特許第6469512号(P6469512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469512触覚又は聴覚フィードバックを利用するノギス測定力インジケータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469512
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】触覚又は聴覚フィードバックを利用するノギス測定力インジケータ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20190204BHJP
   G01B 3/20 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   G01L5/00 B
   G01B3/20 101Z
【請求項の数】20
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-88958(P2015-88958)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-212692(P2015-212692A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】14/267,666
(32)【優先日】2014年5月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー イー エムトマン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ランドール ゲレティ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エドワード コールズワージー
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 実開平3−78202(JP,U)
【文献】 米国特許第4873771(US,A)
【文献】 特開平1−262401(JP,A)
【文献】 実開昭50−59842(JP,U)
【文献】 実開昭50−37555(JP,U)
【文献】 特公昭40−10552(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00− 5/28
G01B 3/00− 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノギススケール部材に沿ってノギスの測定軸方向に移動するノギスジョウに対して圧力アクチュエータを介して印加される測定力に関するユーザ用フィードバックを提供するための圧力インジケータ機構であって、
前記ノギスジョウ及び前記圧力アクチュエータのうちの一方に連結され、第1の刻み形状を有する第1の刻みセクションを少なくとも有する刻み部材と、
前記ノギスジョウ及び前記圧力アクチュエータのうちの他方に連結され、前記刻み部材と第1の相対的な変位の位置にあるときに前記第1の刻み形状と係合するように構成される係合部を有する係合部材と、
前記圧力アクチュエータ及び前記ノギスジョウ間の圧力を受けて、前記ノギスジョウに前記測定軸方向に力を印加する位置に配置される弾性部材と
を具備し、
前記圧力インジケータ機構は、前記ノギスジョウ及び前記圧力アクチュエータに連結されているとき、
前記圧力アクチュエータが、前記ノギススケール部材に沿って前記ノギスジョウと共に移動し、
前記圧力アクチュエータに圧力が印加されて前記ノギスジョウに前記測定軸方向に沿って圧力が加わるとき、前記弾性部材が変形することで、前記圧力アクチュエータが、前記ノギスジョウに連結された前記刻み部材及び前記係合部材の一方に対して相対的に強制変位し、前記相対的な強制変位に依存すると共に前記測定軸方向に沿って前記ノギスジョウに印加される測定力を生成し、
前記相対的な強制変位が前記第1の相対的な変位を含むとき、前記第1の刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、第1の測定力が示されるように構成される
圧力インジケータ機構。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記弾性部材は、弾性ばね部材、ねじりばね部材、コイルばね部材又はエラストマー材料素子である
圧力インジケータ機構。
【請求項3】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記弾性部材は、前記圧力アクチュエータと前記ノギスジョウとを双方向に弾性的に連結するように、前記圧力アクチュエータに対して第1の方向に圧力が印加されると、前記弾性部材が第1の極性に変形することで前記ノギスジョウに第1の極性測定力が印加され、前記圧力アクチュエータに対して第2の方向に圧力が印加されると、前記弾性部材が第2の極性に変形することで前記ノギスジョウに第2の極性測定力が印加されるように構成され、
前記第1の刻み形状を有する前記第1の刻みセクションは第1の極性の刻みセクションであり、
前記第1の相対的な変位は第1の極性相対変位であり、
前記第1の測定力は、前記圧力アクチュエータに対して前記第1の方向に印加される第1の極性測定力であり、
前記刻み部材は、第2の極性の刻み形状を有する第2の極性の刻みセクションをさらに有し、
前記係合部材は、前記係合部材及び前記刻み部材が第2の極性相対変位の位置にある場合、前記第2の極性の刻み形状と係合するようにさらに構成され、
前記相対的な強制変位が前記第2の極性相対変位を含む場合、前記第2の極性の刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、前記第2の方向において前記圧力アクチュエータに印加される第2の極性測定力が示される
圧力インジケータ機構。
【請求項4】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記刻み部材は、第2の刻み形状を有する第2の刻みセクションをさらに有し、
前記係合部材は、前記刻み部材と前記第1の相対的な変位よりも大きい第2の相対変位の位置にある場合、前記第2の刻み形状と係合するようにさらに構成され、
前記相対的な強制変位が前記第2の相対変位を含む場合、前記第2の刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、第2の測定力が示される
圧力インジケータ機構。
【請求項5】
請求項4に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記刻み部材は、さらなる刻み形状を有する少なくとも1つのさらなる刻みセクションを有し、
前記係合部材は、前記係合部材及び前記刻み部材が前記第2の相対的な変位よりも大きいさらなる相対変位の位置にある場合、前記さらなる刻み形状と係合するようにさらに構成され、
前記相対的な強制変位が前記さらなる相対変位を含む場合、前記さらなる刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、さらなる測定力が示される
圧力インジケータ機構。
【請求項6】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記圧力アクチュエータと、前記ノギスジョウに連結される前記刻み部材及び前記係合部材の一方との間の最大相対変位限度を定め、これにより、前記弾性部材の変形を制限し、前記弾性部材を塑性変形不可能とするように構成される制止機構
をさらに具備する
圧力インジケータ機構。
【請求項7】
請求項6に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記制止機構は、前記最大相対変位限度に達すると、前記圧力アクチュエータに印加されるさらなる圧力を、前記圧力アクチュエータから前記ノギスジョウに直接伝達するように構成される
圧力インジケータ機構。
【請求項8】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記圧力インジケータ機構は、最小0.5mm及び最大5.0mmの各相対変位が、最小0.1ニュートン及び最大10ニュートンの測定力に対応するように構成される
圧力インジケータ機構。
【請求項9】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記第1の刻み形状は、前記刻み部材の第1の隆起部であり、
