特許第6467573号(P6467573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6467573乳化能をもつ食品素材を製造する方法及びその食品素材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467573
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】乳化能をもつ食品素材を製造する方法及びその食品素材
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20190204BHJP
   A23L 7/00 20160101ALI20190204BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20190204BHJP
   A21D 2/08 20060101ALI20190204BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20190204BHJP
【FI】
   A23L5/00 L
   A23L7/00
   A23L29/10
   A21D2/08
   A23L17/00 101D
【請求項の数】15
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-173167(P2014-173167)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-107097(P2015-107097A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2017年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-222823(P2013-222823)
(32)【優先日】2013年10月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390021636
【氏名又は名称】塩水港精糖株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591040236
【氏名又は名称】石川県
(73)【特許権者】
【識別番号】000132172
【氏名又は名称】株式会社スギヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100102004
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 政彦
(72)【発明者】
【氏名】三國 克彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 靖
(72)【発明者】
【氏名】三輪 章志
(72)【発明者】
【氏名】早川 幸男
(72)【発明者】
【氏名】野田 實
(72)【発明者】
【氏名】吉野 信次
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭一
【審査官】 吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−292505(JP,A)
【文献】 特開2010−226966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−5/30
A23L 29/00−29/10
A23L 7/00−7/104
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉又は澱粉と、油脂を混合し、リパーゼを該穀粉又は澱粉に対して20〜50%(W/W)の水分含有率並びに5〜50%(W/W)の油脂含有率の、粉末の水分がペンジュラー域からキャピラリー域の全体が散ける「擬似粉末状態で反応させて、油脂を加水分解することにより、これら反応混合物から構成される遊離脂肪酸を含有する油脂複合体としての食品素材を製造することを特徴とする該食品素材の製造方法。
【請求項2】
穀粉又は澱粉と、油脂と、有機酸を混合し、かつ加熱処理したものを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に有機酸含有率が0〜20%(W/W)(但し、0は0超を表わす。)、かつ加熱処理したものを用いる場合の加熱処理温度が150〜300℃の条件の擬似粉末状態で反応させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
穀粉が、米粉、薄力小麦粉、又は中力小麦粉であり、澱粉が、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、粳米澱粉、糯米澱粉、トウモロコシ澱粉、糯トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、又はサゴ澱粉である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
油脂が、液状乃至半固形状の、サラダ油、ナタネ油、大豆油、パーム油、ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド油、トウモロコシ油、べに花油、オリーブ油、ごま油、又はこめ油である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
有機酸が、クエン酸、イタコン酸、DL−リンゴ酸、L−酒石酸、フマル酸、アジピン酸、グルコノラクトン、グルコン酸、乳酸フィチン酸、又は酢酸である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
加熱処理が、150〜300℃の過熱水蒸気及び伝導伝熱加熱である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
穀粉又は澱粉と、油脂を混合し、あるいは、更に、有機酸を混合し、かつ加熱処理を行った後に、リパーゼを上記擬似粉末状態で反応させて、乳化能をもつ油脂複合体としての食品素材を製造する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
穀粉又は澱粉と、油脂と、炭酸カルシウムを混合し、リパーゼを上記擬似粉末状態で反応させて、油脂を加水分解することにより、酸価(AV)を低下させた油脂複合体としての食品素材とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法で製造した油脂複合体としての食品素材に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム/カリウム塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアンモニアのアルカリ系素材やカルマグS(商品名 オリエンタル酵母工業社製、原料 ドロマイト:カルシウム、マグネシウム含有物)の一種以上を添加し、撹拌混合して、酸価(AV)を低下させた食品素材とすることを特徴とする該食品素材の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の方法で酸価(AV)を低下させた油脂複合体としての食品素材。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法で製造した油脂複合体としての食品素材を利用したことを特徴とする加工食品。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法で製造した油脂複合体としての食品素材を利用したことを特徴とするベークド製品。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法で製造した油脂複合体としての食品素材を利用したことを特徴とする水産練り製品。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法で製造した油脂複合体としての食品素材を利用したことを特徴とする麺製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂原料を擬似粉末状態で、油脂関連酵素のリパーゼで反応させ、反応物全体を食品素材として用いることを特徴とする、油脂複合体としての該食品素材の製造法とその食品素材に関するものであり、更に詳しくは、油脂原料の粉末状態を保持するために用いる粉末状態保持用素材(粉末化基材又は担体、反応の場として用いる)と反応基質(反応用原料又は基質)を混合して、適度の水分を添加し、粉末の水分がペンジュラー域からキャピラリー域の全体が散ける「擬似粉末状態」で油脂関連酵素のリパーゼを作用させて、油脂複合体としての該食品素材を製造する方法とその食品素材に関するものである。
【0002】
本明細書で用いる用語として、乳化能とは、「水中油滴(O/W)型、又は油中水滴(W/O)型エマルションにおいて、互いに溶け合わない(相溶しない)液体からなる分散液を形成する能力」を意味し、該乳化能をもつ特性を「乳化性・均一分散性」と呼称する。試験区分は、無試験(無処理)区を「Bnk」と略称し、対照試験区を「Ref」と略称し、試験区を「Exp」と略称することがある。
【背景技術】
【0003】
従来より、酵素反応は液中で行い、基質が高濃度であっても反応は進み、また、農産原料の状態で保蔵した場合、酵素反応が進むことがあり、農産原料の品質劣化が起こることは知られていた。逆に、農産原料の加工の際に、酵素剤を加えて製造操作を容易にし、製品の品質を向上させている例もある。また、基質高濃度下で糖質関連酵素の逆合成反応を利用した各種糖質、糖質複合体の製造方法が、開発、実用化されている。油脂関連酵素の場合、農産物、特に米、大豆などの穀類にリパーゼ活性があると、油脂成分の分解が進み、更に油脂成分の分解で生成させる脂肪酸の酸化などで、異味、異臭など品質低下が起こるので、リパーゼ欠損品種の作出なども行われている。
【0004】
先行技術として、例えば、非特許文献1では、乳化された脂溶性成分が近づいたりして、酵素周辺の環境が疎水的になると、リパーゼのフタ構造が開いて、疎水性の活性中心が外側にむき出しになる「活性型」酵素分子が増えてくる、また、リパーゼ分子が活性を発現するのに必要な高次構造を維持する上で、有機溶媒に最小限の水を添加しなければならない、また、一般的有機合成分野でリパーゼ反応に用いられる溶媒の種類は、いろいろあるが、全てのリパーゼ反応に等しく有効であるとは限らず、リパーゼの種類、基質の種類、水を含む溶媒の濃度、酵素の濃度や状態、反応温度、反応方法(撹拌条件)、反応時間などによって、溶媒の効果は多様に異なるので、個々の利用目的に応じて詳細な検討が必要である、と説明されている。
【0005】
リパーゼの機能は、反応系の水分の含有量により異なり、特許文献1の、澱粉粒又はセルロース粉末固定化リパーゼ及び油脂反応物の製法では、通常、リパーゼ分子が、活性を発現するのに必要な高次構造を維持する上で、有機溶媒に最小限の水を添加しなければならないとあり、リパーゼの機能発現には、水の存在が必須であり、水のない系では、反応は起こらない、一般に、水分が10%以上では、加水分解反応に有利であり、1%以下では、エステル合成反応、エステル交換反応に有利であり、水分の量は、リパーゼの種類、基質の種類、反応条件により、反応様式、効果が異なる、と説明されている。
【0006】
