特許第6468048号(P6468048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468048
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】スライム剥離剤及びスライムの剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20190204BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20190204BHJP
   A61L 2/02 20060101ALI20190204BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20190204BHJP
   A01N 59/08 20060101ALI20190204BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20190204BHJP
   A01N 25/22 20060101ALI20190204BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   C02F1/00 U
   C02F1/50 520K
   C02F1/50 531M
   C02F1/50 531P
   C02F1/50 531L
   C02F1/50 510C
   C02F1/50 520P
   C02F1/50 560Z
   A61L2/02
   C09K3/00 S
   A01N59/08 A
   A01P1/00
   A01N25/22
   A01N25/04
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-84036(P2015-84036)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-203046(P2016-203046A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 愛里
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/048904(WO,A1)
【文献】 特開2010−043060(JP,A)
【文献】 特開2003−146817(JP,A)
【文献】 特開2013−180956(JP,A)
【文献】 特開2008−032241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
A61L 2/02
C02F 1/50
A01N 59/08
A01P 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡径が1〜100μmである微細気泡を、総気泡数密度1,000個/ml以上で含み、かつ、ハロゲン系酸化剤、及び前記ハロゲン系酸化剤のハロゲンを分子内に保持できる安定化剤が配合されてなるスライム剥離剤であって、前記ハロゲン系酸化剤のハロゲンが塩素であり、前記安定化剤がスルファミン酸であるスライム剥離剤。
【請求項2】
前記ハロゲン系酸化剤が、有効塩素濃度として0.1〜1000mg/L配合されてなる請求項1に記載のスライム剥離剤。
【請求項3】
前記ハロゲン系酸化剤の有効塩素と前記安定化剤の含有割合が、モル比で2:1〜1:5である請求項1または2に記載のスライム剥離剤。
【請求項4】
スライムが付着した水系に請求項1〜のいずれか1項に記載のスライム剥離剤を供給するスライムの剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライム剥離剤及びスライムの剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工場やビルの冷却水プロセス、製紙プロセス、膜処理プロセスでは、細菌等の微生物によってスライム(バイオフィルム)が系内に発生し、熱効率低下や品質劣化、膜の閉塞等の障害を引き起こす。このようなスライムによる障害を防ぐ方法として、原因となる微生物の死滅や増殖抑制を狙いとした抗菌剤の添加や、付着したスライムを剥離・洗浄する方法が利用されてきた。
【0003】
近年、微細気泡(ファインバブル又はウルトラファインバブル)を用いた技術が様々な産業分野で利用されている。ファインバブルとは、おおむね数100μmから1μmの気泡径を持つ気泡を指し、おおむね1μm以下の気泡径の泡はウルトラファインバブルと総称される。これらの微細気泡は、高い酸素溶解効率を示すだけでなく、気泡表面の帯電や圧壊によるフリーラジカルの発生、生物の活性化等の物理的特長を持つことから、スライムコントロールへの利用も行われている。
【0004】
例えば特許文献1では微細気泡で冷却水系内に設けた担体上の微生物を活性化し、その有機物分解能力を高めることで系内を清澄に保つ技術が開示されている。また、特許文献2では微細気泡への微生物の吸着により除去する技術が開示されている。特許文献3では、微細気泡と殺菌剤の併用効果について検討されており、浮遊性の細菌やスライム中の細菌の殺菌に効果を示すことが開示されている。
しかしながら、これらにはスライムの剥離については言及がされていない。
【0005】
