特許第6469520号(P6469520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469520ポンプ装置、遠隔制御装置、及び、ポンプ装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469520
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】ポンプ装置、遠隔制御装置、及び、ポンプ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   F04D15/00 F
   F04D15/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-100331(P2015-100331)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-217195(P2016-217195A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 茂
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】小松 崇秀
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正一
【審査官】 井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−112363(JP,A)
【文献】 特開2015−025427(JP,A)
【文献】 特開平01−077791(JP,A)
【文献】 特開2007−170309(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0173027(US,A1)
【文献】 特開2014−037840(JP,A)
【文献】 特開2012−197629(JP,A)
【文献】 特開2002−268703(JP,A)
【文献】 特開平02−095786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を移送するポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記ポンプの吐出側圧力が目標圧力制御カーブ上の目標圧力になるように前記モータの回転数を設定して当該モータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ポンプの目標圧力を取得して第1所定時間における前記取得した目標圧力の平均値が前記目標圧力制御カーブ上の所定の圧力閾値よりも小さいときには前記目標圧力が小さくなるように前記目標圧力制御カーブを補正し、第2所定時間における前記モータの回転数の平均値が所定の回転数閾値以上であるときには前記目標圧力が大きくなるように前記目標圧力制御カーブを補正する、
ポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ装置であって、
前記所定の回転数閾値は、前記モータの定格回転数である、ポンプ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポンプ装置であって、
前記所定の圧力閾値は、前記目標圧力制御カーブ上の目標圧力における中央値である、ポンプ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載のポンプ装置であって、
前記制御部は、前記取得した目標圧力の平均値が前記目標圧力制御カーブ上の前記所定の圧力閾値よりも小さい時には前記目標圧力が第1圧力だけ小さくなるように前記目標圧力制御カーブを補正し、前記回転数の平均値が前記所定の回転数閾値以上であるときには前記目標圧力が前記第1圧力よりも大きい第2圧力だけ大きくなるように前記目標圧力制御カーブを補正する、ポンプ装置。
【請求項5】
液体を移送するポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記ポンプの吐出側圧力が
目標圧力制御カーブ上の目標圧力になるように前記モータを制御する制御部と、を備えるポンプ装置と通信を行う遠隔監視装置であって、
前記モータの回転数を受信する回転数受信部と、
前記ポンプの目標圧力を受信する圧力受信部と、
第1所定時間における前記受信して取得した目標圧力の平均値が前記目標圧力制御カーブ上の所定の圧力閾値よりも小さいときには前記目標圧力が小さくなるように前記目標圧力制御カーブを補正する指令を前記制御部に送信し、第2所定時間における前記受信されるモータの回転数の平均値が所定の回転数閾値以上であるときには前記目標圧力が大きくなるように前記目標圧力制御カーブを補正する指令を前記制御部に送信する補正指令送信部と、
を備える遠隔監視装置。
【請求項6】
液体を移送するポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、を備え、前記ポンプの吐出側圧力が目標圧力制御カーブ上の目標圧力になるように前記モータが制御されるポンプ装置の制御方法であって、
前記モータの回転数を取得し、
前記ポンプの目標圧力を取得し、
第1所定時間における前記取得した目標圧力の平均値が前記目標圧力制御カーブ上の所定の圧力閾値よりも小さいときには前記目標圧力が小さくなるように前記目標圧力制御カーブを補正し、第2所定時間における前記取得した回転数の平均値が所定の回転数閾値以上であるときには前記目標圧力が大きくなるように前記目標圧力制御カーブを補正する、
