特許第6469811号(P6469811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469811腐食壊食防止構造およびこれを備えるポンプ、並びにポンプの製造方法および補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469811
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】腐食壊食防止構造およびこれを備えるポンプ、並びにポンプの製造方法および補修方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 7/06 20060101AFI20190204BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20190204BHJP
   F04D 29/08 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   F04D7/06 D
   F04D29/42 G
   F04D29/08 B
   F04D29/42 F
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-201931(P2017-201931)
(22)【出願日】2017年10月18日
(62)【分割の表示】特願2015-523961(P2015-523961)の分割
【原出願日】2014年6月10日
(65)【公開番号】特開2018-40363(P2018-40363A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年10月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-135228(P2013-135228)
(32)【優先日】2013年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
(72)【発明者】
【氏名】八鍬 浩
(72)【発明者】
【氏名】早房 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】中本 浩章
(72)【発明者】
【氏名】菊田 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】福田 清治
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−083393(JP,U)
【文献】 特開平09−329081(JP,A)
【文献】 特開2002−257082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 7/06
F04D 29/08
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を送液するポンプであって、
ケーシングとインペラとの対向部位を備えた腐食壊食防止構造を有し、
前記腐食壊食防止構造は、
前記ケーシングと、
当該ケーシングに設置されると共に前記インペラに対向するケーシングリングと、
前記ケーシングと前記ケーシングリングとの間を高圧側から低圧側に流体が通過せず且つ前記ケーシングと前記ケーシングリングとが互いに接触しないように、前記ケーシングと前記ケーシングリングとの間に設けられる電気的絶縁材とを備え、
前記電気的絶縁材は、シリコン系、PTFE系材料の少なくとも1つを含み、
前記シリコン系又はPTFE系材料を含む前記電気的絶縁材は、フィルム状成形品である、ポンプ。
【請求項2】
前記腐食壊食防止構造の断面は、前記電気的絶縁材の接触する前記ケーシングと前記ケーシングリングの形状が、前記ケーシング内から外に向けた矩形波状である、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
液体を送液するポンプであって、
ケーシングとインペラとの対向部位を備えた腐食壊食防止構造を有し、
前記腐食壊食防止構造は、
前記ケーシングと、
当該ケーシングに設置されると共に前記インペラに対向するケーシングリングと、
前記ケーシングと前記ケーシングリングとの間を高圧側から低圧側に流体が通過せず且つ前記ケーシングと前記ケーシングリングとが互いに接触しないように、前記ケーシングと前記ケーシングリングとの間に設けられる電気的絶縁材とを備え、
前記電気的絶縁材と前記ケーシングリングの間には、シール用のOリングが配置されている、ポンプ。
【請求項4】
前記電気的絶縁材は、シリコン系又はPTFE系材料の少なくとも1つを含む、請求項に記載のポンプ
【請求項5】
