【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様では、ある用量の薬剤の投薬のための薬物送達デバイスのための駆動機構が提供される。その駆動機構は、軸方向に延びる細長いハウジングを含む。好ましくは、ハウジングは、実質的にチューブ状または円筒形のものであり、その形状により、ユーザが片手で駆動機構または薬物送達デバイス全体を把持および操作することが可能になる。
【0018】
駆動機構はさらに、駆動機構によって投薬される薬剤を含むカートリッジのピストンと動作可能に係合するピストンロッドを含む。カートリッジはピストンを含み、ピストンは、軸方向の遠位方向の変位によって、ピストンの軸方向の変位に相当するある量の薬剤をカートリッジから排出するように働く。ピストンは典型的には、軸方向の近位方向にカートリッジを封止する。ピストンロッドは、軸方向の遠位方向にカートリッジのピストンを変位させるように働く。したがって、ピストンロッドは、投薬される薬剤のそれぞれの量に対応する所定の距離だけ遠位方向にカートリッジのピストンを変位させるために、カートリッジのピストンに遠位方向に推力または圧力を加えるように動作可能である。
【0019】
駆動機構はさらに駆動スリーブを少なくとも1つ含み、駆動スリーブは、軸方向に延び、ハウジング内に回転可能に支持される。駆動スリーブは用量を設定するためにピストンロッドから動作可能に解放可能である。したがって、用量設定手順中に、ピストンロッドはハウジングに対して実質的に静止したままである、ピストンロッドから動作可能に連結解除および解放される駆動スリーブは、ハウジングに対して、したがって、ピストンロッドに対して回転可能である。
【0020】
さらに、駆動機構は用量設定部材を含み、用量設定部材は、ハウジングの側壁部分上に回転可能に支持され、軸方向に細長いハウジングに対して径方向に延びる軸に対して回転可能である。したがって、典型的には回転可能な用量ダイヤルまたは作動ホイールを含む用量設定部材は、横の側壁部分上に位置し、用量を設定するために動作可能であり、したがって回転可能とすることができる。用量設定部材および駆動スリーブは、少なくとも用量を設定するために動作可能に係合可能する。用量設定部材と駆動スリーブとの相互係合は、径方向に延びる軸に対する用量設定部材の回転が、軸方向に沿ってハウジング内で回転可能に支持される駆動スリーブのそれぞれの回転に伝達されるようになっている。
【0021】
ハウジングの側壁部分上に用量設定部材を配置することは、駆動機構および薬物送達デバイスの直観的な取り扱いを可能にする。ハウジングの側壁部分上または側壁部分内に用量設定部材を配置すると、用量注射部材から用量設定部材を空間的に分離させることが可能になる。その用量設定部材は、典型的には、ハウジングの近位端に配置され、ユーザの親指で操作されるように設計される。さらに、ハウジングの側壁部分上または側壁部分内に用量設定部材を配置することによって、用量設定部材の全体のサイズは用量設定部材が細長いハウジングの近位端に位置する配置と比べて増大される。
【0022】
別の実施形態によれば、駆動スリーブは、用量の投薬のために、ピストンロッドと動作可能に係合可能であり、用量設定部材から動作可能に解放可能である。
【0023】
設定された用量の投薬のために、駆動スリーブはピストンロッドと動作可能に係合可能である。それぞれの用量投薬モードでは、駆動スリーブが、ピストンロッドを遠位方向に押しやってそれに応じてカートリッジのピストンを変位させるために、ピストンロッドに駆動力または駆動運動量を及ぼすことができるので、ピストンロッドと駆動スリーブとが動作可能に係合される。
【0024】
典型的には、駆動スリーブは、駆動機構が用量投薬モードにあるかまたは用量設定モードにあるかに応じて、ピストンロッドまたは用量設定部材と動作可能に係合可能である。用量設定モードにあるときは、駆動スリーブは、用量設定部材と動作可能に係合され、したがって、回転的に係合され、実際にピストンロッドから動作可能に解放される。このようにして、可変サイズの用量が用量設定部材によって設定され、これは、駆動スリーブのそれぞれの回転方向および/または長手方向の変位につながる。
【0025】