前記係合部材は、前記刻み部材と前記第1の相対的な変位の位置の近傍にあるとき、前記第1の隆起部に干渉する又は前記第1の隆起部によって屈曲するように構成される突出部を有する
圧力インジケータ機構。
【請求項10】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記圧力インジケータ機構は、前記ノギスジョウの既存の取付機構と互換性を有する締結構成を用いて既存のノギスの前記ノギスジョウに実装されるように構成される
圧力インジケータ機構。
【請求項11】
請求項10に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記既存のノギスは、圧力アクチュエータを不具備であり、
前記圧力インジケータ機構は、前記圧力アクチュエータを有し、
前記圧力アクチュエータは、前記圧力インジケータ機構の一部として前記既存のノギスに後付けされる
圧力インジケータ機構。
【請求項12】
請求項10に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記圧力インジケータ機構は、交換して使用可能な複数の圧力インジケータ機構から成るセットに含まれ、
前記セット内の各圧力インジケータ機構は、それぞれ異なるばね定数を有する各弾性部材を有する
圧力インジケータ機構。
【請求項13】
請求項10に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記圧力インジケータ機構は、交換して使用可能な複数の圧力インジケータ機構から成るセットに含まれ、
前記セット内の少なくとも1つの各圧力インジケータ機構は、前記セット内の他の圧力インジケータ機構とは前記第1の相対的な変位が異なるように、前記第1の刻みセクションのサイズが異なっており、これにより、前記セット内の前記少なくとも1つの圧力インジケータ機構は、前記セット内の他の圧力インジケータ機構とは前記第1の測定力の大きさが異なる
圧力インジケータ機構。
【請求項14】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記刻み部材は、前記ノギスジョウに連結され、
前記係合部材は、前記圧力アクチュエータに連結される
圧力インジケータ機構。
【請求項15】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記刻み部材は、前記圧力アクチュエータに連結され、
前記係合部材は、前記ノギスジョウに連結される
圧力インジケータ機構。
【請求項16】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記弾性部材は、前記圧力アクチュエータを前記ノギスジョウに連結する
圧力インジケータ機構。
【請求項17】
請求項1に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記係合部材は、前記圧力アクチュエータに配置される係合素子を有する
圧力インジケータ機構。
【請求項18】
ノギスにおいて、測定軸方向に沿ったノギススケール部材に沿って移動するノギスジョウに対して圧力アクチュエータを介して印加される測定力に関するユーザ用フィードバックを提供するための圧力インジケータ機構であって、
第1の刻み形状を有する第1の刻みセクションを少なくとも有する刻み部材と、
前記刻み部材と第1の相対的な変位の位置にあるときに前記第1の刻み形状と係合するように構成される係合部を有する係合部材と、
前記刻み部材を前記係合部材に連結するための弾性部材と
を具備し、
前記圧力インジケータ機構は、前記ノギスジョウ及び前記圧力アクチュエータに連結されたときに、
前記第1の刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、前記弾性部材の変形によって生じる第1の測定力が示されるように構成される
圧力インジケータ機構。
【請求項19】
請求項18に記載の圧力インジケータ機構であって、
前記刻み部材は、第2の刻み形状を有する第2の刻みセクションをさらに有し、
前記係合部材は、前記係合部材及び前記刻み部材が前記第1の相対的な変位よりも大きい第2の相対変位の位置にある場合、前記第2の刻み形状と係合するようにさらに構成され、
前記第2の刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、前記弾性部材の変形によって生じる第2の測定力が示される
圧力インジケータ機構。
【請求項20】
既存のノギスに圧力インジケータ機構を後付けする方法であって、前記既存のノギスは、当該既存のノギスの測定軸方向にノギススケール部材に沿って移動するノギスジョウを有し、当該方法は、
第1の刻み形状を有する第1の刻みセクションを少なくとも有する刻み部材と、
前記刻み部材と第1の相対的な変位の位置にあるときに前記第1の刻み形状と係合するように構成される係合部を有する係合部材と、
前記刻み部材を前記係合部材に連結するための弾性部材と
を有する
前記圧力インジケータ機構を用意し、
前記ノギスジョウの既存の取付機構と互換性を有する締結構成を用いて前記圧力インジケータ機構を前記ノギスジョウに連結し、
前記圧力インジケータ機構が、前記ノギスジョウに連結されたときに、
前記第1の刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、前記弾性部材の変形によって生じる第1の測定力が示されるようにする
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密測定器に関し、対象物の寸法を測定するための可動ジョウ付ノギスに関する。
【背景技術】
【0002】
ノギスは、一組のジョウを用いて測定値を求める。通常、第1のジョウが測定スケールの一端に固定され、第2のジョウが、当該測定スケールに沿って移動するスライダ部に装着される。対象物の外寸の測定は、当該対象物を第1及び第2のジョウの内面で挟み込むことによって行われる。対象物の内寸の測定は、当該対象物の内面(例えば、孔の壁面)に第1及び第2のジョウの外面をそれぞれ押し当てることによって行われる。スライダ部は、ユーザが親指で動かすことができ、制御し易いようにサムローラが設けられる。サムローラを用いるノギスの一例が、特許文献1に記載されている。
【0003】
ノギスのジョウ間の距離を測定するため、電子式位置エンコーダを用いることができる。当該電子式位置エンコーダは、例えば、低電力の電磁誘導式の位置検知技術に基づく。係るエンコーダは、読取ヘッドとスケールとを有する。読取ヘッドは、読取ヘッドセンサと読取ヘッド電装部とを有する。読取ヘッドは、測定軸に沿ったスケールに対する読取ヘッドセンサの位置に応じて変化する信号を出力する。スケールは、第1の測定ジョウを有する長尺状のスケール部材に設けられる。読取ヘッドは、第2の測定ジョウを有するスライダ部に設けられる。スライダ部は、スケール部材に沿って移動可能である。したがって、読取ヘッドからの信号に基づいて、2つの測定ジョウ間の距離測定値を求めることができる。
【0004】
同一出願人による特許文献2、特許文献3及び特許文献4には、典型的な電子ノギスが開示される。特許文献5には、圧力(測定力)を測定可能な電子ノギスの先行技術が開示されている。特許文献5に記載のように、従来技術に係るノギスの使用上の欠陥の一つは、測定ジョウが印加する圧力(測定力)が変動することである。その結果、測定値にバラツキが生じるおそれがある。とりわけ、柔軟性を有する対象物を測定する場合、この対象物の測定値は、再現性(反復性)が無いことがある。これは、ユーザがノギスのジョウに印加する圧力が高いと柔軟な対象物の「圧縮量が大きく」なったり、圧力が低いと柔軟な対象物の「圧縮量が小さく」なったりすることがあるためである。特許文献5に開示されるノギスは、対象物のサイズと対象物に印加される圧力との両方を測定可能である。これらの値を解析することで、再現性の高い測定値が得られるとされる。しかし、特許文献5に記載のノギスの、圧力検知/指示機能は、多くの実用面では「過剰」であると考えられる。また、このノギスは非常に高価であり、多くのユーザにとってこのノギスの使用は複雑であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国登録特許第7533474号
【特許文献2】米国再発行特許第37490号
【特許文献3】米国登録特許第5574381号
【特許文献4】米国登録特許第5973494号
【特許文献5】米国特許公開公報第2003−0047009号