特許文献1の技術は、澱粉粒又はセルロース粉末に酵素リパーゼを結合させた澱粉粒又はセルロース粉末固定化リパーゼ及びその製法に関するものであり、更に詳しくは、澱粉粒又はセルロース粉末担体に、リパーゼを加え、粉末状態を維持して、混合、結合させて固定化する方法及び該方法によって得られる澱粉粒又はセルロース粉末固定化リパーゼ、更に、この澱粉粒又はセルロース粉末固定化リパーゼに、油脂又はその分解物と、グルコースなどから成る被反応物に作用させて、各種の油脂反応物を製造する方法に関与するものである。しかし、本技術は、固定化リパーゼの製造とそれを用いた油脂反応物の製造の二段階の製法となっており、煩雑である。
【0007】
この他、特許文献2の、糖質と糖質以外の食品成分を混合して大気中で高温処理して機能性素材を製造する方法及びその素材では、粉末を担体として、粉末状の食品素材を混合して噴霧し、処理することを特徴とする食品素材の処理方法であり、これにより、粉末中で各種食品成分が反応したり粉末自体と結合し、目的に応じた食品素材とすることができる、とあり、また、粉末担体として、粉末セルロース、粉末キチンを用いた場合には、各種食品成分が反応し、目的に応じた食品素材とすることができる、とあり、この他、粉末担体として利用できるものとしては、ガラスビーズ、活性炭、樹脂類粉末などが例示される、と説明されている。
【0008】
そして、この文献では、更に、本技術がリパーゼの反応にも適用でき、例えば、粉末担体に基質の脂肪酸と糖アルコールを噴霧混合し、50〜60℃で密閉静置反応すれば、糖―脂肪酸エステルを製造できる、とあり、また、リパーゼの反応での基質の組合せをデキストリンとグルコース、フルクトースなど単糖、糖アルコール、ポリフェノール、ステロイドなどの水酸基をもつ食品成分などに換えて、サイクロデキストリン合成酵素の作用を利用すれば、各種の糖転移物が得られる、とあり、また、プルラナーゼ、イソアミラーゼによる糖転移反応、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼによる糖転移反応、ペプチダーゼによるアミノ酸転移反応も、水が粒子表面に局在するために効率的に進行することが予想され、その利用も可能である、と説明されている。
【0009】
しかし、特許文献1には、「担体表面を反応の場とした」との記述があり、澱粉粒、セルロース粉末担体に、粉末状態を維持して、リパーゼを固定化し、油脂、油脂分解物、糖質などと液状で作用させて製品を製造する方法は、予想だにできないものである、と説明されている。
更に、特許文献2では、粉末担体、脂肪酸、糖アルコールの配合比、粉末担体の含水率そしてリパーゼ反応条件などの具体的な条件が明確でない。
【0010】
他の先行技術として、例えば、糖質関連酵素を用いた粉末状態の酵素反応による各種素材の製造方法があり、各種製品が製造されるとされている。その中に、多くの関連技術もあり、リパーゼ反応も酵素反応であるので、基本的には、同様の技術と考えられる。
【0011】
麹菌による米麹の製造では、蒸した米に麹菌を散布分散して室で発酵し、微生物が生産する酵素を利用した物質生産が行われている。この場合、本態は酵素反応であるが、麹菌を接種して発酵させるものであり、固体発酵、半固体発酵など、水分含有原材料を用いた各種醸造技術に通じるものである。これに対し、本発明の方法は、原材料に適量の水分を含ませ、直接酵素を作用させ、製品化するもので、麹菌による発酵とは本質的に異なる技術である。
【0012】
他の先行技術として、非特許文献2では、種麹使用区とリパーゼ製剤添加区との味噌の製造比較試験を行っているが、本技術は、本発明のように、素材の組み合わせと条件を設定して成る新しい素材の製造を目的とするものではない。
【0013】
また、製パン用酵素製剤には、例えば、特許文献3のような、リパーゼを主体としたものなど各種の製品があり、これらを利用することにより、パン製品の品質を各種に改善させている。小麦粉に各種素材及び酵素製剤を混合して、製パン用酵素製剤に含まれる酵素を発酵と同時に作用させるもので、本発明の方法に一部類似するものであるが、酵母が関与し、食品製造に用いられるもので、本発明の方法とは、特に、乾燥粉末素材の製造という点で、本質的に異なるものである。
【0014】
他の先行技術として、非特許文献3では、米粉にβ−アミラーゼを添加混捏し、ケーキ状にして反応させ柔らかいモチが形成されることが示されている。この方法は、本発明の方法に一部類似しているが、食品製造に用いられるもので、本発明の粉末素材の製造法とは本質的に異なるものである。更に、食品自体に酵素類を作用させて、組織を崩壊させるなどして、物性、食味を改良する例もあるが、これらは、食品全体を取り扱うもので、本発明のように、素材・成分を擬似粉末状態で反応させるものではない。
【0015】
更に、他の先行技術として、非特許文献4では、オレイン酸(不飽和脂肪酸)と馬鈴薯澱粉を反応させているが、該技術は、可及的に水分含量を少なくしてリパーゼで反応させるもので、結合体の生成量は極めて少ないが、これは、本発明の方法では、添加する原料として脂肪酸を含めないこと、また、前処理技術として過熱水蒸気処理をも含むことからも、本発明とは異なる研究開発例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−226966号公報
【特許文献2】特開2009−60875号公報
【特許文献3】特開2005−318833号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】都築和香子:リパーゼの機能と食品への応用、食糧その科学と技術、45号、p.1−18(2007)
【非特許文献2】渡辺隆幸ら:「米味噌の脂肪酸エチルエステル生成に与える種麹、酵母と酵素剤の影響」秋田県総合食品研究所報告 第8号、p.7−14(2006)
【非特許文献3】杉田亜希子ら:「Bacillus flexus由来の耐熱性β−アミラーゼについて」応用糖質科学 第1巻 第2号 p.194−200(2011)
【非特許文献4】日本応用糖質科学会大会平成24年度大会講演要旨集、p.47“オレイン酸結合澱粉の特徴”(平成24年9月19日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
一般に、加工・化工製品については、酵素処理による製造の際には、液状反応を行うのが常法であり、反応終了後、生成物を取り出し、そのままの状態で濃縮・乾燥して製品化し、固定化酵素を用いる場合も、通液して製造する。この製造法では、水を多量に必要とし、しかも安定性の高い乾燥品を得るためには、生成物の濃縮・乾燥工程を必要とし、生産コストの上昇と環境負荷の増大が製品価格に影響する。濃縮のみで液状製品とすることもできる例もあるが、品質保持、保存、取り扱いの面からは、乾燥粉末にすることが望まれる。更に、各種ミックス粉へのニーズも多様化し、粉への各種機能性の付与も求められている。
【0019】
一般に、粉末状でも酵素反応は進むと考えられ、糖質関連酵素で粉末状態を保持するための糖質と反応用原料の等量混合物に酵素を添加したものの水分含有率は、澱粉、穀粉では14〜50%であり、リパーゼ反応の場合も、水分含有率20〜50%の範囲で酵素反応が進むと考えられる。しかし、澱粉、穀粉の種類による酵素反応性は大きく異なり、適用できる種類は限られている。
【0020】
本発明者らは、更に検討を進め、リパーゼの「反応の場」として最適乃至好適な食品素材を探索し、リパーゼの擬似粉末状態での反応に有利な澱粉の種類、穀粉の種類を見出した。更に、リパーゼ反応を増強する水分含有率、食品素材も見出した。これらの条件を組み合わせて、水分含有量を少なくし、原料を混合し、一定温度で放置するだけで、乳化能をもつ食品素材を製造できる方法を鋭意検討して、本発明を完成するに至った。
【0021】
本発明は、リパーゼの反応の場として、各種澱粉、米粉などの穀粉から選択された粉末を用い、これに、適量の水と液状油脂を混合したもの、又は、油脂と有機酸を混合した後に加熱処理したものに対して、リパーゼを擬似粉末状態で反応させ、加水分解反応を液状での反応よりも促進させ、反応物全体に乳化能を付与して、乳化能をもつ食品用素材を製造するものである。
【0022】
本発明では、上述のように、リパーゼの「反応の場」として最適乃至好適な食品素材を探索し、リパーゼ反応に有利な澱粉の種類、穀粉の種類を見出し、更に、リパーゼ反応を増強する水分含有率、油脂含有率、有機酸含有率、加熱処理条件を見出した。本発明は、これらの条件を組み合わせて、水分含有量を少なくし、原料を混合し、一定温度で放置するだけで目的の製品が製造できる方法を開発し、その製造方と生産物を提供することを目的とするものである。
【0023】
一般に、油脂は、脂肪油(fatty oil)と脂肪(fat)の総称で、化学的には1分子のグリセリンと3分子の脂肪酸が結合したエステル(トリグリセリド)の混合物である。したがって、ここでは、本発明でいう油脂には、遊離脂肪酸は含まないものとする。また、本発明において、擬似粉末状態とは、穀粉又は澱粉に、油脂を混合したとき、粉末が塊になり、水分が染み出る状態ではなく、ペンジュラー域からキャピラリー域までの湿潤状態からの乾燥が容易で、乾燥したとき、簡単に微粉砕できる状態のものも含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)穀粉又は澱粉と、油脂を混合し、リパーゼを該穀粉又は澱粉に対して20〜50%(W/W)の水分含有率並びに5〜50%(W/W)の油脂含有率の、粉末の水分がペンジュラー域からキャピラリー域の全体が散ける「擬似粉末状態で反応させて、油脂を加水分解することにより、これら反応混合物から構成される遊離脂肪酸を含有する油脂複合体としての食品素材を製造することを特徴とする該食品素材の製造方法。
(2)穀粉又は澱粉と、油脂と、有機酸を混合し、かつ加熱処理したものを用いる、前記(1)に記載の方法。
(3)更に有機酸含有率が0〜20%(W/W)(但し、0は0超を表わす。)、かつ加熱処理したものを用いる場合の加熱処理温度が150〜300℃の条件の擬似粉末状態で反応させる、前記(2)に記載の方法。
(4)穀粉が、米粉、薄力小麦粉、又は中力小麦粉であり、澱粉が、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、粳米澱粉、糯米澱粉、トウモロコシ澱粉、糯トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、又はサゴ澱粉である、前記(1)又は(2)に記載の方法。
(5)油脂が、液状乃至半固形状の、サラダ油、ナタネ油、大豆油、パーム油、ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド油、トウモロコシ油、べに花油、オリーブ油、ごま油、又はこめ油である、前記(1)又は(2)に記載の方法。
(6)有機酸が、クエン酸、イタコン酸、DL−リンゴ酸、L−酒石酸、フマル酸、アジピン酸、グルコノラクトン、グルコン酸、乳酸フィチン酸、又は酢酸である、前記(2)に記載の方法。
(7)加熱処理が、150〜300℃の過熱水蒸気及び伝導伝熱加熱である、前記(2)に記載の方法。
(8)穀粉又は澱粉と、油脂を混合し、あるいは、更に、有機酸を混合し、かつ加熱処理を行った後に、リパーゼを上記擬似粉末状態で反応させて、乳化能をもつ油脂複合体としての食品素材を製造する、前記(1)又は(2)に記載の方法。
(9)穀粉又は澱粉と、油脂と、炭酸カルシウムを混合し、リパーゼを上記擬似粉末状態で反応させて、油脂を加水分解することにより、酸価(AV)を低下させた油脂複合体としての食品素材とする前記(1)に記載の方法。
