(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記診断表示部は、過去に計測された前記状態量と比べて乖離が大きい前記状態量、及び/又は、過去に計算された前記相関と比べて乖離が大きい相関を表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の故障診断システム。
前記診断表示部は、前記相関の表示とともに、故障、整備、及び/又は部品の交換履歴を合せて表示することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の故障診断システム。
前記診断表示部は、前記機器の故障時の状態量や相関を基に予め警報値を設定しておき、運転中に状態量や相関が前記警報値に近づいた段階で発報することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の故障診断システム。
前記相関計算部は、耐用年数経過等により、新品に交換した機器に関連する計測項目について、前記相関係数を小さくすることを特徴とする請求項9に記載の故障診断システム。
前記相関計算部は、類似のポンプ形式、類似のポンプ構造、又は類似の機場の実績に応じて前記相関係数の重み付けを行うことを特徴とする請求項9に記載の故障診断システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のポンプ設備の監視機能では、故障機器(部位)を特定することは可能であるが、故障の原因を排除するまでには至らないため、再度、同じ故障を発生させてしまうことがあった。また、傾向監視機能は、状態の変化に応じて劣化機器のメンテナンス(保守・点検)を行うことを目的とするが、運転時間による経年劣化が原因か、あるいは運転条件が過酷になるなどの外部要因による劣化が原因か、を区別することはできなかった。後者の場合、劣化機器を補修したとしても、近いうちに、再度劣化による不具合を起してしまうなど、不十分な保守点検となっていた。即ち、外部要因による劣化の場合、外部要因を排除するか、外部要因に対する耐性をアップするかを行わなければ、適切な維持管理とは言えなかった。
【0007】
また、ポンプは、運転水位の高低によって運転状態(吐出量、全揚程、駆動機出力等)が大きく異なるため、計測データを単純に羅列しただけでは、データが散らばり過ぎて、傾向監視の判断が付きにくいという問題があった。例えば、管理運転は実排水運転と異なる運転モード(例えばバイパス管循環方式、原動機単独運転方式等)で運転するため、実排水運転と運転点や負荷状況等の条件が大きく異なり、計測値で傾向監視することは困難であった。また、先行待機運転のように、運転水位によって運転状態が全排水、気水混合、気中(無送水)と大きく異なる場合は、測定データが大きくばらつくために、単純に計測データだけで傾向・判断を行うのは困難であった。
【0008】
また、機器故障時の対応策が、種々のチェック項目と共に取扱説明書に記載されているが、各機器に特化した内容が記載されているだけであり、設備全体を考慮したものではない。また、設備業者が設備全体の故障時対応マニュアルや故障木(フォルトツリー)を作成し、冊子化したり、監視装置の画面に冊子と同じものを出すなどの工夫がされているが、上述の通り、多岐にわたり考え得る原因を列挙し、操作員がそれを一つずつチェックしていくため、故障とは無関係の無駄なチェックは防止できるものの、迅速な故障復旧とまでは至らなかった。
【0009】
特許文献1は、複数の計測値の相関を記録しておき、相関係数の変動を捉えて、異常の初期段階を検出するものであるが、異常を起こす要因が多く存在する複雑な設備や、運転状態が大きく変動するようなポンプ設備では、満足な診断(相関)結果が得られないことが多かった。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、単なる故障の監視だけでなく、故障が発生した原因を絞り込むことができる故障診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、複数の機器を含むポンプ設備の故障を診断するための故障診断システムであって、前記複数の機器の各々の状態量を計測する複数の計測機器と、前記計測機器により得られた前記状態量を収集して記録する状態量記憶部と、前記複数の機器の複数の組み合わせについて前記状態量の相関を計算する相関計算部と、前記複数の機器のいずれかにおいて前記状態量の異常が発生した場合に、前記相関が大きい順に、当該状態量の異常が発生した機器に関連する他の機器を表示する診断表示部とを備えた構成を有している。
【0012】
複雑な大型の設備において、故障が生じたときには、考えられる故障原因を一つ一つ潰していく必要がある。このため、真因にたどり着くまでに、多大な時間を要し、次期降雨に間に合わないことや、故障の再発によって浸水被害を発生させてしまう危険がある。しかし、上記の構成によれば、故障要因を迅速に見つけることが可能となり、早期の復旧によって浸水被害の防除に寄与できると共に、故障の真因を取り除くことで故障の再発防止が可能となり、信頼性の高いポンプ設備を提供できる。
【0013】
前記相関計算部は、前記状態量を前記ポンプ設備の運転条件に応じて補正した後に、前記相関を計算してもよい。また、前記診断表示部は、過去に計測された前記状態量と比べて乖離が大きい前記状態量、及び/又は、過去に計算された前記相関と比べて乖離が大きい相関を表示してもよい。また、前記診断表示部は、前記相関の表示とともに、故障、整備、及び/又は部品の交換履歴を合せて表示してもよい。前記診断表示部は、前記機器の故障時の状態量や相関を基に予め警報値を設定しておき、運転中に状態量や相関が前記警報値に近づいた段階で発報するようにしてもよい。