【特許文献6】米国登録特許第5901458号
【特許文献7】米国登録特許第6400138号
【特許文献8】米国特許出願第14/194320号
【特許文献9】米国特許出願第13/706225号
【特許文献10】米国特許出願第14/194461号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、ノギスの測定力の制御性を向上させるとともに再現性を向上させ、且つ、そのノギスが安価で、人間工学的に使いやすく、再現性(反復性)があり、直感的に理解可能であることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この「課題を解決するための手段」では、以下の「発明を実施するための形態」に詳細に記載された各構想のなかから選択した構想を単純化したものを紹介する。この「課題を解決するための手段」は、「特許請求の範囲」の内容の重要な特徴を特定するためのものではなく、「特許請求の範囲」の範囲を特定するのに用いられるものでもない。
【0008】
圧力インジケータ機構は、ノギススケール部材に沿ってノギスの測定軸方向に移動するノギスジョウに対して圧力アクチュエータを介して印加される測定力に関するユーザ用フィードバックを提供するための圧力インジケータ機構を提供する。圧力インジケータ機構は、刻み部材と、係合部材と、弾性部材とを有する。刻み部材は、前記ノギスジョウ及び前記圧力アクチュエータのうちの一方に連結され、第1の刻み形状を有する第1の刻みセクションを少なくとも有する。係合部材は、前記ノギスジョウ及び前記圧力アクチュエータのうちの他方に連結され、前記刻み部材と第1の相対的な変位の位置にあるときに前記第1の刻み形状と係合するように構成される係合部を有する。弾性部材(例えば、弾性ばね部材、ねじりばね部材、コイルばね部材、及びエラストマー材料素子)が、前記圧力アクチュエータ及び前記ノギスジョウ間の圧力を受けるように位置付けられる。
【0009】
前記圧力インジケータ機構は、前記ノギスジョウ及び前記圧力アクチュエータに連結されているとき、前記圧力アクチュエータが、前記ノギススケール部材に沿って前記ノギスジョウと共に移動するように構成される。また、前記圧力アクチュエータに圧力が印加されて前記ノギスジョウに前記測定軸方向に沿って圧力が加わるとき、前記弾性部材が変形することで、前記圧力アクチュエータが、前記ノギスジョウに連結された前記刻み部材及び前記係合部材の一方に対して相対的に強制変位し、前記相対的な強制変位に依存すると共に前記測定軸方向に沿って前記ノギスジョウに印加される測定力を生成する。さらに、前記相対的な強制変位が前記第1の相対的な変位を含むとき、前記第1の刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバック(例えば、「クリック」)が生成され、第1の測定力が示される。
【0010】
触覚及び/又は聴覚フィードバックが提供されることにより、ユーザは、ノギスの測定値を確認する際、測定力の表示を目で見て確認する必要がなくなる。従来技術の圧力指示ノギスにおいて、圧力の指示情報は通常、視覚的に提供されてきた(例えば、スケール又はLCDディスプレイに)。このため、ユーザが、圧力の指示情報、ノギス測定値及び/又はノギスジョウを同時に視覚的に監視する難しい作業を行う必要があった。測定力に関する触覚及び/又は聴覚フィードバックを提供することによって、ユーザは、測定値及び/又はノギスジョウを観察しつつ、印加されている測定力量に関しての案内を得ることができる。触覚及び/又は聴覚フィードバックによって、(例えば、誤った及び/又は再現不可能な測定値を生じる可能性がある過小又は過剰な測定力の印加を防止することによって)ユーザは、とりわけ、弾性を有する測定対象物に関して、より一貫した及び/又は再現可能な測定結果を得ることができる。
【0011】
各実装形態において、前記弾性部材は、前記圧力アクチュエータと前記ノギスジョウとを双方向に弾性的に連結するように構成してもよい。一実装形態において、前記圧力アクチュエータに対して第1の方向に圧力が印加されると、前記弾性部材が第1の極性に変形することで前記ノギスジョウに第1の極性測定力が印加される。また、前記圧力アクチュエータに対して第2の方向に圧力が印加されると、前記弾性部材が第2の極性に変形することで前記ノギスジョウに第2の極性測定力が印加される。一実装形態において、前記第1の刻み形状を有する前記第1の刻みセクションは第1の極性の刻みセクションとして設計され、前記第1の相対的な変位は第1の極性相対変位として設計され、前記第1の測定力は、前記圧力アクチュエータに対して前記第1の方向に印加される第1の極性測定力として設計される。また、前記刻み部材は、第2の極性の刻み形状を有する第2の極性の刻みセクションをさらに有する。前記係合部材は、前記係合部材及び前記刻み部材が第2の極性相対変位の位置にある場合、前記第2の極性の刻み形状と係合するようにさらに構成される。さらに、前記相対的な強制変位が前記第2の極性相対変位を含む場合、前記第2の極性の刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、前記第2の方向において前記圧力アクチュエータに印加される各第2の極性測定力が示される。
【0012】
各実装形態において、前記刻み部材は、第2の刻み形状を有する第2の刻みセクションをさらに有する。前記係合部材は、前記係合部材及び前記刻み部材が前記第1の相対的な変位よりも大きい第2の相対変位の位置にある場合、前記第2の刻み形状と係合するようにさらに構成される。さらに、前記相対的な強制変位が前記第2の相対変位を含む場合、前記第2の刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、第2の測定力が示される。
【0013】
各実装形態において、前記刻み部材は、前記第2の刻みセクションに加えて、さらなる刻み形状を有する少なくとも1つのさらなる刻みセクションを有する。前記係合部材は、前記係合部材及び前記刻み部材が前記第2の相対的な変位よりも大きいさらなる相対変位の位置にある場合、前記さらなる刻み形状と係合するようにさらに構成される。さらに、前記相対的な強制変位が前記さらなる相対変位を含む場合、前記さらなる刻み形状に対して前記係合部材が係合又は解放されることで、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、さらなる測定力が示される。
【0014】
各実装形態において、前記第1の刻み形状は、前記刻み部材の第1の切欠き又は第1の突出部を有し、前記係合部材は、前記刻み部材と前記第1の相対的な変位の位置の近傍にあるとき前記第1の切欠き内に延びる又は前記第1の突出部と係合するように構成される部分を有する。刻み部材が複数のさらなる刻み形状を有する一実装形態において、これらは、刻み部材の複数のさらなる切欠き又は突出部を有してもよい。
【0015】
各実装形態において、制止機構が設けられる。当該制止機構は、前記圧力アクチュエータと、前記ノギスジョウに連結される前記刻み部材及び前記係合部材の一方との間の最大相対変位限度を定め、これにより、前記弾性部材の変形を制限し、前記弾性部材を塑性変形不可能とするように構成される。前記制止機構は、前記最大相対変位限度に達すると、前記圧力アクチュエータに印加されるさらなる圧力を、前記圧力アクチュエータから前記ノギスジョウに直接伝達するように構成される。
【0016】
各実装形態において、前記圧力インジケータ機構は、前記ノギスジョウの既存の取付機構と互換性を有する締結構成を用いて既存のノギスの前記ノギスジョウに実装されるように構成される。前記既存のノギスは、圧力アクチュエータを不具備であり、前記圧力インジケータ機構は、前記圧力アクチュエータを有し、前記圧力アクチュエータは、前記圧力インジケータ機構の一部として前記既存のノギスに後付けされる。
【0017】
各実装形態において、前記圧力インジケータ機構は、交換して使用可能な複数の圧力インジケータ機構から成るセットに含まれ、前記セット内の各圧力インジケータ機構は、それぞれ異なるばね定数を有する各弾性部材を有する。付加的に又は代替的に、前記セット内の少なくとも1つの各圧力インジケータ機構は、前記セット内の他の圧力インジケータ機構とは前記第1の相対的な変位が異なるように、前記第1の刻みセクションのサイズが異なっており、これにより、前記セット内の前記少なくとも1つの圧力インジケータ機構は、前記セット内の他の圧力インジケータ機構とは前記第1の測定力の大きさが異なる。
【0018】
