(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記紫外線吸収剤及び前記化合物(B)の含有量が、前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対する前記紫外線吸収剤の質量部≦前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対する前記化合物(B)の質量部を満たす、請求項1に記載の樹脂組成物。
前記化合物(A)はペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む、請求項1から3のいずれかに記載の樹脂組成物。
前記紫外線吸収剤は、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、ビス{2−[4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]エチル}ドデカンジオエート、及びテトラ−エチル−2,2−(1,4−フェニレン−ジメチリデン)−ビスマロネートからなる群から選択される1以上を含む、請求項1から5のいずれかに記載の樹脂組成物。
前記ブロック共重合体は、スチレン含量が45質量%以上70質量%以下であり、かつ、スチレンと、ブタジエン及び/又はイソプレンとのブロック共重合体の水素化物を含む、請求項1から7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0018】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、ISO75−1,2に準拠する方法で、アニール処理を施していない試験片について測定した1.8MPaにおける荷重たわみ温度が125℃以上である環状オレフィン系樹脂を、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を有する化合物(A)と、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル基又は1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有する化合物(B)と、紫外線吸収剤と、縮合リン酸エステルと、主鎖にスチレンを含むブロック共重合体とともに含む樹脂組成物である。以下、本発明の樹脂組成物の構成について説明する。
【0019】
(環状オレフィン系樹脂)
本発明における環状オレフィン系樹脂は、ISO75−1,2に準拠する方法で、アニール処理を施していない試験片について測定した1.8MPaにおける荷重たわみ温度(以下、「環状オレフィン系樹脂の荷重たわみ温度」ともいう。)が125℃以上であり、環状オレフィンに由来する構造単位を主鎖に含む重合体又は共重合体であれば、特に限定されない。樹脂組成物に含まれる環状オレフィン系樹脂の荷重たわみ温度が125℃以上であると、樹脂組成物から得られる成形品に十分な耐熱性、耐湿熱性を付与できる。環状オレフィン系樹脂の荷重たわみ温度の下限値は、樹脂組成物から得られる成形品の黄変を抑制しやすいという観点から、好ましくは125℃以上である。環状オレフィン系樹脂の荷重たわみ温度の上限値は、好ましくは170℃以下、より好ましくは165℃以下である。なお、本発明において2種以上の環状オレフィン系樹脂を併用した場合は、荷重たわみ温度とは、全ての環状オレフィン系樹脂を混合した樹脂混合物の荷重たわみ温度を意味する。
【0020】
上記の荷重たわみ温度を有する環状オレフィン系樹脂は、例えば、環状オレフィン系樹脂を構成するモノマー(例えば、ノルボルネンやエチレン等)の比率を調整したり、異なるガラス転移点を有する環状オレフィン系樹脂をブレンドしたりすること等によって作製できる。
【0021】
環状オレフィンに由来する構造単位を主鎖に含む重合体又は共重合体としては、例えば、環状オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物等を挙げることができる。環状オレフィン系樹脂は、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0022】
また、環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンに由来する構造単位を主鎖に含む上記重合体又は上記共重合体において、さらに極性基を有する不飽和化合物がグラフト及び/又は共重合したものも挙げられる。
【0023】
極性基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基等を挙げることができ、極性基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、マレイン酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
【0024】
また、本発明において環状オレフィン系樹脂として用いられる上記共重合体としては、市販の樹脂を用いることもできる。市販されている環状オレフィン系樹脂としては、例えば、TOPAS(登録商標)(TOPAS Advanced Polymers社製)、アペル(登録商標)(三井化学社製)、ゼオネックス(登録商標)(日本ゼオン社製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)等を挙げることができる。
【0025】
環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体として、特に好ましい例としては、〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィンに由来する構造単位と、〔2〕下記一般式(I)で示される環状オレフィンに由来する構造単位と、を含む共重合体を挙げることができる。