ポンプ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置、遠隔制御装置、及び、ポンプ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ装置は、建物に水を供給する給水装置として広く使用されている。図1は一般的な給水装置を示す模式図である。図1に示すように、給水装置100の吸込口は、導入管5を介して水道管4または図示しない受水槽に接続されている。給水装置100の吐出口には給水管7が接続されており、この給水管7は、建物の各階の給水器具(例えば蛇口)に連通している。給水装置100は、水道管4または受水槽からの水を増圧して建物の各給水器具に水を供給する。
【0003】
水道管4にポンプの吸込側が導入管5を介して直結される給水装置100は、ポンプ2と、このポンプ2を駆動する駆動源としてのモータ3と、モータ3を可変速駆動する駆動装置としてのインバータ20と、を備える。また、給水装置100は、ポンプ2の吸込側に配置された逆流防止装置25と、逆流防止装置25の吸込側に配置された圧力センサ21と、ポンプ2の吐出側に配置された逆止弁22と、逆止弁22の吐出側に配置されたフロースイッチ24、圧力センサ26、および圧力タンク28とを備えている。これら構成要素は、給水装置100のキャビネット30内に収容されている。なお、キャビネット30を備えていないタイプの給水装置もある。
【0004】
水道管4の圧力のみで給水を行うためのバイパス管8が導入管5と給水管7との間に設けられており、バイパス管8には逆止弁23が設けられている。図1に示す例では、ポンプ2、モータ3、逆止弁22、およびフロースイッチ24が2組設けられ、これらは並列に設けられている。なお、1組、または3組以上のポンプ、モータ、逆止弁、およびフロースイッチを設けてもよい。直結式給水装置では、図1に示すようにポンプ2の吸込側が水道管4に接続されているが、受水槽式の給水装置では、ポンプ2の吸込側は導入管5を介して受水槽に接続される。この受水槽式の給水装置の場合、図1に示す逆流防止装置25、吸込側の圧力センサ21、及びバイパス管8は備えられない。
【0005】
逆止弁22は、ポンプ2の吐出口に接続された吐出管32に設けられており、ポンプ2が停止したときの水の逆流を防止するための弁である。フロースイッチ24は吐出管32を流れる水の流量が所定の値にまで低下したこと、すなわち過少水量を検出する流量検出器である。圧力センサ26は、ポンプ2の吐出側圧力(以降、吐出側圧力とは、圧力センサ26にて測定した圧力値を示す。)を測定するための水圧測定器である。圧力タンク28は、ポンプ2が停止している間の吐出側圧力を保持するための圧力保持器である。
【0006】
給水装置100は、給水動作を制御する制御部35を備えている。インバータ20、フロースイッチ24、圧力センサ21、圧力センサ26は、制御部35に信号線を介して接続されている。フロースイッチ24により過少水量が検出されると、制御部35はポンプ2の運転速度を一時的に上げるようインバータ20に指令を出し、圧力タンク28に蓄圧してからポンプ2の運転を停止させる。
【0007】
ポンプ2が停止している状態で建物内で水が使用されると、ポンプ2の吐出側圧力が低下する。この吐出側圧力が所定の始動圧力にまで低下すると、制御部35はポンプ2を始動させる。具体的には、制御部35はモータ3の駆動を開始するようにインバータ20に指令を出す。ポンプ2の運転中は、吐出側圧力に基づいて推定末端圧力一定制御が行われる。
【0008】
建物での水の使用が少なくなると、フロースイッチ24は、過少水量を検出し、その検出信号を制御部35に送る。制御部35はこの検出信号を受け、インバータ20に指令を出して吐出側圧力が所定の停止圧力に達するまでポンプ2の回転数を増加させ、圧力タンク28に蓄圧した後ポンプ2を停止させる。
【0009】
推定末端圧力一定制御では、建物内の給水管での抵抗損失に応じて目標圧力を適切に変化させることにより、給水装置100から末端に位置する給水器具での水圧が一定に制御される。図2は、推定末端圧力一定制御の一例を説明するためのポンプの運転特性曲線図である。図2の左図において、横軸は水の流量であり、縦軸は吐出し圧力すなわち揚程(ヘッド)である。また、図2の右図において横軸はポンプ回転数であり、縦軸は吐出し圧力すなわち揚程(ヘッド)である。
【0010】
図2に示すPAは、給水装置100から末端の給水器具における最大流量時の吐出側圧力(以下、PAと記す)である。ここでいう最大流量とは、建物内のすべての給水器具において最大水量が使用される状態である。また、PBは、給水装置100から末端の給水器具における締切運転時の吐出側圧力(以下PBと記す)である。ここでいう締切運転時とは建物内のすべての給水器具において流量0の時に、給水装置100から最も高く且つ最も遠くの位置(すなわち末端の位置)にある給水器具に必要な供給圧力とその給水器具までの管路に生じる圧力損失を加えた値である。記号NMAXで示される曲線は、ポンプ2の性能により決まる最高回転数NMAXでポンプ2を運転したときのポンプ2の揚程曲線である。記号NMINで示される曲線は、圧力PBを達成する回転数(締切回転数)NMINでポンプ2を運転したときのポンプ2の揚程曲線である。また、P05は、最高回転数NMAXにおける締切運転時の吐出側圧力(以下、最高回転数をNMAX、締切り運転時のPBにおける回転数をNMIN、NMAXにて締切運転時の揚程をP05と記す)である。一般的にポンプの吐出し流量とポンプの回転数とは比例し、且つ、ポンプの全揚程はポンプの回転数の2乗に比例するため、PAとPBとを通る2次曲線は、末端の給水器具における管路抵抗曲線Rとなる。ポンプ2が任意の回転数における揚程曲線Nmと管路抵抗曲線Rとの交点である運転点で運転されることにより、末端の給水器具における圧力はPB一定に保たれる。
