脱水し、湿潤バイオマスを生産した。全てのプレートを、製造業者である中尾フィルター工業株式会社のTR2600タイプの濾布材料により覆った。得られた濾過ケーキ(湿潤バイオマス)は、〜75%〜78%の水分含量を有していた(水分含量の決定については以下を参照されたい)。残留グルコースは、濾過ケーキにおいて検出されなかった。
【0157】
その後、この脱水された濾過ケーキを、
図1に示されるペーストミルドライヤーの模式図に構成において類似するペーストミルドライヤーにおける乾燥に供した。
【0158】
実施例1で用いたペーストミルドライヤーは、以下の仕様を有していた:
直径:140mm
高さ(Hight):1300 mm
ローターナイフの数:5
最大回転数:2800 RPM
最大気体処理量:300 kg/h
7.5〜7.9kg/hの記載した濾過ケーキを、フィードスクリューによりペーストミルドライヤーに供給した。乾燥気体として用いた窒素の量を119〜121 m
3/h、又は3 m/sの水(hydrolic)気体速度に、それぞれ設定した。ペーストミルドライヤーの乾燥チャンバーに含まれるローターを、産物の十分な乾燥レベルに対応する装置内での十分な滞留時間を達成するために、900 RPMの回転数に設定した。乾燥気体の入口温度を221〜224 °Cに設定した。
【0159】
乾燥バイオマスの得られた水分含量は7%であると決定され、ピリピロペンAの含量は28.9 wt%であった。
【0160】
生産された乾燥バイオマスは、室温で長期保管安定性を示した:213日後、4%のピリピロペンAの喪失が観察され、242日後、計6%のピリピロペンAが分解された。60℃では、計54%のピリピロペンAにおけるピリピロペンAの連続的な分解が242日後に観察された。
【0161】
ミリング及びエチルベンゼンによる抽出:
7%の残留水分を含み、上記ペーストミル乾燥によって得られたバイオマスを、45秒間ステップ7に設定したミクロトロン(Microthron)MB550装置を用いるミリングに供した。100gの粉砕した乾燥バイオマスを、ブレードインペラによって撹拌した0.75リットルの反応槽に供した。200mLのエチルベンゼンを加え、懸濁液を18時間60°Cで、250 rpmで撹拌した。その後、懸濁液を0.5リットルガラスフィルター(孔径3、直径9.5cm)を用いて、200mbarの真空を用いて濾過した。濾過ケーキを、それぞれ60°Cの温度を有する200mLのエチルベンゼンで二回洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキをそれぞれ60°Cの温度を有する150mLのエチルベンゼンで二回洗浄した(置換洗浄)。抽出前の乾燥バイオマスに存在する量に対して93.9%(重量/重量)の収率で、ピリピロペンを得た。
【0162】
異なる抽出溶媒を用いる乾燥バイオマスの濾過抵抗の決定の手順の例
7%の残留水分含量を有する50gのペーストミル乾燥バイオマス(上記実施例1参照)、及び100mlの溶媒を特定の温度で18時間撹拌した。用いた溶媒は、a)室温を有するメタノール;b)室温を有するトルエン;c)室温を有するエチルベンゼン;及びd)60°Cを有するエチルベンゼンであった。得られた懸濁液をプレッシャーフィルター及び濾過布PP25130F(PP=ポリプロピレン、会社:Verseidag)を用いて1barでろ過した。濾過抵抗を決定するために、以下のパラメーターを測定した:a)濾過面積、b)濾過時間、c)濾過圧力、d)得られた濾液の容量、e)濾過ケーキの高さ。異なる水分含量を有するバイオマスについて決定した、抽出後の溶液における濾過抵抗及びピリピロペンAの濃度を、表2に列挙する。
【0163】
【表2】
実施例2:ペーストミルドライヤーにおける乾燥による5%の残留水分含量を有する乾燥バイオマスの生産並びにトルエン及びエチルベンゼンによるピリピロペンAの抽出
実施例1で記載したのと同じ材料及び装置を、ペーストミルドライヤーにおける乾燥のために用いた。今回は供給速度を4〜5.8 kg/hに設定し、回転速度を1000 RPMに設定した。113〜117 m
3/hの乾燥気体(窒素)を、219〜224°Cで適用し、湿潤バイオマスを乾燥させた。
【0164】
記載された乾燥法で生じた乾燥バイオマスは、5%の残留水分、28%のピリピロペンA含量を有し、室温で長期保管安定性を示した。4%のピリピロペンAの喪失が183日後に観察され、242日後、計11%のピリピロペンAが分解された。60℃での同じ時間(242日)の同じ物質の保管は、11%のピリピロペンAの喪失をもたらした。
