特許第6466089号(P6466089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6466089
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】チョコレート
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/32 20060101AFI20190128BHJP
   A23G 9/00 20060101ALN20190128BHJP
【FI】
   A23G1/32
   !A23G9/00
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-122970(P2014-122970)
(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公開番号】特開2016-2016(P2016-2016A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397059157
【氏名又は名称】大東カカオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柳川 由佳
(72)【発明者】
【氏名】春成 麻未
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勉
【審査官】 竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−289147(JP,A)
【文献】 特開2013−143926(JP,A)
【文献】 特開平04−173055(JP,A)
【文献】 特開2002−209525(JP,A)
【文献】 特開平05−049399(JP,A)
【文献】 特開平02−000700(JP,A)
【文献】 五訂 日本食品標準成分表、初版二刷、独立行政法人国立印刷局、平成16年1月9日、254〜255頁
【文献】 油化学、1991年、40巻、9号、719〜724頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−9/52
A23D 7/00−9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂を35〜75質量含有し、チョコレートに含まれる油脂が下記(a)から(e)の条件を満たすチョコレートであって、該チョコレートが含気泡チョコレート用であるチョコレート。
(a)X3含量が3質量%以下
(b)X2U含量が20〜39質量%
(c)P2U含量が5〜25質量%
(d)XU2+U3含量が58〜75質量%
(e)P/Stの質量比が0.8〜3.0
上記の(a)から(e)の条件において、X、U、P、St、X3、X2U、P2U、XU2、U3、はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16〜18の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
P2U:Pが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
【請求項2】
冷菓用である請求項1に記載のチョコレート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のチョコレートをホイップした含気泡チョコレート。
【請求項4】
冷菓用である請求項3に記載の含気泡チョコレート。
【請求項5】
前記含気泡チョコレートを冷凍した請求項3又は請求項4に記載の含気泡チョコレート。
【請求項6】
請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の含気泡チョコレートと、冷菓を組み合わせた複合菓子。
【請求項7】
油脂を35〜75質量含有し、チョコレートに含まれる油脂が下記(a)から(e)の条件を満たすチョコレートを、チョコレートの温度が17〜23℃でホイップすることを特徴とする含気泡チョコレートの製造方法。
(a)X3含量が3質量%以下
(b)X2U含量が20〜39質量%
(c)P2U含量が5〜25質量%
(d)XU2+U3含量が58〜75質量%
(e)P/Stの質量比が0.8〜3.0
上記の(a)から(e)の条件において、X、U、P、St、X3、X2U、P2U、XU2、U3、はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16〜18の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
P2U:Pが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
【請求項8】
前記チョコレートを、融解させることなくホイップすることを特徴とする請求項7に記載の含気泡チョコレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイップして使用される用途及び冷菓用途に適したチョコレート及び該チョコレートをホイップした冷菓用途に適した含気泡チョコレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にエアインチョコレート、ホイップチョコレート等と言われる含気泡チョコレートは、気泡を含んでいるため、軽い食感や口溶けの良さが特徴である。含気泡チョコレートは、軽い食感や口溶けの良さから、嗜好性の高いチョコレートとして消費者に好まれている商品の一つである。また、含気泡チョコレートは、冷凍すると面白い食感となるため、冷凍したものを食することもある。冷凍した含気泡チョコレートは、チョコレート単独だけではなく、アイスクリーム等の冷菓と組み合わせることも多い。
【0003】
含気泡チョコレートの製造方法としては、様々な方法が提案されており、例えば、ホイップしたホイップクリームにチョコレート成分(カカオマス、ココアパウダー、チョコレート等)を添加する方法(例えば、特許文献1)やチョコレート成分を含むホイップクリームをホイップする方法(例えば、特許文献2)等が挙げられる。しかしながら、これらの方法で得られる含気泡チョコレートは、含気泡チョコレートというよりはチョコレート風味を有するホイップクリームである。ホイップクリームは、水中油型乳化物をホイップさせたものであり、水性成分をベースとするものであることから、通常、油性成分であるチョコレート成分を多く配合することができない。従って、これらの方法で得られるチョコレート風味を有するホイップクリームは、チョコレート風味が乏しいものであり、チョコレート風味の強い商品が求められる場合には、風味の面で物足りないものであった。更に、これらの方法はホイップクリームにチョコレート成分を添加する又は練り込む工程が必要であり、手間が掛かるという製造面での課題があった。