各実装形態において、弾性部材は、適度な抵抗力(例えば、0.1〜10N)を付与する程度の剛性を有しながら適度な屈曲量(例えば、0.5〜5mm)を付与する程に弾性を有するのが望ましい。一実装形態において、特定の人間工学的特性を付与するには、ばね定数が0.25N/mm〜6N/mmである弾性部材を用いる。また、ばね定数は、圧力インジケータ機構が毎使用後にゼロセット位置Zero-setに戻るのに十分であるように選択する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ノギスの測定力の制御性が向上するとともに再現性が向上し、且つ、そのノギスが安価で、人間工学的に使いやすく、再現性(反復性)があり、直感的に理解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係る圧力インジケータ機構を有する、スライダ及びスケールを有する手工具式ノギスを示す分解等角図である。
図2図1の圧力インジケータ機構を示す等角図である。
図3図1の圧力インジケータ機構を示す上面図である。
図4A】弾性部材を示す上面図である。
図4B図4Aと異なる硬度又はばね定数を有する弾性部材を示す上面図である。
図4C図4A及び図4Bと異なる硬度又はばね定数を有する弾性部材を示す上面図である。
図5A】1つのセットに含まれる刻みセクションを示す上面図である。
図5B】上記セットに含まれる刻みセクションを示す上面図であり、刻み形状の数及び間隔は、図5Aに示す刻み形状の数及び間隔と異なる。
図5C】上記セットに含まれる刻みセクションを示す上面図であり、刻み形状の数及び間隔は、図5A及び図5Bに示す刻み形状の数及び間隔と異なる。
図6A】第2の実施形態に係る圧力インジケータ機構を示す図である。
図6B】第2の実施形態に係る圧力インジケータ機構を示す別の図である。
図7】第3の実施形態に係る圧力インジケータ機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、圧力インジケータ機構205を有する手工具式ノギス100を示す分解等角図である。本例において、ノギス100は、スライダ変位センサ158(例えば、電磁誘導式のセンサ機構)と、スケール基板125とを有する。スケール基板125は、スケールトラック126(それぞれ一部断面図として図示)を有し、長尺状のスケール部材102に沿う溝127内に配置される。別の実施形態において、別の方式のスライダ変位センサ158を使用してもよい(例えば、静電容量式等)。スライダ機構170は、スライダ130に設けられた電装部160を有する。スライダ変位センサ158は、電装部160に設けられる。ノギス100の機械構造及び操作は、同一出願人による特許文献6等、特定の先行技術に係る電子ノギスの機械構造及び操作と同様である。スケール部材102は、剛体又は半剛体の棒であり、略矩形の断面に含まれる各種の溝及び/又は他の特徴を有してもよい。スケール基板125は、溝127に強固に接着されてもよい。スケールトラック126は、スライダ変位センサ158の対応する構成要素(図示せず)と協働する、スケール構成要素を有してもよい。その方法は、公知の電子ノギスで用いられる方法と同様であり、特許文献2及び特許文献6や、同一出願人による特許文献7に記述される通りである。
【0022】
一組のジョウ108、110は、スケール部材102の第1の端部の近傍に形成される。対応して、1組のジョウ116、118は、スライダ130に形成される。ジョウ108、116の1組の係合面(測定面)114の間に測定対象物を配置して、測定対象物の外寸を測定する。同様に、ジョウ110、118の1組の係合面(測定面)122を、測定対象物の相反する各内壁面に対して配置して、測定対象物の内寸を測定する。ある位置(ゼロ位置と称することもある)においては、係合面114が互いに当接し、係合面122が一直線になる。このとき、ノギス100により測定される外寸及び内寸は、ゼロを指してもよい。
【0023】
寸法測定値は、デジタル表示装置144に表示されてもよい。このデジタル表示装置144は、ノギス100の電装部160のカバー140内に実装されている。電装部160はまた、押しボタンスイッチ141(例えば、「原点」スイッチ)と、信号処理/表示回路基板150とを有してもよい。信号処理/表示回路基板150は、読取ヘッド信号処理/制御回路159を有してもよい。図1に示すように、信号処理/表示回路基板150の底面は、スケール部材102のいずれか一方の側においてスライダ130の上面と当接するように設置される。
【0024】
圧力インジケータ機構205は、刻み部材210と、係合部材220と、弾性部材230とを有する。刻み部材210は、刻み部210Aを有し、本実施形態では、連結部210Bをさらに有する。係合部材220は、刻み部210Aと係合する係合部262を有する。刻み部材210は、(例えば、ねじで)スライダ130に連結される。したがって、刻み部材210は、スライダ130に付随するジョウ116、118に連結される。係合部材220は、アクチュエータ機構190に連結される。弾性部材230は、刻み部材210と係合部材220との間に連結されることで、圧力アクチュエータとスライダ130に設けられたノギスジョウとの間の圧力を受ける。後で図2図5を参照してより詳細に説明するが、刻み部材210(例えば、その刻み部210A)は、係合部材220の係合部262が係合する刻み形状を有する複数の刻みセクション260を有する。代替的な一実装形態において、部材210が係合部262を有し(したがって、係合部材210と称される)、部材220が複数の刻みセクション260を有するようにしてもよい(したがって、刻み部材220と称される)。
【0025】
各実装形態において、弾性部材230は、複数の平行ばね部材から成る。これについては後で図2を参照してより詳細に説明する。複数の平行ばね部材は、比較的剛性があるため、圧力アクチュエータ機構190がノギスジョウに対して、測定軸方向に交差する方向に沿って変位することを抑制するように作用する。このようにして、弾性部材230は、圧力アクチュエータ機構190のガイド機構として機能すると共に抵抗力を付与するように作用する。これについては後でより詳細に説明する。
【0026】
操作時において、ユーザは、圧力アクチュエータに対して圧力を加えるように圧力アクチュエータ機構190のサムローラ191を押圧し、スライダ130を測定軸方向に沿ってスケール部材102の第1の端部へ移動させる。弾性部材230は、屈曲又は変形する。その結果、圧力アクチュエータ機構190の圧力アクチュエータ本体192と、これに連結した係合部材220とが、測定軸方向に沿って、刻み部材210、スライダ130及び対応するノギスジョウ116、118に対して変位する。測定力が、このような相対的な強制変位に依存する弾性部材230に生じる。当該測定力は、弾性部材230を通じて測定軸方向に沿って刻み部材210、スライダ130、及び対応するノギスジョウ116、118に印加される。後でより詳細に説明するが、相対的な強制変位が、一定の第1の相対的な変位を含む場合、刻み部材210の第1の刻み形状261に対して係合部材220の係合部262が係合又は解放されることによって、触覚又は聴覚フィードバックが生成され、第1の測定力が示される(すなわち、触覚又は聴覚フィードバックによって測定力をユーザに報知する)。
【0027】
圧力インジケータ機構205を弾性部材230と共に使用することで、複数の位置を含む範囲に亘って、圧力が緩やかに増加又は減少するようになる。重要なことには、これによって、ユーザが測定の過程に所望の値の圧力を印加するように制御しようとする際の制御性及び「感覚」が向上する。後でより詳細に説明するが、弾性部材230が屈曲するときに、圧力インジケータ機構205は、係合部262が複数の刻みセクション260の範囲に沿って移動するにつれて、一以上の触覚及び/又は聴覚インジケーション(例えば、クリック)を生成するように構成される。触覚及び/又は聴覚フィードバックが提供されることにより、ユーザは、ノギスの測定値を確認する際、測定力の表示を目で見て確認する必要がなくなる。
【0028】
