【実施例】
【0023】
[実施例1]
<処理1>
実機循環冷却水系から採取したサンプル水を、
図2に示すNF膜モジュールを用いた循環処理装置によってNF膜ろ過して濃縮処理した。
【0024】
図2では、タンク20内のサンプル水がポンプ21、配管22を介してNF膜モジュール23へ供給される。ポンプ21の吐出水の一部は配管29でタンク20へ返送される。NF膜モジュール23の濃縮水は、定流量弁25を有した配管24を介してタンク20へ返送される。NF膜モジュール23の透過水は、配管26から透過水槽27へ導入され、重量測定器28で水量が測定される。
【0025】
この装置の運転を継続することにより、タンク20内の水が徐々に濃縮される。
【0026】
NF膜としてはDe.MEM社製のもの(中空糸タイプNF膜)を用いた。入口圧力0.25〜0.3MPaにて、50%回収の条件で膜濾過した。タンク20にサンプル水を5L取り入れ、透過水の水量が2.5Lとなった時点で、通水を終了した。
【0027】
<処理2>
上記処理1で得られた透過水に対してスケール防止剤(栗田工業社製Kuriverter N−500)を10mg/L添加し、
図3に示した、RO膜(Hydranautics社製、PA膜ES−20)を有するROシステムを用いて、透過水の回収率70%、一定透過水量で運転を実施し、膜間差圧(TMP,Trans Membrane Pressure)および、溶液電気伝導率をモニタリングし、溶液浸透圧を補正した膜間差圧0.75MPa、25℃条件の規格化透過流束Normalized Flux(m
3/m
2/day)を算出した。
【0028】
図3のROシステムでは、前記タンク20内の濃縮されたサンプル水を給水としてポンプ30、配管31を介してROユニット32のベッセル33に供給する。ベッセル33内は、平膜よりなるRO膜34によって1次室35と2次室36とに区画されている。ベッセル33は、循環ポンプ38及びヒータ39を備えたウォーターバス37内に配置されている。1次室35内は、マグネチックスターラ40によって撹拌される。1次室35を通液した非透過水(濃縮水)は、配管41、定圧弁42及び電気伝導度計43を経て濃縮水槽44に流入する。濃縮水槽44は重量測定器45上に設置されており、濃縮水槽44に流入する濃縮水量が測定され、そのデータがロガー46に記録される。
【0029】
RO膜34を透過した2次室36内の透過水は、配管50、電気伝導度計51を経て透過水槽52に流入する。透過水槽52は重量測定器53上に設置されており、透過水槽52に流入する透過水量が測定され、そのデータがロガー54に記録される。
【0030】
前記配管31,50には圧力センサ60,61が設けられており、水圧データがロガー62に記録される。
【0031】
前記サンプル水と、
図2のNF膜濃縮水及び透過水と、
図3のRO膜透過水及び濃縮水の水質の分析結果を表1に示した。表1には、上記NF膜及びRO膜のリジェクト率も示した。
【0032】
【表1】
【0033】
<考察>
冷却水の水処理において防食やスケール防止に重要となるカルシウム硬度、亜鉛、りん酸イオンやホスホン酸、ポリマー等は、
図2のNF膜モジュール23の処理により、65〜100%の高い率でリジェクトされた。一方で、腐食やスケールの因子となる塩化物イオンやシリカのNF膜排除率(リジェクト率)は−1〜11%と低く、NF膜を通過している。
【0034】
図3のROシステムでは、RO膜の閉塞を引き起こす有機物成分は、RO膜処理によってそのほとんどが除去されている。
図5に平膜試験によるRO膜の評価試験の結果として、Normalized Fluxの推移を示した。RO膜の透過流束は安定しており、スケールや有機物等のファウリングによる閉塞は確認されなかった。この結果より、RO膜により、不要なイオンが濃縮され、系外へ安定的に排出されることが認められた。
【0035】
薬品成分(Zn,T−PO
4,Polymer等)や有機物は、表1の通り、NF膜をほとんど透過せず、系内で再循環されるため、薬品の使用量を削減でき、RO濃縮水中のZn,P,BODを低減できた(Zn=0.7,P=1.3,BOD<20)。このことにより、環境負荷を低減すると共に、追加の処理を必要とせず排水することも可能となる。
【0036】
[比較例1]
<実験条件>
実施例1と同じ実機実冷却水をサンプル水とし、これを
図4に示すようにMF膜(クラレ社、PVDF製 孔径0.02μm)を用いて、入口圧力0.25〜0.3MPaの条件にて全量濾過した。
図4では、タンク70内のサンプル水がポンプ71、配管72、NF膜モジュール73、配管74の順に流れ、濾過水槽75に導入され、重量測定器76で水量が計測される。ポンプ71の吐出水の一部は配管77でタンク70へ返送される。
【0037】
この濾過水にスケール防止剤(栗田工業社製Kuriverter N−500)を10mg/L添加した検水Aと、硫酸(1N)を3.4mL/L添加しpHを5.6に調整した検水Bを調製した。
【0038】
各検水A,Bを前記
図3に示したROシステム(RO膜は前記のものと同一)を用いて、透過水の回収率70%、30℃、一定透過水量で運転を実施し、膜間差圧(TMP,Trans Membrane Pressure)および溶液電気伝導率をモニタリングし、溶液浸透圧を補正した膜間差圧0.75MPa、25℃条件のNormalized Flux(m
3/m
2/day)を演算した。
【0039】
<結果・考察>
検水Aを用いたときの水質分析結果および平膜試験装置によるNormalized Fluxの推移の観察結果をそれぞれ、表2、
図6にそれぞれ示した。また、検水Bを用いたときの水質分析結果および平膜試験装置によるNormalized Fluxの推移の観察結果をそれぞれ、表3、
図7に示した。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
表2、
図5の通り、MF膜透過水にスケール防止剤を添加しただけの検水Aでは、カルシウム濃度も高くまた有機物も多く残存していることから、スケール防止剤を添加してMF及びRO処理しても、RO膜に明確なNormalized Fluxの閉塞傾向が確認された。pHを硫酸により調整した検水Bの場合は、スケール傾向が出ないためにFluxの低下は確認されず安定運定が可能となった。
【0043】
硫酸によるpH調整はRO膜の運転の安定には効果的ではあるが、1m
3のサンプルを処理するためには、90%硫酸として185gの添加が必要となり、例えば時間10m
3の装置であれば、1ヶ月当たり1,300kg強の消費になることから、タンクや保管場所の管理が課題となる。
【0044】
また、ROの濃縮水には、薬品成分(亜鉛、りん酸、ポリマー等)が含まれる事から、その排出先の基準を満たす事が困難となり、追加の処理もしくは、産廃への排出、回収率の低減等を検討する必要が生じる。