(10)前記(1)から(7)のいずれか一項に記載の方法で製造した油脂複合体としての食品素材に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム/カリウム塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアンモニアのアルカリ系素材やカルマグS(商品名 オリエンタル酵母工業社製、原料 ドロマイト:カルシウム、マグネシウム含有物)の一種以上を添加し、撹拌混合して、酸価(AV)を低下させた食品素材とすることを特徴とする該食品素材の製造方法。
(11)前記(9)又は(10)に記載の方法で酸価(AV)を低下させた油脂複合体としての食品素材。
(12)前記(1)から(10)のいずれか一項に記載の方法で製造した油脂複合体としての食品素材を利用したことを特徴とする加工食品。
(13)前記(1)から(10)のいずれか一項に記載の方法で製造した油脂複合体としての食品素材を利用したことを特徴とするベークド製品。
(14)前記(1)から(10)のいずれか一項に記載の方法で製造した油脂複合体としての食品素材を利用したことを特徴とする水産練り製品。
(15)前記(1)から(10)のいずれか一項に記載の方法で製造した油脂複合体としての食品素材を利用したことを特徴とする麺製品。

【0025】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、穀粉又は澱粉と、油脂を混合したもの、又は、油脂と有機酸を混合した後に加熱処理したものに対して、リパーゼを該穀粉又は澱粉に対して所定の水分含有率、油脂含有率、並びに有機酸含有率の擬似粉末状態で反応させて、油脂を加水分解することにより、これら反応混合物から構成される食品素材を製造することを特徴とするものである。
【0026】
本発明において、擬似粉末状態とは、穀粉又は澱粉に対して所定の水分含有率並びに油脂含有率の粉末状態で、全体が散ける(ばらける)状態と定義され(この状態での酵素反応を粉末状酵素反応と呼称する)、非離水状態、又は粉末の水分がペンジュラー域からキャピラリー域の全体が散ける状態(=「擬似粉末状態」)であり、リパーゼを擬似粉末状態で反応させるとは、具体的には、リパーゼを、穀粉又は澱粉に対して水分含有率が20〜50%(W/W)、油脂含有率が5〜50%(W/W)の擬似粉末状態、あるいは、更に、有機酸含有率が0〜20%(W/W)の擬似粉末状態で反応させることを意味する。
【0027】
所定の水分含有率、油脂含有率、並びに有機酸含有率の疑似粉末状態は、穀粉、澱粉、油脂、有機酸などの原材料の種類によって上記範囲内のいずれかの値になるように調整することで形成することができる。本発明では、水分含有率が20〜50%(W/W)で、油脂含有率が5〜50%(W/W)の擬似粉末状態、あるいは、更に有機酸含有率が0〜20%(W/W)かつ加熱処理を用いる場合には、加熱処理が150〜300℃の条件の擬似粉末状態を形成することが重要である。なお、油脂含有率がこれ以上では、全体が散け難く、粉末状態となりにくく、取り扱いが困難となり、更に乾燥処理してもサラサラ状の粉末が得られなくなる。
【0028】
本発明は、穀粉又は澱粉と、油脂を混合し、あるいは、更に、有機酸を混合し、かつ加熱処理を行った後に、リパーゼを上記擬似粉末状態で反応させて、乳化能をもつ食品素材を製造することを特徴とするものである。ここで、乳化能とは、「水中油滴(O/W)型又は、油中水滴(W/O)型エマルションにおいて、互いに溶け合わない(相溶しない)液体からなる分散液を形成する能力」を意味し、該乳化能をもつ特性を「乳化性・均一分散性」と呼称する。
【0029】
これまで、穀粉又は澱粉と、油脂を混合し、あるいは、更に、有機酸を混合し、かつ加熱処理を行った後に、リパーゼを穀粉又は澱粉に対して所定の水分含有率、油脂含有率並びに有機酸含有率の擬似粉末状態で反応させて、油脂を加水分解することにより、これら反応混合物から構成される食品素材を製造する該食品素材の製造例や、穀粉又は澱粉と、油脂の原材料から、リパーゼを作用させて得られる反応混合物を乳化能をもつ食品素材とする応用例は開発例がない。
【0030】
本発明で製造できる素材は、従来使用されてきた既存乳化剤に換えて使用することができるが、O/W型及びW/O型乳化能をもつので、例えば、ベークド製品(パン、ケーキ、クッキーなど)、麺製品(米粉うどん、ラーメン、うどんなど)、フラワーペースト、アイスクリーム、コーヒー飲料、練り製品、チョコレート、羊羹、餡を用いた菓子類、調味料類、錠剤など極めて多岐にわたる食品において、既存乳化剤に換えて使用することができるものと期待される。
【0031】
リパーゼ系酵素の種類は、学術的には極めて多く、EC番号(酵素番号、Enzyme Commission numbers)、EC.3.−(加水分解酵素)、EC.3.1.−(エステル加水分解酵素)、EC.3.1.1.−(カルボン酸エステル加水分解酵素)、EC 3.1.1.3 トリアシルグリセロール リパーゼ[EC 3 Hydrolases、EC 3.1 Acting on Ester Bonds、EC 3.1.1 Carboxylic Ester Hydrolases、EC 3.1.1.3 triacylglycerol lipase]のように分類され、トリアシルグリセロール リパーゼは、各種微生物などに見出され、膨大な数になっている(http://www.brenda−enzymes.info/php/result_flat.php4?ecno=3.1.1.3)。
【0032】
「既存添加物名簿収載品目リスト」には、番号:305 名称:ホスホリパーゼ 品名/別名:ホスファチダーゼ レシチナーゼ 基原・製法・本質:動物のすい臓若しくはアブラナ科キャベツ(Brassica oleracea LINNE)より、冷時〜室温時水で抽出して得られたもの、又は糸状菌(Aspergillus oryzaeAspergillus niger)、担子菌(Corticium)、放線菌(ActinomaduraNocardiopsis)若しくは細菌(Bacillus)の培養液より、冷時〜室温時水で抽出して得られたもの、除菌したもの、冷時〜室温時濃縮したもの、又はこれより含水エタノール若しくは含水アセトンで沈殿又は分画処理して得られたもの、樹脂精製後、アルカリ性水溶液で処理したもの、とある。
【0033】
更に、番号:349 名称:リパーゼ 品名/別名:脂肪分解酵素 簡略名又は類別名:エステラーゼ 基原・製法・本質:動物若しくは魚類の臓器、又は動物の舌下部より、冷時〜微温時水で抽出して得られたもの又は糸状菌(Aspergillus awamoriAspergillus nigerAspergillus oryzaeAspergillus phoenicis,Aspergillus usamiiGeotrichum candidumHumicolaMucor javanicusMucor mieheiPenicillium camembertiiPenicillium chrysogenumPenicillum roquefortiiRhizomucor mieheiRhizopus delemarRhizopus japonicusRhizopus mieheiRhizopus niveusRhizopus oryzae)、放線菌(Streptomyces)、細菌(AlcaligenesArthrobactorChromobacterium viscosumPseudomonasSerratia marcescens)又は酵母(Candida)の培養液より、冷時〜微温時水で抽出して得られたもの、除菌したもの、冷時〜室温時濃縮したもの、又はエタノール、含水エタノール若しくはアセトンで沈殿又は分画処理して得られたものである、とある。
【0034】
市販品に関しては、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 酵素研究ユニットが、2011年6月にアンケートした調査結果がある(http://www.nfri.affrc.go.jp/yakudachi/koso/3_shishitu3_1.index.html)。
【0035】
本発明でリパーゼとして用いられる酵素製剤は、1998年の天野製薬(現天野エンザイム株式会社)製のものと、2010年に製造された以下のL1〜L6であり、本発明者らは、本発明において、これらは、同等の効果を奏することを確認している。
L1:リパーゼF−AP15、1998
L2:リパーゼM「アマノ」10、1998
L3:リパーゼA「アマノ」6、2010 リパーゼ:48.0% 食品素材:52.0%
L4:リパーゼAY「アマノ」30G、2010 リパーゼ:20.0 グアーガム:0.04 食品素材:79.6
L5:リパーゼR「アマノ」、2010 リパーゼ:20.0 食品素材:80.0(原材料の一部にゼラチンを含む)
L6:リパーゼG「アマノ」50、2010 リパーゼ:50.0 食品素材:50.0(原材料の一部にゼラチンを含む)
【0036】
各酵素粉末50mgを秤取り、水を1%(W/W)になるように加えて(5mL)、溶解させたものについて、酵素活性を測定した。なお、リパーゼ活性測定法は、以下のようにした。すなわち、発色試薬溶液として、フェノールフタレイン溶液:1gを、95%(V/V)エタノール100mLに溶解したもの(F液と略称する)、炭酸水素カリウムの飽和溶液(K液と略称する)、を用いた。
【0037】
大豆油50μL+各酵素液50μLと、Refは大豆油50μL+水50μLを撹拌して、45℃、1時間密閉系で反応させ、反応後、エタノール2.5mL+水5mLを加え、F液50μL+K液50μLを加え、ピンク色の発色強度と液表層の油滴の大きさから判定して、高活性から、L4(白濁、油滴ほとんどなし)、L1(白濁、油滴僅かにあり)、L5、L2、L3、L6(油滴はこの順に大きくなり、2.3mmから5.6mmの範囲である)の順とした。この他のリパーゼ製剤についても、本法を用いて、活性を試験・確認した。これらの酵素液を、例えば、L4酵素液のように表記する。
【0038】
分析手法としては、本発明者らが開発した「アスタキサンチン法」(ASSO法と略称)と、酸価(AV)、過酸化物価(POV)測定法を用いた。ASSO法では、ヤマハ発動機(株)製、食品添加物、ヘマトコッカス藻色素製剤、「ピュアスタオイル80」(アスタキサンチン含有量8.0%(W/W)以上)を用い、その100mgをとり、10mLのサラダ油を加えて、振盪撹拌して溶解させたものを、室温保存で使用した。
【0039】
本発明の方法で調製された素材の乳化能は、ASSO法での着色程度を目視で観察して、水、無処理、対照の試験区との比較を行い、乳化能の優劣を判別したが、市販乳化剤との比較の際には、「HLB値が3−6程度では一部が水に分散し、W/O型エマルションの乳化剤、HLB値が10−13程度では水に半透明に溶解、分散し、O/W型エマルションの乳化剤として使用される。」(http://www.mfc.co.jp/product/nyuuka/ryoto_syuga/list.html 三菱化学フーズ株式会社)ことを参考にして、ショ糖ステアリン酸エステル W/O型用として[リョートー シュガーエステル(粉末)シュガーエステルS−370]と[リョートー シュガーエステル(粉末)シュガーエステルS−570]を用い、O/W型用として[リョートー シュガーエステル(粉末)シュガーエステルS−1170]を用いて、本発明で調製した素材と比較検討した。
【0040】
