特許第6468037号(P6468037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468037
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   H01L21/304 644A
   H01L21/304 622Q
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-77800(P2015-77800)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-197690(P2016-197690A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2017年3月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 淳一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 三千登
(72)【発明者】
【氏名】石井 薫
【審査官】 山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−127027(JP,A)
【文献】 特開2014−086666(JP,A)
【文献】 特開2014−133777(JP,A)
【文献】 特開2012−023209(JP,A)
【文献】 特開2000−124174(JP,A)
【文献】 特開2002−025956(JP,A)
【文献】 特開2000−317827(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3143684(JP,U)
【文献】 特開2008−036775(JP,A)
【文献】 特開平11−277404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを保持しながら該ウェーハを下方に送る研磨ヘッドと、該研磨ヘッドによって下方に送られた前記ウェーハの表面と接触して、該ウェーハの表面を研磨する研磨布とを具備する研磨装置であって、
さらに、該研磨ヘッドによって下方に送られた前記ウェーハの表面と接触して、該ウェーハの表面をスポンジで擦ることにより洗浄する洗浄部を具備し、前記ウェーハの研磨時には、前記研磨ヘッド、前記研磨布、又はその両方を移動させることで前記研磨ヘッドを前記研磨布の上方に位置させ、前記ウェーハの研磨後には、前記研磨ヘッド、前記洗浄部、又はその両方を移動させることで前記研磨ヘッドを前記洗浄部の上方に位置させる位置制御部を具備するものであり、
さらに、前記研磨ヘッドに前記ウェーハを装着するためのロードテーブルと、前記研磨ヘッドから前記ウェーハを脱離するためのアンロードテーブルとを備えたローディング/アンローディングステージと、複数の研磨布を具備し、前記洗浄部のスポンジが前記ロードテーブル上に配設されたものであり、前記位置制御部が、前記研磨ヘッドを移動させることで前記ウェーハの研磨に用いる前記研磨布を切り替え、かつ、前記位置制御部が、前記ウェーハの研磨後、前記研磨ヘッド、前記ローディング/アンローディングステージ、又はその両方を移動させることで前記研磨ヘッドを前記洗浄部の上方に位置させるものであることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
さらに、前記洗浄部に洗浄水を供給する洗浄水供給部を具備することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記洗浄部はポリビニルアルコール製スポンジであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの表面を研磨するための研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハ等のウェーハを研磨するために、ウェーハを保持するための研磨ヘッド、研磨ヘッドに保持されたウェーハに接触してウェーハの表面を研磨する研磨布等を具備する研磨装置が使用されている。また、一般的に、このような研磨装置を使用する場合には、シリカ等の砥粒及びアルカリ溶液から成る研磨スラリーを研磨布の表面に供給しながらウェーハの表面を研磨することが多い。