前記腐食壊食防止構造の断面は、前記電気的絶縁材の接触する前記ケーシングと前記ケーシングリングの形状が、前記ケーシング内から外に向けた矩形波状である、請求項に記載のポンプ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ケーシングリング(ライナーリング)を用いたポンプに係り、特に、両吸込遠心ポンプ、遠心多段ポンプ、吸込ボリュートを有するポンプなどのように、回転軸に関して半径方向内向き流れがポンプ羽根車の流入部に流入する形式のポンプに深く関連し、ケーシングリング(ライナーリング)における腐食壊食防止構造およびこれを備えるポンプに関する。更には、当該ポンプの製造方法及び補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプのケーシングリング(ライナーリング)とインペラリング(ウェアリングリング)は、ポンプ羽根車の高圧部と低圧部の境界に存在する。ケーシングリングはケーシングに固定されて回転せず、一方インペラリングは回転軸の回転に従い回転する。このため、基本的にケーシングリングとインペラリングは接触しないように設計され、互いの間にわずかな隙間を持たせている。
【0003】
例えば、図10は、半径方向内向き流れがインペラ59の注入部59aに流入する、一般的な形式のポンプである。ポンプの回転軸57には、図示しない電動モータなどの原動機が係合されている。この原動機の駆動力によりインペラ59が回転するようになっている。吸込側流路61を流れる液体は、回転軸57の半径方向外側から半径方向内向きに流れ込んで、図中矢印Cのように羽根車の注入部59aに流入する。
【0004】
吸込側流路61からインペラ59に流入した液体は、インペラ59の回転エネルギーを受けて、遠心力により圧力エネルギーと運動エネルギーが高められた液体となる。この圧力エネルギーを保持するために、吸込側流路61と吐出側流路63を隔てるように、ケーシング53の一部が隔壁65として形成されている。
【0005】
このケーシング53の隔壁65の端部であって、インペラ59と対向(場合によっては摺動)する部位に、ケーシングリング69が設けられる。一方、インペラリング60がインペラ59に備えられている。
【0006】
また別の例として、図11は両吸込渦巻きポンプ101の例を示す断面図である。この図11に示す両吸込渦巻きポンプ101は、上ケーシング103と、下ケーシング105と、これら両ケーシング103,105の境界領域に設置される回転軸107と、当該回転軸107上に設置されるインペラ109とを備えている。そして両ケーシング103,105内には、インペラ109を介して吸込側流路111と吐出側流路113とが形成されている。
【0007】
インペラ109は、図示しない電動モータなどの原動機が係合された回転軸107の回転に伴い回転する。この回転によりインペラ109は、吐出側流路113を中心として両側の吸込側流路111から液体を吸い込む。このため、吸込側流路111では、半径方向内向き流れがインペラ109の注入部109aに流入する。インペラ109の回転エネルギーは遠心力として液体に対して与えられ、液体自体の圧力エネルギーと運動エネルギーに変換されている。この圧力を保持するため、吸込側流路111と吐出側流路113を隔てるように、ケーシング103,105の一部が隔壁115として形成されている。
【0008】
このケーシング103,105の隔壁115の端部であって、インペラ109と摺動する部位は、図11における領域Aの拡大図である図12に詳述されている。この図12
示されるように、前述した位置関係でケーシングリング119がケーシング105の一部である隔壁115に備えられ、インペラリング110がインペラ109に備えられている。尚、領域Aと同じ構造が、図中の回転軸に関して対称の部分と、中心線Lに関して対称な部分にもあることは勿論である。
【0009】
以上、例示したポンプ101において、ケーシングリング119とインペラリング110の対向部位では、両者の間の隙間を通る漏れ流れが高圧側から低圧側に向かって発生する。この隙間は非常に小さく設計されるので、両者が接触することは避けられない。そこで、ケーシングリング119は、軸受に要求されるほどの性能が求められる訳ではないが、ポンプ101が送液する液体によって潤滑されれば、接触しても問題の無いような材料が選ばれる。このような理由で、ケーシングリング119の材料を選ぶことから、多くの場合、ケーシング105とケーシングリング119は異種金属材料の組み合わせとなる。
【0010】
ところで、二種の異なる金属が電気的に接した状態で電解質溶液に接触したとき、単独の場合と比較して腐食が助長される。これは、金属間の電位差によりイオン化傾向の強い金属から弱い金属に電子が移動し、電荷を失った金属原子がイオンとして溶液中に溶け出すことによる腐食現象である。例えば、ポンプの材料として広く用いられる鋳鉄は、単独でも溶存酸素を多く含む水にさらされた場合、1年で0.1から0.2mm程度の速度で腐食が進む。しかし、鋳鉄が、ステンレス鋼などの鋳鉄よりも腐食電位が高い(貴な)金属と電気的に接した状態では、腐食がさらに加速され、場合によっては鋳鉄が単独で存在する場合の2倍以上の腐食速度になることもある。このため、長期間にわたってポンプの運転をしたケーシングとケーシングリング間にも、腐食によって隙間が生じ拡大する場合がある。
