【実施例】
【0015】
図1は、実施例に係る電池劣化判定装置を搭載した電気自動車のブロック図である。以下では、
図1に示すように電気自動車100に搭載された電池劣化判定装置1を例に説明するが、電池劣化判定装置1は、メガソーラや蓄電池などに搭載されてもよい。
【0016】
電気自動車100は、電池劣化判定装置1、組電池2及びモータ3を有する。モータ3は、組電池2から供給された電力により駆動する。
【0017】
電池劣化判定装置1は、組電池2からモータ3へ供給される電気を基に、組電池2の放電容量を推定し、組電池2の劣化状態を判定する。
【0018】
電池劣化判定装置1は、計測部11、放電容量算出部12、見かけの抵抗値算出部13、評価用抵抗値取得部14、相関関係記憶部15、見かけの放電容量取得部16、劣化判定部17及び報知部18を有する。
【0019】
相関関係記憶部15は、抵抗値と見かけの放電容量との相関関係を記憶している。具体的には、本実施例に係る相関関係記憶部15は、抵抗値と見かけの放電容量との相関関係を表す相関関係カーブを記憶している。ここで、見かけの放電容量とは、ある決められた電圧における組電池2の放電容量であり、組電池2の劣化状態の判断基準となる値である。本実施例では、組電池2の放電容量曲線における放電末期の変曲点での放電容量を見かけの放電容量とする。より具体的には、本実施例では、355Vの電圧に対応する放電容量を見かけの放電容量とする。この相関関係記憶部15が、「記憶部」の一例にあたる。
【0020】
ここで、抵抗値と見かけの放電容量の相関関係カーブの算出について簡単に説明する。組電池2の放電容量を求めるには、様々な方法が有る。
【0021】
簡単な方法として電流及びで電圧の実測値から放電容量曲線を求める方法がある。具体的には、まず、組電池2にフル充電を行う。そして、フル充電した組電池2から定電流で出力が停止するまで放電を行うことで、その定電流における放電容量曲線を求めることができる。そして、求めた放電容量曲線の355Vの電圧に対応する放電容量がその時点での組電池2の見かけの放電容量となる。この見かけの放電容量を、電気自動車100の使用の経過日数に応じて求めることで、組電池2の劣化に応じた見かけの放電容量が取得できる。さらに、見かけの放電容量における電圧及び電流の値から抵抗値を求めることで、各見かけの放電容量に応じた抵抗値が算出できる。このようにして、抵抗値と見かけの放電容量の相関関係カーブを取得することができる。
【0022】
しかし、フル充電した組電池2から定電流で出力が停止するまで放電を行うことは、例えば、電気自動車100に搭載された状態の組電池2に対して行うことは困難である。そこで、本実施例では、以下の方法で見かけの放電容量を算出する。
【0023】
まず、電気自動車100で走り切り走行、すなわち電気自動者が動かなくなるまで走行させ、その間の組電池2の電圧及び電流の値を計測することで、
図2A及び
図2Bのように各走行経過時間に対応する組電池2の電圧及び電流が得られる。
図2Aは、組電池の電圧の計測結果を表す図である。
図2Aは、横軸で走行経過時間を表し、縦軸で電圧を表す。また、
図2Bは、組電池の電流の計測結果を表す図である。
図2Bは、横軸で走行経過時間を表し、縦軸で電流を表す。
【0024】
そして、各時点での計測電流を積算することで、各時点での計測電圧に対応する放電容量が算出される。そして、各時点での算出した放電容量と計測電圧とを対応させて、横軸が放電容量を表し、縦軸が電圧を表す座標系にプロットすることで、
図3におけるグラフ101が取得される。
図3は、電圧と放電容量との関係を表す図である。
図3は、横軸で放電容量を表し、縦軸で電圧を表す。
【0025】
ただし、グラフ101は、回生やその他の条件などにより各放電容量に対して計測電圧に揺れがでてしまう。そこで、電圧の補正を以下のように行う。具体的には、特定の放電容量から所定の幅にある放電容量に対応した計測電流及び計測電圧の値を、横軸が電流を表し、縦軸が電圧を表す座標系にプロットする。本実施例では、10,20,30及び40Ahのそれぞれから±0.5Ahの放電容量をそして、放電容量毎にプロットした点の近似直線を求めることで、
図4で表されるグラフが取得される。
図4は、放電容量毎の電圧と電流との関係を表す図である。
図4は、横軸で電流を表し、縦軸で電圧を表す。
図4の各グラフは、それぞれ10±0.5Ah、20±0.5Ah、30±0.5Ah及び40±0.5Ahの放電容量における電流と電圧の関係を表すグラフである。
【0026】
そして、
図4の各グラフから各放電容量に対応する抵抗値が算出できる。具体的には、
図4の各グラフの傾きが抵抗値となる。そして、算出した抵抗値及び計測電流を用いて計測電圧を補正し、補正した結果を