【0003】
ここで、一般的なロータリー方式の研磨装置について説明する。一般的なロータリー方式の研磨装置は、研磨ヘッド、研磨布を貼り付けた定盤(以下、研磨ステージと呼称する場合もある)、及び研磨ヘッドにウェーハを脱着するためのローディング/アンローディングステージを有している。このとき、研磨ステージを複数具備していても良い。また、ローディング/アンローディングステージは、研磨ヘッドにウェーハを装着(ロード)するためのロードテーブル、研磨ヘッドからウェーハを脱離させるためのアンロードテーブルを有していても良い。この研磨装置では、各研磨ステージで、定盤に貼り付けられた研磨布上に研磨スラリーを供給し、研磨ヘッドに保持されたウェーハの表面と研磨布を摺動させて研磨を行う。
【0004】
上記のような研磨装置を使用する場合、まず、収納ボックスに入っているウェーハを取り出し、取り出したウェーハをローディング/アンローディングステージ上のロードテーブルに置く。そして、ウェーハの置かれたロードテーブルが研磨ヘッドの下に待機し、その後研磨ヘッドが下降して研磨ヘッドにウェーハが貼り付く。
【0005】
続いて、ウェーハを保持した研磨ヘッドは研磨布が配設されている研磨ステージへ移動し、この研磨ステージにおける所定の研磨代分の研磨完了後に定盤から離れて、次の研磨ステージへ移動する。移動後、当該ウェーハの研磨の続きを行う。このようにして研磨に使用する各研磨ステージを切り替えながら研磨を進めていく。
【0006】
上記のような研磨の完了後、研磨後のウェーハを保持した研磨ヘッドはローディング/アンローディングステージ上に移動し、アンロードテーブルにて研磨ヘッドからウェーハが剥離(アンロード)される。以上のように、ロータリー方式の研磨装置は、ウェーハを保持した研磨ヘッドの位置を、研磨ステージ間、又は研磨ステージとローディング/アンローディングステージ間で順に交換しながら研磨を行う。
【0007】
研磨装置で研磨した後のウェーハの表面には、研磨スラリーに含まれているシリカ等の砥粒やアルカリ溶液等が付着している。そのため、研磨完了後に、ウェーハを研磨ヘッドから取り外し、洗浄装置に投入して洗浄を行うことが多い(例えば、特許文献1、2参照)。特に、半導体ウェーハをロータリー方式で搬送する研磨装置を使用する場合には、研磨ヘッドからウェーハを取り外した後、スクラブ洗浄や薬液ディップ洗浄が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−074574号公報
【特許文献2】特開2014−167996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年の半導体素子の高集積度化に伴い、表面のパーティクル等の欠陥の総数(Sum Of Defects:SOD)がより少ないウェーハが必要とされている。そのため、SODレベルの改善が要求されている。
【0010】
その要求を満たすための対応として、洗浄による除去効率を上げることと、研磨中に付着するシリカやアルカリ溶液をできる限り洗浄機へ持ち込まないことが必要となる。例えば、除去効率を上げるためには洗浄装置自体の改善や、除去効果のより高い洗浄条件に変更する。例えば、洗浄液や洗浄温度、時間等である。この場合、図8に示すように、洗浄後のウェーハの表面の欠陥の平均総数(SOD)は減少する。しかし、一方で、図9に示すようにウェーハの表面の平滑性を表すパラメーターであるDW−Hazeが大きく悪化してしまう。
【0011】
一方で、洗浄装置へのシリカ等の持ち込みを軽減し、洗浄工程における洗浄効果を向上させるためには、洗浄工程の前に取り外したウェーハのプレ洗浄を行うことが考えられる。しかしながら、この方法は、プレ洗浄のための新たな洗浄装置を追加する必要が有り、生産コストが増大してしまうので実用的ではない。また、研磨完了後に研磨ヘッドからウェーハを外し、プレ洗浄装置で処理すると、生産性が悪化してしまう。