【化2】
(式中、R
1〜R
12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
R
9とR
10、R
11とR
12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
R
9又はR
10と、R
11又はR
12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R
5〜R
8は、それぞれの繰り返し単位のなかで、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0026】
〔〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン〕
炭素数2〜20のα−オレフィンは、特に限定されるものではない。例えば、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。また、これらのα−オレフィンは、1種単独でも2種以上を同時に使用してもよい。これらのなかでは、エチレンの単独使用が最も好ましい。
【0027】
〔〔2〕一般式(I)で示される環状オレフィン〕
一般式(I)で示される環状オレフィンについて説明する。一般式(I)におけるR
1〜R
12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。一般式(I)で示される環状オレフィンの具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
【0028】
これらの環状オレフィンは、1種単独でも、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでは、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)を単独使用することが好ましい。
【0029】
〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィンと〔2〕一般式(I)で表される環状オレフィンとの重合方法及び得られた重合体の水素添加方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法にしたがって行うことができる。
【0030】
また、用いられる重合触媒についても特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ系、メタセシス系、メタロセン系触媒等の従来周知の触媒を用いて周知の方法により環状オレフィン系樹脂を得ることができる。
【0031】
また、得られた環状オレフィン系樹脂の水素添加方法も特に限定されず、従来公知の方法を適用可能である。
【0032】
なお、環状オレフィン系樹脂は、上記の〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と、〔2〕一般式(I)で示される環状オレフィン成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能な不飽和単量体成分を含有してもよい。任意に共重合されていてもよい不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体等を挙げることができる。炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体の具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
【0033】
上記のうち、本発明における環状オレフィン系樹脂としては、特に本発明の効果を奏しやすいという観点から、ノルボルネンとエチレンとの付加共重合体が特に好ましい。
【0034】
環状オレフィン系樹脂のガラス転移点の下限値は、特に限定されないが、好ましくは130℃以上、より好ましくは145℃以上である。環状オレフィン系樹脂のガラス転移点がかかる範囲であると、樹脂組成物から得られる成形品に耐熱性を付与しやすい。環状オレフィン系樹脂のガラス転移点の上限値は、特に限定されないが、好ましくは190℃以下、より好ましくは185℃以下である。環状オレフィン系樹脂のガラス転移点がかかる範囲であると、樹脂組成物から得られる成形品の黄変を抑制しやすい。
【0035】
環状オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)は、DSC法(ISO11357−1,−2,−3記載の方法)によって昇温速度20℃/分の条件で測定した値を採用する。
【0036】
環状オレフィン系樹脂の含有量の下限値は、特に限定されないが、樹脂組成物中に好ましくは65.0質量%以上、より好ましくは95.0質量%以上である。環状オレフィン系樹脂の含有量の上限値は特に限定されないが、樹脂組成物中に好ましくは98.0質量%以下である。
【0037】
(化合物(A)及び化合物(B))
3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を有する化合物(A)(以下、「化合物(A)」ともいう。)、及び、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル基又は1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有する化合物(B)(以下、「化合物(B)」ともいう。)は、後述する紫外線吸収剤とともに環状オレフィン系樹脂含有組成物に配合することにより、樹脂組成物から得られる成形品に、耐熱性、耐光性、及び耐湿熱性をバランスよく付与できる。