【0011】
推定末端圧力一定制御に用いられる目標圧力制御カーブCについて図2の右図を用いて説明する。図中のC0は締切運転カーブである。ポンプ2の吸込み側圧力が0の場合、C0は、圧力=0と回転数=0、及び、P05とNMAX、を通る2次曲線である。目標圧力制御カーブCは、PAとNMAX、及び、PBとNMIN、を通る2次曲線である。給水装置100から末端の給水器具において圧力をPB一定に制御する(すなわち目標圧力PAにて推定末端圧一定制御を行う)場合、先に述べたようにポンプ2の吐出し流量はポンプ2の回転数に比例するため、現在の流量QNに対応したポンプ2の回転数Nmと目標圧力制御カーブCとから目標圧力PNを設定する。
【0012】
したがって、流量が少ないときは、吐出側圧力の目標圧力が低くなり、その分ポンプ2の必要動力が低くなって回転数が小さくなることにより、省エネルギー運転が実現される。
【0013】
なお、図2において、圧力PBが圧力PAに等しくなるように圧力PBを設定すると、制御部35は推定末端圧一定制御ではなく吐出圧力一定制御を実行する。この場合は、制御部35は、吐出側圧力がPA(=PB)を保つように、ポンプ2の回転数を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第WO2012/099242号
【特許文献2】特開2014−214715号公報
【特許文献3】特開2014−214743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した推定末端圧一定制御において目標圧力制御カーブCは、設置された建物のPAとPBを正確に実測することは困難なため、建物内すべての給水器具(例えば蛇口)に十分な圧力で水を供給できるようにPAとPBがある程度余裕のある値に設定される。そこで、特許文献1は、必要な流量を確保しつつ、ポンプをより低い回転数で運転することができる給水装置を提案している。特許文献1によれば、複数の目標圧力制御カーブが予め制御部内に記憶されており、ポンプはいずれか1つの目標圧力制御カーブに基づいて制御されるようになっている。したがって、予め用意された複数の目標圧力制御カーブから最適なものを選択することによって、省エネルギー運転を実現することができる。
【0016】
しかしながら、特許文献1に記載の給水装置は、手動により目標圧力制御カーブが選択され、手動により切り替えられるようになっており、自動で目標圧力制御カーブの選択および切り替えが行われるようにはなっていない。また、使用される目標圧力制御カーブは、予め制御部に記憶された複数の目標圧力制御カーブから選択されるため、給水装置の運転状況に従って目標圧力制御カーブ自体の調整ができない。給水装置の運転状況は、時間によって変わり得る。例えば、学校においては休み時間に水の使用量が急に増え、夜間では水はほとんど使用されない。このように、給水装置の運転状況は時間またはその他の要因によって変わり得るため、最適な目標圧力制御カーブを自動で調整することが望まれる。さらに、より一層の省エネルギーを実現するために最適な目標圧力制御カーブを調整することも望まれる。
【0017】
また、特許文献2,3に記載の給水装置は、ポンプ始動時の吐出圧力の変化に基づいて最適な目標圧力制御カーブを調整している。しかしながら、例えば世帯数の多い大規模マンションにポンプ装置が用いられる場合などには、24時間水が使用されていることも多い。この場合には、ポンプが停止および始動される機会が少なく、目標圧力制御カーブを調整する機会が少なくなる。特に、新築マンションなどで、徐々に入居者数が増える場合などには、入居者数が少ないときに設定された目標圧力制御カーブを用いると入居者数が増えたときに給水量が不足するおそれがある。また、初めから入居者数が増えた場合に備えて目標圧力制御カーブを設定すると、入居者数が少ないときにエネルギーロスが大きくなってしまう。
【0018】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、推定末端圧一定制御において運転状況に応じた最適な目標圧力制御カーブを自動的に決定することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のポンプ装置は、液体を移送するポンプと、ポンプを駆動するモータと、を備える。また、ポンプ装置は、ポンプの吐出側圧力が目標圧力制御カーブ上の目標圧力になるようにモータを制御する制御部を備える。そして、制御部は、第1所定時間における目標圧力の平均値が目標圧力制御カーブ上の所定の圧力閾値よりも小さいときには目標圧力が小さくなるように目標圧力制御カーブを補正する。また、制御部は、第2所定時間におけるモータの回転数の平均値が所定の回転数閾値以上であるときには目標圧力が大きくなるように目標圧力制御カーブを補正する。
かかる構成により、本発明のポンプ装置は、ポンプ装置の運転状況に応じた最適な目標圧力制御カーブを自動的に決定することができる。
【0020】
また、所定の回転数閾値は、モータの定格回転数であってもよい。
こうすれば、第2所定時間にわたってモータが高回転数で駆動されているときに、目標圧力を大きくすることができる。
【0021】
また、所定の圧力閾値は、目標圧力制御カーブ上の目標圧力における中央値であってもよい。
こうすれば、第1所定時間においてモータが目標圧力制御カーブ上の目標圧力の中央値よりも低圧側で頻繁に駆動されるときに、目標圧力を小さくすることができる。