【0012】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、ウェーハの表面の平滑性の悪化及び生産性の悪化を抑制したうえで、ウェーハ表面の洗浄効果を向上させることが可能な研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、ウェーハを保持しながら該ウェーハを下方に送る研磨ヘッドと、該研磨ヘッドによって下方に送られた前記ウェーハの表面と接触して、該ウェーハの表面を研磨する研磨布とを具備する研磨装置であって、さらに、該研磨ヘッドによって下方に送られた前記ウェーハの表面と接触して、該ウェーハの表面を洗浄する洗浄部を具備し、前記ウェーハの研磨時には、前記研磨ヘッド、前記研磨布、又はその両方を移動させることで前記研磨ヘッドを前記研磨布の上方に位置させ、前記ウェーハの研磨後には、前記研磨ヘッド、前記洗浄部、又はその両方を移動させることで前記研磨ヘッドを前記洗浄部の上方に位置させる位置制御部を具備するものであることを特徴とする研磨装置を提供する。
【0014】
このように、本発明の研磨装置は、研磨完了後のウェーハを研磨ヘッドから外す前に、ウェーハの表面を洗浄部に接触させて擦り、研磨スラリー等から生じる異物の除去を洗浄装置での洗浄前に実施することができる。すなわち、洗浄装置による本洗浄の前に、研磨装置内でプレ洗浄を行うことで、洗浄装置に持ち込む異物の量を低減でき、洗浄効果を向上させることができる。また、洗浄装置の洗浄能力を必要以上に上げる必要が無いのでウェーハ表面の平滑性の悪化を抑制できる。また、このプレ洗浄は研磨ヘッドからウェーハを取り外すことなく、研磨完了後に連続して実施できるため、生産タクトの増大を最小限に抑制できる。
【0015】
このとき、本発明の研磨装置は、さらに、前記洗浄部に洗浄水を供給する洗浄水供給部を具備することが好ましい。
【0016】
このような洗浄水供給部を具備していれば、洗浄水を供給しつつウェーハのプレ洗浄をすることができるため、一層ウェーハ表面の洗浄効果を向上させることができる。
【0017】
またこのとき、本発明の研磨装置は、さらに、前記研磨ヘッドに前記ウェーハを装着又は前記研磨ヘッドから前記ウェーハを脱離するためのローディング/アンローディングステージと、複数の研磨布を具備し、前記洗浄部が前記ローディング/アンローディングステージ上に配設されたものであり、前記位置制御部が、前記研磨ヘッドを移動させることで前記ウェーハの研磨に用いる前記研磨布を切り替え、かつ、前記位置制御部が、前記ウェーハの研磨後、前記研磨ヘッド、前記ローディング/アンローディングステージ、又はその両方を移動させることで前記研磨ヘッドを前記洗浄部の上方に位置させるものとすることができる。
【0018】
このように、ローディング/アンローディングステージ上に洗浄部を具備するものであれば、研磨終了後に研磨ヘッドでウェーハを保持したままの状態で速やかにプレ洗浄可能である。
【0019】
このとき、前記洗浄部はポリビニルアルコール製スポンジ(以下、PVAスポンジとも呼称する)とすることができる。
【0020】
本発明において、洗浄部としては、このような材質のスポンジを使用し、このスポンジによりスクラブ洗浄することが好適な態様である。また、このスポンジをローディング/アンローディングステージ上に設けることでウェーハの移送に伴うキズの発生を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の研磨装置であれば、ウェーハの表面の平滑性の悪化及び生産性の悪化を抑制したうえで、ウェーハ表面の洗浄効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の研磨装置の一例を示した上面図である。
図2】本発明の研磨装置における、研磨ステージの一例を示す概略側面図である。
図3】本発明の研磨装置における、洗浄部を配設したロードテーブルの一例を表す概略側面図である。
図4図3に示した洗浄部の概略上面図である。
図5】本発明の研磨装置を用いた研磨の手順を説明するフロー図である。