測定手順では、本発明で調製の素材250mg、市販乳化剤50mgを、バイアルに秤取り、蒸留水5mLとASSO 50μLを加えて、手で50回以上激しく振盪撹拌する。1,660×g、10分間遠心分離した後、n−ヘキサン3mLを静かに、加えて、更に1,660×g、10分間遠心分離し、n−ヘキサン層を乱さないようにして水層をピペットで沈殿も分散するように緩やかにかき混ぜ、分散液状水層を3mL静かに取り出して、n−ヘキサン3mLを加えて、50回以上激しく振盪撹拌する。
【0041】
1,660×g、10分間遠心分離した後、n−ヘキサン層2mLを静かに採り、分光光度計で470nmの吸光度を測定する。その実験例を示すと、図1のようになり、米粉素材では250mg、市販乳化剤は50mgとすると、本発明での米粉素材を1とすると、上新粉で0.35、市販乳化剤.S−170で0.057、S−570で0.16、水では0.088となり、本条件では、本発明の方法で調製した米粉素材で高い乳化能・均一分散性を示した。
【0042】
図1に、各種乳化剤のASSO法で測定した乳化能を示す。図1において、Bnkは無処理区(セルブランク)で、1は本発明の方法で調製した乳化能をもつ米粉、2は上新粉、3は三菱化学フーズ ショ糖脂肪酸エステルS−170、4は三菱化学フーズ ショ糖脂肪酸エステルS−570の場合であり、(三菱化学フーズ ショ糖脂肪酸エステルS−1170の場合、ゲル化のため測定不能)、[水]は、水の場合である。
【0043】
AV測定法では、試料(粉末状)250mg、油脂の場合は50mg又は50μLを、バイアルにとり、エタノール2.5mLを加えて、振盪撹拌した後、5mLの水を加え、フェノールフタレイン溶液(フェノールフタレイン−エタノール溶液;フェノールフタレイン1gを95%(V/V)エタノール100mLに溶解したもの)を50μL加え、1N 水酸化ナトリウム水溶液(Na液と略記する)を、10μLずつ添加しながら、紫色に発色する量を求めた。
【0044】
なお、発色が微弱である場合は、更に、水酸化ナトリウム水溶液10μLを加えて、明確に発色する量を求め、その中間を発色点とした。また、フェノールフタレイン溶液を加えた時点で発色した場合は、10μLずつ加えて、フェノールフタレイン呈色が消失する量を求めた。AV測定の場合には、通常、水酸化カリウムを用いているので、水酸化ナトリウムでの値を1.4倍すれば、水酸化カリウムでの値に換算できる。なお、酸価が「油脂1g中に存在する遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数」と定義されているので、油脂50mgをとって測定した場合は、Na液の必要量(μL)×1.12で、AVが求められる。
【0045】
次に、試験例を示す。
[試験例1]
(1)糖質の種類による擬似粉末状態での酵素反応の差異について
大豆油と、酵素の種類(酵素液:L4[=リパーゼAY「アマノ」30G]の1%(W/W)蒸留水溶液を使用)、濃度を固定し、糖質の種類を変化させて、擬似粉末状態での酵素反応による乳化能について検討した。糖質としては、単糖、オリゴ糖、糖アルコール系、澱粉、多糖系を用意し、単糖、オリゴ糖系として、グルコース、フルクトース、マルトース・HO、トレハロース、スクロース、ラクトース、サンオリゴ5・6を用い、糖アルコール系として、4単糖アルコール(エリスリトール)、6単糖アルコール(ソルビトール)、5単糖アルコール(キシリトール)、6単糖アルコール(マンニトール)を用いた。
【0046】
単糖、オリゴ糖、糖アルコール、各250mgを、バイアルにとり、大豆油50μLと酵素液50μLを加えて、撹拌・混合して、密閉系で一夜(15時間)、45℃で反応させた。密閉系で、105℃、30分間失活処理し、水5mLを添加して観察した。ASSO50μL添加の乳化能を目視測定した結果では、この条件で、乳化能を示す単糖、糖アルコールは見出せなかった。
【0047】
また、澱粉、多糖系として、以下の1〜20のものを用いた。
1.トウモロコシ澱粉αβ DE10(トウモロコシ澱粉分解物)
2.分岐D DE8(糯トウモロコシ澱粉分解物)
3.糯A DE5(糯トウモロコシ澱粉分解物)
4.可溶性澱粉(Starch soluble、MERCK社)
5.アミロースA、トウモロコシ澱粉由来 分子量約2900(ナカライテスク社)
【0048】
6.アミロース 分子量約16,000(ナカライテスク社)
7.アミロペクチン(ナカライテスク社)
8.上新粉
9.小麦粉WFL(薄力小麦粉)
10.WFM(中力小麦粉)
【0049】
11.WFS(強力小麦粉)
12.小麦澱粉
13.糯米澱粉(モチールB)
14.粳米澱粉(ファインスノー)
15.トウモロコシ澱粉
【0050】
16.糯トウモロコシ澱粉
17.タピオカ澱粉
18.甘藷澱粉
19.馬鈴薯澱粉
20.セルロースパウダー(食品添加用)
【0051】
実際の反応物の製造には、原材料の取り扱い易さが求められるので、上記1〜20の澱粉、多糖系の撹拌・混合時の取り扱いの容易さを比較した。特に取り扱いが容易であったのは、6:アミロース、14:粳米澱粉、16:糯トウモロコシ澱粉、20:セルロースパウダーであり、湿潤粉末状によく混合することができた。5:アミロースA、8:上新粉、12:小麦澱粉、13:糯米澱粉、15:トウモロコシ澱粉、17:タピオカ澱粉、19:馬鈴薯澱粉、Ref、Bnkも散けた状態になり、擬似粉末状態での酵素反応には適当と考えられた。これら以外は、付着性、固着性があり、混合しにくかった。すなわち、5、6、8、12、13、14、15、16、17、19、20は、擬似粉末状態での酵素反応の担体として優れていた。
【0052】
澱粉、多糖系、各250mgをバイアルにとり、大豆油50μLと酵素液50μLを加えて撹拌・混合して、密閉系で、一夜(15時間)、45℃で反応させ、密閉系で105℃、30分間失活処理し、水5mLを添加して、液表層、液層、沈殿層を、観察した。ASSO50μL添加の乳化能を目視測定した結果では、乳化能を示すものとしては、図2Aに示すように、3−8が最も優れた乳化能を示した(3−8は、糖質8:上新粉を意味する。以下同様。)。この3−8では、表層にはASSOの分離層は認められず、沈殿層は着色、液層も着色白濁していたが、これは、乳化能、すなわち、乳化性・均一分散性が最も優れているということを示す。3−9〜20でも乳化能が観察されるが、これらの試料を沸騰水浴中で加熱処理すると、図2Bのように、3−11、12、19、20では、ASSOが表層に分離し、乳化性・均一分散性は高温処理により消失することを示している。
【0053】
図2Aは、擬似粉末状態での酵素反応、失活処理した後、ASSO法で乳化能を目視観察したものである。ASSO法では、ASSOを添加後、振盪撹拌し、室温で30分間静置した。図2Bは、図2Aの試料を密閉系で撹拌しながら、10分間沸騰水浴中で溶解処理し、室温で一夜(15時間)放置したものである。以上の結果を総合すると、3−8、9、10、13、14、15、16、17、18を担体として用いた擬似粉末状態での酵素反応で優れた乳化能の発現を示し、特に3−8が優れていた。
【0054】
更に詳しく説明を加えると、図2Aにおいて、ASSOの層が液表面にほとんど認められないということは、ASSO、すなわち、アスタキサンチン含有サラダ油が液相に分散し水不溶性相に固定されていることを示している。また、13〜18の澱粉では、加熱処理によりゲル化し、ゲル中にASSOが分散していることを示していて、加水により、ASSOは一部分離するが、ある程度の乳化能は示す。図2の観察結果からは、8の上新粉は最上位の素材、9の薄力小麦粉、10の中力小麦粉、11の強力小麦粉、12の小麦澱粉は中位の素材、その他の素材は低位の素材と評価される。
【0055】
図3に、トウモロコシ澱粉と大豆油を用いたRef(対照試験区)、Bnk(無処理区)の乳化性・均一分散性を示す。R1は、トウモロコシ澱粉250mg+大豆油50μL、R2は、トウモロコシ澱粉250mg+酵素液50μL、R3は、トウモロコシ澱粉250mg+水50μL、であり、Ref・Bnkとした。3−15は、酵素反応試験区である。全て、45℃で、15時間、密閉系で静置した後に、ASSO法で検討した。図3の左は、ASSO添加後、振盪撹拌し、室温で30分間放置後の観察結果であり、図3の右は、密閉系で沸騰水浴中10分間で撹拌溶解処理した後の観察結果である。
【0056】
Ref・Bnkとして、トウモロコシ澱粉±大豆油、トウモロコシ澱粉+酵素液についても同様に処理した結果、図3に示すように、室温処理・放置した場合の乳化性・均一分散性は、酵素反応試験区で優れていた。
【0057】
小麦粉については、市販薄力、中力、強力小麦粉を用い、Refとして上新粉を用いて検討した。図4に、3種小麦粉のリパーゼ反応による乳化能をもつ小麦粉への変換可能性を示す。小麦粉のL M S (上新粉を対照にして)、市販薄力小麦粉(L)、中力小麦粉(M)、強力小麦粉(S)、上新粉(R)を、密閉系で45℃、1時間反応させ、密閉系で105℃、30min失活処理した後、ASSO50μLを加えて振盪撹拌し、室温静置一昼夜(15時間)後の呈色を観察した。
【0058】
その結果、図4に示すように、試験区Expでは、上新粉が極めて優れた乳化能を示し、Refでは、LR薄力小麦粉≒RR米粉がよく、Bnkでは、LB薄力小麦粉がよい、という結果を得た。これは、小麦粉自体もある程度の乳化能を示すが、酵素処理した上新粉よりは劣ることを示す。
【0059】
Bnkは、各試料250mgそのもの、Refは、各試料250mg+米油50μL+水50μL、Expは、各250mg+米油50μL+1%(W/W)に濃度L4酵素溶液50μLである。各試料は、以下の通りである。
【0060】
LB:薄力小麦粉Bnk
MB:中力小麦粉Bnk
SB:強力小麦粉Bnk
RB:上新粉Bnk
【0061】
LR:薄力小麦粉Ref
MR:中力小麦粉Ref
SR:強力小麦粉Ref
RR:上新粉Ref
【0062】
L:薄力小麦粉Exp
M:中力小麦粉Exp
S:強力小麦粉Exp
R:上新粉Exp
【0063】
次に、上新粉を各種条件で擬似粉末状態で酵素反応させた時の乳化能の発現について検討した。図5に、上新粉の乳化能の発現に関与する要件を示す。すなわち、試料の1、3〜7は、以下の通りである。
1.上新粉250mg+大豆油50μL+1%濃度L4酵素溶液50μL
3.上新粉250mg+大豆油50μL+水50μL
4.上新粉250mg+大豆油50μL
5.上新粉250mg+水50μL+L4酵素液50μL
6.上新粉250mg+水50μL
7.上新粉250mg
【0064】
上記混合物に、水5mLとASSO50μLを添加し、振盪撹拌して、10分間室温放置した。なお、[水]は、水5mLにASSO50μLを添加し、振盪撹拌して、10分間室温放置したものである。その結果、図5に示すように、1.でのみ優れた乳化能が発現し、乳化能の発現には、大豆油とリパーゼが必須であった。なお、ここでの反応条件は、45℃、密閉系で一夜(15h)静置、その後、密閉系での105℃、30分間失活処理とした。
【0065】
[試験例2]
(2)油脂の種類による擬似粉末状態での酵素反応の差異について
油脂の種類の検討は、市販液状油脂を用いて行った。なお、有機酸成分であるオレイン酸、DHA、EPAは、本発明の範囲には含めないこととした。
【0066】
上新粉250mgに、液状油脂50μLと1%(W/W)濃度のL4酵素溶液50μLを加え、撹拌混合した。密閉系で45℃、15時間反応させて、乳化能を目視観測した。パーム油とヤシ油は、軟弱な固形であったので、スパーテルで50mg取り出して加えた。なお、硬化油など固体状の油脂は、本発明の条件である擬似粉末状態での酵素反応は進行しなかった。
【0067】
各試料は、以下の通りである。
F1:サラダ油
F2:ナタネ油
F3:大豆油
F4:パーム油
F5:ヤシ油