【0022】
また、制御部は、目標圧力の平均値が目標圧力制御カーブ上の所定の圧力閾値よりも小さい時には目標圧力が第1圧力だけ小さくなるように目標圧力制御カーブを補正してもよい。そして、回転数の平均値が所定の回転数閾値以上であるときには目標圧力が第1圧力よりも大きい第2圧力だけ大きくなるように目標圧力制御カーブを補正してもよい。
こうすれば、ポンプの吐出側圧力が不足するのを抑制することができる。
【0023】
本発明の遠隔監視装置は、液体を移送するポンプと、ポンプを駆動するモータと、ポンプの吐出側圧力が目標圧力制御カーブ上の目標圧力になるようにモータを制御する制御部と、を備えるポンプ装置と通信を行う。遠隔監視装置は、モータの回転数を受信する回転数受信部と、ポンプの目標圧力を受信する圧力受信部と、目標圧力制御カーブを補正する指令を制御部に送信する補正指令送信部と、を備える。補正指令送信部は、第1所定時間における受信される目標圧力の平均値が目標圧力制御カーブ上の所定の圧力閾値よりも小さいときには目標圧力が小さくなるように目標圧力制御カーブを補正する指令を制御部に送信する。また、補正指令送信部は、第2所定時間における受信されるモータの回転数の平均値が所定の回転数閾値以上であるときには目標圧力が大きくなるように目標圧力制御カーブを補正する指令を制御部に送信する。
かかる構成により、本発明の遠隔監視装置は、ポンプ装置の運転状況に応じた最適な目標圧力制御カーブを遠隔操作で自動的に決定することができる。
【0024】
本発明のポンプ装置の制御方法は、液体を移送するポンプと、ポンプを駆動するモータと、を備え、ポンプの吐出側圧力が目標圧力制御カーブ上の目標圧力になるようにモータが制御されるポンプ装置の制御方法である。このポンプ装置の制御方法では、モータの回転数を取得し、ポンプの目標圧力を取得する。そして、ポンプ装置の制御方法では、第1所定時間における取得した目標圧力の平均値が目標圧力制御カーブ上の所定の圧力閾値よりも小さいときには目標圧力が小さくなるように目標圧力制御カーブを補正する。また、ポンプ装置の制御方法では、第2所定時間における取得した回転数の平均値が所定の回転数閾値以上であるときには目標圧力が大きくなるように目標圧力制御カーブを補正する。
かかる構成により、本発明のポンプ装置の制御方法は、ポンプ装置の運転状況に応じた最適な目標圧力制御カーブを自動的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一般的な給水装置を示す模式図である。
図2】推定末端圧力一定制御の一例を説明するためのポンプの運転特性曲線図である。
図3】本発明の一実施形態に係るポンプ装置の一例である給水装置を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る推定末端圧力一定制御の一例を説明するためのポンプの運転特性曲線図である。
図5】制御カーブ設定処理の一例を示すフローチャートである。
図6】目標圧力制御カーブを低圧力側に補正する一例を示すグラフである。
図7】目標圧力制御カーブを低圧力側に補正する他の一例を示すグラフである。
図8】吐出側圧力の時間変化の一例を示すグラフである。
図9】ポンプの目標圧力の時間変化の他の一例を示すグラフである。
図10】本発明の一実施形態に係るポンプ装置と遠隔監視装置との一例を示す模式図である。
図11】本発明の一実施形態に係るポンプ装置と遠隔監視装置との他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0027】
(第1実施形態)
図3は本発明の一実施形態に係るポンプ装置の一例である給水装置を示す模式図である。図3に示すように、給水装置1の制御部40は、記憶部47と、演算部48と、I/O部50と、設定部46と、表示部49と、を備えている。設定部46及び表示部49は、給水装置1の運転パネル51に備えられている。なお、制御部40以外の構成については、図1に示す従来の給水装置100の構成とほぼ同様である。
【0028】
設定部46は、外部操作により、ポンプ2の吐出流量Qと吐出側圧力Pの関係を示す目標圧力制御カーブ等の各種設定値を設定するのに使用される。設定部46において設定された各種設定値は、記憶部47に記憶される。一例として、ユーザーは、設定部46を介して、PB、PA、NMAX、P05、過少水量時の停止圧力Pd2、始動圧力Pd1、及び、その他制御に必要な情報を入力できるようになっている。
【0029】
表示部49は、ヒューマンインターフェースとして機能し、記憶部47に格納されている設定値等の各種データや、現在のポンプ2の運転状況(運転状態)、例えばポンプ2の運転または停止、運転周波数、電流、吐出側圧力、流入圧力(直結給水の場合)、受水槽警報等を表示する。
【0030】
記憶部47としては、RAM、ROM等のメモリが使用される。記憶部47には、図5の制御フローチャートで示す制御プログラムや各種データ、例えば演算部48における演算結果のデータ(PB、運転時間、積算値等)、圧力値(吐出側圧力、流入圧力)、設定部46を通じて入力されたデータ、及びI/O部50を通じて入力される、またはI/O部50を通じて出力されるデータ等が格納される。
【0031】
I/O部50としては、ポート等が使用される。I/O部50は、圧力センサ26の出力値、及び、フロースイッチ24の信号を受け入れて演算部48に送る。また、本実施形態では、モータ3の回転数Nmを検出する回転数センサ20aがインバータ20に備えられている。I/O部50は、インバータ20を介して回転数センサ20aの検出値(モータ3の回転数Nm)を受け入れて演算部48に送る。ただし、回転数センサ20aは、インバータ20に設けられるものに限定されない。また、回転数センサレスにて回転数制御を行うインバータ20を使用する場合には、回転数センサ20aは存在せず仮想的なものとする。I/O部50は、通信における信号の入出力も行う。