従来、スライム剥離剤としてはヒドラジンが広く利用されてきたが、発がん性等の危険性が指摘されている。また、次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素等も利用されているが、これらの無機酸化剤は、金属材質や膜の劣化、紙の品質低下を引き起こす問題点がある。
【0006】
そのような中、例えば特許文献4では、塩素系酸化剤とスルファミン酸および/またはその塩と、アルカリとを含有し、一製剤として調整されたスライム剥離剤(塩素化スルファミン酸)が開示されており、安全性や工業プロセスへの影響の観点から優れた薬剤であることが記載されている。こうした剥離効果は塩素化スルファミン酸ならびに類似の安定化ハロゲン化合物が有するスライム内部への浸透性に起因するとみられる(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4184390号公報
【特許文献2】特許5534414号公報
【特許文献3】特開2013−180956号公報
【特許文献4】特許3915560号公報
【特許文献5】特許4315242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4及び特許文献5に対しては、環境面への影響や薬剤コストの低減から、使用者からは化学物質の使用量を削減したいという要求があり、薬剤の使用量を低減できる新たな技術の開発が求められている。
【0009】
以上の点に鑑み、本発明は、水系において形成されるスライムを剥離する際に、使用される化学物質を用いることなく、又は、用いた場合でもその使用量を低減させることが可能で、かつ、スライムの剥離効果が良好なスライム剥離剤、及び当該剥離剤を使用したスライムの剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、下記本発明に想到し当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0011】
[1] 気泡径が1〜100μmである微細気泡を、総気泡数密度1,000個/ml以上で含むスライム剥離剤。
[2] ハロゲン系酸化剤が配合されてなる[1]に記載のスライム剥離剤。
[3] 前記ハロゲン系酸化剤のハロゲンを分子内に保持できる安定化剤が配合されてなる[2]に記載のスライム剥離剤。
[4] 前記ハロゲン系酸化剤のハロゲンが塩素であり、前記安定化剤がスルファミン酸である[3]に記載のスライム剥離剤
[5] スライムが付着した水系に[1]〜[4]のいずれかに記載のスライム剥離剤を供給するスライムの剥離方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水系において形成されるスライムを剥離する際に、使用される化学物質を用いることなく、又は、用いた場合でもその使用量を低減させることが可能で、かつ、スライムの剥離効果が良好なスライム剥離剤、及び当該剥離剤を使用したスライムの剥離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1〜4、比較例1〜4で使用した試験装置の構成の概略を示す構成概略図である。
図2】実施例5,6、比較例5,6で使用した試験装置の構成の概略を示す構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1]スライム剥離剤
本発明のスライム剥離剤は、気泡径が1〜100μmである微細気泡を含み、総気泡数密度が1,000個/ml以上となっている。かかる構成のスライム剥離剤によれば、従来の化学物質(後述するようなハロゲン系酸化剤等)を剥離剤成分とした剥離剤と同様若しくはそれ以上の剥離効果を発揮することができる。このような微細気泡によるスライム剥離の機構は明確ではないが、疎水性物質に対する微細気泡の吸着と浮上効果、あるいは圧壊時の衝撃やフリーラジカルの発生等の物理的効果が考えられる。後述するような安定化ハロゲン化合物との併用においても、同化合物のスライム内への浸透と酸化反応に対し、これらの物理的な効果が相乗的影響を示すものと推察される。
【0015】
気泡径が1μm未満であると、作製にエネルギーを要し、100μmを超えると、粗大気泡となり短時間で水面に上昇してしまう。気泡径は、1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。
【0016】
本発明に係る微細気泡の形成方法としては、任意の公知の手段、例えばスタティックミキサー式、キャビテーション式、気液せん断方式、加圧溶解方式、超音波方式、微細孔方式、微細孔振動板方式等が挙げられる。
【0017】
また、総気泡数密度が1,000個/ml未満では、微細気泡の効果が得られにくくなる。総気泡数密度は、5,000個/ml以上であることが好ましく、10,000個/ml以上であることがより好ましい。
総気泡数密度は、既述の気泡形成方式において調整することができる。
【0018】
気泡径及び総気泡数密度は、例えば、粒度分布測定装置 SALD−7500nano(島津製作所製)により測定して求めることができる。
【0019】
本発明のスライム剥離剤にはハロゲン系酸化剤が配合されてなることが好ましい。微細気泡とともにハロゲン系酸化剤が存在することで、微細気泡による疎水性物質に対する微細気泡の吸着と浮上効果に加えて、ハロゲン系酸化剤による剥離効果が相乗的に組み合わされて、さらなるスライムの剥離効果が得られると推察される。