図6】実施例1、比較例1にて測定したSODを示すグラフである。
図7】実施例1、比較例1にて測定したHazeを示すグラフである。
図8】洗浄工程における洗浄能力の増加前後のSODを示すグラフである。
図9】洗浄工程における洗浄能力の増加前後のHazeを示すグラフである。
図10】実験例において測定したウェーハ表面のSODマップである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
上記のように、従来、研磨後のウェーハの洗浄において、洗浄装置への異物の持ち込みの増加により洗浄効果が低下し、ウェーハの表面のパーティクル等の異物を十分に除去できないという問題があった。さらに、洗浄装置による洗浄効果を十分に得るために新規の洗浄装置を導入してプレ洗浄を行ったり、洗浄装置の洗浄能力を増加させたりすると、生産タクトの増加やウェーハ表面のHazeの悪化が起こってしまうという問題があった。
【0025】
そこで、本発明者等はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、研磨装置に、ウェーハを研磨ヘッドに保持したままプレ洗浄可能な機構を配設することで、生産タクトの増加やHazeの悪化を抑制したうえで、後工程である洗浄工程における洗浄効果を向上させることを見出し、本発明を完成させた。
【0026】
以下、本発明の研磨装置の一態様を具体的に説明する。なお、以下の説明ではロータリー方式の研磨装置の場合を例に挙げて説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明の研磨装置1はウェーハを保持しながら該ウェーハを下方に送る研磨ヘッド2と、該研磨ヘッド2によって下方に送られた前記ウェーハの表面と接触して、該ウェーハの表面を研磨する研磨ステージ3とを具備する。
【0028】
研磨ヘッド2は、ウェーハを保持したまま自転することで、研磨布に対してウェーハを相対的に動かしながら接触させ、ウェーハ表面を研磨布で研磨できるものとしても良い。
【0029】
また、本発明の研磨装置は図1のように、研磨ステージ3を複数具備することで、研磨布を複数備える構成としても良いが、特にこれに限定されることは無く、研磨ステージ3及び研磨布は1つでも良い。また、図1において、複数の研磨ステージ3は中心軸13に対して同心円状に配設されているが、研磨ステージ3の配設位置もこれに限定されない。
【0030】
ここで、図2に研磨ステージ3の概略側面図を示す。図2のように研磨ステージ3は、主に研磨布4、定盤5から成る。この定盤5は回転可能なものとしても良い。また、研磨ヘッド2で保持したウェーハWの研磨する際に、研磨布4上に研磨スラリーを供給する研磨剤供給機構6を備えている。
【0031】
また、図1に示すように、本発明の研磨装置1は、研磨ヘッド2にウェーハを装着又は研磨ヘッド2からウェーハを脱離するためのローディング/アンローディングステージ7を具備しても良い。このローディング/アンローディングステージ7は、収納ボックス(不図示)から取り出したウェーハを研磨ヘッド2に装着するためのロードテーブル8を備えていても良い。また、ローディング/アンローディングステージ7は、ウェーハを研磨ヘッド2から脱離するためのアンロードテーブル9を備えていても良い。
【0032】
また、本発明の研磨装置1は、研磨ヘッド2によって下方に送られたウェーハの表面と接触して、ウェーハの表面を洗浄する洗浄部を具備する。図1に示す態様では、図3に示すように、研磨装置1はロードテーブル8上に洗浄部10を備えている。また、図3に示すように、洗浄部10として、直径3mm以上の突起が複数付いているものを使用することが好ましい。図4に洗浄部10の上面概略図を示す。このように、洗浄部10はウェーハと接触する面に上述の突起を備えている。さらに、洗浄部10としてはポリビニルアルコール製スポンジ(PVAスポンジ)を使用することができる。このような突起を備えたPVAスポンジによって、ウェーハの表面をスクラブ洗浄すれば、ウェーハから研磨スラリーを効果的に除去できる。
【0033】