別の実施形態では、上に概説した特徴部に、図1の実施形態に示すような任意の電子的な、圧力を示す構成要素の変位センサ(圧力センサとも呼ばれる)を組み合わせてもよい。この圧力センサは、複数の変位信号素子255の配列と信号変調素子250とを有する。当該信号変調素子250は、(例えば、介在する連結部材によって)圧力アクチュエータ機構190に連結される。同様の圧力センサが、同一出願人による同時係属中の特許文献8(発明の名称「Displacement Sensor For Force Indicating Caliper(圧力を示す変位センサを有するノギス)」、出願日2014年2月28日)に詳細に記載される。一実装形態において、複数の変位信号素子255の配列は、回路基板150の一以上の金属層に作製され、信号変調素子250の位置を示す電気信号を生成する。読取ヘッド信号処理/制御回路159は、圧力測定値を求めるための信号素子255から圧力検知信号を受信する圧力検知回路を有する。ユーザが、スライダ130をスケール部材102の第1の端部へ移動させるようにサムローラ191を押圧すると、圧力アクチュエータ機構190及びこれに装着された信号変調素子250が前方に押し出され、複数の変位信号素子255の配列に対して導かれるように移動する。複数の変位信号素子255が信号変調素子250の相対的な位置を検知するように、信号変調素子250は、複数の変位信号素子255の近傍に相対的に小さな間隙を介して配置される。信号変調素子250の位置は、圧力インジケータ機構205の弾性部材230の屈曲量に対応する。これにより、測定力が示される。
【0029】
各実装形態において、回路基板150の一以上の実装領域がスライダ130に当接してもよい。例えば、図1に示すように、回路基板150の実装領域157A、157Bはそれぞれ、スライダ130の実装領域137A、137Bに当接する。スライダ変位センサ158の導電性信号検知素子(図示せず)は、実装領域157Aから第1の横方向D1に離れて配置されたスケールトラック126においてスケール部材102と重なる。さらに、複数の変位信号素子255の配列の少なくとも1つの導電性信号検知素子は、実装領域157Aから逆方向である横方向D2に離れた領域に配置される。本構成において、金属製スライダ130は、通常のスライダ機能に加えて、同時に伝送されるスライダ変位センサ158への信号と圧力センサ55への信号とを互いに対して遮蔽するようにも作用することができる。ノギスにおける圧力検知動作に関する種々の考察は、同一出願人による同時係属中の特許文献9(発明の名称「System and Method for Setting Measurement Force Thresholds in a Force Sensing Caliper(圧力検知ノギスにおける測定力の設定システム及び方法)」、出願日2012年12月5日)に記載される。
【0030】
図2は、図1の圧力インジケータ機構205及び圧力アクチュエータ機構190を示す等角図である。図3は、同じく上面図である。図2及び図3に示すように、本実施形態の弾性部材230は、刻み部材210と係合部材220との間に連結された第1のばね部材232と第2のばね部材234とを有する。ばね部材232及び234は、平行四辺形ばね式サスペンションとして機能する。ばね部材には所謂板ばねのような弾性ばねを用いることができる。
【0031】
図2及び図3に示すように、第1の連結部236は、締結具217を用いて、刻み部材210の連結部210Bと、ばね部材232及び234の一端部とに、堅牢に固定又は連結してもよい(例えば、締結具217を連結部236に螺入してもよい)。連結部210Bは、スライダ130に装着される装着部219を有する。一般に、既存のノギスのスライダ及びこれらに付随するジョウはそれぞれ、規定の寸法を有しており、外付けの部品を実装できるような形状を有する。各実装形態において、連結部210Bは、既存の実装形状と互換性を有する締結構成を用いて既存のノギスに実装されるように構成される。既存のノギスが圧力アクチュエータ機構190を有しない場合、圧力アクチュエータ機構190を、圧力インジケータ機構205を用いて既存のノギスに後付けすることができる。
【0032】
ばね部材232及び234の第2の端部は、締結具(図示せず)及び/又は接着方法等を用いて、係合部材220の係合部220A及び/又は連結部220Bに締結することができる。係合部材220(例えば、連結部220B)をアクチュエータ本体連結部224に連結することができる。当該アクチュエータ本体連結部224は、アクチュエータ本体192に連結される。信号変調素子250は、係合部材220及びアクチュエータ本体連結部224と共に移動するように装着される。
【0033】
本明細書に記載された各実装形態において、圧力インジケータ機構205は、ユーザが印加している測定力に関する触覚及び/又は聴覚フィードバックを提供するように構成される。具体的な一実装例において、刻み部材210は、係合部材220の係合部262によって係合される複数の刻み形状261を有する複数の刻みセクション260を有する。係合部262を有する係合部材220は、圧力アクチュエータ機構190及び弾性部材230の第2の端部と共に移動するように連結される。操作時において、弾性部材230が屈曲して圧力アクチュエータ機構190が刻み部材210に対して移動すると、係合部262は、複数の刻みセクション260の範囲に対して移動して測定力のインジケーションを提供する。圧力インジケータ機構205は、係合部262が複数の刻みセクション260の範囲に沿って移動する際、一以上の触覚及び/又は聴覚インジケーション(例えば、クリック)を生成するように構成される。例えば、係合部262は、リッジ等の突出形状を有してもよい。また、複数の刻み形状261は、係合部262が乗り越えるような一連の隆起部又は山形部を有してもよい。これにより、係合部262が複数の刻み形状261に亘ってかちかち動いて「クリック」が生成される。各実装形態において、複数の刻みセクション260及び/又は複数の刻み形状261の範囲が異なっていてもよい。これについては、後で図5A図5Cを参照してより詳細に説明する。一実装形態において、必要に応じて、一連の目盛り193が、追加の視覚的な圧力インジケータとして圧力アクチュエータ本体192に設けられてもよい。
【0034】
一構成例において、ノギス100及び圧力インジケータ機構205の動作は以下の通りである。最初ノギスは、図2に示すように、ゼロセット位置Zero-setにある。ゼロセット位置Zero-setにあるとき、ノギスは通常、双方向測定範囲の中央に位置する。このとき、弾性部材230(例えば、平行四辺形ばね式サスペンション)は屈曲していない。ゼロセット位置Zero-setにあるとき、信号変調素子250は複数の変位信号素子255の配列の範囲の略中央に位置する。また、係合部262は、複数の刻みセクション260の範囲の略中央に位置する。
【0035】
ユーザがサムローラ191を押圧して、スライダ130をノギス100のスケール部材の第1の端部に向かって移動させると、弾性部材230が前方(第1の極性)に屈曲し、限界位置L-extmeasに到達し得る。限界位置L-extmeasは、所望の外側測定力限度(例えば、測定対象物の外寸測定時)に対応してもよい。後で図5A図5Cを参照してより詳細に説明するが、ゼロセット位置Zero-setと限界位置L-extmeasとの間において、触覚及び/又は聴覚フィードバックを、係合部262が複数の刻み形状261に亘って移動することによって提供してもよい(例えば、測定力量を示す刻み形状261が係合及び/又は解放されることで各「クリック」が生成される)。
【0036】
各実装形態において、限界位置L-extmeasをわずかに越えた位置に制止機構を設けてもよい。例えば、係合部材220に固定された面226Aは、刻み部材210に固定された面216Aと接触し、弾性部材230の、前方向へのさらなる相対的な動作、つまり、屈曲を防止する。これは、信号変調素子250が複数の変位信号素子255の検知範囲の第1の端部に到達すること及び/又は係合部262が複数の刻みセクション260の範囲の第1の端部に到達することに対応してもよい。
【0037】
同様に、ユーザがサムローラ191を逆方向に動かす(すなわち、ノギス100のスケール部材の反対側の端部に向かってスライダ130を逆向きに動かす)と、弾性部材230は後方(第2の極性)に屈曲する。この方向において、限界位置L-intmeasに到達し得る。限界位置L-intmeasは、内側測定力限度(例えば、測定対象物の内寸測定時)に対応してもよい。ゼロセット位置Zero-setと限界位置L-intmeasとの間において、触覚及び/又は聴覚フィードバックを、係合部262が複数の刻み形状261に亘って移動することによって提供してもよい。対応する制止機構の、係合部材220に固定された面226Bと、刻み部材210に固定された面216Bとが接触して、逆方向への弾性部材230のさらなる屈曲が防止されてもよい。これは、信号変調素子250が複数の変位信号素子255の検知範囲の第2の端部に到達すること及び/又は係合部262が複数の刻みセクション260の範囲の第2の端部に到達することに対応する。