【0011】
従来のポンプにおいては、ケーシングリングとケーシング間は、塗装の無い金属加工面同士で直接接触する場合が多かった。例えば、ケーシングが鋳鉄で、ケーシングリングがステンレス鋳鋼の組み合わせを選択した場合、仮に単独の鋳鉄の腐食速度を0.1mm/yとし、ステンレスとの接触による助長率を2倍とすると、10年間で0.1×2×10=2mm程度の隙間がケーシングとケーシングリング間に形成される場合もある。前述のように、ケーシングリングはポンプ内の高圧部と低圧部の間に存在する。このため、ケーシングとケーシングリングの間の隙間が拡大して、高圧部と低圧部が連通して流体がその隙間を通過してしまう。その結果、ケーシングリングとインペラリング間の漏れ流れとは別に、新たな漏れ流れが発生することになる。
【0012】
さらに、ポンプの揚程が高い場合、高圧側と低圧側の圧力差が大きくなり、漏れ流れが低圧側に噴出する際にきわめて高速となる。このため、ケーシングリングの周囲にキャビテーションを生じさせてしまう。キャビテーションは金属材料を壊食するため、ケーシングリングとケーシングとが接触する部位も含め、その近傍のケーシング表面に壊食を生じさせる場合がある。
【0013】
特に、ポンプの材料に広く用いられる鋳鉄においては、このような異種金属接触腐食とキャビテーション壊食が重畳された場合の表面の損傷は著しい。このような漏れ流れの増大、およびケーシングの損傷が進展すると、ポンプに要求される性能が満足されなくなる。またポンプケーシングの強度が低下し、より大規模なポンプの破損が生じる可能性も高まる。
【0014】
また、ポンプは低流量時にインペラ部にキャビテーションを伴った「入口逆流」が生じる場合が多い。流量はインペラよりも下流側に設置されるバルブの開閉によって制限されるようになっているからである。この入口逆流現象は、図13に示すように、インペラ59の内部から吸込側流路61側へ流体が再循環する流れが生じることである。この入口逆流も、その発生場所がケーシングリング69に近いため、ケーシングリング69に近い隔
壁65にも接触し、壊食をさらに進展させることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の技術で、このようなケーシングとケーシングリング(ライナーリング)間の腐食と重畳されたキャビテーション壊食による表面の損傷を防止するものは知られていない。このため、本願発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ケーシングとケーシングリングが異種金属材料であっても、互いの材料の間の腐食の発生と進展を防止するものである。また、ケーシングとケーシングリング間に生じる隙間における、漏れ流れによるキャビテーション壊食を防止する構造を提供するものである。さらに、ポンプの低流量時にインペラ内にキャビテーションを伴って生じる「入口逆流」の影響によるケーシングリング近傍のケーシング(隔壁)の壊食を防止する構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題解決にむけた第1の手段は、ケーシングとインペラとの対向部位近傍における壊食防止構造であって、ケーシングと、当該ケーシングに設置されると共に前記インペラに対向するケーシングリングと、前記ケーシングとケーシングリングとの間に設けられる電気的絶縁材とを備えている、壊食防止構造である。このようにすることで、電気的絶縁材により、ケーシングリングとケーシングの間が電気的に絶縁され、ケーシングリングとケーシング間の異種金属接触腐食が生じず、腐食の進展が抑えられる。更に、電気的絶縁材により、ケーシングリングとケーシング間に隙間を、加圧された液体が流通しないようにすることができる。このため、キャビテーションによる壊食および、それらに起因するケーシングリングとケーシング間の漏れ流れの増大が防止される。
【0017】
第2の手段は、前記電気的絶縁材は、エポキシ系材料又はシリコン系材料を含む、手段1に記載の腐食壊食防止構造である。ケーシングとケーシングリングの間に、エポキシ系、シリコン系、PTFE材料の少なくとも1つを含む電気的絶縁材を挟み込むことで、ポンプを長期間にわたって運転した場合に、ポンプの振動や摺動時の衝撃や摩擦熱などがあっても、該電気的絶縁材は、割れたり外れたりせず、密着性を維持する。このため、ケーシングとケーシングリングとの隙間を加圧された液体が流通しないように維持し続けるとともに、ケーシングリングとケーシングの電気的接触、電気的導通も防止できる。
【0018】
