(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記吸込水槽内の水位が運転最低水位よりも低く、エアロック水位よりも高い場合であって、かつ前記揚水管内の圧力または流量が所定の設定値以下である場合に、前記先行待機型ポンプがエアロック運転状態であると判断することを特徴とする請求項1に記載の先行待機型ポンプ。
前記制御部は、前記吸込水槽内の水位が運転最低水位よりも低く、エアロック水位よりも高い場合であって、かつ前記揚水管内の圧力または流量が所定の設定値よりも大きい場合に、前記先行待機型ポンプが気水混合運転状態であると判断することを特徴とする請求項1または2に記載の先行待機型ポンプ。
前記制御部は、前記吸込水槽内の水位が運転最低水位よりも低く、エアロック水位よりも高い場合であって、かつ前記流水検知器が流水検知信号を発信していない場合に、前記先行待機型ポンプがエアロック運転状態であると判断することを特徴とする請求項6に記載の先行待機型ポンプ。
前記制御部は、前記吸込水槽内の水位が運転最低水位よりも低く、エアロック水位よりも高い場合であって、かつ前記流水検知器が流水検知信号を発信している場合に、前記先行待機型ポンプが気水混合運転状態であると判断することを特徴とする請求項6または7に記載の先行待機型ポンプ。
【背景技術】
【0002】
突発的な豪雨などの異常気象が多発する近年では、雨水幹線から流れ込む雨水を排水するためのポンプ機場に設置されるポンプとして、先行待機型ポンプへの需要が高まっている。先行待機型ポンプは、吸込水槽内の水を速やかに揚水するために、吸込水槽内の水位に関係なく、羽根車を所定の回転速度で予め回転させることが可能なポンプである。すなわち、先行待機型ポンプは、羽根車や水中軸受に水が接触していない状態(ドライ状態)で運転することが可能なポンプである。
【0003】
先行待機型ポンプによれば、雨水が吸込水槽に流入してくる前からポンプの運転を開始することができる。したがって、突発的な豪雨によって吸込水槽内に流入してくる雨水が急激に増大しても、操作対応の遅れや始動失敗などによるポンプの排水遅れが起こることが無く、吸込水槽から水を速やかに排出し、排水遅れによる浸水被害を防止することが可能である。
【0004】
従来の先行待機型ポンプの一例が
図14に示される。
図14は、従来の先行待機型ポンプの概略断面図である。
図14に示される先行待機型ポンプは、吸込ベルマウス101aおよびポンプボウル101bを有するインペラケーシング101と、インペラケーシング101を吸込水槽130内に吊り下げる吊下管102と、吊下管102の上端に接続される吐出曲管103と、吐出曲管103の吐出側に接続される吐出管104と、インペラケーシング101内に収容される羽根車110と、羽根車110が固定される回転軸115と、回転軸115を回転させるための駆動機125と、を備えている。回転軸115は、水中軸受117、中間軸受118、および外軸受119に回転可能に支持されている。吸込ベルマウス101aは、吸込水槽130内に開口している。吐出管104の吐出側端部は、吐出水槽131内に開口しており、当該吐出側端部には、吐出水槽131からの水の逆流を防止する逆流防止弁(フラップ弁)123が設けられている。吐出管104には、電動の吐出弁124が設けられており、先行待機型ポンプが起動されると、吐出弁124が開かれるように構成されている。
【0005】
吸込ベルマウス101aには、羽根車110よりも低い位置に貫通穴101cが形成され、当該貫通穴101cには、空気流入管140が接続される。空気流入管140は、貫通孔101cから略水平に延びた後、上方に延びる。空気流入管140は、先行待機型ポンプの運転最高水位(H.W.L)よりも高い位置まで延びており、当該運転最高水位よりも高い位置で大気中に開口している。
【0006】
先行待機型ポンプでは、吸込水槽130内の水位が低い状態で、あるいは吸込水槽130内に水が無い状態で、羽根車110を回転させて待機運転を開始する。待機運転の開始時では、先行待機型ポンプは、吸込ベルマウス101aから流れ込む空気のみを吸い上げる気中運転状態で運転される。水が吸込水槽130内に流入することにより水位が上昇して気水混合運転水位(例えば、羽根車110の最下端位置:LL.W.L)に達すると、羽根車110による揚水作用が生じて、吸込ベルマウス101aから吸いこまれる水と空気流入管140から流れ込む空気とを同時に吸い上げる気水混合運転状態となる。気水混合運転状態では、流量が低いものの吐出水槽131に水が排出される。気水混合運転状態になった後は、水位が上昇するにつれて、空気流入管140からの空気吸込量が減少し、排水流量が増加していく。水位が先行待機型ポンプの運転最低水位(L.W.L)に達すると、空気流入管140からの空気の流入が停止され、水のみが吐き出される通常排水運転に移行する。本明細書における「運転最低水位」とは、気水混合運転状態および後述するエアロック運転状態を伴わない、通常排水運転状態での最低水位を表す。
【0007】
先行待機型ポンプが水を吐出水槽131に排出することで、吸込水槽130の水位が低下していき、水位が運転最低水位(L.W.L)よりも下がると、空気流入管140から空気の流入が開始され、気水混合運転状態に移行する。さらに水位が低下して、エアロック水位(LLL.W.L)に達すると、羽根車110の下方(一次側)に空気だまりが形成され、羽根車110の上方(二次側)の水が羽根車110により攪拌されるエアロック運転状態に移行する。エアロック運転状態では、羽根車110の二次側にある水が羽根車110により攪拌されているだけであり、吐出水槽131に水は排出されない。水が吸込水槽130に流入して水位が上昇すると、再び気水混合運転状態に移行する。なお、エアロック運転状態では、羽根車110の二次側にある水が、羽根車110とインペラケーシング101との間の隙間などから徐々に吸込水槽130内に戻されていく。羽根車110の二次側の水がなくなると、先行待機型ポンプは、エアロック運転状態から気中運転状態に移行する。