F6:中鎖脂肪酸トリグリセリド油
F9:トウモロコシ油
F10:べに花油
F11:オリーブ油
F12:ごま油
F13:こめ油
【0068】
図6に、各種市販油脂と上新粉の擬似粉末状態での酵素反応による乳化能の発現を示す。図6において、上段は、反応後、ASSOを加えて振盪撹拌し、30分間、室温で静置したものであり、Refは、油脂の換わりに水50μLを加えて振盪撹拌し、30分間、室温で静置したものである。中段は、反応後、ASSOを加えて振盪撹拌し、一夜、室温で静置したものであり、[水]は、水5mLにASSO50μLを加えて振盪撹拌し、30分間、室温で静置したものである。下段は、中段の試料を沸騰水浴中で、10分間、加熱溶解処理し、放冷して、1,660×g、10分間遠心分離したものであり、[水]は、水5mLにASSO50μLを加えて振盪撹拌し、30分間、室温で静置したものである。
【0069】
結果として、使用した全ての液状油脂(ペースト状も含む)で乳化能を示した。特に乳化能が優れていたものは、F12とF13であり、図6の下段に示すように、試料を沸騰水浴中で加熱溶解処理した後、遠心分離しても、液表層へのASSOの残存は極僅かであった。
【0070】
[試験例3]
(3)米油と各種澱粉、穀粉による擬似粉末状態での酵素反応の差異について
各種澱粉、穀粉を用いてAVについて検討した結果を、図7に示す。各試験区は、以下のような成分・素材の組み合わせにした。
【0071】
FL:米油50μL+L4酵素液50μL+水50μL
RP:上新粉+米油50μL+L4酵素液50μL
NGRS:粳米澱粉250mg+米油50μL+L4酵素液50μL
GRS:糯米澱粉250mg+米油50μL+L4酵素液50μL
CS:トウモロコシ澱粉250mg+米油50μL+L4酵素液50μL
WCS:糯トウモロコシ澱粉+米油50μL+L4酵素液50μL
PS:馬鈴薯澱粉+米油50μL+L4酵素液50μL
WFL:薄力小麦粉+米油50μL+L4酵素液50μL
WS:小麦澱粉+米油50μL+L4酵素液50μL
TS:タピオカ澱粉+米油50μL+L4酵素液50μL
CEL:セルロース+米油50μL+L4酵素液50μL
【0072】
これら試験区の成分・素材をミニスパーテルで撹拌混合したとき、混合難易度では、極めて混合し易いものは、RP、WSであり、CS、WCS、CELは混合し易く、NGRSとGRSは嵩高くて混合し難く、PSとTSは付着する傾向が強く混合が難しかった。WFLは完全に生地が形成できた。
【0073】
撹拌混合して、密閉系で45℃、1時間反応させ、105℃、30分で失活処理後、測定し、F液で発色したK液の量(μL)からAVを計算した。図7に、各種澱粉、穀粉などによる油脂の加水分解反応による酸価(AV)を示す。AVは、上新粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉で高く、粳米澱粉、糯米澱粉、トウモロコシ澱粉、糯トウモロコシ澱粉、小麦澱粉でも比較的高いAVを示した。反応の場としては、米粉が極めて効果的であり、澱粉、穀粉の種類によって、反応効率が大きく異なっていた。(図3で、馬鈴薯澱粉で乳化能の発現が劣っていたのは、油脂の加水分解は進むが、反応物が乳化能を示す様態になっていないものと推量される)。
【0074】
[試験例4]
(4)擬似粉末状態での酵素反応における水分の影響について
擬似粉末状態での酵素反応における水分の影響については、105℃、2時間乾燥処理したトウモロコシ澱粉250mg+L4酵素粉末1mg+大豆油50μL+水0、5、10、25、50μLを加えた試験区をP0〜P50とし、トウモロコシ澱粉250mg+1%濃度L4酵素溶液50μL+大豆油50μL+水0、50、100、200、500μL、1mL、2.5mL、5mLを加えた試験区をW0〜W5mとし、全量をミニスパーテルでよく撹拌混合してから密栓をして、45℃で、一夜(15時間)反応させ、105℃、30分間失活処理して、AV測定により酵素活性の発現について検討した。
【0075】
図8に、擬似粉末状態での酵素反応における水分の影響を示す。
反応前の試料を撹拌・混合した際の試料の様子を観察した結果は、以下の通りである。
P0〜P50:ペンジュラー状態粉末
W0〜W50:ペンジュラー状態粉末
W100:キャピラリー状態粉末
W200:流動性が低いスラリー状態
W500〜W5m:流動性が高いスラリー状態
W200以上では、添加した油脂の油滴が液表面に浮かんだ状態であった。
【0076】
反応を終了させ、失活処理後、これら試料にエタノール2.5mL添加、水総量が5mLになるように水を加えた。液表面に油滴が認められるものとしてはP0〜P10、W500〜W5mであり、これらの試験区では反応が進んでいないことを示した。各試験区の見かけの水分含有率は、乾燥処理澱粉粉末中の水分含有率を0、乾燥無処理澱粉粉末中の水分含有率を10%(W/W)とし、添加した酵素溶液中の水分量を50μLとして計算すると、P0、P5、P10、P25は、14%(W/W)、15、17、20%(W/W)、W0、W50、W100、W200は、21%(W/W)、30、39、45、50%(W/W)であり、これ以上の水分を含む試験区では懸濁液状となった。AVは水分分含有率20〜50%(W/W)で大きく、特に擬似粉末状態のP25〜W200で酵素反応値は極めて効率的に進むことを示した。
【0077】
本発明の方法で製造される素材には、遊離の脂肪酸が多量に含まれ、したがって、AVは高い。しかし、この素材を長期保存してもPOVはほとんど上がらず、脂肪酸の劣化は進まないものと考察された。遊離脂肪酸は、味、嗜好、機能性にも関与する成分として注目されつつあり、また、食品添加物の中で、指定添加物(平成19年10月26日改定)番号152 品名 脂肪酸類、とされている。
【0078】
一方、「油の酸化に関する法規制」では、即席めん類(油揚げ麺)について、めんに含まれる油脂のAVが3を越え、又は過酸化物価(POV)が30を越えるものであってはならないとされ、油で処理した菓子(油脂分10%(W/W)以上)では、POVが30以下で、かつ、AVが5以下であること、あるいは、AVが3以下で、かつ、POVが50以下であること、とされている。
【0079】
AVが3以下の素材とするには、本発明の方法で製造される素材を、ソーダ灰などの成分、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム/カリウム塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアンモニアなどのアルカリ性素材やカルマグS(商品名 オリエンタル酵母工業社製、原料 ドロマイト:カルシウム、マグネシウム含有物)などを計算量添加して撹拌混合することでAVを低下させることができる。
【0080】
更に、POVの上昇を抑制するには、還元末端をもつ単糖、グルコース、フルクトースなどを撹拌混合すればよく、POV上昇抑制用の単糖の混合率は、澱粉、穀粉の0.1から10%(W/W)程度であり、求める味質により、添加量を加減すればよい。
【0081】
AVを低下又は抑制させる可能性がある食品素材である、アルカリ性素材の添加率は、AVにより加減すればよく、通常の油脂であれば、遊離脂肪酸の分子量(オレイン酸の分子量282)からAVは200ほどであるので、炭酸ナトリウムの場合、その分子量から計算して、完全加水分解油脂g当たり376mgが必要量となる。また、アルカリ性素材を混合した状態で長時間保存する場合は、着色するので、混合してから数週間以内に使い切ることが薦められる。
【発明の効果】
【0082】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)穀粉又は澱粉に、油脂を混合したもの、又は、油脂と有機酸を混合した後に加熱処理したものに対して、リパーゼを擬似粉末状態で酵素反応させて、油脂を水解することで、反応生成物全体を食品素材とすることができる。
(2)穀粉として、米粉、薄力小麦粉、中力小麦粉、澱粉として、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、粳米澱粉、糯米澱粉、トウモロコシ澱粉、糯トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、又はサゴ澱粉を用い、リパーゼを擬似粉末状態で酵素反応させて、反応生成物全体を食品素材とすることができる。
(3)リパーゼを、穀粉、澱粉に対する水分含有率を20〜50%(W/W)、油脂含有率を5〜50%(W/W)の擬似粉末状態、あるいは、更に、有機酸含有率が0〜20%(W/W)かつ加熱処理を用いる場合には、加熱処理が150〜300℃の条件の擬似粉末状態で酵素反応させ、反応生成物全体を食品素材とすることができる。
(4)油脂として、液状から半固形状のサラダ油、ナタネ油、大豆油、パーム油、ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド油、トウモロコシ油、べに花油、オリーブ油、ごま油、又はこめ油を用い、リパーゼを擬似粉末状態で酵素反応させて、食品素材とすることができる。
(5)穀粉又は澱粉に、油脂を混合し、リパーゼを擬似粉末状態で酵素反応させて、乳化能をもつ食品素材を製造することができる。
(6)穀粉として、米粉、薄力小麦粉、中力小麦粉、澱粉として、粳米澱粉、糯米澱粉、トウモロコシ澱粉、糯トウモロコシ澱粉、タピオカ澱粉、又は甘藷澱粉を用い、リパーゼを擬似粉末状態で酵素反応させて乳化能素材を製造することができる。
(7)有機酸として、クエン酸、イタコン酸、DL−リンゴ酸、L−酒石酸、フマル酸、アジピン酸、グルコノラクトン、グルコン酸、乳酸フィチン酸、又は酢酸を用い、好ましくはクエン酸を用い、リパーゼを擬似粉末状態で酵素反応させて乳化能素材を製造することができる。
(8)加熱処理温度として150〜300℃の過熱水蒸気及び伝導伝熱加熱を用い、好ましくは過熱水蒸気を用い、リパーゼを擬似粉末状態で酵素反応させて乳化能素材を製造することができる。
(9)擬似粉末状態の酵素反応で製造された素材に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム/カリウム塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアンモニアのアルカリ系素材やカルマグS(商品名 オリエンタル酵母工業社製、原料 ドロマイト:カルシウム、マグネシウム含有物)を添加して撹拌混合し、AVを低下させた食品素材とすることができる。
(10)穀粉又は澱粉に、油脂と、炭酸カルシウムを混合し、リパーゼを擬似粉末状態で酵素反応させて、油脂を水解することで、反応生成物全体を食品素材とすることができる。
(11)(1)〜(10)に記載した方法で製造した食品素材及びその乳化能を利用した加工食品が製造できる。
(12)(1)〜(10)に記載した方法で製造した食品素材を利用したベークド製品(パン、ケーキ、クッキーなど)が製造できる。
(13)(1)〜(10)に記載した方法で製造した食品素材を利用した水産練り製品が製造できる。
(14)(1)〜(10)に記載した方法で製造した食品素材を利用した従来使用されてきた既存乳化剤無添加の麺類(米粉うどん、ラーメン、うどんなど)が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】ASSO法で測定した各種乳化剤の乳化能を示す。
図2】擬似粉末状態での酵素反応、失活処理した後、ASSO法で乳化能を目視観察した結果(図2A)、図2Aの試料を密閉系で撹拌しながら、10分間沸騰水浴中で溶解処理し、室温で一夜(15時間)放置した結果(図2B)を示す。
