【0011】
ここで、蔗糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、脂肪族カルボン酸が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、炭素数が2〜22、好ましくは8〜22、更に好ましくは14〜22の脂肪族カルボン酸の直鎖飽和脂肪族カルボン酸、直鎖不飽和脂肪族カルボン酸、分岐鎖飽和脂肪族カルボン酸及びこれらの混合物を用いることができる。例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、エルカ酸、酢酸、イソ酪酸等が挙げられるがこれに限定するものではない。
好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸である。
本発明では、前記全蔗糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、炭素数が14〜22の直鎖飽和脂肪族カルボン酸、炭素数が14〜22の直鎖不飽和脂肪酸であることが、特に好ましい。最も好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エルカ酸である。
【実施例】
【0017】
以下、実施例において本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらに何等限定されるものではない。
<エステル組成評価方法>
蔗糖脂肪酸エステル混合物に含まれるエステルの組成分析を、高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。具体的にはGPCカラム及びODSカラムを使用した。各カラムを用いた分析条件を以下に示す。
GPCカラム分析条件
検出器:Shodex示差屈折計RI−74
カラム(カラム1とカラム2の2本連結):(カラム1)PL−gel(ポリマー・ラボラトリー社製)粒子サイズ5μm 孔径10nm 300mm×7.5mm、(カラム2)PL−gel(ポリマー・ラボラトリー社製)粒子サイズ5μm 孔径50nm 300mm×7.5mm
カラム温度:30℃
溶離液:特級テトラヒドロフラン(安定剤含有)
流速:0.6mL/分
注入量:10μL
分析時間:43分
【0018】
ODSカラム分析条件
検出器 Shodex示差屈折計RI−74
カラム:ZORBAX Eclipse PlusC18(アジレント・テクノロジー株式会社製)粒子サイズ3.5μm 150mm×4.6mm
カラム温度:25℃
溶離液:特級テトラヒドロフラン(安定剤含有):特級メタノール=55:45
流速:0.8mL/分
注入量:10μL
分析時間:16分
はじめにGPCカラムを使用し、エステル化度1、2、3及びエステル化度4以上の蔗糖脂肪酸エステルの組成を測定した。次にODSカラムを使用し、エステル化度4,5,6,7及び8の蔗糖脂肪酸エステルの組成割合を測定した。先のGPCカラムの測定結果とODSカラムの組成割合結果から、エステル化度1〜8の各組成を算出した。
【0019】
[実施例1]
蔗糖脂肪酸エステル混合物原料として、DKエステルF−10(HLB=1、第一工業製薬株式会社製)を準備した。F−10蔗糖脂肪酸エステル混合物原料30gと2−プロパノール300gをセパラブルフラスコに加えた。セパラブルフラスコを60℃の恒温槽内に浸し、スリーワンモーターを用いて、F−10蔗糖脂肪酸エステル混合物原料が2−プロパノールに溶解するまで撹拌した。溶解後、恒温槽の温度を40℃に設定し、継続して1時間30分撹拌した。その後、40℃の恒温機内で吸引濾過を行い、析出した蔗糖脂肪酸エステル混合物とろ液を得た。ろ液は、エバポレーター、凍結乾燥により2−プロパノールを取り除き、ろ液に分別された蔗糖脂肪酸エステル混合物を得た。
このようにして析出した蔗糖脂肪酸エステル混合物とろ液に分別された蔗糖脂肪酸エステル混合物におけるエステル化度の異なる蔗糖脂肪酸エステル含量(質量%)を表1及び
図1に示す。
【0020】
表1