【0038】
さらに、本発明者の検討の結果、化合物(A)及び化合物(B)の含有量を、下記関係式1を満たすように、すなわち、化合物(A)の含有量及び化合物(B)の含有量が等しいか、又は、化合物(A)の含有量よりも化合物(B)の含有量が多くなるように配合することで、特にバランスのよい耐熱性、耐光性、及び耐湿熱性を樹脂組成物から得られる成形品に付与できることが見出された。
環状オレフィン系樹脂100質量部に対する化合物(A)の質量部≦環状オレフィン系樹脂100質量部に対する化合物(B)の質量部・・・関係式1
【0039】
化合物(A)及び化合物(B)の含有量は、上記関係式1を満たせば特に限定されないが、化合物(B)の含有量が、化合物(A)の含有量に対して、好ましくは1倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上であってもよい。また、化合物(B)の含有量は、化合物(A)の含有量に対して、好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下であってもよい。
【0040】
化合物(A)は、ヒンダードフェノール(フェノール性水酸基に対して両側のオルト位置にt−ブチル基を含む化合物)であり得る。本発明者の検討の結果、ヒンダードフェノールの代わりに、片ヒンダードフェノール(フェノール性水酸基に対して両側のオルト位置のうち、片方のみにt−ブチル基を含む化合物)を用いても、樹脂組成物から得られる成形品に、耐熱性や耐光性を十分に付与できないことが見出された。
【0041】
化合物(A)としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、単環式化合物(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等)、炭化水素基又はイオウ原子を含む基で連結された多環式化合物(例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等)、エステル基又はアミド基を有する化合物(例えば、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド)、N,N’−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等)が挙げられる。化合物(A)は、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0042】
上記のうち、特に本発明の効果を奏しやすいという観点から、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0043】
化合物(B)としては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル基又は1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有する化合物であれば特に限定されない。化合物(B)は、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0044】
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル基を有する化合物としては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンステアリン、脂肪酸(C12−21及びC18不飽和)2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルエステル、ポリ[{6−モルフォリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、ビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、1,1’−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、(ミックスト2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ[6−N−モルホリル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミド]、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2−ジブロモエタンとの縮合物、[N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]プロピオンアミド、及び以下の式(1)で表される化合物等を挙げることができる。
【化3】
【0045】
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有する化合物としては、プロバンジオイックアシッド[{4−メトキシフェニル}メチレン]−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)エステル、ビス−(1,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル){[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル}ブチルマロネート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−モルフォリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イミノ}](ミックスト1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等を挙げることができる。
