(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入射された赤外線に応じた信号を出力する受光体を有するセンサユニットと、
前記受光体を、開口部を介して包み込むように形成された樹脂パッケージと、
前記開口部内に設けられた光学フィルタとを備える赤外線センサであって、
前記開口部は、第1開口部と、第2開口部と、第3開口部とから構成され、前記第1開口部は、前記樹脂パッケージ外部に対して開口し、前記光学フィルタが充填され、前記第2開口部と前記第3開口部とは、前記受光体の受光面側の空隙部となるように垂直方向に連続して配置され、前記第3開口部は前記センサユニット側に、前記第2開口部は前記第1開口部と前記第3開口部との間に前記第1開口部及び前記第3開口部双方に連通するよう配置され、
前記第1開口部の開口
径および前記第3開口部の開口
径が、前記第2開口部の開口径よりも大きく、
前記受光体の受光面方向の幅をL、前記光学フィルタの前記受光面方向の幅をd
1、前記光学フィルタの前記受光面に対して垂直方向の厚みをh
1、前記光学フィルタの屈折率をn
2、前記第2開口部の前記受光面方向の幅をd
2、前記光学フィルタの前記受光体側端面から前記受光体までの垂直方向の距離をh、及び空気の屈折率をn
1としたときに、前記L、d
1、h
1、n
2、d
2、h、及びn
1が、
【数1】
の式を満たすことを特徴とする赤外線センサ。
【背景技術】
【0002】
温度、圧力、光等の物理的な変化量を、電流や電圧などの電気的な変化量に変換するものとして、センサが知られている。センサを使用することにより、様々な物理的な変化量を数値として測定することが可能となる。特に、近年の環境問題への関心の高まりから、省エネルギー化、高効率化に貢献することが可能なセンサが注目を集めている。
【0003】
上述したセンサには、赤外線の変化量を検出して赤外線を電気信号に変換する赤外線センサがある。赤外線センサは、人間の目に影響を与えることなく情報を送信できることから、テレビのリモコン装置等に利用されている。
【0004】
さらに、赤外線センサは対象物の温度を直接接触せずに感知できるという特徴を有し、人体などの熱源を感知する人感センサや非接触温度計として赤外線センサを用いることができる。例えば赤外線センサを人感センサとして利用する場合には、赤外線センサを照明などに搭載することで不要な電力を有効に削減できる。また、赤外領域に吸収帯を有する気体(二酸化炭素、一酸化炭素など)に対しては、赤外線センサはガスセンサとしても応用可能であり、人感センサよりも様々な用途で利用することが期待されている。
【0005】
赤外線センサはその動作原理から、熱型センサと量子型センサに分類される。熱型センサは人感センサなどで広く用いられているが、周波数応答性が低いという課題がある。また、熱型センサをガスセンサとして使用する場合には、ガス検出の応答性が低く、迅速な異常検知の点で課題がある。
【0006】
一方、量子型センサは、周波数応答性が高いという特徴があり、この点で、熱型センサに比べて非常に有望である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
赤外線センサは、測定対象物以外からの外乱光の影響を減らし、所定の視野範囲から入射した赤外線に応じた信号を精度よく出力するものとするために、視野角を絞るための開口部が形成された構造体を設ける形態が知られている。また、赤外線センサの受光体を独立に複数にし、受光体ごとに構造体に開口部を設ける形態も知られている。それぞれの受光体に異なる視野に対する信号出力特性を与え、異なる視野の各受光体からの信号を利用し、物体の位置の検出も可能となる。
【0009】
特許文献1には、赤外線センサに入射する入射光の視野を制限する光隔壁により仕切られた光学フィルタを有する光学センサが開示されている。特許文献1の赤外線センサは、光学フィルタを光隔壁により仕切り、赤外線センサ受光体に入射する赤外線の視野を制限する構成を考えることができる。
【0010】
図1は、特許文献1に記載の赤外線センサ装置100の構成を示す断面図である。赤外線センサ100は、入射した赤外線に応じた信号を出力する受光体111を複数有する赤外線センサユニット110と、受光体111の視野を制限する光隔壁120と、光隔壁120により仕切られた光学フィルタ130とを備える。
【0011】
図1に記載の赤外線センサ装置100では、光学フィルタ130の側面(光隔壁120)による光の反射の影響によってフィルタ側面で反射しない主視野と、光学フィルタ側面の反射による副視野の2種類の視野が生じる。この場合、