典型的には、用量設定手順中の駆動スリーブの変位は、ばね要素に張力をかけることに付随して起き、そのばね要素は、後続の用量投薬手順中に反対方向に駆動スリーブを戻し変位させるように動作可能である。このような用量投薬手順中または用量投薬モードには、好ましくは、ピストンをさらにカートリッジ中に押しやるために駆動スリーブの回転がピストンロッドの遠位方向の軸方向の変位に伝達されるようにして、ピストンロッドと駆動スリーブとが動作可能に係合される。駆動スリーブが用量投薬中に用量設定部材から動作可能に解放されるので、たとえばデバイスのユーザをいらいらさせるかまたは混乱させないように、用量設定部材は実質的に静止したままである。
【0026】
さらなる実施形態によれば、駆動スリーブは、ピストンロッドおよび用量設定部材と選択的におよび交互に係合および係合解除するために、近位の用量設定位置と遠位の用量注射位置との間を軸方向に変位可能である。典型的には、駆動スリーブは、ピストンロッドとまたは用量設定部材のいずれかと係合される。特に、遠位の用量注射位置にあるときは、駆動スリーブは、ピストンロッドと動作可能に係合され、用量設定部材から動作可能に解放される。近位の用量設定位置では、駆動スリーブは、直接的に動作可能であり、したがって、用量設定部材と回転的に係合され、ピストンロッドから動作可能に解放される。
【0027】
駆動スリーブがピストンロッドまたは用量設定部材のいずれかと交互に係合可能なので、駆動スリーブは、駆動機構を用量設定モードと用量投薬モードとの間で切り替えできるようにする一種のクラッチ機構として働く。さらに、この2つのモード間の切り替えは、その遠位の用量注射位置とその近位の用量設定位置との間で主に駆動スリーブ単独の軸方向の変位によって左右される(governed)。このようにして、やや単純で頑強であり信頼できるクラッチ機構が設けられる。
【0028】
典型的には、駆動スリーブは、少なくとも軸方向の部分でピストンロッドの円周を囲繞する。駆動スリーブは、少なくとも初期のデバイス構成では、遠位方向に向かって開いており、ピストンロッドの近位部分を受けるかまたは収容する。ピストンロッドおよび囲繞する駆動スリーブは、典型的には同心に配置される。したがって、ピストンロッドは、駆動スリーブの径方向の中心に位置し、駆動スリーブと軸方向に同心である。駆動スリーブは、ハウジング内に回転可能に支持される間は、たとえば、駆動機構の用量設定モードと用量投薬モードとの間で切り替えるために、限定的にのみ軸方向に変位することができる。それとは対照的に、ピストンロッドは連続的な用量投薬手順のたびに遠位方向に前進する。用量投薬手順が繰り返されると、ピストンロッドはそれにしたがって駆動スリーブから軸方向にますます突出することができる。
【0029】
別の実施形態によれば、駆動機構はさらに、ハウジングの近位端に用量注射部材を含む。用量注射部材は、近位の用量設定位置と遠位の用量注射位置との間を軸方向に変位可能である。用量注射部材はさらに、用量注射位置駆動スリーブを変位させるために駆動スリーブと遠位方向に当接する。好ましくは、用量注射部材は、駆動機構のハウジング中に延び、軸方向に延びる軸部分を有する。軸部分の遠位端またはその径方向に広がるかもしくは径方向外側に延びる当接部片が、遠位方向に駆動スリーブの近位端面に対して当接する。
【0030】
このようにして、用量注射部材に遠位方向に圧力を及ぼすと、ハウジングに対して用量注射部材がそれぞれの遠位方向に変位し、それにより、駆動スリーブがそれに応じて遠位方向に付勢されるかまたは押される。事実上、駆動スリーブは、用量注射部材によって近位の用量設定位置から遠位の用量注射位置に変位される。このようにして、駆動機構の用量投薬モードと用量設定モードとの間の切り替えは、基本的に、用量注射部材を遠位方向に単に押し下げるだけで動作可能である。
【0031】
さらに、別の実施形態によれば、用量注射部材は、ハウジングに回転的に固定され、用量注射位置に到達するときに用量設定部材と係合するロッキング部材またはキャッチ部材を含む。ロッキング部材はアームまたはL字形のビームを含むことができ、アームまたはL字形のビームは、用量注射部材の軸方向に延びる軸部分から径方向外側に延びる。用量注射部材は、ハウジングに回転的に固定されるので、長手方向軸に対して回転することができない。
【0032】