【0004】
その他にも含気泡チョコレートの製造方法としては、例えば、ホイップしたバタークリームにチョコレート成分(カカオマス、ココアパウダー、チョコレート等)を添加する方法(例えば、特許文献3)等も挙げられる。しかしながら、これらの方法で得られる含気泡チョコレートも、含気泡チョコレートというよりはチョコレート風味を有するバタークリームである。バタークリームは、油中水型乳化物又はショートニングをホイップさせたものであり、油性成分をベースとすることから、ホイップクリームよりはチョコレート成分を配合することはできるが、その量はチョコレートと比較すると少ない。従って、この方法で得られるチョコレート風味を有するバタークリームは、依然としてチョコレート風味が乏しいものであり、チョコレート風味のより強い商品が求められる場合には、風味の面で物足りないものであった。更に、この方法もバタークリームにチョコレート成分を添加する工程が必要であり、手間が掛かるという製造面での課題があった。
【0005】
更にその他にも含気泡チョコレートの製造方法としては、特定の油脂や特定の乳化剤を配合する等によって起泡性を有するようになったチョコレート自体を直接ホイップする方法(例えば、特許文献4〜7)等が挙げられる。これらの方法で得られる含気泡チョコレートはチョコレート自体をホイップしているため、チョコレート風味が豊かなものである。しかしながら、これらの含気泡チョコレートは、いずれもチョコレートを融解させてからホイップする必要があり、手間が掛かるという製造面での課題があった。従って、チョコレートを融解させることなく、ホイップすることのできるチョコレートが求められていた。
更に、含気泡チョコレートの製造において、チョコレート自体を直接ホイップする場合は、作業性の面では通常の室温の作業環境下でホイップできることも重要である。また、ホイップしたチョコレートは、絞り袋等で成形して使用することが多いため、成形後の気泡が壊れにくく、保形性が良いことも重要である。また、ホイップしたチョコレートを冷凍して使用する場合、ホイップしたチョコレートは、冷凍した状態で食されることが多いため、冷凍した状態での口溶けが良いことも重要である。
【0006】
以上のような背景から、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのでき、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けの良いチョコレートの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−116331号公報
【特許文献2】特開昭62−248454号公報
【特許文献3】特開昭63−28355号公報
【特許文献4】特開平3−201946号公報
【特許文献5】国際公開第00/57715号
【特許文献6】国際公開第2002/76225号
【特許文献7】特開2004−8114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのでき、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けの良いチョコレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、チョコレートに含まれる油脂中に特定のトリグリセリド及び特定の脂肪酸を特定量含有させると、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのでき、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けの良いチョコレートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明は、油脂を35〜75質量含有し、チョコレートに含まれる油脂が下記(a)から(e)の条件を満たすチョコレートであって、該チョコレートが含気泡チョコレート用であるチョコレートである。
(a)X3含量が3質量%以下
(b)X2U含量が20〜39質量%
(c)P2U含量が5〜25質量%
(d)XU2+U3含量が58〜75質量%
(e)P/Stの質量比が0.8〜3.0
上記の(a)から(e)の条件において、X、U、P、St、X3、X2U、P2U、XU2、U3、はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16〜18の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
P2U:Pが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
本発明の第2の発明は、冷菓用である第1の発明に記載のチョコレートである。
本発明の第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載のチョコレートをホイップした含気泡チョコレートである。
本発明の第4の発明は、冷菓用である第3の発明に記載の含気泡チョコレートである。
本発明の第5の発明は、前記含気泡チョコレートを冷凍した第3の発明又は第4の発明に記載の含気泡チョコレートである。
本発明の第6の発明は、第3の発明〜第5の発明の何れか1つの発明に記載の含気泡チョコレートと、冷菓を組み合わせた複合菓子である。
本発明の第7の発明は、油脂を35〜75質量含有し、チョコレートに含まれる油脂が下記(a)から(e)の条件を満たすチョコレートを、チョコレートの温度が17〜23℃でホイップすることを特徴とする含気泡チョコレートの製造方法である。
(a)X3含量が3質量%以下
(b)X2U含量が20〜39質量%
(c)P2U含量が5〜25質量%
(d)XU2+U3含量が58〜75質量%
(e)P/Stの質量比が0.8〜3.0
上記の(a)から(e)の条件において、X、U、P、St、X3、X2U、P2U、XU2、U3、はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16〜18の飽和脂肪酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド
X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
P2U:Pが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
本発明の第8の発明は、前記チョコレートを、融解させることなくホイップすることを特徴とする第7の発明に記載の含気泡チョコレートの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのでき、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けの良いチョコレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が下記(a)から(e)の条件を満たすものである。
チョコレートに含まれる油脂が下記(a)から(e)の条件を満たすチョコレート。
(a)X3含量が3質量%以下
(b)X2U含量が20〜39質量%
(c)P2U含量が5〜25質量%
(d)XU2+U3含量が58〜75質量%
(e)P/Stの質量比が0.8〜3.0
【0013】
本発明においてチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではなく、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、調温工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造され、油脂が連続相をなし、実質的に水を含まない(水分含量が好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。)食品のことである。また、本発明におけるチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレートの他に、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートも含むものである。
また、本発明においてチョコレートに含まれる油脂とは、チョコレート中の全油脂分のことであり、配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー等)中の油脂(ココアバター等)も含むものである。
また、本発明において含気泡チョコレートとは、気泡を含むチョコレートのことである。含気泡チョコレートは、エアインチョコレート、ホイップチョコレートと言うこともある。
【0014】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のX3含量(条件(a))が3質量%以下であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。X3含量が前記範囲にあると、チョコレートは、室温の作業環境下で直接ホイップすることができ、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けが良いものとなる。
なお、本発明において、X3とは、Xが3分子結合しているトリグリセリドのことである。また、本発明において、Xは炭素数16〜18の飽和脂肪酸である。また、トリグリセリドとは、グリセロールに3分子の脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールのことである。
なお、本発明において室温とは、17〜23℃のことである。また、本発明において保形性とは、含気泡チョコレートの経時的な形崩れのし難さのことである。
【0015】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のX2U含量(条件(b))が20〜39質量%であり、好ましくは23〜38質量%であり、より好ましくは25〜38質量%である。X2U含量が前記範囲にあると、チョコレートは、室温の作業環境下で直接ホイップすることができ、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けが良いものとなる。なお、本発明において、X2Uとは、Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド(XXU+XUX+UXX)のことである。また、本発明において、Uは炭素数18の不飽和脂肪酸である。
【0016】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のP2U含量(条件(c))が5〜25質量%であり、好ましくは7〜22質量%であり、より好ましくは8〜20質量%である。P2U含量が前記範囲にあると、チョコレートは、室温の作業環境下で直接ホイップすることができ、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けが良いものとなる。なお、本発明において、P2Uとは、Pが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド(PPU+PUP+UPP)のことである。また、本発明において、Pはパルミチン酸(炭素数16の直鎖飽和脂肪酸)である。
【0017】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のXU2+U3含量(XU2とU3の合計含量)(条件(d))が58〜75質量%であり、好ましくは58〜74質量%であり、より好ましくは59〜73質量%である。XU2+U3含量が前記範囲にあると、チョコレートは、室温の作業環境下で直接ホイップすることができ、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けが良いものとなる。なお、本発明において、XU2はXが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド(XUU+UXU+UUX)である。また、本発明において、U3はUが3分子結合しているトリグリセリドである。
【0018】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂の構成脂肪酸中のP/Stの質量比(条件(e))が0.8〜3.0であり、好ましくは0.9〜2.7であり、より好ましくは1.0〜2.5である。構成脂肪酸中のP/Stの質量比が前記範囲にあると、チョコレートは、室温の作業環境下で直接ホイップすることができ、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けが良いものとなる。なお、本発明において、P/Stの質量比は、St含量(質量%)に対するP含量(質量%)の比のことである。また、本発明において、Stはステアリン酸(炭素数18の直鎖飽和脂肪酸)である。
