(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、光学フィルタの構造例である。
図1に示す光学フィルタ10は、透光性を有する基板1と、基板1上に積層された光学層2と、を具備する。なお、光学層2の構造は、
図1に示す構造に限定されない。
【0011】
基板1は、例えば支持基板としての機能を有する。基板1は、少なくとも可視領域の波長を有する光と近赤外領域の波長を有する光とを透過する機能を有する。可視領域は、例えば400nm以上700nm未満の波長を含む領域であることが好ましく、近赤外領域は、例えば700nm以上1050nm以下の波長を含む領域であることが好ましい。
【0012】
基板1としては、例えばガラス基板、プラスチック基板、および樹脂フィルム基板の少なくとも一つを用いることができる。基板1は、CuO等の光吸収剤を実質的に含んでいないことが好ましい。
【0013】
光学層2は、可視領域の波長を有する光と近赤外領域の波長を有する光とを透過する機能を有する。光学層2は、可視領域に設けられた第1の光透過帯と、近赤外領域に設けられた第2の光透過帯と、可視領域よりも短波長側および長波長側ならびに近赤外領域よりも短波長側および長波長側に設けられた光透過阻止帯と、を有する光学スペクトルで示される光学特性を備える。上記光学スペクトルは、例えば分光測定装置を用いて測定され、光の波長と透過率との関係で表わされるスペクトルである。
【0014】
第1の光透過帯および第2の光透過帯は、対応する波長を有する入射光に対して、例えば70%以上、さらには75%以上、さらには80%以上の光の透過率を有することが好ましい。光透過阻止帯は、対応する波長を有する入射光に対して、例えば10%未満の光の透過率を有することが好ましい。
【0015】
本実施形態の光学フィルタでは、入射角度依存性を改善することにより、少なくとも近赤外領域の波長を有する光を透過する光透過帯において、光の入射角度が相違しても対象波長範囲の透過光量を維持することができる。これにより、入射角度の違いによって受光光量が大きく変化することがなく、画質の低下が抑制された撮像画像を得ることができる。
【0016】
近年では、デジタルカメラやデジタルビデオ等の小型化、薄型化に伴い、デジタルカメラやデジタルビデオ等の広角化が進んでいる。これにより、光学層がカットする波長域の入射角度依存性が問題となっている。例えば、光学スペクトルにおいて、光透過阻止帯から光透過帯への立ち上がり位置が光の入射角度によってずれる(シフトする)ことによって画質に影響する帯域(光透過帯)の光量が変化する。また、光学スペクトルは、垂直入射光から斜入射光への変化に伴い、短波長側へシフトする。
【0017】
可視領域の波長を有する光と近赤外領域の波長を有する光との両方を透過させる従来の光学フィルタにおいて、入射光が垂直入射光から斜入射光に変化した場合、特に近赤外領域の特定波長を有する光を透過する光透過帯の波長シフトおよび透過帯分光波形の変形が大きいため、取り込もうとする特定波長範囲の光透過量が著しく減少する傾向がある。また、このような現象をなくすため、単に近赤外領域の光透過帯の幅を広くしていくと、本来必要な近赤外領域および赤外域領域の光透過阻止帯の幅が減少してしまう。なお、光学層2の光学スペクトルにおいて、入射角度の変化(垂直入射光から斜入射光への変化)に伴う光透過帯のシフト量は、波長が長い帯域の短波長側へのシフト量が波長が短い帯域の短波長側へのシフト量よりも大きい傾向がある。そのため、光透過帯のシフト量が大きくなると、波長が短い側の光透過阻止帯から光透過帯への立ち上がり位置に対し、波長が長い側の光透過阻止帯から光透過帯への立ち上がり位置が大きく短波長側にシフトすることに起因して、光透過帯の帯域の幅が狭くなる傾向がある。
【0018】
本実施形態の光学フィルタでは、
図1に示すように光3が入射したとき、光学層2の平面に垂直な方向に対して0度から40度までの入射角度θの違いによる、第2の光透過帯の光の透過光量の変動率が7%以下、好ましくは6%以下に制御されている。これにより、入射角度の違いにより光透過帯の帯域の幅が狭くなることを抑制し、光の取り込み量の変動を抑制することができる。なお、本願発明における光透過帯の透過光量の変動率とは、第2の光透過帯における10%以上の光の透過率を有する帯域での1nmの波長毎における10%以上の透過率の積算値について、入射角度別の積算値の比のことをいう。
【0019】