【0032】
演算部48としては、CPUが使用される。演算部48は、記憶部47に格納されているプログラム及び各種データ、並びにI/O部50から入力される信号に基づいて、PA,PBの決定、時間の計測(運転時間、停止時間)、積算の演算(積算値)、通信データの処理、目標圧力の演算、周波数指令値(目標回転数)の演算、目標圧力制御カーブの補正等を行う。演算部48からの出力は、I/O部50に入力される。
【0033】
また、I/O部50とインバータ20は、RS422,232C,485等の通信手段
により互いに接続される。I/O部50からインバータ20へは、各種設定値や周波数指令値、発停信号(運転・停止信号)などの制御信号が送られ、インバータ20からI/O部50へは、実際の周波数値や電流値等の運転状況(運転状態)が逐次送られる。
【0034】
なお、I/O部50とインバータ20との間で送受信される制御信号としては、アナログ信号および/またはデジタル信号を用いることができる。例えば、回転周波数等にはアナログ信号を用い、運転停止指令等にはデジタル信号を用いることができる。
【0035】
図4は、本発明の一実施形態に係る推定末端圧力一定制御の一例を説明するためのポンプの運転特性曲線図である。特に記載がない限り図2と同じ記号を用いて説明を省略する。まず、PAとPBは実測することが困難なため、給水装置1を設置時に建物の高さと戸数等による給水量の推測値によりPAとPBが設定される。
【0036】
図4に示すPd1は、ポンプ2を始動させるための閾値である始動圧力である。ここでは、一例として、始動圧力Pd1は、PAから3m(メートル)を減じた値(PA−3m)に設定されている。
【0037】
モータ3及びポンプ2が停止している状態で水が使用されると、吐出側圧力Pmが低下する。そして、圧力センサ26により検出される吐出側圧力Pmが予め設定された始動圧力Pd1以下に低下すると、制御部40は、モータ3を始動してポンプ2を始動する。
【0038】
制御部40は、図4の右図に示すように目標圧力制御カーブCと現在の回転数Nmに基づいて目標圧力PNを設定し、インバータ20を介してモータ3(ポンプ2)の回転数(回転周波数)を可変速制御する。すなわち、制御部40は、インバータ20を制御して所定の交流電圧もしくは直流電圧をモータ3に印加し、モータ3を増減速させる。モータ3の回転が高速になるのに伴って、ポンプ2の吐出量が増大し、吐出側圧力Pmが増加する。制御部40は、吐出側圧力Pmが目標圧力PNに一致するように、ポンプ2の回転数を制御する。なお、ポンプ2の駆動にあたっては、例えば、パルス幅変調(PWM)やパルス振幅変調(PAM)により交流電圧を無段階に制御することにより、効率良く高速でポンプ2を運転することができる。
【0039】
ポンプ2の運転中に、水の使用量が少なくなり、水量が少なくなってフロースイッチ24が動作すると、ポンプ2の運転が停止される。このポンプ2の停止にあたっては、一時的にポンプ2(モータ3)の運転速度を上げて吐出側圧力Pmを所定の停止圧力Pd2まで上げることによって、圧力タンク28内に十分な水を蓄圧(蓄圧運転)する。最終的には、圧力タンク28内の水が停止圧力Pd2に昇圧された状態でモータ3が停止される。
【0040】
なお、ポンプ2の始動開始後一定の時間においては、フロースイッチ24からの信号をキャンセルするようにしてもよい。このようにすることで、給水設備の諸条件により、ポンプ2が始動してからしばらくの間は水が流れないような場合であっても、過少水量の検出によってポンプ2が停止されることを防止することができる。また、ポンプ2の吐出側圧力Pmが所定の値よりも低い場合には、フロースイッチ24から信号が送られてもポンプ2の停止処理を行わないように制御部40をプログラムしてもよいこのようにすることで、ポンプ2の停止処理およびそれに続くポンプ2の起動処理の頻度を減らし、装置の耐久性の向上および長寿命化を図ることができる。
【0041】
制御部40は、記憶部46に記憶されたPAおよびPBに基づいて停止圧力Pd2を演算できるようになっている。例えば、停止圧力Pd2は、PA、または、PB+3mとなるように演算される。また、制御部40は、ポンプ2の始動圧力Pd1も演算できるようになっており、例えば、PAとPBとの差が3m以内ならば始動圧力Pd1はPA−3m
となるように演算される。
【0042】
また、入力されたPAからPBを演算してもよい。例えば、給水末端の最高位置がビルの5階である場合には、PAを14mとし、PAから約15%低い12mをPBとしてもよい。このように、PBをPAよりも約15%低く設定するのは、配管抵抗分がおよそ15%程度と見積もられるからである。
【0043】
例えば、上述した制御部40の設定部46を介してPAと割合D%とを入力し、PBをPB=PA−(PA×D%)により求めてもよい。あるいは、圧力PAと差圧PDとを入力し、PBをPB=PA−PDにより求めてもよい。
【0044】
制御部40は、ポンプ2の運転状態に基づいて目標圧力制御カーブを補正する。図5は、制御部により実行される制御カーブ設定処理の一例を示すフローチャートである。なお、図5のステップS110以降は推定末端圧一定制御が行われている場合にのみ実行し、ポンプ停止中および小水量停止時の蓄圧運転時には実行されない。
【0045】