第3の手段は、前記ケーシングとケーシンリングの境界面に、シール用のOリングが配置されている、手段1又は2に記載の腐食壊食防止構造である。このようにすると、ポンプを長期間にわたって運転した場合に、ポンプの振動や摺動時の衝撃や摩擦熱などにより、該電気的絶縁材料が割れたり、ケーシングリングやケーシングから剥離したりしても、Oリングによりシール性が維持される。このため、ケーシングリングやケーシングとの隙間を加圧された液体が流通しないように維持し続けるとともに、ケーシングリングとケーシングの電気的接触、電気的導通も防げられる。
【0019】
第4の手段は、前記ケーシングリングの低圧側には、前記インペラとの対向部位からポンプ主軸の半径方向外方に向かって延びる外縁延長部が設けられている、手段1から3の何れか一項に記載の腐食壊食防止構造である。このようにすることで、ケーシングリングが吸込流路の半径外向きにも広がっており、逆流キャビテーションがケーシングに直接当たらず、ケーシングリングによって保護される。
【0020】
第5の手段は、前記外縁延長部の先端部における角度と、当該外縁の先端部に対向する前記インペラの外縁の角度とは、差が10度以内である、手段4に記載の腐食壊食防止構造である。このようにすることで、液体の流れは滑らかになり、段差によって生じる損失
が低減される。
【0021】
第6の手段は、前記ケーシングリングは2つの部材を組み合わせて構成されている、手段1から5の何れか一項に記載の腐食壊食防止構造である。こうすることで、ケーシングと電気的絶縁材が複雑な形状を有していても、それに対応して複雑な形状のケーシングリングを設置することが可能である。また、上ケーシングと下ケーシングとが分離しない形式のポンプにも、容易に複雑な形状のケーシングリングを設置することが可能である。
【0022】
第7の手段は、手段1から6の何れか一項に記載の腐食壊食防止構造と、前記ケーシングによって回転自在に支持されているポンプ主軸と、該ポンプ主軸に装着されたインペラと、前記ケーシング内部に形成される液体流路、とを備えたポンプである。
【0023】
第8の手段は、ケーシングとインペラとを備えるポンプの製造方法であって、前記ケーシング備え、前記ケーシングの所定箇所に電気的絶縁材を設け、前記インペラに対向する所定のケーシングリングを、前記電気絶縁材料を介して前記ケーシングに設置する、ポンプの製造方法である。
【0024】
第9の手段は、ケーシングとインペラとを備えるポンプの補修方法であって、前記ケーシングの所定箇所に電気的絶縁材を設け、前記インペラに対向する所定のケーシングリングを、前記電気絶縁材料を介して前記ケーシングに設置する、ポンプの補修方法である。
【発明の効果】
【0025】
以上のような各手段により、例えば、
1)ケーシングリングとケーシング間の腐食の防止、
2)上記腐食に起因するケーシングリングとケーシング間の漏れ流れの防止、
3)漏れ流れによるキャビテーション壊食の防止、さらに
4)低流量時にポンプ吸込み口近傍に生ずる「入口逆流」のキャビテーションによるポンプケーシングリング近傍の壊食を防止、
をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本願発明の一実施形態に係る腐食壊食防止構造を具備するポンプの全体断面図である。
図2図1の領域Aにおける拡大断面図である。
図3図1の領域Aにおける別の実施形態の拡大断面図である。
図4図1の領域Aにおける、さらに別の実施形態の拡大断面図である。
図5図1の領域Aにおける、さらに別の実施形態の拡大断面図である。
図6図5のB部分の拡大図である。
図7】本願発明の一実施形態とは別の形態のポンプにおける実施形態の拡大断面図である。
図8】本願発明の一実施形態とは別の形態のポンプにおける、別の実施形態の拡大断面図である。
図9】本願発明の一実施形態とは別の形態のポンプにおける、さらに別の実施形態の拡大断面図である。
図10】従来のポンプを示す全体断面図である。
図11】従来のポンプを示す全体断面図である。
図12図10に開示したポンプの領域Aの拡大断面図である。
図13】低流量時にインペラ部にキャビテーションを伴った「入口逆流」の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図面を参照しながら、本願発明の一実施形態について説明する。
【0028】
[全体概要]
図1は、本実施形態に係る両吸込渦巻き型のポンプ1の全体概要を示す断面図である。ポンプ1は、上ケーシング3と、下ケーシング5と、これら両ケーシング3,5の境界領域に設置される回転軸7と、当該回転軸7に設けられるインペラ9とを備えている。そして両ケーシング3,5内には、インペラ9を介して吸込側流路11と吐出側流路13とが形成されている。これら吸込側流路11と吐出側流路13が流体流路となる。
【0029】
[ケーシング]
上述したように、本実施形態のポンプ1は、吐出側流路13を中心として両側から液体を吸い込む形式の両吸込渦巻きポンプである。このため、ケーシング3、5の内部に、吸込側流路11と吐出側流路13を隔てる隔壁15が設けられている。本実施形態の特徴の一つは、このケーシング3,5の隔壁15の端部であって、インペラ9と対向(摺動)する部位の近傍の構造である。その対向部位を、この図においては、領域Aとして示している。