【0008】
このようなサイクルで運転される先行待機型ポンプは、従来は、ポンプの全揚程が比較的小さい設備(例えば、20m以下)であった。しかしながら、近年の都市化に伴い、雨水幹線は、非常に深い位置(大深度)に埋設されるようになってきた。そのため、全揚程が大きい先行待機型ポンプを大深度に設置したいとの要望が増加している。求められている先行待機型ポンプの全揚程は、少なくとも30m以上であり、50m以上の全揚程が要求される場合もある。
【0009】
全揚程が大きい先行待機型ポンプを大深度に設置すると、吐出水槽に連通する吐出管を鉛直方向に非常に長く延ばす必要が生じる。吐出管を長くすると、気水混合運転状態およびエアロック運転状態である時間が吐出管の長さの増加分にしたがって長くなってしまう。気水混合運転状態およびエアロック運転状態は、ポンプに大きな振動が発生する最も不安定な運転状態である。したがって、気水混合運転状態およびエアロック運転状態が長く続くと、先行待機型ポンプを構成する機器の故障が発生したり、先行待機型ポンプを設置している土木躯体へ悪影響が生じてしまう。
【0010】
また、エアロック運転状態では、先行待機型ポンプは、無送水の状態で、吐出管内の水を攪拌している状態となる。この場合、ポンプの動力の多くは熱として消費されるため、吐出管内の水温が上昇して、先行待機型ポンプを構成する機器へ悪影響を及ぼすことがある。さらに、吐出管が熱膨張して、吐出管を支持している土木躯体への荷重が増大してしまう。
【0011】
さらに、従来の先行待機型ポンプでは、吐出水槽からの水の逆流を防止する機構として簡易なフラップ弁(
図14の符号123参照)を採用することが一般的であった。このようなフラップ弁では、弁体に実揚程差(=吐出水槽水位−吸込水槽水位)以上の強度が要求される。しかしながら、簡易な構造であるフラップ弁では、大深度となる高実揚程差での設計や対応(製作)が難しいという課題があった。
【0012】
また、フラップ弁の場合、弁体がポンプ停止時の逆流に対して閉じ遅れることで当該弁体が衝撃的に閉まる現象(所謂、スラミング現象)が発生してしまう。スラミング現象が発生すると、大きな衝撃音が発生すると共に、弁体および/または弁胴が破損に至る危険性がある。加えて、スラミング現象が発生すると、プラップ弁を設置している土木躯体にまで衝撃が伝わり、土木躯体が破損してしまう可能性がある。このような現象の対策として、急閉式や強制緩閉式のフラップ弁を採用するなどの対応が考えられるが、フラップ弁は、吐出水槽内に没水する機器であるため、このような特殊構造を採用することが難しい。
【0013】
さらに、先行待機型ポンプが高揚程であると、ポンプの急停止時(例えば、停電や故障等によるトリップ時)に水撃現象が発生し、当該水撃現象の発生に伴う圧力低下や上昇も大きくなる。水撃現象に起因する圧力変化を抑えるには、設計された時間だけ圧力を逃がす機構が必要である。しかしながら、フラップ弁は、上述の通り、特殊構造を採用することが難しいので、水撃現象のための対策を施すことができない。
【0014】
上述のような点を考慮して、一般に、高揚程のポンプ設備には、フラップ弁ではなく、緩閉式逆止弁が吐出管の途中に設けられる。しかしながら、高揚程のポンプに緩閉式逆止弁を用いる場合、緩閉式逆止弁の弁体および緩閉機構(例えば、油圧機構)に強度上の問題が生じるため、強度上の問題点を考慮して、緩閉する弁体を分割し、小型の弁体を緩閉式にするなどの対策が行われる。しかしながら、下水、雨水、または河川水を取り扱う先行待機型ポンプでは、弁体を小型化すると、塵詰まりなどの課題が生じてしまう。そのため、高揚程の先行待機型ポンプでは、緩閉式逆止弁の採用が困難である。
【0015】
また、逆止弁を吐出管の途中に設けると、ポンプ停止後、垂直に立ち上がる吐出管における逆止弁の二次側に水が残ってしまう。先行待機型ポンプは、雨天時に運転されるので、場合によっては、逆止弁の二次側の残水は、何日間あるいは何週間もそのまま放置される場合がある。放置された残水は、腐敗して異臭を発生させてしまう。また、次の運転時に放置された腐敗水を吐出側の河川などに排出する場合、河川の水質悪化や生態系への影響が懸念される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の先行待機型ポンプの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る先行待機型ポンプを示す概略断面図である。
図1に示される先行待機型ポンプは、吸込ベルマウス1aおよびポンプボウル1bを有するインペラケーシング1と、インペラケーシング1を吸込水槽30内に吊り下げる吊下管2と、吊下管2の上端に接続される吐出曲管3と、吐出曲管3の吐出側に接続される吐出管4と、インペラケーシング1内に収容される羽根車10と、羽根車10が固定される回転軸15と、回転軸15を回転させるための駆動機25と、を備えている。吊下管2は、水(例えば、雨水)が流れ込む吸込水槽30の上部のポンプ据付床6に形成された挿通孔7を通して下方に延び、吊下管2の上端に設けられた据付用ベース8を介してポンプ据付床6に固定される。回転軸15は、吐出曲管3、吊下管2、及びインペラケーシング1内を通って鉛直方向に延びている。回転軸15は、水中軸受17、中間軸受18、および外軸受19に回転自在に支持されている。回転する羽根車10によって昇圧された水は、吊下管2、吐出曲管3、および吐出管4から構成される揚水管5を通って吐出水槽31に揚水される。
【0025】