図1から分かる通り、副視野(主視野外)から入射された赤外線が、光学フィルタ130において屈折後、光隔壁120において反射してしまい、受光体111に到達してしまう。したがって、外乱光が受光部111に到達してしまい、主視野における精度の高い赤外線検知ができないという課題がある。さらに独立した複数の受光体を持つ場合、副視野の影響により出力結果の大小関係を判断することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するために、本発明の第1の態様の赤外線センサは、入射された赤外線に応じた信号を出力する受光体を有するセンサユニットと、前記受光体を、開口部を介して包み込むように形成された樹脂パッケージと、前記開口部内に設けられた光学フィルタとを備える赤外線センサであって、前記開口部は、第1開口部と、第2開口部と、第3開口部とから構成され、前記第1開口部は、前記樹脂パッケージ外部に対して開口し、前記光学フィルタが充填され、前記第2開口部と前記第3開口部とは、前記受光体の受光面側の空隙部となるように垂直方向に連続して配置され、前記第3開口部は前記センサユニット側に、前記第2開口部は前記第1開口部と前記第3開口部との間に前記第1開口部及び前記第3開口部双方に連通するよう配置され、前記第1開口部の開口
径および前記第3開口部の開口
径が、前記第2開口部の開口径よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第2の態様の赤外線センサは、前記受光体の受光面方向の幅をL、前記光学フィルタの前記受光面方向の幅をd
1、前記光学フィルタの前記受光面に対して垂直方向の厚みをh
1、前記光学フィルタの屈折率をn
2、前記第2開口部の前記受光面方向の幅をd
2、前記光学フィルタの前記受光体側端面か
ら前記受光体までの垂直方向の距離をh、及び空気の屈折率をn
1としたときに、前記L、d
1、h
1、n
2、d
2、h、及びn
1が、
【0014】
【数1】
【0015】
の式を満たすことを特徴とする。
【0016】
さらに、前記第2開口部の前記受光面
に対して垂直方向の厚みを
h2としたときに、前記
L、d2、h、及びh2が、
【0017】
【数2】
【0018】
の式を満たすことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第4の態様の赤外線センサは、第1の態様から第3の態様のいずれか1つの赤外線センサであって、前記樹脂パッケージは、放射率が0.7以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の赤外線センサ装置によれば、外乱光の影響の原因となる副視野から出力信号を低減し主視野の赤外線量を精度よく定量することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための実施形態を、図面を参酌しながら説明する。
【0023】
図2は、本発明の1実施形態に係る赤外線センサ200の構成例を示す平面図である。また、
図3は、
図2に記載の赤外線センサ200のA−A´における断面図である。
図3において、赤外線センサ200は、一方の面(上面)に受光体211を有するセンサユニット210と、センサユニット210の上面側に設けられ、受光体211を、開口部221を介して包み込むように形成された樹脂パッケージ220と、開口部221内に設けられた光学フィルタ230とを備える。樹脂パッケージは放射率が0.7以上の材料により形成される。
【0024】
受光体211は入射した赤外線に応じた電気信号を出力する。また、受光体211は、センサユニット210の上面に、開口部221が形成された樹脂パッケージ220を備えることにより、視野角が制限される。受光体211の視野角は、樹脂パッケージ220の開口径及び開口深さによって、一定角度内に制限される。
【0025】
開口部221は、樹脂パッケージ220のセンサユニット210が設けられた面と反対側の面(樹脂パッケージ上面)に対して開口し、第1開口部221aと、第2開口部221bと、第3開口部221cとから構成される。ここで、第1開口部221aは、樹脂パッケージ220外部に対して開口し、光学フィルタ230充填される。本実施形態において、第1開口部221aと、第2開口部221bと、第3開口部221cとは、角柱状に形成されている。
【0026】
第2開口部221bと第3開口部221cとは、受光体211の受光面側の空隙部となるように垂直方向に連続して配置され、第3開口部221cはセンサユニット211側に、第2開口部221bは第1開口部221aと第3開口部221cとの間に配置される。第2開口部221bは、第1開口部221a及び第3開口部221c双方に連通する。
【0027】
再び
図2に戻り、赤外線センサ200は、平面視したときに、第1開口部221aおよび第3開口部221cの外縁内に、第2開口部221bの外縁が配置される。つまり、第1開口部221aの開口径および第3開口部221cの開口
径が、第2開口部221bの開口
径よりも大きい。
【0028】