図3の座標系上にプロットすることで、放電容量と補正を加えた電圧との対応関係を表す放電容量曲線102が取得される。この放電容量曲線102の算出を、走行経過に応じて行い、走行経過に応じた放電容量曲線102を算出する。これにより、
図5に示すように、走行経過に応じた放電容量曲線が取得される。
図5は、走行経過に応じた放電容量曲線を表す図である。
図5は、横軸で放電容量を表し、縦軸で電池電圧を表す。そして、
図5では、電気自動車100の使用した経過日数毎の放電容量曲線が示されている。
【0027】
そして、この経過日数に応じた各放電容量曲線における放電末期の変曲点での放電容量を見かけの放電容量として求める。本実施例では、355Vの電圧に対応する放電容量を見かけの放電容量とする。すなわち、355Vでカットオフした放電容量を見かけの放電容量とする。
図5における破線103が355Vの値を表している。より詳しくは、本実施例では、各放電容量曲線における355±0.5Vの電圧に対応する放電容量を取得し、取得した放電容量の平均を見かけの放電容量として求める。
【0028】
ここで、見かけの放電容量と経過日数の関係は、
図6のように表される。
図6は、経過日数と見かけの放電容量との関係を表す図である。
図6は、横軸で経過日数の平方根を表し、縦軸で見かけの放電容量を表す。
図6では、車両A〜Dの4台の電気自動車における経過日数と見かけの放電容量の関係を表している。車両A,C及びDは、実線のグラフのように、右肩下がりの直線で近似的に経過日数と見かけの放電容量との関係が表される。また、車両Bも、破線のグラフのように、右肩下がりの直線で近似的に経過日数と見かけの放電容量との関係が表される。このように、経過日数と見かけの放電容量との間の関係にばらつきはあるが、いずれにしても、
図6に示すように、経過日数に応じて見かけの放電容量が低下していくことが分かる。したがって、見かけの放電容量によりどの程度電池が劣化したのかを判定することができる。
【0029】
さらに、計測電流及び計測電圧を用いて、各見かけの放電容量を有する組電池2において、0Ahの放電容量における抵抗値が算出される。そこで、見かけの放電容量と算出した抵抗値とを対応させて、横軸が見かけの放電容量を表し、縦軸が抵抗値を表す座標系上にプロットする。そして、プロットした点の近似直線を求めることで、
図7のグラフ104で示される抵抗値と見かけの放電容量との相関関係が求められる。
図7は、抵抗値と見かけの放電容量との相関関係を表す図である。
図7は、横軸で見かけの放電容量を表し、縦軸で見かけの抵抗値を表す。
【0030】
本実施例では、相関関係記憶部15は、グラフ104で示される抵抗値と見かけの放電容量との相関関係カーブを記憶している。
【0031】
図1に戻って電池劣化判定装置1の説明を続ける。計測部11は、組電池2から出力される電気の電流及び電圧を計測する。そして、計測部11は、計測電流を放電容量算出部12へ出力する。また、計測部11は、計測電流及び計測電圧を見かけの抵抗値算出部13へ出力する。
【0032】
放電容量算出部12は、計測電流の入力を計測部11から受ける。そして、放電容量算出部12は、所定時間における計測電流からその時の放電容量を算出する。例えば、放電容量算出部12は、所定時間における計測電流を積算することで放電容量を算出する。そして、放電容量算出部12は、算出した放電容量を見かけの抵抗値算出部13へ出力する。
【0033】
見かけの抵抗値算出部13は、計測電流及び計測電圧の入力を計測部11から受ける。また、見かけの抵抗値算出部13は、放電容量の入力を放電容量算出部12から受ける。そして、見かけの抵抗値算出部13は、計測電圧及び放電容量の関係から、横軸で放電容量を表し、縦軸で電流を表す座標系上における放電容量曲線を取得する。例えば、見かけの抵抗値算出部13は、各時点での放電容量を求める際に用いた計測電流に対応する計測電圧を、各時点での放電容量に対応させて座標系上にプロットしていくことで放電容量曲線を得ることができる。そして、見かけの抵抗値算出部13は、放電容量曲線の各時点のデータのうち、回生なし(すなわち、電流が放電側)で且つ電流増加報告(すなわち、1秒前の電流よりもその時点での値が大きい場合)のデータを抽出する。以下、この抽出されたデータを、「有効データ」という。例えば、見かけの抵抗値算出部13により放電容量曲線から抽出された有効データは、例えば
図8のグラフ201で示される。
図8は、放電容量曲線から有効データを抽出した状態の一例を表す図である。
図8は、横軸で放電容量を表し、縦軸で電圧を表す。
【0034】