吸込ベルマウス1aは、吸込水槽30内で下方を向いて開口し、吸込ベルマウス1aの上端はポンプボウル1bの下端に固定されている。羽根車10は、回転軸15の下端に固定されており、羽根車10と回転軸15とは一体的に回転するようになっている。この羽根車10の二次側(吐出側)には、複数のガイドベーン16が配置されている。これらのガイドベーン16はポンプボウル1bの内周面に固定されている。回転軸15を回転自在に支持する水中軸受17は、ポンプボウル1bに収容されており、羽根車10の上方に位置している。同様に回転軸15を回転自在に支持する中間軸受18は、吊下管2に収容され、外軸受19は、吐出曲管3の外部で当該吐出曲管3に固定されている。
【0026】
吐出管4は、第1の水平部4a、第1の曲管部4b、鉛直直管部4c、第2の曲管部4dおよび第2の水平部4eにより構成される。第1の水平部4aは、吐出曲管3の吐出側に接続されて水平方向に延び、第1の曲管部4bに接続される。第1の曲管部4bは、90°だけ曲げられており、吐出管4の延びる方向を上向きに変えるために配置される。第1の曲管部4bの吐出側は、鉛直直管部4cに接続される。鉛直直管部4cは、鉛直方向に延びており、第2の曲管部4dに接続される。第2の曲管部4dは、90°だけ曲げられており、吐出管4の延びる方向を水平に変えるために配置される。第2の曲管部4dの吐出側は、第2の水平部4eに接続される。
【0027】
吐出管4の第2の水平部4eの吐出側端部は、吐出水槽31内に開口しており、当該吐出側開口端部には、吐出水槽31からの水の逆流を防止する逆流防止弁としてのフラップ弁23が設けられている。吐出管4の第1の水平部4aには、吐出弁24が設けられている。この吐出弁24は、先行待機型ポンプが運転されていないときは閉じられており、先行待機型ポンプが起動されると、後述する制御部28により、吐出弁24が開かれるように構成されている。本実施形態では、吐出弁24は、電動弁から構成されている。
【0028】
第2の曲管部4dには、当該第2の曲管部4dに開口する配管を介して自動空気抜弁80が接続される。この自動空気抜弁80は、吐出管4内の水を抜くときに、吐出管4内に空気を流入させることができるので、吐出管4内の水抜きを円滑に行うことが可能となり、水抜き時間を短縮させることができる。自動空気抜弁80の代わりに、吐出水槽31内に位置する第2の水平部4eに空気抜管を設けてもよい。空気抜管は、吐出水槽31の最高水位よりも高い位置まで延びており、当該最高水位よりも高い位置で大気中に開口している。
【0029】
吸込ベルマウス1aには、羽根車10よりも低い位置に貫通穴1cが形成され、当該貫通穴1cには、空気流入管40が接続される。空気流入管40は、貫通孔1cから略水平に延びた後、上方に延びる。空気流入管40は、先行待機型ポンプの運転最高水位(H.W.L)よりも高い位置まで延びており、当該運転最高水位よりも高い位置で大気中に開口している。
【0030】
駆動機25および吐出弁24は、制御部28としての配電・制御盤に接続されている。この制御部28が発する指令を受けて、駆動機25の始動および停止が制御される。また、制御部28が発する指令を受けて、吐出弁24の開閉動作が制御される。
【0031】
先行待機型ポンプでは、吸込水槽30内の水位が低い状態で、あるいは吸込水槽30内に水が無い状態で、駆動機25により羽根車10を所定の回転速度で回転させて待機運転を開始する。待機運転の開始時では、先行待機型ポンプは、吸込ベルマウス1aから流れ込む空気のみを吸い上げる気中運転状態で運転される。気中運転状態の先行待機型ポンプの概略断面図が
図2に示される。
図2に示される気中運転転状態は、所謂空運転状態であり、先行待機型ポンプは、吸込ベルマウス1aから吸い込んだ空気のみを吐き出している。
【0032】
水が吸込水槽30内に流入することにより、吸込水槽30内の水位が上昇して気水混合運転水位(例えば、羽根車10の最下端位置:LL.W.L)に達すると、羽根車10による揚水作用が生じて、吸込ベルマウス1aから吸いこまれる水と空気流入管40から流れ込む空気とを同時に吸い上げる気水混合運転が開始される。気水混合運転状態の先行待機型ポンプの概略断面図が
図3に示される。
図3に示される気水混合運転状態では、流量が低いものの吐出水槽31に水が排出される。気水混合運転開始後は、吸込水槽30内の水位が上昇するにつれて、空気流入管40からの空気吸込量が減少し、排水水量が増加していく。水位が先行待機型ポンプの運転最低水位(L.W.L)に達すると、
図4に示されるように、空気流入管40からの空気の流入が停止され、水のみが吐き出される通常排水運転に移行する。
【0033】
先行待機型ポンプが水を吐出水槽31に排出することで、吸込水槽30内の水位が低下していき、水位が運転最低水位(L.W.L)よりも下がると、空気流入管40から空気の流入が開始され、
図3に示される気水混合運転状態に移行する。さらに水位が低下して、エアロック水位(LLL.W.L)に達すると、羽根車10の下方(一次側)に空気だまりが形成され、羽根車10の上方(二次側)の水が羽根車10により攪拌されるエアロック運転状態に移行する。エアロック運転状態の先行待機型ポンプの概略断面図が
図5に示される。エアロック運転状態では、羽根車10の二次側(吐出側)にある水が羽根車10により攪拌されているだけであり、吐出水槽31に水は移送されない。水が吸込水槽30に流入して水位が上昇すると、再び気水混合運転状態に移行する。なお、エアロック運転状態では、羽根車10の二次側にある水が、羽根車10とインペラケーシング1との間の隙間などから徐々に吸込水槽30内に戻されていく。羽根車10の二次側の水がなくなると、先行待機型ポンプは、エアロック運転状態から
図2に示される気中運転状態に移行する。
【0034】