第1開口部221aおよび第3開口部221cの外縁内に、第2開口部221bの外縁が配置されることにより、樹脂パッケージ220の第1開口部221a内の開口部壁(光学フィルタ230の側面)で反射した光が、第2開口部221bに入射せずに、第2開口部221bを形成する樹脂パッケージ壁で反射または吸収される。したがって、副視野からの赤外線の受光体211への入光を低減し、主視野から入射される赤外線量を高精度に定量することが可能になる。
【0029】
ここで、本実施形態において、赤外線センサ200の寸法を、具体的に以下のように設計することとする。まず、
図2に記載の赤外線センサ200の各構成の寸法を示すパラメータを、次のように設定する。
L:受光体211の(x軸方向の)幅
d
1:光学フィルタ230の(x軸方向の)幅
h
1:光学フィルタ230の(z軸方向の)厚み
d
2:第2開口部221bの(x軸方向の)幅
h:受光体211から光学フィルタ230の受光体211側端面までの(z軸方向の)距離
h
2:第2開口部221bの(z軸方向の)厚み
n
1:空気の屈折率
n
2:光学フィルタ230の屈折率
次に、各構成のパラメータL、d
1、h
1、d
2、h、n
1、及びn
2が下記式(1)を満たすように設定する。
【0031】
また、L、d
2、h、及びh
2が下記式(2)を満たすように設定する。
【0033】
ここで、本実施形態の赤外線センサ200は、効率的に副視野から出力信号を低減し主視野の赤外線量を精度よく定量するために、断面視したときに第1開口部221a〜第3開口部221cの重心と、受光体211の中心が一直線上になるように配置されることが好ましい。
【0034】
以下、式(1)及び式(2)の技術的意義を、図面を参酌しながら説明する。
【0035】
図4は、
図2の赤外線センサ200を示す断面図に、式(1)を説明するための光路等を加えた図である。
【0036】
図4において、第3開口部221c側の受光体211の端点k
1と、第1開口部211a側の第2開口部221bの端点k
2とを線で結び、結んだ線分を線分1とする。第1開口部211a側の第2開口部221bの端点k
2から受光体211の受光面に対して垂線を引き、引いた線分を線分2とする。また、線分2と受光体211の受光面との交点をk
3とする。θ
1を線分1と線分2のなす角とすると、パラメータL、d
2、h、及びθ
1について下記式(3)が成り立つ。
【0038】
第2開口部221b側の第1開口部221aの端点k
2から第1開口部221aの開口側の端点k
4を線で結び、結んだ線分を線分3とする。そして、線分2を延長して第1開口部221aの開口面と交差する点をk
5とする。線分3と線分2とのなす角をθ
2とする。
【0039】
ここで、線分2を、樹脂パッケージ220外部から端点k
4に反射して第1開口部221a内の光学フィルタ230に入射する光線の光路と考え、線分1を、第1開口部221aから第2開口部221b及び第3開口部221cを介して受光体211の端点k
1に入射する光線の光路と考える。樹脂パッケージ220外部から第1開口部221a内の光学フィルタ230への入射角はθ
2であり、第1開口部221a内の光学フィルタ230から第2開口部221bへの入射角はθ
1である。パラメータθ
1、θ
2、n
1、及びn
2について、下記式(4)が成り立つ。
【0041】
k
4とk
5とを結ぶ線分の距離Pが、パラメータd
1及びd
2との間で下記式(5)の関係を満たすことで、光学フィルタ230側面で反射した赤外線が、受光体211に到達することを低減できる。
【0043】
さらにP、h
1及びθ
2は下記式(6)の関係を満たす。
【0045】
式(6)をPについて解くと下記式(7)となる
【0047】
式(7)を因数分解をすると下記式(8)が導出される。
【0049】
式(8)式と式(5)より、下記式(9)が導出される。
【0051】
式(9)式と式(4)より下記式(10)が導出される。
【0053】
そして、式(10)と式(3)から、式(1)が算出される。
【0055】
すなわち、式(1)を満たせば、所望の視野以外からの赤外線の入射を効率的に低減することが可能になる。
【0056】
次に、式(2)の技術的意義を説明する。
【0057】
図5は、
図2の本実施形態の赤外線センサ装置200の断面図に、式(2)を説明するための光路等を加えた図である。
【0058】
図5において、第2開口部221bの第3開口部221c側の2つの端点k
6及びk
7を線で結び、結んだ線を線分4とし、線分1(
図4と同一)と線分4の交点をk
8とする。k
7とk
8を結んだ線分の長さをQとする。Qがd
2より大きいと、第2開口部221bが受光体211の端に入射する光を遮蔽してしまうため、受光体211の主視野が狭くなってしまう。そこで、d
2及びQが下記式(11)を満たすことで、第2開口部221bが受光体211の主視野の光路を遮蔽しないようにすることが可能となる。
【0060】
端点k
1(