【0046】
化合物(B)としては、上記のうち、特に本発明の効果を奏しやすいという観点から、脂肪酸(C12−21及びC18不飽和)2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルエステル、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−モルフォリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、及び、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、及び以下の式(1)で表される化合物のうちいずれか1以上が好ましい。
【化4】
【0047】
化合物(A)及び(B)の含有量は、上記関係式1を満たす限り、特に限定されない。特に本発明の効果を奏しやすいという観点から、化合物(A)の含有量の下限値は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上である。化合物(A)の含有量の上限値は特に限定されないが、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して2.00質量部以下である。化合物(B)の含有量の下限値は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上である。化合物(B)の含有量の上限値は特に限定されないが、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して好ましくは2.00質量部以下である。
【0048】
また、化合物(A)の含有量の下限値は、樹脂組成物中に好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上である。化合物(A)の含有量の上限値は特に限定されないが、樹脂組成物中に好ましくは2.00質量%以下である。化合物(B)の含有量の下限値は、樹脂組成物中に好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上である。化合物(B)の含有量の上限値は特に限定されないが、樹脂組成物中に好ましくは2.00質量%以下である。
【0049】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、化合物(A)及び(B)とともに環状オレフィン系樹脂含有組成物に配合することにより、樹脂組成物から得られる成形品に、耐熱性、耐光性、及び耐湿熱性をバランスよく付与できる。
【0050】
紫外線吸収剤の種類は、特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]等)、トリアジン系紫外線吸収剤(2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、ビス{2−[4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]エチル}ドデカンジオエート等)、その他の紫外線吸収剤(テトラ−エチル−2,2−(1,4−フェニレン−ジメチリデン)−ビスマロネート等)が挙げられる。
【0051】
紫外線吸収剤は、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0052】
紫外線吸収剤の含有量は特に限定されない。耐熱性、耐光性、及び耐湿熱性をバランス良く高めやすいという観点から、紫外線吸収剤の含有量の下限値は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上である。紫外線吸収剤の含有量の上限値は特に限定されないが、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して2.00質量部以下である。また、紫外線吸収剤の含有量の下限値は、樹脂組成物中に好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上である。紫外線吸収剤の含有量の上限値は、樹脂組成物中に好ましくは2.00質量%以下である。
【0053】
耐熱性、耐光性、及び耐湿熱性を特にバランス良く高めやすいという観点から、紫外線吸収剤及び化合物(B)の含有量を、下記関係式2を満たすように、すなわち、紫外線吸収剤の含有量及び化合物(B)の含有量が等しいか、又は、紫外線吸収剤の含有量よりも化合物(B)の含有量が多くなるように配合することが好ましい。
環状オレフィン系樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の質量部≦環状オレフィン系樹脂100質量部に対する化合物(B)の質量部・・・関係式2
【0054】
紫外線吸収剤及び化合物(B)の含有量は、化合物(B)の含有量が、紫外線吸収剤の含有量に対して、好ましくは1倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上であってもよい。また、化合物(B)の含有量は、紫外線吸収剤の含有量に対して、好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下であってもよい。
【0055】
(縮合リン酸エステル)
縮合リン酸エステルは、上記の化合物(A)、化合物(B)、及び紫外線吸収剤の作用を阻害せずに、環状オレフィン系樹脂含有組成物から得られる成形品に、良好な耐光性を付与でき、成形品の黄変を抑制できる。