制御部40の電源が起動すると、制御部40は、まず、初期の目標圧力制御カーブCを設定する(ステップS100)。この初期の目標圧力制御カーブCは、PAとPBとNMAX、NMINにより決定される目標圧力制御カーブCであり、補正の基準となるものである。初期の目標圧力制御カーブCの設定は、例えば、工場出荷時にポンプ性能であるNMAXと締切圧力P05を記憶部47に記憶し、給水装置1設置時にユーザーが設定部46にPA,PBを入力して記憶部47に記憶されたデータに基づいて設定することができる。また、現在利用されている目標圧力制御カーブが記憶部47に記憶されている場合には、記憶されている目標圧力制御カーブを用いることができる。
【0046】
続いて、制御部40は、ポンプ2が起動して推定末端圧一定制御が開始されると初期処理として回転数積算値Snと圧力積算値Spとを値0にリセットし(ステップS110)、計時値taの計時をリセットスタートする(ステップS120)。計時を開始すると、制御部40は、回転数センサ20aからのモータ3の回転数Nmと、推定末端圧制御にて演算した目標圧力PNと、を取得する(ステップS130)。制御部40は、取得した回転数Nmを回転数積算値Snに積算するとともに、取得した目標圧力PNを圧力積算値Spに積算する(ステップS140)。そして、制御部40は、計時値taが参照値tr1以上になるまで(ステップS150)、ステップS130,S140の処理を繰り返し実行する。つまり、制御部40は、所定時間tr1の間、モータ3の回転数Nmと目標圧力PNとを積算するのである。
【0047】
計時値taが参照値tr1以上になると、制御部40は、回転数積算値Snと圧力積算値Spとを、ステップS130〜S150の繰り返し回数K1で除して、平均回転数Mnと平均目標圧力Mpとを算出する(ステップS160)。
【0048】
続いて、制御部40は、平均回転数Mnを回転数閾値Nr1と比較する(ステップS170)。ここで、回転数閾値Nr1は、本実施形態では、回転数Nmaxとした。このステップS170の処理は、目標圧力制御カーブC上の最大圧力の運転ポイント近傍でモータ3が駆動されていたか否かを判定するものである。ただし、回転数閾値Nr1は、回転数Nmaxから所定のマージンを減じて設定してもよい。
【0049】
平均回転数Mnが回転数閾値Nr1未満であるときには(ステップS170:No)、制御部40は、モータ3が頻繁に高出力の運転ポイントで駆動されてはいないと判断する。この場合には、続いて制御部40は、平均圧力Mpを圧力閾値Psと比較する(ステップS190)。本実施形態では、圧力閾値Psは、目標圧力制御カーブのPAとPBの中
央値とした。このステップS190の処理は、目標圧力制御カーブ上の低出力の運転ポイントでモータ3が駆動されていたか否かを判定するものである。ただし、ステップS190の処理では、平均圧力Mpを目標圧力制御カーブ上の圧力閾値と比較するものであればよく、PAとPBの中央値に限定されない。
【0050】
制御部40は、平均回転数Mnが回転数閾値Nr1未満で平均圧力Mpが圧力閾値Ps以上であるときには(ステップS170:No,ステップS190:No)、現在の目標圧力制御カーブによってモータ3は好ましい運転ポイントで駆動されていると判断する。この場合には、目標圧力制御カーブを補正することなく、ステップS110の処理に戻る。
【0051】
制御部40は、平均回転数Mnが回転数閾値Nr1未満で平均圧力Mpが圧力閾値Ps未満であるときには(ステップS170:No,ステップS190:Yes)、現在の目標圧力制御カーブでは、低出力の運転ポイントだけでモータ3が駆動されていると判断する。この場合には、制御部40は、現在の目標圧力制御カーブを低圧側にシフトすることができると判断し、目標圧力制御カーブを低圧力側に補正して(ステップS200)、ステップS110の処理に戻る。
【0052】
一方、制御部40は、平均回転数Mnが回転数閾値Nr1以上であるときには(ステップS170:Yes)、現在の目標圧力制御カーブによって、目標圧力制御カーブ上の最大圧力の運転ポイント近傍でモータ3が駆動されていると判断する。この場合には、制御部40は、現在の目標圧力制御カーブでは、給水設備への給水が不足している可能性があると判断し、目標圧力制御カーブを高圧力側に補正して(ステップS180)、ステップS110の処理に戻る。ここで、制御部40は、目標圧力制御カーブを高圧力側に補正するときには、低圧力側に補正するときよりも大きく補正することが好ましい。
【0053】
以上説明した制御カーブ設定処理では、ステップS110以下の処理が繰り返し実行されて、目標圧力制御カーブが補正される。しかし、こうした例に限定されず、予め決められた回数だけステップS110以下の処理を実行したときには、制御部40は、制御カーブ設定処理を終了するものとしてもよい。また、目標圧力制御カーブが補正されないときには、現在の目標圧力制御カーブが適したものであると判断して、制御部40は、制御カーブ設定処理を終了するものとしてもよい。制御部40は、制御カーブ設定処理を終了したときには、予め定められたタイミング(例えば、数日毎など)で制御カーブ設定処理を再度実行してもよいし、外部からの指令に基づいて制御カーブ設定処理を再度実行してもよい。また、設定する制御カーブはステップS100にて設定した初期の目標圧力制御カーブCを基準とした上下限値を設けてもよい。
【0054】
また、上記した制御カーブ設定処理では、モータ3の回転数Nmと目標圧力PNとを同一の時間にわたって積算するものとした。しかし、回転数Nmの積算時間が目標圧力PNの積算時間より長くてもよいし短くてもよい。
【0055】
また、回転数Nmはインバータ20からのフィードバック信号を用いたが、制御部40からインバータ20への指令回転数(目標回転数)を用いても良い。
【0056】