図3】トウモロコシ澱粉と大豆油を用いたRef、Bnkの乳化性・均一分散性を示す。
図4】3種小麦粉のリパーゼ反応による乳化能をもつ小麦粉への変換可能性を示す。
図5】上新粉の乳化能発現に関与する要件を示す。
図6】各種市販油脂と上新粉の擬似粉末状態での酵素反応による乳化能の発現を示す。
図7】米油と、各種澱粉、穀粉によるリパーゼの擬似粉末状態での加水分解反応によるAVの値を示す。
図8】擬似粉末状態での酵素反応などにおける水分の影響を示す。
図9】ヘキサン抽出アスタキサンチン法(Hex−ASSO法)による、乳化能米粉が、油を吸着する能力の測定方法を示す。
図10】乳化能米粉の明度、回収率、乳化能とSHS処理条件との関係を示す。
図11】SHS処理、リパーゼ処理と、乳化能との関係を示す。
図12】SHS処理した乳化能米粉の水溶性画分における糖組成分析のHPLC結果を示す。
図13】GLCによる乳化能米粉の脂質組成を示す。
図14】過熱水蒸気(SHS)処理及びリパーゼ処理条件を示す。
図15】食パンの硬さ測定方法を示す。
図16】乳化能米粉を添加した食パンの膨らみを示す。
図17】乳化能米粉を添加した食パン内相の保存中の硬さを示す。
図18】乳化能米粉を添加したケーシング蒲鉾の、冷凍保存中の硬さ増加率を示す。
図19】乳化能米粉を添加したケーシング蒲鉾の、冷凍保存中の離水量を示す。
図20】アルミ箔袋の展開図を示す。
図21】試作した麺類(左:うどん、右:ラーメン)を示す。
図22】うどんの茹で風景を示す。
図23】茹でうどんを示す。
図24】乳化能米粉添加米粉うどんの破断強度を示す。
図25】ラーメンの破断強度(茹で時間1.5分)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0084】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0085】
[油脂の水解(加水分解)による食品素材の製造]
原材料として、市販上新粉10g、こめ油2mL、0.1%(W/W)L4酵素液2mLを、PYREX(登録商標)100mL耐圧ビンに入れて、中型スパーテルで撹拌・混合し、密栓して、4日間、45℃で、擬似粉末状態で酵素反応させた。反応終了後、栓を開放して、乾熱器中105℃で1時間処理して、殺菌と同時に乾燥し、しっとりした粉末調製品(本調製品をRPFLと略称する)に変換することができた。
【0086】
RPFLは、僅かに黄色に着色し、AVは195、POVは1以下であった。上新粉の代わりに、市販薄力小麦粉、乃至中力小麦粉を用いた以外は、同様にして、AVは50、POVは1以下の粉末調製品を得た。
【実施例2】
【0087】
[油脂の水解(加水分解)による食品素材の製造]
原材料として、馬鈴薯澱粉10g、パーム油2g、0.1%(W/W)L4酵素液2mLを、PYREX(登録商標)100mL耐圧ビンに入れて、中型スパーテルで撹拌・混合し、密栓して、4日間、45℃で、擬似粉末状態で酵素反応させた。反応終了後、栓を開放して、乾熱器中105℃で1時間処理して、殺菌と同時に乾燥し、しっとりした粉末調製品に変換することができた。本調製品は白色で、AVは195、POVは1以下であった。
【0088】
馬鈴薯澱粉の代わりに、タピオカ澱粉を用いた以外は同様にして、同様の粉末調製品を得た。また、馬鈴薯澱粉の代わりに、粳米澱粉、糯米澱粉、トウモロコシ澱粉、糯トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、乃至サゴ澱粉を用い、AVは各130、145、145、100、155、190の粉末調製品を得た。なお、POVは、全ての調製品で1以下であった。
【実施例3】
【0089】
[油脂の水解(加水分解)による食品素材の製造と、油脂の種類]
原材料として、上新粉10g、サラダ油2mL、0.1%(W/W)L4酵素液2mLを、PYREX(登録商標)100mL耐圧ビンに入れて、中型スパーテルで撹拌・混合し、密栓して、4日間、45℃で、擬似粉末状態で酵素反応させた。反応終了後、栓を開放して、乾熱器中105℃で1時間処理して、殺菌と同時に乾燥し、しっとりした粉末調製品に変換することができた。本調製品は極僅かに白黄色で、AVは195、POVは1以下であった。
【0090】
サラダ油の代わりに、ナタネ油、大豆油、ヤシ油(2gを用いた)、中鎖脂肪酸トリグリセリド油、トウモロコシ油、べに花油、オリーブ油、乃至ごま油を用いた以外は同様にして、同様の調製品を得た。なお、魚介類、畜産類の油脂でも、液状、泥状、ラード状であれば適用可能であり、粉末状の硬化油でも、油脂分解率は低いが、一部の分解が可能であった。
【実施例4】
【0091】
[水分量と油脂量の限定;通常の米粉の水分含有率は14%程度であるが、ここで用いた上新粉は10%として計算した。]
原材料として、市販上新粉10g、こめ油2mL、0.1%(W/W)L4酵素液2mLを、PYREX(登録商標)100mL耐圧ビンに入れて、蒸留水を0、2mL、4mL、8mLを加えて水分含有率を21〜50%とし、中型スパーテルで撹拌・混合し、密栓して、4日間、45℃で、擬似粉末状態で酵素反応させた。
【0092】
反応終了後、栓を開放して、乾熱器中105℃で1時間処理して、殺菌と同時に乾燥して、極僅かに白黄色、しっとりした粉末調製品を得た。AVは200〜70で、POVは1以下であった。なお、乾燥処理した上新粉を使用し、水分含有率を20%以下にすると、反応の程度は急激に低下し、逆に、50%以上では懸濁液となり、反応の程度は、AVは100程にはなるが、乾燥処理が難しくなった。
【実施例5】
【0093】
[乳化能・均一分散性の優れた食品素材の製造]
原材料として、市販上新粉10g、こめ油2mL、0.1%(W/W)L4酵素液2mLを、PYREX(登録商標)100mL耐圧ビンに入れて、中型スパーテルで撹拌・混合し、密栓して、4日間、45℃で、擬似粉末状態で酵素反応させた 反応終了後、栓を開放して、乾熱器中105℃で1時間処理して、殺菌と同時に乾燥し、乳化能・均一分散性の優れたしっとりした粉末調製品に変換することができた(本調製品をRPFLと略称する)。
【0094】
RPFLは僅かに黄色に着色し、AVは195、POVは1以下であった。上新粉の代わりに、市販薄力小麦粉、中力小麦粉を用いた以外は同様にして、AVは50、POVは1以下の粉末調製品を得た。
【実施例6】
【0095】
[乳化能・均一分散性の優れた粉末食品素材の製造;馬鈴薯澱粉は除く AVは必要としない。]
原材料として、上新粉10g、こめ油2mL、0.1%(W/W)L4酵素液2mLを、PYREX(登録商標)100mL耐圧ビンに入れて、中型スパーテルで撹拌・混合し、密栓して、4日間、45℃で、擬似粉末状態で酵素反応させた。反応終了後、栓を開放して、乾熱器中105℃で1時間処理して殺菌と同時に乾燥し、乳化能・均一分散性の優れた、しっとりした粉末調製品に変換することができた。
【0096】
本調製品は極僅かに白黄色であった。また、小麦粉WFL(薄力小麦粉)、同(中力小麦粉)、同(強力小麦粉)、小麦澱粉、糯米澱粉、粳米澱粉、トウモロコシ澱粉、糯トウモロコシ澱粉、タピオカ澱粉、乃至甘藷澱粉用いた以外は同様にして、同様の調製品を得た。なお、油脂の種類としては、液状、ペースト状、半固形の素材を用いることができた。
【実施例7】
【0097】
[乳化能・均一分散性の優れた、しっとりした粉末調製品への変換]
原材料として、上新粉10g、サラダ油2mL、0.1%(W/W)L4酵素液2mLを、PYREX(登録商標)100mL耐圧ビンに入れて、中型スパーテルで撹拌・混合し、密栓して、4日間、45℃で、擬似粉末状態で酵素反応させた。反応終了後、栓を開放して、乾熱器中105℃で1時間処理して、殺菌と同時に乾燥し、乳化能・均一分散性の優れた、しっとりした粉末調製品に変換することができた。本調製品は極僅かに白黄色で、AVは195、POVは1以下であった。
【0098】
サラダ油の代わりに、ナタネ油、大豆油、ヤシ油(2gを用いた)、中鎖脂肪酸トリグリセリド油、トウモロコシ油、べに花油、オリーブ油、乃至ごま油を用いた以外は同様にして、同様の調製品を得た。なお、魚介類、畜産類の油脂でも、液状、泥状、ラード状であれば適用可能であり、粉末状の硬化油でも、油脂分解率は低いが、一部の分解が可能であった。
【実施例8】
【0099】
[AV抑制、POV抑制製品、高安定性食品素材の製造]
実施例1の上新粉での調製品は、AVは195、POVは1以下であったが、[菓子の製造・取扱いに関する衛生上の指導について(昭和52年11月16日環食第248号)]には、「菓子は、その製品中に含まれる油脂の酸価が3を超え、かつ、過酸化物価が30を超えるものであつてはならない」とされている。また、本調製品の保存安定性は、55℃で、7.5日保存後のPOVは17.5であり、利用にはAVとPOVの抑制が求められた。
【0100】
そこで、POVを抑制するために、グルコース、フルクトース、マルトースなどの還元糖を用いて、高安定性にするとともに、塩基性食品素材を加えて反応させることで、AVを抑制した標品を調製することができた。この場合、利用できる素材は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム/カリウム塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアンモニア、のアルカリ系素材やカルマグS(商品名 オリエンタル酵母工業社製、原料 ドロマイト:カルシウム、マグネシウム含有物)であった。
【0101】
調製品の製造例としては、上新粉10g、米油2mL、グルコース1g、炭酸カルシウム1g、1%(W/W)L4酵素液200μL、蒸留水1.8mLを、100mLのデユーワ瓶に入れ、中型スパーテルで撹拌・混合、密栓して、45℃で、4日間、擬似粉末状態で反応させ、反応後、開放系で105℃、30分間、乾燥・失活処理し、極薄白黄色、しっとりした粉末調製品を得た。AVは28、POVは1.6に抑制された。
【0102】
なお、リン酸二水素カリウム(pH4.4〜4.9)は刺激味はなく、食べやすく、リン酸水素二カリウム(pH8.7〜9.3)は僅かに刺激味あるが、食べやすく、リン酸三カリウム(pH11.5〜12.5)は癖刺激味あり、やや食べにくいが、本発明では、リン酸二水素カリウムとリン酸水素二カリウムを利用することができ、澱粉系素材でも、類似した結果を得た。
【実施例9】
【0103】
[AV抑制、POV抑制製品の製造]
実施例1の上新粉での調製品は、AVは195であるので、これに、予め、ソーダ灰を加えて、AVが0になる添加量を求めた後、当該量を添加して、乳鉢で摩砕・混合し、AVが10以下の調製品とすることができた。なお、本調製品は室温1週間程度で黄色が強くなるので、製造後は短時間で使用することが望まれた。アンモニア水、水酸化ナトリウムでも同様にして同様の結果が得られた。
【実施例10】
【0104】
[反応効率の促進]
上新粉10g、米油2mL、グルコース1g、リン酸二水素カリウム1g、1%(W/W)L4酵素液200μL、蒸留水1.8mLを、100mLのデユーワ瓶に入れ、中型スパーテルで撹拌・混合し、密栓して、擬似粉末状態で酵素反応させることで、反応効率を1.3倍に高めることができた。リン酸二水素カリウム1gの代わりに、リン酸水素二カリウム1gを用いた以外は同様にして、反応効率を1.2倍に高めることができた。
【実施例11】
【0105】
1.乳化能米粉の製造条件
乳化能をもつ米粉(乳化能米粉と記載することがある)を以下の製造条件で製造した。
(1)配合条件(クエン酸量、油量)
配合条件は、米粉93:ナタネ油5:クエン酸2とした。