【0056】
縮合リン酸エステルとしては、具体的には、1,3フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3フェニレンビス(ジ−4メチルフェニルホスフェート)、1,3フェニレンビス(ジ−2,6キシレニルホスフェート)、1,4フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,4フェニレンビス(ジ−2,6キシレニルホスフェート)、4,4’ビフェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’ビフェニレンビス(ジ−2、6キシレニルホスフェート);これらのホスフェート類に対応するハイドロキノンホスフェート類、ビフェノールホスフェート類;ビフェノール−Aホスフェート類等の縮合リン酸エステルが挙げられる。
【0057】
上記のうち、特に耐光性を高めやすいという観点から、1,3フェニレンビス(ジ−2,6キシレニルホスフェート)が好ましい。
【0058】
縮合リン酸エステルは、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0059】
縮合リン酸エステルの含有量は特に限定されない。樹脂組成物から得られる成形品に耐光性を付与しやすいという観点から、縮合リン酸エステルの含有量の下限値は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上である。縮合リン酸エステルの含有量の上限値は特に限定されないが、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して1.00質量部以下である。また、縮合リン酸エステルの含有量の下限値は、樹脂組成物中に好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上である。縮合リン酸エステルの含有量の上限値は、樹脂組成物中に好ましくは1.00質量%以下である。
【0060】
(主鎖にスチレンを含むブロック共重合体)
主鎖にスチレンを含むブロック共重合体(以下、「本発明におけるブロック共重合体」ともいう。)は、上記の化合物(A)、化合物(B)、及び紫外線吸収剤の作用を阻害せずに、環状オレフィン系樹脂含有組成物から得られる成形品に、良好な耐湿熱性を付与でき、成形品における耐湿熱環境下でのクラック発生を抑制できる。
【0061】
本発明におけるブロック共重合体としては、主鎖にスチレンを含むものであれば特に限定されず、芳香族ビニル系重合体ブロック(ハードセグメント)とゴムブロック(ソフトセグメント)とを有するものや、その水添加物等を使用できる。ハードセグメント及びソフトセグメントは、それぞれ、1種の単量体から形成されていてもよく、複数の単量体から形成されていてもよい。本発明におけるブロック共重合体は、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0062】
ハードセグメントを形成する芳香族ビニル系化合物(単量体)は、少なくとも置換又は非置換のスチレンを含む。芳香族ビニル系化合物として置換又は非置換のスチレンが含まれることで、樹脂組成物から得られる成形品を湿熱処理したときに成形体にクラックが入ることを抑制できる。また、芳香族ビニル系化合物として置換又は非置換のスチレンが含まれることで、本発明におけるブロック共重合体の屈折率を、環状オレフィン系樹脂の屈折率に近づけやすくなり、樹脂組成物から得られる成形品の透明性を高めやすい。
【0063】
また、本発明におけるブロック共重合体中の、芳香族ビニル系化合物に由来する繰り返し単位の含有量が多いと、樹脂組成物から得られる成形体を湿熱処理したときに樹脂成形体の内部にクラックが入りやすくなる。一方、上記含有量が少ないと本発明におけるブロック共重合体の屈折率と、マトリクスである環状オレフィン系樹脂の屈折率との差が大きくなり過ぎるため、本発明におけるブロック共重合体の分散体からの光の屈折と散乱が大きくなり、成形体の透明性が損なわれ得る。したがって、上記問題とクラックの程度とを考慮しながら、芳香族ビニル系化合物に由来する繰り返し単位の含有量を調整する。樹脂成形体を湿熱処理したときに、クラックが発生しにくくするためには、上記含有量(本発明におけるブロック共重合体中の、芳香族ビニル系重合体ブロックに由来する繰り返し単位の含有量)は、その上限値が好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下であり、その下限値は好ましくは45質量%以上、より好ましくは51質量%以上である。
【0064】
樹脂組成物から得られる成形品の黄変やクラックの発生を特に抑制しやすいという観点から、本発明におけるブロック共重合体におけるスチレン含量(本発明におけるブロック共重合体中の、置換又は非置換のスチレンに由来する繰り返し単位の含有量)について、上限値は好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下であり、下限値は好ましくは45質量%以上、より好ましくは51質量%以上である。
【0065】
置換スチレンとしては、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−シクロヘキシルスチレン等の核アルキル置換スチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、2−メチル−4−クロロスチレン等の核ハロゲン化スチレン等が挙げられる。
【0066】
