【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
[実施例
1、参考例1〜3、比較例1〜4]
図1に示す試験装置を用いて剥離効果を調べる実験を行った。
当該試験装置は、剥離剤を貯留する保有水量15Lのタンク10と、タンク10の剥離剤を不図示のポンプにより配管12、配管14、配管14の途中に設けられたシリコンチューブ16と、配管18とを通じて循環させる循環システムと、剥離剤等の供給を開放したり閉鎖したりするコック20、22、24、26とを備えている。また、剥離剤のうち化学物質をタンク10へ供給するための化学物質供給手段28と微細気泡もしくは粗大気泡をタンクの保有水中に供給するための気泡発生手段30とを備えている。なお、図中の矢印は剥離剤や化学物質等の流体の流れ方向を示すものである。
【0029】
実験はまず、グルコース30mg/L、ポリペプトン6mg/L、酵母エキス3mg/L、KH
2PO
40.38mg/L、Na
2HPO
40.63mg/L、残部脱塩素水道水からなる培地を30℃の温度条件下で、配管14を通じて、内径3mmのシリコンチューブ16に0.2m/秒の線速度で5日間連続通水し、シリコンチューブ16内にスライムを形成させた。なお、このときコック22、24は開放とし、コック20、26は閉鎖とした。
【0030】
シリコンチューブ16の一部を採取し、20cmずつ切り取り、脱塩素水道水で洗浄した後、0.1%クリスタルバイオレット水溶液で20分間染色した。染色後、再び脱塩素水道水で洗浄し、スライムに吸着したクリスタルバイオレットを、20mlのエタノールで抽出し590nmの吸光度を測定した。剥離処理前の吸光度は、下記表1に示すとおり、各例で1.19〜1.39の範囲であった。
【0031】
コック22を閉鎖して培地の通水を止め、コック20、26を開放しコック24を閉鎖して、タンク10から剥離剤を、配管12、配管14、配管18を通じてシリコンチューブ16に0.2m/秒の線速度で循環通水した。
【0032】
ここで、微細気泡を供給する場合は、気泡発生手段30として森鉄工株式会社製Pao50型微細気泡発生装置を用い、8ml/分で空気を通気して供給した。
得られた微細気泡の気泡径、総気泡密度を粒度分布測定装置 SALD−7500nano(島津製作所製)により測定したところ、1〜100μmの粒子が8,000個〜190,000/mlの範囲で存在した。なお、気泡径、総気泡密度は、スライム接触時においても同程度であると推察される。
また、粗大気泡を供給する場合は、気泡発生手段30として直径20mmの気泡を供給する散気球を用いて2L/分で空気を通気して供給した。
【0033】
化学物質供給手段28から供給される化学物質は次亜塩素酸ナトリウムや、塩素化スルファミン酸、又は塩素化メタンスルホンアミドを発生する物質として、次亜塩素酸、スルファミン酸、メタンスルホンアミドを用い(表1参照)、これを循環水中の全残留塩素濃度として1mg/Lとなるように化学物質供給手段28から供給した。
【0034】
16時間通水後、循環を停止し剥離処理後のシリコンチューブ16を20cmずつ切り取り、脱塩素水道水で洗浄した後、0.1%クリスタルバイオレット水溶液で20分間染色した。染色後、再び脱塩素水道水で洗浄し、スライムに吸着したクリスタルバイオレットを、20mlのエタノールで抽出し590nmの吸光度(A590)を測定した。
【0035】
剥離処理前の吸光度と処理後の吸光度より、各処理が及ぼすスライムの剥離率を求めた。
具体的には、剥離率は、(「剥離処理前のA590」−「剥離処理後のA590」)/「剥離処理前のA590」×100の式から求めた。結果を下記表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
化学物質を加えず微細気泡のみを通水した系(