(2)過熱水蒸気(SHS)処理条件/SHS処理条件は、SHS温度250℃、電磁誘導加熱(IH)によるキルン壁面温度140℃、処理時間10分間とした。
(3)リパーゼ処理条件
リパーゼ処理条件は、米粉由来素材20gに、0.1%(W/W)リパーゼ水溶液及び蒸留水を4mL添加して攪拌し、45℃で15時間反応処理をした後、105℃の恒温槽に30分入れ、失活処理した。室温で放冷し、ミルで粉砕した。
【0106】
2.可溶性及び不溶性画分の簡易乳化能試験方法
可溶性及び不溶性画分の簡易乳化能試験を以下の方法により行った。
(1)アスタキサンチン法(ASSO法)
試薬:0.001%(V/V)アスタキサンチン溶液:アスタックス1000(アスタキサンチン1%含有)0.1gに、植物油99.9g添加し、撹拌して均一にして使用した。
1)試験管に蒸留水5mLと試料粉0.5gを入れた。
2)試験管ミキサーで1分間撹拌した。
3)0.001%(V/V)アスタキサンチン溶液を0.1mL添加した。
4)試験管ミキサーで1分間撹拌した。
5)遠心分離を7,000×g、10分間行った。
6)水相を採取して470nmで吸光度を測定した。
【0107】
(2)ヘキサン抽出アスタキサンチン法(Hex−ASSO法)
Hex−ASSO法により、乳化能米粉が、油を吸着する能力を測定した。
測定方法は、図9に示す方法にしたがった。
【0108】
3.結果
その結果を、図10〜11に示す。
(1)米粉由来素材の明度、回収率、乳化能が高いSHS処理条件は、SHS温度250℃、電磁誘導加熱によるキルン壁面温度140℃、処理時間10分間であることを明らかにした(図5)。
(2)SHSで処理した米粉由来素材の乳化能を維持しながら油及びクエン酸の割合を軽減するための配合割合は、米粉93:ナタネ油5:クエン酸2であることを明らかにした(図6)。
(3)SHS処理した米粉由来素材20gに、0.1%(W/W)リパーゼ水溶液及び蒸留水をそれぞれ4mL添加してかき混ぜ、45℃で15時間反応処理をすることで、不溶性成分の乳化能が強化された米粉由来素材を製造することができた(図6)。
【実施例12】
【0109】
1.材料及び方法
(1)乳化能米粉製造条件
1)配合条件(クエン酸量、油量)
配合条件は、以下の通りとした。
・ 米粉74:ナタネ19:クエン酸7
・ 米粉100%
【0110】
2)過熱水蒸気(SHS)処理条件
SHS処理条件は、SHS温度170℃、キルン壁面温度(伝導伝熱加熱)170℃、処理時間20分間とした。
3)乳化能米粉及び米粉の水溶性画分の糖組成分析
米粉が10%(W/W)になるように米粉と脱塩水を100mL容量のガラス製ビーカーに計り入れ、これを30℃に設定した恒温水槽[NTT1200、東京理化器械(株)]に浸漬し、マグネチックスターラー[M3、(株)井内盛栄堂]にて30分間撹拌して水溶性成分を抽出した。
【0111】
小型高速冷却遠心機[M201−IVD、(株)佐久間製作所]により10℃、15,000×gで10分間遠心分離して、この分散液の上清液を得た。これを、除粒子用シリンジフィルターユニット[クロマトディスクNY025080及びクロマトディスクNY013045、大阪ケミカル(株)/クロマトディスク13A、ジーエルサイエンス(株)]と、汎用注射筒[テルモシリンジ、テルモ(株)]により精密ろ過して固形分を除去し、水溶性成分水溶液を得た。
【0112】
送液ポンプ[4溶媒低圧グラジエントポンプ、PU−2089、日本分光(株)]、示差屈折検出器[RI−2031、日本分光(株)]、カラムオーブン[CO−2065、日本分光(株)]、インジェクタ(20μL、7725(i)、Reodyne 社)から構成される高速液体クロマトグラフ[LC2000Plus、日本分光(株)]を用い、分離カラムには、MCI GEL CK04SSカラム[10mm I.D×L 200mm、粒子径11μm、三菱化学(株)]を用いた。
【0113】
流速を0.3mL・min−1、カラム温度を80℃に設定し、脱塩水を溶離液にして定組成送液モードで溶出した。また、得られたクロマトグラムのデータ処理には、クロマトデータ処理プログラム[JASCO Borwin−NT、日本分光(株)]、装置制御には、システムコントロールプログラム[HSS−2000、日本分光(株)]を用いた。ベースラインが安定した後、マイクロシリンジ(25μL、#702、HAMILTON CO.社)を用いて、インジェクタに試料を20μL注入した。クロマトデータ処理プログラムを用いて得られたデータから溶出ピークを検出し、保持時間からマルトオリゴ糖を同定した。なお、内部標準にはmyo−イノシトールを用いた。
【0114】
4)乳化能米粉及び米粉の脂溶性成分の分析
米粉が10%(W/W)になるように米粉とクロロホルム−メタノール混液(2:1、 by Vol)を00mL容量のガラス製ビーカーに計り入れ、これを30℃に設定した恒温水槽に浸漬し、マグネチックスターラーにて30分間撹拌して、脂溶性成分を抽出した。この分散液を、小型高速冷却遠心機により15,000×g、10℃で10分間遠心分離して、上清液を得た。除粒子用シリンジフィルターユニット[「クロマトディスク(有機溶媒系)」、ジーエルサイエンス(株)]と、ルアーロック式注射器(GLASS SYRINGE、(有)石沢製作所)により精密ろ過して固形分を除去し、ろ液をロータリーエバポレータ[N−1、東京理化器械(株)]にて55℃で濃縮・乾固したものを脂溶性画分とした。
【0115】
試料中の不揮発性成分の沸点を低下させるために、試料をトリメチルシリル(TMS)化してGLC試料を得た。次に、GLC試料をオートインジェクタ専用バイアル[容量1.5mL、(株)島津製作所]に約1mL採取し、水素発生器[OPGU−2100S、(株)島津製作所]、オートサンプラ[AOC−20s、(株)島津製作所]、オートインジェクタ[AOC−20i、(株)島津製作所]及び水素炎イオン化検出器(FID)から構成されるガスクロマトグラフ[GC−1700、(株)島津製作所]、キャピラリカラム(ZB−1、カラム内径 0.25mm、カラム長 10m、phenomenex社)、コミュニケーションバスモジュール[CBM−101、(株)島津製作所]、データ処理ソフトウェア[CLASS−GC10、(株)島津製作所]がインストールされたパーソナルコンピュータ[FMV6433DX3c、富士通(株)]により構成されるGLC装置を用いて、モノアシルグリセロール(MAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、トリアシルグリセロール(TAG)及び遊離脂肪酸(FFA)を分析した。
【0116】
なお、キャリーガスを窒素、キャリーガス流量を1mL・min−1、メイクアップガスを窒素及び圧縮乾燥空気とした。また、温度プログラムを50℃で5分間保持後に温度勾配5℃・min−1で350℃まで昇温し、350℃で10分間保持するように設定した。また、圧力プログラムを33kPaで5分間保持後に昇圧速度0.8kPa・min−1で81kPaまで昇圧し、そして、81kPaで10分間保持するように設定した。
【0117】
2.結果
米粉に、油脂及びクエン酸を混合した試料に過熱水蒸気処理した乳化能米粉の水溶性画分及び脂溶性画分に含まれる成分を分析した結果を、図12図13に示す。
【0118】
その結果、水溶性画分には、米粉には通常存在しないデンプンの加水分解物であるマルトオリゴ糖やデキストリンが含まれていることを確認した。一方、脂溶性画分には、やはり米粉には通常存在しない油脂分解物である遊離脂肪酸、ジアシル及びモノアシルグリセロールが含まれていることを確認した。特に、油脂分解物は、独自に乳化能を有することが知られている。また、水溶性画分及び脂溶性画分に確認できた成分を利用してリパーゼ反応を行うことで、水溶性・脂溶性の界面活性物質、エステル類を生成し、米粉への乳化能付与が期待できた。
【実施例13】
【0119】
1.乳化能米粉の製造条件
(1)配合条件(クエン酸量、油量)
配合条件は、下記の表1の通りとした。
【0120】
【表1】
【0121】
(2)過熱水蒸気(SHS)処理及びリパーゼ処理条件
SHS処理及びリパーゼ処理条件を、図14に示す。
【0122】
(3)界面張力の測定方法
脱塩水に、マグネチックスターラー[M3、(株)井内盛栄堂]で撹拌しながら乳化剤を加えて溶解させたものを乳化剤水溶液とした。また、100mL容量のガラス製ビーカーに各米粉が10%(W/W)になるように米粉と脱塩水を計り入れ、マグネチックスターラーを用いて目盛を3に設定し、30℃に設定した恒温水槽[NTT1200、東京理化器械(株)]中で30分間撹拌して水溶性成分を抽出した。
【0123】
小型高速冷却遠心機[M201−IVD、(株)佐久間製作所]により10℃、15,000×gで10分間遠心分離して、この分散液の上清液を得た。これを、除粒子用シリンジフィルターユニット[クロマトディスクNY025080、孔径0.8μm、大阪ケミカル(株)、クロマトディスクNY013045、孔径0.4μm、大阪ケミカル(株)、クロマトディスク13A、孔径0.2μm、ジーエルサイエンス(株)]と、汎用注射筒[テルモシリンジ、テルモ(株)]により精密ろ過して固形分を除去し、水溶性成分水溶液を得た。
【0124】
25℃での乳化剤水溶液又は水溶性成分水溶液と大豆油における界面張力を計測システム(CCDカメラ、光源)、コントロールボックス及びパーソナルコンピュータから構成されている自動接触角計[DM−501、協和界面科学(株)]を用いて測定した。すなわち、大豆油を石英ガラスセル(W25mm×D25mm×H30mm)に注入し、テフロン(登録商標)コート針(22G、外径:0.7mm、内径:0.4mm)を装着した注射筒より、乳化剤水溶液又は水溶性成分水溶液をインジェクタ針先から5μL懸滴した。なお、解析にはYoung−Laplace法を用いた。
【0125】
2.結果
その結果を、下記の表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
過熱水蒸気処理条件が300℃で処理した乳化能米粉においてもリパーゼ処理をすることで乳化能米粉には水溶性・脂溶性の界面活性物質が生成することを確認し、それぞれの画分が界面張力を低下させることを明らかにした(表2)。
【実施例14】
【0128】
1.乳化能米粉を用いた食パンの評価
実施例13で試作した乳化能米粉を用いて製パン試験を行った。
(1)配合条件
一般的な食パン配合にて食パンを製造し、製パン性能、製品品質の評価を行った。
配合は下記の表3の通りとした。
【0129】
【表3】
【0130】
(2)食パンの膨らみ測定方法
各テスト区の食パン生地を一定重量に分割し、ロール形状に整形した後、ワンローフ型に入れ、発酵後、蓋なしで焼成した。製品重量は、焼成後1時間時点の重量を計測し、製品の容積をボリューム測定装置(3DレーザースキャナSELNAC−VM150)で測定することで、製品の比容積を求めた。ここで、比容積=製品体積/製品重量、である。
【0131】
(3)食パンの硬さ測定方法
食パンの硬さ測定方法は、図15に示す通りである。
【0132】
2.結果
その結果を、図16に示す。乳化剤と乳化能米粉どちらも0.5%(W/W)添加した。乳化剤添加の値より±0.02以内が正常値と評価した。乳化能米粉を添加した食パンの膨らみは、乳化剤添加と同等であった。
【0133】
図17に、乳化能米粉を添加した食パン内相の保存中の硬さを示す。乳化剤と乳化能米粉どちらも0.5%添加した。乳化能米粉を添加した食パンが乳化剤添加より常に柔らかかった。
【0134】
