(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の基板と第2の基板とを含み、前記第1の基板と前記第2の基板とが剥離可能に貼合された積層体に対し、前記第1の基板と前記第2の基板との界面を一端側から他端側に向けて順次剥離する積層体の剥離装置において、
前記積層体の前記第1の基板を支持する支持部と、
前記積層体の前記第2の基板をその吸着面にて吸着する可撓性板と、
前記可撓性板の前記吸着面とは反対側の面に取り付けられるとともに、前記支持部に対し独立して移動されることにより前記可撓性板を一端側から他端側に向けて撓み変形させて、前記界面を順次剥離させる複数の可動体と、を備え、
前記複数の可動体は、単数毎及び複数毎に複数本の連結部材を介して前記可撓性板に取り付けられることを特徴とする積層体の剥離装置。
前記連結部材は長尺状に構成され、その長手軸が、前記界面の既剥離部分と未剥離部分との境界線である剥離前線に沿って配置され、かつ前記界面の剥離進行方向に沿って間隔を空けて複数本配置される請求項1に記載の積層体の剥離装置。
第1の基板と第2の基板とを含み、前記第1の基板と前記第2の基板とが剥離可能に貼合された積層体に対し、前記第1の基板と前記第2の基板との界面を一端側から他端側に向けて順次剥離する基板の剥離方法において、
前記積層体の前記第1の基板を支持部によって支持する支持工程と、
前記積層体の前記第2の基板を可撓性板の吸着面にて吸着する吸着工程と、
前記積層体の前記第2の基板が一端側から他端側に向けて順次撓み変形するように前記可撓性板を、複数本の連結部材を介して複数の可動体により撓み変形させて前記界面を順次剥離する剥離工程と、
を備えたことを特徴とする積層体の剥離方法。
第1の基板と第2の基板とが剥離可能に貼り付けられてなる積層体に対し、前記第1の基板の露出面に機能層を形成する機能層形成工程と、前記機能層が形成された前記第1の基板から前記第2の基板を分離する分離工程と、を有する電子デバイスの製造方法において、
前記分離工程は、
前記積層体の前記第1の基板を支持部によって支持する支持工程と、
前記積層体の前記第2の基板を可撓性板の吸着面にて吸着する吸着工程と、
前記積層体の前記第2の基板が一端側から他端側に向けて順次撓み変形するように前記可撓性板を、長尺状の連結部材を介して複数の可動体により撓み変形させて前記第2の基板を前記第1の基板から順次剥離する剥離工程と、
を備えたことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
以下においては、本発明に係る積層体の剥離装置及び剥離方法を、電子デバイスの製造工程(製造方法)で使用する場合について説明する。
【0024】
電子デバイスとは、表示パネル、太陽電池、薄膜二次電池等の電子部品をいう。表示パネルとしては、液晶ディスプレイパネル(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)、及び有機ELディスプレイパネル(OELD:Organic Electro Luminescence Display)を例示できる。
【0025】
〔電子デバイスの製造工程〕
電子デバイスは、ガラス製、樹脂製、金属製等の基板の表面に電子デバイス用の機能層(LCDであれば、薄膜トランジスタ(TFT)、カラーフィルタ(CF))を形成することにより製造される。
【0026】
前記基板は、機能層の形成前に、その裏面が補強板に貼り付けられて積層体に構成される。その後、積層体の状態で基板の表面に機能層が形成される。そして、機能層の形成後、補強板が基板から剥離される。
【0027】
すなわち、電子デバイスの製造工程には、積層体の状態で基板の表面に機能層を形成する機能層形成工程、及び機能層が形成された基板から補強板を分離する分離工程が備えられる。この分離工程に、本発明に係る積層体の剥離装置及び剥離方法が適用される。
【0028】
〔積層体1〕
図1は、積層体1の一例を示した要部拡大側面図である。
【0029】
積層体1は、機能層が形成される基板(第1の基板)2と、その基板2を補強する補強板(第2の基板)3とを備える。また、補強板3は、表面3aに吸着層としての樹脂層4が備えられ、樹脂層4に基板2の裏面2bが貼合される。すなわち、基板2は、樹脂層4との間に作用するファンデルワールス力、又は樹脂層4の粘着力によって、補強板3に樹脂層4を介して剥離可能に貼り付けられる。
【0030】
[基板2]