【0038】
上に概説した制止機構は、圧力アクチュエータ機構190の最大相対変位限度を提供するように構成される。ノギス100がゼロセット位置Zero-setにあるとき、面216A、226Aは距離D1だけ離間している。他方、面216B、226Bは距離D2だけ離間している。したがって、これらの距離D1、D2はそれぞれ、ゼロセット位置Zero-setと限度位置L-extmeas、L-intmeasとの差に相当する。これらの限界位置L-extmeas、L-intmeasに到達すると、対応する面216A、226A及び216B、226Bが接触することによって、弾性部材230がさらに変形するのではなく、ユーザが圧力アクチュエータ機構190に対して印加する付加的な圧力が直接スライダ130に伝達される。各実装形態において、これによって、弾性部材230の変形が制限され、弾性部材230が塑性変形しなくなる。
【0039】
各実装形態において、弾性部材230には、異なる形態及び材料を用いてもよい。一般に、弾性部材230は、適度な抵抗力(例えば、0.1〜10N)を付与する程度の剛性を有しながら適度な屈曲量(例えば、0.5〜5mm)を付与する程度の弾性を有するのが望ましい。各実施形態に関して、特定の人間工学的特性を付与するには、ばね定数が0.25N/mm〜6N/mmである弾性部材230を用いるのが望ましいと実験的に判明している。なお、ノギス使用時には、一般に、印加圧力をコントロールしながら、手指を何本か使ってノギススケールを把持し(これにより手の大部分がノギスに対して固定され)、同時にもう1本の指でスライダを包み込み、手に対して親指を動かして圧力アクチュエータをスライダに対して調整することができる。このため、親指が手の親指以外の部分に対して不自由なく移動する量が制限される。一般に、下限である0.25N/mmにおいて、親指が手の親指以外の部分に対して不自由なく快適に移動する範囲内で、加圧量が有意に変動し得る。一方、上限である6N/mmにおいては、親指を少し動かしただけでは印加圧力は少ししか変化せず、測定力によって撓んだり変形したりするおそれのある測定対象物に対してでも、容易且つ安定して印加圧力をコントロールするのに感度が高過ぎるとユーザが感じることはない。言い換えれば、このばね定数範囲であれば、ユーザが直感的に測定することができて望ましいと、実験的に判明している。複数の刻みセクション260は、ばねの設計に応じて設計することができる。なお、別の実施形態において、レバー、ギヤ又は他の公知の機械要素を用いて指の変位と圧力との関係を変更し、他のばね定数(例えば、0.05〜20N/mmの範囲)を用いてもよい。
【0040】
一具体例において、所望のばね定数を得るために第1及び第2のばね部材232及び234に鋼製シムを用いてもよい。別の実装形態において、弾性部材230に他の材料(例えば、弾性ポリマー材料)を用いてもよい。弾性部材230は、複数部品又は複数部材の組合せ(例えば、打ち抜きされた金属をポリマー部品に入れて成形した屈曲部)として形成してもよい。また、弾性部材230は、部品点数及びアセンブリのコストを削減するために単一部材(例えば、単一の成形品)として形成してもよい。一実装形態において、複数の部品から構成された屈曲部を弾性部材230に用いて、屈曲可能範囲を拡大してもよい。
【0041】
上に概説した係合部材、刻み部材、弾性部材、及び圧力アクチュエータ機構190の実施形態は例示に過ぎず、限定的なものではないことを理解されたい。モノリシック、つまり、一体的な構造の一部としてそれぞれ示した各種構成要素が、代替的に組み立て式構成要素であってもよい。逆に、組み立て式構成要素が、代替的にモノリシック、つまり、一体的な構造内に設けられてもよい。本明細書に開示された原理を実施するのに様々な代替形状及び形態を用いてもよい。
【0042】
図4A図4Cは、対応する圧力インジケータ機構のセットに含まれ得る、異なる厚さを有する平行ばね部材を有する弾性部材230A〜230Cのセットを示す図である。図4Aに示すように、弾性部材230Aは、図4Bの弾性部材230Bの第1及び第2のばね部材232B、234Bより薄い第1及び第2のばね部材232A、234Aを有する。同様に、第1及び第2のばね部材232B、234Bは、弾性部材230Cの第1及び第2のばね部材232C、234Cより薄い。弾性部材230A、230B、及び230Cのそれぞれの第1及び第2のばね部材の厚みの違いは、ばね定数の違いに対応する。
【0043】
上述したように、各実装形態において、対応する弾性部材230A〜230Cを有する各圧力インジケータ機構は、ノギスジョウ及びスライダの既存の取付機構と互換性を有する締結構成を用いて既存のノギスに装着されるように構成されてもよい。弾性部材230A〜230Cを有する圧力インジケータ機構をセットで準備することで、ユーザは、具体的な用途に適したばね定数を有する圧力インジケータ機構を選択できる。代替的な一実装形態において、第1及び第2のばね部材232及び234の厚さを変更する代わりに、弾性部材230の他の寸法(例えば、高さ)を変更してもよい。
【0044】
図5A図5Cは、対応する圧力インジケータ機構のセットに含まれ得る、刻みセクション260の数及び刻み形状261の間隔が異なる刻み部210AA〜210ACのセットを示す図である。図5Aに示すように、刻み部210AAは、複数の刻みセクション260を有する。当該複数の刻みセクション260には、ゼロセット位置Zero-setの第1の側の第1の極性の刻みセクションES1Aと、ゼロセット位置Zero-setの第2の側の第2の極性の刻みセクションIS1Aとが含まれる。第1の極性の刻みセクションES1Aは、第1の極性の刻み形状EM1Aを有する。第2の極性の刻みセクションIS1Aは、第2の極性の刻み形状IM1Aを有する。各実装形態において、図2を参照して上述したように、第1の極性の刻みセクションES1Aが外寸測定に対応し、第2の極性の刻みセクションIS1Aが内寸測定に対応してもよい。
【0045】
一具体例において、係合部262が、複数の刻み形状261(例えば、マーカEM1A又はIM1A)のうちの一つに対して係合される位置(例えば、位置262'')及び解放される位置(例えば、位置262')間を移動する間、触覚及び/又は聴覚フィードバック(例えば、「クリック」)が、複数の係合部262及び/又は複数の刻み形状261が代わる代わる干渉及び/又は変形することに付随して蓄積エネルギーが放出されることによって生成されてもよい。ユーザによって知覚されるクリック又は他のフィードバックによって、測定力の増分を示してもよい。これによって、ユーザはフィードバックに基づき行動することができる。例えば、クリックによって、適切な測定力量が印加されていることが示される場合、ユーザは、クリックを触覚的又は聴覚的に認識したときに測定力の増加を止めることができる。クリックによって、過剰な測定力が印加されていることが示される場合、ユーザは、測定力を減らす等することができる。
【0046】
各実装形態において、複数の刻みセクション及び/又は複数の刻み形状のサイズ及び位置は、特定の測定力量を示すように選定してもよい。一実装形態において、複数の刻みセクション及び/又は複数の刻み形状の位置をユーザによって調整可能とし、示される測定力量を調整可能としてもよい。例えば、刻み形状EM1A、IM1Aのうちの一方又は両方は、ユーザが位置変更することが可能な一以上の可動式部材に実装されてもよい。これにより、触覚及び/又は聴覚フィードバックが生じる測定力量を変更することができる。後で図5B及び図5Cを参照してより詳細に説明するが、一実装形態において、複数の刻み形状を複数の刻みセクションを含む範囲内に配置し、クリック数の違いが測定力の段階の違い(例えば、過小な印加測定力、適切な印加測定力及び/又は過剰な印加測定力を含む複数段階)に対応するようにしてもよい。
【0047】
図5Bに示すように、刻み部210ABは、ゼロセット位置Zero-setの第1の側における第1の極性の刻みセクションES1B、ES2Bと、ゼロセット位置Zero-setの第2の側における第2の極性の刻みセクションIS1B、IS2Bを有する。第1の極性の刻みセクションES1B、ES2Bはそれぞれ、第1の極性の刻み形状EM1B、EM2Bを有する。第2の極性の刻みセクションIS1B、IS2Bは、第2の極性の刻み形状IM1B、IM2Bをそれぞれ有する。本構成において、第1のクリックを、第1の測定力を示すものとして設計し、第2のクリックを、第2の測定力を示すものとして設計してもよい。例えば、具体的な一実装形態において、第1の方向(第1又は第2の極性のいずれか)の第1のクリックは、適切な測定力量が印加されていることを示すものとして設計され、第1の方向の第2のクリックは、過剰な測定力が印加されていることを示すものとして設計されてもよい。