図1に示した実施形態では、吊下管2、吐出曲管3、および吐出管4から構成される揚水管5から分岐し、かつ吸込水槽30に連通する戻り管41がさらに設けられる。より具体的には、戻り管41の入口は、吐出管4の第1の水平部4aに接続され、かつ吐出弁24の二次側に位置している。戻り管41の出口は、吸込水槽30に連通している。戻り管41には、開閉弁42が設けられる。開閉弁42は、制御部28に接続され、制御部28により、開閉弁42の開閉動作が制御される。本実施形態では、開閉弁42は、電動弁から構成されている。開閉弁42として、エアシリンダなどのモータ以外のアクチュエータによって動作する弁を用いてもよい。なお、
図1に示した実施形態では、戻り管41は、吐出弁24の二次側から分岐されているが、
図1において2点鎖線で示すように、吐出弁24の一次側(吸込側)から分岐されていてもよい。あるいは、吐出弁24の一次側から分岐される戻り管41と、吐出弁24の二次側から分岐される戻り管41を両方設けてもよい。この場合、2本の戻り管41,41それぞれに、制御部28によって開閉動作が制御される開閉弁42が設けられる。
【0035】
図1に示した実施形態では、吐出管4内の水の圧力、すなわちポンプ吐出圧を計測する圧力計43が設けられる。圧力計43は、吐出弁24の一次側の水の圧力を計測する位置に設けられる。さらに、吐出管4内の水の流量、すなわちポンプ吐出流量を測定する流量計44が設けられる。流量計44は、吐出弁24の二次側の水の流量を計測する位置に設けられる。本実施形態の先行待機型ポンプでは、圧力計43と流量計44のうち、少なくともどちらか一方が設けられていればよい。また、本実施形態の駆動機25は、電動機(例えば、モータ)から構成され、当該電動機に流れる電流を計測する電流計47がさらに設けられる。さらに、吸込水槽30内の水位を計測する水位計48が設けられる。圧力計43、流量計44、電流計47、および水位計48は、制御部28にそれぞれ接続される。圧力計43、流量計44、電流計47、および水位計48によって取得された各計測値は、制御部28に送信される。
【0036】
本実施形態では、制御部28は、ポンプ吐出圧の計測値、ポンプ吐出流量の計測値、駆動機25に流れる電流の計測値、および吸込水槽30内の水位の計測値に基づいて、先行待機型ポンプが気中運転状態、気水混合運転状態、エアロック運転状態、または通常排水運転状態であるかを判断する。また、制御部28は、先行待機型ポンプの、判断された運転状態に基づいて、開閉弁42の開閉動作を制御する。以下に、
図6を用いて、運転状態の判断方法と開閉弁42の開閉動作とを説明する。
【0037】
図6は、
図1に示した先行待機型ポンプの動作フローチャートである。
図6に示されるように、最初に先行待機型ポンプの運転開始指令が制御部28に入力される(ステップ1)。運転開始指令が入力された制御部28は、駆動機25の運転を開始する(ステップ2)。同時に、制御部28は、吐出弁24の開指令を発する(ステップ3)。さらに、気中運転タイマT1のカウントが開始される(ステップ4)。気中運転タイマT1については、後述する。制御部28は、吐出弁24の開動作が完了したことを、吐出弁24からの信号(アンサーバック信号)により確認する(ステップ5)。
図6に示したフローチャートでは、駆動機25の運転開始と同時に吐出弁24の開指令を発しているが、駆動機25の起動が完了した後に、吐出弁24の開指令を発するようにしてもよい。
【0038】
次に、制御部28は、水位計48によって計測された吸込水槽30の水位を確認する。具体的には、制御部28は、現状水位が先行待機型ポンプの運転最低水位(L.W.L)よりも低いか否かを確認する(ステップ6)。現状水位が運転最低水位(L.W.L)以上の場合は、制御部28は、先行待機型ポンプが通常排水運転状態にあると判断する(ステップ7)。この場合、制御部28は、開閉弁42を閉じる(ステップ8)と共に、気中運転タイマT1をリセットする(ステップ9)。その後、動作フローは、ステップ6に戻り、制御部28は、再度吸込水槽30の水位を確認する。
【0039】
ステップ6において、現状水位が運転最低水位(L.W.L)よりも低い場合は、制御部28は、現状水位がエアロック水位(LLL.W.L)よりも高いか否かを確認する(ステップ10)。現状水位がエアロック水位(LLL.W.L)以下である場合は、制御部28は、電流計47によって計測された駆動機25の電流が設定値以上であるか否かを確認する(ステップ11)。駆動機25の電流が設定値よりも低い場合は、羽根車10の負荷がほとんど無い状態なので、制御部28は、先行待機型ポンプが気中運転状態にあると判断する(ステップ12)。この場合、制御部28は、気中運転タイマT1がリセット状態にあるか否かを確認し、リセット状態であれば、気中運転タイマT1をスタートさせる(ステップ13)。また、制御部28は、開閉弁42を開く(ステップ14)。気中運転状態の間に、開閉弁42を開くと、羽根車10の回転によって吸込水槽30から吸い込まれて、吐出管4まで流れてきた空気が、戻り管41を通って吸込水槽30に戻される。すなわち、先行待機型ポンプと吸込水槽30との間で空気の循環流を作り出すことができる。この空気の循環流は、気中運転状態時に最も発熱しやすい水中軸受17および中間軸受18を冷却する。したがって、水中軸受17および中間軸受18の焼損を防ぐことができる。
【0040】
ステップ12において、先行待機型ポンプが気中運転状態にあると制御部28が判断すると、制御部28は、気中運転タイマT1が設定時間に到達しているか否かを確認する(ステップ15)。気中運転タイマT1が設定時間に到達していなければ、動作フローは、ステップ6に戻り、制御部28は、再度吸込水槽30の水位を確認する。気中運転タイマT1が設定時間に到達している場合は、制御部28は、先行待機型ポンプの運転を停止させる(ステップ16)。気中運転状態では、水中軸受17および中間軸受18の潤滑剤となる水が存在しないので、水中軸受17および中間軸受18の摩耗が進行しやすい。また、水中軸受17および中間軸受18が発熱してしまう。したがって、水中軸受17および中間軸受18の寿命低下と焼損とを防止するために気中運転タイマT1を設け、気中運転状態が一定時間以上連続しないようにしている。気中運転タイマT1の設定時間は、例えば、1時間である。