ソフトセグメントを形成する化合物(単量体)としては、通常のブロック共重合体を構成するものを用いることができる。具体的には、α−オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−C2−12オレフィン等)、ジエン系単量体(ブタジエン、イソプレン等)等が挙げられる。
【0067】
本発明におけるブロック共重合体中の、ソフトセグメントを形成する化合物に由来する繰り返し単位の含有量を多くすると、樹脂組成物から得られる成形体を湿熱処理したときに成形にクラックが入りにくくなる。一方、上記含有量が多いと本発明におけるブロック共重合体の屈折率と、マトリクスである環状オレフィン系樹脂の屈折率との差が大きくなり過ぎるため、本発明におけるブロック共重合体の分散体からの光の屈折と散乱が大きくなり、成形体の透明性が損なわれるという点で問題がある。したがって、上記問題とクラックの程度とを考慮しながら、上記化合物に由来する繰り返し単位の含有量を調整する。上記含有量(本発明におけるブロック共重合体中の、ソフトセグメントを形成する化合物に由来する繰り返し単位の含有量)は、その上限値が好ましくは55質量%以下、より好ましくは49質量%以下であり、その下限値は好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。
【0068】
本発明におけるブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体(H−SBR)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、水素添加スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)が挙げられる。
【0069】
本発明におけるブロック共重合体としては、樹脂組成物から得られる成形品の黄変やクラックの発生を特に抑制しやすいという観点から、スチレン含量(本発明におけるブロック共重合体中の、置換又は非置換のスチレンに由来する繰り返し単位の含有量)が45質量%以上70質量%以下であり、かつ、スチレンと、ブタジエン及び/又はイソプレンとのブロック共重合体の水素化物(SEBS、SEPS、SEEPS等)を含むものが好ましい。
【0070】
本発明におけるブロック共重合体の含有量は特に限定されない。樹脂組成物から得られる成形品に耐湿熱性を付与しやすいという観点から、本発明におけるブロック共重合体の含有量の下限値は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。本発明におけるブロック共重合体の含有量の上限値は特に限定されないが、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して1.0質量部以下である。また、本発明におけるブロック共重合体の含有量の下限値は、樹脂組成物中に好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。本発明におけるブロック共重合体の含有量の上限値は、樹脂組成物中に好ましくは1.0質量%以下である。
【0071】
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物には上記以外の成分を配合してもよい。このような他の成分としては、環状オレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂や、滑剤、安定剤、強化剤、可塑剤、顔料等の添加剤が例示される。これらの樹脂や添加剤の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜選択できる。
【0072】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。一般に樹脂組成物の調製法として公知の設備と方法により、本発明の樹脂組成物を調製することができる。例えば、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。全ての成分をホッパから同時に投入して溶融混練もよいし、一部の成分をサイドフィード口から投入して溶融混練してもよい。
【0073】
<成形品の製造方法>
成形品は、本発明の樹脂組成物を用いて、従来公知の成形方法で製造することができる。従来公知の成形方法としては、射出成形法、押出成形法等の成形方法を挙げることができる。
【0074】
本発明の樹脂組成物から得られる成形品としては、特に限定されないが、カメラレンズ、ピックアップレンズ、プロジェクターレンズ、照明装置のレンズ(LEDや冷陰極管等を用いたもの等)、ランプカバー、導光体、樹脂窓、光学フィルム、光学シート等が挙げられる。
【0075】
<本発明の成形品>
本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、耐熱性、耐光性、及び耐湿熱性のいずれもが良好であり、黄変やクラックの発生が抑制されている。耐熱性、耐光性、耐湿熱性、並びに、黄変及びクラックの発生の評価は実施例に示した方法で評価できる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0077】
<樹脂組成物の材料>
表1〜4に示す材料と割合で、30mmΦ二軸押出機を用いてシリンダ温度260〜300℃にて溶融混練し、実施例及び比較例の樹脂組成物を得た。樹脂組成物の材料として、下記を用いた。なお、各材料の割合は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対する質量部として示した。
【0078】
(環状オレフィン系樹脂)
環状オレフィン系樹脂として、下記4種の「COC」のいずれか1種以上を使用した。これらの環状オレフィン系樹脂はいずれもノルボルネンとエチレンとの付加共重合体である。