基板2は、その表面(露出面)2aに機能層が形成される。基板2としては、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、金属基板、半導体基板を例示できる。これらの基板のなかでも、ガラス基板は、耐薬品性、耐透湿性に優れ、かつ、線膨張係数が小さいので、電子デバイス用の基板2として好適である。また、線膨張係数が小さくなるに従い、高温下で形成される機能層のパターンが冷却時に、ずれ難くなる利点もある。
【0031】
ガラス基板のガラスとしては、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスを例示できる。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40〜90質量%のガラスが好ましい。
【0032】
ガラス基板のガラスは、製造する電子デバイスの種類に適したガラス、その製造工程に適したガラスを選択して採用することが好ましい。たとえば、液晶パネル用のガラス基板には、アルカリ金属成分を実質的に含まないガラス(無アルカリガラス)を採用することが好ましい。
【0033】
基板2の厚さは、基板2の種類に応じて設定される。たとえば、基板2にガラス基板を採用する場合、その厚さは、電子デバイスの軽量化、薄板化のため、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下に設定される。厚さが0.3mm以下の場合、ガラス基板に良好なフレキシブル性を与えることができる。更に、厚さが0.1mm以下の場合、ガラス基板をロール状に巻き取ることができるが、ガラス基板の製造の観点、及びガラス基板の取り扱いの観点から、その厚さは0.03mm以上であることが好ましい。
【0034】
なお、
図1では基板2が1枚の基板で構成されているが、基板2は、複数枚の基板で構成されたものでもよい。すなわち、基板2は、複数枚の基板を積層した積層体で構成することもできる。
【0035】
[補強板3]
補強板3としては、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、金属基板、半導体基板を例示できる。
【0036】
補強板3の厚さは、0.7mm以下に設定され、補強する基板2の種類、厚さ等に応じて設定される。なお、補強板3の厚さは、基板2よりも厚くてもよいし、薄くてもよいが、基板2を補強するため、0.4mm以上であることが好ましい。
【0037】
なお、本例では補強板3が1枚の基板で構成されているが、補強板3は、複数枚の基板を積層した積層体で構成することもできる。
【0038】
[樹脂層4]
樹脂層4は、樹脂層4と補強板3との間で剥離するのを防止するため、補強板3との間の結合力が、基板2との間の結合力よりも高く設定される。これにより、剥離工程では、樹脂層4と基板2との界面が剥離される。
【0039】
樹脂層4を構成する樹脂は、特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂を例示できる。いくつかの種類の樹脂を混合して用いることもできる。そのなかでも、耐熱性や剥離性の観点から、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂が好ましい。
【0040】
樹脂層4の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1〜50μmに設定され、より好ましくは4〜20μmに設定される。樹脂層4の厚さを1μm以上とすることにより、樹脂層4と基板2との間に気泡や異物が混入した際、樹脂層4の変形によって、気泡や異物の厚さを吸収できる。一方、樹脂層4の厚さを50μm以下とすることにより、樹脂層4の形成時間を短縮でき、更に樹脂層4の樹脂を必要以上に使用しないため経済的である。
【0041】
なお、樹脂層4の外形は、補強板3が樹脂層4の全体を支持できるように、補強板3の外形と同一であるか、補強板3の外形よりも小さいことが好ましい。また、樹脂層4の外形は、樹脂層4が基板2の全体を密着できるように、基板2の外形と同一であるか、基板2の外形よりも大きいことが好ましい。
【0042】
また、
図1では樹脂層4が1層で構成されているが、樹脂層4は2層以上で構成することもできる。この場合、樹脂層4を構成する全ての層の合計の厚さが、樹脂層の厚さとなる。また、この場合、各層を構成する樹脂の種類は異なっていてもよい。
【0043】
更に、実施形態では、吸着層として有機膜である樹脂層4を用いたが、樹脂層4に代えて無機層を用いてもよい。無機層を構成する無機膜は、例えばメタルシリサイド、窒化物、炭化物、及び炭窒化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0044】