【0041】
なお、先行待機型ポンプが、通常排水運転であると判断されるか、後述する気水混合状態にあると判断されると、気中運転タイマT1はリセットされる。水中軸受17および中間軸受18が一度水に浸漬されれば、水中軸受17および中間軸受18の潤滑が改善されると共に、水中軸受17および中間軸受18が冷却される。したがって、水中軸受17および中間軸受18が一度水に浸漬された場合に、気中運転タイマT1をリセットすると、先行待機型ポンプの排水作業を継続させることができる。その結果、先行待機型ポンプの運転を連続させることが可能になる。
【0042】
ステップ11で、駆動機25の電流が設定値以上である場合は、羽根車10に負荷がある状態なので、制御部28は、先行待機型ポンプが気水混合状態にあると判断する(ステップ17)。また、ステップ10で、現状水位がエアロック水位(LLL.W.L)よりも高い場合も、制御部28は、先行待機型ポンプが気水混合状態にあると判断する(ステップ17)。気水混合状態とは、先行待機型ポンプが
図3に示す気水混合運転状態、または
図5に示すエアロック運転状態のどちらかの運転状態であることを意味する。したがって、次に、制御部28は、先行待機型ポンプが気水混合運転状態にあるのか、またはエアロック運転状態にあるのかを判断する。なお、上述したように、先行待機型ポンプが気水混合状態になれば、水中軸受17および中間軸受18が水に浸漬されているので、気中運転タイマT1はリセットされる(ステップ18)。
【0043】
次に、制御部28は、圧力計43によって計測されたポンプ吐出圧が設定値以下であるか否かを確認する(ステップ19)。ポンプ吐出圧が設定値よりも大きい場合は、吐出水槽31に水が移送されていることを示しているので、制御部28は、先行待機型ポンプが気水混合運転状態にあると判断する(ステップ20)。この場合、制御部28は、開閉弁42を閉じる(ステップ21)。その後、動作フローは、ステップ6に戻り、制御部28は、再度吸込水槽30の水位を確認する。なお、気水混合運転状態も不安定な運転状態であるため、ステップ21で、開閉弁42を開くように制御部28が指令を発してもよい。このように、気水混合運転状態で開閉弁42を開くと、吐出管4内の水が戻り管41を通って吸込水槽30に戻されるので、先行待機型ポンプは、短時間で気中運転状態になる。したがって、不安定状態の回避を重視する場合は、制御部28は、開閉弁42を開いてもよい。
【0044】
ポンプ吐出圧が設定値以下である場合は、吐出水槽31に水が移送されず、羽根車10が、揚水管5(吊下管2、吐出曲管3、および吐出管4)内の水を攪拌しているだけであることを示している。したがって、制御部28は、先行待機型ポンプがエアロック運転状態にあると判断する(ステップ22)。この場合、制御部28は、開閉弁42を開く(ステップ23)。エアロック運転状態で、開閉弁42を開くと、吐出管4内の水が戻り管41を通じて吸込水槽30内に速やかに流れるので、短時間で羽根車10の二次側に存在する水を吸込水槽30に戻すことができる。結果として、エアロック運転状態の時間が短縮され、先行待機型ポンプは、比較的安定した運転状態である気中運転状態に短時間で移行することができる。ステップ23の後、動作フローは、ステップ6に戻り、制御部28は、再度吸込水槽30の水位を確認する。
【0045】
図1に示されるように、戻り管41の入口を、吐出管4の上面および底面に接続してもよい。あるいは、戻り管41の入口を、吐出管4の上面、側面、および底面に接続してもよい。戻り管41の複数の入口を吐出管4の複数の箇所に接続することで、戻り管41の入口に塵芥が絡まり、戻り管41が機能しなくなることを防止することができる。その結果、より信頼性の高い設備を提供することが可能となる。
【0046】
また、ステップ19で圧力計43によって計測されるポンプ吐出圧を確認する代わりに、制御部28は、流量計44によって計測されるポンプ吐出流量(揚水管5を流れる水の流量)が設定値以下であるか否かを確認してもよい。ポンプ吐出流量が設定値よりも大きければ(例えば、ポンプ吐出流量が0よりも大きければ)、吐出水槽31に水が移送されていることを示しているので、制御部28は、先行待機型ポンプが気水混合運転状態にあると判断する(ステップ20)。この場合、制御部28は、開閉弁42を閉じる(ステップ21)。上述したように、ステップ21で、開閉弁42を開いてもよい。流量計44によって計測されるポンプ吐出流量が設定値以下であれば(例えば、ポンプ吐出流量が0であれば)、吐出水槽31に水が移送されず、羽根車10が、揚水管5内の水を攪拌しているだけであることを示している。したがって、制御部28は、先行待機型ポンプがエアロック運転状態にあると判断する(ステップ22)。この場合、制御部28は、開閉弁42を開く(ステップ23)。
【0047】
ステップ19でポンプ吐出圧またはポンプ吐出流量を確認する代わりに、制御部28は、吸込水槽30の水位を確認してもよい。すなわち、制御部28は、ステップ19として、水位計48によって計測された吸込水槽30の水位が気水混合運転水位(LL.W.L)よりも低いか否かを確認する。吸込水槽30の水位が気水混合運転水位(LL.W.L)以上である場合、制御部28は、先行待機型ポンプが気水混合運転状態にあると判断する(ステップ20)。この場合、制御部28は、開閉弁42を閉じる(ステップ21)。上述したように、ステップ21で、開閉弁42を開いてもよい。吸込水槽30の水位が気水混合運転水位(LL.W.L)よりも低い場合、制御部28は、先行待機型ポンプがエアロック運転状態にあると判断する(ステップ22)。この場合、制御部28は、開閉弁42を開く(ステップ23)。なお、空気流入管40に空気流入量が計測できる手段を設け、空気流入管40を流れる空気流入量により、先行待機型ポンプが気水混合運転状態にあるか、エアロック運転状態にあるかを判断してもよい。