図6は、制御部によって目標圧力制御カーブを低圧力側に補正する一例を示すグラフである。図6に示す例では、制御部40は、現在の目標圧力制御カーブCのPAとPBを所定値ΔPだけ圧力が低くなるように(低揚程側に)平行移動させることにより、新たな目標圧力制御カーブC’を決定している。これにより、モータ3(ポンプ2)は吐出し流量QNに対して、低い回転数Nm’で運転される。
【0057】
図7は、制御部によって目標圧力制御カーブを低圧力側に補正する他の一例を示すグラフである。図7に示す例では、制御部40は、PBから所定値ΔPを引くことによって新たなPB’を算出している。そして、図7の座標系において吐出し流量0とPB’とから特定される点と、最大流量QMAXと対応する圧力PAとから特定される点を、2次曲線で結ぶことにより、新たな管路抵抗曲線R’を決定している。このような補正の結果、現在の目標圧力制御カーブCのほぼ全体が低揚程側に移動(シフト)する。この場合にも、モータ3(ポンプ2)は吐出し流量QNに対して、低い回転数Nm’で運転される。また、PBに代えて、PAから所定値ΔPを引くことによって新たなPA’を算出し、新たな管路抵抗曲線R’を決定してもよい。
【0058】
低出力の運転ポイントだけでモータ3が駆動されているということは、管路損失により水量を調整している可能性が高く、ポンプ2の回転数を下げても十分な給水動作を達成できる可能性が高いことを示している。したがって、現在の目標圧力制御カーブCを低揚程側に補正することによって省エネルギー運転を実現することができる。
【0059】
ポンプ2の吐出し圧力の急激な変動を避けるために、現在の目標圧力制御カーブCから新たな目標圧力制御カーブC’に徐々に切り替えることが好ましい。例えば、所定の推移時間(例えば10秒)に亘って現在の目標圧力制御カーブCから新たな目標圧力制御カーブC’にゆっくりと切り替えてもよく、または所定の変化率で現在の目標圧力制御カーブCから新たな目標圧力制御カーブC’にゆっくりと切り替えてもよい。
【0060】
目標圧力制御カーブを高圧力側に補正するときについても、低圧力側に補正するときと同様である。つまり、制御部40は、現在の目標圧力制御カーブCのPAとPBを所定値ΔPだけ高くなるように平行移動させて新たな目標圧力制御カーブC’を決定してもよい。また、PAとPBの一方に所定値ΔPを加えて、新たな目標圧力制御カーブC’を決定してもよい。
【0061】
図8は、吐出側圧力の時間変化の一例を示すグラフである。図8に示す例では、時刻t1から時刻t2の間に吐出側圧力Pmの平均値Mpが算出され、平均圧力Mpが圧力閾値Ps未満であるため、目標圧力制御カーブが低揚程側に補正されている。これにより、給水装置1の省エネルギー化が図られる。
【0062】
図9は、ポンプの目標圧力の時間変化の他の一例を示すグラフである。図9に示す例では、時刻t3から時刻t4の間で目標圧力PNがPA近傍となっている。このときには、モータ3の回転数Nmは、最大回転数Nmax近傍となる。このため、図9に示す例では、時刻t4で目標圧力制御カーブが高揚程側に補正されている。この時、回転数NmがNMAXならば、目標圧力PNはPA’となる。ここで、本実施形態では、図9に示すように、目標圧力制御カーブを高揚程側に補正するときには、目標圧力制御カーブを低揚程側に補正するときよりも、大きく補正している。これにより、給水装置1からの給水が不足するのをより確実に抑制することができる。
【0063】
図8及び図9に示すように、本実施形態の給水装置1では、ポンプ2が運転されているときに、ポンプ2の運転状況に応じた最適な目標圧力制御カーブを自動的に決定することができる。これにより、過剰な管路抵抗分の昇圧を少なくし給水装置1の省エネルギー化を図ることができるとともに、給水装置1からの給水が不足するのを抑制することができる。
【0064】
(第2実施形態)
図10は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置と遠隔監視装置との一例を示す模式図である。本実施形態の遠隔監視装置60は、公衆回線90を通じて給水装置1と通信を行
う。公衆回線90は、アナログ電話回線網、ISDN回線網、光ファイバ網、無線LAN、PHS回線網、携帯電話回線網、インターネット等の、任意の通信手段である。公衆回線90は、これらの任意の複数の通信手段の組合せであってもよい。ここで、図10に示す構成のうち給水装置1は、外部と通信を行うための通信部52を制御部40が備える点を除いて、図3に示す第1実施形態の給水装置1と同様である。なお、公衆回線90は、有線に限られず、無線であってもよい。また、公衆回線90に代えて、又は加えて、給水装置1と公衆回線90とを接続する専用回線が用いられてもよい。
【0065】
遠隔監視装置60は、図10に示すように、記憶部67と、演算部68と、I/O部70と、設定部66と、表示部69と、通信部72を備えている。設定部66及び表示部69は、遠隔監視装置60の運転パネル71に備えられている。なお、遠隔監視装置60の各機能は、2以上の装置に分散して配置されていてもよい。
【0066】
遠隔監視装置60は、通信部72から給水装置1の制御部40に指令データを送信することができるように構成されている。制御部40の通信部52は、遠隔監視装置60からの命令データを受け取り、この命令データをTCP/IPネットワークデータから演算部48が認識可能なデータに変換する。制御部40は、指令データに従ってポンプ2の運転を制御し、あるいは要求された運転情報を遠隔監視装置60に送信する。制御部40から遠隔監視装置60へのデータの送信は、常時行われるものとしてもよいし、所定の期間毎(例えば、数日など)に行われるものとしてもよいし、遠隔監視装置60から要求された場合に行われるものとしてもよい。