更にまた、
図1の積層体1は、吸着層として樹脂層4を備えているが、樹脂層4を無くして基板2と補強板3とからなる構成としてもよい。この場合には、基板2と補強板3との間に作用するファンデルワールス力等によって基板2と補強板3とが剥離可能に貼り付けられる。また、この場合には、ガラス基板である基板2とガラス板である補強板3とが高温で接着しないように、補強板3の表面3aに無機薄膜を形成することが好ましい。
【0045】
〔機能層が形成された実施形態の積層体6〕
機能層形成工程を経ることにより積層体1の基板2の表面2aには、機能層が形成される。機能層の形成方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、PVD(Physical Vapor Deposition)法等の蒸着法、スパッタ法が用いられる。機能層は、フォトリソグラフィ法、エッチング法によって所定のパターンに形成される。
【0046】
図2は、LCDの製造工程の途中で作製される矩形状の積層体6の一例を示した要部拡大側面図である。
【0047】
積層体6は、補強板3A、樹脂層4A、基板2A、機能層7、基板2B、樹脂層4B、及び補強板3Bが、この順で積層されて構成される。すなわち、
図2の積層体6は、
図1に示した積層体1が、機能層7を挟んで対称に配置された積層体に相当する。以下、基板2A、樹脂層4A、及び補強板3Aからなる積層体を第1の積層体1Aと称し、基板2B、樹脂層4B、及び補強板3Bからなる積層体を第2の積層体1Bと称する。
【0048】
第1の積層体1Aの基板2Aの表面2Aaには、機能層7としての薄膜トランジスタ(TFT)が形成され、第2の積層体1Bの基板2Bの表面2Baには、機能層7としてのカラーフィルタ(CF)が形成される。
【0049】
第1の積層体1Aと第2の積層体1Bとは、互いに基板2A、2Bの表面2Aa、2Baが重ね合わされて一体化される。これにより、機能層7を挟んで、第1の積層体1Aと第2の積層体1Bとが、対称に配置された構造の積層体6が製造される。
【0050】
積層体6は、分離工程の剥離開始部作成工程にてナイフにより剥離開始部が形成された後、分離工程の剥離工程にて補強板3A、3Bが順次剥離され、その後、偏光板、バックライト等が取り付けられて、製品であるLCDが製造される。
【0051】
〔剥離開始部作成装置10〕
図3は、剥離開始部作成工程にて使用される剥離開始部作成装置10の構成を示した説明図であり、
図3(A)は、積層体6とナイフNとの位置関係を示した説明図、
図3(B)は、ナイフNによって界面24に剥離開始部26を作成する説明図、
図3(C)は、界面28に剥離開始部30を作成する直前状態を示した説明図、
図3(D)は、ナイフNによって界面28に剥離開始部30を作成する説明図、
図3(E)は、剥離開始部26、30が作成された積層体6の説明図である。また、
図4は、剥離開始部26、30が作成された積層体6の平面図である。
【0052】
剥離開始部26、30の作成時において、積層体6は
図3(A)の如く、補強板3Bの裏面3Bbがテーブル12に吸着保持されて水平(図中X軸方向)に支持される。
【0053】
ナイフNは、積層体6の隅部(一端側)6Aの端面に刃先が対向するように、ホルダ14によって水平に支持される。また、ナイフNは、高さ調整装置16によって、高さ方向(図中Z軸方向)の位置が調整される。更に、ナイフNと積層体6とは、ボールねじ装置等の送り装置18によって、水平方向に相対的に移動される。送り装置18は、ナイフNとテーブル12のうち、少なくとも一方を水平方向に移動すればよく、実施形態ではナイフNが移動される。更にまた、刺入前又は刺入中のナイフNの上面に、液体20を供給する液体供給装置22が、ナイフNの上方に配置される。
【0054】
[剥離開始部作成方法]
剥離開始部作成装置10による剥離開始部作成方法は、ナイフNの刺入位置を、積層体6の隅部6Aであって、積層体6の厚さ方向において重なる位置に設定し、かつナイフNの刺入量を、界面24、28ごとに異なるように設定した点にある。
【0056】
初期状態において、ナイフNの刃先は、第1の刺入位置である基板2Bと樹脂層4Bとの界面24に対し、高さ方向(Z軸方向)にずれた位置に存在する。そこで、まず、
図3(A)に示すように、ナイフNを高さ方向に移動させて、ナイフNの刃先の高さを界面24の高さに設定する。
【0057】
この後、