【0048】
図7は、本発明の別の実施形態に係る先行待機型ポンプを示す概略断面図である。
図7に示される実施形態では、
図1に示したフラップ弁23の代わりに、逆止弁50が設けられる。逆止弁50は、揚水管5における吐出弁24の一次側に配置される。
図7に示した実施形態では、逆止弁50および吐出弁24は、吐出管4の鉛直直管部4cに配置されている。また、上述した開閉弁42が設けられる戻り管41は、揚水管5における逆止弁50の一次側から分岐している。さらに、逆止弁50をバイパスするバイパス管51が鉛直直管部4cに設けられる。バイパス管51には、バイパス弁52が配置される。バイパス弁52は、通常排水運転中は開かれている。本実施形態では、バイパス弁52は、電動弁から構成されている。バイパス弁52として、エアシリンダなどのモータ以外のアクチュエータによって動作する弁を用いてもよい。なお、ポンプの性能(吐出量)に余裕がある場合や、吐出管4からの戻り量を設計上考慮している場合は、バイパス管51は、逆止弁50の二次側から分岐して、吸込水槽30まで延びるように構成してもよい。本実施形態のその他の構成は、
図1に示した実施形態と同様であるため、対応する構成要素には同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0049】
図8は、
図7に示した先行待機型ポンプの動作フローチャートである。
図8に示されるように、最初に先行待機型ポンプの運転開始指令が制御部28に入力される(ステップ1)。運転開始指令が入力された制御部28は、駆動機25の運転を開始する(ステップ2)。同時に、制御部28は、吐出弁24の開指令を発する(ステップ3)。さらに、気中運転タイマT1のカウントが開始される(ステップ4)。制御部28は、吐出弁24の開動作が完了したことを、吐出弁24からの信号(アンサーバック信号)により確認する(ステップ5)。
図8に示したフローチャートでは、駆動機25の運転開始と同時に吐出弁24の開指令を発しているが、駆動機25の起動が完了した後に、吐出弁24の開指令を発するようにしてもよい。
【0050】
次に、制御部28は、水位計48によって計測された吸込水槽30の水位を確認する。具体的には、制御部28は、現状水位が先行待機型ポンプの運転最低水位(L.W.L)よりも低いか否かを確認する(ステップ6)。現状水位が運転最低水位(L.W.L)以上の場合は、制御部28は、先行待機型ポンプが通常排水運転状態にあると判断する(ステップ7)。この場合、制御部28は、開閉弁42を閉じる(ステップ8)と共に、バイパス弁52を開く(ステップ9)。同時に、制御部28は、気中運転タイマT1をリセットする(ステップ10)。その後、動作フローは、ステップ6に戻り、制御部28は、再度吸込水槽30の水位を確認する。
【0051】
バイパス弁52が開かれているので、停電時やポンプ故障時などの非常停止時に逆止弁50の二次側の水圧が高くなっても、バイパス管51を通して水を逆止弁50の二次側から一次側に逆流させることで、圧力を逃がすことができる。したがって、停電時やポンプ故障時などの非常停止時に発生するスラミング現象や水撃現象を防止することができる。
図7に示されるように、バイパス管51は、吐出管4に配置された逆止弁50をバイパスして、逆止弁50の一次側と二次側とを接続しているだけである。したがって、通常排水運転状態時にバイパス管51を流れる水は吸込水槽30に戻されないので、バイパス弁52を開いたとしても、ポンプの性能低下にはつながらない。なお、ポンプの性能(吐出量)に余裕がある場合や、吐出管4からの戻り量をポンプの設計上考慮している場合は、バイパス管51は、逆止弁50の二次側から分岐して、吸込水槽30まで延びるように構成してもよい。
【0052】
バイパス弁52として、ボール弁や偏心構造弁などの塵芥が詰まりにくい弁を採用するのが好ましい。ボール弁や偏心構造弁を採用することで、従来から用いられてきた緩閉式逆止弁を採用した場合に発生する塵詰まりの問題を解決することができる。
【0053】
ステップ6において、現状水位が運転最低水位(L.W.L)よりも低い場合は、制御部28は、現状水位がエアロック水位(LLL.W.L)よりも高いか否かを確認する(ステップ11)。現状水位がエアロック水位(LLL.W.L)以下である場合は、制御部28は、電流計47によって計測された駆動機25の電流が設定値以上であるか否かを確認する(ステップ12)。駆動機25の電流が設定値よりも低い場合は、羽根車10の負荷がほとんど無い状態なので、制御部28は、先行待機型ポンプが気中運転状態にあると判断する(ステップ13)。この場合、制御部28は、気中運転タイマT1がリセット状態にあるか否かを確認し、リセット状態であれば、気中運転タイマT1をスタートさせる(ステップ14)。また、制御部28は、開閉弁42を開く(ステップ15)と共に、バイパス弁52を閉じる(ステップ16)。開閉弁42を開く理由は、上述の通り、先行待機型ポンプと吸込水槽30との間で空気の循環流を作り出すためである。バイパス弁52を閉じる理由は、先行待機型ポンプが複数台設置されているポンプ機場の場合、他の先行待機型ポンプが吐出水槽31に吐き出した水が吐出水槽31から吐出管4内に逆流するのを防止するためである。他の先行待機型ポンプが吐き出した水が吸込水槽30に戻されてしまうと、ポンプ機場全体の排水能力が低下してしまう。
