特許第6468283号(P6468283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468283
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系ゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/25 20060101AFI20190204BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20190204BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20190204BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   C08C19/25
   B60C1/00 Z
   B60C1/00 A
   C08L15/00
   C08K3/36
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-511616(P2016-511616)
(86)(22)【出願日】2015年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2015059590
(87)【国際公開番号】WO2015152038
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2017年11月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-74945(P2014-74945)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】姉崎 里志
(72)【発明者】
【氏名】杉村 岳史
(72)【発明者】
【氏名】山岸 英哲
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−253208(JP,A)
【文献】 特公昭48−020609(JP,B1)
【文献】 国際公開第2013/083742(WO,A1)
【文献】 特開2009−030032(JP,A)
【文献】 特表2011−518934(JP,A)
【文献】 特開2006−249189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08F6/00−301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る第1工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に、下記の式(1)で表される化合物を反応させる第2工程と、を備える変性共役ジエン系ゴムの製造方法。
【化6】
(式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは芳香環を含有する炭素数6〜10の炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、nは1〜8の整数である。)
【請求項2】
前記第2工程において、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体が存在する不活性溶媒中に、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端1モルに対して、1〜3モルの割合で、前記式(1)で表される化合物を添加する請求項1に記載の変性共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項3】
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体が、共役ジエン単量体単位50〜100重量%および芳香族ビニル単量体単位0〜50重量%を含む請求項1または2に記載の変性共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項4】
前記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、メチル基またはエチル基であり、Rは、ベンジル基、フェネチル基、またはフェニルプロピル基であり、Rは、メチル基、エチル基またはプロピル基であり、nは3〜5の整数である請求項1〜3のいずれかに記載の変性共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の変性共役ジエン系ゴムの製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴム。
【請求項6】
請求項5に記載の変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部と、シリカ10〜200重量部とを含有してなるゴム組成物。
【請求項7】
架橋剤をさらに含有してなる請求項6に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項9】
請求項8に記載のゴム架橋物を含んでなるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系ゴムの製造方法に関し、より詳しくは、低発熱性およびウエットグリップ性に優れ、低燃費タイヤを構成するために好適に用いられるゴム架橋物を与えることができる、変性共役ジエン系ゴムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用のタイヤには、環境問題および資源問題から低燃費性が強く求められる一方で、安全性の面から優れたウエットグリップ性が求められている。充填剤としてシリカを配合したゴム組成物の架橋物は、カーボンブラックを配合したゴム組成物の架橋物に比べて、低発熱性に優れるため、タイヤを構成した場合の転がり抵抗が小さくなる。そのため、シリカを配合したゴム組成物の架橋物を用いてタイヤを構成することにより、低燃費性に優れたタイヤを得ることができる。
【0003】
しかし、従来のゴムにシリカを配合しても、ゴムとシリカとの親和性が不十分であり、これらが分離しやすいため、このことに起因して、架橋前のゴム組成物の加工性が悪く、また、これを架橋して得られるゴム架橋物の低発熱性が不十分となる。
【0004】
そこで、ゴムとシリカとの親和性を改良すべく、例えば、特許文献1や特許文献2などに開示されるような種々のシランカップリング剤を、ゴム組成物に添加することが提案されている。しかし、シランカップリング剤を扱うには高度な加工技術が必要であり、また、シランカップリング剤が高価なことから配合量が多くなると、タイヤの製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献3〜5などに開示されるように、溶液重合法によりゴムの重合体を得る際に、重合体の活性末端に変性剤を反応させることにより、ゴム自体にシリカとの親和性を持たせる技術が検討されている。しかしながら、近年の自動車用のタイヤへの低燃費性およびウエットグリップ性への要求の高まりから、さらに低発熱性に優れ、しかもウエットグリップ性にも優れるゴム架橋物を与えることができるゴムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−46640号公報
【特許文献2】特開2012−17291号公報
【特許文献3】特開平1−249812号公報
【特許文献4】国際公開第2003/102053号
【特許文献5】特開2005−290355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることができる、変性共役ジエン系ゴムを製造するための変性共役ジエン系ゴムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、活性末端を有する共役ジエン系重合体に、変性剤として、特定の構造を有する化合物を用いることにより、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることができる変性共役ジエン系ゴムが得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
かくして、本発明によれば、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る第1工程と、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に、下記の式(1)で表される化合物を反応させる第2工程と、を備える変性共役ジエン系ゴムの製造方法が提供される。
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは芳香環を含有する炭素数6〜10の炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、nは0〜10の整数である。)
【0012】
前記の変性共役ジエン系ゴムの製造方法では、前記第2工程において、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体が存在する不活性溶媒中に、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端1モルに対して、1〜3モルの割合で、前記式(1)で表される化合物を添加することが好ましい。
【0013】