【0048】
図5Cに示すように、刻み部210ACは、ゼロセット位置Zero-setの第1の側における第1の極性の刻みセクションES1C、ES2C、ES3Cと、ゼロセット位置Zero-setの第2の側における第2の極性の刻みセクションIS1C、IS2C、IS3Cとを有する。第1の極性の刻みセクションES1C、ES2C、ES3Cはそれぞれ、第1の極性の刻み形状EM1C、EM2C、EM3Cを有する。第2の極性の刻みセクションIS1C、IS2C、IS3Cはそれぞれ、第2の極性の刻み形状IM1C、IM2C、IM3Cを有する。本構成において、第1のクリックが、第1の測定力を示すものとして設計され、第2のクリックが、第2の測定力を示すものとして設計され、第3のクリックが、第3の測定力を示すものとして設計されてもよい。例えば、具体的な一実装形態において、第1の方向の第1のクリックが、過小な測定力が印加されていることを示すものとして設計され、第1の方向の第2のクリックが、適切な測定力量が印加されていることを示すものとして設計され、第1の方向の第3のクリックが、過剰な測定力が印加されていることを示すものとして設計されてもよい。3つのクリックが第1及び第2の極性の方向の両方において生成される圧力インジケータ機構の別の例を、後で図6A及び図6Bを参照してより詳細に説明する。
【0049】
上述したように、刻み部210AA〜210ACを有する圧力インジケータ機構のセットは、ノギスの既存の取付機構と互換性を有する締結構成を用いて既存のノギスに装着されるように構成されてもよい。ユーザは、具体的な用途に適した複数の刻みセクション及び対応する刻み形状を有する圧力インジケータ機構を選択することができる。刻み部210AA〜210ACの刻み形状の数はそれぞれ異なる。一方、別の実装形態において、刻み部のセットに付加的に又は代替的に含まれる複数の刻みセクションは、同数の刻み形状を有しつつ、刻み形状同士の間隔は異なってもよい。一般に、複数の圧力インジケータ機構のセットには、任意の数の刻みセクション及び/又は弾性部材(例えば、弾性部材230A〜230C)及び/又はこれらの任意の組合せを設けてもよいことを理解されたい。
【0050】
図6A及び図6Bは、第2の実施形態に係る圧力インジケータ機構605を示す図である。当該圧力インジケータ機構605は、刻み部材610と、係合部材620と、弾性部材630とを有する。刻み部材610、係合部材620、及び弾性部材630の各種構成要素は、図1図3の刻み部材210、係合部材220、及び弾性部材230の同様の参照符号の構成要素と同様のものであり、以下に別途記載がない限り、同様に機能するものと理解されたい。
【0051】
図6A及び図6Bに示すように、刻み部材610は、上述の刻み部210Aと同様の刻み部610Aと、ノギス100(図1)のスライダ130に装着される装着部619を有する連結部610Bとを有する。したがって、刻み部材610は、既存のノギスの取付機構と互換性のある締結構成を用いて実装されるように構成される。さらに、圧力アクチュエータ機構190は、圧力インジケータ機構605を用いて、一部の既存のノギスに後付けされるように設けられる。
【0052】
係合部材620は係合部620Aを有する。係合部材620は、連結部620Bを用いて圧力アクチュエータ機構190の圧力アクチュエータ本体192'に締結され、当該圧力アクチュエータ本体192'と共に移動する。圧力アクチュエータ本体192'は、刻み部材610の連結部610Bの溝613内に収容及びガイドされ、連結部610Bのスロット611内に延びるねじ又はピン612によって溝613内に保持される。概略的に示すように、ねじ又はピン612は、圧力アクチュエータ機構190及び係合部材620が刻み部材610に関して移動するように、スロット611内で測定軸方向に沿って自由移動してもよい。
【0053】
各実装形態において、弾性部材630は、概略的に示すように、ピンP2、P1によって溝613内の圧力アクチュエータ機構190及び刻み部材610に連結されるコイルばねであってもよい。ばね型弾性部材を接続するための代替的な構成が、上記特許文献9に記載されている。本構成において、ユーザがサムローラ191を押圧すると、スライダ130がスケール部材102の第1の端部へ向かって移動し、弾性部材630が圧縮される(例えば、測定対象物の外寸測定時)。ユーザがサムローラ191を反対方向に動かす(すなわち、スケール部材102の反対側の端部へ向かってスライダ130を逆向きに動かす)と、弾性部材630が伸長する(例えば、測定対象物の内寸測定時)。このようにして、弾性部材630を通じて双方向測定構成が実現される。スロット611内のねじ又はピン612は、双方向の制止機構を提供するように構成されてもよいことを理解されたい。これによって、圧力アクチュエータ機構190の相対的な変位と、弾性部材630の圧縮及び伸長とが制限される。
【0054】
刻み部材610は、係合部材620の係合部662によって係合される刻み形状661を有する複数の刻みセクション660を有する。代替的な一実装形態において、部材610が係合部662(係合部材610とも呼ぶ)を有し、部材620が複数の刻みセクション660(刻み部材620とも呼ぶ)を有するようにしてもよい。上述したように、ユーザは、サムローラ191を移動させて、弾性部材630を変形させて刻み部材610に対して係合部材620を移動させることによって測定力を付与することができる。図6Aの例において、この移動の結果、係合部662が複数の刻みセクション660の範囲に沿って移動し、一以上の触覚及び/又は聴覚インジケーション(例えば、クリック)が生成され、印加されている測定力量が示される。
【0055】
図6Aに示すように、係合部662は、下方向に付勢された延長部を有してもよい。係合部662が複数の刻みセクション660に沿って移動したとき、係合部662は、複数の刻みセクション660の複数の切欠き部に対して「クリック」(カチッと音を立てて嵌合)してもよい。一実装形態において、複数の刻み形状661を、複数の切欠き部として設計してもよい。別の実施形態において、複数の刻み形状を、複数の切欠き部のそれぞれの間にある複数の隆起部として設計してもよい。いずれの場合も、図5A図5Cを参照して説明したのと同様に、複数の刻みセクション660及び/又は複数の刻み形状661の範囲が各実装形態において異なっていてもよい。図5Cの例と同様に、図6Aの例において、複数の刻みセクション660は、第1及び第2の極性の方向のそれぞれにおいて3つのクリックが生成されるように構成される。
【0056】
上述した圧力インジケータ機構205の実装形態と同様に、圧力インジケータ機構605の複数の刻みセクション660、複数の刻み形状661、係合部662、及び弾性部材630は、特定の実装形態における各種パラメータに従って構成及び/又は選択することができる。例えば、様々な実装形態において、選択された測定力が各クリック(例えば、0.1〜10N)に対応し、何れの方向の動作範囲内でも選択されたクリック数が得られ、動作範囲がノギスのサイズに適している(例えば、各方向の動作範囲が0.5〜5mmである)ことが望ましい。弾性部材630は、圧力インジケータ機構605が毎使用後にゼロセット位置Zero-setに戻るようなばね定数を有するように選択してもよい。複数の刻みセクション660、複数の刻み形状661、及び係合部662の形状並びにサイズはいずれも、ユーザにとって所望の「感覚」と、各クリックの適切な着座をもたらすように選定することができる。これらの構成要素の材料は、寿命と円滑な動作を鑑みて選択すればよい。クリック毎に測定力が所定のレベルで変化するように、複数の刻みセクション660及び複数の刻み形状661の個数及び/又は間隔を変更してもよい。クリック1つ1つに要する力は、ユーザがクリックを感じ取れるが、強過ぎて次の刻み形状661を越えてしまうことがない程度に設定することができる。各実装形態において、クリックは、測定中の測定対象物がノギスのジョウ間に配置されるのを補助する「微細振動」を与えるように設計することができる。
【0057】