【0014】
上記の故障診断システムは、前記複数の機器の各々の故障に対して考えられる故障要因をフロー化した故障木を記憶した故障木記憶部をさらに備えていてよく、前記相関計算部は、発生した故障に対し、前記故障木から、考慮される故障要因を抽出し、故障が発生した機器の状態量と、抽出された前記故障要因との相関を計算してよい。この構成により、故障時における原因診断だけでなく、予防診断を行うことで、故障を未然に防ぎ設備の機能維持が可能になる。
【0015】
前記診断表示部は、前記故障木に相関係数を示すことによって、故障要因としての関連する他の機器を相関の高低の順に表示してもよい。
【0016】
上記の故障診断システムは、劣化部位の特定や考えられる劣化要因を記憶した劣化要因記憶部をさらに備えていてよく、前記相関計算部は、故障前の段階で、前記劣化要因から、考慮される前記劣化要因を抽出し、故障前の機器の前記状態量と、抽出された前記劣化要因との相関を計算してよい。この構成により、故障の未然防止、劣化診断等の予防保全を行うことができる。
【0017】
上記の故障診断システムは、計測部位の故障または異常値を示した回数を記憶する回数記憶部をさらに備えていてよく、前記相関計算部は、前記回数記憶部に記録された累積回数から相関係数を計算してよく、前記診断部は、当該相関係数と前記累積回数との積が大きい順に、故障要因として、前記関連する他の機器を表示してよい。この構成により、求められた相関係数が見やすい形で整理され表示されるので、より的確に故障発生要因を診断できる。
【0018】
前記相関計算部は、耐用年数経過等により、新品に交換した機器に関連する計測項目について、前記相関係数を小さくしてよい。また、前記相関計算部は、機器の故障履歴、故障頻度、起動回数等に合わせて前記相関係数を調整してよい。また、前記相関計算部は、前記ポンプ設備の運転条件に応じて前記相関係数を調整してよい。前記相関計算部は、類似のポンプ形式・構造、又は類似の機場の実績に応じて前記相関係数の重み付けを行ってよい。
【0019】
前記診断部は、故障の発生履歴と、その際の相関係数の高い部位から、点検及び補修の範囲並びに優先順位を決定してよい。この構成により、維持管理を適正化できる。
【0020】
上記の故障診断システムは、前記ポンプ設備の使用電力量を計測する電力量計をさらに備えていてよく、前記相関計算部は、前記電力使用量と、前記状態量との相関を演算してよい。この構成により、上記の故障診断システムを利用して、建屋の電力量との相関を確認することで、使用電力の増加に対し、どの機器が最も影響を与えているのかを数値化することができる。これにより、影響を与えている機器を特定し、省エネ化(高効率化、簡素化)を図ることで、効果的な電力コストの低減が可能となる。
【0021】
前記診断表示部は、前記電力使用量を前記ポンプ設備の運転条件ごとに表示してよい。この構成により、特に農業用水向けの揚水ポンプでは、最も省エネとなる運転条件が判別可能になる。
【0022】
本発明の他の態様は、複数の機器を含むポンプ設備の故障を診断するための故障診断方法であって、前記複数の機器の各々の状態量を計測する計測ステップと、前記計測機器により得られた前記状態量を収集して記録する状態量記憶ステップと、前記複数の機器の複数の組み合わせについて前記状態量の相関を計算する相関計算ステップと、前記複数の機器のいずれかにおいて前記状態量の異常が発生した場合に、前記相関が大きい順に、当該状態量の異常が発生した機器に関連する他の機器を表示する診断ステップとを含む構成を有している。
【0023】
この構成によっても、故障要因を迅速に見つけることが可能となり、早期の復旧(浸水被害の防除)に寄与できると共に、故障を発生させた真因を取り除くことで故障の再発防止が可能となり、信頼性の高いポンプ設備の維持管理をできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、故障要因を迅速に見つけることができるので、信頼性が高く経済性のよいポンプ設備の維持管理が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態の故障診断システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態の故障診断システムが適用されるポンプ設備100を示す模式図である。ポンプ設備100は、外水河川(本川)ORに流入する内水河川(支川)BRの河口に設置される。内水河川BRは、自然流下樋門G1から直接外水河川ORに流入する流路と、ポンプ設備100を通じて排水樋門G2から外水河川ORに流入する流路とを有する。自然流下樋門G1及び排水樋門G2には、各々のゲートを開閉駆動するためのモータMが設けられている。
【0028】
ポンプ設備100は、ポンプ室101と操作監視室102とを備えている。ポンプ室101からくみ上げられた内水河川BRの水は、吐出水槽103に排出され貯留された後に、排水樋門G2から外水河川ORに排出される。ポンプ室101には、複数のポンプPとそれを制御する制御装置1011が備えられている。このポンプ室101は、操作監視室102にて操作され、監視される。操作監視室102には、サーバ(又は中継制御盤)1021と、監視装置1022が備えられている。なお、サーバ1021は、複数の他のポンプ設備を同時に操作、監視する遠隔管理所(リモートコントロールステーション、不図示)に接続されて、この遠隔管理所に計装信号や状態信号の発信を行うものであってもよい。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態のポンプ設備における電気設備の構成例を示すブロック図である。操作監視室102には、上述のようにサーバ1021及び監視装置1022が備えられる。ポンプ室101は、受配電・操作制御盤104と、これに接続された複数の機側操作盤105、及び複数の駆動機106を備えている。また、受配電・操作制御盤104は、吐出弁等の補機類にも接続されている。受配電・操作制御盤104は、主ポンプ盤、補機盤、計装盤等を含んでいる。複数の駆動機106は、それぞれ減速機及び電動機等からなり、それぞれ主ポンプ107に接続されて、主ポンプ107を駆動する。