図3(B)の如く、ナイフNを積層体6の隅部6Aに向けて水平に移動させ、界面24にナイフNを所定量刺入する。また、ナイフNの刺入時又は刺入前において、液体供給装置22からナイフNの上面に液体20を供給する。これにより、隅部6Aの基板2Bが樹脂層4Bから剥離するので、
図4の如く平面視で三角形状の剥離開始部26が界面24に作成される。なお、液体20の供給は必須ではないが、液体20を使用すれば、ナイフNを抜去した後にも液体20が剥離開始部26に残留するので、再付着不能な剥離開始部26を作成できる。
【0058】
次に、ナイフNを隅部6Aから水平方向に抜去し、
図3(C)の如く、ナイフNの刃先を、第2の刺入位置である基板2Aと樹脂層4Aとの界面28の高さに設定する。
【0059】
この後、
図3(D)の如く、ナイフNを積層体6に向けて水平に移動させ、界面28にナイフNを所定量刺入する。同様に液体供給装置22からナイフNの上面に液体20を供給する。これによって、
図3(D)の如く、界面28に剥離開始部30が作成される。ここで、界面28に対するナイフNの刺入量は、界面24に対する刺入量よりも少量とする。以上が剥離開始部作成方法である。なお、界面24に対するナイフNの刺入量を、界面28に対する刺入量よりも少量としてもよい。
【0060】
剥離開始部26、30が作成された積層体6は、剥離開始部作成装置10から取り出され、後述する剥離装置に搬送され、剥離装置によって界面24、28が順次剥離される。
【0061】
剥離方法の詳細は後述するが、
図4の矢印Aの如く、積層体6を隅部6Aから隅部6Aに対向する隅部(他端側)6Bに向けて撓ませることにより、剥離開始部26の面積が大きい界面24が剥離開始部26を起点として最初に剥離される。これにより、補強板3Bが剥離される。その後、積層体6を隅部6Aから隅部6Bに向けて再び撓ませることにより、剥離開始部30の面積が小さい界面28が剥離開始部30を起点として剥離される。これにより、補強板3Aが剥離される。
【0062】
なお、ナイフNの刺入量は、積層体6のサイズに応じて、好ましくは7mm以上、より好ましくは15〜20mm程度に設定される。
【0063】
〔剥離装置40〕
図5は、実施形態の剥離装置40の構成を示した縦断面図である。
図6は、剥離装置40の剥離ユニット42に対する複数本(
図6では19本)の連結部材44A、44B、44C、44D、44E、44F、44G、44H、44I、44J、44K、44L、44M、44N、44O、44P、44Q、44R、44S、及び複数の駆動装置(可動体)48A、48B、48C、48D、48E、48F、48G、48H、48I、48J、48K、48L、48M、48N、48O、48P、48Q、48R、48Sの配置位置を模式的に示した剥離ユニット42の平面図である。なお、
図5は
図6のB−B線に沿う断面図に相当し、また、
図6においては積層体6を実線で示している。
【0064】
図5の如く剥離装置40は、積層体6を挟んで上下に配置された一対の可動装置46、46を備える。可動装置46、46は同一構成のため、ここでは
図5の下側に配置された可動装置46について説明し、上側に配置された可動装置46については同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0065】
可動装置46は、前述した複数本の連結部材44A〜44S、連結部材44A〜44Sごとに連結部材44A〜44Sを昇降移動させる前述した複数の駆動装置48A〜48S、及び駆動装置48A〜48Sごとに駆動装置48A〜48Sを制御するコントローラ50等によって構成される。なお、連結部材44A〜44S及び駆動装置48A〜48Sについては後述する。また、連結部材44A、44B、44C、44D、44P、44Q、44R、44Sは、1台(単数)の駆動装置48A、48B、48C、48D、48P、48Q、48R、48Sによって昇降移動される。他の連結部材44E、44F、44G、44H、44I、44J、44K、44L、44M、44N、44Oは、2台(複数)の48E、48F、48G、48H、48I、48J、48K、48L、48M、48N、48Oによって昇降移動される。
【0066】
剥離ユニット42は、補強板3Bを撓み変形させるため、補強板3Bを真空吸着保持する。なお、真空吸着に代えて、静電吸着又は磁気吸着してもよい。
【0067】
[剥離ユニット42]
図7(A)は、剥離ユニット42の平面図であり、
図7(B)は、
図7(A)のC−C線に沿う剥離ユニット42の拡大縦断面図である。また、
図7(C)は、剥離ユニット42を構成する矩形の板状の可撓性板52に対して、剥離ユニット42を構成する吸着部54が両面接着テープ56を介して着脱自在に備えられたことを示す剥離ユニット42の拡大縦断面図である。