したがって、用量注射部材は、遠位方向および近位方向に上記で言及した近位の用量設定位置と遠位の用量注射位置との間で摺動可能に移動することのみ可能にされる。ロッキング部材は、用量注射部材の軸部分から径方向外側に延びるので、用量注射部材がその遠位の用量注射位置にあるときにハウジングに関する用量設定部材のさらなる回転が事実上阻止されるようにして、用量設定部材と係合することができるかまたはインターロックすることができる。したがって、用量設定部材との用量注射部材のロッキング部材の前記相互係合は、駆動機構が用量投薬モードにあるときは、用量設定部材がさらに移動または回転するのを事実上妨げる。
【0033】
したがって、したがって、ロッキング部材は、駆動機構がその用量設定モードにあるときにのみ、用量設定部材が回転できるように動作可能である。典型的には、ロッキング部材は、用量注射位置で用量設定部材の歯車と係合する歯付き自由端を含み、それにより、用量設定部材のどんなさらなる変位または回転も抑止する。
【0034】
別の好ましい実施形態では、駆動スリーブは、駆動スリーブとハウジングとの間で軸方向に作用するばね要素の作用に抗して、ハウジングに対して遠位方向に変位可能である。少なくとも1つのばね要素によって、駆動スリーブは、駆動スリーブに作用する遠位方向の推力が所定の閾値未満に降下するとすぐに、その近位の用量設定位置に戻ることができる。ユーザが用量注射部材を早まって解放したときは、駆動スリーブは、張力をかけられたばね要素の影響で、その用量設定位置に即座に戻る。
【0035】
駆動スリーブが用量注射部材と軸方向に当接しているので、ユーザの親指が用量注射部材を遠位方向に押し下げなくなるとすぐに注射部材もその初期の用量設定位置に戻る。ばね要素は、軸方向に径方向内側に延びるハウジングの支持部と駆動スリーブの外側に位置するそれぞれの支持部との間に配置される。
【0036】
さらに、少なくとも1つのばね要素は、ハウジングまたは駆動スリーブのいずれかと一体形成される。このようにして、駆動スリーブとハウジングとの間にばね要素を組み付ける別個の工程が省略される。好ましくは、ばね要素は、駆動スリーブの遠位端面に位置する。軸方向に延び、駆動機構のハウジング内に固定して配置されたインサートに対して突出することができる。代替方法として、ばね要素はハウジングと直接的に係合することもできる。さらに、典型的にはピストンロッドを軸方向にガイドしそれを受けるように適用されたインサートは、やはりハウジングと一体形成される。
【0037】
さらなる実施形態によれば、用量設定部材は、用量設定位置にあるときに駆動スリーブのクラウン歯車と係合する、ハウジング内に位置する歯車を含む。駆動スリーブのクラウン歯車は、典型的には、駆動スリーブの近位端面上に位置し、用量設定部材の歯車は、ハウジングの外側を延びる用量設定部材の作動ホイールに平行に配向される。用量設定部材の歯車は、好ましくは、用量設定部材の径方向に延びる軸に対して回転可能である。
【0038】
歯車は、用量設定部材と一体形成され、したがって、用量設定部材に組み込まれる。歯車がやはり駆動スリーブと一体形成された駆動スリーブのクラウン歯車と直接的に係合するので、用量設定部材と駆動スリーブとの直接の相互係合が実現される。このようにして、互いに相互作用する駆動機構の様々な構成要素間の公差チェーンおよびメカニカルパスがかなり短くなるように維持され、それにより、ユーザに直接のフィードバックが与えられ、用量の正確な設定および調節が可能になる。
【0039】
用量設定部材の歯車が駆動スリーブのクラウン歯車と直接的に係合するので、径方向の軸周りで回転する用量設定部材の角運動量が、軸方向に延びる長手方向軸周りを回転する駆動スリーブのそれぞれの角運動量に直接的に伝達される。
【0040】
したがって、駆動スリーブのクラウン歯車との用量設定部材の歯車の直接かつ相互の相互作用によって、駆動機構内の角運動量の方向が径方向から軸方向に、たとえば約90度、偏向される。
【0041】
さらなる実施形態では、ハウジングに固定して取り付けられ、用量設定部材の中空軸を支持するように径方向外側に延びるソケット部分を有する、支持部材が提供される。支持部材は、典型的には、ハウジングの近位のレセプタクル中に配置されることになる。好ましくは、支持部材およびハウジング部材は、相互に係合する溝または掛止要素によって相互に固定され、それにより、支持部材が軸方向にならびに円周方向または接線方向にハウジングに対して固定される。
【0042】