また、第2の光透過帯において、0度から40度までの入射角度の違いによる、長波長側の80%の光の透過率を示す波長のシフト量は、60nm未満であり、かつ0度の入射角度における80%以上の光の透過率を有する帯域の幅は、上記シフト量の1.2倍以上であることが好ましい。これにより、入射角度の違いによる光の透過率の変動を抑制、すなわち入射角度依存性を改善することができるため、光の取り込み量の減少を抑制することができる。また、入射角度の違いによる光学スペクトルのシフトが生じたとしても、第2の光透過帯は、一定の透過帯の幅を備えるため、所望の透過光量を確保することができる。また、0度の入射角度における80%以上の光の透過率を有する帯域の幅は、シフト量の2倍以下であることが好ましい。このシフト量が2倍超であると、第2の光透過帯の短波長側および長波長側に存在する光透過阻止帯の幅が過度に減少し、撮像画像の色調に影響を及ぼすおそれがある。なお、第2の光透過帯において、長波長側とは第2の光透過帯の中心波長よりも長波長側を示し、短波長側とは第2の光透過帯の中心波長よりも短波長側を示す。
【0020】
ここで、上記光学特性を満たすためには、光学層2の構造が重要となる。例えば、光学層2は、式[ZLHL]^nで表されるスタックの積層ユニットを備えることが好ましい(式中、Hは第1の光学厚さと2.0以上の屈折率とを有する高屈折率層を表す記号であり、Zは第1の光学厚さの2倍以上大きい第2の光学厚さと2.0以上の屈折率とを有する高屈折率層を表す記号であり、Lは1.7以下の屈折率を有する低屈折率層を表す記号であり、nは光学層2におけるスタックの数を表す自然数であり、H、Z、およびLの記載順序は基板1側からの積層順序を表す。)。
【0021】
上記式における低屈折率層(L)は、高屈折率層(Z)の光学厚さよりも小さい光学厚さを有することが好ましい。また、上記式における4つ目の低屈折率層(L)は、2つ目の低屈折率層(L)の光学厚さと異なる値の光学厚さを有していてもよく、特に上記スタックにより複数の光透過阻止帯を形成するためには、異なる値であることがより好ましい。
【0022】
光学厚さは、例えば1/4波長光学厚さ(Quarter−wave Optical Thickness:QWOT)で表される。QWOTとは、特定の波長を有する光(例えば500nmの波長を有する光)の波長の1/4に対する倍率によって表された光学厚さである。このとき、高屈折率層(Z)の500nmの波長を有する光におけるQWOTを例えば1.30以上5.00以下に調整してもよい。また、高屈折率層(H)の500nmの波長を有する光におけるQWOTを例えば0.20以上1.25以下に調整してもよい。さらに、低屈折率層(L)の500nmの波長を有する光におけるQWOTを例えば0.10以上1.15以下に調整してもよい。光学層2を構成する各層では、例えば物理膜厚および屈折率を調整することによりQWOTを調整することができる。
【0023】
光学層2は、例えば
図1に示すように高屈折率層(Z)21と、高屈折率層21上に接して積層された低屈折率層(L)22と、低屈折率層22上に接して積層された高屈折率層(H)23と、高屈折率層23上に接して積層された低屈折率層(L)24とを有するスタックとして、スタック20
1ないしスタック20
nを有する。スタックのユニット数(式中のnの値)は、特に限定されないが、例えば7ユニット以上、11ユニット以上、または15ユニット以上積層してもよい。なお、スタックに加え、別の高屈折率層および低屈折率層の少なくとも一つを設けてもよい。
【0024】
上記スタックは、可視領域および近赤外領域の両方に光透過帯を有する光学スペクトルで示される光学特性を有することが好ましい。これにより、例えば可視領域のみに光透過帯を有する第1の光学層と近赤外領域のみに光透過帯を有する第2の光学層とを積層させた光学層と比較して、光学層における光透過帯の光の透過率の低下を抑制することができる。
【0025】
高屈折率層21や高屈折率層23等の高屈折率層は、例えば500nmの波長を有する光に対して2.0以上の屈折率を有することが好ましい。高屈折率層としては、例えば酸化チタン(TiO
2)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、またはこれらの複合酸化物を含む膜を用いることができる。また、屈折率が2.0以上であれば、添加物を含有していてもよい。なお、屈折率が高いほうが、斜入射時の波長シフト量抑制、紫外側の光透過阻止帯の拡張等に有利である。このため、上記3物質のうち、屈性率のより高い酸化チタン、酸化ニオブが高屈折率層としてより好適である。
【0026】
低屈折率層22や低屈折率層24等の低屈折率層は、例えば500nmの波長を有する光に対して1.7以下の屈折率を有することが好ましい。低屈折率層としては、例えば、酸化シリコン(SiO