【0068】
剥離ユニット42は、前述の如く可撓性板52に吸着部54が両面接着テープ56を介して着脱自在に装着されて構成される。
【0069】
吸着部54は、可撓性板52よりも厚さの薄い可撓性板58を備える。この可撓性板58の下面が両面接着テープ56を介して可撓性板52の上面に着脱自在に装着される。
【0070】
また、吸着部54は、積層体6の補強板3Bの内面を吸着保持する矩形の通気性シート(吸着面)60が備えられる。通気性シート60の厚さは、剥離時に補強板3Bに発生する引張応力を低減させる目的で2mm以下、好ましくは1mm以下であり、実施形態では0.5mmのものが使用されている。
【0071】
更に、吸着部54には、通気性シート60を包囲し、かつ補強板3Bの外周面が当接されるシール枠部材62が備えられる。シール枠部材62及び通気性シート60は、両面接着テープ64を介して可撓性板58の上面に接着される。また、シール枠部材62は、ショアE硬度が20度以上50度以下の独立気泡のスポンジであり、その厚さは、通気性シート60の厚さに対して0.3mm〜0.5mm厚く構成されている。
【0072】
通気性シート60とシール枠部材62との間には、枠状の溝66が備えられる。また、可撓性板52には、複数の貫通孔68が開口されており、これらの貫通孔68の一端は溝66に連通され、他端は、不図示の吸引管路を介して吸気源(例えば真空ポンプ)に接続されている。
【0073】
したがって、前記吸気源が駆動されると、前記吸引管路、貫通孔68、及び溝66の空気が吸引されることにより、積層体6の補強板3Bの内面が通気性シート60に真空吸着保持され、また、補強板3Bの外周面がシール枠部材62に押圧当接される。これにより、シール枠部材62によって囲まれる吸着空間の密閉性が高められる。
【0074】
可撓性板52は、可撓性板58、通気性シート60、及びシール枠部材62よりも曲げ剛性が高く、可撓性板52の曲げ剛性が剥離ユニット42の曲げ剛性を支配する。剥離ユニット42の単位幅(1mm)あたりの曲げ剛性は、1000〜40000N・mm
2/mmであることが好ましい。例えば、剥離ユニット42の幅が100mmの部分では、曲げ剛性は、100000〜4000000N・mm
2となる。剥離ユニット42の曲げ剛性を1000N・mm
2/mm以上とすることで、剥離ユニット42に吸着保持される補強板3Bの折れ曲がりを防止することができる。また、剥離ユニット42の曲げ剛性を40000N・mm
2/mm以下とすることで、剥離ユニット42に吸着保持される補強板3Bを適度に撓み変形させることができる。
【0075】
可撓性板52、58は、ヤング率が10GPa以下の樹脂製部材であり、例えばポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂等の樹脂製部材である。
【0076】
[可動装置46]
可撓性板52の下面(吸着面とは反対側の面)には、
図5の可動装置46を構成する複数本の連結部材44A〜44Sが、緩衝部材82を介して固定される。
【0077】
〈連結部材44A〜44S〉
図6の如く、連結部材44A〜44Sは、剛性の高い例えばアルミニウム製であり、その長手軸が、積層体6の界面24、28(
図5参照)の既剥離部分と未剥離部分との境界線である剥離前線L(
図6、
図8参照)に沿って配置される。
【0078】
一方、積層体6の隅部6Aに対応する可撓性板52の隅部52Aは、剥離前線Lの剥離進行方向Aに対して逆方向に延出されている。この隅部52Aには、剥離進行方向Aに沿って2台の連結部材44A、44B、及び2台の駆動装置48A、48Bが配置されている。すなわち、隅部6Aは、隅部52Aに配置された2台の駆動装置48A、48Bを上昇移動させることによって剥離される。
【0079】
また、連結部材44A〜44Sは、界面24、28(
図5参照)の剥離進行方向(
図6の矢印A)に沿って間隔を空けて配置される。これにより、連結部材44A〜44Sの長手軸と進行する剥離前線Lとが一致するので、基板2Bから補強板3Bを円滑に剥離することができる。
【0080】
更に、連結部材44C〜44Qは、剥離前線Lの長さに対応した長さにそれぞれ構成されている。
【0081】