【0030】
[回転軸]
ポンプ1の回転軸7には、図示しない電動モータなどの原動機が係合されている。この原動機の駆動力により、回転軸7に設置されたインペラ9が回転するようになっている。本実施形態のポンプ1では、回転軸7が水平方向に沿って設けられている。このため、インペラ9は回転軸7を横切る垂直面に沿って回転することとなる。ただし、本実施形態における水平方向の回転軸は一例であって、垂直方向やそれ以外の角度方向に沿って設置してもよい。回転軸7は、軸受7aを介して、上ケーシング3と下ケーシング5の間に挟まれている。この軸受7aが設置される部位は、基本的にポンプ内部の吸込側流路11と外部環境との境界となっている。このため、吸込側流路11内の液体が外部に漏れないように、軸受7aにはシール構造(図示略)が設けられている。
【0031】
[インペラ]
インペラ9は、回転軸7の回転に伴い回転し、吐出側流路13を中心として両側の吸込側流路11から液体を吸い込む。インペラ9の流入部9aは回転軸7の近傍に形成されているが、吸込側流路11は上記流入部9aよりも半径方向外側まで形成されている。このため、吸込側流路11では、半径方向内向き流れが、インペラ9の流入部9aに流入する。インペラ9の回転エネルギーは、内部を流れる流体に対して遠心力として付与される。この遠心力によって運動エネルギーが与えられる。これにより、結果的にはインペラ9の回転エネルギーが圧力エネルギーと運動エネルギーに変換されるのである。従って、吐出側流路13の圧力は、相対的に吸込側流路11の圧力より高い圧力となる。この圧力を保持するために、低圧側の吸込側流路11と高圧側の吐出側流路13を隔てるように、ケーシングの一部が隔壁15として設けられているのである。
【0032】
このケーシング3,5の隔壁15の端部であって、インペラ9と対向(摺動)する部位(図1の領域A)では、ケーシングの隔壁15にケーシングリング19が設けられ、インペラ9にインペラリング10が備えられている。この点は、図2から図5に示された拡大図の説明で詳述する。尚、領域Aと同じ構造が、図中の回転軸7に関して対称の部分と、中心線Lに関して対称な部分にもあることは勿論である。
【0033】
[ケーシングリング]
図2に示すように、本実施形態に係るポンプでは、インペラ9とインペラリング10については従来のものとほぼ同様ではある。一方、ケーシング側の構造が従来のポンプと異
なっている。すなわち、ケーシングリング19とケーシングの隔壁15の端部との間に、電気的絶縁材17Aを設けている点が特徴である。本実施形態の電気的絶縁材17Aは半円形状であり、ケーシングリング19と、隔壁15のそれぞれに密着するような状態で充填されている。このように、電気的絶縁材17Aがケーシングリング19と隔壁15に密着しているので、ケーシングリング19と隔壁15との間には隙間が形成されず、漏れ流れが発生せず、また両者の電気的接触も防ぐことができる。
【0034】
電気的絶縁材17Aは、絶縁性フィルム、絶縁性塗料、絶縁性接着剤などの樹脂材料を用いることができる。また、繊維強化プラスティックや粒子強化プラスティックも用いることができる。更には、樹脂材料以外でも、絶縁性のある低融点ガラス、セラミック系接着剤などを用いても良い。しかしながら、長期間に及ぶポンプ運転による振動、衝撃、温度変化などに対して、電気的絶縁性維持、シール性維持、寸法精度の維持という機能を保ち続ける必要がある。このため、それに適した材料として、エポキシ系、シリコン系、あるいはPTFE系の電気的絶縁材料が好ましい。これらの材料は、水中で使用した場合でも水中への成分の流出や吸収がほとんどないので、長期間にわたって使用しても劣化がほとんどない。
【0035】
エポキシ系あるいはシリコン系の電気的絶縁材料が、液状あるいはゲル状の絶縁塗料、絶縁性接着剤である場合は、金属面への付着性(親和性)がよい。このため、電気的絶縁材料をケーシングの隔壁15またはケーシングリング19の少なくともどちらか一方に塗布し、それらの塗布面を相手面に合わせると、ケーシングの隔壁15とケーシングリング19の合わせ面に広がって、両者の間に電気的絶縁材料の膜状の層が形成される。この膜状の層が、本実施形態の電気的絶縁材17Aとなる。この膜状の層は次第に硬化がある程度進行し、固体状になる。固体状の膜状の層は、密着強度、破壊強度ともに高い。このため、ポンプを長期間にわたって運転した場合において、ポンプの振動や摺動時の衝撃や摩擦熱などがあっても、該電気的絶縁材17Aは、割れたり外れたりせず、密着性を維持する。このため、ケーシングの隔壁15とケーシングリング19との間を加圧された流体が流通しないように維持し続けるとともに、ケーシングリング19と隔壁15との電気的接触、電気的導通も防止できる。
【0036】