【0054】
ステップ13において、先行待機型ポンプが気中運転状態にあると制御部28が判断すると、制御部28は、
図6で示したフローチャートと同様に、気中運転タイマT1が設定時間に到達しているか否かを確認する(ステップ17)。気中運転タイマT1が設定時間に到達していなければ、動作フローは、ステップ6に戻り、制御部28は、再度吸込水槽30の水位を確認する。気中運転タイマT1が設定時間に到達している場合は、制御部28は、先行待機型ポンプの運転を停止させる(ステップ18)。
【0055】
ステップ12で、駆動機25の電流が設定値以上である場合は、羽根車10に負荷がある状態なので、制御部28は、先行待機型ポンプが気水混合状態にあると判断する(ステップ19)。また、ステップ11で、現状水位がエアロック水位(LLL.W.L)よりも高い場合も、制御部28は、先行待機型ポンプが気水混合状態にあると判断する(ステップ19)。気水混合状態とは、先行待機型ポンプが
図3に示す気水混合運転状態、または
図5に示すエアロック運転状態のどちらかの運転状態であることを示している。したがって、次に、制御部28は、先行待機型ポンプが気水混合運転状態にあるのか、またはエアロック運転状態にあるのかを判断する。なお、上述したように、先行待機型ポンプが気水混合状態になれば、気中運転タイマT1はリセットされる(ステップ20)。
【0056】
次に、制御部28は、逆止弁50に設けられた流水検知器が逆止弁50内の流水を検知しているか否かを確認する(ステップ21)。逆止弁50に設けられた流水検知器は、例えば、逆止弁50の弁体が開いているか否かを検出する装置である。
【0057】
図9(a)および
図9(b)に、流水検知器70が配置された逆止弁50の一例が示される。
図9(a)は、流水検知器70が配置された逆止弁50の平面図であり、
図9(b)は、
図9(a)のA−A線矢視図である。
図9(b)は、流水検知器70の拡大側面図に相当する。
図9(a)に示されるように、逆止弁50は、弁胴75の流路75aを塞ぐ弁体71と、弁体71が固定される弁軸72とを備える。弁軸72は、軸受73、74により回動可能に支持されている。弁軸72は、軸受73を貫通して延びており、弁軸72の、軸受73よりも外方に延びる部分にカム76が固定されている。弁体71と共に弁軸72が回動すると、カム76も一緒に回動する。カム76には、突起部76aが設けられている。カム76の近傍には、スイッチ77が設けられている。弁体71が開く方向に弁軸72が回動すると、カム76の突起部76aは、スイッチ77に当接する。カム76の突起部76aが当接したスイッチ77は、逆止弁50の動作検知信号(すなわち、流水検知信号)を発信し、この流水検知信号は制御部28に送られる。このように、逆止弁50の弁体71が開いたことを流水検知器70によって検知することができる。
【0058】
流水検知器70から流水検知信号が送られてきている場合は、吐出水槽31に水が移送されていることを示しているので、制御部28は、先行待機型ポンプが気水混合運転状態にあると判断する(ステップ22)。この場合、制御部28は、開閉弁42を閉じる(ステップ23)と共に、バイパス弁52を開く(ステップ24)。その後、動作フローは、ステップ6に戻り、制御部28は、再度吸込水槽30の水位を確認する。開閉弁42を閉じて、バイパス弁52を開く理由は、通常排水運転状態にある場合と同様の理由である。なお、不安定状態の回避を重視する場合は、上述したように、ステップ23で、開閉弁42を開いてもよい。
【0059】
流水検知器70から流水検知信号が送られてきていない場合は、吐出水槽31に水が移送されず、羽根車10が、揚水管5内の水を攪拌しているだけであることを示している。したがって、制御部28は、先行待機型ポンプがエアロック運転状態にあると判断する(ステップ25)。この場合、制御部28は、開閉弁42を開く(ステップ26)と共に、バイパス弁52を閉じる(ステップ27)。
【0060】
エアロック運転状態で、開閉弁42を開くと、吐出管4内の水が戻り管41を通じて吸込水槽30内に速やかに流れるので、短時間で羽根車10の二次側(吐出側)に存在する水を吸込水槽30に戻すことができる。結果として、エアロック運転状態の時間が短縮され、先行待機型ポンプは、比較的安定した運転状態である気中運転状態に短時間で移行することができる。エアロック運転状態で、バイパス弁52を閉じると、逆止弁50の二次側(吐出側)の水が逆止弁50の一次側(吸込側)に流れ込むことを防止することができる。したがって、より短時間で、先行待機型ポンプは、気中運転状態に移行することができる。なお、エアロック運転状態時に先行待機型ポンプが非常停止しても、先行待機型ポンプは、吐出水槽31に水を吐き出していないので、スラミング現象や水撃現象は発生しない。したがって、バイパス弁52を閉じた状態とすることができる。ステップ27の後、動作フローは、ステップ6に戻り、制御部28は、再度吸込水槽30の水位を確認する。
【0061】
ステップ21で、流水検知器70からの流水検知信号を確認する代わりに、制御部28は、圧力計43によって計測されるポンプ吐出圧、流量計44によって計測されるポンプ吐出流量、または水位計28によって計測される吸込水槽30の水位を確認してもよい。上述したように、ポンプ吐出圧、ポンプ吐出流量、または吸込水槽30の水位からも、先行待機型ポンプが気水混合運転状態にあるのか、またはエアロック運転状態にあるのかを判断することができる。さらに、空気流入管40に空気流入量が計測できる手段を設け、空気流入管40を流れる空気流入量により、先行待機型ポンプが気水混合運転状態にあるか、エアロック運転状態にあるかを判断してもよい。
【0062】
次に、先行待機型ポンプの停止動作について、
図10および
図11を用いて説明する。