更にまた、連結部材44A〜44Sに連結される駆動装置48A〜48Sは、連結部材44A〜44Sを長手方向に等分割する位置に配置される。すなわち、剥離開始端と剥離終了端の外側に配置された連結部材44A、44B、44R、44Sは、その下方を剥離前線が通過しないので、駆動装置48A、48B、48R、48Sは連結部材44A、44B、44R、44Sの長手方向の中央部にそれぞれ1台配置される。剥離開始端と剥離終了端に配置された連結部材44C、44D、44P、44Qは、その下方を通過する剥離前線Lの長さが、他の部分よりも短いため、駆動装置48C、48D、48P、48Qは連結部材44C、44D、44P、44Qの長手方向の中央部にそれぞれ1台配置される。それ以外の連結部材44E〜44Oは、その下方を通過する剥離前線Lの長さが、他の部分よりも長いため、駆動装置48E〜48Oは連結部材44E〜44Oを長手方向に3等分するようにそれぞれ2台配置される。これにより、連結部材44A〜44Sの長手方向において、駆動装置48A〜48Sからの動力を均一に伝達することができるので、基板2Bから補強板3Bをより一層円滑に剥離することができる。なお、前記長手方向の分割数は2分割、3分割に限定されず、4分割以上でもよいが、駆動装置の台数を削減するという本発明の目的を逸脱しない台数であることが前提となる。
【0082】
これらの駆動装置48A〜48Sは、コントローラ50によって独立して昇降移動される。
【0083】
すなわち、コントローラ50は、駆動装置48A〜48Sを制御して、
図6における積層体6の隅部6A側に位置する連結部材44Aから矢印Aで示す剥離進行方向の隅部6B側に位置する連結部材44Sを、順次下降移動させる。この動作によって、
図8の縦断面図の如く積層体6の界面24が剥離開始部26(
図4参照)を起点として剥離していく。なお、
図5、
図8に示した積層体6は、
図3にて説明した剥離開始部作成方法により剥離開始部26、30が作成された積層体6である。
【0084】
駆動装置48A〜48Sは、例えば回転式のサーボモータ及びボールねじ機構等で構成される。サーボモータの回転運動は、ボールねじ機構において直線運動に変換され、ボールねじ機構のロッド70に伝達される。ロッド70の先端部には、不図示のボールジョイント及び横滑り機構を介して連結部材44A〜44Sが連結されている。これにより、剥離ユニット42の撓み変形に追従して連結部材44A〜44Sを傾動させることができる。よって、剥離ユニット42に無理な力を加えることなく、剥離ユニット42を隅部6Aから隅部6Bに向けて順次撓み変形させることができる。なお、駆動装置48A〜48Sとしては、回転式のサーボモータ及びボールねじ機構に限定されず、リニア式のサーボモータ、又は流体圧シリンダ(例えば空気圧シリンダ)であってもよい。
【0085】
フレーム74は、剥離した補強板3Bを剥離ユニット42から取り外す際に、不図示の駆動部によって下降移動される。
【0086】
コントローラ50は、CPU、ROM、及びRAM等の記録媒体等を含むコンピュータとして構成される。コントローラ50は、記録媒体に記録されたプログラムをCPUに実行させることにより、複数の駆動装置48A〜48Sを駆動装置48A〜48Sごとに制御して、複数本の連結部材44A〜44Sの昇降移動を制御する。
【0087】
〈緩衝部材82〉
図9は、連結部材44Dに対する緩衝部材82の取り付け構造を示した縦断面図である。また、
図10(A)は、非圧縮時の緩衝部材82の縦断面図、(B)は、圧縮時の緩衝部材82の縦断面図である。なお、
図9、
図10では、連結部材44Dに取り付けられた緩衝部材82を例示しているが、他の連結部材44A〜44C、44D〜44Sに取り付けられる緩衝部材82も同様の構成である。緩衝部材82は、ボルト84、スプリング86、ストッパ88、及びナット90から構成される。
【0088】
ボルト84は、その基部84Aが剥離ユニット42の可撓性板52に、ねじ92によって固定され、そのねじ部84Bが連結部材44Dの貫通孔45から外方に突出される。ねじ部84Bはスプリング86に挿入され、スプリング86は基部84Aと連結部材44Dとの間に介在される。なお、連結部材44Dは、断面U字状に構成されている。
【0089】
貫通孔45から突出したねじ部84Bには、貫通孔45よりも径の大きいストッパ88がナット90によって固定される。このストッパ88が
図10(A)の如く、連結部材44Dの表面に当接された形態において、スプリング86が予備圧縮長に保持される。これにより、緩衝部材82が非圧縮形態となる。また、
図9において、駆動装置48Dによって連結部材44Dを上昇させると、連結部材44Dの表面がストッパ88に当接するので、ストッパ88及びボルト84を介して剥離ユニット42を上昇させることができる。
【0090】