このように、本実施例では、以下に説明する抵抗値の算出にあたり、回生なし且つ電流増加報告のデータのみを用いる。この点、組電池2における充電特性と放電特性とは特性が異なる。そのため、充電側のデータを抵抗値の算出に用いた場合、異なる特性のデータが混ざってしまうため、抵抗値の算出が困難となる。そこで、本実施例では、適切な抵抗値の算出のために上述した有効データのみを用いている。ただし、放電特性と充電特性との間の特性の補正を行うなどすることで、充電側のデータを抵抗値の算出に用いることも可能である。
【0035】
次に、見かけの抵抗値算出部13は、
図8の区間202で示される放電容量の変化幅の所定の区間で有効データを分割し、各区間における有効データを特定する。
図8では、区間202は、10Ahの幅で有効データを分割している。
【0036】
そして、見かけの抵抗値算出部13は、横軸が電流を表し、縦軸が電圧を表す座標系上に、
図9で示すように区間毎の有効データに対応する計測電流及び計測電圧をプロットする。
図9は、見かけの抵抗値の算出を説明するための図である。
図9は、横軸で電流を表し、縦軸で電圧を表す。次に、見かけの抵抗値算出部13は、例えば直線203で示されるように、プロットした点の近似直線を求める。そして、見かけの抵抗値算出部13は、近似曲線の傾きを各区間における見かけの抵抗値として取得する。見かけの抵抗値とは、計測電流及び計測電圧から推定される組電池2の抵抗値である。
【0037】
ここで、放電容量の区分(データ分けのための区間の細かさ)を10Ah毎としている。ただし、分割する放電容量の区分を細かくするにしたがい、算出される見かけの抵抗値の個数が増加するため、見かけの抵抗値算出部13は、データ分けの区分を細かくすことで近似直線の精度を向上させることができる。
【0038】
見かけの抵抗値算出部13は、算出した各放電容量の所定区間における見かけの抵抗値を評価用抵抗値取得部14へ出力する。この放電容量算出部12及び見かけの抵抗値算出部13が、「算出部」の一例にあたる。
【0039】
評価用抵抗値取得部14は、所定区間毎の見かけの抵抗値の入力を見かけの抵抗値算出部13から受ける。次に、評価用抵抗値取得部14は、横軸で放電容量を表し、縦軸で抵抗値を表し、原点の値をそれぞれ0とした座標系上に、所定区間毎の放電容量に応じた見かけの抵抗値をプロットする。次に、評価用抵抗値取得部14は、プロットした点の近似直線を求める。例えば、評価用抵抗値取得部14は、最小近似法などを用いて各点の直線近似を行い、
図10に示すような近似直線204を求める。
図10は、放電容量の評価に用いる見かけの抵抗値の算出を説明するための図である。
図10は、横軸で放電容量を表し、縦軸で見かけの抵抗値を表す。
【0040】
ここで、
図10では、放電容量の区分として1Ah毎の区分を用いている。また、
図10では、電圧が低下してデータのバラつきが大きくなるまでの放電容量及び抵抗値のデータを用いて近似直線を求めた状態を表している。以下では、電圧が低下してデータのバラつきが大きくなるまでのデータ区間を「全データ区間」という。
【0041】
そして、評価用抵抗値取得部14は、近似直線204の縦軸との切片205における抵抗値、すなわち満充電状態における見かけの抵抗値を取得する。言い換えれば、評価用抵抗値取得部14は、放電容量が0Ah、すなわちSOC(State Of Charge)100%の抵抗値を満充電状態における見かけの抵抗値として取得する。この満充電状態における見かけの抵抗値が「評価用抵抗値」の一例にあたる。
【0042】
その後、評価用抵抗値取得部14は、満充電状態における見かけの抵抗値を見かけの放電容量取得部16へ出力する。
【0043】
ただし、放電容量の区分を細かくするにしたがい、算出される見かけの抵抗値の個数が増加するため、見かけの抵抗値算出部13は、区間の分割を細かくすことで近似直線の精度を向上させることができる。また、放電容量が低い区間の放電容量及び抵抗値のデータのみを用いても、評価用抵抗値取得部14は、放電容量が多い場合までの点を用いた場合とほぼ同様の近似直線204を求めることができる。以下に、放電容量の区分の影響及びデータ区間の影響について説明する。ここでは、電気自動車A〜Cという3台の電気自動車を用いてデータを収集した場合について説明する。
【0044】
図11Aは、電気自動車Aの1Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の近似直線を表す図である。
図11Bは、電気自動車Aの0.5Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の近似直線を表す図である。
図11Cは、電気自動車Aの2Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の近似直線を表す図である。
図12Aは、電気自動車Bの1Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の近似直線を表す図である。