図4と同一)と交点k
3(
図4と同一)を結んだ線分を線分5とする。ここで、線分1と線分2と線分5からなる三角形と線分1と線分2と線分4がなす三角形が相似であるため、各辺の比の式(12)が成り立つ。
【0062】
そうすると、Qの値が算出できる(式(13))。
【0064】
式(11)と式(13)より、下記式(14)の関係を得る。
【0066】
式(14)をd
2についてまとめると、式(2)が導ける。
【0068】
図6は、
図2及び
図3において示した赤外線センサ装置の視野を説明するための断面図である。
図6において、破線で示した範囲内が、光学フィルタ230の側面(第1開口部221aの壁面)での反射を考慮しない場合の主視野の範囲となる。
【0069】
ここで、主視野外(副視野)から出力された赤外線の一部(実線により示す)は、光学フィルタ230に入射して屈折し、光学フィルタ230の側面(第1開口部221aの壁面)に反射する。しかし、第1開口部221aの底部の壁面を形成する樹脂パッケージにより光路が遮蔽され、第2開口部221b内には侵入しないことが理解される。
【0070】
すなわち、第2開口部221bおよび第3開口部221cが受光体211上の中空部となるように樹脂パッケージ220がセンサユニット210上に配置され、赤外線センサ装置200を平面視したときに、第1開口部221aおよび第3開口部221cの外縁内に、第2開口部221bの外縁が配置されることにより、副視野からの赤外線の受光体211への到達を低減し、主視野から入射される赤外線量を高精度に定量することが可能になることが理解される。
【0071】
一方、
図7は、従来の赤外線センサ装置の視野を説明するための断面模式図である。光学フィルタ部が配置される開口部(
図2の第1開口部221aに相当)と、その下の開口部(
図2の第2開口部221bに相当)が、同じ形状(断面視したときに幅が同一、平面視したときに外縁が重なる)である。
図7から分かる通り、副視野(主視野外)から入射した赤外線が、光学フィルタにおける屈折および反射により、受光体に到達してしまうことが理解される
以下、本実施形態の赤外線センサ装置の各構成要件について説明する。以下の説明は、上述の赤外線センサ装置にそれぞれ独立または組み合わせて適用することができる。
【0072】
(センサユニット)
センサユニット210に使用する赤外線センサは、熱型赤外線センサ、量子型赤外線センサ等が挙げられるが、感度や応答性の観点から、量子型赤外線センサであることが好ましい。センサユニット210は、必要に応じて受光体211を支持する基板を備えていてもよい。
【0073】
受光体211は1つであってもよいし、複数であってもよい。受光体211が複数の場合、それぞれの受光体から出力されるそれぞれの信号の大きさの大小関係を用いた位置検出や、それぞれの信号変化の微分値を用いた動き検出する赤外線センサ装置として応用が可能になる。ここで、それぞれの受光体は異なる視野を有するが、この際、受光体のそれぞれが副視野を有することになる。すなわち、ある受光体に対する主視野が、別の受光体に対する副視野(主視野外)となる。
【0074】
従来の赤外線センサ装置では、副視野からの赤外線が受光体に到達し得るため、上述した位置検出や動き検出の誤検知が生じてしまうが、本実施形態の赤外線センサ装置によれば、副視野からの赤外線が低減されるため、より高精度に位置検出や動き検出が可能になる。
【0075】
また、赤外線センサ装置200は、受光体211から出力される信号を増幅・演算するための回路部を更に備えていてもよい。
【0076】
(樹脂パッケージ)
樹脂パッケージ220に形成された第1開口部221a〜第3開口部221cの形状は、本実施形態においては、角柱状に形成されているが、第1開口部221aおよび第3の開口部221cの外縁内に、第2開口部221bの外縁が配置されていれば特に制限されず、角柱状に限らず、円柱状でもよい。また樹脂パッケージを構成する材料としては、放射率が0.7以上の材料であれば特に制限されず、例えば熱硬化性のエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0077】
効率的に副視野からの赤外線を低減する観点から、第1開口部221a〜第3開口部221cの側面(樹脂パッケージ220の内壁面)と、受光体211平面のなす角が90±5°であることが好ましい。
【0078】
(光学フィルタ)
光学フィルタ230は、入射した赤外線を選択的に透過させるものであり、所定の波長以上の光を透過させるものであってもよいし、所定の波長以下の光を透過させるものであってもよいし、所定の帯域の波長を透過させるものであってもよい。また複数の材料から構成されるものであってもよい。光学フィルタ230の具体的な材料としてはSi等が挙げられる。外乱光の遮断や、異物の侵入を防止する観点から、光学フィルタ230は第1の開口部を充填していることが好ましい。