また、剥離ユニット42の可撓性板52の平坦度のばらつきによって、上下に配置された対の剥離ユニット42、42の間隔(支持部と可撓性板との間隔)にばらつきが生じた場合、そのばらつきを吸収するようにスプリング86が
図10(B)の如く収縮する。また、連結部材44Dの真直度のばらつきもスプリング86が収縮することにより、そのばらつきを吸収する。これにより、前記間隔、及び前記直進度にばらつきが生じていても、連結部材44Dを可撓性板52に確実に取り付けることができる。
【0091】
〔剥離装置40による補強板3A、3Bの剥離方法〕
図11(A)〜(C)〜
図12(A)〜(C)は、
図3にて説明した剥離開始部作成方法によって隅部6Aに剥離開始部26、30が作成された積層体6の剥離方法が示されている。すなわち、同図には、積層体6の補強板3A、3Bを剥離する剥離方法が時系列的に示されている。
【0092】
また、剥離装置40への積層体6の搬入作業、剥離した補強板3A、3B、及びパネルPの搬出作業は、
図11(A)に示す吸着パッド78を備えた搬送装置80によって行われる。なお、
図11、
図12では、図面の煩雑さを避けるため、可動装置46の図示は省略している。また、パネルPとは、補強板3A、3Bを除く基板2Aと基板2Bとが機能層7を介して貼り付けられた製品パネルである。
【0093】
図11(A)は、搬送装置80の矢印E、Fに示す動作によって積層体6が、下側の剥離ユニット42に載置された剥離装置40の側面図である。この場合、下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42との間に搬送装置80が挿入されるように、下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42とが相対的に十分に退避した位置に予め移動される。そして、積層体6が下側の剥離ユニット42に載置されると、下側の剥離ユニット42によって積層体6の補強板3Bが真空吸着保持される。すなわち、
図11(A)には、第2の基板である補強板3Bが下側の剥離ユニット42によって吸着保持される吸着工程が示されている。
【0094】
図11(B)は、下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42とが相対的に近づく方向に移動されて、積層体6の補強板3Aが上側の剥離ユニット42によって真空吸着保持された状態の剥離装置40の側面図である。すなわち、
図11(B)には、第1の基板である補強板3Aが上側の剥離ユニット(支持部)42によって吸着保持される吸着工程が示されている。また、
図13(A)は、
図11(B)に対応した斜視図であり、積層体6の隅部6Aを拡大して見た斜視図である。
【0095】
なお、剥離装置40によって、
図1に示した積層体1の基板2を補強板3から剥離させる場合には、第1の基板である基板2を上側の剥離ユニット(支持部)42によって支持し(支持工程)、第2の基板である補強板3を下側の剥離ユニット42によって吸着保持する(吸着工程)。この場合、基板2を支持する支持部は、剥離ユニット42に限定されるものではなく、基板2を着脱自在に支持可能なものであればよい。しかしながら、支持部として剥離ユニット42を用いることにより、基板2と補強板3とを同時に湾曲させて剥離することができるので、基板2又は補強板3のみを湾曲させる形態と比較して剥離力を小さくできる利点がある。
【0096】
図11に戻り、
図11(C)は、積層体6の隅部6Aから隅部6Bに向けて下側の剥離ユニット42を下方に撓み変形させながら、積層体6の界面24を、剥離開始部26(
図4参照)を起点として剥離していく状態を示した側面図である。すなわち、
図8に示した下側の剥離ユニット42の複数本の連結部材44A〜44Sにおいて、積層体6の隅部6A側に位置する連結部材44Aから隅部6B側に位置する連結部材44Sを順次下降移動させて界面24を剥離する(剥離工程)。また、
図13(B)は、
図11(C)に対応した斜視図であり、積層体6の隅部6Aを拡大して見た斜視図である。同図によれば、連結部材44A〜44Eの下降移動によって剥離ユニット42が撓み変形され、基板2Bから補強板3Bが剥離されていくことが分かる。
【0097】
なお、上記動作に連動して、上側の剥離ユニット42の複数本の連結部材44A〜44Sにおいて、積層体6の隅部6A側に位置する連結部材44Aから隅部6B側に位置する連結部材44Sを順次上昇移動させて界面24を剥離してもよい。これにより、補強板3Bのみを湾曲させる形態と比較して剥離力を小さくできる。
【0098】