また、本発明の研磨装置は、図1に示すように、洗浄部10に洗浄水を供給することが可能な洗浄水供給部11を具備することが好ましい。洗浄部に供給する洗浄水としては例えば、純水や機能水を使用することができる。ここでいう機能水とは、ウェーハの表面の平滑性を損なわない程度に洗浄力を向上させる目的で、純水に他の物質を混合又は溶解させた液体のことを言う。機能水としては、例えば、純水に水素を溶解させた水素水、純水にオゾンを溶解させたオゾン水などを使用できる。
【0034】
また、本発明の研磨装置1は、図1に示すように、位置制御部12a、12bを具備している。位置制御部12bは、研磨ヘッド2を位置制御部12bの中心軸13周りに旋回移動させることで研磨ヘッド2を研磨布4の上方又はローディング/アンローディングステージ7の上方に位置させることができる。位置制御部12aはローディング/アンローディングステージ7を自転させることで、研磨ヘッド2の直下に洗浄部10を備えたロードテーブル8とアンロードテーブル9のどちらかが位置するように制御できる。すなわち、位置制御部12a、12bによって研磨ヘッド2と研磨布4の相対位置及び研磨ヘッド2と洗浄部10の相対位置を所望の位置に制御することができる。なお、図1に示す位置制御部は、研磨ヘッド2を移動させるものと、ローディング/アンローディングステージ7を回転させることで、洗浄部10を移動させるものの2つの位置制御部を備える場合を示しているが、位置制御部の配設数はこれに限定されない。また、研磨布4(又は、研磨布が貼り付けられた定盤5、すなわち研磨ステージ3)を移動させるような位置制御部を有していても良い。
【0035】
図1に示すようなロータリー方式の研磨装置1においては、位置制御部12bが研磨ヘッド2を旋回移動させることでウェーハの研磨に用いる研磨布を切り替える。さらに、位置制御部12bが、ウェーハの研磨完了後に、研磨ヘッド2をローディング/アンローディングステージ7の上方に旋回移動させ、かつ、位置制御部12aが、ロードテーブル8の上方、すなわち、洗浄部10の上方に研磨ヘッド2が位置するようにローディング/アンローディングステージを自転させることができる。
【0036】
以上のような、本発明の研磨装置であれば、研磨完了後のウェーハを研磨ヘッドに保持したまま、洗浄部をウェーハの表面に接触させることでプレスクラブ洗浄を実施することができる。本発明の研磨装置におけるプレ洗浄により、後工程で使用する洗浄装置内への異物の持ち込み量が減少し、後工程である洗浄工程の洗浄効率を向上させることができるとともに、洗浄装置と洗浄剤の寿命を向上できる。また、プレ洗浄を行うことで、特に、ウェーハの外周部に密集したパーティクル等の異物も効果的に除去することが可能になる。
【0037】
また、研磨装置が洗浄部と位置制御部を具備していることで、プレ洗浄のために研磨ヘッドからのウェーハを外す作業などといった生産タスクを大幅に増加させる要因を排除できる。そのため、プレ洗浄による生産タスクの増加を最小限に抑えることができる。さらに、洗浄工程において洗浄装置の洗浄能力を上げる必要もないため、ウェーハ表面の平滑性の悪化、具体的には、Hazeの悪化を抑制することが可能である。
【0038】
続いて、図1図4に示した本発明の研磨装置1において研磨を実施する場合の手順を、図5に示すフロー図を参照して説明する。
【0039】
図5に示すように、まず、収納ボックスに入っているウェーハを取り出し、取り出したウェーハをローディング/アンローディングステージ7上のロードテーブル8に載置する(図5のS1)。この時、図3に示すように、ロードテーブル8上には洗浄部10が配置されている。そして、ウェーハが載置されたロードテーブル8及び研磨ヘッド2をウェーハのロードを行うロードポジションに移動させる。ロードテーブル8は位置制御部12aによりローディング/アンローディングステージ7を回転させることで、研磨ヘッド2は位置制御部12bにより旋回移動させることでロードポジションに移動させる。
【0040】
その後、研磨ヘッド2の下方にロードテーブル8が待機した状態から、研磨ヘッド2が下降することで研磨ヘッド2にウェーハが貼り付く(図5のS2)。ここで、洗浄部10として弾性体であるPVAスポンジを使用していれば、研磨ヘッド2にウェーハを押しつけて貼り付ける時のキズ防止効果が得られる。