2)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、またはこれらの複合酸化物を含む膜を用いることができる。また、屈折率が1.7以下であれば、添加物を含有していてもよい。
【0027】
高屈折率層および低屈折率層等の屈折率層は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンアシスト真空蒸着法、CVD法を用いて形成される。特に、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンアシスト真空蒸着法を用いて屈折率層を形成することが好ましい。光透過帯は、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等の固体撮像素子の受光に利用される波長帯域であり、光学層の厚さの精度が重要となる。スパッタリング法、真空蒸着法、イオンアシスト真空蒸着法は、屈折率層を形成する際の厚さの制御に優れる。このため、光学層2を構成する各屈折率層の厚さの精度を高めることができ、その結果、波長シフトを抑制することができる。
【0028】
上記スタックを1ユニット以上有する光学層を備える光学フィルタの斜入射特性は、当該スタックを設けない光学フィルタの斜入射特性よりも良好である。よって、光学スペクトルにおいて可視領域の波長を有する光を透過する光透過帯の幅と近赤外領域を有する光を透過する光透過帯の幅とを広く確保しつつ、可視領域の波長を有する光を透過する光透過帯の両端、および近赤外領域の波長を有する光を透過する光透過帯の両端に光透過阻止帯を形成することができる。また、入射角度による光透過帯のシフト量を少なくすることができる。
【0029】
以上のように、本実施形態の光学フィルタでは、可視領域の波長を有する光および近赤外領域の波長を有する光の両方を透過させつつ、光学層2の平面に垂直な方向に対して0度から40度までの入射角度θの違いによる、近赤外領域の波長を有する光の透過光量の変動率が例えば7%以下と低い値に制御される。よって、特に近赤外領域の波長を有する光を透過する光透過帯の帯域の幅が広がり光の取り込み量の変動を抑制することができるため、例えば撮像装置による暗視下での撮像においても画質の低下が抑制された撮像画像を得ることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
図2は、撮像装置の構造例を示す図である。
図2に示す撮像装置100は、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラであり、固体撮像素子110と、カバーガラス120と、レンズ群130と、絞り140と、筐体150とを具備する。固体撮像素子110、カバーガラス120、レンズ群130、および絞り140は、光軸Xに沿って配置されている。
【0031】
固体撮像素子110は、例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。固体撮像素子110は、入力される光を電気信号に変換して、図示しない画像信号処理回路へ出力する。
【0032】
カバーガラス120は、固体撮像素子110の撮像面側(レンズ群130側)に配置され、外部環境から固体撮像素子110を保護する。
【0033】
レンズ群130は、固体撮像素子110の撮像面側に配置される。レンズ群130は、複数のレンズL1〜L4で構成され、入射する光を固体撮像素子110の撮像面へと導光する。
【0034】
絞り140は、レンズ群130のレンズL3とレンズL4との間に配置される。絞り140は、通過する光の量が調整可能となるように構成されている。
【0035】
筐体150は、固体撮像素子110、カバーガラス120、レンズ群130及び絞り140を収容する。
【0036】
撮像装置100において、被写体側より入射した光は、レンズL1、レンズL2、第3のレンズL3、絞り140、レンズL4、及びカバーガラス120を通って固体撮像素子110に入射する。この入射した光が固体撮像素子110にて電気信号に変換され、画像信号として出力される。
【0037】
第1の実施形態の光学フィルタは、例えばカバーガラス120、レンズ群130、すなわちレンズL1、レンズL2、レンズL3、もしくはレンズL4に用いられる。言い換えれば、従来の撮像装置のカバーガラスやレンズ群を第1の実施形態の光学フィルタにおける基板1としたとき、第1の実施形態の光学フィルタにおける光学層2は、基板1の表面に設けられる。
【0038】