製パン利用における乳化能米粉の適正使用量(0.5%)を確立した。乳化能米粉を配合したパンは、乳化剤を使用したパンと同等の比容積を示した。また、乳化能米粉を配合したパンの内相は、製造3日後でも乳化能米粉を添加した食パンが乳化剤添加より常に柔らかかった。柔らかさの程度から評価すると、乳化剤を使用したパンと同等の硬さと評価できた。
以上の結果より、食パン製造において、乳化能米粉は、乳化剤と同等の利用効果を有することを確認した。
【実施例15】
【0135】
1.乳化能米粉を用いたケーシング蒲鉾の評価
実施例13で試作した乳化能米粉を用いて蒲鉾を試作して評価を行った。具体的には、擂潰機を用いて蒲鉾原料を擂潰し、蒲鉾生地とした。次に、ミキサーを用いて、乳化能米粉を様々な濃度で蒲鉾生地に混合した。この蒲鉾生地を、それぞれ、充填器にて48mm塩化ビニリデンケーシングに充填し、90℃、20分の蒸気加熱後、流水中で冷却し、ケーシング蒲鉾とした。
【0136】
作製したケーシング蒲鉾は冷凍保存し、試験に用いた。経日的にケーシング蒲鉾を解凍し、硬さ及び離水量を測定した。硬さの測定では、試料を厚さ3cmにカットし、その中央部を測定した。測定機器は、直径5mmの球形プランジャーを用いたレオメーターを使用した。離水量は、4gの小片にカットした試料を、遠心分離器にて3000rpm、5分の遠心分離に供し、強制離水後、重量の減少量から離水率を算出した。
【0137】
2.結果
その結果を、図18〜19に示す。乳化能米粉を添加したケーシング蒲鉾の冷凍保存中の硬さ増加率については、製造直後の値を100として表示した。乳化能米粉は、1%(W/W)添加で蒲鉾の経時変化を2ヶ月間抑制することを確認した。
【0138】
乳化能米粉を添加したケーシング蒲鉾の冷凍保存中の離水量については、製造直後の値を100として表示した。乳化能米粉は、1%(W/W)添加で蒲鉾の経時変化を2ヶ月間抑制することを確認した。
【0139】
乳化能米粉を様々な濃度でケーシング蒲鉾に添加し、冷凍保存した。経日的に硬さや離水量を評価した結果、乳化能米粉は、1%(W/W)添加で蒲鉾の経時変化を2ヶ月間抑制することを確認した。
【実施例16】
【0140】
1.乳化能米粉の麺類に対する加工適性の評価
(1)試験方法
米粉うどん[米粉30%(W/W)添加、大麦玄麦8%(W/W)添加]、ラーメン、うどんの加工適正について試験した。
【0141】
1)試料
供試試料として、米粉うどん、ラーメン、うどんについて、以下のように、乳化能米粉無添加の対照と、米粉うどん:乳化能米粉0.5%、1.0%、1.5%(W/W)添加、ラーメン:乳化能米粉0.1%、0.5%、0.8%(W/W)添加、うどん:乳化能米粉0.03%、0.1%、0.3%、0.6%、1.0%、2.0%(W/W)添加した試料を準備して試験した。
【0142】
米粉うどん:
a)乳化能米粉0.5%、b)同1.0%、c)同1.5%(W/W)
ラーメン:
a)対照(乳化能米粉無添加)、b)乳化能米粉0.1%、c)同0.5%、d)同0.8%(W/W)
うどん:
a)対照(乳化能米粉無添加)、b)乳化能米粉0.03%、c)同0.1%、d)同0.3%、e)同0.6%、f)同1.0%、g)同2.0%(W/W)
【0143】
2)麺類の含水率の測定方法
以下の方法により、麺類の含水率を測定した。
a)麺類の茹で方法
以下の手順で茹で上げた麺類を調製した。
(1)2Lビーカ―に蒸留水1.5Lを入れた。
(2)電気コンロ1200Wでビーカー内の水温を98℃にまで沸かした。その際に、時計皿でビーカーに蓋をした。
(3)冷凍麺類100g投入して茹でた。茹で時間は、うどん10,12,15分、ラーメン1,1.5,2,3分とした。
(4)麺をザルですくい水を切った。
【0144】
b)麺試料の調製
(1)茹で上げた麺を厚手のポリ袋(0.08mm、ジッパー付き)に入れて、袋の外から麺サンプルを手揉みした後に麺棒をローラーとして袋の外側から圧延を繰り返して、ペースト状に均質化した。
(2)ポリ袋を2重にして室温で1時間冷却し、試料品温を室温にした。
【0145】
c)含水率の測定
以下の方法で含水率を測定した。
(1)横20cm×縦18cmの図20に示したようなアルミ箔袋を0.1mgまで秤量した。
(2)均質化した麺サンプルの入った袋の隅をはさみで切り、試料を押し出してアルミ箔袋に2.5〜3g入れた。
(3)袋の口を折って気密として、0.1mgまで秤量した。
(4)麺棒で試料を均一に薄く圧延した。袋の口と底は、上下1.5cm位づつ残した。
(5)袋を展開して135℃で2時間通風乾燥した。
(6)デシケーターで30分放冷後、0.1mgまで秤量した。その際に、1サンプル5連で行い、平均値を各試料の水分とした。
図20に、アルミ箔袋の展開図を示す。
【0146】
3)官能試験
麺類の茹で時間を変えて調理して、茹であがりの食感を官能評価によって評価した。茹で上げたうどんを釜揚げうどんとして麺つゆで試食して官能評価した。ラーメンでは、茹で上げたラーメンをスープに入れて試食して官能評価した。図21に、試作した麺類(左:うどん、右:ラーメン)を示す。また、図22に、うどんの茹で風景を示し、図23に、茹で上がったうどんを示す。
【0147】
4)物性試験
米粉うどん、ラーメンについて、以下により、その物性(破断強度)を調べた。
供試試料:
米粉うどんについては、乳化能米粉添加量0,0.3,0.5,1.0,1.5%(W/W)の米粉うどんを茹で時間:10、12、15分で調理した麺を試料として用いた。また、ラーメンについては、乳化能米粉添加量0,0.1,0.5,0.8%(W/W)のラーメンを茹で時間:1.5分で調理した麺を試料として用いた。
測定方法:
物性測定は、レオメーター(サン科学社製:CR−500DX)を用いて供試試料の麺を3cm程度に切り、中央部に対して歯形プランジャー(サン科学社製:プランジャー番号35番歯形(B))を用いて破断強度を測定した。
【0148】
(2)実験結果
1)米粉うどんへの効果
乳化能米粉を添加した米粉うどんの茹で麺水分を調べた。茹で時間は10分、12分、15分とした。また、乳化能米粉を添加した米粉うどんの破断強度を調べた。米粉うどんの茹で麺水分は、基準となる茹で時間15分では、対照の乳化能米粉無添加の麺水分より乳化能米粉を0.5%や、1.5%(W/W)添加した方が高く、1.0%(W/W)添加でも対照とほぼ近い麺水分であった。また、茹で時間12分では、無添加の麺水分に比べ、乳化能米粉を0.5〜1.5%(W/W)添加した全ての米粉うどんの麺水分が無添加に比べ1%以上高かった。このことから、米粉うどんに乳化能米粉を0.5%(W/W)以上添加することで茹で工程での吸水性が向上することが確認された。その結果を表4に示す。
【0149】
【表4】
【0150】
茹で麺の麺水分の結果より、米粉うどんに乳化能米粉を0.5%(W/W)以上添加することで、より早く給水する傾向が認められ、茹で時間が15分未満に短縮できることが確認された。
【0151】
また、乳化能米粉の添加濃度と茹で時間別に米粉うどんの破断強度を評価した。その結果を、図24に示す。乳化能米粉を0.5%(W/W)以上添加した米粉うどんは、無添加の米粉うどんに比べて、破断強度が2倍以上に高く、その傾向は、茹で時間が長くなっても維持された。
【0152】
以上の麺水分、破断強度の結果をまとめると、米粉うどんに乳化能米粉を0.5%〜1.5%(W/W)の範囲で添加することで、茹で工程での吸水性が向上して茹で時間が向上するとともに、茹で麺の物性が強化されることが明らかとなった。
【0153】
2)ラーメンへの効果
乳化能米粉添加ラーメンの茹で麺水分を調べた。その結果を、表5に示す。また、ラーメンの破断強度(茹で時間1.5分)を調べた。その結果を、図25に示す。
【0154】
【表5】
【0155】
ラーメンの茹で麺水分は、基準となる茹で時間3分では、対照の乳化能米粉無添加の麺水分より乳化能米粉を0.1%や、0.8%(W/W)添加した方が高く、0.5%(W/W)添加でも対照とほぼ近い麺水分であった。また、茹で時間2分では、無添加の麺水分に比べ、乳化能米粉を0.1〜0.8%(W/W)添加した全てのラーメンの麺水分が、無添加に比べ2%以上高かった。このことから、ラーメンに乳化能米粉を0.1%(W/W)以上添加することで茹で工程での吸水性が向上することが確認された(表5)。茹で麺の麺水分の結果より、ラーメンにおいても、乳化能米粉を添加することで、茹で時間が3分未満に短縮できることが確認された。
【0156】
また、乳化能米粉の添加濃度別に茹で時間1.5分間のラーメンの破断強度を評価した。その結果、乳化能米粉を0.1〜0.8%(W/W)添加したラーメンは、無添加のラーメンに比べて、破断強度が向上した(図25)。特に、乳化能米粉を0.5%(W/W)添加したラーメンが最も破断強度が高かった(図25)。
【0157】
以上の麺水分、破断強度の結果をまとめると、ラーメンに乳化能米粉を0.1%〜0.8%(W/W)の範囲で添加することで、茹で工程での吸水性が向上して茹で時間が向上するとともに、茹で麺の物性が強化されることが明らかとなった。
【0158】
4)うどんへの効果
乳化能米粉添加うどんの茹で麺水分を調べた、その結果を、表6に示す。うどんの茹で麺水分は、乳化能米粉の添加割合が高くなるほど麺水分が高くなる傾向が認められた(表3)。ただし、それを食してみると、乳化能米粉の添加割合が0.1〜0.3%(W/W)までは、茹であがった良好な食感であると評価された。乳化能米粉の添加割合が0.6%(W/W)以上では、逆にコシが強くて硬い食感があると評価された。
【0159】
【表6】
【0160】
以上の結果より、うどんに対する乳化能米粉の添加による効果として、基準となる対照の乳化能米粉無添加のうどんの通常の茹で時間15分間で得られる約72.5%の麺水分に対して、うどんに乳化能米粉を0.3%〜2.0%(W/W)添加することで、より早く給水する傾向が認められ、茹で時間が15分間未満に短縮できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0161】
以上詳述したように、本発明は、リパーゼを擬似粉末状態で作用させて、穀粉又は澱粉と油脂を反応させる油脂分解物・油脂−糖質複合体の製造法とその製品に係るものであり、本発明によれば、穀粉又は澱粉と油脂を混合したもの、又は、油脂と有機酸を混合した後に加熱処理したものに対して、ある一定の水分含量の擬似粉末状態でリパーゼと反応させることで、反応効率が高く、乳化能・均一分散性をもつ粉末調製品を製造することができる。本発明では、余計な水分を使わないので、乾燥も容易で、主として乾燥粉末製品を製造でき、食品加工での利用に便利で安価な製品を提供することができる。
【0162】
また、本発明では、アルカリ性素材の添加で品質改良と反応効率を更に高めることができる。また、パン製品製造においては、従来使用されてきた既存乳化剤を使用したパンと同等の比容積を示すとともに、製造3日後でも乳化能米粉を添加した食パンが既存乳化剤添加より常に柔らく、柔らかさの程度から評価すると、既存乳化剤を使用したパンと同等の硬さと評価できるパンを製造することができる。また、蒲鉾においては、冷凍保存した場合、経時変化を抑制することができる。また、麺製品(米粉うどん、ラーメン、うどんなど)製造においては、茹で麺の水分が増加し、茹で時間を短縮でき、破断強度が高くコシの強い麺を製造することができる。更に、これら素材は、目的に応じて利用でき、食品に限らず、化粧品、医薬品の製造にも適用できるものとして有用であり、化粧品としては、洗浄作用による洗浄用としての利用、医薬品としては、錠剤製造用としての利用が期待できる。
図1
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図3
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