【0020】
ハロゲン系酸化剤としては、塩素系、臭素系、ヨウ素系などハロゲン系の酸化剤であれば限定されるものではなく、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等を利用できる。
【0021】
ハロゲン系酸化剤の配合量は、有効塩素濃度として0.1〜1000mg/Lであることが好ましく、1〜100mg/Lであることがより好ましい。1〜1000mg/Lであることで、効果的なスライムの剥離効果を得ることができる。
【0022】
ハロゲン系酸化剤を配合する場合は、ハロゲンを分子内に安定に保持できる安定化剤を配合することが好ましい。これによりスライム剥離剤中で安定化ハロゲン化合物が形成される。
【0023】
ハロゲン系酸化剤を保持できる(安定化させる)安定化剤も限定されるものではないが、炭酸、カルボン酸、アミノ酸、硫酸等の酸アミド誘導体であって、NH基を有するものが好ましい。例えばスルファミン酸、カルバミン酸、メタンスルホンアミド等のスルホンアミド類;グリシン等のアミノ酸;が挙げられる。また、アンモニア;並びに硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム塩も利用できる。
ハロゲン系酸化剤と安定化剤とから、例えば、塩素化スルファミン酸や塩素化メタンスルホンアミドといった安定化ハロゲン化合物(安定化塩素剤)が得られる。
【0024】
安定化ハロゲン化合物を形成させるための混合比率としては、ハロゲン系酸化剤の有効塩素と安定化剤の含有割合が、モル比で2:1〜1:5であることが好ましく、2:1〜1:2であることがより好ましい。
【0025】
[2]スライムの剥離方法
本発明のスライムの剥離方法は、スライムが付着した水系に既述の本発明のスライム剥離剤を供給する方法である。スライム剥離剤の供給方法は、例えば、工業プロセス内の水に注入すればよく、披処理水中に直接、微細気泡を吹き込んでもよく、あるいは予め微細気泡を含んだ水を注入してもよい。あるいは披処理水の一部の水を採取し微細気泡を吹き込んだ後、もとに戻すこともできる。また、微細気泡を注入した水に上記剥離剤を加えてもよいし、剥離剤を既に溶解した水に微細気泡を注入してもよい。いずれにしても、スライムに作用する際に少なくとも本発明に係る微細気泡が存在すればよい。
なお、本発明のスライム剥離剤、又はこれが供給される水系には、その他の化学物質や薬剤を添加することも可能である。
【0026】
処理対象となる水系としては、スライムが発生する水系であれば特に限定されず、例えば、各種工場のプラント冷却水系、スクラバー、紙パルプ水系、廃水処理水系、排水処理水系、鉄鋼水系、切削油水系、RO膜等の分離膜を用いた膜プロセス水系などが挙げられ、これらの装置、通水配管などに付着したスライムを剥離することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
[実施例1、参考例1〜3、比較例1〜4]
図1に示す試験装置を用いて剥離効果を調べる実験を行った。
当該試験装置は、剥離剤を貯留する保有水量15Lのタンク10と、タンク10の剥離剤を不図示のポンプにより配管12、配管14、配管14の途中に設けられたシリコンチューブ16と、配管18とを通じて循環させる循環システムと、剥離剤等の供給を開放したり閉鎖したりするコック20、22、24、26とを備えている。また、剥離剤のうち化学物質をタンク10へ供給するための化学物質供給手段28と微細気泡もしくは粗大気泡をタンクの保有水中に供給するための気泡発生手段30とを備えている。なお、図中の矢印は剥離剤や化学物質等の流体の流れ方向を示すものである。
【0029】
実験はまず、グルコース30mg/L、ポリペプトン6mg/L、酵母エキス3mg/L、KHPO0.38mg/L、NaHPO0.63mg/L、残部脱塩素水道水からなる培地を30℃の温度条件下で、配管14を通じて、内径3mmのシリコンチューブ16に0.2m/秒の線速度で5日間連続通水し、シリコンチューブ16内にスライムを形成させた。なお、このときコック22、24は開放とし、コック20、26は閉鎖とした。
【0030】
シリコンチューブ16の一部を採取し、20cmずつ切り取り、脱塩素水道水で洗浄した後、0.1%クリスタルバイオレット水溶液で20分間染色した。染色後、再び脱塩素水道水で洗浄し、スライムに吸着したクリスタルバイオレットを、20mlのエタノールで抽出し590nmの吸光度を測定した。剥離処理前の吸光度は、下記表1に示すとおり、各例で1.19〜1.39の範囲であった。
【0031】
コック22を閉鎖して培地の通水を止め、コック20、26を開放しコック24を閉鎖して、タンク10から剥離剤を、配管12、配管14、配管18を通じてシリコンチューブ16に0.2m/秒の線速度で循環通水した。
【0032】
ここで、微細気泡を供給する場合は、気泡発生手段30として森鉄工株式会社製Pao50型微細気泡発生装置を用い、8ml/分で空気を通気して供給した。
得られた微細気泡の気泡径、総気泡密度を粒度分布測定装置 SALD−7500nano(島津製作所製)により測定したところ、1〜100μmの粒子が8,000個〜190,000/mlの範囲で存在した。なお、気泡径、総気泡密度は、スライム接触時においても同程度であると推察される。