【0030】
図3は、本発明の実施の形態のディーゼルエンジン駆動のポンプ場の例を示す模式図である。
図3は、立軸斜流ポンプの例を示している。なお、本実施の形態のポンプ設備100に用いるポンプ型式は、立軸渦巻斜流や横軸斜流ポンプなどの他の型式でもよい。
図3のポンプ設備では、駆動機1061の出力軸1063が減速機1062の入力軸1064に回転連結されることにより、駆動機1061から減速機1062へ入力される。駆動機1061は、ガスタービン、電動機等によって構成することも可能である。
【0031】
減速機1062には縦方向の出力軸1065が設けられており、これが外軸受1073を介してポンプ1071のポンプ軸1075に回転連結されている。ポンプ1071の吸込口1074は、吸込水槽108内に設けられる。ポンプ軸1075が回転されポンプ1071が運転されることによって吸込口1074から吸い込まれた吸込水槽108内の水は、吐出弁1072を介して吐出水槽103へ排出される。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態の故障診断システムとしてのポンプ設備の各種計測機器の配設例を示すブロック図である。
図4において、温度計は「T」、圧力計は「Pr」、電流計は「A」、流量計は「F」、レベル計(水位計)は「L」、動力計は「S」、振動計は「V」で示している。ポンプ設備100は、膨張タンク11と、エンジン12と、減速機13と、主ポンプ14と、冷却塔15と、冷却水槽16と、監視制御装置17と、換気ファン18と、吸込水槽19とから構成されている。
【0033】
膨張タンク11には、冷却水槽16から水が流入する。エンジン12には、エンジン12に用いる冷却水としての清水を冷却するための清水クーラ121が設けられている。エンジン12には、膨張タンク11からの清水が、清水クーラ121を介して、エンジン12の冷却水として、機付一次冷却水ポンプ122によって取り込まれる。
【0034】
エンジン12には、そこで利用される潤滑油を冷却するための潤滑油クーラ123、及びエンジン12の内部空気を冷却するためのインタクーラ124が設けられている。清水クーラ121、潤滑油クーラ123、及びインタクーラ124を流れる冷却水は、機付二次冷却水ポンプ125によって冷却水槽16から送り込まれる。
【0035】
エンジン12の内部には、エンジン12の動力を計測する動力計51が設けられている。また、潤滑油クーラ123への潤滑油の流入路には、潤滑油の温度を計測する温度計52が設けられており、潤滑油クーラ123からの潤滑油の流出路には、潤滑油の温度を計測する温度計53が設けられている。
【0036】
また、清水クーラ121、潤滑油クーラ123、及びインタクーラ124の冷却水の管路には、インタクーラ124に流入する冷却水の温度を計測する温度計54、インタクーラ124から流出し、潤滑油クーラ123に流入する冷却水の温度を計測する温度計55、潤滑油クーラ123から流出し、清水クーラ121に流入する冷却水の温度を計測する温度計56、及び清水クーラ121から流出する冷却水の温度を計測する温度計57が設けられている。動力計51、温度計52〜57の検出値は、それぞれ監視制御装置17に入力される。
【0037】
減速機13にも、そこで利用される潤滑油を冷却するための潤滑油クーラ131が設けられている。潤滑油クーラ131への潤滑油の流入路には、潤滑油の温度を計測する温度計58が設けられており、潤滑油クーラ131からの潤滑油の流出路には、潤滑油の温度を計測する温度計59が設けられている。また、潤滑油クーラ131への潤滑油の流入路には、潤滑油の圧力を計測する圧力計60が設けられており、潤滑油クーラ131からの潤滑油の流出路には、潤滑油の圧力を計測する圧力計61が設けられている。温度計58、59、及び圧力計60、61の検出値は、それぞれ監視制御装置17に入力される。
【0038】
潤滑油クーラ131には、冷却水ポンプ125によって冷却水槽16からくみ上げられた冷却水が通水している。潤滑油クーラ131からの冷却水の管路には、冷却水の温度を計測する温度計62が設けられている。温度計62の検出値は、監視制御装置17に入力される。なお、潤滑油クーラ131に流入する冷却水の温度は、インタクーラ124に流入する冷却水の温度を計測する温度計54によって代用できる。
【0039】
主ポンプ14は、減速機13によって回転される軸を受ける軸受141を備えている。この軸受141には、その温度を計測する温度計63、及びその振動を計測する振動計64が備えられている。温度計63及び振動計64の検出値は、それぞれ監視制御装置17に入力される。
【0040】
冷却塔15には、主ポンプ14の軸受141を冷却した後の冷却水が流入し、これを冷却する。冷却塔15で冷却された冷却水は、他のポンプ設備の冷却塔からの冷却水とともに、冷却水槽16に導入され貯留される。冷却塔15には、そこ流入する冷却水の温度を計測する温度計65と、冷却塔15から排出される冷却水の温度を計測する温度計66が設けられる。また、冷却塔15には、冷却塔15内のファンの電流を計測する電流計67が設けられる。温度計65、66、及び電流計67の検出値は、監視制御装置17に入力される。
【0041】