【0019】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のXU2含量が好ましくは20〜40質量%であり、より好ましくは23〜38質量%であり、更に好ましくは25〜35質量%である。
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のU3含量が好ましくは25〜45質量%であり、より好ましくは28〜42質量%であり、更に好ましくは30〜40質量%である。
【0020】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂の構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が好ましくは4質量%未満であり、より好ましくは3質量%未満であり、更に好ましくは1質量%未満である。
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂の構成脂肪酸中の炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量が好ましくは25〜40質量%であり、より好ましくは28〜38質量%であり、更に好ましくは30〜35質量%である。
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂の構成脂肪酸中の飽和脂肪酸含量が好ましくは25〜40質量%であり、より好ましくは28〜38質量%であり、更に好ましくは30〜36質量%である。
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂の構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸含量が好ましくは60〜75質量%であり、より好ましくは63〜73質量%であり、更に好ましくは64〜70質量%である。
【0021】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂の固体脂含量(以下、SFCとする。)が好ましくは10℃で15〜35%、15℃で13〜35%、20℃で8〜27%、25℃で10%以下であり、より好ましくは10℃で17〜32%、15℃で14〜33%、20℃で9〜26%、25℃で9%以下であり、更に好ましくは10℃で19〜31%、15℃で15〜29%、20℃で10〜22%、25℃で8%以下である。
【0022】
本発明の実施の形態に係るチョコレートの原料油脂は、油脂中のトリグリセリドの含量、脂肪酸含量等が前記範囲であれば、特に制限されることなく、通常の食用油脂を使用することができる。食用油脂としては、パーム油、パーム分別油(パーム分別軟質油(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、パーム中融点部、パーム分別硬質油(パームステアリン等)等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、ヤシ油、パーム核油、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、ココアバター等やこれらの混合油、加工油脂等が挙げられる。
本発明の実施の形態に係るチョコレートの油脂中のトリグリセリド含量、脂肪酸含量は、例えば、ココアバター、パーム分別油、液状油を使用することで調整することができる。
【0023】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂中に好ましくはココアバターを含有する。本発明において、油脂中のココアバターは、添加するココアバターの他に、添加するカカオマス、ココアパウダーに含まれるココアバターも含む。
【0024】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂中に好ましくはパーム分別油を含有する。本発明においてパーム分別油は、パーム油を1回又は複数回分別して得られる油脂のことである。本発明で使用するパーム分別油は、好ましくはヨウ素価40〜70のパーム分別油であり、より好ましくはヨウ素価53〜67のパーム分別軟質油(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、ヨウ素価40〜50のパーム中融点部である。なお、本発明で使用するパーム分別油は、5℃で固形状の油脂である。
【0025】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂中に好ましくは液状油を含有する。本発明において液状油は、5℃で液状の油脂のことである。また、本発明で使用する液状油は、好ましくは5℃で透明性を有する。
本発明で用いる液状油の具体例としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油やこれらの油脂のエステル交換、分別等の加工処理したものも用いることができる。これらの液状油は、1種又は2種以上を混合して用いることもできる。本発明で用いる液状油は、好ましくは大豆油である。
【0026】
本発明の実施の形態に係るチョコレートの油脂中には、好ましくはココアバターを10〜40質量%、パーム分別油を1〜40質量%、液状油を40〜73質量%含有し、より好ましくはココアバターを13〜38質量%、パーム分別油を2〜38質量%、液状油を43〜70質量%含有し、更に好ましくはココアバターを15〜35質量%、パーム分別油を3〜35質量%、液状油を45〜68質量%含有する。ココアバター、パーム分別油、液状油の含量が前記範囲にあると、チョコレートは、室温の作業環境下で直接ホイップすることができ、かつ、ホイップ後の保形性及び口溶けが良いものとなる。
【0027】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂含量が好ましくは35〜75質量%、より好ましくは40〜70質量%、更に好ましくは45〜65質量%である。
【0028】
トリグリセリド組成の分析は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)準拠)を用いて行うことができる。
油脂の構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)を用いて行うことができる。