また、電気的絶縁材料がシリコン系あるいはPTFE系であれば、フィルム状にして隔壁15とケーシングリング19の合わせ面の間に挟みこむことも好ましい。シリコン系(PTFE系)は、硬化しても粘弾性を失わないので、金属面の表面粗さが少なければ金属面に密着する。また、隔壁15とケーシングリング19の合わせ面の形状が標準化されていれば、あらかじめシリコン系フィルムを成型したものを用意することで、隔壁15とケーシングリング19の間に挟みこむ作業も効率的となる。この点で、絶縁塗料、絶縁性接着剤の塗布作業ではおこりがちな塗布量の不均一といったことがない。尚、電気的絶縁材料の充填の厚みは、例えば0.005mmから2mmの範囲が好ましいが、0.05mm以上はフィルム状の方が好ましく、0.05mm未満の場合は絶縁塗料、絶縁性接着剤の塗布が好ましい。
【0037】
なお、電気的絶縁材17Aは、隔壁15およびケーシングリング19との密着性を確保するために、その断面形状が矩形波状となっている。こうすることで、隔壁15やケーシングリング19に衝撃等が加わった場合でも、電気的絶縁材料が隔壁15等から剥離するのが防止される。但し、当該断面形状は一例であって、本発明がこれに限定される訳ではない。
【0038】
図3は、第2の実施形態を示す図である。この実施形態は、前記電気的絶縁材17に加えて、電気的絶縁性のOリングが装着された腐食壊食防止構造である。すなわち、ケーシングリング19の外周面にOリング溝23aが形成され、このOリング溝23aにOリン
グ23bが嵌め込まれている。ポンプを長期間にわたって運転した場合に、ポンプの振動や摺動時の衝撃や摩擦熱などにより、電気的絶縁材料17Bが割れたり、ケーシングリング19やケーシング15から剥離したりすることが考えられる。この場合でも、Oリングによりシール性を維持することができる。このため、ケーシングリング19と隔壁15の間に隙間が形成されたとしても、この隙間を液体が通過しないようにシール性を維持し続けることができる。それと共に、ケーシングリング19とケーシングの隔壁15とが電気的接触をしないように更に補強する。
【0039】
このOリングを用いる実施形態の場合は、Oリングが漏れ流れを防止するようにシール性の維持を担っている。このため、ケーシングリング19と隔壁15との合わせ面の間に挟みこむ電気的絶縁材17Bは、合わせ面との密着性をそれほど要求されない。但し、Oリングを使用する場合、一定以上のシール性を確保するために、Oリング自体が潰れることを前提としている。この場合、Oリングを支点としたOリング前後(図3においては、Oリングの左右)において、ケーシングリング19と隔壁15との当接圧力は均一ではない。このため、ケーシングリング19と隔壁15の合わせ面の間に挟みこむ電気的絶縁材17は、ケーシングリング19と隔壁15が一点でも接触しないようにし、かつ、それらの合わせ面にかかる当接圧力を受け止めるために、0.05mmから10mm程度の厚みとして成型されシリコン系あるいはPTFE系の部品として嵌め込むことも望ましい。
【0040】
図4は、第3の実施形態を示している。この実施形態では、ケーシングリング19の低圧(吸込側流路11)側の外縁が、回転軸の半径方向外側に延びている腐食壊食防止構造を示す。以下、延びている部分を外縁延長部19Aと称する。ケーシングリング19の低圧側の外縁延長部19Aは、ケーシングの隔壁15を広い範囲で覆っている。このようにすることで、ポンプの低流量運転時にインペラ9から吸込側流路11にキャビテーションを伴った入口逆流が生じても、ケーシングリング19が隔壁15を保護するので、壊食の進展を防ぐことができる。
【0041】
外縁延長部19Aの回転軸に関する半径方向外側への延びは、インペラ9の流入部9aの直径の1.5倍程度までの直径で充分である。本実施形態では、外縁延長部19Aと隔壁15との間にも、所定厚さの電気的絶縁材17Cが充填されている。このような外縁延長部19Aを形成することで、ケーシングリング19を壊食に強い金属、例えばステンレス鋳鋼で構成し、ケーシング(隔壁15)をステンレス鋳鋼よりも壊食に弱いが汎用的な金属、例えば鋳鉄で構成しても、キャビテーション壊食から隔壁15を守ることができる。なお、両吸込渦巻遠心ポンプや吸込みボリュートを有するポンプでは、ポンプの回転軸に対して吸込流路が必ずしも軸対称ではなく、非軸対称である場合が多いが、このような場合は、吸込流路と外縁延長部19Aが滑らかに接続するよう、外縁延長部形状を吸込流路形状に合わせて非軸対称に製作するのが望ましい。
【0042】
図5は、第4の実施形態を示している。この実施形態では、ケーシングリング19の低圧側、すなわち吸込側流路11の側の外縁において、近接するインペラ9の流入部9a側に向いたケーシングリング19の外縁の傾きと、インペラ9の流入部9aのケーシングリング19側に向いた外縁の傾きとの差が、約10度以内である腐食壊食防止構造である(図中の領域B)。
【0043】