冷却水槽16内には、冷却水の水位を計測するレベル計68が設けられる。冷却水槽16には、そこに貯留された冷却水をエンジン12、減速機13、及び主ポンプ14に送るために、冷却水を汲み出す汲出ポンプ161が設けられている。この汲出ポンプ161には、電流を計測する電流計69と、汲出ポンプ161出口の冷却水の圧力を計測する圧力計70と、冷却水の流量を計測する流量計71を備えている。レベル計68、電流計69、圧力計70、及び流量計71の検出値は、それぞれ監視制御装置17に入力される。
【0042】
吸込水槽19内には、吸込水槽19内の水位を計測するレベル計72が設けられる。レベル計72の検出値は、監視制御装置17に入力される。また、換気ファン18には、電流を計測する電流計73が設けられている。さらに、ポンプ設備100には、室内温度を計測する温度計74、室外温度を計測する温度計75が設けられている。レベル計72、電流計73、及び温度計74、75の検出値は、それぞれ監視制御装置17に入力される。
【0043】
以上のように、監視制御装置17には、ポンプ設備100の各箇所の計測機器によって計測される種々の状態量(温度、圧力、電流、流量等)の検出値が入力される。なお、これらの複数の計測機器には、設定値(閾値)に達した場合に接点信号を出すもの(例えば、流量の低下/上昇、圧力の低下/上昇、回転数の低下/上昇の信号を出力する機能のみを有する計測機器)が含まれていてよい。また、上記に示した計測機器以外の他の計測機器として、ポンプ軸変位量、減速機振動値、冷却水流量、エンジン軸動力(電動機駆動の場合は電流値)、冷却水ポンプ電流値、換気ファン電流値、ポンプ起動回数等を計測する計測機器を設けてもよい。
【0044】
以下では、監視制御装置17において、これらの検出値に基づいて行われる監視制御について説明する。本実施の形態では、特に監視制御装置17において実行される故障診断の処理について説明する。
【0045】
図5は、本発明の実施の形態の監視制御装置の構成を示すブロック図である。監視制御装置17は、記憶装置及び演算処理装置を備える通常のコンピュータが故障診断プログラムを実行することにより実現される。監視制御装置17は、相関計算部171と、診断表示部172と、表示パネル173と、状態量記憶部174と、回数記憶部175と、相関記憶部176と、故障木記憶部177とを備えている。
【0046】
状態量記憶部174は、故障診断のために、複数の計測機器よりそれぞれ入力された状態量の検出値を収集して記憶する。回数記憶部175は、計測部位の故障値または異常値を示した回数を記憶している。相関記憶部176は、過去の計測データから算出された計測値毎の相関係数、及び過去の実績等から想定される相関係数を記憶している。故障木記憶部177は、複数の機器の各々の故障に対して考えられる故障要因をフロー化した故障木を記憶している。以下、監視制御装置17における処理を具体的に説明する。
【0047】
診断表示部172は、複数の計測機器から状態量の実測値を取得して、これらの状態量に基づいて、該当する機器で異常が発生しているか否かを判断する。
図6は、本発明の実施の形態のポンプ設備の運転時間と状態量としての各部位の温度との関係を示すグラフの例である。
図6は、具体的には、運転時間の経過に伴うエンジン冷却水(潤滑油クーラ出口)温度56、エンジン潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度53、減速機冷却水(潤滑油クーラ出口)温度62、及び減速機潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度59の変化を示している。各温度について、破線は想定値を示しており、プロットは実測値を示している。
図6に示すように、各部位の温度の想定値は、ポンプ設備100の運転時間の経過に伴って徐々に増加している。
【0048】
図6の例では、エンジン潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度、減速機冷却水(潤滑油クーラ出口)温度、及び減速機潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度については、おおむね想定値に従った実測値が得られているが、エンジン冷却水(潤滑油クーラ出口)温度については、運転時間の経過とともに、想定値と実測値との乖離が大きくなり、最終的に警報値に達している。
【0049】
診断表示部172には、複数の計測機器よりそれぞれ入力された状態量の検出値が実測値として入力される。診断表示部172は、想定値と実測値との差から実測値に異常があるか否かを判断する。診断表示部172は、異常があると判断した計測部位について、回数記憶部175に記憶された故障回数を加算する。
【0050】
上述のように、相関計算部171は、複数の機器の複数の組み合わせについて状態量の相関を計算する。診断表示部172は、相関計算部171が計算した相関に基づいて異常が生じているか否かを判断する。診断表示部172は、ある状態量に異常が生じていると判断した場合に、その状態量が関連する他の機器を、相関計算部171が計算した相関が大きい順に順位づける。
【0051】
図7は、本発明の実施の形態の減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)圧力61と、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度59との関係を示すグラフである。減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)圧力と、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度とは、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)圧力が低いほど、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度が高いという関係にある。