支持部材は、用量設定部材のための回転式の支持部として働く。そのために、支持部材は、用量設定部材の中空軸と係合する、径方向外側に延びるソケット部分を含む。ここでは、支持部材のソケット部分は、ハウジングから径方向に突出できない。したがって、支持部材の径方向外側に延びるソケット部分は、チューブ状のハウジング内に完全に配置され、用量設定部材によってカバーされるようにハウジングの貫通口と面一にすることができる。
【0043】
上記で言及した支持部材と用量設定部材との相互係合の代わりに、支持部材が、用量設定部材の対応する形状の軸を受けるように適用された径方向内側に延びるレセプタクルを含むことも考えられる。典型的には、用量設定部材は、径方向に延びる回転軸に沿って支持部材に対して回転可能である。好ましくは、用量設定部材の前記軸または支承部を形成するのは、径方向外側に延びるソケット部分である。好ましくは、支持部材と用量設定部材とはねじ係合されず、そのため、たとえば用量増分方向または用量減分方向に回されるときに用量設定部材は径方向にずれていない。
【0044】
別の好ましい態様によれば、支持部材はさらに、用量注射部材を摺動可能に受けるために、軸方向に延びるレセプタクルを近位端に含む。支持部材、特に、そのレセプタクル、および用量注射部材は、たとえば相互に対応し径方向に延びる溝および突起によって、回転的に固定される。用量注射部材は支持部材にスプライン係合される(splined)。支持部材は、たとえば、対応する形状の径方向に延びる突起を受ける軸方向に延びる溝を少なくとも1つ含むことができ、そうすることで、用量注射部材が軸方向に摺動可能に支持されるが、支持部材に対して回転的に固定される。
【0045】
好ましくは、支持部材および用量注射部材の回転可能な固定は、径方向外側に延びる用量注射部材のロッキング部材またはキャッチ部材によって実現される。その部材は、支持部材の対応する形状の軸方向に延びる溝内に軸方向に摺動可能に配設される。好ましくは、前記溝は近位方向に開かれており、それにより、駆動機構を組み立てるときに用量注射部材を遠位方向に支持部材中に挿入することが可能になる。
【0046】
このようにして、ロッキング部材は2つの機能を果たす。一方で、ロッキング部材は、用量設定部材と回転可能にインターロックするように働き、他方で、用量注射部材自体が支持部材に対して長手方向軸周りを回転することを抑止する。さらに、支持部材および用量注射部材は、たとえば、軸方向に延びる用量注射部材の軸部分の外周上に設けられたスナップ機能によって軸方向に固定される。それに応じて、支持部材は、典型的には、たとえば、径方向外側に延びる用量注射部材のスナップ要素または掛止要素を受ける窪んだ部分を含む。
【0047】
さらなる好ましい実施形態によれば、最終用量リミット部材が、支持部材のソケット部分と用量設定部材の中空軸との間に配置される。好ましくは、中空軸ならびにソケット部分は円形の形状を含む。最終用量リミット部材は、特に、ソケット部分と中空軸との間に挟まれる。
【0048】
最終用量リミット部材はさらに、中空軸が、したがって、用量設定部材がソケット部分に対して回転すると、用量リミット部材がソケット部分に沿って、したがって、ハウジングの形状全体に対して径方向内側または径方向外側に変位するようにして、ソケット部分および中空軸に係合される。この文脈では、径方向の変位はソケット部分の長手方向軸に沿った変位に相当する。
【0049】
特に、最終用量リミット部材は、ソケット部分とねじ係合され、中空軸に対して回転的に固定され摺動可能に変位可能である。このようにして、中空軸がソケット部分に対して回転すると、用量リミット部材がソケット部分の周りを追従し、それにより、ソケット部分の雄ねじ山をたどる。この実施形態では、最終用量リミット部材は、ソケット部分の雄ねじ山と嵌合する、対応する形状のねじ付部分を含む。
【0050】
代替の実施形態では、最終用量リミット部材は、中空軸とねじ係合され、ソケット部分に回転的に固定され摺動可能に変位可能である。ここでは、内側に向いた中空軸の側壁は用量リミット部材とねじ係合され、用量リミット部材はソケット部分にスプライン係合される。次いで、ソケット部分に対して中空軸が、したがって、用量設定部材が回転すると、ソケット部分に対して用量リミット部材が径方向に変位することになる。
【0051】