図7は、第3の実施形態に係る圧力インジケータ機構705を示す図である。当該圧力インジケータ機構705は、回転型圧力アクチュエータ790に連結され、一種の(後付けタイプの)サムローラ機構の一部として実装することができる。同様のサムローラ機構は、同一出願人による同時係属中の特許文献10(発明の名称「Wheel Assembly For Moving Caliper Jaw With Repeatable Force(ノギスのジョウを移動させるためのローラ機構及びノギスに測定力を印加する方法)」、出願日2014年2月28日)に詳細に記載される。図7に概略的に示す構成は、既存のノギスのスライダ及びそれに付随するノギスジョウに設けられている取付機構と互換性を持たせることができる。既存のノギスのなかには、圧力アクチュエータ機構を有しないものもある。この場合、圧力アクチュエータ機構790を、圧力インジケータ機構705を用いて既存のノギスに後付けすることができる。
【0058】
圧力インジケータ機構705は、刻み部材710と、係合部材720と、弾性部材730とを有する。刻み部材710、係合部材720、及び弾性部材730の各種構成要素は、図1図3の刻み部材210、係合部材220、及び弾性部材230の同様に参照符号の付された構成要素と同一の機能を提供することができ、以下で別途記載がない限り、同様に機能することを理解されたい。
【0059】
図7に示すように、回転型圧力アクチュエータ790は、回転型アクチュエータ部791、797と、留めねじ795と、任意のハブ/スペーサ793とを有する。各実装形態において、留めねじ795を用いて、回転型アクチュエータ部791、797を互いに堅牢に連結してもよい(例えば、ハブ/スペーサ793に接触して)。これにより、回転型圧力アクチュエータ790が一体として形成される(例えば、サムローラ部の外装となる)。ユーザは、回転型圧力アクチュエータ790を作動して測定力を印加する(後で詳細に説明する)。一実施形態において、留めねじ795は、アクチュエータ部797のねじ山に留められる。留めねじ795のねじ山を除く長さは、組み付けられた各部品の間に軸方向のクリアランスが生じるような長さである。これにより、留めねじ795を締めた後、刻み部材710は、アクチュエータ部791、797に対して自由に旋回することが可能となる。一実装形態において、回転型アクチュエータ部791を省いてもよい。また、柔軟性連結部材730の位置を変更して(必要に応じて変形して)、回転型アクチュエータ部797と刻み部材710とを連結してもよい。必要に応じて、ねじ/軸795や、ハブ/スペーサ793を変形して、上に概説した作動状態で、でき上がった機構を一体に保持してもよい。
【0060】
刻み部材710は、ハブによって接合される2つのディスク状部を有する。これらのディスク状部のうちの一方である刻み部710Aは、上述した線形の刻み部210A(図2参照)と同様であるが回転体である。ハブは、連結素子711のスロット711Bに受け取られる連結部710Bを提供する。当該連結素子711は、ノギス100(図1)のスライダ130に装着される装着部719を有する。上に概説したように組み立てられ、スライダ130に締結されると、ノギススケール部材(又は本尺)102の縁が刻み部材710のくさび形本尺係合間隙712の両側面と摩擦係合するように配置される。ハブ/連結部710Bは、ノギス本尺によってスロット711B内に捕捉される。刻み部材710がノギス本尺102の縁に沿って回転されている間、ハブ/連結部710Bは、連結素子711を(スロット711Bを介して)押圧する。これによって、ハブ/連結部710Bは、測定軸方向にスライダ130に力を印加する。刻み部710Aは、係合部材720の係合部762によって係合される刻み形状761を有する複数の刻みセクション760を有する。
【0061】
柔軟性連結部材730は、回転型圧力アクチュエータ790を刻み部材710に弾性的に連結するように構成される。柔軟性連結部材730は、第1の端部及び第2の端部を有するねじりばねとして示されている。第1の端部は、回転型アクチュエータ部791の保持孔に挿入される。一方、第2の端部は、刻み部材710の保持孔に挿入される。これにより、柔軟性連結部材730は、回転型アクチュエータ部791と刻み部材710とを弾性的に連結する。図7では、柔軟性連結部材730はねじりばねとしたが、当然ながら、別の実装形態においては、他の部品を使用してもよい(例えば、エラストマーねじりばね、ローラ機構の回転軸の周りに弧状に配置されたコイルばね、たわみピボット等)。
【0062】
係合部材720は、圧力アクチュエータ機構190の回転型アクチュエータ部791に連結(例えば、接着)され、当該回転型アクチュエータ部791と共に移動する。操作時には、ユーザは、サムローラ/回転型アクチュエータ部791を移動及び回転してもよい。これによって、連結されたスライダ及びノギスジョウが測定対象物と接触するまで、刻み部材710がノギスの本尺の縁に沿って回転される。次いで、連結されたスライダ及びジョウが測定対象物に接触して停止することで刻み部材710の回転/移動が抑制された状態で、サムローラ/回転型アクチュエータ部791を刻み部材710に対してさらに回転させることによって弾性部材730を変形させて測定力を印加する。図7の例では、この相対的な回転の結果、係合部762が複数の刻みセクション760の範囲に沿って移動され、一以上の触覚及び/又は聴覚インジケーション(例えば、クリック)が生成され、印加されている測定力が示される。同じように動作する別の一実装形態において、しかるべき係合部762が、部材710上に配置されるか又は部材710(係合部材710とも称される)に連結され、複数の刻みセクション760と複数のマーカ761とが、部材720(刻み部材720とも称される)の内面に配置されてもよい。
【0063】
いずれの場合も、図5A図5Cを参照して上述したのと同様に、複数の刻みセクション760及び/又は複数の刻み形状761の範囲が各実装形態において異なっていてもよい。上述した圧力インジケータ機構に係る実装形態と同様に、圧力インジケータ機構705の複数の刻みセクション760と、複数の刻み形状761と、係合部762と、弾性部材730とを、特定の実装形態の各種パラメータに応じて構成及び/又は選択することができる。例えば、様々な実装形態において、選択された測定力が各クリック(例えば、0.1〜10N)に対応し、何れの方向の動作範囲内でも選択されたクリック数が得られ、動作範囲がノギスのサイズに対して妥当である(例えば、動作範囲が各方向において、部材710の半径において0.5〜5mmである)ことが望ましい。弾性部材730は、圧力インジケータ機構705が毎使用後にゼロセット位置Zero-setに確実に戻るようにするばね定数を有するように選択してもよい。複数の弾性部材及び/又は複数の圧力インジケータ機構及び/又は複数の回転型アクチュエータのセットを設け、当該セットの各部材によって、弾性部材に対して異なるばね定数を付与してもよい。複数の刻みセクション760、複数の刻み形状761及び係合部762の形状及びサイズは、ユーザにとって所望の「感覚」と、各クリックの適切な着座をもたらすように選定すればよい。これらの構成要素の材料は、寿命と円滑な動作を鑑みて選択すればよい。複数の刻みセクション760及び刻み形状761は、クリック間での力の変化が指定されたレベルで行われるように異なる個数及び/又は間隔で構成することができる。クリック1つ1つの力は、ユーザがクリックを感じ取れるが、強過ぎて次の刻み形状761を越えてしまうことがない程度に設定することができる。
【0064】
上述した種々の構成要素は、上記で概説したのと異なる位置に配置されてもよく、他の形態をとってもよいことが、本開示基づき当業者によって理解されるであろう。
【0065】
上記各実施形態を組み合わせて、さらに別の実施形態を提供することができる。本明細書に記載した全ての特許文献の開示を参照することにより、本発明の一部を構成する。必要に応じて、各特許文献の構想を採用して本実施形態の各態様を変更することができる。これにより、さらに別の実施形態を提供することができる。
【0066】
上記説明に照らして本実施形態を多様に変更することが可能である。一般に、特許請求の範囲において使用する語句は、特許請求の範囲を、明細書及び特許請求の範囲に開示される具体的な実施形態に限定するものであると解釈されるべきでない。むしろ、考え得る全ての実施形態に加えて、特許請求の範囲の均等物の全範囲をも含むと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0067】
205…圧力インジケータ機構
710…刻み部材
220…係合部材
230…弾性部材
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7