【0052】
相関計算部171は、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)圧力及び減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度の実測値が入力されると、この実測値と減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)圧力及び減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度の過去の実測値との相関を求める。
【0053】
図7の例では、相関計算部171は、「×」の実測値が得られたときに、この実測値と、状態量記憶部174に記憶された過去の実測値「●」との相関を求める。
図7の例では、相関係数Cは−0.90と算出される。
図7の例に示すように、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度が警報値に達しているが、この例では、故障発生前及び故障発生時ともに、高い相関を示している。
【0054】
図8は、本発明の実施の形態の減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度62と、エンジン12の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度56との関係を示すグラフである。減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度と、エンジン12の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度とは、減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度が高いほど、エンジン12の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度も高いという関係にある。
【0055】
相関計算部171は、減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度及びエンジン12の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度の実測値が入力されると、この実測値と減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度及びエンジン12の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度の過去の実測値との相関を求める。
【0056】
図8の例では、相関計算部171は、「×」の実測値が得られたときに、この実測値と、状態量記憶部174に記憶された過去の実測値「●」との相関を求める。
図8の例では、相関係数Cは0.85と算出される。なお、
図8の例では、減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度及びエンジン12の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度のいずれも警報値には達していない。
【0057】
図9は、本発明の実施の形態の減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度62と、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度59との関係を示すグラフである。減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度は温度計62で計測され、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度は温度計59で計測される(
図4参照)。減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度と、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度とは、減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度が高いほど、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度も高いという関係にある。
【0058】
相関計算部171は、減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度及び減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度の実測値が入力されると、この実測値と減速機13の冷却水(潤滑油クーラ出口)温度及び減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度の過去の実測値との相関を求める。
図9の例では、相関計算部171は、「×」の実測値が得られたときに、この実測値と、状態量記憶部174に記憶された過去の実測値「●」との相関を求める。
【0059】
図9の例では、相関係数Cは0.3と算出される。なお、
図9の例では、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度が警報値に達している。また、