【0165】
ミリング及びトルエンによる抽出
5%の残留水分を含み、上記ペーストミル乾燥によって得られた乾燥バイオマスを、45秒間ステップ7に設定したミクロトロン(Microthron)MB550装置を用いるミリングに供した。100gの粉砕した乾燥バイオマスを、ブレードインペラによって撹拌した0.75リットルの反応槽に供した。200mLのトルエンを加え、懸濁液を18時間60°Cで、250 rpmで撹拌した。その後、懸濁液を0.5リットルガラスフィルター(孔径3、直径9.5cm)を用いて、200mbarの真空を用いて濾過した。
【0166】
濾過ケーキを、200mLのトルエンで洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキを0.75リットルの反応槽に移し、200mlのトルエンと共にさらに60分間撹拌した。懸濁液を上記と同じ条件を用いて再び濾過した。
【0167】
その後、濾過ケーキを150mLのトルエンで洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキを0.75リットルの反応槽に移し、150mlのトルエンと共にさらに60分間撹拌した。懸濁液を上記と同じ条件を用いて再び濾過した。
【0168】
その後、濾過ケーキを150mLのトルエンで洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキを0.75リットルの反応槽に移し、150mlのトルエンと共にさらに60分間撹拌した。懸濁液を上記と同じ条件を用いて再び濾過した。ピリピロペンを、抽出前の乾燥バイオマスに存在する量に対して96.4%(重量/重量)の収率で得た。
【0169】
ミリング及びエチルベンゼンによる抽出:例1
5%の残留水分を含み、上記ペーストミル乾燥によって得られた乾燥イオマスを、45秒間ステップ7に設定したミクロトロン(Microthron)MB550装置を用いるミリングに供した。100gの粉砕した乾燥バイオマスを、ブレードインペラによって撹拌した0.75リットルの反応槽に供した。200mLのエチルベンゼンを加え、懸濁液を18時間60°Cで、250 rpmで撹拌した。その後、懸濁液を0.5リットルガラスフィルター(孔径3、直径9.5cm)を用いて、200mbarの真空を用いて濾過した。
【0170】
濾過ケーキを、200mLのエチルベンゼンで再び洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキを0.75リットルの反応槽に移し、200mlのエチルベンゼンと共にさらに60分間撹拌した。懸濁液を上記と同じ条件を用いて再び濾過した。
【0171】
その後、濾過ケーキを150mLのエチルベンゼンで洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキを0.75リットルの反応槽に移し、150mlのエチルベンゼンと共にさらに60分間撹拌した。懸濁液を上記と同じ条件を用いて再び濾過した。
【0172】
その後、濾過ケーキを150mLのエチルベンゼンで洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキを0.75リットルの反応槽に移し、150mlのエチルベンゼンと共にさらに60分間撹拌した。懸濁液を上記と同じ条件を用いて再び濾過した。ピリピロペンを、抽出前の乾燥バイオマスに存在する量に対して95.3%(重量/重量)の収率で得た。
【0173】
ミリング及びエチルベンゼンによる抽出:
5%の残留水分を含み、上記ペーストミル乾燥によって得られた乾燥バイオマスを、45秒間ステップ7に設定したミクロトロン(Microthron)MB550装置を用いるミリングに供した。200gの粉砕した乾燥バイオマスを、ブレードインペラを備えた0.75リットルの反応槽に供した。400mLのエチルベンゼンを加え、懸濁液を18時間室温で、350 rpmで撹拌した。その後、懸濁液を0.5リットルガラスフィルター(孔径3、直径9.5cm)を用いて、200mbarの真空を用いて濾過した。
【0174】