図6は、図5の領域Bを拡大した図である。図6では、ケーシングリング19の低圧側外縁で、近接するインペラ9の流入部側に向いた外縁の傾き角をα’度とし、インペラ9の流入部のケーシングリング19側に向いた外縁の傾き角をα度としている。ここで、α−α’の絶対値が10度以内となるように角度を設定することで、液体の流れは滑らかになり、段差によって生じる損失が低減される。
【0044】
図7は、半径方向内向き流れがインペラ9の流入部9aに流入する形式のポンプに、本実施形態に係る腐食壊食防止構造を適用した例について、その主要部分を示した図である。当該実施形態の電気的絶縁材17Eは、断面がL字形状となっている。ポンプの回転軸7には、図示しない電動モータなどの原動機が係合されており、この原動機の駆動力によりインペラ9を回転させるようになっている。内部の流路を流れる液体は、サイドカバー14とケーシングの隔壁15の間の吸込側流路11を通り、回転軸7の外側から半径方向内向きに流れ込む。そして、図中矢印Cのようにインペラ9の流入部9aに流入する。
【0045】
吸込側流路11からインペラ9に流入した液体は、インペラ9の回転エネルギーを受けて、遠心力により圧力エネルギーと運動エネルギーを高められた液体に変換される。吐出側流路13の圧力は相対的に吸込側流路11より高い圧力となっており、この圧力を保持するため、吸込側流路11と吐出側流路13は、ケーシング部の隔壁15により隔てられている。尚、本実施形態のポンプでは、回転軸7が水平方向に沿って設けられているため、インペラ9は回転軸7を横切る垂直面に沿って回転することとなる。ただし、本実施形態における水平方向の回転軸は一例であって、垂直方向やそれ以外の角度方向に沿って設置してもよい。
【0046】
このケーシングの隔壁15の端部であって、インペラ9と対向する部位で、ケーシングリング19がケーシングの隔壁15に備えられ、インペラリング10がインペラ9に備えられている。ケーシングリング19とケーシングの隔壁15の端部との間には、電気的絶縁材17が設けられており、この電気的絶縁材17Eは、ケーシングリング19とケーシングの隔壁15に密着するように充填されている。電気的絶縁材17Eがケーシングリング19と隔壁15に密着しているので、ケーシングリング19と隔壁15の間に隙間が形成されず、流体の漏れ流れを防止し、ケーシングリング19と隔壁15との電気的接触も防げる。
【0047】
電気的絶縁材17Eは、絶縁性フィルム、絶縁塗料、絶縁性接着剤など、いかなる樹脂材料を用いても良く、繊維強化プラスティックや粒子強化プラスティックとして形成してもよい。また、樹脂材料以外でも、絶縁性のある低融点ガラス、セラミック系接着剤などを用いても良い。しかし、長期間に及ぶポンプ運転における振動や衝撃、温度変化を吸収して、電気的絶縁維持、シール性維持、寸法精度維持という機能を保ち続ける必要がある。このため、それに適した材料として、エポキシ系、シリコン系、あるいはPTFE系の電気的絶縁材料が好ましい。これらの材料は、水中で使用した場合にも、水中への成分の流出や吸収がほとんどないので、長期使用でも劣化がほとんどない。
【0048】
エポキシ系あるいはシリコン系の電気的絶縁材料は、液状あるいはゲル状の絶縁塗料、絶縁性接着剤であれば、金属面に付着性(親和性)が良い。このため、ケーシングまたはケーシングリングのどちらか一方あるいは両方にこれを塗布し、それらの塗布面を相手面に合わせるとケーシングとケーシングリングの合わせ面に塗布剤が広がって両者の間に電気的絶縁材料の膜状の層が形成される。この膜状の層は次第に硬化がある程度進行し、固体状になる。固体状の膜状の層は、密着強度、破壊強度ともに高く、ポンプを長期間にわたって運転した場合に、ポンプの振動や摺動時の衝撃や摩擦熱などがあっても、該電気的絶縁材料は、割れたり外れたりせず、密着性を維持する。このため、ケーシングリングとケーシングとの間に隙間が形成されず、液体の漏れ流れが発生しないように維持し続けるとともに、ケーシングリングとケーシングとの電気的接触、電気的導通も防げられる。
【0049】
また、電気的絶縁材料がシリコン系あるいはPTFE系であれば、フィルム状にしてケーシングとケーシングリングの合わせ面の間に挟みこむことも好ましい。シリコン系あるいはPTFE系は、硬化しても粘弾性を失わないので、上記合わせ面の表面粗さが少なければ合わせ面に密着する。このため、ケーシングとケーシングリングの合わせ面の形状が
標準化されていれば、あらかじめシリコン系フィルムを成型したものを用意することで、ケーシングとケーシングリングの間に挟みこむ作業も効率的で、絶縁塗料、絶縁性接着剤の塗布作業ではおこりがちな塗布量の不均一といったことが生じない。尚、電気的絶縁材17Eの充填厚みは、0.005mmから2mm程度の範囲が好ましいが、0.05mm以上はフィルム状の方が好ましく、0.05mm未満の場合は絶縁塗料、絶縁性接着剤の塗布が好ましい。
【0050】