参考例1)は剥離率42%と、比較例1、比較例2と比較して明らかな剥離効果が認められた。一方、塩素化スルファミン酸、塩素化メタンスルホンアミドの安定化塩素剤は、粗大気泡との併用でそれぞれ51%(比較例3)、39%(比較例4)の剥離効果を示した。さらに、微細気泡に所定の化学物質を注入することにより、剥離率は44%に向上し、特に、実施例
1では72%、
参考例3では63%と大きく向上し、明らかな併用効果が確認された。
【0038】
[実施例
2、参考例4、比較例5,6]
図2に示す試験装置を用いて剥離効果を調べる実験を行った。
当該試験装置は、剥離剤を貯留する保有水量15Lのタンク50と、タンク50の剥離剤を不図示のポンプにより配管52、ゴム板56を内部に有するアクリルカラム58、配管54を通じて循環させる循環システムを備えている。また、補給水を供給するための配管70が設けられており、剥離剤のうち化学物質をタンク50へ供給するための化学物質供給手段72が配管70の途中に設けられている。さらに、微細気泡もしくは粗大気泡をタンクの保有水中に供給するための気泡発生手段74を備えている。なお、図中の矢印は剥離剤や化学物質等の流体の流れ方向を示すものである。
【0039】
実験はまず、脱塩素水にグルコース50mg/L、ポリペプトン10mg/L、酵母エキス5mg/L、KH
2PO
40.6mg/L、NaH
2PO
41mg/Lの濃度となるように加えたものを補給水とし、これを配管70を通じて3.6L/日の速度でタンク50内へ通水した。このとき、水温は30℃、pHは7.5±0.5となるように塩酸と水酸化ナトリウム水溶液で調整した。散気管により5L/分の通気量で空気を通気した。
【0040】
スライムの評価は、タンク50内にある保有水を5.6L/分の流速でアクリルカラム(φ20mm)58に通水し、アクリルカラム58内に設置したゴム板56(15mm×50mm)に付着するスライムの量を測定することにより行った。
【0041】
通水開始7日目にはゴム板56にスライムの形成が認められた。ゴム板56を採取し付着重量を測定した結果、12.0mg/dm
2の付着が確認された。通水開始8日目より、気泡を含む剥離剤の添加を開始した。
【0042】
ここで、微細気泡を供給する場合は、気泡発生手段74として森鉄工株式会社製Pao50型微細気泡発生装置を用い、8ml/分で空気を通気して供給した。
得られた微細気泡の気泡径、総気泡密度を粒度分布測定装置 SALD−7500nano(島津製作所製)により測定したところ、1〜100μmの粒子が30,000個〜270,000/mlの範囲で存在した。なお、気泡径、総気泡密度は、スライム接触時においても同程度であると推察される。
また、粗大気泡を供給する場合は、気泡発生手段74として直径115mmの気泡を供給する散気板を用いて2L/分で空気を通気して供給した。
さらに、化学物質として次亜塩素酸及びスルファミン酸を用い、塩素化スルファミン酸が供給水中の全残留塩素濃度が1mg/L前後で発生するように化学物質供給手段72から供給した。なお、用いた気泡の種類及び化学物質は下記表2のとおりである。
【0043】
通水開始より約14日間の連続運転を行い、ゴム板に付着したスライム量を測定した。結果を下記表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
比較例5(粗大気泡のみ)ではスライム量が17.7mg/dm
2に対し、
参考例4(微細気泡のみ)ではスライム量9.1mg/dm
2と剥離効果が認められた。比較例6(粗大気泡+塩素化スルファミン酸)でもスライム量5.9mg/dm
2で剥離効果が確認されたが、実施例
2(微細気泡+塩素化スルファミン酸)ではスライム量3.3mg/dm
2とよりスライムの付着量は低かった。
以上の結果より、微細気泡単独により既に付着したスライムの剥離に良好な効果を示したが、さらに塩素化スルファミン酸を併用することにより、剥離をより促進する効果が認められることがわかった。