図12Bは、電気自動車Bの0.5Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の近似直線を表す図である。
図12Cは、電気自動車Bの2Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の近似直線を表す図である。
図13Aは、電気自動車Cの1Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の近似直線を表す図である。
図13Bは、電気自動車Cの0.5Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の近似直線を表す図である。
図13Cは、電気自動車Cの2Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の近似直線を表す図である。
図11A〜13Cは、いずれも縦軸が抵抗値を表し、横軸が放電容量を表す。
【0045】
電気自動車Aにおける1Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の見かけの抵抗値のデータは、
図11Aに示す点で表される。そして、
図11Aの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Aの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.0894となる。また、電気自動車Aにおける0.5Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の見かけの抵抗値のデータは、
図11Bに示す点で表される。そして、
図11Bの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Aの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.0906となる。また、電気自動車Aにおける2Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の見かけの抵抗値のデータは、
図11Cに示す点で表される。そして、
図11Cの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Aの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.0924となる。このように、電気自動車Aの満充電状態における見かけの抵抗値を求める場合、放電容量の区分を変更してもほぼ変わらない値が算出される。
【0046】
電気自動車Bにおける1Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の見かけの抵抗値のデータは、
図12Aに示す点で表される。そして、
図12Aの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204のから求まる電気自動車Bの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1245となる。また、電気自動車Bにおける0.5Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の見かけの抵抗値のデータは、
図12Bに示す点で表される。そして、
図12Bの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Bの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1227となる。また、電気自動車Bにおける2Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の見かけの抵抗値のデータは、
図12Cに示す点で表される。そして、
図12Cの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Bの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1219となる。このように、電気自動車Bの満充電状態における見かけの抵抗値を求める場合、放電容量の区分を変更してもほぼ変わらない値が算出される。
【0047】
電気自動車Cにおける1Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の見かけの抵抗値のデータは、
図13Aに示す点で表される。そして、