前記の変性共役ジエン系ゴムの製造方法では、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体が、共役ジエン単量体単位50〜100重量%および芳香族ビニル単量体単位0〜50重量%を含むことが好ましい。
【0014】
前記の変性共役ジエン系ゴムの製造方法では、前記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、メチル基またはエチル基であり、Rは、ベンジル基、フェネチル基、またはフェニルプロピル基であり、Rは、メチル基、エチル基またはプロピル基であり、nは3〜5の整数であることが好ましい。
【0015】
また、本発明によれば、前記の変性共役ジエン系ゴムの製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムが提供される。
【0016】
また、本発明によれば、前記の変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部と、シリカ10〜200重量部とを含有してなるゴム組成物が提供される。
【0017】
前記のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有してなることが好ましい。
【0018】
また、本発明によれば、前記のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【0019】
また、本発明によれば、前記のゴム架橋物を含んでなるタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることができる、変性共役ジエン系ゴムを製造するための変性共役ジエン系ゴムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔変性共役ジエン系ゴムの製造方法〕
本発明の変性共役ジエン系ゴムの製造方法は、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る第1工程と、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に、後述する式(1)で表される化合物を反応させる第2工程と、を備える。
【0022】
〔第1工程〕
まず、本発明の製造方法における第1工程について説明する。本発明の製造方法における第1工程は、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る工程である。
【0023】
第1工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得るために、重合に用いる共役ジエン化合物としては、特に限定されず、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、および1,3−シクロヘキサジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、1,3−ブタジエン、イソプレンおよび1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、およびイソプレンが特に好ましい。なお、これらの共役ジエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
また、本発明の製造方法においては、第1工程において製造する、活性末端を有する共役ジエン系重合体としては、共役ジエン化合物に加えて、芳香族ビニル化合物を共重合してなるものであってもよい。芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、およびジメチルアミノエチルスチレンなどを挙げることができる。これらのなかでも、スチレン、α−メチルスチレン、および4−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。なお。これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1工程において製造する、活性末端を有する共役ジエン系重合体は、共役ジエン単量体単位50〜100重量%を含むものが好ましく、55〜100重量%を含むものが特に好ましく、また、芳香族ビニル単量体単位0〜50重量%を含むものが好ましく、0〜45重量%を含むものが特に好ましい。
【0025】
また、本発明の製造方法においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体は、本発明の目的を損なわない範囲において、所望により、共役ジエン化合物、および芳香族ビニル化合物に加えて、これら以外の他の単量体を共重合してなるものであってもよい。他の単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などを挙げることができる。これらの他の単量体は、活性末端を有する共役ジエン系重合体中に、単量体単位として、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
【0026】
本発明の製造方法の第1工程において用いられる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2−ブテン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;等が挙げられる。これらの不活性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、たとえば、1〜50重量%となる量であり、好ましくは10〜40重量%となる量である。
【0027】
重合開始剤としては、上述した各単量体を重合させることにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤が好ましく使用される。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ−t−ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ−t−ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましく、n−ブチルリチウムが特に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
重合開始剤の使用量は、目的とする重合体の分子量に応じて決定すればよいが、単量体1000g当り、通常、1〜50ミリモル、好ましくは1.5〜20ミリモル、より好ましくは2〜15ミリモルの範囲である。
【0029】
本発明の製造方法の第1工程における、重合温度は、通常、−80〜+150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などのいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
【0030】
本発明の製造方法において、活性末端を有する共役ジエン系重合体が、2種以上の単量体単位から構成されている場合、その結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、ランダム状など種々の結合様式とすることができるが、ランダム状の結合様式であることが好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物は特に低発熱性に優れたものとなる。
【0031】
また、本発明の製造方法においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合に際し、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.01〜10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0032】
以上のようにして、本発明の製造方法における第1工程によれば、共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合することで、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0033】
本発明の製造方法の第1工程で得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、好ましくは1〜90モル%であり、より好ましくは5〜85モル%である。ビニル結合量が上記範囲にあると、得られるゴム架橋物が特に低発熱性に優れたものとなる。
【0034】
本発明の製造方法の第1工程で得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCとも言う)により検出されるピークトップ分子量は、ポリスチレン換算の値として、10,000〜1,000,000であることが好ましく、50,000〜850,000であることがより好ましく、100,000〜700,000であることが特に好ましい。なお、共役ジエン系重合体のピークが複数認められる場合は、GPCにより検出される共役ジエン系重合体に由来する、分子量の最も小さいピークのピークトップ分子量を、活性末端を有する共役ジエン系重合体のピークトップ分子量とする。活性末端を有する共役ジエン系重合体のピークトップ分子量が上記範囲にあると、得られるゴム架橋物が特に低発熱性に優れたものとなる。
【0035】