油脂のSFCは、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.2.9−2003 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定することができる。
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」に準じて測定することができる。
【0029】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、好ましくは糖類を含有する。糖類としては、例えば、ショ糖(砂糖、粉糖)、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、液糖、酵素転化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖ポリデキストロース、オリゴ糖、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース、デキストリン等を使用することができる。
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、糖類含量が好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは13〜45質量%であり、更に好ましくは15〜40質量%である。
【0030】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂、糖類以外にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳製品、カカオマス、ココアパウダー等のカカオ成分、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、レシチン、リゾレシチン、酵素分解レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料等を挙げることができる。
【0031】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、ホイップ前の室温での性状が好ましくは半固形状又は固形状であり、より好ましくは半固形状である。
【0032】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、従来公知の方法により製造することができる。本発明の実施の形態に係るチョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖類、乳化剤等を原料として、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)等を経て製造することができる。本発明の実施の形態に係るチョコレートは、好ましくは微粒化工程を経て製造する。
【0033】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、好ましくはホイップして使用されるものである。すなわち、本発明の実施の形態に係るチョコレートは、含気泡チョコレートの用途に適したものである。なお、本発明においてホイップとは、泡立てる、エアインする等によってチョコレートに気泡を抱き込ませることである。
また、本発明の実施の形態に係るチョコレートは、好ましくは冷菓用として使用する。
【0034】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下でチョコレートを直接ホイップすることのできるものである。本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートを融解させることやチョコレートを他の食品(ホイップクリーム、バタークリーム等)に混合させることが必要ないため、作業性の良いものである。また、本発明の実施の形態に係るチョコレートは、基本的にはホイップ時に冷却等の調温が不要であるため、作業性の良いものである。
【0035】
本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートは、本発明の実施の形態に係るチョコレートをホイップしたことを特徴としている。
【0036】
本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートは、従来公知の方法により製造することができる。チョコレートをホイップする方法としては、例えば、常圧又は減圧下でミキサーにて撹拌する等が挙げられる。ミキサーは、縦型ミキサー、横型ミキサー等を使用することができる。
【0037】
本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートは、比重が好ましくは0.90以下であり、より好ましくは0.50〜0.85であり、更に好ましくは0.55〜0.80である。
【0038】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートを融解させることなくホイップすることができるため、本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートは、好ましくは本発明の実施の形態に係るチョコレートを融解させることなくホイップして製造する。また、本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートを直接ホイップすることができるため、本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートは、好ましくは他の食品(ホイップクリーム、バタークリーム等)と混合することなく製造する。
【0039】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、室温の作業環境下で直接ホイップすることができるため、本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートの製造においてホイップする時のチョコレートの温度(品温)は、好ましくは17〜23℃である。チョコレートが室温で保管等されていたものであれば、チョコレートの温度が17〜23℃になっているため、室温の作業環境下でチョコレートを調温することなくホイップすることも可能である。また、チョコレートが17℃未満又は23℃を超える温度で保管等されていた場合は、チョコレートを室温に放置する又はチョコレートの温度を17〜23℃に調温することを実施すれば、室温の作業環境下でチョコレートをホイップすることが可能である。また、チョコレートが室温で保管等されていた場合でも、チョコレートの温度を17〜23℃に調温して、室温の作業環境下でチョコレートをホイップすることも可能である。