図10は、通常停止時の動作フローチャートであり、
図11は、非常停止時の動作フローチャートである。
【0063】
図10に示されるように、通常停止動作では、最初に先行待機型ポンプの運転停止指令が制御部28に入力される(ステップ1)。運転停止指令が入力された制御部28は、吐出弁24の閉指令を発する(ステップ2)。制御部28は、吐出弁24の閉動作が完了したことを、吐出弁24からの信号(アンサーバック信号)により確認する(ステップ3)。その後、制御部28により、駆動機25の運転が停止される(ステップ4)と共に、開閉弁42が閉じられる(ステップ5)。
図7に示される実施形態のように、バイパス弁52が設けられている場合は、制御部28により、バイパス弁52も閉じられる(ステップ6)。
【0064】
停電やポンプ故障等の非常停止時には、
図11に示されるように、制御部28に、ポンプ非常停止信号が入力される(ステップ1)。非常停止信号が入力された制御部28は、駆動機25の運転を停止させる(ステップ2)と共に、吐出弁24を閉じる(ステップ3)。同時に、開閉弁42用のタイマT2がカウントを始める(ステップ4)。タイマT2が設定時間に到達する(ステップ5)と、制御部28により、開閉弁42が閉じられる(ステップ6)。
図7に示される実施形態のように、バイパス弁52が設けられている場合は、タイマT2がカウントを始めると同時に、バイパス弁52用のタイマT3がカウントを始める(ステップ7)。タイマT3が設定時間に到達する(ステップ8)と、制御部28により、バイパス弁52が閉じられる(ステップ9)。
【0065】
タイマT3の設定時間は、水撃現象による圧力上昇を抑制することができる時間である。この設定時間は、予めシミュレーションなどにより決定された時間を用いるのが好ましい。このように、バイパス弁52は、吐出弁24が閉じられてからタイマT3の設定時間だけ遅れて閉じられるので、水撃現象による圧力上昇を防止することができる。本実施形態によれば、従来の油圧機構を用いた緩閉式逆止弁では設定することが難しかった緩閉時間を、タイマT3によって容易に設定することができる。
【0066】
図12は、本発明のさらに別の実施形態に係る先行待機型ポンプを示す概略断面図である。
図12に示される実施形態では、逆止弁50および吐出弁24が第1の水平部4aに配置される。さらに、吐出弁24の二次側において吐出管4から分岐し、吸込水槽30に連通するドレイン管60が設けられ、当該ドレイン管60にドレイン弁61が設けられる。ドレイン管60の入口は、第1の水平部4aに接続され、かつ吐出弁24の二次側に位置している。ドレイン管60の出口は、吸込水槽30に連通している。本実施形態では、ドレイン弁61は、電動弁から構成されている。ドレイン弁61として、エアシリンダなどのモータ以外のアクチュエータによって動作する弁を用いてもよい。本実施形態のその他の構成は、
図7に示した実施形態と同様であるため、対応する構成要素には同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0067】
ドレイン管60に設けられたドレイン弁61は、制御部28に接続される。先行待機型ポンプが運転されている時、すなわち、駆動機25が運転され、吐出弁24が開いている時は、ドレイン弁61は閉じられている。先行待機型ポンプが停止した時、すなわち、駆動機25が停止され、吐出弁24が閉じられた時に、ドレイン弁61が開かれるように、制御部28は、ドレイン弁61の開閉動作を制御する。
【0068】
このように、先行待機型ポンプが停止したときに、ドレイン弁61を開くと、吐出弁24の二次側の残水を吸込水槽30に戻すことが可能になり、残水による悪臭、河川の水質悪化、および生態系への影響の問題を解決することができる。ドレイン弁61を、先行待機型ポンプが停止してから所定時間経過後に開くように、制御部28は、ドレイン弁61を自動制御してもよい。先行待機型ポンプが複数台配置されるポンプ機場では、先行待機型ポンプが全台停止していることを条件に、ドレイン弁61の開動作を行う。このように制御することで、他の先行待機型ポンプが吐出水槽31に吐き出した水の吸込水槽30への逆流を防止する。同様の理由から、他の先行待機型ポンプが運転を開始すると同時またはその前に、ドレイン弁61の閉動作を行うように、制御部28は、ドレイン弁61の開閉動作を制御する。なお、操作員が手動で制御部28を操作することにより、ドレイン弁61を開閉させてもよい。
【0069】
図13は、本発明のさらに別の実施形態に係る先行待機型ポンプを示す概略断面図である。
図13に示される先行待機型ポンプは、吐出管4が第1の水平部4aのみで構成され、第1の曲管部4b、鉛直直管部4c、第2の曲管部4d、および第2の水平部4eが省略されている。第1の水平部4aの末端は、吐出水槽31に設けられた吐出立上部31a内に開口し、吐出立上部31aの上部は、吐出上部槽31bにつながっている。すなわち、吐出水槽31は、吐出立上部31aと吐出上部槽31bとで構成され、
図1および
図7に示した実施形態の鉛直直管部4cの代わりに、吐出立上部31aが設けられる。本実施形態のその他の構成は、
図12に示した実施形態と同様であるため、対応する構成要素には同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0070】
図13に示した実施形態のように、鋼管や鋳鉄管として構成される鉛直直管部4cに代えて、コンクリート躯体として構成される吐出立上部31bを設け、この吐出立上部31bに吐出管4が開口するように構成することができる。この構成は、
図1および
図7に示した実施形態にも適用することができる。
【0071】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。