図13Aの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Cの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1201となる。また、電気自動車Cにおける0.5Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の見かけの抵抗値のデータは、
図13Bに示す点で表される。そして、
図13Bの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Cの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1204となる。また、電気自動車Cにおける2Ah毎の放電容量の区分を用いた場合の見かけの抵抗値のデータは、
図13Cに示す点で表される。そして、
図13Cの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Cの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1217となる。このように、電気自動車Cの満充電状態における見かけの抵抗値を求める場合、放電容量の区分を変更してもほぼ変わらない値が算出される。
【0048】
このように、電気自動車A〜Cのいずれにおいても、放電容量の区分に関わらず同等の見かけの抵抗値の値を算出することができる。したがって、見かけの抵抗値の算出においては、利用しやすい放電容量の区分を用いることができる。
【0049】
図14Aは、電気自動車Aの全データ区間のデータを用いた場合の近似直線を表す図である。
図14Bは、電気自動車Aの0〜10Ahの範囲のデータ区間のデータを用いた場合の近似直線を表す図である。
図14Cは、電気自動車Aの0〜20Ahの範囲のデータ区間のデータを用いた場合の近似直線を表す図である。
図15Aは、電気自動車Bの全データ区間のデータを用いた場合の近似直線を表す図である。
図15Bは、電気自動車Bの0〜10Ahの範囲のデータ区間のデータを用いた場合の近似直線を表す図である。
図15Cは、電気自動車Bの0〜20Ahの範囲のデータ区間のデータを用いた場合の近似直線を表す図である。
図16Aは、電気自動車Cの全データ区間のデータを用いた場合の近似直線を表す図である。
図16Bは、電気自動車Cの0〜10Ahの範囲のデータ区間のデータを用いた場合の近似直線を表す図である。
図16Cは、電気自動車Cの0〜20Ahの範囲のデータ区間のデータを用いた場合の近似直線を表す図である。
図14A〜16Cは、いずれも縦軸が抵抗値を表し、横軸が放電容量を表す。
【0050】
電気自動車Aにおける全データ区間の見かけの抵抗値のデータは、
図14Aに示す点で表される。そして、
図14Aの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Aの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.0894となる。また、電気自動車Aにおける0〜10Ahの範囲のデータ区間の見かけの抵抗値のデータは、
図14Bに示す点で表される。そして、
図14Bの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Aの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.0887となる。また、電気自動車Aにおける0〜20Ahの範囲のデータ区間の見かけの抵抗値のデータは、
図14Cに示す点で表される。そして、
図14Cの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Aの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.0944となる。このように、電気自動車Aの満充電状態における見かけの抵抗値を求める場合、データ区間を変更してもほぼ変わらない値が算出される。
【0051】
電気自動車Bにおける全データ区間の見かけの抵抗値のデータは、
図15Aに示す点で表される。そして、
図15Aの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Bの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1245となる。また、電気自動車Bにおける0〜10Ahの範囲のデータ区間の見かけの抵抗値のデータは、
図15Bに示す点で表される。そして、
図15Bの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Bの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1224となる。また、電気自動車Bにおける0〜20Ahの範囲のデータ区間の見かけの抵抗値のデータは、