図9の例では、通常は高い相関を示すが、故障発生時に明らかに乖離することを示している。このように相関が外れると故障と判断できるので、故障が早く発見できる。
【0060】
図10は、本発明の実施の形態の主ポンプ14の軸受振動値64と、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度59との関係を示すグラフである。
図10に示すように、主ポンプ14の軸受振動値と、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度には、強い相関はない。
【0061】
相関計算部171は、主ポンプ14の軸受振動値及び減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度の実測値が入力されると、この実測値と主ポンプ14の軸受振動値及び減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度の過去の実測値との相関を求める。
【0062】
図10の例では、相関計算部171は、「×」の実測値が得られたときに、この実測値と、状態量記憶部174に記憶された過去の実測値「●」との相関を求める。
図10の例では、相関係数Cは0.2と算出される。なお、
図10の例では、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度が警報値に達している。
図10の例では、通常時及び故障発生時ともに、相関が低いことを示している。
【0063】
図11は、本発明の実施の形態の減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ入口)温度58と、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度59との関係を示すグラフである。減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ入口)温度と、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度とは、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ入口)温度が高いほど、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度も高いという関係にある。
【0064】
相関計算部171は、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ入口)温度及び減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度の実測値が入力されると、この実測値と減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ入口)温度及び減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度の過去の実測値との相関を求める。
図11の例では、相関計算部171は、「×」の実測値が得られたときに、この実測値と、状態量記憶部174に記憶された過去の実測値「●」との相関を求める。
【0065】
図11の例では、相関係数Cは0.5と算出される。なお、
図11の例では、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ入口)温度は警報値に達しており、減速機13の潤滑油(潤滑油クーラ出口)温度も警報値に近くなっている。
図11の例では、潤滑油クーラが正常に機能している場合は、適正な相関(温度差)を示すが、故障発生時には、相関が乖離し、かつ、潤滑油クーラ出入口における温度差(冷却効果)がほぼないことを示している。
【0066】
図12は、本発明の実施の形態の故障木記憶部177に記憶されている故障要因を示す図である。
図12に示すように、故障木記憶部177には、故障要因として、潤滑油クーラ故障、潤滑油不足(又は過多)、潤滑油質不良・劣化、潤滑油漏洩、潤滑油圧調整弁の不良、冷却水系統の異常(冷却水断、動作不良など)、減速機軸受損傷、減速機本体の不具合(歯車損傷など)、計器・センサ類の故障等が記憶されている。
【0067】
このように故障要因は、多岐にわたり、従来は操作員がこれらを1つずつ検証して要因を絞り込んでいく必要があった。そこで、本実施の形態の監視制御装置17では、これらの故障要因が故障木として故障木記憶部177に記憶されており、相関計算部171は、発生した故障に対し、故障木から、考慮される故障要因を抽出し、故障が発生した機器の状態量と、抽出された故障要因との相関を計算する。
【0068】
図13は、本発明の実施の形態の相関係数に基づく異常の有無の判定、及び故障真因との相関係数の計算を示す図である。
図13の左側の表に示すように、診断表示部172は、計測内容や関連部位などの組み合わせを相関係数Cの絶対値が大きい順に表示する。また、診断表示部172は、通常・過去等の相関関係と比べて、明らかな乖離があるか否かを表示する。
【0069】
図13の右側の表に示すように、診断表示部172は、故障木記憶部177に記憶された各故障要因について、相関係数ごとに設定される補正係数を相関係数にかけた補正後の相関係数を表示する。すなわち、診断表示部172は、回数記憶部175に記憶された故障累積回数から、相関係数Cの補正係数kを計算し、補正後の相関係数|kC|を出力する。
【0070】