【0067】
こうした構成により、遠隔監視装置60は、給水装置1のモータ3の回転数Nmおよび目標圧力PNを取得することができる。なお、遠隔監視装置60は、回転数Nmと目標圧力PN以外のデータを給水装置1から受信してもよい。例えば、遠隔監視装置60は、給水装置1の現在の目標圧力制御カーブCを受信してもよいし、記憶部47に格納されているPA,PB等の設定値の各種データを受信してもよい。さらに、遠隔監視装置60は、給水装置1の異常情報を受信してもよい。
【0068】
また、遠隔監視装置60は、給水装置1のモータ3の回転数Nmおよび目標圧力PNを取得し、取得したデータに基づいて目標圧力制御カーブCを補正するように給水装置1の制御部40に指令を送信することができる。この場合には、遠隔監視装置60は、例えば上記の図5に示す制御カーブ設定処理を実行し、目標圧力制御カーブCを補正するように給水装置1の制御部40に指令を送信する。制御部40への指令の送信は、単にPA,PBを高揚程側または低揚程側に補正することを指令として送信してもよい。また、遠隔監視装置60は、新たな目標圧力制御 カーブC’を決定して、目標圧力制御 カーブC’を制御部40に送信してもよい。
【0069】
本実施形態によれば、給水装置1の運転状況に応じた最適な目標圧力制御カーブを遠隔監視装置60が遠隔操作で自動的に決定することができる。特に、既に給水装置1の運転状況などを遠隔地で取得して監視する装置がある場合には、その遠隔監視装置60に例えば図5に示す制御カーブ設定処理を実行させることにより、既存の設備を利用して給水装置1の目標圧力制御カーブを補正することができる。また、この場合には、複数の給水装置を監視する遠隔監視装置60に目標圧力制御カーブを補正する処理を行わせることによって、既存の給水装置1のそれぞれに目標圧力制御カーブを補正する処理を行わせる場合に比して、処理を導入する対象を少なくすることができる。
【0070】
また、図10に示すように、遠隔監視装置60は、他の給水装置1Aとも通信を行って複数の給水装置1,1Aのデータを一括に蓄積して管理することができる。これにより、地域、時間(1日における時間帯、季節など)、建物の構造(世帯数、階数、向きなど)
毎に、給水装置のデータを参照することもできる。これらのデータを基に回転数閾値Nr1や圧力閾値Ps、目標圧力制御カーブCの補正値などの値を決定することもできる。
【0071】
なお、本実施形態では、遠隔監視装置60のうち、給水装置1と通信してモータ3の回転数Nmおよび目標圧力PNを受信する通信部72が「回転数受信部」および「圧力受信部」に相当する。また、回転数Nmおよび目標圧力PNに基づいて目標圧力制御カーブCを補正する指令を出力する演算部48など、及び、演算部48の指令を給水装置1の制御部40に送信する通信部72が「補正指令送信部」に相当する。
【0072】
(第3実施形態)
図11は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置と遠隔監視装置との他の一例を示す模式図である。本実施形態の構成は、給水装置1の制御部40が通信部52を備えない代わりに、給水装置1と遠隔監視装置60との通信を仲介する通信装置80が設けられている点を除いて、図10に示す構成と同様である。
【0073】
通信装置80は、給水装置1と同じ敷地内に設置され、給水装置1と遠隔監視装置60との通信を仲介する。通信装置80は、制御部40のI/O部50と信号をやりとりする。通信装置80とI/O部50とは、例えばRS422,232C,485等の有線による通信手段や赤外線通信等の無線通信手段により互いに接続される。通信装置80は、通信部とプロトコル変換器とを備えている(図示せず)。通信装置80の通信部は、制御部40から給水装置1の運転情報および故障情報を一定間隔(例えば、250ms毎)で取得するように構成されている。通信装置80のプロトコル変換器は、制御部40から取得した各種情報(データ)をTCP/IPネットワークデータに変換するためのものである。このプロトコル変換器により、NTT回線またはインターネットなどの公衆回線90を通じて、遠隔監視装置60と制御部40との間のデータの送受信がなされる。
【0074】
本実施形態においても、給水装置1の運転状況に応じた最適な目標圧力制御カーブを遠隔監視装置60が自動的に決定して、通信装置80を介して給水装置1の目標圧力制御カーブの補正を行うことができる。つまり、第2実施形態の構成と同様の効果を奏することができる。また、公衆回線90の技術革新により通信装置80と公衆回線90間のプロトコル等の変更を余儀なくされることがある。その場合でも、通信装置80を給水装置1と分けることにより、ライフラインである給水を止めることなく、通信装置80のみを変更すればよい。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1,1A,100 給水装置
2 ポンプ
3 モータ
8 バイパス管
20 インバータ
20a 回転数センサ
21 圧力センサ
22,23 逆止弁
24 フロースイッチ
25 逆流防止装置
26 圧力センサ
28 圧力タンク
35,40 制御部
46 設定部
47 記憶部
48 演算部
49 表示部
50 I/O部
51 運転パネル
52 通信部
60 遠隔監視装置
66 設定部
67 記憶部
68 演算部
69 表示部
70 I/O部
71 運転パネル
72 通信部
80 通信装置
90 公衆回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11