図15Cに示す点で表される。そして、
図15Cの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Bの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1219となる。このように、電気自動車Bの満充電状態における見かけの抵抗値を求める場合、データ区間を変更してもほぼ変わらない値が算出される。
【0052】
電気自動車Cにおける全データ区間の見かけの抵抗値のデータは、
図16Aに示す点で表される。そして、
図16Aの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Cの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1201となる。また、電気自動車Cにおける0〜10Ahの範囲のデータ区間の見かけの抵抗値のデータは、
図16Bに示す点で表される。そして、
図16Bの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Cの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1222となる。また、電気自動車Cにおける0〜20Ahの範囲のデータ区間の見かけの抵抗値のデータは、
図16Cに示す点で表される。そして、
図16Cの見かけの抵抗値を示す点の近似直線204から求まる電気自動車Cの満充電状態における見かけの抵抗値は、0.1190となる。このように、電気自動車Cの満充電状態における見かけの抵抗値を求める場合、データ区間を変更してもほぼ変わらない値が算出される。
【0053】
このように、用いるデータ区間に係わらず、ほぼ同様の近似曲線204を求めることができる。したがって、評価用抵抗値取得部14は、電気自動車100が走り出しから短時間で収集した放電容量及び抵抗値のみを用いて満充電状態における見かけの抵抗値を算出することができる。ただし、走りだし直後には、組電池2の温度が安定していないため、計測電流及び計測電圧の値が、温度安定後の組電池2とずれが生じる可能性がある。そこで、評価用抵抗値取得部14は、走り出し直後の一定期間を除き、それ以降の所定期間の放電容量及び抵抗値を用いて近似直線204を求めてもよい。
【0054】
図1に戻って説明を続ける。見かけの放電容量取得部16は、満充電状態における見かけの抵抗値の入力を評価用抵抗値取得部14から受ける。そして、見かけの放電容量取得部16は、相関関係記憶部15が保持する相関関係カーブを用いて、
図17に示すように、満充電状態における見かけの抵抗値に対応する見かけの放電容量を取得する。
図17は、見かけの放電容量の取得を説明するための図である。
図17は、横軸で見かけの放電容量を表し、縦軸で見かけの抵抗値を表す。例えば、見かけの放電容量取得部16は、抵抗値207を満充電における見かけの抵抗値として受信した場合、相関関係カーブから放電容量208を見かけの放電容量として取得する。
【0055】
その後、見かけの放電容量取得部16は、取得した見かけの放電容量を劣化判定部17へ出力する。ここで、本実施例では、組電池2の劣化状態を判定するために、満充電状態における見かけの抵抗値に対応する放電容量を求めている。これは、0Ahの時の抵抗値が現実の抵抗値に最も近いと考えられるため、その抵抗値に対応する放電容量が理想的な放電容量と考えられるからである。したがって、満充電状態における見かけの抵抗値に対応する放電容量を用いることで、より適切に組電池2の劣化状態を判定することができる。ただし、判定基準に用いる見かけの抵抗値の放電容量は他の値を取ることもでき、相関関係カーブの作成と評価に用いる見かけの抵抗値を求める際の放電容量の値が一致していれば、他の放電容量を評価の基準として用いることもできる。この見かけの放電容量取得部16が、「放電容量取得部」の一例にあたる。そして、満充電状態における見かけの抵抗値に対応する放電容量が、「評価用放電容量」の一例にあたる。
【0056】
劣化判定部17は、見かけの放電容量の入力を見かけの放電容量取得部16から受ける。ここで、劣化判定部17は、組電池2の劣化の判定基準である放電容量閾値を予め記憶している。そして、劣化判定部17は、受信した見かけの放電容量が放電容量閾値以上か否かを判定する。受信した放電容量が放電容量閾値以上の場合、劣化判定部17は、組電池2が劣化していないと判定し、処理を終了する。
【0057】
一方、受信した見かけの放電容量が放電容量閾値未満の場合、劣化判定部17は、組電池2が劣化していると判定し、組電池2の劣化を報知部18に通知する。
【0058】