撮像装置100のカバーガラス120やレンズ群130の撮像用光学フィルタとして第1の実施形態の光学フィルタを適用することで、入射角度依存性を改善することができるため、光の取り込み量の変動を抑制することができる。よって、特に近赤外領域の波長を有する光が入射することにより撮像を行う場合に撮像画像の画質の低下を抑制することができる。
【0039】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。光学層2は、基板1の片面のみに設けられてもよいし、基板1の両面に分割されて設けられてもよい。第1の実施形態の光学フィルタは、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置や自動露出計等における視感度補正フィルタとして用いられる。デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置においては、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置される。自動露出計においては、例えば受光素子の前面に配置される。
【0040】
撮像装置では、固体撮像素子の前面から離れた位置に第1の実施形態の光学フィルタを配置してもよいし、固体撮像素子、または固体撮像素子のパッケージに直接貼着してもよいし、固体撮像素子を保護するカバーを第1の実施形態の光学フィルタとしてもよい。また、モアレや偽色を抑制するための水晶やニオブ酸リチウム等の結晶を使用したローパスフィルタに直接貼着してもよい。
【実施例】
【0041】
本実施例では、可視領域および近赤外領域の波長を有する光を透過する光学フィルタについて説明する。TFCalc、Software Spectra社製の光学薄膜シミュレーションソフトを用いて、実施例1、実施例1a、実施例2、実施例3、および比較例1の光学フィルタの光学特性を評価した。実施例1、実施例1a、実施例2、実施例3、および比較例1のそれぞれは、ガラス基板と、当該ガラス基板に積層され、TiO
2膜からなる高屈折率層とSiO
2膜からなる低屈折率層とを有する光学層とを具備する光学フィルタである。
【0042】
実施例1、実施例2、実施例3、および比較例1の光学層の積層構造の詳細を表1および表2、ならびに
図3ないし
図6を参照して説明する。表1および表2、ならびに
図3ないし
図6における層Noは、ガラス基板に対する層の積層順序を表す。また、表1および表2におけるdは、各層の物理厚さを表す。さらに、
図3ないし
図6において、点線で囲まれた部分は上記式[ZLHL]^nで表されるスタックを表す。
【0043】
表1および表2、ならびに
図3ないし
図6におけるQWOTは、500nmの波長を有する光におけるQWOTである。また、表1および表2における屈折率(n)は、波長依存性を考慮して計算した値である。屈折率には、分散などと呼ばれる波長依存性がある。例えば、300〜1300nmの波長範囲において、本出願が対象とする層の物質などでは、波長が短いほど屈折率が大きく、波長が長くなると屈折率は小さくなる傾向がある。これら波長−屈折率の関係は線形関係ではなく、一般的にはHartmann、Sellmeierなどの近似式を用いて表されることが多い。また、膜物質の屈折率(分散)は、各種成膜条件によって変わる。そのため、蒸着法、イオンアシスト蒸着法、スパッタ法などで成膜された各膜の屈折率の分散データを用いて上記屈折率(n)を算出した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
(実施例1)
実施例1の光学フィルタは、表1および表2、ならびに
図3(A)ないし
図3(C)に示すように、式[ZLHL]^7で表されるスタックを含む合計50層の積層構造からなる光学層を具備する。
【0047】
(実施例1a)
実施例1aの光学フィルタは、実施例1の光学フィルタの構成に加え、ガラス基板における光学層の形成面の反対面に長波長の赤外光をカットする層を具備する。
【0048】
(実施例2)
実施例2に係る光学フィルタは、表1および表2、ならびに
図4(A)ないし
図4(C)に示すように、式[ZLHL]^15で表されるスタックを含む合計70層の積層構造からなる光学層を具備する。
【0049】
(実施例3)
実施例3に係る光学フィルタは、表1および表2、ならびに
図5(A)ないし
図5(C)に示すように、式[ZLHL]^11で表されるスタックを含む合計58層の積層構造からなる光学層を具備する。
【0050】
(比較例1)
実施例1に係る光学フィルタは、表1および表2、ならびに
図6(A)ないし