支持部材またはハウジングに関する用量設定部材の回転は、用量設定モードのときにのみ可能になり可能であるので、最終用量リミット部材は、用量設定中または用量修正手順中にのみ中空軸に対して変位する。用量を投薬する間には、用量設定部材が、したがって、その中空軸が、押し下げられた用量注射部材のロッキング部材によって回転的にロックされ固定されるので、最終用量リミット部材は静止したままである。
【0052】
必然的に、最終用量リミット部材がソケット部分に沿って移動できる行程経路は最大距離に適用され関連付けられ、駆動機構のピストンロッドは連続的な用量投薬手順中に遠位方向に前進することができる。それに応じて、最終用量リミット部材と支持部材のソケット部分とのねじ係合ならびにソケット部分の延長部分は、カートリッジのサイズおよびその中に含む薬剤の量と合致するためにそれに応じて設計および選択される。さらに、支持部材のソケット部分に関する最終用量リミット部材の位置は、ピストンロッドの軸方向の位置に、したがって、駆動機構のピストンロッドと動作可能に係合されたカートリッジのピストンの軸方向の位置にはっきりと関連付けられ、常にそれに対応する。
【0053】
さらなる好ましい実施形態では、最終用量リミット部材は、ゼロ用量リミット止め具と最終用量リミット止め具との間にのみソケット部分に沿って変位可能である。好ましくは、ゼロ用量リミット止め具ならびに最終用量リミット止め具は、ソケット部分の反対側の端部からまたは中空軸の反対側の端部から径方向に延びる。好ましくは、ゼロ用量リミット止め具および最終用量リミット止め具は、最終用量リミット部材と、ソケット部分および中空軸との相互係合が実装される方法に応じて、ねじ付ソケット部分からまたは用量リミット部材のねじ山付き中空軸から径方向に延びる。
【0054】
ゼロ用量リミット止め具ならびに最終用量リミット止め具は、典型的には、ソケット部分の外部ねじ付部分の端部で径方向外側に延びる。このようにして、ソケット部分の周りまたは中空軸周りの最終用量リミット部材の旋回(revolve)運動は、最終用量リミット部材がゼロ用量リミット止め具とまたは最終用量リミット止め具のいずれかと径方向に当接するときに、阻止され範囲が定められる。典型的には、デバイスが組み立てられた後で、最終用量リミット部材がゼロ用量リミット止め具と当接した状態に配設される。このようにして、用量減分方向の用量設定部材の回転が事実上阻止される。したがって、初期のデバイス構成では、用量設定部材は、用量増分方向にのみ回すことができ、それにより、ゼロ用量リミット止め具から離れる方に最終用量リミット部材が変位する。
【0055】
カートリッジのピストンがほとんど遠位端に到達するときにカートリッジ内の薬剤がほぼ使い果たされる場合は、最終用量リミット部材は、最終用量リミット止め具の近位に位置する。このような構成では、用量設定部材は、最終用量リミット部材が最終用量リミット止め具と当接するまで用量増分方向に回される。最終用量リミット部材が最終用量リミット止め具と係合すると、中空軸の、したがって、用量設定部材のさらなる回転が事実上阻止され、カートリッジ内に残る薬剤量を越える用量の設定が事実上防止される。
【0056】
さらに、用量設定部材が最終用量リミット部材と直接的に係合され、支持部材のソケット部分、したがって、ハウジングに関する最終用量リミット部材の回転が最終用量止め具によって阻止されるので、駆動機構が最終用量リミット構成に到達するときに、かなり直接的かつ頑強なフィードバックがデバイスのユーザによってもたらされる。
【0057】
最終用量スリーブを用量設定部材と直接係合させることによって、最終用量リミット機構の公差チェーンは相当に短くなり、様々な機能的かつ相互に係合する駆動機構の構成要素間の避けられない機械公差および機械的遊びのネガティブな影響が最小限に抑えられる。
【0058】
別の実施形態によれば、駆動スリーブは、ハウジングの内側とねじ係合された用量標示スリーブと回転可能かつ軸方向に摺動可能に係合される。好ましくは、用量標示スリーブは、少なくとも部分的に駆動スリーブを収容する。特に、軸方向では、用量標示スリーブが少なくとも部分的に駆動スリーブの外周の周りに配置される。駆動スリーブおよび用量標示スリーブはスプライン係合され、そうすることで、駆動スリーブの回転が、用量標示スリーブの対応する回転に直接的に伝達可能である。
【0059】