濾過ケーキを、400mLのエチルベンゼンで再び洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキを0.75リットルの反応槽に移し、400mlのエチルベンゼンと共にさらに60分間撹拌した。懸濁液を上記と同じ条件を用いて再び濾過した。
【0175】
その後、濾過ケーキを300mLのエチルベンゼンで洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキを0.75リットルの反応槽に移し、300mlのトルエンと共にさらに60分間撹拌した。懸濁液を上記と同じ条件を用いて再び濾過した。ピリピロペンを、抽出前の乾燥バイオマスに存在する量に対して91.5%(重量/重量)の収率で得た。
【0176】
メタノールによる抽出:
5%の残留水分を含み、上記ペーストミル乾燥によって得られた100gの乾燥バイオマスを、ブレードインペラを備えた0.75リットルの反応槽に供した。200mLのメタノールを加え、懸濁液を18時間室温で、250 rpmで撹拌した。その後、懸濁液を0.5リットルガラスフィルター(孔径3、直径9.5cm)を用いて、200mbarの真空を用いて濾過した。
【0177】
濾過ケーキを、各200mLのメタノールで二回洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキを、各150mLのメタノールで二回洗浄した(置換洗浄)。ピリピロペンを、抽出前の乾燥バイオマスに存在する量に対して96.9%(重量/重量)の収率で得た。
【0178】
ミリング及びエタノールによる抽出:
5%の残留水分を含み、上記ペーストミル乾燥によって得られた乾燥バイオマスを、45秒間ステップ7に設定したミクロトロン(Microthron)MB550装置を用いるミリングに供した。100gの粉砕した乾燥バイオマスを、ブレードインペラを備えた0.75リットルの反応槽に供した。200mLのメタノールを加え、懸濁液を18時間室温で、250 rpmで撹拌した。その後、懸濁液を0.5リットルガラスフィルター(孔径3、直径9.5cm)を用いて、200mbarの真空を用いて濾過した。
【0179】
濾過ケーキを、各200mLのメタノールで二回洗浄した(置換洗浄)。その後、濾過ケーキを、各150mLのメタノールで二回洗浄した(置換洗浄)。ピリピロペンを、抽出前の乾燥バイオマスに存在する量に対して98.7%(重量/重量)の収率で得た。
【0180】
実施例3:噴霧乾燥による3%の残留水分含量を有する乾燥バイオマスの生産並びにエチルベンゼン及びメタノールによるピリピロペンAの抽出
フェドバッチ培養において生産され、培養ブロスに懸濁したP.コプロビウムのバイオマスを、噴霧乾燥に用いた。微生物であるP.コプロビウムを、0.2 m
3の作業容量を有する0.3 m
3の発酵槽で培養した。発酵ブロス(培養ブロス)は、6〜8%のバイオマス及びバイオマス中の2〜2.1%のピリピロペンA、及び0.1 g/L未満のグルコースを含んでいた。このブロスを、発酵ベッセルから回収される前に、60分間70°Cでの熱不活性化に供した。その後、培養ブロスを70 °Cの温度に設定したカビトロン(cavitron)装置を用いて均質化した。その後、発酵ブロスを、噴霧乾燥される前に、バッファータンクにおいて、さらに30分70°Cに保った。
【0181】
乾燥のために、
図2の模式図によって説明される構成と類似し、以下の技術的特徴を有する噴霧乾燥タワーを用いた:
最大ガスフロー 250 m
3/h
穴直径開口プレート 2 mm
開口穴の数 1.255
D 1 1,25 m
H 1 0,31 m
H 2 1,22 m
H 3 1,36 m
D 2 66 mm
ノズル型: ヌブリロサ(Nubilosa)2混合物、2mm
開口プレート下のノズルの深さ 200 mm
火力 20 KW
一次分離 サイクロン(直径=0,203 m、高さ=0,5 m)
フィルター(フィルタータワー) ポリエステルPTFEコーティング
フィルター面積 3,40 m2
管の数 6
管の長さ 1,10 m
管の直径 0,16 m
生産されたバイオマスを含む培養ブロスを、噴霧乾燥器に7.5〜8.5 kg/hの供給速度で供給した。窒素を乾燥気体として用い、250 m
3/h及び160°Cの入口温度で適用した。サイクロンにおける対応する気体出口温度は、77〜80°Cであった。
【0182】
乾燥ドライバイオマスは、3%の残留水分含量、及び24%のピリピロペンA含量を有していた。
【0183】