図8は、図7に開示した電気的絶縁材17Fに加えて、電気的絶縁性のOリング23bを装着した腐食壊食防止構造である。Oリング23bは隔壁15に形成されたOリング溝23aに装着されている。ポンプを長期間にわたって運転した場合に、ポンプの振動や摺動時の衝撃や摩擦熱などにより、該電気的絶縁材料17Fが、割れたり、ケーシングリング19やケーシング15から剥離する場合もある。この場合でも、Oリング23bによりシール性を維持しているので、隙間に液体が流通しないように維持し続けるとともに、ケーシングリング19とケーシングの隔壁15が電気的接触をしないように更に補強する。
【0051】
Oリング溝23aを形成するのは、ケーシングリング19側でも、ケーシング15側でもどちらでも良い。尚、この場合は、電気的絶縁性のOリング23bがシール性の維持を担っているので、電気的絶縁材17Fは、合わせ面との密着性をそれほど要求されない。但し、Oリング23bを使用する場合にはOリング自体の所定量の潰れを前提とするので、Oリング23bを支点としたOリング前後(図ではOリングの左右)のケーシングリング19とケーシング15による接触圧力のかかり方は均一ではない。そのため、電気的絶縁材17Fは、ケーシングリング19とケーシングの隔壁15が一点でも接触しないように、かつ、それらの合わせ面にかかる接触圧力を受けるために、0.05mmから10mmの厚みとした成型されシリコン系あるいはPTFE系の部品としてはめ込むことも望ましい。
【0052】
図9は、ケーシングリング19aの低圧側、すなわち吸込側流路11の側の外縁が、ポンプ軸の半径方向外側に延びている腐食壊食防止構造を示す。この延びている部分は、外縁延長部19Aである。ケーシングリング19は、第1部材19aと第2部材19bの二つの部分に分かれている。このため、図のように電気的絶縁材料17Gの接合形状が複雑な場合でも、インペラ9側に第1部材19aを配置し、吸込側流路11の側に第2部材19bを配置し、これらをネジ21にて固定して組み立てることができる。
【0053】
上記腐食壊食防止構造は、上ケーシングと下ケーシングとが分離しない形式のポンプ(輪切り型など)においても、外縁延長部19Aを備える腐食壊食防止構造の組立てを可能にする。また、ケーシングリング19の第2部分19bの低圧側は、隔壁15を広い範囲で覆っている。このようにすることで、ポンプの低流量運転時にインペラ9から吸込側流路11にキャビテーションを伴った入口逆流が生じても、第2部分19bが隔壁15を保護するので、壊食の進展を防ぐことができる。ケーシングリング19の第2部分19bを壊食に強い金属、例えばステンレス鋳鋼製とし、ケーシングの隔壁15をケーシングリング19の第2部分19bよりも壊食に弱いが汎用的な金属、例えば鋳鉄製としても、キャビテーション壊食からケーシングの隔壁15を守ることができる。
【0054】
以上の説明は、ポンプの腐食壊食防止構造として記載している。しかしながら、本願発明は、ポンプの製造方法として定義することもできる。すなわち、ケーシングとインペラとを備えるポンプの製造方法であって、前記ケーシング備え、前記ケーシングの所定箇所に電気的絶縁材を設け、前記インペラに対向する所定のケーシングリングを、前記電気絶縁材料を介して前記ケーシングに設置する、ポンプの製造方法である。なお、上述の発明を実施するための形態で説明した様々な特徴点は、当該ポンプの製造方法と組み合わせて適用することが可能である。
【0055】
更に本発明は、ポンプの補修方法としても定義することができる。すなわち、ケーシングとインペラとを備えるポンプの補修方法であって、前記ケーシングの所定箇所に電気的絶縁材を設け、前記インペラに対向する所定のケーシングリングを、前記電気絶縁材料を介して前記ケーシングに設置する、ポンプの補修方法である。なお、当該補修はポンプを一旦分解してから行われる。なお、上述の発明を実施するための形態で説明した様々な特徴点は、当該ポンプの補修方法と組み合わせて適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、図1および図9に示す実施形態に限らず、液体を加圧して移送するポンプで、ケーシングとケーシングリング(ライナーリング)が異種金属材料であるポンプについて、腐食壊食対策に利用することができる。
【0057】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。また、上記実施形態で説明した各発明特定事項は、発明として成立することを前提として、単独あるいは任意の組み合わせによって本願発明を構成する。
【符号の説明】
【0058】
1 ポンプ
3 上ケーシング
5 下ケーシング
7 回転軸
9 インペラ
9a 流入部
10 インペラリング
11 吸込側流路
13 吐出側流路
15 ケーシングの隔壁
17A,17B,17C,17D,17E,17F,17G 電気的絶縁材
19 ケーシングリング
19A 外縁延長部
21 ネジ
23a Oリング溝
23b Oリング溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13