例えば、減速機の潤滑油(クーラ出口)圧力と減速機の潤滑油(クーラ出口)温度との組み合わせについては、補正係数k1が、潤滑油冷却器(クーラ)故障、潤滑油量不足(又は過多)、潤滑油質不良・劣化、潤滑油漏洩、潤滑油圧調整弁不良、冷却水系統の異常(冷却水断、動作不良等)、減速機軸受損傷、減速機本体の不具合(歯車損傷など)、計器・センサ類故障他という故障要因ごとに、0.5、0.5、0.3、0.2、0.2、0.5、0.3、0.3、0.1と計算され、これらの補正係数k1を、減速機の潤滑油(クーラ出口)圧力と減速機の潤滑油(クーラ出口)温度との相関係数C(=−0.90)に乗じてその絶対値をとると、それぞれの故障要因について、補正後の相関係数|k1C1|が、0.45、0.45、0.27、0.18、0.18、0.45、0.27、0.27、0.09と得られる。
【0071】
補正係数kは、故障累積回数に代えて、又はそれに加えて、故障実績、部品交換履歴等に基づいて算出されてもよい。診断表示部172は、以下のような学習及び調整によって補正係数kを決定する。例えば、診断表示部172は、耐用年数経過等により、新品に交換した機器に関連する計測項目については、k値を小さくしてよい。また、診断表示部172は、機器の故障履歴・故障頻度・起動回数等に合わせ、k値を適宜調整してよい。あるいは、年数経過に応じて自動的にk値を大きくするようにしてもよい。
【0072】
また、診断表示部172は、運転条件(水位、実排水有無等)に合せて、k値を適宜調整してよい。また、維持管理の適正化のために、故障の発生履歴と、その際の相関係数の高い部位から、点検・補修などの範囲や優先順位を決めるようにしてもよい。なお、類似ポンプ形式・構造など基準データがある場合は、予め補正係数kの重み付けを行ってもよい。このように診断表示部172が補正係数kを学習、調整することで、より的確に故障発生の要因を診断できる。
【0073】
なお、診断表示部172は、計算精度を上げるために、相関係数及び相関傾向の乖離のほか、過去の故障、整備履歴等をフィードバックして、計算結果を補正してもよい。診断表示部172は、さらに、相関傾向の乖離がある場合には、複数の相関係数(
図13のk’)を用いる。例えば、減速機の冷却水(クーラ出口)温度と減速機の潤滑油(クーラ出口)温度は、通常高い相関を示すが、潤滑油クーラが故障した際には、明らかに相関係数Cが小さくなり、相関係数の乖離が生じる。このため、故障要因順位で「潤滑油クーラ故障」が上位になるよう、相関が下がり値の小さくなったC値に対し、k’で重み付けをして補正を行う。
【0074】
診断表示部172は、各故障要因について、補正後の相関係数の平均を計算し、計算された補正後の相関係数の平均に従って、故障要因を順位付けし、順位の順に並べて
図13の右側の表を作成する。このように、診断表示部172は、各故障要因を、相関係数の大きい順に表示するので、故障を発生させた真因を迅速に見つけることが可能となる。操作員は、相関係数の高いものから優先して調査をすることで故障真因の早期発見及び早期復旧が可能となる。なお、
図13に示す相関の表示とともに、各機器や部品の故障、交換、整備履歴を表示してもよい。
【0075】
以上のように、本実施の形態の監視制御装置17は、故障が発生した場合に、相関係数の絶対値の大きい(相関が強い)順に、関係部位(計測内容)を表示するので、故障要因を迅速に見つけることが可能となり、早期の復旧(浸水被害の防除)に貢献できるとともに、故障を発生させた真因を取り除くことで故障の再発防止が可能となり、信頼性の高いポンプ設備100を実現できる。
【0076】
上記の実施の形態では、相関計算部171は、複数の機器の複数の組み合わせについて状態量の相関を計算したが、この場合に、状態量を大項目ごとに分類した上で、相関係数を算出してもよい。以下、具体例を説明する。
【0077】
相関計算部171は、運転条件ごとにデータを整理して、相関係数を計算してよい。即ち、相関計算部171は、ポンプ設備の運転状態に影響するポンプ内の水位の測定範囲ごとにデータを分類して相関係数を計算してよい。
図14は、本発明の実施の形態の変形例の3種類の異なる水位条件(A、B、C)における総運転時間とポンプ振動(例えば、ポンプ回転軸の振動幅)との関係の例を示すグラフである。
図14に示すように、計測データが複数得られている場合にも、水位条件を分けない場合には、これらの計測データには何らの相関もないように見える。
【0078】
図15は、本発明の実施の形態の変形例の水位条件Aの計測データのみを示したグラフである。
図15に示すように、水位条件Aにおいては、総運転時間とポンプ振動との間には比較的高い相関が確認できる。
図16は、本発明の実施の形態の変形例の水位条件Bの計測データのみを示したグラフである。
図16に示すように、水位条件Bにおいては、総運転時間とポンプ振動との相関は低く、又は相関は認められない。
図17は、本発明の実施の形態の変形例の水位条件Cの計測データのみを示したグラフである。
図17に示すように、水位条件Cにおいても、総運転時間とポンプ振動との間に比較的高い相関が認められる。
【0079】
このように、総運転時間とポンプ振動との間は、
図14に示すように条件を考慮しないでみると、相関は低く、又はないように理解できるが、条件別に整理することで、相関を見出すことができる。
図14〜
図17では、総運転時間とポンプ振動との相関について説明したが、一般的にも、運転条件によって、相関の有無が変動する場合があるため、上記のように運転条件ごとにデータを整理することで、相関係数の算出時に、運転条件等の差異による測定値のばらつきを低減して、正確な相関係数を求めることが可能になる。
【0080】