この方法で生産されたこの乾燥バイオマスは、長期保管安定性を示した、なぜなら4%のピリピロペンAのわずかな減少のみが室温での213日の保管後に、及び60°Cでの242日の保管後に観察されたからである。
【0184】
エチルベンゼンによる抽出:
3%の残留水分を含む100gの噴霧乾燥したバイオマスを、ブレードインペラによって撹拌されている0.5リットルの4つ首のフラスコに供した。200mlのエチルベンゼンを加え、懸濁液を室温で18時間、530rpmで撹拌した。その後、懸濁液を0.5リットルのガラスフィルター(孔径3、直径9 cm)を用いて濾過した。
【0185】
濾過ケーキを四回、各150mlのエチルベンゼンで洗浄した(置換洗浄)。ピリピロペンを、抽出前の乾燥バイオマスに存在する量に対して、95.6%(重量/重量)の収率で得た。
【0186】
メタノールによる抽出:
100gの噴霧乾燥したバイオマスを、ブレードインペラによって撹拌されている0.5リットルの4つ首のフラスコに供した。200mlのメタノールを加え、懸濁液を室温で18時間、530rpmで撹拌した。その後、懸濁液を0.5リットルのガラスフィルター(孔径3、直径9 cm)を用いて濾過した。
【0187】
濾過ケーキを四回、各150mlのメタノールで洗浄した(置換洗浄)。ピリピロペンを、抽出前の乾燥バイオマスに存在する量に対して、98%(重量/重量)の収率で得た。
【0188】
IV:分析及び方法
他で記載しない限り、以下の値を、実施例において提示された値を決定するために用いた:
【0189】
ピリピロペンAのためのサンプル調製:
約100mgのサンプルを、100.0 mlメスフラスコに正確に量り、40.0mlのアセトニトリルに溶解する(1分間超音波処理)。サンプルが純粋なアセトニトリルに溶けない場合には、水を加え超音波処理を繰り返す。アセトニトリルにより容量を満たす。
【0190】
標準的な調製:
典型的な較正は、5つの標準溶液を含む:
全ての標準溶液をアセトニトリルに溶解する(ピリピロペンA)(さらなる詳細についてはサンプル調製を参照されたい)。較正曲線のタイプは線形である。濃度は検出器の感度に依存し、調整が必要であり得る。
【0191】
注入フォーマット
4 x ブランク / 1 x 標準 1〜5 / サンプル調製。
保持時間
ピリピロペンAの保持時間は:7,7分である。
バイオマス含量の決定
〜15gの発酵ブロスの濾過;濾過ケーキの蒸留水による2 x洗浄;濾過ケーキの乾燥:ハロゲン(IR)‐一定の重量まで乾燥温度180 °Cの乾燥スケール(メトラートレード)。
水分含量の決定
1)濾過ケーキ(湿潤バイオマス)の残留水分含量を、発酵ブロス(上記)のバイオマス含量及び濾過ケーキの実際の重量から計算によって測定した。
【0192】
2)〜30%未満の残留水分含量について:乾燥減量法。約5〜10gのバイオマスを真空乾燥機で、80°C及び50 mbar(20 L/h窒素流)で18時間(一定の重量)乾燥する。
【0193】
3)〜10%未満の残留水分含量について:
a)102°C、4h(一定重量)でのハロゲン(IR)スケール(メトラ―トレード)
b)カールフィッシャー:0.1 g〜0.5 gの乾燥バイオマスに対して、〜45mLのメタノールを加える。この懸濁液を短時間(〜10秒)撹拌する。その後、カールフィッシャー滴定を行う。この方法は、細胞の内部に結合する全ての水に到達する可能性によって、比較的小さな粒径のバイオマスに良い。上皿天秤、加熱マントルを有するマグネチックスターラー、ガラス装置
c)Aufhauser法:50 gのバイオマスのサンプルを500mlのフラスコに量り、その後それをトルエンで容量の約半分まで満たす。水を共沸蒸留により除去し、さらなる水がサンプルから除去されなくなるまで、目盛りのついたデーンスタークトラップに回収する。
【0194】
密度は、1 g/mlであるとみなす。
【0195】
【数1】
高速液体クロマトグラフィーによるグルコースの決定
カラム:アミネックス(Aminex)HPX-87 H、 300*7,8mm(バイオラッド)
プレカラム:カチオンH
温度:30°C
流速:0.50 ml/min
注入容量:5,0μl
検出:RI検出器
時間:30.0分
最大圧力:140bar
溶出剤:5mM H2SO4
基質:発酵ブロス、
調製:サンプルは0.22μmカットオフで濾過されなければならない。
較正:水中にグルコース50g/L
保持時間:10.93分(グルコース)