また、粗大気泡を供給する場合は、気泡発生手段30として直径20mmの気泡を供給する散気球を用いて2L/分で空気を通気して供給した。
【0033】
化学物質供給手段28から供給される化学物質は次亜塩素酸ナトリウムや、塩素化スルファミン酸、又は塩素化メタンスルホンアミドを発生する物質として、次亜塩素酸、スルファミン酸、メタンスルホンアミドを用い(表1参照)、これを循環水中の全残留塩素濃度として1mg/Lとなるように化学物質供給手段28から供給した。
【0034】
16時間通水後、循環を停止し剥離処理後のシリコンチューブ16を20cmずつ切り取り、脱塩素水道水で洗浄した後、0.1%クリスタルバイオレット水溶液で20分間染色した。染色後、再び脱塩素水道水で洗浄し、スライムに吸着したクリスタルバイオレットを、20mlのエタノールで抽出し590nmの吸光度(A590)を測定した。
【0035】
剥離処理前の吸光度と処理後の吸光度より、各処理が及ぼすスライムの剥離率を求めた。
具体的には、剥離率は、(「剥離処理前のA590」−「剥離処理後のA590」)/「剥離処理前のA590」×100の式から求めた。結果を下記表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
化学物質を加えず微細気泡のみを通水した系(参考例1)は剥離率42%と、比較例1、比較例2と比較して明らかな剥離効果が認められた。一方、塩素化スルファミン酸、塩素化メタンスルホンアミドの安定化塩素剤は、粗大気泡との併用でそれぞれ51%(比較例3)、39%(比較例4)の剥離効果を示した。さらに、微細気泡に所定の化学物質を注入することにより、剥離率は44%に向上し、特に、実施例では72%、参考例3では63%と大きく向上し、明らかな併用効果が確認された。
【0038】
[実施例2、参考例4、比較例5,6]
図2に示す試験装置を用いて剥離効果を調べる実験を行った。
当該試験装置は、剥離剤を貯留する保有水量15Lのタンク50と、タンク50の剥離剤を不図示のポンプにより配管52、ゴム板56を内部に有するアクリルカラム58、配管54を通じて循環させる循環システムを備えている。また、補給水を供給するための配管70が設けられており、剥離剤のうち化学物質をタンク50へ供給するための化学物質供給手段72が配管70の途中に設けられている。さらに、微細気泡もしくは粗大気泡をタンクの保有水中に供給するための気泡発生手段74を備えている。なお、図中の矢印は剥離剤や化学物質等の流体の流れ方向を示すものである。
【0039】
実験はまず、脱塩素水にグルコース50mg/L、ポリペプトン10mg/L、酵母エキス5mg/L、KHPO0.6mg/L、NaHPO1mg/Lの濃度となるように加えたものを補給水とし、これを配管70を通じて3.6L/日の速度でタンク50内へ通水した。このとき、水温は30℃、pHは7.5±0.5となるように塩酸と水酸化ナトリウム水溶液で調整した。散気管により5L/分の通気量で空気を通気した。
【0040】
スライムの評価は、タンク50内にある保有水を5.6L/分の流速でアクリルカラム(φ20mm)58に通水し、アクリルカラム58内に設置したゴム板56(15mm×50mm)に付着するスライムの量を測定することにより行った。
【0041】
通水開始7日目にはゴム板56にスライムの形成が認められた。ゴム板56を採取し付着重量を測定した結果、12.0mg/dmの付着が確認された。通水開始8日目より、気泡を含む剥離剤の添加を開始した。
【0042】
ここで、微細気泡を供給する場合は、気泡発生手段74として森鉄工株式会社製Pao50型微細気泡発生装置を用い、8ml/分で空気を通気して供給した。
得られた微細気泡の気泡径、総気泡密度を粒度分布測定装置 SALD−7500nano(島津製作所製)により測定したところ、1〜100μmの粒子が30,000個〜270,000/mlの範囲で存在した。なお、気泡径、総気泡密度は、スライム接触時においても同程度であると推察される。
また、粗大気泡を供給する場合は、気泡発生手段74として直径115mmの気泡を供給する散気板を用いて2L/分で空気を通気して供給した。
さらに、化学物質として次亜塩素酸及びスルファミン酸を用い、塩素化スルファミン酸が供給水中の全残留塩素濃度が1mg/L前後で発生するように化学物質供給手段72から供給した。なお、用いた気泡の種類及び化学物質は下記表2のとおりである。
【0043】
通水開始より約14日間の連続運転を行い、ゴム板に付着したスライム量を測定した。結果を下記表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
比較例5(粗大気泡のみ)ではスライム量が17.7mg/dmに対し、参考例4(微細気泡のみ)ではスライム量9.1mg/dmと剥離効果が認められた。比較例6(粗大気泡+塩素化スルファミン酸)でもスライム量5.9mg/dmで剥離効果が確認されたが、実施例(微細気泡+塩素化スルファミン酸)ではスライム量3.3mg/dmとよりスライムの付着量は低かった。
以上の結果より、微細気泡単独により既に付着したスライムの剥離に良好な効果を示したが、さらに塩素化スルファミン酸を併用することにより、剥離をより促進する効果が認められることがわかった。
【符号の説明】
【0046】
10 タンク
12,14,18 配管
16 シリコンチューブ
20,22,24,26 コック
28 化学物質供給手段
30 気泡発生手段
図1
図2