例えば、ポンプ吐出量毎にデータを整理して相関係数を計算してもよい。また、管理運転と実排水運転とで区別して相関係数を計算してもよい。即ち、管理運転は、類似運転条件・水位の制約により、実排水が行えず、バイパス循環、原動機機単独運転、無送水運転(先行待機ポンプにおける気中運転等)等、実排水時とは運転条件が大きく異なるため、相関係数算出の際は、仕分けることが有効である。
【0081】
また、上記の実施の形態では、故障発生時に各状態量の相関を計算して故障原因を診断したが、故障発生時だけでなく、故障前に警報等を発報し、又は各計測データの異常を検知した場合に相関の計算及びそれに基づく故障原因の診断を行ってもよい。以下、故障前に発報する例を説明する。
【0082】
図18は、本発明の実施の形態の変形例の第1の発報事例を説明するグラフである。
図18は、ある二つの状態量(x,y)の関係を示している。この事例では、過去の測定履歴と比べて、大きく数値が変動した場合、即ち急に数値が大きくなった場合に発報する。
【0083】
図19は、本発明の実施の形態の変形例の第2の発報事例を説明するグラフである。
図19でもある二つの状態量(x,y)の関係を示している。この発報事例では、複数台の同一型式のポンプ(1号機〜4号機)がある場合に、特定のポンプのみが明らかに他号機と異なる傾向を示した場合に発報する。
図19の例では、4号機の計測データが他号機と明らかに異なるので、4号機について発報する。
【0084】
図20は、本発明の実施の形態の変形例の第3の発報事例を説明するグラフである。
図20でもある二つの状態量(x,y)の関係を示している。この発報事例では、最新の計測データが、蓄積された過去の計測データ、又はあらかじめ入力または設定した相関データと比べて、明らかに異なる傾向(相関異常)を示した場合に発報する。
【0085】
また、上記の実施の形態では、各状態量の相関を計算して故障原因の可能性が高い順に表示をしたが、これに加えて、ポンプ運転時に、類似の運転条件を算出し、類似運転条件における計測データと比較するための表示をしてもよい。
【0086】
図21は、本発明の実施の形態の変形例の状態確認を実施するフローを示す図である。監視制御装置17は、通常のポンプ運転時、災害発生(地震、地盤沈下等)、長期間の運転停止(非出水期間、工場整備等)などの際に(ステップS211)、ポンプの運転を行い、状態量のデータを計測する(ステップS212)。監視制御装置17は、過去の計測履歴の中から、類似運転条件における計測データを抽出して(ステップS213)、
図21に示すように、類似運転条件における計測データと今回計測した計測データとを比較可能に表示する(ステップS214)。そして、計測データの比較から異常の有無を判断する(ステップS215)。この時、単に差異の大きいデータ順に表示をしてもよい。
【0087】
このように、類似運転条件のデータと今回計測したデータとを比較することで、通常のポンプ運転時に加えて、長時間停止や地震等の災害時の影響の有無が判定可能となる。
【0088】
また、監視制御装置17は、さらに、各測定項目を時系列的に一覧表示してもよい。例えば、水中ポンプ設備のような測定項目が少ない設備においては、このような表示方法が有効である。
図22は、本発明の実施の形態の変形例の測定項目や整備履歴等を時系列的に一覧表示した例を示す図である。
【0089】
図22では、総運転時間に対するモータ電流値、モータ電圧、モータ温度、運転水位、及び水温のそれぞれの時間経過が、ポンプの起動(停止)回数とともに示されている。
図22において、ポンプの整備、部品交換、故障履歴等のタイミングも表示してよい。
図22の例では、4回目の起動前にポンプ整備が行われたことが示されている。
【0090】
このように、主要測定項目、運転時間、起動回数、整備履歴等を一括表示することにより、主要測定項目同士の相関傾向や、各測定項目と整備・部品交換等との関係が一目で把握できる。
【0091】
また、上記の実施の形態では、監視制御装置17は、発生した故障に対して、故障木から推測される要因を抽出し、故障を発生した計測値と、抽出した要因の相関を求めたが、予防保全(故障の未然防止又は劣化診断)のために、故障前の段階で相関係数の計算を行い、劣化部位の特定や考えられる劣化要因を、故障木同様、監視制御装置17に予め記憶させたものから抽出してもよい。これにより、故障時における原因診断だけでなく、予防診断を行うことで、故障を未然に防ぎ設備の機能維持が可能になる。
【0092】
また、上記の実施の形態では、相関係数と補正係数との積の大きい順に故障発生要因を表示したが、この表示は、故障木に相関関係数値が関連付けられるようにして表示してもよい。
【0093】
また、上記の実施の形態では、監視制御装置17は、故障の原因を診断したが、ポンプ設備100に、その使用電力量を計測する電力量計を設けることで、故障原因の診断の機能を用いて、電力使用量と、各計測値の相関を計算することで、省エネ診断を行ってもよい。すなわち、上記の監視制御装置17の機能を利用し、設備の電力量との相関をチェックすることで、使用電力量の増加に対し、どの機器が最も影響を与えているのかを数値化することができる。これにより、影響を与えている機器を特定し、省エネ化(高効率化、簡素化)を図ることで、効果的な電力コストの低減が可能となる。
【0094】
この場合に、段落[0021]で説明したように、運転条件(水位等)ごとに電力使用量を分けて表示してもよい。これにより、最も省エネとなる運転条件を判別できる。
【0095】
また、上記の実施の形態の監視制御装置17は、さらに、劣化部位の特定や考えられる劣化要因を記憶した劣化要因記憶部を備えていてよい。この場合には、相関計算部171は、故障前の段階で、劣化要因記憶部に記憶された劣化要因から、考慮される劣化要因を抽出し、故障前の機器の状態量と、抽出された劣化要因との相関を計算する。これにより、故障の未然防止、劣化診断等の予防保全を行うことができる。