COC−1:荷重たわみ温度=120℃、Tg=134℃、MVR=48cm
3/10分、TOPAS Advanced Polymers社製
COC−2:荷重たわみ温度=120℃、Tg=142℃、MVR=13cm
3/10分、TOPAS Advanced Polymers社製
COC−3:荷重たわみ温度=140℃、Tg=158℃、MVR=4cm
3/10分、TOPAS Advanced Polymers社製
COC−4:荷重たわみ温度=160℃、Tg=178℃、MVR=1.5cm
3/10分、TOPAS Advanced Polymers社製
【0079】
上記COCの「荷重たわみ温度」及び表4中の「環状オレフィン系樹脂の荷重たわみ温度(℃)」とは、各環状オレフィン系樹脂(複数種の環状オレフィン系樹脂を含む場合は樹脂混合物)を用いて作製した、アニール処理を施していない試験片について、ISO75−1,2に準拠する方法で測定した1.8MPaにおける荷重たわみ温度を示す。
【0080】
上記COCの「Tg」とは、各環状オレフィン系樹脂について、ISO11357−1,−2,−3に準拠する方法で昇温速度20℃/分の条件で測定したガラス転移点を示す。
【0081】
上記COCの「MVR」とは、各環状オレフィン系樹脂について、ISO1133に準拠する方法で測定温度260℃,荷重2160gの条件で測定したメルトボリュームレートを示す。
【0082】
(化合物(A))
3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基を有する化合物(A)として、下記を用いた。
ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](「Irganox1010」、BASFジャパン株式会社製)
また、化合物(A)の代わりに、下記の片ヒンダードフェノールも用いた。
エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](「Irganox245」、BASFジャパン株式会社製)
ビス[3,3−ビス(3’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)酪酸]エチレン(「HostanoxO3」、クラリアントジャパン株式会社製)
【0083】
(化合物(B))
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル基又は1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有する化合物(B)として、下記を用いた。
ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](「LA−94G」、株式会社ADEKA製)
ポリ[{6−モルフォリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イミノ}](「UV−3529」、CYTEC INDUSTRIES INC製)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(「Tinuvin770」、BASFジャパン株式会社製)
以下の式(1)で表される化合物(「Chimassorb 2020」、BASFジャパン株式会社製)
【化5】
【0084】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤として、下記を用いた。
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール(「Tinuvin234」、BASFジャパン株式会社製)
2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](「LA−31」、株式会社ADEKA製)
ビス{2−[4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]エチル}ドデカンジオエート(「LA−1000」、株式会社ADEKA製)
2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール(「CYASORB UV−1164」、CYTEC INDUSTRIES INC製)
テトラ−エチル−2,2−(1,4−フェニレン−ジメチリデン)−ビスマロネート(「Hostavin B−CAP」、クラリアントジャパン株式会社製)
【0085】
(縮合リン酸エステル)
縮合リン酸エステルとして、下記を用いた。
1,3フェニレンビス(ジ−2,6キシレニルホスフェート)(「PX−200」、大八化学工業株式会社製)
【0086】
(ブロック共重合体)
主鎖にスチレンを含むブロック共重合体として、下記を用いた。
「Septon 8104」(SEBS、スチレン含量60質量%、株式会社クラレ製)
「Septon 8105」(SEBS、スチレン含量65質量%、株式会社クラレ製)
「Septon 2104」(SEPS、スチレン含量65質量%、株式会社クラレ製)
「Hybrar KL7350」(SEEPS、スチレン含量50質量%、株式会社クラレ製)
「タフテック H1043」(SEBS、スチレン含量67質量%、旭化成株式会社製)
「DYNARON 9901P」(SEBS、スチレン含量54質量%、JSR株式会社製)
【0087】
(添加剤)
添加剤として、下記を用いた。
滑剤:ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)、日油株式会社製
【0088】