この表の結果から、実施例1で得られた析出物(固体部)は、固液分離前に較べて、エステル化度の高い蔗糖脂肪酸エステルの含有割合が多くなっている。特に、エステル化度6及び7の蔗糖脂肪酸エステルの割合が向上し、エステル化度5〜7の蔗糖脂肪酸エステルの合計割合を、原料中の割合に比べて20〜40質量%増加させることができることがわかる。又、ろ液(液状部)については、エステル化度4及び5の蔗糖脂肪酸エステルの割合を向上させることができ、エステル化度7及び8の蔗糖脂肪酸エステルの合計割合を、原料中の割合に比べて60質量%以下に減少させることができることがわかる。
【0021】
[実施例2]
F−10蔗糖脂肪酸エステル混合物原料を2−プロパノールに溶解後、恒温槽の温度を30℃に設定した以外は、実施例1と同様の方法で析出した蔗糖脂肪酸エステル混合物とろ液に分別された蔗糖脂肪酸エステル混合物を得た。
このようにして析出した蔗糖脂肪酸エステル混合物とろ液に分別された蔗糖脂肪酸エステル混合物におけるエステル化度の異なる蔗糖脂肪酸エステル含量(質量%)を表2及び
図2に示す。
表2
この表の結果から、この表の結果から、析出物(固体部)とろ液(液状部)を構成する蔗糖脂肪酸エステル混合物中のエステル化度の異なる成分の含有割合が大きく異なり、効率的な分別が行われていることがわかる。又、実施例2で得られた析出物は、固液分離前に較べて、エステル化度の低い蔗糖脂肪酸エステルの含有割合が多くなっている。特に、エステル化度5及び6の蔗糖脂肪酸エステルの割合を向上させることができることがわかる。又、ろ液については、エステル化度4及び5の蔗糖脂肪酸エステルの割合を向上させることができ、エステル化度3〜5の蔗糖脂肪酸エステルの合計割合を、原料中の割合に比べて40質量%以上高めることができることがわかる。又、エステル化度6〜8の蔗糖脂肪酸エステルの合計割合を、原料中の割合に比べて17質量%に減少させることができることがわかる。
【0022】
[実施例3]
F−10蔗糖脂肪酸エステル混合物原料を2−プロパノールに溶解後、恒温槽の温度を20℃に設定した以外は、実施例1と同様の方法で析出した蔗糖脂肪酸エステル混合物とろ液に分別された蔗糖脂肪酸エステル混合物を得た。
このようにして析出した蔗糖脂肪酸エステル混合物とろ液に分別された蔗糖脂肪酸エステル混合物におけるエステル化度の異なる蔗糖脂肪酸エステル含量(質量%)を表3及び
図3に示す。
表3
この表の結果から、析出物(固体部)とろ液(液状部)を構成する蔗糖脂肪酸エステル混合物中のエステル化度の異なる成分の含有割合が大きく異なり、効率的な分別が行われていることがわかる。又、実施例3で得られた析出物は、固液分離前に較べて、エステル化度の低い蔗糖脂肪酸エステルの含有割合が多くなっている。特に、エステル化度5及び6の蔗糖脂肪酸エステルの割合を向上させることができることがわかる。又、ろ液については、エステル化度4及び5の蔗糖脂肪酸エステルの割合を向上させることができ、エステル化度3〜5の蔗糖脂肪酸エステルの合計割合を、原料中の割合に比べて60質量%以上高めることができることがわかる。又、エステル化度6〜8の蔗糖脂肪酸エステルの合計割合を、原料中の割合に比べて31質量%に減少させることができることがわかる。
【0023】
[比較例1]
2−プロパノールを酢酸エチルに変更し、また、溶解後の恒温槽の温度を40℃に設定した以外は、実施例1と同様の方法で行ったが、蔗糖脂肪酸エステル混合物の析出はなかった。
[比較例2]
2−プロパノールを酢酸エチルに、また、溶解後の恒温槽の温度を30℃に設定した以外は、実施例1と同様の方法で行い、析出した蔗糖脂肪酸エステル混合物とろ液に分別された蔗糖脂肪酸エステル混合物を得た。
このようにして析出した蔗糖脂肪酸エステル混合物とろ液に分別された蔗糖脂肪酸エステル混合物の結果を表4及び
図4に示す。
表4
この表の結果から、析出物(固体部)とろ液(液状部)を構成する蔗糖脂肪酸エステル混合物中のエステル化度の異なる成分の含有割合は、ほぼ同じであり、分別溶媒として酢酸エチルを用いたのでは有効な分別を行うことができないことがわかる。