報知部18は、組電池2の劣化の通知を劣化判定部17から受ける。そして、報知部18は、組電池2の劣化を電気自動車の利用者に通知する。
【0059】
ここで、本実施例では、閾値を用いて劣化を判定し、利用者に通知したが、利用者へ通知する情報はこれに限らない。例えば、報知部18は、見かけの放電容量取得部16が求めた見かけの放電容量を利用者に通知するように構成してもよい。その場合、利用者は、通知された見かけの放電容量を参照して組電池2の劣化状態を判断する。
【0060】
次に、
図18を参照して、本実施例に係る電池劣化判定装置による見かけの放電容量の算出の流れについて説明する。
図18は、実施例に係る電池劣化判定装置による見かけの放電容量の算出のフローチャートである。
【0061】
計測部11は、組電池2の電流及び電圧を計測する(ステップS1)。そして、計測部11は、計測電流を放電容量算出部12へ出力する。また、計測部11は、計測電流及び計測電圧を見かけの抵抗値算出部13へ出力する。
【0062】
放電容量算出部12は、計測電流の入力を計測部11から受ける。放電容量算出部12は、計測部11から受信した計測電流を積算して各時点での放電容量を算出する。そして、放電容量算出部12は、算出した各時点での放電容量を見かけの抵抗値算出部13へ出力する。見かけの抵抗値算出部13は、計測電流及び計測電圧の入力を計測部11から受ける。また、見かけの抵抗値算出部13は、放電容量の入力を放電容量算出部12から受ける。そして、見かけの抵抗値算出部13は、取得した計測電流、計測電圧及び放電容量から放電容量曲線を求める(ステップS2)。
【0063】
次に、見かけの抵抗値算出部13は、放電容量曲線の中から有効データを抽出する(ステップS3)。
【0064】
次に、見かけの抵抗値算出部13は、抽出した有効データを、放電容量の変化幅の所定の区間で分割する(ステップS4)。
【0065】
次に、見かけの抵抗値算出部13は、横軸が電流を表し、縦軸が電圧を表す座標系上に、区間毎の有効データに対応する計測電流及び計測電圧をプロットする。次に、見かけの抵抗値算出部13は、プロットした点の近似直線を求める。そして、見かけの抵抗値算出部13は、近似曲線の傾きを各区間における見かけの抵抗値として取得する(ステップS5)。その後、見かけの抵抗値算出部13は、求めた見かけの抵抗値を評価用抵抗値取得部14へ出力する。
【0066】
評価用抵抗値取得部14は、見かけの抵抗値の入力を見かけの抵抗値算出部13から受ける。次に、評価用抵抗値取得部14は、横軸で放電容量を表し、縦軸で抵抗値を表し、原点の値をそれぞれ0とした座標系上に、所定区間毎の放電容量に応じた見かけの抵抗値をプロットする。次に、評価用抵抗値取得部14は、プロットした点の近似直線を求める。そして、評価用抵抗値取得部14は、近似直線の縦軸との切片の抵抗値を、満充電状態における見かけの抵抗値として取得する(ステップS6)。その後、評価用抵抗値取得部14は、満充電状態における見かけの抵抗値を見かけの放電容量取得部16へ出力する。
【0067】
見かけの放電容量取得部16は、満充電状態における見かけの抵抗値の入力を評価用抵抗値取得部14から受ける。そして、見かけの放電容量取得部16は、相関関係記憶部15が保持する相関関係カーブから、満充電状態における見かけの抵抗値に対応する見かけの放電容量を取得する(ステップS7)。
【0068】
以上に説明した、電池劣化判定装置1は、例えば、電流及び電圧の測定器、並びに、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有するコンピュータで実現できる。測定器は、計測部11の機能を実現する。
【0069】
メモリは、相関関係記憶部15の機能を実現する。また、例えば、メモリは、
図1に例示した放電容量算出部12、見かけの抵抗値算出部13、評価用抵抗値取得部14、見かけの放電容量取得部16、劣化判定部17及び報知部18の機能を実現するプログラムを含む各種プログラムを記憶する。
【0070】
CPUは、メモリに格納された各種プログラムを読み出し実行することで、放電容量算出部12、見かけの抵抗値算出部13、評価用抵抗値取得部14、見かけの放電容量取得部16、劣化判定部17及び報知部18の機能を実現する。
【0071】
以上に説明したように、本実施例に係る電池劣化判定装置は、使用中の組電池の電圧及び電流からその時点での抵抗値を推定し、その推定した抵抗値を基に、その時点での組電池の放電容量を推定する。これにより、使用中の組電池の放電容量が推定でき、容易に組電池の劣化状態を判定することができる。
【0072】
また、本実施例に係る電池劣化判定装置は、短時間の計測で放電容量が推定できるので、長時間の組電池の使用を行わずに放電容量が推定でき、より容易に組電池の劣化状態を判定することができる。