本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートの製造においては、基本的には室温の作業環境下でチョコレートを調温することなくホイップすることが可能であるが、チョコレートの起泡力をより良くしたい場合には冷却等の調温を行うことも可能である。
なお、本発明においてホイップする時のチョコレートの温度は、ホイップ開始時の温度のことである。
【0040】
本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートは、保形性が良いものである。なお、本発明における保形性は、ホイップした後の室温での保形性のことである。
【0041】
本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートは、口溶けが良いものである。なお、本発明における口溶けは、冷凍した含気泡チョコレートを食した時の口溶けのことである。従って、本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートは、好ましくは冷菓用として使用する。
【0042】
本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートは、好ましくは冷凍する。含気泡チョコレートの冷凍は、従来公知の方法により行うことができる。含気泡チョコレートを冷凍する方法としては、例えば、冷凍庫で保管する等が挙げられる。
【0043】
本発明の実施の形態に係る複合菓子は、本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートと冷菓を組み合わせることを特徴としている。
本発明の実施の形態に係る複合菓子は、本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートと冷菓を接触させたものであれば、組み合わせる方法は特に制限されないが、組み合わせ方法としては、例えば、塗る、トッピング、被覆、挟む、注入等が挙げられる。
【0044】
本発明の実施の形態に係る複合菓子において、本発明の実施の形態に係る含気泡チョコレートと組み合わせる冷菓の具体例としては、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例になんら制限されるものではない。
【0046】
<測定方法>
トリグリセリド組成の分析は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)準拠)を用いて行った。
油脂の構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)を用いて行った。
油脂のSFCは、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.2.9−2003 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定した。
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」に準じて測定した。
【0047】
(原料油脂)
ココアバター(大東カカオ株式会社製造品)
パームオレイン(日清オイリオグループ株式会社製造品、ヨウ素価56)
パーム中融点部(日清オイリオグループ株式会社製造品、ヨウ素価45)
大豆油(日清オイリオグループ株式会社製造品、5℃で液状であり、5℃で透明性を有する)
【0048】
<チョコレートの製造及び評価>
表1、3の配合で、常法(混合、微粒化、精練)により、チョコレートを製造した(配合の単位は質量部、含量の単位は質量%、SFCの単位は%、温度の単位は℃である。)。チョコレート中の水分含量は、全ての配合で1質量%以下だった。なお、表2、4のチョコレートの油脂中の含量において、C14以下SFAは炭素数14以下の飽和脂肪酸のことであり、C16〜18SFAは炭素数16〜18の飽和脂肪酸のことである。また、表1、3のチョコレートの性状は、ホイップ前の20℃での性状である。
得られたチョコレートを融解させることなく、常圧、チョコレートの温度(品温)が表1、3の条件下で、縦型ミキサー(製品名:ホバートミキサー、型式:N−50)を用いて低速(139rpm)で30秒間攪拌した後、高速(591rpm)で2分30秒間攪拌することで含気泡チョコレートを製造した。
得られたチョコレート及び含気泡チョコレートを下記評価方法及び評価基準に従って、ホイップ適正(作業性の良さ)、保形性(経時的な形崩れのし難さ)、口溶けを評価した。評価結果を表2、4に示した。
【0049】
<ホイップ適性の評価方法>
各チョコレートのホイップした時の作業性を評価することで、ホイップ適性を評価した。ホイップ適性の評価は、◎又は○である場合を良いと判断した。
<ホイップ適性の評価基準>
◎:作業性がかなり良く、比重が軽くなる
○:作業性が良く、比重が軽くなる
△:作業性がやや悪く、比重が軽くなりにくい
×:作業性が悪く、比重が軽くならない
【0050】
<保形性の評価方法>
含気泡チョコレートを星形の口金をつけた絞り袋を使用して成形し、20℃で10分間、20分間、30分間放置した後の含気泡チョコレートの形状を目視にて確認することで、保形性を評価した。保形性の評価は、◎又は○である場合を良いと判断した。
<保形性の評価基準>
◎:形状に変化なし
○:艶が出てきて若干垂れる
×:角が無くなる
【0051】
<口溶けの評価方法>
含気泡チョコレートを星形の口金をつけた絞り袋を使用して成形し、−20℃で24時間保管した後、冷凍した状態の含気泡チョコレートの食することで、口溶けを評価した。口溶けの評価は、◎又は○である場合を良いと判断した。
<口溶けの評価基準>
◎:非常に良い
○:良い
△:悪い
×:非常に悪い
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
実施例のチョコレートは、チョコレートを融解させることなく、室温の作業環境下で直接ホイップすることのできるものであった。また、実施例の含気泡チョコレートは、保形性及び口溶けが良いものであった。
一方、比較例1〜3のチョコレートは、ホイップ適性が劣っており、ホイップ後の口溶けも満足いくものではなかった。