駆動スリーブと用量標示スリーブとの相互係合はさらに、用量標示スリーブが駆動スリーブに沿って軸方向に摺動することを可能にする。用量標示スリーブがハウジングの内側とねじ係合されているので、駆動スリーブが回転すると、それに対応して用量標示スリーブが回転し、用量標示スリーブは、ハウジングとのそのねじ係合により、螺旋またはねじ様の運動を受ける。用量標示スリーブの外側は、駆動機構によって実際に設定された用量を示す連続の番号を備える。駆動スリーブの回転の程度に応じて、用量標示スリーブのそれぞれの数字がハウジングの用量標示窓内に現れる。
【0060】
さらに、用量標示スリーブは、ハウジングの内側上に位置する単回用量リミット止め具と当接する軸方向の一端部に止め具を少なくとも1つ含む。ハウジングの単回用量リミット止め具は、典型的には、ゼロ用量構成または最大用量構成に到達したときに円周方向または接線方向に作用する駆動スリーブとハウジングとの相互の当接を可能にし支持するように、軸方向に延びる。それに応じて、用量標示スリーブの軸方向の一端部に設けられた少なくとも1つの止め具が、ハウジングの内側にある対応する形状の単回用量リミット止め具との直接の円周方向または接線方向の当接するように軸方向に延びる。
【0061】
駆動機構が用量投薬モードにあるか用量設定モードにあるかに関係なく、用量標示スリーブと駆動スリーブとは回転的に固定される。したがって、用量増分または用量減分のいずれかのための駆動スリーブの旋回運動または転回運動は、用量標示スリーブのそれぞれの回転に等価に伝達される。典型的には、駆動機構は、用量設定手順中、一方向に、たとえば時計回りに回転し、用量注射中は、たとえば反対方向に回転する。それに応じて、用量標示スリーブの外側に設けられハウジングの用量標示窓を通して視認可能な数字は、それぞれ用量設定中および用量投薬中にカウントアップまたはカウントダウンされる。
【0062】
別の実施形態によれば、駆動スリーブは、駆動スリーブの周りを延びるつる巻ばねによって、ハウジングに対して回転可能に付勢される。つる巻ばねは、一端部で駆動スリーブと連結され、つる巻ばねの別の端部は、好ましくは、ハウジングと連結および接続される。このようにして、駆動スリーブは、用量を設定するために、つる巻ばねの作用に抗してハウジングに対して回転可能に支持される。
【0063】
駆動スリーブのこのような回転およびばね付勢の変位は、好ましくは、ラチェット部材を少なくとも1つ有する駆動スリーブのラチェット機構によって、ハウジングの歯付きプロフィルまたは歯付き面と係合して駆動スリーブの制御されていない逆方向の回転を防止することによって実現および制御される。典型的には、駆動スリーブは、弾性変形可能な円弧形のラチェット部材を含み、ラチェット部材は、駆動スリーブの外周に沿って延び、ハウジングの内壁上に設けられた対応する形状の歯付き面と嵌合し径方向外側に延びるラチェット歯またはノーズを有する。
【0064】
代替方法として、ハウジングはまた、駆動スリーブの外周にある歯車状または歯付きのプロフィルと係合する、径方向に弾性変形可能なラチェット部材を備える。
【0065】
このようにして、駆動スリーブは、歯付き面のサイズによって左右される通りに、段階的に用量増分方向に回転される。さらに、駆動スリーブを用量増分するように回すかたまは回転させることは、ラチェット部材が歯付きプロフィルと噛み合うことによって発生する可聴クリック音を伴う。
【0066】
ハウジングの歯付きプロフィルとの駆動スリーブのラチェット部材の相互係合はさらに、たとえば反対方向に駆動スリーブを回転させることによってユーザが設定された用量のサイズを修正することもできるようにして設計される。しかし、このような修正するための反対向きの駆動スリーブの回転のために、逆方向の修正力の印加は用量設定部材に実行されることになり、これは、ラチェット部材と歯付き面との相互の係合によりもたらされる保持力より大きい。
【0067】
所定の力のレベルを超える逆方向の修正力を加えることとは関係なしに、ここでは、ラチェット機構を一時的に無効する他の用量修正機構も考えられる。
【0068】
さらなる実施形態によれば、ピストンロッドは、ハウジングに軸方向に固定されハウジング内に回転可能に支持された駆動ナットとねじ係合される。好ましくは、駆動ナットと駆動スリーブとはピストンロッドを中心に同心である。駆動ナットは、駆動スリーブの遠位端から遠位に位置し、好ましくは、ハウジング内に軸方向に固着される。ピストンロッドは、典型的には、ハウジングまたはインサートにスプライン係合されており、インサートは、ハウジングに固定して取り付けられハウジング内に位置し、貫通口を有する径方向内側に延びるフランジまたはウェブを形成する。その貫通口を通ってピストンロッドが軸方向に延びることができる。