なお、表1〜4中、「紫外線吸収剤≦(B)を満たすか?」とは、各樹脂組成物の組成において、紫外線吸収剤の含有量と化合物(B)の含有量とが、「環状オレフィン系樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の質量部≦環状オレフィン系樹脂100質量部に対する化合物(B)の質量部」という関係を満たすかどうかを示した項目である。「(A)≦(B)を満たすか?」とは、各樹脂組成物の組成において、化合物(A)の含有量と化合物(B)の含有量とが、「環状オレフィン系樹脂100質量部に対する化合物(A)の質量部≦環状オレフィン系樹脂100質量部に対する化合物(B)の質量部」という関係を満たすかどうかを示した項目である。いずれの項目においても、満たす場合は「YES」、満たさない場合は「NO」と示した。
【0089】
<樹脂組成物の成形>
得られた各樹脂組成物について、射出成形機(住友重機械社製、商品名:SE75D)にて、シリンダ温度260〜300℃、金型温度110〜135℃で、70mm×70mm×厚み2mmの平板を成形した。
【0090】
<黄色度及びクラックの発生の評価>
成形後の各平板を、下記3種の試験(ヒートエージング試験、#320又は#275キセノン試験、耐湿熱試験)に供し、試験前後の黄色度(YI値)、及びクラックの有無について評価した。黄色度(DIN6167)は、YKB−Gardnar GmbH製色差計color−sphereを用いて測定した。その結果を表1〜4に示す。なお、表中、「初期YI」とは、試験前の各平板の黄色度を示す。
【0091】
(ヒートエージング試験)
各平板に対して115℃、125℃、又は130℃、1000時間の条件の熱処理を行い、熱処理後に黄色度を測定した(「YI@115℃×1000h」、「YI@125℃×1000h」、「YI@130℃×1000h」の項)。さらに、熱処理前後での黄色度の差(ΔYI)を算出した。ΔYIが小さいほど、成形品の耐熱性が高いことを示す。
【0092】
(キセノン試験)
各平板に対して、500時間の光照射を行い、光照射後に黄色度を測定した(「YI @500時間照射」の項)。光照射は、スガ試験機スーパーキセノンウェザーメーターを用い、フィルター#275(275nm以下をカット)又はフィルター#320(320nm以下をカット)、ブラックパネル温度89℃、湿度50%RH、照射密度162W/m
2(300〜400nm)、トータルエネルギー量291.5MJ/m
2の条件で行った。さらに、光照射の前後での黄色度の差(ΔYI)を算出した。ΔYIが小さいほど、成形品の耐光性が高いことを示す。
【0093】
また、上記の光照射後でのヘイズ値も測定した。具体的には、ヘイズメーター(東洋精機製作所社製、商品名:ヘイズガードII)を用いて、JIS K7136に準拠する方法でヘイズ値を測定した。ヘイズ値が小さいほど、成形品の耐光性が高いことを示す。
【0094】
(耐湿熱試験)
各平板を、温度85℃、湿度85%環境中に1000時間暴露し、暴露後のクラックの有無を光学顕微鏡で観察した。クラックが認められなかった成形品は、耐湿熱が高いことを示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示されるとおり、本発明の樹脂組成物から得られた成形品は、耐熱性、耐光性、耐湿熱性のいずれもが良好であり、黄変やクラックの発生が抑制されていた。このような傾向は、使用する紫外線吸収剤の種類に関わらず認められた。
【0097】
他方、本発明の樹脂組成物の要件を満たさない樹脂組成物から得られた成形品は、耐熱性、耐光性、耐湿熱性のいずれもが劣り、各試験後に顕著な黄変やクラックが認められた。
【0098】
【表2】
【0099】
表2に示されるとおり、本発明の樹脂組成物の要件のいずれかを満たさない樹脂組成物から得られた成形品は、耐熱性、耐光性、耐湿熱性のいずれかが劣っていた。そのため、本発明の樹脂組成物の要件を満たす樹脂組成物によれば、耐熱性、耐光性、耐湿熱性の全てについて良好な特性を有する成形品が得られることがわかった。
【0100】
【表3】
【0101】
表3に示されるとおり、本発明の樹脂組成物から得られた成形品は、耐熱性、耐光性、耐湿熱性のいずれもが良好であり、黄変やクラックの発生が抑制されていた。特に、例えば、実施例と、比較例17との比較から理解されるとおり、本発明の樹脂組成物に含まれる成分を全て含んでいたとしても、「環状オレフィン系樹脂100質量部に対する化合物(A)の質量部≦環状オレフィン系樹脂100質量部に対する化合物(B)の質量部」という関係を満たしていなければ、本発明のようにバランスの良好な特性を実現できないことがわかった。
【0102】
【表4】
【0103】
表4に示されるとおり、本発明の樹脂組成物の要件のうち、環状オレフィン系樹脂の荷重たわみ温度に関する要件を満たさなければ、得られる成形品は耐熱性が顕著に劣ることがわかった。
本発明は、環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物であって、所定の基を有する化合物(A)と、所定の基を有する化合物(B)と、紫外線吸収剤と、縮合リン酸エステルと、主鎖にスチレンを含むブロック共重合体と、を含み、前記環状オレフィン系樹脂は、ISO75−1,2に準拠する方法で、アニール処理を施していない試験片について測定した1.8MPaにおける荷重たわみ温度が125℃以上であり、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の含有量が、前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対する前記化合物(A)の質量部≦前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対する前記化合物(B)の質量部を満たす、樹脂組成物を提供する。