本発明の製造方法の第1工程で得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、好ましくは1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.4、特に好ましくは1.0〜1.3である。この分子量分布の値(Mw/Mn)が上記範囲にあると、得られるゴム架橋物が特に低発熱性に優れたものとなる。
【0036】
〔第2工程〕
次いで、本発明の製造方法における第2工程について説明する。本発明の製造方法における第2工程は、上述した第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に、下記の式(1)で表される化合物を反応させることにより、変性共役ジエン系ゴムを得る工程である。
【0037】
【化2】
【0038】
(式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは芳香環を含有する炭素数6〜10の炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、nは0〜10の整数である。)
【0039】
本発明の製造方法においては、上述した第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に、上記の式(1)で表される化合物を反応させることにより、共役ジエン系重合体を改質し、シリカなどの充填剤に対する親和性を改良することができ、これにより、優れた低発熱性およびウエットグリップ性を備えたゴム架橋物を与えることのできる変性共役ジエン系ゴムを得ることができる。
【0040】
上記の式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくは、メチル基またはエチル基である。R〜Rは、同じ基であっても、異なる基であってもよいが、式(1)で表される化合物の合成を容易にする観点からは、全て同じ基であることが好ましい。
【0041】
また、上記の式(1)において、Rは芳香環を含有する炭素数6〜10の炭化水素基であり、好ましくはベンジル基、フェネチル基、またはフェニルプロピル基であり、より好ましくはベンジル基である。式(1)におけるRが芳香環を含有する炭素数6〜10の炭化水素基であることにより、例えば式(1)におけるRが芳香環を含有しない炭化水素基である化合物を用いた場合に比して、得られる変性共役ジエン系ゴムのシリカなどの充填剤に対する親和性が改良され、より低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を得ることができる。
【0042】
また、上記の式(1)において、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基またはプロピル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0043】
また、上記の式(1)において、nは0〜10の整数であり、好ましくは1〜8の整数であり、より好ましくは3〜5の整数である。
【0044】
上記の式(1)で表される化合物の具体例としては、3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(ベンジルメチルアミノ)ブチルトリエトキシシランなどを挙げることができ、これらのなかでも、3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランを用いることが特に好ましい。なお、式(1)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
また、本発明の製造方法において、第2工程における、上記の式(1)で表される化合物の使用量は、特に限定されないが、上述の第1工程で得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体が存在する不活性溶媒中に、その活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端1モルに対して、好ましくは1〜3モル、より好ましくは1.0〜2.0モルの割合で、式(1)で表される化合物を添加する。上記の式(1)で表される化合物の使用量をこのような範囲とすることにより、特に低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることのできる変性共役ジエン系ゴムを効率良く得ることができる。なお、上述の第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体中に含まれる活性末端の数は、通常、第1工程において重合に使用した重合開始剤の量により決まるものであり、たとえば、重合開始剤を1モル使用した場合には、活性末端の数も1モル程度となる。また、後述するように、活性末端に、上記の式(1)で表される化合物を反応させる前に、活性末端の一部を不活性化した場合は、「活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端」の量は、式(1)で表される化合物を添加する時点において現に残存する活性末端の量を意図するものである。
【0046】
上記の式(1)で表される化合物が、上述の第1工程で得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体が存在する不活性溶媒中に添加されると、活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端と式(1)で表される化合物とが反応する。この反応は、通常、式(1)で表される化合物の「Si」で表されるケイ素原子と共役ジエン系重合体の重合体鎖との間に結合が形成されると共に、式(1)で表される化合物のアルコキシ基(式(1)において、「Si」で表されるケイ素原子に結合した、「RO−」、「RO−」および「RO−」で表される基のいずれか)が、式(1)で表される化合物から脱離する形で進行する。
【0047】
本発明の製造方法の第2工程において、上述した第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に、上記の式(1)で表される化合物を反応させる方法としては、特に限定されないが、上述した第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体の溶液に、溶媒に溶解した式(1)で表される化合物を添加して、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した共役ジエン系重合体の重合に用いる溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上述した第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体を、その重合に用いた重合溶液のままの状態とし、ここに式(1)で表される化合物を添加する方法が簡便であり好ましい。また、この際においては、式(1)で表される化合物は、上述した重合に用いる不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1〜50重量%の範囲とすることが好ましい。第2工程における反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜120℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、1分〜1時間である。
【0048】
活性末端を有する共役ジエン系重合体を含有する溶液に、上記の式(1)で表される化合物を添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体を含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300〜50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液に式(1)で表される化合物を添加することが望ましい。式(1)で表される化合物の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体と重合系中に含まれる不純物などとの副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
【0049】
なお、活性末端を有する共役ジエン系重合体に、上記の式(1)で表される化合物を反応させる前に、本発明の効果を阻害しない範囲で、共役ジエン系重合体の活性末端の一部を、従来から通常使用されているカップリング剤や変性剤などを重合系内に添加して、不活性化してもよい。
【0050】
活性末端を有する共役ジエン系重合体に、上記の式(1)で表される化合物を反応させた後に、未反応の活性末端が残存している場合、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールまたは水などの、重合停止剤を重合溶液に添加して、未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
【0051】
以上のようにして得られる変性共役ジエン系ゴムの溶液には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合して、油展ゴムとしてもよい。伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系及びナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸等が挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、変性共役ジエン系ゴム100重量部に対して、通常5〜100重量部である。