【0069】
さらに、駆動スリーブは、用量注射位置にあるときは駆動ナットと回転的に係合され、駆動スリーブと駆動ナットとは、駆動スリーブがその用量設定位置にあるときは係合解除される。
【0070】
ここで、インサートがハウジングに固定され不動化させていることに言及すべきである。インサートは、ハウジング内に組み付けられる別個の構成要素として設けられる。代替方法として、インサートとハウジングとは一体形成される。したがって、本明細書でハウジングに関する言及はいずれもハウジングに等価に有効であり、その逆も同様である。
【0071】
ハウジングまたはそれぞれのインサートのフランジまたはウェブの貫通口は、径方向内側に延びる突起を少なくとも1つ含み、その突起は、ピストンロッドの少なくとも1つの軸方向に細長い溝と嵌合および係合する。その結果、ピストンロッドは、ハウジングに回転的に固定され、ハウジングに対して回転することが事実上妨げられる。したがって、ハウジングに関するピストンロッドの遠位方向の変位は、ピストンロッドとねじ係合された、回転する駆動スリーブによって達成される。
【0072】
駆動ナットは、好ましくは、ハウジングに対して一方向にのみ自由に回転し、これは用量設定手順に相当し、その用量設定手順中にピストンロッドは遠位方向に押しやられる。したがって、駆動ナットは別のラチェット機構を備え、別のラチェット機構は駆動スリーブのラチェット機構と比べて反対に動作する。駆動ナットのラチェット機構は、ハウジングに関する駆動ナットの投薬に関係のある回転のみ可能にするが、逆方向の回転を防止する。同様にして、駆動ナットのラチェット機構は、たとえば、駆動ナットの外周において接線方向または円周方向に延びる円弧形のラチェット部材を含むこともできる。
【0073】
ここでも、ラチェット部材はラチェット歯を含むことができ、そのラチェット歯は、ハウジングのまたは対応するインサートの側壁の内側に面した部分にある、対応する形状の歯付き面と弾性的に係合する。
【0074】
代替方法として、ハウジングまたはインサートは、径方向に弾性変形可能なラチェット部材を備え、そのラチェット部材は、駆動ナットの外周にある歯車状または歯付きプロフィルと係合する。
【0075】
設定された用量の投薬のために、駆動スリーブと駆動ナットとを回転的に係合させるために駆動スリーブがハウジングに対して軸方向に変位可能であることが意図されている。ここでは、駆動スリーブの遠位端または遠位面は、駆動ナットの反対側、したがって、近位面と回転的に係合するように適用されている。したがって、駆動ナットおよび駆動スリーブは、用量投薬手順中に駆動スリーブから駆動ナットに角運動量を伝達するために、相互に対応し軸方向に延びる、クラウン歯車などのポジティブ(positive)ロッキング手段を含む。
【0076】
典型的には、駆動スリーブは、1つまたはいくつかのばね要素によってハウジングに対して軸方向に付勢される。用量設定手順の終了後に駆動スリーブが遠位方向のそれぞれのばね力に抗して変位する場合は、まず、駆動ナットと回転的に係合することができ、次いで、連続してハウジングから回転的に係合解除することができる。したがって、駆動スリーブの遠位方向の変位により、ラチェット機構を係合解除することができ、ラチェット機構によって、駆動スリーブがハウジングに回転的にロックされる。このような解放構成が得られると、駆動スリーブは、つる巻ばねを弛緩させる影響によりハウジングに対して自由に回転する。
【0077】
この解放構成では駆動スリーブが駆動ナットと動作可能かつ回転的に係合されるので、それに応じて駆動ナットは回転することができ、それにより、ピストンロッドを遠位方向に前進させる。駆動ナットのラチェット機構が駆動スリーブのラチェット機構と比べて逆向きに動作することに留意されたい。ここでも、用量投薬中の駆動ナットの回転は、そのラチェット部材が対応する形状の歯付きプロフィルと噛み合うことによって発生する連続的なクリック音を伴う。
【0078】