【0041】
続いて、ウェーハを保持した研磨ヘッド2を、位置制御部12bによって研磨布4の上方へ旋回移動させる(図5のS3)。図1に示すように、研磨装置1は研磨布4が貼り付けられた定盤5を3つ備えているが、そのうちの1つの研磨布上に旋回移動する。そして、研磨ヘッド2を下降させることで、下方に送られたウェーハの表面と研磨布4を接触させる(図5のS4)。これにより、研磨が開始される(図5のS5)。この際に、上記したように研磨ヘッド2を自転させることで、ウェーハに研磨布4を摺接させて研磨を実施しても良い。
【0042】
そして一定時間経過して、ウェーハを所定の研磨代分研磨した後に、研磨ヘッド2を研磨布4から離し研磨を一旦停止する。そして、位置制御部12bにより研磨ヘッド2を、別の研磨布4上へ旋回移動させ上記と同様に研磨を再開する(図5のS6)。このようにして、位置制御部12bによって研磨ヘッド2を旋回移動させながら、研磨に使用する研磨布4を切り替えつつ研磨を進めていく。
【0043】
上記のようにして、ウェーハを最終目標厚さまで研磨した後(図5のS7)、研磨後のウェーハを保持した研磨ヘッド2を、位置制御部12bによってローディング/アンローディングステージ7上に移動させる。この際に、位置制御部12aによって、洗浄部10を備えたロードテーブル8を研磨ヘッドの下方に移動させる(図5のS8)。続いて、研磨ヘッド2を下降させ、研磨ヘッド2によって下方に送られたウェーハの表面と洗浄部10を接触させる(図5のS9)。これにより、ウェーハ表面のプレ洗浄を行う(図5のS10)。
【0044】
また、プレ洗浄の際に、研磨ヘッド2を自転させることで、ウェーハと洗浄部10を摺接させてプレ洗浄を実施しても良い。また、洗浄水供給部11から洗浄部10に洗浄水を供給しながらプレ洗浄を実施しても良い。これらによりプレ洗浄の効果を向上させることができる。
【0045】
なお、プレ洗浄時の研磨ヘッドの高さ位置は、ウェーハがPVAスポンジ等の洗浄部10に接触し始める高さ位置から0mm以上3mm以下下方の高さ位置となるような位置とすることができ、特に0.1mm程度下方の高さ位置とすることが好ましい。また、プレ洗浄時の研磨ヘッドの回転数は0.1rpm以上50rpm以下とすることができ、特に30rpm程度とすることが好ましい。また、洗浄水の供給量は、純水を使用する場合、1L/min以上7L/min以下とすることができ、特に3L/min程度とすることが好ましい。また、洗浄時間は20秒〜120秒とすることができ、特に20秒程度とすることが好ましい。
【0046】
また、洗浄部をウェーハ表面と接触させてプレ洗浄する際の物理的な押圧力は研磨ヘッドの上下位置(洗浄部に対する高さ位置)を変えることで調整できる。この場合、使用する洗浄部の材質やウェーハの直径などの条件に応じて、この押圧力を自動で制御する押圧力制御部を有していても良い。
【0047】
プレ洗浄終了後、研磨ヘッド2を上昇させ、洗浄部10から離す。その後、位置制御部12aによりアンロードテーブル9を研磨ヘッド2の下方(すなわち、アンロードポジション)に移動させる。続いて、研磨ヘッド2を下降させ、アンロードテーブル9にて研磨ヘッド2からウェーハをアンロードする(図5のS11)。
【0048】
以上のようにして、本発明の研磨装置を用いて、ウェーハの研磨を実施できる。そして、研磨ヘッド2からアンロードしたウェーハを、洗浄工程等の後工程に送る(図5のS12)。
【0049】
なお、上記の説明では、本発明の研磨装置がロータリー方式である場合の態様を例に挙げたが、これに限定されることは無い。本発明の研磨装置は、研磨終了後のウェーハを研磨装置内の洗浄部へ移動させ、プレ洗浄できるものであればよい。
【0050】
例えば、本発明の研磨装置は、ロードテーブル、研磨ステージ、洗浄部、アンロードテーブルを1つずつ独立して備える研磨装置でもよい。この場合、上述のロータリー方式の研磨装置の例のようにロードテーブル上に洗浄部を有する構造ではなく、ロードテーブルと洗浄部が互いに独立している。このような構造の研磨装置では、まず、ロードテーブルでウェーハを研磨ヘッドにロードし、その後、ウェーハを研磨する。研磨終了後、ロードテーブルから独立して配設されている洗浄部にて、研磨ヘッドでウェーハを保持したままプレ洗浄する。プレ洗浄終了後、ウェーハを研磨ヘッドからアンロードするというような手順でウェーハを研磨できる。