【0052】
そして、このようにして得られた変性反応後の変性共役ジエン系ゴムは、通常はスチームストリッピングにより、溶媒を除去することにより、反応混合物から分離することで、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得ることができる。なお、この際においては、スチームストリッピングにより、変性反応後の変性共役ジエン系ゴム中に導入された、上記の式(1)で表される化合物由来のヒドロカルビルオキシ基(式(1)において、「Si」で表されるケイ素原子に結合した、「RO−」、「RO−」および「RO−」で表される基のうち、共役ジエン系重合体の活性末端と反応しなかったもの(すなわち、共役ジエン系重合体の活性末端との反応のために脱離したもの以外))が、水酸基に置換されると考えられる。
【0053】
本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、通常、1,000〜3,000,000、好ましくは10,000〜2,000,000、より好ましくは100,000〜1,500,000の範囲である。変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、変性共役ジエン系ゴムへのシリカの配合が容易となり、ゴム組成物は加工性に優れたものとなる。
【0054】
また、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、好ましくは1.0〜5.0、特に好ましくは1.0〜3.0である。変性共役ジエン系ゴムの分子量分布を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性により優れたものとなる。
【0055】
また、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)も、特に限定されないが、通常20〜200、好ましくは30〜150の範囲である。変性共役ジエン系ゴムのムーニー粘度を上記範囲とすることにより、ゴム組成物の加工性が優れたものとなる。なお、変性共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0056】
このようにして得られた変性共役ジエン系ゴムは、充填剤および架橋剤などの配合剤を添加した上で、種々の用途に好適に用いることができる。特に、充填剤としてシリカを配合した場合に、低発熱性およびウエットグリップ性に特に優れたゴム架橋物を得るために好適に用いられるゴム組成物を与える。
【0057】
〔ゴム組成物〕
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部と、シリカ10〜200重量部とを含有してなるゴム組成物である。
【0058】
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらのなかでも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される)は、好ましくは50〜300m/g、より好ましくは80〜220m/g、特に好ましくは100〜170m/gである。また、シリカのpHは、5〜10であることが好ましい。
【0059】
本発明のゴム組成物におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、10〜200重量部であり、好ましくは30〜150重量部、より好ましくは50〜100重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、ゴム組成物の加工性が優れたものとなり、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性および低発熱性が特に優れたものとなる。
【0060】
本発明のゴム組成物には、低発熱性をさらに改良するという観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−オクタチオ−1−プロピル−トリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、およびγ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどを挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0061】
また、本発明のゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、特に限定されないが、通常、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、120重量部以下である。
【0062】
なお、本発明の変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に、シリカを添加する方法としては特に限定されず、固形のゴム成分に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や変性共役ジエン系ゴムを含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0063】
また、本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、たとえば、硫黄、ハロゲン化硫黄などの含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0064】
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0065】
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0066】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜20重量部、特に好ましくは0.5〜15重量部である。
【0067】
また、本発明のゴム組成物には、上述した本発明の製造方法によって得られる変性共役ジエン系ゴム以外のその他のゴムを配合してもよい。その他のゴムとしては、たとえば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス−BR、低シスBRであってもよい。また、1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい。)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどのうち、上述した変性共役ジエン系ゴム以外のものを挙げることができる。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、および溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのその他のゴムは、1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明のゴム組成物において、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物中のゴム成分の10〜100重量%を占めることが好ましく、50〜100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、特に低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を得ることができる。
【0069】
本発明のゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、たとえば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分と変性共役ジエン系ゴムとを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く成分と変性共役ジエン系ゴムとの混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
【0070】
〔ゴム架橋物〕
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
【0071】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0072】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0073】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムを用いて得られるものであるため、変性共役ジエン系ゴムとシリカなどの充填剤との親和性が高いことに基づいて、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたものとなる。したがって、このような本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムを用いて得られる、本発明のゴム架橋物は、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたものとなる。
【0074】
そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、低発熱性およびウエットグリップ性に優れることから、タイヤの材料、特に低燃費タイヤの材料として好適に用いることができ、トレッド用途に最適である。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」および「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0076】
各種の測定および評価については、以下の方法に従って行った。
【0077】
〔変性共役ジエン系ゴムの分子量〕
変性共役ジエン系ゴムの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定器:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC−8220」)
カラム:東ソー社製、商品名「GMH−HR−H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折計
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0078】
〔ゴム架橋物の低発熱性〕
低発熱性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を、レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み2.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定することにより評価した。このtanδの値については、比較例2の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、低発熱性に優れる。
【0079】
〔ゴム架橋物のウエットグリップ性〕
ウエットグリップ性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を、レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδの値を測定することにより評価した。このtanδの値については、比較例2の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、ウエットグリップ性に優れる。
【0080】
〔実施例1〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン94.8部、スチレン25.2部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.187部を仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.045部を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(下記の式(2)で表される化合物)0.224部(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.00倍モル)を添加し、30分間反応させた後、重合停止剤としてメタノール0.064部を添加して、共役ジエン系重合体を含有する溶液を得た。そして、得られた重合体成分100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1520」)0.15部を溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例1の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は345,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.20であった。
【0081】
【化3】
【0082】
〔実施例2〕
3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランの添加量を、0.335部(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.50倍モル)に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例2の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は300,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.14であった。
【0083】
〔比較例1〕
3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランに代えて、N−フェニル−2−ピロリドン0.027部(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.00倍モル)を添加したこと以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例1の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は254,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.09であった。
【0084】
〔比較例2〕
3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランに代えて、3−(ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(下記の式(3)で表される化合物)0.143部(n−ブチルリチウムの使用量に対して、1.00倍モル)を添加したこと以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例2の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は380,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.20であった。
【0085】
【化4】
【0086】
〔比較例3〕
3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランに代えて、下記の式(4)で表されるポリオルガノシロキサン0.156部(n−ブチルリチウムの使用量に対して、0.28倍モル)を添加したこと以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例3の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は555,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.32であった。
【0087】
【化5】
【0088】
〔ゴム架橋物の製造と評価〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、実施例1の変性共役ジエン系ゴム100部を30秒素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1115MP」)50部、プロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T−DAE」)20部、およびシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製、商品名「Si69」)6.0部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1115MP」)25部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(大内新興社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混錬終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物に、硫黄1.40部、架橋促進剤:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーNS−P」、大内新興化学工業社製)1.2部、およびジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.2部を加えてこれらを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。このゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋して、ゴム架橋物の試験片を作製し、この試験片について、低発熱性およびウエットグリップ性の評価を行なった。実施例2、比較例1、比較例2および比較例3の変性共役ジエン系ゴムについても、それぞれ、同様にして、ゴム架橋物の試験片を作製し、これらの試験片について、低発熱性およびウエットグリップ性の評価を行なった。表1にこれらの結果をまとめて示す。
【0089】
【表1】
【0090】
表1から判るように、本発明の変性共役ジエン系ゴムの製造方法(実施例1および2)によって得られる、変性共役ジエン系ゴムを用いて得られたゴム架橋物は、従来の手法により末端変性した変性共役ジエン系ゴム(比較例1〜3)を用いて得られたゴム架橋物に比して、低発熱性およびウエットグリップ性に優れる。