別の態様によれば、本発明は、ある用量の薬剤の投薬のための薬物送達デバイスにも関する。薬物送達デバイスは、上記で説明したような駆動機構および薬物送達によって投薬される薬剤で少なくとも部分的に充填されたカートリッジを含む。カートリッジは、たとえば使い捨ての薬物送達デバイスの場合は解放可能または解放不能のいずれかにハウジングに固定される、駆動機構のハウジングまたは薬物送達デバイスのカートリッジホルダ内に配置される。その結果、薬物送達デバイスは、薬剤で充填されたカートリッジを受けそれを収容するカートリッジホルダを含む。
【0079】
それとは別に、薬物送達デバイスおよび駆動機構は、用量注射部材など、さらなる機能的構成要素を含むことができ、その用量注射部材によって、ユーザが、ある用量の薬剤の投薬のための薬物送達デバイスおよびその駆動機構をトリガさせ制御することができる。
【0080】
本文脈では、遠位方向は、投薬の方向およびデバイスの方向を指し、好ましくは、薬剤送達のために生物学的組織または患者の皮膚に挿入される二重先端の注射ニードルを有するニードルアセンブリが設けられる。
【0081】
近位端または近位方向は、デバイスまたはその構成要素の、投薬端部から最も離れた方の端部を指す。典型的には、作動部材は薬物送達デバイスの近位端に位置し、用量を設定するために回転されるようにユーザによって直接動作可能であり、用量の投薬のために遠位方向に押し下げられるように動作可能である。
【0082】
軸方向は、典型的には、ハウジングの長手方向または長手方向の延長と一致し、径方向は、典型的には軸方向または長手方向に垂直に延びる横方向または横切る方向と一致する。
【0083】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0084】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0085】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0086】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0087】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0088】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0089】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0090】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0091】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0092】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0093】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0094】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0095】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0096】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0097】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0098】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0099】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0100】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく本発明に様々な修正および変更が実行されることが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲に用いられる参照符号はいずれも本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではないことに留意されたい。
【0101】
以下では図面の簡単な説明を行う。