【0051】
(実験例)
本発明のプレ洗浄自体の洗浄効果を確認するために以下の実験を行った。図1に示した研磨装置1を使用して、2枚の直径300mmのシリコンウェーハ(ウェーハ1、ウェーハ2)に研磨を行わず、洗浄部によるプレ洗浄のみ行った。プレ洗浄後、本洗浄前のウェーハ表面のSODを測定した。続いて、洗浄装置でウェーハ1、2を本洗浄し、本洗浄後のウェーハ表面のSODを測定した。
【0052】
一方で、上記と同様の2枚のシリコンウェーハ(ウェーハ1、ウェーハ2)に研磨を行わず、プレ洗浄も行うことなく洗浄装置による洗浄のみ実施した。この洗浄の条件は、上記の本洗浄と同一条件とした。これらのウェーハ1、2についても、洗浄前後のウェーハ表面のSODを測定した。
【0053】
その結果を図10に示す。プレ洗浄を行うことで特に外周部の汚れが除去されている。また、プレ洗浄による汚れや傷の発生も無く、SODも低減されていた。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
図1に示すような本発明の研磨装置1を使用して、図5に示したフローに従い、複数枚の直径300mmのシリコンウェーハの研磨を実施した。
【0056】
このときの研磨装置1におけるプレ洗浄条件は以下のようにした。洗浄部10としては、図3、4に示したような直径3mm以上の突起を複数備えるPVAスポンジを使用した。また、プレ洗浄時に研磨ヘッド2をPVAスポンジと接触させた状態で回転させ、その回転数を30rpmとした。また、プレ洗浄時の研磨ヘッドの高さ位置は、ウェーハがPVAスポンジに接触し始める高さ位置から0.1mm下方の高さ位置とした。洗浄水としては純水を使用した。また、洗浄時間は20秒とした。
【0057】
(比較例1)
図1の本発明の研磨装置から、洗浄部10及び洗浄水供給部11を除いた従来の研磨装置を使用して複数枚の直径300mmのウェーハの研磨を実施した。すなわち、比較例1では基本的に上記実施例1と同様の研磨条件でウェーハの研磨を実施したが、研磨装置内でのプレ洗浄を実施しなかった。
【0058】
実施例1及び比較例1において研磨したウェーハをそれぞれ研磨装置とは別の洗浄装置に投入し、洗浄した後、ウェーハのSOD(欠陥総数)及びHazeを評価した。なお、SODは、パーティクル測定機(KLA−Tencor社製 SP−3)を使用し、ナローモードとワイドモードを有効にして測定した。
【0059】
図6及び表1に、実施例1、比較例1におけるSODの測定結果をまとめたものを示す。
【0060】
【表1】
【0061】
図7及び表2に、実施例1、比較例1におけるHazeの測定結果をまとめたものを示す。
【0062】
【表2】
【0063】
その結果、実施例1のように研磨終了後、研磨ヘッドからウェーハを外さずにプレ洗浄を行うことで、SODを低減でき、またSODのバラツキを小さく抑えることができた。また、Hazeを従来方式(比較例1)の同等以下に抑えることができた。また、研磨ヘッドからウェーハを外さずにプレ洗浄を行えるので生産タスクの増加も最小限に抑えることができた。以上の結果から、本発明の研磨装置によって、ウェーハの表面の平滑性の悪化及び生産性の悪化を抑制したうえで、ウェーハ表面の洗浄効果を向上させることができることが確認された。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0065】
1…本発明の研磨装置、 2…研磨ヘッド、 3…研磨ステージ、
4…研磨布、 5…定盤、 6…研磨剤供給機構、
7…ローディング/アンローディングステージ、 8…ロードテーブル、
9…アンロードテーブル、 10…洗浄部、 11…洗浄水供給部、
12a、12b…位置制御部、 13…中心軸、
W…ウェーハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10