図12(A)は、界面24が完全に剥離された状態の剥離装置40の側面図である。同図によれば、剥離した補強板3Bが下側の剥離ユニット42に真空吸着保持され、補強板3Bを除く積層体6(補強板3A及びパネルPからなる積層体)が上側の剥離ユニット42に真空吸着保持されている。
【0099】
また、上下の剥離ユニット42の間に、
図11(A)で示した搬送装置80が挿入されるように、下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42とが相対的に十分に退避した位置に移動される。
【0100】
この後、まず、下側の剥離ユニット42の真空吸着が解除される。次に、搬送装置80の吸着パッド78によって補強板3Bが樹脂層4Bを介して吸着保持される。次いで、
図12(A)の矢印G、Hで示す搬送装置80の動作によって、補強板3Bが剥離装置40から搬出される。
【0101】
図12(B)は、補強板3Bを除く積層体6が下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42とによって真空吸着保持された側面図である。すなわち、下側の剥離ユニット42と上側の剥離ユニット42とが相対的に近づく方向に移動されて、下側の剥離ユニット42に、基板2Bが真空吸着保持される(支持工程)。
【0102】
図12(C)は、積層体6の隅部6Aから隅部6Bに向けて上側の剥離ユニット42を上方に撓み変形させながら、積層体6の界面28を、剥離開始部30(
図4参照)を起点として剥離していく状態を示した側面図である。すなわち、
図8に示した上側の剥離ユニット42の複数本の連結部材44A〜44Sにおいて、積層体6の隅部6A側に位置する連結部材44Aから隅部6B側に位置する連結部材44Sを順次上昇移動させて界面28を剥離する(剥離工程)。なお、この動作に連動して、下側の剥離ユニット42の複数本の連結部材44A〜44Sにおいて、積層体6の隅部6A側に位置する連結部材44Aから隅部6B側に位置する連結部材44Sを順次下降移動させて界面28を剥離してもよい。これにより、補強板3Aのみを湾曲させる形態と比較して剥離力を小さくできる。
【0103】
この後、パネルPから完全に剥離された補強板3Aを、上側の剥離ユニット42から取り出し、パネルPを下側の剥離ユニット42から取り出す。以上が、隅部6Aに剥離開始部26、30が作成された積層体6の剥離方法である。
【0104】
〔剥離装置40の特徴〕
[第1の特徴]
剥離工程において、駆動装置48A〜48Sの動力を、長尺状の連結部材44A〜44Sを介して可撓性板52に伝達し、可撓性板52を撓み変形させる点に特徴がある。
【0105】
すなわち、従来の駆動装置は、可撓性板に対し、一点で動力を伝達することにより可撓性板を撓み変形させていたが、実施形態では、駆動装置48A〜48Sと可撓性板52との間に長尺状の連結部材44A〜44Sを介在させたので、駆動装置48A〜48Sの動力を、可撓性板52に対して線又は面で動力を伝達することができる。これにより、駆動装置48A〜48Sの台数を削減した剥離装置40にて基板2(2A、2B)と補強板3(3A、3B)とを剥離することができる。
【0106】
[第2の特徴]
連結部材44A〜44Sを、その長手軸が、
図6の如く剥離前線Lに沿うように配置し、かつ矢印Aで示す剥離進行方向に沿って間隔を空けて複数本配置した点に特徴がある。
【0107】
これにより、連結部材44A〜44Sの長手軸と剥離前線Lとが一致するので、基板2(2A、2B)と補強板3(3A、3B)とを円滑に剥離することができる。
【0108】
[第3の特徴]
剥離前線Lの長さに対応した長さに、連結部材44A〜44Sをそれぞれ構成し、連結部材44A〜44Sを長手方向に等分割する位置に、駆動装置48A〜48Sをそれぞれ配置した点に特徴がある。
【0109】
これにより、連結部材44A〜44Sの長手方向において、駆動装置48A〜48Sの動力を均一に伝達することができるので、基板2(2A、2B)と補強板3(3A、3B)とをより一層円滑に剥離することができる。
【0110】
[第4の特徴]
緩衝部材82を介して連結部材44A〜44Sを可撓性板52に取り付けた点に特徴がある。
【0111】
これにより、対の剥離ユニット42、42の間隔にばらつきが生じていても、そのばらつきを吸収するように緩衝部材82のスプリング86が収縮する。また、連結部材44Bの真直度のばらつきもスプリング86が収縮することにより、そのばらつきを吸収する。これにより、前記間隔、及び前記直進度にばらつきが生じていても、連結部材44Bを可撓性板52に確実に取り付けることができる。