図6(C)に示すように、上記式[ZLHL]^nで表されるスタックを含まない合計46層の積層構造からなる光学層を具備する。
【0051】
実施例1、実施例1a、実施例2、実施例3、および比較例1の光学フィルタの光学特性を
図7ないし
図11を参照して説明する。
図7は、実施例1における光学フィルタの光学スペクトルを示す図であり、
図8は、実施例1aにおける光学フィルタの光学スペクトルを示す図であり、
図9は、実施例2における光学フィルタの光学スペクトルを示す図であり、
図10は、実施例3における光学フィルタの光学スペクトルを示す図であり、
図11は、比較例1における光学フィルタの光学スペクトルを示す図である。なお、
図7ないし
図11では、光学層の平面方向に垂直な方向に対して0度、10度、20度、30度、35度、40度の異なる入射角度を有する光を入射したときの光学スペクトルを示している。
【0052】
図7ないし
図11からわかるとおり、実施例1、実施例1a、実施例2、実施例3、および比較例1の光学フィルタの光学スペクトルは、可視領域(400nm以上700nm未満の波長を含む領域)に第1の光透過帯を有し、近赤外領域(700nm以上1050nm以下の波長を含む領域)に第2の光透過帯を有することがわかる。さらに、第1の光透過帯よりも短波長側および長波長側、ならびに第2の光透過帯よりも短波長側および長波長側に光透過阻止帯を有することがわかる。また、実施例1aの光学フィルタの光学スペクトルは、実施例1の光学フィルタの光学スペクトルと比較して1050nm以上の波長を有する光の透過が阻止されていることがわかる。
【0053】
さらに、実施例1、実施例1a、実施例2、実施例3、および比較例1の光学フィルタの光学スペクトルでは、0度から40度までの間で入射角度が高くなるにつれて光透過帯の位置が短波長側にシフトしていることがわかる。特に波長が長くなるほどシフト量が大きくなることがわかる。
【0054】
上記光学スペクトルのデータから実施例1、実施例1a、実施例2、実施例3、および比較例1において、光学層の平面に垂直な方向に対して0度から40度までの入射角度の違いによる、第2の透過帯の光の透過光量の変動率と、第2の光透過帯において、上記入射角度の違いによる、長波長側の80%以上の透過率を示す波長のシフト量および0度の入射角度における80%以上の光の透過率を有する帯域の幅とを求めた。結果を表3に示す。
【0055】
上記変動率は、以下のように求めた。まず、0度の入射角度、700nm〜1050nmの波長範囲での1nmの波長毎における10%以上の透過率の積算値を求めた。次に、40度の入射角度、700nm〜1050nmの波長範囲での1nmの波長毎における10%以上の透過率の積算値を求めた。さらに、40度の入射角度の場合の上記積算値に対する0度の入射角度の場合の上記積算値の比を求めることにより、上記変動率を求めた。
【0056】
上記シフト量は、以下のように求めた。まず、第2の光透過帯において0度の入射角度の場合の長波長側の80%の光の透過率を示す波長を求めた。次いで、第2の光透過帯において40度の入射角度の場合の長波長側の80%の光の透過率を示す波長を求めた。そして、0度の入射角度の場合の長波長側の80%の光の透過率を示す波長と40度の入射角度の場合の長波長側の80%の光の透過率を示す波長との差を求めることにより上記シフト量を求めた。
【0057】
上記帯域の幅は、以下のように求めた。まず、第2の光透過帯において0度の入射角度の場合の短波長側および長波長側の80%の光の透過率を示す波長を求めた。そして、0度の入射角度の場合の長波長側の80%の光の透過率を示す波長と0度の入射角度の場合の短波長側の80%の光の透過率を示す波長との差を求めることにより上記帯域の幅を求めた。
【0058】
【表3】
【0059】
表3に示すように、実施例1、実施例1a、実施例2、および実施例3において、上記変動率は、いずれも7%以下であるのに対し、比較例1では、15%以上であった。また、実施例1、実施例1a、実施例2、および実施例3において、上記シフト量は、60nm未満であるのに対し、比較例1では、70nm以上であった。さらに、実施例1、実施例1a、実施例2、および実施例3において、上記帯域の幅は、上記シフト量の1.2倍以上であるのに対し、比較例1では、上記シフト量の1.2倍未満であった。このことから、実施例1、実施例1a、実施例2、および実施例3に示す光学フィルタにおいて、斜入射特性が改善されていることがわかる。
【0060】
なお、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。